説明

燃料電池コジェネレーションシステムおよび燃料電池制御方法

【課題】発電効率の低下やコストの上昇を抑えつつ、停止中にカソード極もしくはアノード極へ空気などが流入することを防止できるようにすること。
【解決手段】実施形態の燃料電池コジェネレーションシステムは、燃料電池本体1のカソード極3に冷却水の一部を供給するための冷却水供給ライン12と、冷却水供給ライン12による冷却水の供給と遮断と開閉動作により切り替えることが可能な第1の弁13と、カソード極3に供給した冷却水を排出するための冷却水排出ライン14と、冷却水排出ライン14による冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第2の弁15とを具備し、システムの運転停止の際に、第1の弁13を開くとともに第2の弁15を閉じ、冷却水供給ライン12を通じてカソード極3に冷却水を供給することによりカソード極3を冷却水で満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池コジェネレーションシステムおよび燃料電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば家庭用の燃料電池コジェネレーションシステムでは、都市ガスあるいはLPGを原燃料として水素に改質し、改質した水素と空気中の酸素とを反応させて発生した電力及び排熱を利用する。運転停止時に燃料電池のアノード或いはカソード側に空気が存在すると、高電位となり、電池触媒の劣化が発生する。また、アノード側に空気が滞留している状態でアノード燃料である水素が流入すると、局部的に高電位な状態が発生し、電池本体に不可逆的なダメージが発生する可能性がある。そこで、アノード極の入出口およびカソード極の入出口にそれぞれ遮断弁を設け、運転停止中に発電直前までアノード極及びカソード極に空気が流入しない構成をとることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−47300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成ではアノード極の入出口およびカソード極の入出口にそれぞれ遮断弁を設けることが必要である。また、運転時に遮断弁を開くが、そのときに遮断弁を燃料又は空気が通過する際の圧力損失(以下「圧損」と称す。)は無視できず、結果として、アノード遮断弁での圧損により燃料供給機の動力が増加し、また、カソード遮断弁での圧損によりカソード空気供給機の動力が増加する。いずれも発電効率の低下を引き起こす。また、前述の遮断弁は、電源が停止した際に空気などのガスが流入することを防止するため、通常は無電源時に閉とする。すなわち、燃料供給ライン上に設定された2つの遮断弁を無電源時に閉とするため、燃料供給ラインの圧力上昇による破損を防止する必要があり、そのために燃料入口からアノード極入口までの間に安全弁を設置する必要がある。
【0005】
このように従来の構成では、遮断弁設置による発電効率の低下や、安全弁などの機器の追加による燃料電池コジェネレーションシステムのコスト上昇が発生する。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、発電効率の低下やコストの上昇を抑えつつ、運転停止中にカソード極もしくはアノード極へ空気などが流入することを防止することが可能な燃料電池コジェネレーションシステムおよび燃料電池制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の燃料電池コジェネレーションシステムは、燃料電池本体のカソード極に冷却水の一部を供給するための冷却水供給ラインと、前記冷却水供給ラインによる冷却水の供給と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第1の弁と、前記カソード極に供給した冷却水を排出するための冷却水排出ラインと、前記冷却水排出ラインによる冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第2の弁とを具備し、運転停止の際に、前記第2の弁を閉じた状態で前記第1の弁を開き、前記冷却水供給ラインを通じて前記カソード極に冷却水を供給することにより前記カソード極を冷却水で満たすことを特徴とする。
【0008】
また、実施形態の燃料電池コジェネレーションシステムは、燃料電池本体のアノード極に冷却水の一部を供給するための冷却水供給ラインと、前記冷却水供給ラインによる冷却水の供給と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第1の弁と、前記アノード極に供給した冷却水を排出するための冷却水排出ラインと、前記冷却水排出ラインによる冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第2の弁とを具備し、運転停止の際に、前記第2の弁を閉じた状態で前記第1の弁を開き、前記冷却水供給ラインを通じて前記アノード極に冷却水を供給することにより前記アノード極を冷却水で満たすことを特徴とする。
【0009】
また、実施形態の燃料電池制御方法は、カソード極およびアノード極を有する燃料電池本体を備えた燃料電池コジェネレーションシステムに適用される燃料電池制御方法であって、運転停止の際に、冷却水供給ラインから冷却水の一部を前記カソード極もしくはアノード極に流入させ、当該カソード極もしくはアノード極を冷却水で満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発電効率の低下やコストの上昇を抑えつつ、運転停止中にカソード極もしくはアノード極へ空気などが流入することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る燃料電池コジェネレーションシステムの主要部の構成を示す概略構成図。
【図2】第2の実施形態に係る燃料電池コジェネレーションシステムの主要部の構成を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池コジェネレーションシステムの主要部の構成を示す概略構成図である。
【0014】
なお、図中の矢印Gは、重力の方向を示す。すなわち、図中の上側に記載されている要素は比較的高い位置に存在し、図中の下側に記載されている要素は比較的低い位置に存在することを表している。
【0015】
この第1の実施形態に係る燃料電池コジェネレーションシステムは、図1に示すように、燃料電池本体1、アノード極2、カソード極3、冷却水板4、アノード極入口遮断弁5、アノード極出口遮断弁6、冷却水ポンプ9、冷却水タンク10、冷却水配管11、カソード極冷却水供給ライン(冷却水バイパスライン)12、カソード極冷却水供給遮断弁13、カソード極冷却水排出ライン14、カソード極冷却水排出遮断弁15、カソード極冷却水水位計20、および制御部30を有する。
【0016】
燃料電池本体1は、アノード極2、カソード極3、および冷却水板4から構成される。アノード極2、カソード極3、および冷却水板4は、それぞれ内部に種類の異なる多孔質体を用いて構成されており、供給される冷却水を吸収したり、いったん吸収した冷却水を脱水したりすることができる。
【0017】
アノード極2は、アノード極入口から供給される水素を消費する。消費しきれなかった水素は、アノード極出口から排出される。
【0018】
カソード極3は、カソード極入口から供給される空気(酸素)を消費する。消費しきれなかった空気(酸素)は、カソード極出口から排出される。
【0019】
冷却水板4は、供給される冷却水を取り込み、燃料電池本体1での発電の際に発する排熱を回収した冷却水を排出する。
【0020】
アノード極入口遮断弁5は、システムの運転中は開いており、水素をアノード極2へ供給するが、システムの運転停止の際には閉じ、アノード極2へ供給する水素を遮断するとともに、アノード極2に外部の空気などが流入するのを防ぐ。
【0021】
アノード極出口遮断弁6は、システムの運転中は開いており、アノード極出口から消費しきれなかった水素を排出するが、システムの運転停止の際には閉じ、アノード極2から排出する水素を遮断するとともに、アノード極2に外部の空気などが流入するのを防ぐ。
【0022】
冷却水ポンプ9は、冷却水タンク10の冷却水を燃料電池本体1の要部へ供給して再び冷却水タンク10に回収するための動力を発生する。これにより、基本的には冷却水タンク10の冷却水が冷却水配管11を通じて冷却水板4へ供給されて再び冷却水タンク10に戻る。さらに、システムの運転停止の際には、当該冷却水の一部がカソード極冷却水供給ライン12を通じてカソード極3に供給されてカソード極3の内部(多孔質体)が冷却水で満たされる。また、システムの運転開始の際には、カソード極3を満たした冷却水が冷却水タンク10に戻る。
【0023】
冷却水タンク10は、冷却水板4から排出される冷却水を回収するとともに、カソード極3から排出される冷却水を回収する。
【0024】
冷却水配管11は、冷却水ポンプ9によって冷却水タンク10から送られてくる冷却水を冷却水板4へ供給する。
【0025】
カソード極冷却水供給ライン12は、冷却水配管11の所定の位置から分岐し、カソード極冷却水供給遮断弁13を介してカソード極出口側の空気排出ライン上の所定の位置へと繋がるように設けられた配管であり、カソード極冷却水供給遮断弁13が開いており且つカソード極冷却水排出遮断弁15が閉じているときに、冷却水ポンプ9により冷却水タンク10から送られてくる冷却水の一部を取り込み、取り込んだ冷却水をカソード極出口側の空気排出ラインを通じてカソード極3の内部へ供給する。なお、このカソード極冷却水供給ライン12を、カソード極出口側の空気排出ライン上の所定の位置へ繋がるようにする代わりに、カソード極入口側の空気供給ライン上の所定の位置へ繋がるようにしてもよい。あるいは、カソード極冷却水供給ライン12を、カソード極出口側の空気排出ライン上の所定の位置へ繋がるとともに、カソード極入口側の空気供給ライン上の所定の位置へも繋がるようにしてもよい。
【0026】
カソード極冷却水供給遮断弁13は、カソード極冷却水供給ライン12に設けられた開閉弁であり、カソード極冷却水供給ライン12による冷却水の供給と遮断とを開閉動作により切り替えることができる。
【0027】
カソード極冷却水排出ライン14は、カソード極出口側の空気排出ライン上の所定の位置からカソード極冷却水排出遮断弁15を介して冷却水タンク10へと繋がるように設けられた配管であり、カソード極冷却水供給遮断弁13が閉じており且つカソード極冷却水排出遮断弁15が開いているときに、カソード極3に供給された冷却水をカソード極出口側の空気排出ラインを通じて冷却水タンク10へ排出する。
【0028】
カソード極冷却水排出遮断弁15は、カソード極冷却水排出ライン14に設けられた開閉弁であり、カソード極冷却水排出ライン14による冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることができる。
【0029】
カソード極冷却水水位計20は、例えばカソード極出口側の空気排出ライン上の所定の位置に設けられ、カソード極3の内部(多孔質体)に供給される冷却水の水位を計測し、一定の水位に達したときにその旨を示す信号を発生する。なお、このカソード極冷却水水位計20を、カソード極出口側の空気排出ライン上の所定の位置に設ける代わりに、カソード極入口側の空気供給ライン上の所定の位置に設けるようにしてもよい。いずれの場合も、カソード極冷却水水位計20は、カソード極入口の位置と同等の高さの位置、もしくはこの高さよりも少し高い位置に配置することが望ましい。このようにすると、空気排出ラインの一部および空気供給ラインの一部を含むカソード極3全体が冷却水で満たされてカソード極3に外部の空気などが流入しない状態を検出することができる。カソード極冷却水水位計20が検出した結果を示す信号は、制御部30へ送られる。
【0030】
制御部30は、カソード極冷却水水位計20から送られてくる信号などを取り込み、各種の弁5,6,13,15の開閉制御や冷却水ポンプ9の駆動制御などを含む各種の制御を行う。
【0031】
上記構成において、システムの運転中、制御部30はカソード極冷却水供給遮断弁13を閉じるとともにカソード極冷却水排出遮断弁15を閉じている。
【0032】
システムの運転停止の際には、制御部30は、カソード極冷却水排出遮断弁15を閉じた状態でカソード極冷却水供給遮断弁13を開き、冷却水ポンプ9を暫く動作させることにより、カソード極冷却水供給ライン12およびカソード極出口側の空気排出ラインを通じてカソード極3に冷却水を供給して、カソード極3全体を冷却水で満たすための制御を行う。なお、カソード極3に流入した冷却水は、冷却水板4に浸透し、さらにアノード極2にも浸透し、電力電池本体1内部の水位が徐々に上昇する。制御部30は、カソード極冷却水水位計20が一定の水位を検出したときに、冷却水ポンプ9を停止させ、カソード極冷却水供給遮断弁13を閉じる。
【0033】
システムの運転開始の際には、制御部30は、カソード極冷却水供給遮断弁13を閉じた状態でカソード極冷却水排出遮断弁15を開き、カソード極3に供給した冷却水をカソード極出口側の空気排出ラインおよびカソード極冷却水排出ライン14を通じて冷却水タンク10へ排出するための制御を行い、燃料電池本体1から冷却水がすべて排出された後に、カソード極冷却水排出遮断弁15を閉じ、システムの通常運転を実施する。
【0034】
なお、本実施形態では、カソード極3全体が冷却水で満たされた状態をカソード極冷却水水位計20を用いて検出する場合を例示したが、これを用いる代わりに、タイマーを用いて検出するようにしてもよい。この場合、カソード極3への冷却水の供給を開始してから一定時間が経過した時点で、カソード極3全体が冷却水で満たされたものとみなし、その旨の信号を発生するようにする。
【0035】
この第1の実施形態によれば、従来においてカソード極入口側の空気供給ライン上に設けていたカソード極入口遮断弁やカソード極出口側の空気排出ライン上に設けていたカソード極出口遮断弁を設置することなく、冷却水バイパスラインからの冷却水でカソードを安全で且つ十分な水位にて水封することにより、カソード極に外部の空気などが流入することを防止することができる。これにより、従来の遮断弁による圧力損失の問題を解消し、かつ燃料電池本体の触媒の劣化や不可逆的なダメージを防ぐことができる。
【0036】
また、従来はカソード極に空気を供給する流量や供給した空気を排出する流量が大きいため、カソード極入口側の空気供給ライン上に設けていたカソード極入口遮断弁やカソード極出口側の空気排出ライン上に設けていたカソード極出口遮断弁には、燃料電池に使用しているその他遮断弁と比較して大型のものが使用されていたが、この第1の実施形態によればカソード極3に冷却水を供給する流量や供給した冷却水を排出する流量は小さいため、従来のカソード極入口遮断弁やカソード極出口遮断弁と比較して小型の弁13,15を適用することができ、コストを削減することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る燃料電池コジェネレーションシステムの主要部の構成を示す概略構成図である。なお、前述の第1の実施形態(図1)と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、前述の第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0038】
この第2の実施形態に係る燃料電池コジェネレーションシステムは、図2に示すように、前述の第1の実施形態(図1)に示した各種要素に加えて、アノード極冷却水供給ライン16、アノード極冷却水供給遮断弁17、アノード極冷却水排出ライン18、アノード冷却水排出遮断弁19、およびアノード極冷却水水位計21をさらに有する。
【0039】
アノード極冷却水供給ライン16は、カソード極冷却水供給ライン12の所定の位置から分岐し、アノード極冷却水供給遮断弁17を介してアノード極出口側の水素排出ライン上の所定の位置へと繋がるように設けられた配管であり、アノード極冷却水供給遮断弁13およびアノード極冷却水供給遮断弁17が開いており且つアノード極冷却水排出遮断弁15およびアノード冷却水排出遮断弁19が閉じているときに、冷却水ポンプ9により冷却水タンク10からカソード極冷却水供給ライン12を通じて送られてくる冷却水の一部を取り込み、取り込んだ冷却水をアノード極出口側の水素排出ラインを通じてアノード極2の内部へ供給する。なお、このアノード極冷却水供給ライン16を、アノード極出口側の水素排出ライン上の所定の位置へ繋がるようにする代わりに、アノード極入口側の水素供給ライン上の所定の位置へ繋がるようにしてもよい。あるいは、アノード極冷却水供給ライン16を、アノード極出口側の水素排出ライン上の所定の位置へ繋がるとともに、アノード極入口側の水素供給ライン上の所定の位置へも繋がるようにしてもよい。
【0040】
アノード極冷却水供給遮断弁17は、アノード極冷却水供給ライン16に設けられた開閉弁であり、アノード極冷却水供給ライン16による冷却水の供給と遮断とを開閉動作により切り替えることができる。
【0041】
アノード極冷却水排出ライン18は、アノード極出口側の水素排出ライン上の所定の位置からアノード冷却水排出遮断弁19を介して冷却水タンク10へと繋がるように設けられた配管であり、アノード極冷却水供給遮断弁17が閉じており且つアノード冷却水排出遮断弁19が開いているときに、アノード2に供給された冷却水をアノード極出口側の水素排出ラインを通じて冷却水タンク10へ排出する。
【0042】
アノード冷却水排出遮断弁19は、アノード極冷却水排出ライン18に設けられた開閉弁であり、アノード極冷却水排出ライン18による冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることができる。
【0043】
アノード極冷却水水位計21は、例えばアノード極出口側の水素排出ライン上の所定の位置に設けられ、アノード極2の内部(多孔質体)に供給される冷却水の水位を計測し、一定の水位に達したときにその旨を示す信号を発生する。なお、このアノード極冷却水水位計21を、アノード極出口側の水素排出ライン上の所定の位置に設ける代わりに、アノード極入口側の水素供給ライン上の所定の位置に設けるようにしてもよい。いずれの場合も、アノード極冷却水水位計21は、アノード極入口の位置と同等の高さの位置、もしくはこの高さよりも少し高い位置に配置することが望ましい。このようにすると、水素排出ラインの一部および水素供給ラインの一部を含むアノード極2全体が冷却水で満たされてアノード極2に外部の空気などが流入しない状態を検出することができる。アノード極冷却水水位計21が検出した結果を示す信号は、制御部30へ送られる。
【0044】
制御部30は、カソード極冷却水水位計20およびアノード極冷却水水位計21から送られてくる信号などを取り込み、各種の弁13,15,17,19の開閉制御や冷却水ポンプ9の駆動制御などを含む各種の制御を行う。
【0045】
上記構成において、システムの運転中、制御部30はカソード極冷却水供給遮断弁13およびアノード極冷却水供給遮断弁17を閉じるとともにカソード極冷却水排出遮断弁15およびアノード冷却水排出遮断弁19を閉じている。
【0046】
システムの運転停止の際には、制御部30は、カソード極冷却水排出遮断弁15およびアノード冷却水排出遮断弁19を閉じた状態でカソード極冷却水供給遮断弁13およびアノード極冷却水供給遮断弁17を開き、冷却水ポンプ9を暫く動作させることにより、カソード極冷却水供給ライン12およびカソード極出口側の空気排出ラインを通じてカソード極3に冷却水を供給して、カソード極3全体を冷却水で満たすとともに、アノード極冷却水供給ライン16およびアノード極出口側の水素排出ラインを通じてアノード2に冷却水を供給して、アノード2全体を冷却水で満たすための制御を行う。なお、カソード極3に流入した冷却水およびアノード2に流入した冷却水は、冷却水板4を通じて浸透し合い、電力電池本体1内部の水位が徐々に上昇する。制御部30は、カソード極冷却水水位計20が一定の水位を検出し、且つ、アノード極冷却水水位計21が一定の水位を検出したときに、冷却水ポンプ9を停止させ、カソード極冷却水供給遮断弁13を閉じるとともにおよびアノード極冷却水供給遮断弁17を閉じる。
【0047】
システムの運転開始の際には、制御部30は、カソード極冷却水供給遮断弁13およびアノード極冷却水供給遮断弁17を閉じた状態でカソード極冷却水排出遮断弁15およびアノード冷却水排出遮断弁19を開き、カソード極3およびアノード2に供給した冷却水をカソード極出口側の空気排出ラインおよびカソード極冷却水排出ライン14を通じて冷却水タンク10へ排出するとともに、アノード極出口側の水素排出ラインおよびアノード極冷却水排出ライン18を通じて冷却水タンク10へ排出するための制御を行い、燃料電池本体1から冷却水がすべて排出された後に、カソード極冷却水排出遮断弁15およびアノード冷却水排出遮断弁19を閉じ、システムの通常運転を実施する。
【0048】
なお、本実施形態においても、カソード極冷却水水位計20やアノード極冷却水水位計21を用いる代わりに、タイマーを用いてもよい。この場合、カソード極3およびアノード極2への冷却水の供給を開始してから一定時間が経過した時点で、燃料電池本体1全体が冷却水で満たされたものとみなし、その旨の信号を発生するようにする。
【0049】
この第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果が得られるほか、従来においてアノード極入口側の水素供給ライン上に設けていたアノード極入口遮断弁やアノード極出口側の水素排出ライン上に設けていたアノード極出口遮断弁を設置することなく、冷却水バイパスラインからの冷却水でアノードを安全で且つ十分な水位にて水封することにより、アノード極に外部の空気などが流入することを防止することができる。これにより、より一層、従来の遮断弁による圧力損失の問題を解消し、かつ燃料電池本体の触媒の劣化や不可逆的なダメージを防ぐことができる。
【0050】
また、従来のようにアノード極入口遮断弁を設ける必要がなくなったため、そのための安全弁も設ける必要がなくなり、小型の弁17,19を適用することができ、コストを削減することができる。その結果、全体として安価な燃料電池コジェネレーションシステムを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…燃料電池本体、2…アノード極、3…カソード極、4…冷却水板、5…アノード極入口遮断弁、6…アノード極出口遮断弁、9…冷却水ポンプ、10…冷却水タンク、11…冷却水配管、12…カソード極冷却水供給ライン(冷却水バイパスライン)、13…カソード極冷却水供給遮断弁、14…カソード極冷却水排出ライン、15…カソード極冷却水排出遮断弁、16…アノード極冷却水供給ライン、17…アノード極冷却水供給遮断弁、18…アノード極冷却水排出ライン、19…アノード冷却水排出遮断弁、20…カソード極冷却水水位計、21…アノード極冷却水水位計、30…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池本体のカソード極に冷却水の一部を供給するための冷却水供給ラインと、前記冷却水供給ラインによる冷却水の供給と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第1の弁と、前記カソード極に供給した冷却水を排出するための冷却水排出ラインと、前記冷却水排出ラインによる冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第2の弁とを具備し、運転停止の際に、前記第2の弁を閉じた状態で前記第1の弁を開き、前記冷却水供給ラインを通じて前記カソード極に冷却水を供給することにより前記カソード極を冷却水で満たすことを特徴とする燃料電池コジェネレーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池コジェネレーションシステムにおいて、前記カソード極の入口もしくは出口のライン上に水位計を備え、供給した冷却水の水位を前記水位計により計測し、一定の水位まで冷却水を供給するようにしたことを特徴とする燃料電池コジェネレーションシステム。
【請求項3】
燃料電池本体のアノード極に冷却水の一部を供給するための冷却水供給ラインと、前記冷却水供給ラインによる冷却水の供給と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第1の弁と、前記アノード極に供給した冷却水を排出するための冷却水排出ラインと、前記冷却水排出ラインによる冷却水の排出と遮断とを開閉動作により切り替えることが可能な第2の弁とを具備し、運転停止の際に、前記第2の弁を閉じた状態で前記第1の弁を開き、前記冷却水供給ラインを通じて前記アノード極に冷却水を供給することにより前記アノード極を冷却水で満たすことを特徴とする燃料電池コジェネレーションシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池コジェネレーションシステムにおいて、前記アノード極の入口もしくは出口のライン上に水位計を備え、供給した冷却水の水位を前記水位計により計測し、一定の水位まで冷却水を供給するようにしたことを特徴とする燃料電池コジェネレーションシステム。
【請求項5】
カソード極およびアノード極を有する燃料電池本体を備えた燃料電池コジェネレーションシステムに適用される燃料電池制御方法であって、
運転停止の際に、冷却水供給ラインから冷却水の一部を前記カソード極もしくはアノード極に流入させ、当該カソード極もしくはアノード極を冷却水で満たすことを特徴とする燃料電池制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate