説明

燃料電池システム

【課題】 燃料電池スタックを備える燃料電池システムの低温始動性を向上させる。
【解決手段】 燃料電池システム100は、燃料電池スタック10の電流の取り出し部分を切り換えるための切換スイッチ20、および、切換スイッチ22を備える。そして、低温始動時に、凍結によって発電性能が低下した単セル12からの電流の取り出しを停止し、発電性能が低下していない単セル12から電流を取り出す。凍結によって発電性能が低下した単セル12は、発電性能が低下していない単セル12からの熱によって昇温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水素と酸素との電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。この燃料電池には、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面にそれぞれアノード(水素極)とカソード(酸素極)とを備えた単セルを複数積層させた燃料電池スタックがある。そして、単セルのカソードでは、カソード反応によって、水(生成水)が生成される。
【0003】
このような燃料電池スタックを備える燃料電池システムを、氷点下の低温時に始動すると、燃料電池スタック内の一部の単セルにおいて、生成水が凍結して、酸素の拡散が妨げられるか、凍結部が反応しなくなるため、発電性能が低下する場合がある。そして、発電性能が低下した単セルと、発電性能が低下していない単セルとが混在した状態で、要求電力を出力するように発電を継続すると、発電性能が低下した単セルに負電圧がかかり、その単セルの電解質膜の劣化を招く場合がある。
【0004】
そこで、従来、燃料電池システムの低温始動時の上記不具合を解決するために、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、燃料電池システムの氷点下からの低温始動時に、単セルの電圧が所定電圧を下回らない範囲で、取り出し電流を最大に設定する技術が記載されている。これによって、要求電力に関わらず、発電反応が促進され、燃料電池の自己発熱を促進させることができ、暖気時間を短縮できるので、起動時の生成水が凍結するのを抑制することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−71626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、複数の単セルのうちの最も発電性能が低い単セルに合わせて燃料電池スタック全体から取り出す電流を下げるので、発電性能が低下していない単セルにおける発熱量をも低下させてしまい、燃料電池スタック全体が昇温するまでの時間を十分に短縮することができない場合があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池スタックを備える燃料電池システムの低温始動性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、以下の構成を採用した。
本発明の燃料電池システムは、
水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う単セルを複数積層した燃料電池スタックと、
該燃料電池スタックが前記単セルの積層方向に沿って複数の部分に区分けされた該各部分の電圧を検出する電圧検出部と、
前記各部分に流れる電流を制御する電流制御部と、
前記燃料電池システムの氷点下での低温始動時に、前記電圧検出部によって、前記複数の部分のうちのいずれかの電圧が所定値未満となったことが検出されたときに、該検出された電圧が前記所定値未満となった前記部分に流れる電流が、他の前記部分に流れる電流よりも低い値になるように、前記電流制御部を制御する低温始動制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0009】
本発明では、燃料電池システムの低温始動時に、燃料電池スタックが単セルの積層方向に沿って複数の部分に区分けされた各部分の電圧をモニタすることによって、その部分に含まれる単セルの生成水の凍結による発電性能の低下を検出する。そして、発電性能が低下していない部分の単セルからは、ほぼ要求された電流を取り出すとともに、発電性能が低下した部分の単セルには、発電性能が低下していない他の部分の単セルよりも低い値の電流を流す。なお、低い値の電流を流すとは、電流値を0にすること、つまり、電流を流さないことも含んでいる。
【0010】
こうすることによって、低温始動時に、発電性能が低下していない単セルでは、ほぼ要求通りの発電を行うようにし、その発熱、および、熱伝導によって、速やかに燃料電池スタック全体を昇温することができる。また、生成水の凍結によって発電性能が低下した単セルに流す電流を制限するので、発電性能が低下した単セルに負電圧がかかることを抑制し、単セルに備えられた電解質膜の劣化を抑制することができる。この結果、燃料電池システムの低温始動性を向上させることができる。
【0011】
上記燃料電池システムにおいて、
前記低温始動制御部は、前記低温始動時の前記電流制御部の制御において、前記電圧検出部によって、前記複数の部分のうちのいずれかの電圧が所定値未満となったことが検出されたときに、さらに、該検出された電圧が前記所定値未満になった前記部分に流れる電流を0にするようにしてもよい。
【0012】
本発明では、発電性能が低下していない部分の単セルからのみ電流を取り出し、発電性能が低下した部分の単セルには電流は流さない。こうすることによって、発電性能が低下していない単セル発電性能が低下した単セルに負電圧がかかることを回避し、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムにおいて、
前記低温始動制御部は、前記低温始動時の前記電流制御部の制御において、前記電圧検出部によって、前記複数の部分のうちのいずれかの電圧が所定値未満となったことが検出されたときに、さらに、該検出された電圧が前記所定値未満になった前記部分について、前記検出された電圧値に基づいて、前記単セルに負電圧がかからないように、該部分に流れる電流の値を変更するようにしてもよい。
【0014】
こうすることによって、発電性能が低下した単セルに負電圧がかかることを回避しつつ、発電性能が低下した単セルにおいても発電によって自己発熱するので、電解質膜の劣化を抑制しつつ、燃料電池スタックの昇温時間を短縮することができる。
【0015】
上記いずれかの燃料電池システムにおいて、
前記電流制御部は、前記燃料電池スタックの前記積層方向の端部に配置されている前記部分のみを、前記流れる電流値を小さくする制御の制御対象とするようにしてもよい。
【0016】
一般に、燃料電池スタックの積層方向の端部には、エンドプレート等が配設されているため、端部に配置された単セルは、外部への放熱により、中央部に配置された単セルよりも昇温しにくく、生成水の凍結によって発電性能が低下しやすい。一方、中央部に配置された単セルは、発電により発熱する単セル同士が接しているため昇温しやすく、生成水の凍結は生じにくい。
【0017】
本発明では、燃料電池スタックの端部に配置され、生成水の凍結によって発電性能が低下しやすい単セルのみを、流れる電流を制限する制御の対象とするので、燃料電池システムの構成や、低温始動時の制御を簡略化することができる。
【0018】
上記いずれかの燃料電池システムにおいて、さらに、
前記各部分の温度を検出する温度検出部を備え、
前記低温始動制御部は、前記低温始動時の前記電流制御部の制御を行っているときに、前記電圧検出部によって検出された電圧が前記所定値未満となった前記部分について、前記温度検出部によって検出された温度が所定温度以上になったときに、該低温始動時の前記電流制御部の制御を停止するようにしてもよい。
【0019】
所定温度は、生成水が凍結しない範囲内の温度を任意に設定可能である。本発明によって、上記各部分の温度に基づいて、先に説明した低温始動時の制御から通常温度での制御に切り換えるようにすることができる。
【0020】
なお、温度検出部の代わりに、上記低温始動時の制御の継続時間を計測するタイマを備えるようにし、上記切り換えを、低温始動時の制御の継続時間が所定時間以上になったか否かに基づいて、行うようにしてもよい。この場合、所定時間は、燃料電池スタックの全ての単セルの温度が、生成水が凍結しない程度に十分に昇温する時間を設定すればよい。
【0021】
本発明の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックの前記各部分のうちの一部の部分は、前記単セルとして前記低温始動時にのみ使用するための低温始動用セルによって構成されており、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記低温始動用セルの温度を検出する温度検出部と、
前記低温始動時に、前記温度検出部によって、前記低温始動用セルの温度が所定温度以上になったことが検出されたときに、前記低温始動用セルによる発電を停止するように、前記電流制御部を制御する発電制御部と、
を備えるようにしてもよい。
【0022】
ここで、低温始動用セルは、生成水が凍結しにくく低温始動時の発電には適しているが、通常温度での発電には不適な単セルである。このような低温始動用セルとしては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0023】
上記燃料電池システムにおいて、
前記単セルは、所定の電解質膜の両面に、それぞれアノードとカソードとを備えており、
前記低温始動用セルは、前記アノード、および、前記カソードのうちの少なくとも前記カソードに、前記発電によって生成された生成水の透過性が、該低温始動用セル以外の前記単セルよりも高い高透過層を備えるようにしてもよい。
【0024】
発電による生成水は、カソード反応によって生成されるので、生成水の凍結は、アノードよりもカソードで生じやすい。本発明では、低温始動用セルの少なくともカソードに、生成水の透過性が比較的高い高透過層を備えているので、生成水を比較的速やかに排出することができる。したがって、低温始動用セルにおいて、生成水が凍結するまでの時間を延長し、生成水が凍結する前に燃料電池スタック全体の昇温を完了するようにすることができる。
【0025】
上記燃料電池システムにおいて、
前記単セルは、前記電解質膜の両面に、それぞれ前記電気化学反応を起こすための触媒層と、前記生成水を撥水するための撥水層と、前記触媒層に反応ガスを拡散させて供給するための拡散層とを、この順序で備えており、
前記低温始動用セルは、前記高透過層として、前記低温始動用セル以外の前記単セルの前記撥水層よりも厚さが薄い前記撥水層、および、前記低温始動用セル以外の前記単セルの前記拡散層よりも厚さが薄い前記拡散層のうちの少なくとも一方を備えるようにしてもよい。
【0026】
低温始動時に触媒層で生成された生成水は、触媒層の外へ排出される時には過冷却水になっている。この過冷却水は、撥水層を薄くすることによって、透過しやすくすることができる。また、拡散層を薄くすることによっても、過冷却水を透過しやすくすることができる。したがって、本発明によって、生成水を速やかに排出することができる。
【0027】
なお、過冷却水の透過性の観点から、高透過層において、撥水層は、省略することが好ましい。こうすることによって、過冷却水の透過性をより高くすることができる。
【0028】
上記低温始動用セルを備えるいずれかの燃料電池システムにおいて、
前記低温始動用セルは、前記燃料電池スタックの前記積層方向の端部に配置された前記部分にのみ備えられているようにしてもよい。
【0029】
先に説明したように、燃料電池スタックの積層方向の端部に配置された単セルは、中央部に配置された単セルよりも昇温しにくく、生成水の凍結によって発電性能が低下しやすい。一方、中央部に配置された単セルは、昇温しやすく、生成水の凍結は生じにくい。
【0030】
本発明では、燃料電池スタックの端部にのみ低温始動用セルを配置するので、燃料電池システムの構成や、低温始動時の制御を簡略化することができる。
【0031】
なお、本発明の燃料電池システムは、
水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う単セルと、前記燃料電池システムの氷点下での低温始動時にのみ使用するための前記単セルである低温始動用セルとを複数積層した燃料電池スタックと、
前記各部分に流れる電流を制御する電流制御部と、
前記低温始動用セルの温度を検出する温度検出部と、
前記低温始動時に、前記温度検出部によって、前記低温始動用セルの温度が所定温度以上になったことが検出されたときに、前記低温始動用セルによる発電を停止するように、前記電流制御部を制御する発電制御部と、
を備えるようにしてもよい。
【0032】
こうすることによっても、上述した燃料電池システムと同様に、燃料電池システムの低温始動性を向上させることができる。
【0033】
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。本発明は、上述の燃料電池システムとしての構成の他、燃料電池システムの制御方法の発明として構成することもできる。また、これらを実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
【0034】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、燃料電池システムの動作を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A1.システム構成:
A2.低温始動制御:
B.第2実施例:
B1.システム構成:
B2.低温始動制御:
C.第3実施例:
C1.システム構成:
C2.低温始動制御:
D.変形例:
【0036】
A.第1実施例:
A1.システム構成:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池システム100の概略構成を示す説明図である。図示するように、燃料電池システム100は、燃料電池スタック10と、切換スイッチ20,22と、電圧センサ30と、温度センサ40と、負荷50と、制御ユニット60とを備えている。
【0037】
燃料電池スタック10は、水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う単セル12を所定数積層した積層体である。単セル12は、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に、それぞれアノード(水素極)とカソード(酸素極)とを形成したものである。単セル12の積層数は、要求される出力に応じて任意に設定可能である。なお、本実施例では、燃料電池スタック10は、電解質膜として固体高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池であるものとした。他の燃料電池を用いるものとしてもよい。
【0038】
燃料電池スタック10の単セル12の積層方向の一方の端部には、単セル12a,12b,12cが、外側からこの順に配置されている。また、燃料電池スタック10の単セル12の積層方向の他方の端部には、単セル12d,12e,12fが、外側からこの順に配置されている。そして、これらの各単セル12a〜12fには、それぞれ発電時に電流を取り出すための端子が設けられている。
【0039】
燃料電池スタック10は、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22を介して、負荷50と接続されている。切換スイッチ20には、3つの端子a,b,cが設けられている。また、切換スイッチ22には、3つの端子d,e,fが設けられている。そして、切換スイッチ20の端子a,b,cは、それぞれ単セル12a,12b,12cに接続されている。また、切換スイッチ22の端子d,e,fは、それぞれ単セル12d,12e,12fに接続されている。切換スイッチ20、および、切換スイッチ22の接続状態を切り換えることによって、発電時に電流を取り出す部分を切り換えることができる。なお、本実施例では、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22には、それぞれ3つの端子が設けられており、3つの単セル12と接続されているものとしたが、これに限られず、より多くの端子を設けるようにしてもよい。
【0040】
電圧センサ30は、単セル12ごとに設けられており、各単セル12の電圧(以下、セル電圧と呼ぶ)Vcを検出する。また、温度センサ40も、単セル12ごとに設けられており、各単セル12の温度Tcを検出する。各単セル12のセル電圧Vcや、温度Tcをモニタすることによって、各単セル12の異常を検出することができる。
【0041】
燃料電池システム100の運転は、制御ユニット60によって制御される。制御ユニット60は、内部にCPU、RAM、ROMなどを備えるマイクロコンピュータとして構成されており、ROMに記憶されたプログラムに従って、システムの運転を制御する。
【0042】
本実施例では、制御ユニット60は、燃料電池システム100の氷点下での低温始動時に、後述する低温始動制御を実行する。低温始動時には、カソード反応によって生成された生成水が単セル12内で凍結して反応ガスの供給を妨げ、単セル12の発電性能が低下する場合がある。本実施例では、低温始動制御によって、低温始動時に、生成水の凍結によって単セル12の発電性能が低下しても、燃料電池スタック10を速やかに昇温して発電性能を回復する。この低温始動制御では、以下に説明するように、電圧センサ30や、温度センサ40の出力に基づいて、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22を制御する。制御ユニット60は、本発明における低温始動制御部に相当する。また、切換スイッチ20,22は、本発明における電流制御部に相当する。
【0043】
A2.低温始動制御:
図2は、第1実施例における低温始動制御の流れを示すフローチャートである。この処理は、燃料電池システム100の氷点下での低温始動時に、制御ユニット60のCPUが実行する処理である。本実施例では、燃料電池システム100の始動時に、いずれかの温度センサ40の出力が氷点下である場合に、この制御を実行する。
【0044】
低温始動制御開始時の初期状態では、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22は、それぞれ端子a、および、端子dに接続されており、単セル12aと単セル12d、すなわち燃料電池スタック10全体から要求された電流を取り出す(図1参照)。
【0045】
その後、CPUは、電圧センサ30によって、燃料電池スタック10の端部に配置された最も発電性能が低下しやすい単セル12のセル電圧Vcを測定する(ステップS100)。低温始動制御直後は、燃料電池スタック10の両端部に配置されている単セル12a,12dのセル電圧Vcを測定する。また、後述するように、単セル12a,12dによって発電を行っていないときには、発電を行っている単セル12のうちの最も外側に配置されている単セル12b,12eのセル電圧Vcを測定する。
【0046】
そして、CPUは、セル電圧Vcが所定電圧Vth未満であるか否かを判断する(ステップS110)。単セル12の発電性能が低下し、セル電圧Vcが所定電圧Vth未満になった場合には(ステップS110:YES)、切換スイッチ20,22を切り換え(ステップS100)、ステップS100に戻る。例えば、燃料電池スタック10において最も発電性能が低下しやすい両端の単セル12a,12dのセル電圧Vcが所定電圧Vth未満になった場合には、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22を、それぞれ端子b、および、端子eに切り換え、単セル12bと単セル12eから要求された電流を取り出す。このとき、単セル12a,12dでは、発電は行われず、単セル12a,12dには、電流は流れない。この状態で発電を継続し、その後、単セル12b,12eの発電性能が低下して、そのセル電圧Vcが所定電圧Vth未満になった場合には、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22の接続を、それぞれ端子c、および、端子fに切り換え、単セル12cと単セル12fから要求された電流を取り出す。このとき、さらに、単セル12b,12eでは、発電は行われず、単セル12a,12dには、電流は流れない。
【0047】
ステップS110において、セル電圧Vcが所定電圧Vth以上である場合には(ステップS110:NO)、CPUは、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22の接続状態によって、発電を行っていない単セル12があるか否かを判断する(ステップS130)。切換スイッチ20、および、切換スイッチ22が、それぞれ端子a、および、端子dに接続されており、発電を行っていない単セル12がない場合には(ステップS130:NO)、CPUは、温度センサ40によって、発電を行っている単セル12のうちの最も外側の単セル12の温度Tcを測定し(ステップS180)、その単セル12の温度Tcが所定温度Tth以上であるか否かを判断する(ステップS190)。所定温度Tthとしては、生成水が凍結しない温度が設定されている。その単セル12の温度Tcが所定温度Tth以上である場合には(ステップS190:YES)、低温始動制御を終了する。一方、その単セル12の温度Tcが所定温度Tth未満である場合には(ステップS190:NO)、ステップS100に戻る。
【0048】
ステップS130において、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22が、それぞれ端子a、および、端子d以外の端子に接続されており、発電を行っていない単セル12がある場合には(ステップS130:YES)、CPUは、その発電を行っていない単セル12の温度Tcを測定し(ステップS140)、その単セル12の温度Tcが所定温度Tth以上であるか否かを判断する(ステップS150)。その単セル12の温度Tcが所定温度Tth未満である場合には(ステップS150:NO)、ステップS100に戻る。一方、その単セル12の温度Tcが所定温度Tth以上である場合には(ステップS150:YES)、切換スイッチ20,22を切り換える(ステップS160)。例えば、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22が、それぞれ端子c、および、端子fに接続されていて、単セル12b,(12a,12d,)12eで発電が行われていない場合に、単セル12b,12eの温度Tcが所定温度Tth以上になっていれば、単セル12b,12eを用いて発電を行っても、生成水は凍結せず、単セル12b,12eに負電圧はかからないので、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22を、それぞれ端子b、および、端子eに切り換え、単セル12b,12eによる発電を再開する。また、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22が、それぞれ端子b、および、端子eに接続されていて、単セル12a,12dで発電が行われていない場合に、単セル12a,12dの温度Tcが所定温度Tth以上になっていれば、単セル12a,12dを用いて発電を行っても、生成水は凍結せず、単セル12a,12dに負電圧はかからないので、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22を、それぞれ端子a、および、端子dに切り換え、単セル12a,12dによる発電を再開する。
【0049】
次に、CPUは、再度、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22の接続状態によって、発電を行っていない単セル12があるか否かを判断する(ステップS170)。切換スイッチ20、および、切換スイッチ22が、それぞれ端子a、および、端子d以外の端子に接続されており、発電を行っていない単セル12がある場合には(ステップS170YES)、ステップS180に進む。一方、切換スイッチ20、および、切換スイッチ22が、それぞれ端子a、および、端子dに接続されており、発電を行っていない単セル12がない場合(ステップS170:NO)、すなわち、全ての単セル12の温度が所定温度Tth以上となり、全ての単セル12を用いて発電を再開した場合には、低温始動制御を終了する。
【0050】
低温始動制御の終了後は、通常温度での燃料電池スタック10全体から電流を取り出す制御を行う。
【0051】
以上説明した第1実施例の燃料電池システム100によれば、低温始動時に、発電性能が低下していない単セル12では、要求通りの発電を行うようにし、その発熱、および、熱伝導によって、速やかに燃料電池スタック10全体を昇温することができる。また、生成水の凍結によって発電性能が低下した単セル12には電流を流さないので、発電性能が低下した単セル12に負電圧がかかることを抑制し、電解質膜の劣化を抑制することができる。この結果、燃料電池システム100の低温始動性を向上させることができる。
【0052】
B.第2実施例:
B1.システム構成:
図3は、本発明の第2実施例としての燃料電池システム100Aの概略構成を示す説明図である。図示するように、燃料電池システム100Aは、燃料電池スタック10と、可変抵抗24a〜24fと、電圧センサ30と、温度センサ40と、負荷50と、制御ユニット60Aとを備えている。第2実施例の燃料電池システム100Aは、第1実施例の燃料電池システム100における切換スイッチ20,22の代わりに、可変抵抗24a〜24fを備えること以外は、第1実施例の燃料電池システム100とほぼ同じである。
【0053】
燃料電池スタック10は、可変抵抗24a〜24fを介して、負荷50と接続されている。図示するように、可変抵抗24a〜24fは、それぞれ単セル12a〜12fに接続されている。可変抵抗24a〜24fの各抵抗値を変更することによって、燃料電池スタック10の各部分に流れる電流、つまり、各部分から取り出す電流値を変更することができる。なお、本実施例では、6つの可変抵抗24a〜24fを用いるものとしたが、これに限られず、より多くの可変抵抗を設けるようにしてもよい。
【0054】
本実施例では、制御ユニット60Aが、燃料電池システム100Aの氷点下での低温始動時に、後述する低温始動制御を実行する。この低温始動制御では、以下に説明するように、電圧センサ30や、温度センサ40の出力に基づいて、可変抵抗24a〜24fの各抵抗値を制御する。制御ユニット60Aは、本発明における低温始動制御部に相当する。また、可変抵抗24a〜24fは、本発明における電流制御部に相当する。
【0055】
B2.低温始動制御:
図4は、第2実施例における低温始動制御の流れを示すフローチャートである。この処理は、燃料電池システム100Aの氷点下での低温始動時に、制御ユニット60AのCPUが実行する処理である。本実施例においても、燃料電池システム100Aの始動時に、いずれかの温度センサ40の出力が氷点下である場合に、この制御を実行する。
【0056】
低温始動制御開始時の初期状態では、可変抵抗24a,24dの各抵抗値は0であり、可変抵抗24b,24c,24e,24fの各抵抗値は無限大である。そして、燃料電池スタック10全体から要求された電流を取り出す(図3参照)。
【0057】
その後、CPUは、電圧センサ30によって、各単セル12のセル電圧Vcを測定する(ステップS200)。そして、各セル電圧Vcに基づいて、可変抵抗24a〜24fの各抵抗値を設定する(ステップS210)。このとき、可変抵抗24a〜24fの各抵抗値は、各単セル12に負電圧がかからないように設定される。例えば、燃料電池スタック10の両端の単セル12a,12dにおいて、生成水が凍結して発電性能が低下した場合には、可変抵抗24a,24dの抵抗値を上げるとともに、可変抵抗24b,24c,24e,24fの抵抗値を下げて、単セル12a,12dに負電圧がかからないようにしつつ、単セル12a,12dにおける発電を継続する。そして、各単セル12から、セル電圧Vc、可変抵抗の抵抗値に応じた値の電流を取り出す。
【0058】
次に、CPUは、温度センサ40によって、燃料電池スタック10の両端部に配置されている各単セル12a,12dの温度Tcを測定する(ステップS220)。そして、CPUは、両端部に配置された単セル12a,12dの温度Tcが所定温度Tth以上であるか否かを判断する(ステップS230)。単セル12a,12dの温度Tcが所定温度Tth以上でない場合には(ステップS230:NO)、ステップS200に戻る。一方、単セル12a,12dの温度が所定温度Tth以上である場合には(ステップS230:YES)、低温制御処理を終了する。
【0059】
低温始動制御の終了後は、通常温度での燃料電池スタック10全体から電流を取り出す制御を行う。
【0060】
以上説明した第2実施例の燃料電池システム100Aによれば、低温始動時に、発電性能が低下していない単セル12では、ほぼ要求通りの発電を行うようにし、その発熱、および、熱伝導によって、速やかに燃料電池スタック10全体を昇温することができる。また、生成水の凍結によって発電性能が低下した単セル12からの電流の取り出し、すなわち、発電性能が低下した単セル12に流れる電流を制限するので、発電性能が低下した単セルに負電圧がかかることを抑制し、電解質膜の劣化を抑制することができる。この結果、燃料電池システムの低温始動性を向上させることができる。さらに、第2実施例の燃料電池システム100Aでは、発電性能が低下した単セル12においても負電圧がかからない状態で発電を継続し、自己発熱するので、燃料電池スタック10全体の昇温時間を第1実施例の燃料電池システム100よりも短縮することができる。
【0061】
C.第3実施例:
C1.システム構成:
図5は、本発明の第3実施例としての燃料電池システム100Bの概略構成を示す説明図である。図示するように、燃料電池システム100はB、燃料電池スタック10Bと、切換スイッチ20B,22Bと、温度センサ40と、負荷50と、制御ユニット60Bとを備えている。第3実施例の燃料電池システム100Bは、第1実施例の燃料電池システム100における切換スイッチ20,22の代わりに、切換スイッチ20B,22Bを備えることと、燃料電池スタック10の代わりに、燃料電池スタック10Bを備えること以外は、第1実施例の燃料電池システム100とほぼ同じである。
【0062】
燃料電池スタック10Bの単セル12の積層方向の両端部には、両端部以外の部分に配置された単セル12とは内部の膜構成が異なる単セルが配置されている。以下、この燃料電池スタック10Bの両端部に配置された単セルを端セル12edgと呼ぶ。この端セル12edg、および、端セル12edgに隣接する単セル12には、それぞれ発電時に電流を取り出すための端子が設けられている。単セル12、および、端セル12edgの膜構成等については、後述する。なお、後述するように、端セル12edgは、低温始動時にのみ用いる単セルであり、本発明における低温始動時用に相当する。
【0063】
切換スイッチ20Bには、2つの端子a,bが設けられている。また、切換スイッチ22Bには、2つの端子c,dが設けられている。そして、各端セル12edgは、それぞれ切換スイッチ20Bの端子a、および、切換スイッチ22Bの端子cに接続されている。また、各端セル12edgにそれぞれ隣接する単セル12は、それぞれ切換スイッチ20Bの端子b、および、切換スイッチ22Bの端子dに接続されている。切換スイッチ20B、および、切換スイッチ22Bの接続状態を切り換えることによって、発電時に電流を取り出す部分を切り換えることができる。
【0064】
本実施例では、制御ユニット60Bが、燃料電池システム100Bの氷点下での低温始動時に、後述する低温始動制御を実行する。この低温始動制御では、以下に説明するように、温度センサ40の出力に基づいて、切換スイッチ20B、および、切換スイッチ22Bを制御する。制御ユニット60Bは、本発明における発電制御部に相当する。また、切換スイッチ20B,22Bは、本発明における電流制御部に相当する。
【0065】
ここで、端セル12edg、および、端セル12edg以外の単セル12の膜構成について説明する。図6は、端セル12edg、および、端セル12edg以外の単セル12の膜構成を示す説明図である。図6(a)に、端セル12edg以外の単セル12の断面の一部を示し、図6(b)に、端セル12edgの断面の一部を示した。
【0066】
図6(a)に示すように、単セル12では、電解質膜120の一方の面に、触媒層122aと、撥水層124aと、拡散層126aとを、この順に積層することによって、アノードが形成されている。また、電解質膜120のもう一方の面に、触媒層122cと、撥水層124cと、拡散層126cとを、この順に積層することによって、カソードが形成されている。
【0067】
一方、端セル12edgでは、単セル12と同様に、電解質膜120の一方の面に、触媒層122aと、撥水層124aと、拡散層126aとを、この順に積層することによって、アノードが形成されている。また、電解質膜120のもう一方の面に、触媒層122cと、拡散層126cとを、この順に積層することによって、カソードが形成されている。端セル12edgは、カソードの拡散層126cの厚さが、単セル12における拡散層126cの厚さよりも薄い点、カソードに撥水層を備えていない点で、単セル12と異なっている。
【0068】
上述した膜構成の違いから、端セル12edgは、以下に示す特徴を有している。
【0069】
第1の特徴は、氷点下で発電を開始したときに、発電によって生成された生成水が、単セル12よりも膜内で凍結しにくいことである。先に説明したように、端セル12edgは、カソードに撥水層を備えておらず、さらに、拡散層126cの厚さも単セル12の拡散層126cよりも薄い。このため、端セル12edgは、発電によって生成された生成水が過冷却状態になった過冷却水の透過性が単セル12よりも高い。したがって、過冷却水を膜内から速やかに排出することができる。
【0070】
第2の特徴は、通常温度での性能が単セル12よりも悪いことである。具体的には、端セル12edgは、カソードに撥水層を備えていないので、フラッディングが発生しやすい。フラッディングは、反応ガスの供給を妨げ、発電性能を低下させる。このため、通常温度での発電には不適である。
【0071】
上述した端セル12edgの2つの特徴を考慮して、本実施例では、以下に説明する低温始動制御が行われる。
【0072】
C2.低温始動制御:
図7は、第3実施例における低温始動制御の流れを示すフローチャートである。この処理は、燃料電池システム100Bの氷点下での低温始動時に、制御ユニット60BのCPUが実行する処理である。本実施例においても、燃料電池システム100Bの始動時に、いずれかの温度センサ40の出力が氷点下である場合に、この制御を実行する。
【0073】
低温始動制御開始時の初期状態では、切換スイッチ20B、および、切換スイッチ22Bは、それぞれ端子a、および、端子cに接続されており、燃料電池スタック10B全体から電流を取り出す(図5参照)。
【0074】
その後、CPUは、端セル12edgの温度Tcを測定し(ステップS300)、端セル12edgの温度Tcが所定温度Tth以上になったか否かを判断する(ステップS310)。端セル12edgの温度Tcが所定温度Tth以上になっていない場合には(ステップS310:NO)、ステップ300に戻る。一方、端セル12edgの温度Tcが所定温度Tth以上である場合には(ステップS310:YES)、切換スイッチ20B、および、切換スイッチ22Bの接続を、それぞれ端子b、および、端子dに切り換え(ステップS320)、端セル12edgを用いた発電を終了し、低温始動制御を終了する。
【0075】
低温始動制御の終了後は、端セル12edg以外の燃料電池スタック10Bから電流を取り出す通常温度での制御を行う。
【0076】
以上説明した第3実施例の燃料電池システム100Bによれば、低温始動時に、生成水が凍結しにくい端セル12edgを用いて発電を行うので、端セル12edgの発熱、端セル12edg以外の単セル12の発熱、および、それらの熱伝導によって、速やかに燃料電池スタック10B全体を昇温することができる。この結果、燃料電池システム100Bの低温始動性を向上させることができる。
【0077】
D.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形例が可能である。
【0078】
D1.変形例1:
上記第1、および、第2実施例では、単セル12ごとにセル電圧Vcを測定し、発電性能の低下を検出するものとしたが、これに限られない。複数の単セル12によって構成されるブロックごとに電圧を測定し、そのブロックに含まれる単セル12の発電性能の低下を検出するようにしてもよい。この場合、電流を取り出すための端子は、単セル12のブロックごとに用意するようにすればよい。
【0079】
D2.変形例2:
上記第1、および、第2実施例では、氷点下での低温始動時に、燃料電池スタック10の端部の単セル12が、昇温しにくく生成水が凍結しやすいため、両端部の単セル12、および、両端部に隣接する単セル12について、取り出す電流を制限する制御を行うものとしたが、これに限られない。他の部分の単セル12についても、適宜、同様の制御を行うようにしてもよい。
【0080】
また、上記第3実施例では、燃料電池スタック10Bの両端部に、低温始動用セルを配置するものとしたが、これに限られず、適宜、他の部分にも低温始動用セルを配置するようにしてもよい。
【0081】
D3.変形例3:
上記第3実施例では、低温始動用セルである端セル12edgは、カソードに撥水層を備えないものとしたが、単セル12の撥水層124cよりも薄い撥水層を備えるようにしてもよい。また、端セル12edgは、カソードの拡散層126cが単セル12の拡散層126cよりも薄いものとしたが、同程度の厚さであってもよい。端セル12edg、すなわち、低温始動用セルは、過冷却水の透過性が単セル12よりも高ければよい。
【0082】
D4.変形例4:
上記第3実施例では、低温始動用セルである端セル12edgは、カソードに、過冷却水の透過性が単セル12よりも高い層を備えるものとしたが、さらに、アノードにも過冷却水の透過性が単セル12よりも高い層を備えるものとしてもよい。
【0083】
D5.変形例5:
上記実施例では、温度センサ40によって、端部の単セル12の温度Tcが所定値Tth以上になったときに、低温始動制御を終了するものとしたが、これに限られない。例えば、低温始動制御の継続時間を計測するタイマを備えるようにし、低温始動制御を終了するか否かを、低温始動制御の継続時間に基づいて行うようにしてもよい。この場合、所定時間は、燃料電池スタックの全ての単セル12の温度が、生成水が凍結しない程度に十分に昇温する時間を設定すればよい。
【0084】
D6.変形例6:
上記第1ないし第3実施例を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施例としての燃料電池システム100の概略構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例における低温始動制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施例としての燃料電池システム100Aの概略構成を示す説明図である。
【図4】第2実施例における低温始動制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3実施例としての燃料電池システム100Bの概略構成を示す説明図である。
【図6】端セル12edg、および、端セル12edg以外の単セル12の膜構成を示す説明図である。
【図7】第3実施例における低温始動制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
10...燃料電池スタック
10B...燃料電池スタック
12edg...端セル
12,12a〜12f...単セル
20,20B,22,22B...切換スイッチ
24a〜24f...可変抵抗
30...電圧センサ
40...温度センサ
50...負荷
60,60A,60B...制御ユニット
100,100A,100B...燃料電池システム
120...電解質膜
122a...触媒層
122c...触媒層
124a...撥水層
124c...撥水層
126a...拡散層
126c...拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
水素と酸素との電気化学反応によって発電を行う単セルを複数積層した燃料電池スタックと、
該燃料電池スタックが前記単セルの積層方向に沿って複数の部分に区分けされた該各部分の電圧を検出する電圧検出部と、
前記各部分に流れる電流を制御する電流制御部と、
前記燃料電池システムの氷点下での低温始動時に、前記電圧検出部によって、前記複数の部分のうちのいずれかの電圧が所定値未満となったことが検出されたときに、該検出された電圧が前記所定値未満となった前記部分に流れる電流が、他の前記部分に流れる電流よりも低い値になるように、前記電流制御部を制御する低温始動制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記低温始動制御部は、前記低温始動時の前記電流制御部の制御において、前記電圧検出部によって、前記複数の部分のうちのいずれかの電圧が所定値未満となったことが検出されたときに、さらに、該検出された電圧が前記所定値未満になった前記部分に流れる電流を0にする、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記低温始動制御部は、前記低温始動時の前記電流制御部の制御において、前記電圧検出部によって、前記複数の部分のうちのいずれかの電圧が所定値未満となったことが検出されたときに、さらに、該検出された電圧が前記所定値未満になった前記部分について、前記検出された電圧値に基づいて、前記単セルに負電圧がかからないように、該部分に流れる電流の値を変更する、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記電流制御部は、前記燃料電池スタックの前記積層方向の端部に配置されている前記部分のみを、前記流れる電流値を小さくする制御の制御対象とする、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記各部分の温度を検出する温度検出部を備え、
前記低温始動制御部は、前記低温始動時の前記電流制御部の制御を行っているときに、前記電圧検出部によって検出された電圧が前記所定値未満となった前記部分について、前記温度検出部によって検出された温度が所定温度以上になったときに、該低温始動時の前記電流制御部の制御を停止する、
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの前記各部分のうちの一部の部分は、前記単セルとして前記低温始動時にのみ使用するための低温始動用セルによって構成されており、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記低温始動用セルの温度を検出する温度検出部と、
前記低温始動時に、前記温度検出部によって、前記低温始動用セルの温度が所定温度以上になったことが検出されたときに、前記低温始動用セルによる発電を停止するように、前記電流制御部を制御する発電制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池システムであって、
前記単セルは、所定の電解質膜の両面に、それぞれアノードとカソードとを備えており、
前記低温始動用セルは、前記アノード、および、前記カソードのうちの少なくとも前記カソードに、前記発電によって生成された生成水の透過性が、該低温始動用セル以外の前記単セルよりも高い高透過層を備える、
燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7記載の燃料電池システムであって、
前記単セルは、前記電解質膜の両面に、それぞれ前記電気化学反応を起こすための触媒層と、前記生成水を撥水するための撥水層と、前記触媒層に反応ガスを拡散させて供給するための拡散層とを、この順序で備えており、
前記低温始動用セルは、前記高透過層として、前記低温始動用セル以外の前記単セルの前記撥水層よりも厚さが薄い前記撥水層、および、前記低温始動用セル以外の前記単セルの前記拡散層よりも厚さが薄い前記拡散層のうちの少なくとも一方を備える、
燃料電池システム。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の燃料電池システムであって、
前記低温始動用セルは、前記燃料電池スタックの前記積層方向の端部に配置された前記部分にのみ備えられている、
燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−26678(P2007−26678A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202435(P2005−202435)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】