説明

燃料電池のガス昇圧装置

【課題】外部にガスが洩れることのない燃料電池のガス昇圧装置を提供することを目的とする。
【解決手段】所定のガスを供給する原料供給路と、前記ガスの圧力を検知する圧力検知手段と、前記ガスの流量を検知する流量検知手段と、前記ガスの温度を検知する温度検知手段と、前記圧力検知手段で検知された圧力、前記流量検知手段で検知された流量、前記温度検知手段で検知された温度に基づいて前記原料供給路から供給される前記ガスの流量を制御する制御手段と、前記ガスを昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧されたガスを改質して燃料にする燃料生成手段とを備えた燃料電池において、前記昇圧手段を金属ケース16で囲んだことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素と水素とを電気化学的に反応させて発電する燃料電池に係り、特に燃料であるガスを搬送するガス昇圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水素と酸素を用いて電気を生成する燃料電池ある(例えば、特許文献1参照)。従来の燃料電池について、以下に図面を参照しながら説明する。
【0003】
図7は、従来の燃料電池を示す構成図である。図7において、従来の燃料電池システムは、水素と酸素を用いて発電を行う固体高分子型の燃料電池スタック101と、水蒸気を発生させる蒸気発生部102と、天然ガスなどの原料ガスを水蒸気改質し、水素リッチな改質ガスを生成する改質器103と、生成された改質ガス中のCO濃度を低減するCO変成部104と、残ったCO濃度を10ppm以下にまで低減させるCO除去部105と、原料ガスを昇圧し、改質器103に供給する昇圧ポンプ108と、改質器103に供給する原料ガスの流量を検知する原料ガス流量計109と、原料ガス流量を調整する原料ガス流量調整弁110と、原料ガス流量調整弁110を調整する制御部111と、外部から供給される天然ガスである燃料ガスおよび燃料電池スタックから排出される残余燃料ガスとを燃焼するバーナ107と、酸化剤ガスとして空気を燃料電池スタック101に供給する空気ブロア112とを備える。また、改質器103には改質用触媒が充填されており、バーナ107で加熱する。昇圧ポンプ108、原料ガス流量調整弁110、原料ガス流量計109、改質器103、CO変成部104、CO除去部105により原料供給部100が形成されている。
【0004】
以上のように構成された燃料電池について、以下、その作用を述べる。
【0005】
供給された2kpa程度の天然ガスは、昇圧ポンプ108によって5〜10kpa程度の圧力にまで昇圧される。そして昇圧された天然ガスは、改質器103において水蒸気で改質され、CO変成部104およびCO除去部105を通過することでCO濃度が低減され、水素リッチな燃料ガスとして燃料電池スタック101に供給される。
【0006】
一方、燃料電池スタック101には、空気ブロア112より酸化剤ガスとしての空気が供給されており、燃料電池スタック101では水素リッチな燃料ガスと酸素を含む空気とが電気化学的に反応して発電を行う。このとき、発生する電力は直流であるので、実際には、インバータにより交流電力に変換後、外部へ供給される。
【0007】
また改質器103において天然ガスを改質する時に加熱するバーナ107には、天然ガスである燃焼ガスと、燃料電池スタック101で使用されなかった水素リッチな燃料ガスと、空気とが送られ、バーナ107が燃焼する。
【0008】
また、改質器103に供給される原料ガスは、発電に必要な所定流量になるように、原料ガス流量計109の検知により制御部111からの指示によって原料ガス流量調整弁110の開度調整を行っている。
【特許文献1】特開2003−121602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成の燃料電池において、ガス昇圧装置は通常の気体用ポン
プとは異なり、可燃性のガスを運ぶので、外部にガスが洩れることがない構成としなければならない。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、外部にガスが洩れることのない燃料電池のガス昇圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために本発明の燃料電池のガス昇圧装置は、所定のガスを供給する原料供給路と、前記ガスの圧力を検知する圧力検知手段と、前記ガスの流量を検知する流量検知手段と、前記ガスの温度を検知する温度検知手段と、前記圧力検知手段で検知された圧力、前記流量検知手段で検知された流量、前記温度検知手段で検知された温度に基づいて前記原料供給路から供給される前記ガスの流量を制御する制御手段と、前記ガスを昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧されたガスを改質して燃料にする燃料生成手段とを備えた燃料電池において、前記昇圧手段を金属ケースで囲んだことを特徴とするものである。これによって、外部に原料ガスが洩れることが無くなる。
【発明の効果】
【0012】
外部にガスが洩れることのない燃料電池のガス昇圧装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、所定のガスを供給する原料供給路と、前記ガスの圧力を検知する圧力検知手段と、前記ガスの流量を検知する流量検知手段と、前記ガスの温度を検知する温度検知手段と、前記圧力検知手段で検知された圧力、前記流量検知手段で検知された流量、前記温度検知手段で検知された温度に基づいて前記原料供給路から供給される前記ガスの流量を制御する制御手段と、前記ガスを昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧されたガスを改質して燃料にする燃料生成手段とを備えた燃料電池において、前記昇圧手段を金属ケースで囲んだことにより、外部に可燃性のガスが洩れることがなくなり、火気にさらされることが生じても、内部の可燃性のガスへの類焼は回避できる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明において、昇圧手段にダイヤフラム方式を用いたことにより、ピストン方式、プランジャ方式に比べ低入力化が図れる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、金属ケースと昇圧手段との間に密閉された空間が存在することにより、昇圧手段の駆動により生じる振動を吸収し、騒音を低減することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3の発明において、金属ケースに圧力検査用の孔を設けたことにより、孔から圧力をかけ、その変動を見ることにより定性的のみならず、定量的に金属ケースからのガス漏れを調べることができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第1〜4の発明において、金属ケースが絞り加工されたことにより、低コスト化が図れ、量産が可能となるので、個々の装置としてのばらつきも小さくなる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態の燃料電池の構成は、図7に示した従来の燃料電池の構成と同じであるので、同じ部位については、同じ記号を付して説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施の形態における昇圧手段である昇圧ポンプの正面図である。図2は、昇圧部がプランジャ方式である昇圧ポンプの構成図、図3は、昇圧部がダイヤフラム方式である昇圧ポンプの構成図である。図1において、吸入口13より吸込まれた原料ガスは昇圧ポンプ108の昇圧作用により昇圧されて吐出口15より吐出される。昇圧ポンプ108は、金属ケース16と金属蓋17で囲まれている。この構成により、可燃性のガスが洩れることが無くなり、何らかの要因で火気にさらされることが生じても、内部の可燃性のガスへの類焼は回避できる。
【0021】
また、図2において、プランジャ20の駆動により昇圧するタイプの昇圧ポンプ108と、図3において、ダイヤフラム21の駆動により昇圧するタイプの昇圧ポンプ108がある。プランジャ20の材質は、金属又は硬い樹脂であることが一般的であり、ダイヤフラム21の材質は、ゴムであることが一般的であるが、どちらのタイプであっても基本構成は同じであり、機能部の往復運動によって流体の吸入、吐出を行っている。しかしながら、ダイヤフラム方式を用いる方が、低入力すなわち少ない電力でプランジャ方式と同じ仕事量が得られるので、ダイヤフラム方式の方が望ましい。
【0022】
また、図2、図3に示すように、昇圧ポンプ108と金属ケース16の間には、防振ゴム18が配設され、防振ゴム18で部分的に昇圧ポンプ108を支持している。これは、昇圧ポンプ108の振動が金属ケース16に伝わることを低減するためのものである。更に、金属ケース16の外側には金属ケース自体の振動を燃料電池システム事態に伝えないため防振ゴム19が配設されており、二重の防振構造により、昇圧ポンプの振動の大幅な低減が可能となる。また、騒音に対しても、金属ケース16で覆うことにより低減が可能となる。
【0023】
また、図4は、本実施の形態における昇圧ポンプの構成図である。図4において、昇圧ポンプ108と金属ケース16との間には空間22が存在している。この空間によって、さらに、昇圧ポンプ自体の駆動によって生じる振動を吸収し、騒音をも低減することができる。
【0024】
また、図5は、本実施の形態における昇圧ポンプの構成図である。図5において、金属ケース16には、圧力検査用の孔23を設けている。この孔23を設けることで、ガスが洩れているかどうかをチェックすることができる。
【0025】
また、図6は、本実施の形態における昇圧ポンプの斜視図である。図6において、昇圧ポンプ108は、絞り加工で形成された金属ケース16で囲んだ構成となっており、絞り加工で金属ケース16を生産することで、大量かつ低コストでの量産が可能となり、また、個々の装置のバラつきも小さくなる。
【0026】
以上のように、本実施の形態においては、所定のガスを供給する原料供給路と、前記ガスの圧力を検知する圧力検知手段と、前記ガスの流量を検知する流量検知手段と、前記ガスの温度を検知する温度検知手段と、前記圧力検知手段で検知された圧力、前記流量検知手段で検知された流量、前記温度検知手段で検知された温度に基づいて前記原料供給路から供給される前記ガスの流量を制御する制御手段と、前記ガスを昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧されたガスを改質して燃料にする燃料生成手段とを備えた燃料電池において、前記昇圧手段を金属ケースで囲んだことにより、外部に可燃性のガスが洩れることがなくなり、火気にさらされることが生じても、内部の可燃性のガスへの類焼は回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明に係る燃料電池のガス昇圧装置は、燃料をもらすことなく、安全な燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における昇圧ポンプの正面図
【図2】同実施の形態における昇圧部がプランジャ方式である昇圧ポンプの構成図
【図3】同実施の形態における昇圧部がダイヤフラム方式である昇圧ポンプの構成図
【図4】同実施の形態における昇圧ポンプの構成図
【図5】同実施の形態における昇圧ポンプの構成図
【図6】同実施の形態における昇圧ポンプの斜視図
【図7】従来の燃料電池を示す構成図
【符号の説明】
【0029】
13 吸入口
15 吐出口
16 金属ケース
17 金属蓋
18 防振ゴム
19 防振ゴム
20 プランジャ
21 ダイヤフラム
22 空間
23 孔
101 燃料電池スタック
102 蒸気発生部
103 改質器
104 CO変成部
105 CO除去部
107 バーナ
108 昇圧ポンプ
109 原料ガス流量計
110 原料ガス流量調整弁
111 制御部
112 空気ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のガスを供給する原料供給路と、前記ガスの圧力を検知する圧力検知手段と、前記ガスの流量を検知する流量検知手段と、前記ガスの温度を検知する温度検知手段と、前記圧力検知手段で検知された圧力、前記流量検知手段で検知された流量、前記温度検知手段で検知された温度に基づいて前記原料供給路から供給される前記ガスの流量を制御する制御手段と、前記ガスを昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段で昇圧されたガスを改質して燃料にする燃料生成手段とを備えた燃料電池において、前記昇圧手段を金属ケースで囲んだことを特徴とする燃料電池のガス昇圧装置。
【請求項2】
昇圧手段にダイヤフラム方式を用いたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池のガス昇圧装置。
【請求項3】
金属ケースと昇圧手段との間に密閉された空間が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池のガス昇圧装置。
【請求項4】
金属ケースに圧力検査用の孔を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池のガス昇圧装置。
【請求項5】
金属ケースが絞り加工されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池のガス昇圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate