説明

燃料電池のGDL電極層を製造する際の炭素コーティングの微小ひび割れの制御

【課題】 燃料電池またはバッテリーのガス拡散層(GDL)用のコーティングを提供すること。
【解決手段】 このコーティングは、カーボン・ブラック、フルオロポリマー、および黒鉛粒子および炭素粒子のうちの一方の分散液を含有する。粒子のサイズは、カーボン・ブラックの粒子のサイズより実質上大きく、コーティングに構造上の統合性を与え、そのひび割れを最小限度に低減する。カーボン・ブラックの粒子のサイズは、約13〜95nmの範囲内にある。炭素粒子は、チョップト・カーボン・ファイバ、炭素または黒鉛のフレークまたは小プレート、カーボン・ナノチューブ、カーボン・フィブリル、またはカーボン・ホイスカーであってもよい。炭素粒子は、大きな長さ/直径比を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素または黒鉛粒子を含む燃料電池またはバッテリーのガス拡散層または電極の表面に塗布するコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
織っていないまたは織った形の炭素繊維であってもよい燃料電池またはバッテリーのガス拡散層(「GDL」)は、一般的に、燃料電池内のGDLと膜またはバイポーラ・プレートとの間に電気接点を形成するために、1つまたはそれ以上の側面をある物質と一緒にコーティングされる。このようなコーティングは、カーボン・ブラック(アセチレン・ブラックまたは無定型ブラックとも呼ばれる)およびテフロン(登録商標)のようなフルオロポリマーの混合物から製造することができる。強化導電性のような所望の特性を制御し、触媒をサポートするための種々のサイズの粒子のような他の材料も含むことができる。
【0003】
燃料電池またはバッテリーの燃料効率を高めるために、コーティングのサイズおよび多孔性を制御しなければならない。多孔性は、触媒および膜への燃料の流れを制御するもう1つの経路の形成、膜の近くの水の量の調整、触媒自身のサポートを含む種々の機能に影響を与える。
【0004】
コーティングは、固体の含有量の少ない水性分散液により形成される。大量の流体を除去する場合には、ひび割れ(「泥ひび割れ」)が、GDLの表面上のコーティングで頻繁に発生する。典型的なひび割れは、裸の基板を露出している硬化膜の破損部分からなるコーティングの欠陥を含む。このコーティングの欠陥は、通常、コーティングが非常に脆いか、または基板への接着力が非常に弱い場合に、コーティングした基板の製造中に発生する。GDL基板の表面上にもっと厚いコーティングを行う場合には、ひび割れはもっと顕著になる。ひび割れの程度がひどくなればなるほど、その機能のうちのいくつかを行うためのGDLの効果が低減する。図1は、GDLの表面のコーティングのこのようなひび割れの一例を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バインダの増量、乾燥速度の制御、連続的な薄いパス・コーティングおよび固体の増量のようなコーティングのひび割れを除去するための方法が従来使用されてきたが成功しなかった。バインダを増量しても、この用途の場合ひび割れの防止に効果がなかった。当然効果があると思われる乾燥速度を実行するのは実際には不可能であった。パス・コーティングをあまり薄くすることもできなかったし、固体を増量することもできなかった。何故なら、そうするとコーティング・プロセスが阻害されるからである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ひび割れを最小限度に低減する燃料電池またはバッテリーのガス拡散層または電極に対するコーティングを提供する。このコーティングは、カーボン・ブラック、フルオロポリマー、および黒鉛粒子および炭素粒子のうちの一方の水性分散液からなる。ほとんどの粒子のサイズは、例えば、約13〜95nmの範囲内のカーボン・ブラックの粒子のサイズより実質上大きい。炭素粒子は、切断またはチョップト・カーボン・ファイバ(chopped carbon fiber)、炭素または黒鉛のフレークまたは小プレート(platelet)、カーボン・ナノチューブ、カーボン・フィブリル、またはカーボン・ホイスカーであってもよい。
【0007】
炭素粒子の長さ対直径比は大きくてもよい。
【0008】
対応する構成要素が同じ参照番号で示してある添付の図面を参照しながら、図の実施形態の下記の詳細な説明を読めば、本発明の他の特徴および利点を理解することができるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の場合、水性分散液が、バッテリーまたは燃料電池(メタノール・タイプの燃料電池など)のGDLの基板にコーティングとして塗布される。この分散液は、カーボン・ブラック、フルオロポリマー、および炭素または黒鉛粒子を含むことができ、界面活性剤を含むこともできる。カーボン・ブラックに対するフルオロポリマーの比率は、重量で5/95〜70/30の範囲内に入る。粒子は、全コーティング重量の25%〜70%を含むことができる。これらの粒子を追加すると、構造上の統合性を高め、粘度を増大しないで分散液の固体の含有量を増大することができる。その結果、本発明のコーティングはGDLのコーティング層のひび割れを最小限度まで低減する。
【0010】
カーボン・ブラックは、天然の炭化水素を熱分解することにより作られた黒くて無定型な炭素顔料である。一般的に、3つの異なるタイプのカーボン・ブラックがある(すなわち、ファーネス・ブラック、チャネル・ブラックおよびランプ・ブラックである)。その公称純度は、ほぼ98.5%〜99.6%である。カーボン・ブラック粒子のサイズは、13nm〜95nm程度である。カーボン・ブラックは球形のものであってもよい。
【0011】
大部分の粒子のサイズは、カーボン・ブラックの粒子のサイズより実質上大きくてもよい。粒子は、その直径より大きい長さを有することができる。直径に対する長さの比率は1.5〜10000の範囲内である。粒子は、切断した炭素または黒鉛の繊維、炭素または黒鉛のフレークまたは小プレート、炭素または黒鉛のナノチューブ、炭素または黒鉛のフィブリル、または炭素または黒鉛のホイスカーのような短い長さの繊維を含むことができる。繊維の直径は6〜20ミクロンであり、繊維の長さは10〜500ミクロンである。フレークまたは小プレートの長さは1〜500ミクロンである。ナノチューブ、フィブリルおよびホイスカーの直径は5〜100nmであり、長さは5から数百ミクロンである。コーティングの化合物としてこれらの繊維を導入すると、乾燥中の泥ひび割れは最小限度に低減する。
【0012】
図2は、チョップト・カーボン・ファイバを含むGDLの表面上のコーティングを示す。この図を見れば分かるように、コーティングには目に見えるひび割れは認められない。
【0013】
コーティングでのひび割れの発生を防止する他に、粒子を導入するとコーティングの導電性を改善することができる。
【0014】
GDL基板は、長さが短くてもよい繊維状炭素プリフォーム、紙、一方向テープ、編んだものを含む織ったおよび織っていない組織(織布及び不織布)、およびスティッチ・ボンデド多軸組織から作ることができる。コーティングは、ディップ・コーティング、ドクター・ブレード、ナイフ、スプレー、ロールまたはスロットのような種々の技術で塗布することができる。
【0015】
電極は、隣接するセル内に挿入することができる1つの曲がった片であってもよい。別の方法としては、電極を2つの片から作り、2つの接続した片が1つの電極として機能するように接続することもできる。イオンが膜を通過することができるように、電極間に膜を設けることができる。
【0016】
図3は、燃料電池100の略図である。燃料電池100は、とりわけ、図3に示すように配置されている、電流収集装置102、ガス通路104、GDL105、触媒層106、およびプロトン交換膜107を含むことができる。
【0017】
それ故、粒子を導入すると、GDL基板に対して調製したコーティングのひび割れの量を有意に低減することができる。これらの粒子により、300g/mまでの全コーティング量を最小の数のひび割れで塗布することができる。メタノール燃料電池は、水素を燃料とする燃料電池より厚いコーティングを必要とするので、上記混合物は、メタノール燃料電池の場合に特に有利である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態およびその変形形態について詳細に説明してきたが、本発明は、これらの実施形態そのものおよびその変形形態に限定されないこと、および当業者なら特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、他の種々の修正および変更を行うことができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ひび割れを有するガス拡散層組織上のコーティングの図面である。
【図2】本発明のある実施形態によるガス拡散層組織上のコーティングの図面である。
【図3】本発明のコーティングを塗布することができる燃料電池の一例の図面である。
【符号の説明】
【0020】
100 燃料電池
102 電流収集装置
104 ガス通路
105 GDL
106 触媒層
107 プロトン交換膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池またはバッテリーのガス拡散層のためのコーティングであって、カーボン・ブラック、フルオロポリマー、および黒鉛または炭素粒子のうちの一方を含み、前記粒子の一部が、前記カーボン・ブラックよりサイズが実質上大きく、前記コーティングに構造上の統合性を与え、そのひび割れを最小限度に低減するコーティング。
【請求項2】
カーボン・ブラックの粒子のサイズが、約13〜95nmの範囲内にある、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記粒子がチョップト・カーボン・ファイバである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
前記粒子が炭素または黒鉛のフレークまたは小プレートである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項5】
前記粒子がカーボン・ナノチューブである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項6】
前記粒子がカーボン・フィブリルである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項7】
前記粒子がカーボン・ホイスカーである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項8】
前記粒子が大きな長さ/直径比を有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項9】
燃料電池またはバッテリーのGDL基板をコーティングするための方法であって、
カーボン・ブラック、フルオロポリマー、および黒鉛または炭素粒子のうちの一方の分散液を調製するステップと、
前記分散液を前記基板をコーティングするために前記基板に塗布するステップとを含み、
前記粒子が、前記カーボン・ブラックよりサイズが実質上大きく、前記コーティングに構造上の統合性を与え、そのひび割れを最小限度に低減する方法。
【請求項10】
カーボン・ブラックの粒子のサイズが、約13〜95nmの範囲内にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子がチョップト・カーボン・ファイバである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子が炭素または黒鉛のフレークまたは小プレートである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子がカーボン・ナノチューブである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子がカーボン・フィブリルである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子がカーボン・ホイスカーである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子が大きな長さ/直径比を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
燃料電池またはバッテリーで使用するための物品であって、前記物品が、カーボン・ブラック、フルオロポリマー、および黒鉛または炭素粒子のうちの一方を含む分散液でコーティングされている基板を有するGDLであり、前記粒子の一部が、前記カーボン・ブラックよりサイズが実質上大きく、前記コーティングに構造上の統合性を与え、そのひび割れを最小限度に低減する物品。
【請求項18】
カーボン・ブラックの粒子のサイズが、約13〜95nmの範囲内にある、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記粒子が、チョップト・カーボン・ファイバである、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記粒子が炭素または黒鉛のフレークまたは小プレートである、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
前記粒子がカーボン・ナノチューブである、請求項17に記載の物品。
【請求項22】
前記粒子がカーボン・フィブリルである、請求項17に記載の物品。
【請求項23】
前記粒子がカーボン・ホイスカーである、請求項17に記載の物品。
【請求項24】
前記粒子が大きな長さ/直径比を有する、請求項17に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−179263(P2006−179263A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370494(P2004−370494)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(501196677)アルバニー インターナショナル テクニウェイブ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】