説明

燃料電池システム

【課題】エネルギ消費を抑制しつつ燃料電池の水分除去を効率良く行うことができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池10と、燃料電池10に冷媒を循環させるための冷媒循環系4とを備え、冷媒循環系4に、冷媒を保温状態で貯留可能な冷媒貯留部61と、冷媒貯留部61からの冷媒の燃料電池10への供給を制御する貯留冷媒供給制御部5,53,62とを設けて、貯留冷媒供給制御部5,53,62が、燃料電池10の掃気処理前あるいは掃気処理時に冷媒貯留部61から冷媒を燃料電池10に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池と、該燃料電池に冷媒を循環させるための冷媒循環系と、を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが提案され、実用化されている。かかる燃料電池システムでは、燃料電池に供給された反応ガスの電気化学反応で発電を行うことになるが、その際に水が生成されることになる。このような生成水が発電停止後も燃料電池に残存していると、外気温が低下した場合に凍結し、次回発電始動時の効率を低下させる。
このため、燃料電池の発電始動時にヒータで加温した冷媒を燃料電池に供給して生成水の凍結を解除したり、燃料電池の発電停止直後に乾燥ガスを燃料電池に供給して生成水を予め排出する掃気処理を行う技術等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−208422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような掃気処理を行う場合には、燃料電池が高い温度に維持されていた方が高い水分除去効率が得られ、短時間で掃気処理を終了できることになるが、燃料電池は発電中に温度が上下するため、例えば比較的温度が低い状態で発電を停止した場合に、その後の掃気処理での水分除去効率が低下してしまう可能性がある。このため、電気ヒータを用いて燃料電池の冷媒の温度を上げて燃料電池を高い温度に維持して掃気処理を行うことも考えられるが、昇温のために余分なエネルギ消費が必要になってしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、エネルギ消費を抑制しつつ燃料電池の水分除去を効率良く行うことができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、該燃料電池に冷媒を循環させるための冷媒循環系と、を備える燃料電池システムであって、前記冷媒循環系に、冷媒を保温状態で貯留可能な冷媒貯留部と、該冷媒貯留部からの冷媒の前記燃料電池への供給を制御する貯留冷媒供給制御部とを備え、前記貯留冷媒供給制御部は、前記燃料電池の掃気処理前あるいは掃気処理時に前記冷媒貯留部から冷媒を前記燃料電池に供給するものである。
【0006】
かかる構成によれば、冷媒循環系に設けられた冷媒貯留部に、発電時の熱交換によって昇温した高温の冷媒を保温状態で貯留しておき、燃料電池の発電停止後の掃気処理前あるいは掃気処理時に、貯留冷媒供給制御部がこの冷媒を燃料電池に供給することで、例えば燃料電池の温度が比較的低い状態で発電を停止した場合であっても、電気ヒータ等を用いることなく燃料電池を高い温度に維持して掃気処理を行うことができる。
前記貯留冷媒供給制御部は、前記燃料電池の温度が前記冷媒貯留部に貯留されている前記冷媒の温度よりも低い場合に、当該冷媒を前記燃料電池に供給する。
【0007】
かかる構成によれば、燃料電池の温度が比較的高い状態で発電を停止した場合に、冷媒貯留部に貯留されている冷媒によって却って燃料電池の温度を低下させてしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気ヒータ等を用いることなく発電停止後も燃料電池を掃気処理に好適な温度に維持することができるため、エネルギ消費を抑制しつつ掃気処理による燃料電池の水分除去を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。本実施形態においては、本発明を燃料電池車両(移動体)の車載発電システムに適用した例について説明することとする。
【0010】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、図1に示すように、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池10を備えるとともに、燃料電池10に酸化ガスとしての空気を供給する酸化ガス配管系(反応ガス供給系)2、燃料電池10に燃料ガスとしての水素ガスを供給する水素ガス配管系(反応ガス供給系)3、冷却水等の冷媒を流して燃料電池1の温度調節を行う冷媒配管系(冷媒循環系)4、システム全体を統合制御する制御装置(貯留冷媒供給制御部)5等を備えている。
【0011】
燃料電池10は、反応ガスの供給を受けて電気化学反応により発電する単電池を所要数積層して構成したスタック構造を有している。燃料電池10により発生した電力は、PCU(Power Control Unit)11に供給される。PCU11は、燃料電池10とトラクションモータ12との間に配置されるインバータやDC‐DCコンバータ等を備えている。また、燃料電池10には、発電中の電流を検出する電流センサ13が取り付けられている。
【0012】
酸化ガス配管系2は、加湿器20により加湿された酸化ガス(空気)を燃料電池10に供給する空気供給流路21と、燃料電池10から排出された酸化オフガスを加湿器20に導く空気排出流路22と、加湿器20から外部に酸化オフガスを導くための排気流路23と、を備えている。空気供給流路21には、大気中の酸化ガスを取り込んで加湿器20に圧送するコンプレッサ24が設けられている。なお、加湿器20は内部流路の切替により、酸化ガスを加湿せずに空気供給流路21を介して燃料電池10に供給可能となっている。
【0013】
水素ガス配管系3は、高圧(例えば70MPa)の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク30と、水素タンク30の水素ガスを燃料電池10に供給するための燃料供給流路としての水素供給流路31と、燃料電池10から排出された水素オフガスを水素供給流路31に戻すための循環流路32と、を備えている。
【0014】
なお、水素タンク30に代えて、炭化水素系の燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、この改質器で生成した改質ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクと、を燃料供給源として採用することもできる。また、水素吸蔵合金を有するタンクを燃料供給源として採用してもよい。
【0015】
水素供給流路31には、水素タンク30からの水素ガスの供給を遮断又は許容する遮断弁33と、水素ガスの圧力を調整するレギュレータ34と、インジェクタ35と、が設けられている。また、インジェクタ35の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力及び温度を検出する一次側圧力センサ41及び温度センサ42が設けられている。また、インジェクタ35の下流側であって水素供給流路31と循環流路32との合流部の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力を検出する二次側圧力センサ43が設けられている。
【0016】
レギュレータ34は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置である。本実施形態においては、一次圧を減圧する機械式の減圧弁をレギュレータ34として採用している。機械式の減圧弁の構成としては、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする公知の構成を採用することができる。
【0017】
インジェクタ35は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ35は、水素ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座を備えるとともに、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に収容保持され噴射孔を開閉する弁体と、を備えている。
【0018】
本実施形態においては、インジェクタ35の弁体は電磁駆動装置であるソレノイドにより駆動され、このソレノイドに給電されるパルス状励磁電流のオン・オフにより、噴射孔の開口面積を2段階又は多段階に切り替えることができるようになっている。制御装置5から出力される制御信号によってインジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期が制御されることにより、水素ガスの流量及び圧力が高精度に制御される。
【0019】
インジェクタ35は、その下流に要求されるガス流量を供給するために、インジェクタ35のガス流路に設けられた弁体の開口面積(開度)及び開放時間の少なくとも一方を変更することにより、下流側(燃料電池10側)に供給されるガス流量(又は水素モル濃度)を調整する。
【0020】
なお、インジェクタ35の弁体の開閉によりガス流量が調整されるとともに、インジェクタ35下流に供給されるガス圧力がインジェクタ35上流のガス圧力より減圧されるため、インジェクタ35を調圧弁(減圧弁、レギュレータ)と解釈することができるし、また、本実施形態では、ガス要求に応じて所定の圧力範囲の中で要求圧力に一致するようにインジェクタ35の上流ガス圧の調圧量(減圧量)を変化させることが可能な可変調圧弁と解釈することもできる。
【0021】
本実施形態においては、水素供給流路31と循環流路32との合流部A1より上流側にインジェクタ35を配置している。また、図1に破線で示すように、燃料供給源として複数の水素タンク30を採用する場合には、各水素タンク30から供給される水素ガスが合流する部分(水素ガス合流部A2)よりも下流側にインジェクタ35を配置するようにする。
【0022】
循環流路32には、気液分離器36及び排気排水弁37を介して、排出流路38が接続されている。気液分離器36は、水素オフガスから水分を回収するものである。排気排水弁37は、制御装置5からの指令によって作動することにより、気液分離器36で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素オフガスと、を外部に排出(パージ)するものである。
【0023】
また、循環流路32には、循環流路32内の水素オフガスを加圧して水素供給流路31側へ送り出す水素ポンプ39が設けられている。なお、排気排水弁37及び排出流路38を介して排出される水素オフガスは、希釈器40によって希釈されて排気流路23内の酸化オフガスと合流するようになっている。
【0024】
冷媒配管系4は、燃料電池10内に設けられた冷却流路の入口50aと出口50bとを燃料電池10の外側でつなぐ冷媒配管51と、冷媒配管51の途中位置(例えば、中間位置)に設けられて燃料電池10から排出された冷媒を冷却するラジエータ52と、冷媒配管51におけるラジエータ52よりも入口50a側であってこの入口50aに近接する位置に設けられて冷媒配管51の冷媒を出口50b側から吸引し入口50a側へ吐出する冷媒ポンプ(貯留冷媒供給制御部)53と、冷媒配管51における出口50bの近傍の冷媒温度を検出する出口冷媒温度センサ54と、を有している。
【0025】
また、冷媒配管系4は、冷媒配管51のラジエータ52よりも出口50b側とラジエータ52及び冷媒ポンプ53の間部分とを直接つなぐことでラジエータ52をバイパスするバイパス配管56と、バイパス配管56と冷媒配管51におけるラジエータ52及び冷媒ポンプ53の間部分との合流位置に設けられた三方切替弁57とを備えている。この三方切替弁57は、バイパス配管56を閉塞して冷媒配管51のラジエータ52側と冷媒ポンプ53側とを接続させる状態と、冷媒配管51のラジエータ52側を閉塞してバイパス配管56と冷媒配管51の冷媒ポンプ53側とを接続させる状態と、に切り替える。
【0026】
そして、本実施形態においては、冷媒配管系4が、冷媒配管51のバイパス配管56よりも出口50b側と三方切替弁57及び冷媒ポンプ53の間部分とを直接つなぐことでラジエータ52及びバイパス配管56をさらにバイパスするバイパス配管60と、バイパス配管60に設けられた蓄熱タンク(冷媒貯留部)61と、バイパス配管60と冷媒配管51における三方切替弁57及び冷媒ポンプ53の間部分との合流位置に設けられた三方切替弁(貯留冷媒供給制御部)62とを備えている。
【0027】
ここで、三方切替弁62は、バイパス配管60を閉塞して冷媒配管51の三方切替弁57側と冷媒ポンプ53側とを接続させる状態と、冷媒配管51の三方切替弁57側を閉塞してバイパス配管60つまり蓄熱タンク61と冷媒配管51の冷媒ポンプ53側とを接続させる状態とに切り替えられる。
【0028】
蓄熱タンク61は、例えば、内側に冷媒を貯留可能な貯留部を有し、その外側に真空層を有する二重構造の温水ポットからなり、真空層による断熱によって貯留空間に貯留した冷媒を保温する。また、バイパス配管60における蓄熱タンク61の三方切替弁62とは反対側には逆止弁63が設けられている。この逆止弁63は蓄熱タンク61側への冷媒の流入を許容する一方、蓄熱タンク61からの冷媒の逆流は抑止するものである。蓄熱タンク61には、貯留部内の冷媒の温度を検出する貯留冷媒温度センサ64が設けられている。
【0029】
制御装置5は、車両に設けられた加速操作装置(アクセル等)の操作量を検出し、加速要求値(例えばトラクションモータ12等の負荷装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、負荷装置とは、トラクションモータ12のほかに、燃料電池10を作動させるために必要な補機装置(例えばコンプレッサ24、水素ポンプ39、冷却ポンプのモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等を含む電力消費装置を総称したものである。
【0030】
制御装置5は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現されるようになっている。
【0031】
図示略のイグニッションスイッチがオンされると、水素タンク30から水素ガスが水素供給流路31を介して燃料電池10の燃料極に供給されるとともに、加湿調整された空気が空気供給流路21を介して燃料電池10の酸化極に供給されることにより、発電が行われる。この際、燃料電池10から引き出すべき電力(要求電力)が制御装置5で演算され、その発電量に応じた量の水素ガス及び空気が燃料電池10内に供給されるようになっている。
【0032】
そして、制御装置5は、イグニッションスイッチのオン中は常に出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcと貯留冷媒温度センサ64による検出温度Taとを比較しており、出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcが貯留冷媒温度センサ64による検出温度Taよりも高い場合には、三方切替弁62を、冷媒配管51の三方切替弁57側を閉塞してバイパス配管60つまり蓄熱タンク61と冷媒配管51の冷媒ポンプ53側とを接続させる状態とする。
【0033】
すると、冷媒ポンプ53の駆動で、燃料電池10の出口50bから吐出された冷媒がバイパス配管60に流入し蓄熱タンク61に導入される。これにより、蓄熱タンク61内に貯留されていた冷媒が、より高い温度の冷媒と入れ替わり貯留される。
【0034】
他方、制御装置5は、イグニッションスイッチのオン中、出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcが貯留冷媒温度センサ64による検出温度Ta以下の場合には、三方切替弁62を、バイパス配管60を閉塞して冷媒配管51の三方切替弁57側と冷媒ポンプ53側とを接続させる状態とする。すると、冷媒ポンプ53の駆動で、燃料電池10の出口50bから吐出された冷媒が蓄熱タンク61に導入されることなく、三方切替弁57の切替状態に応じてバイパス配管56あるいはラジエータ52を通って燃料電池10に戻る。
【0035】
つまり、制御装置5は、出口冷媒温度センサ54による検出温度が所定温度よりも高い場合に、バイパス配管56を閉塞して冷媒配管51のラジエータ52側と冷媒ポンプ53側とを接続させる状態として冷媒をラジエータ52で冷却して燃料電池10に戻す一方、出口冷媒温度センサ54による検出温度が前記所定温度以下の場合に、冷媒配管51のラジエータ52側を閉塞してバイパス配管56と冷媒配管51の冷媒ポンプ53側とを接続させる状態として冷媒をそのまま燃料電池10に戻す。このとき、蓄熱タンク61内に貯留されていた冷媒が、より低い温度の冷媒と入れ替わり貯留されることはない。
【0036】
そして、制御装置5は、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態に切り替えられると、水素タンク30からの水素ガスの燃料極への供給を停止する一方、コンプレッサ24は駆動状態とし、加湿器20の内部流路の切替により、酸化ガスを加湿せずに空気供給流路21を介して燃料電池10の酸化極に供給する掃気処理を行う。これにより、加湿されていない乾燥空気が燃料電池10の酸化極に送られて、酸化極で生じていた水分を含んで排出され、燃料電池10の酸化極の水分を除去する。そして、燃料電池10のインピーダンス管理等で酸化極の水分の除去が確認されると制御装置5は掃気処理を終了し、コンプレッサ24を停止状態とする。
【0037】
このような掃気処理の開始時に、制御装置5は、一旦、三方切替弁57を、冷媒配管51のラジエータ52側を閉塞してバイパス配管56と冷媒配管51の冷媒ポンプ53側とを接続させる状態とし、三方切替弁62を、バイパス配管60を閉塞して冷媒配管51の三方切替弁57側と冷媒ポンプ53側とを接続させる状態として、冷媒ポンプ53の駆動で燃料電池10の冷媒をラジエータ52で冷却することなくバイパス配管56を介して燃料電池10に戻す状態とする。
【0038】
そして、出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcと貯留冷媒温度センサ64による検出温度Taとを比較し、出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcが貯留冷媒温度センサ64による検出温度Ta以上の場合には、そのままの状態を維持する一方、出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcが貯留冷媒温度センサ64による検出温度Taよりも低い場合には、三方切替弁62を、冷媒配管51の三方切替弁57側を閉塞してバイパス配管60つまり蓄熱タンク61と冷媒配管51の冷媒ポンプ53側とを接続させる状態とする。
【0039】
すると、冷媒ポンプ53の駆動で、蓄熱タンク61に貯留されていた高い温度の冷媒が燃料電池10に送られることになる。これにより、燃料電池10を高い温度に維持して掃気処理を行うことができる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、冷媒配管系4に設けられた蓄熱タンク61に発電時の熱交換によって昇温した高温の冷媒を保温状態で貯留しておき、燃料電池10の発電停止後の掃気処理時に燃料電池10の温度が低い場合に、三方切替弁62、冷媒ポンプ53及び制御装置5が蓄熱タンク61の高い温度の冷媒を燃料電池10に供給することになる。
【0041】
したがって、電気ヒータ等を用いることなく燃料電池10を高い温度に維持することができるため、エネルギ消費を抑制しつつ発電停止後の掃気処理による燃料電池10の水分除去を効率良く行うことができ、掃気処理を短時間で終了することができる。
【0042】
なお、以上においては、燃料電池10の温度が低い場合に掃気処理と同時に蓄熱タンク61の高い温度の冷媒を燃料電池10に流して燃料電池10を加温する場合を例にとり説明したが、燃料電池10の温度が低い場合に蓄熱タンク61の高い温度の冷媒を燃料電池10に流して燃料電池10を加温した後に掃気処理を行っても良い。しかしながら、蒸発潜熱による燃料電池10の温度低下の観点から加温と掃気処理とを同時に行うのがより好ましい。
【0043】
また、以上においては、冷媒配管51のラジエータ52よりも燃料電池10側にバイパス配管60及び蓄熱タンク61を並列に設ける場合を例にとり説明したが、冷媒配管51のラジエータ52よりも燃料電池10とは反対側にバイパス配管60及び蓄熱タンク61を並列に設けても良い。
【0044】
しかしながら、この場合、蓄熱タンク61から冷媒を燃料電池10に向けて吐出する際にラジエータ52からの冷媒が蓄熱タンク61に入り込んでしまうことがあるため、冷媒配管51のラジエータ52よりも燃料電池10側にバイパス配管60及び蓄熱タンク61を設けるのが良い。また、配管の長大による放熱を抑制する観点からも、冷媒配管51のラジエータ52よりも燃料電池10側にバイパス配管60及び蓄熱タンク61を設けるのが良い。
【0045】
さらに、バッテリの電力を使用するのではなく、トラクションモータ12の回生エネルギを利用して加熱を行うヒータを蓄熱タンク61に設けても良い。
【0046】
加えて、燃料電池10の発電中であっても、蓄熱タンク61内の冷媒の温度が燃料電池10の温度よりも高い場合(出口冷媒温度センサ54による検出温度Tfcよりも貯留冷媒温度センサ64による検出温度Taが高い場合)に、蓄熱タンク61内の冷媒を燃料電池10に送って、燃料電池10を加温して発電効率向上に利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1…燃料電池システム、4…冷媒配管系(冷媒循環系)、5…制御装置(貯留冷媒供給制御部)、10…燃料電池、53…冷媒ポンプ(貯留冷媒供給制御部)、61…蓄熱タンク(冷媒貯留部)、62…三方切替弁(貯留冷媒供給制御部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、該燃料電池に冷媒を循環させるための冷媒循環系と、を備える燃料電池システムであって、
前記冷媒循環系に、冷媒を保温状態で貯留可能な冷媒貯留部と、該冷媒貯留部からの冷媒の前記燃料電池への供給を制御する貯留冷媒供給制御部とを備え、
前記貯留冷媒供給制御部は、前記燃料電池の掃気処理前あるいは掃気処理時に前記冷媒貯留部から冷媒を前記燃料電池に供給する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記貯留冷媒供給制御部は、前記燃料電池の温度が前記冷媒貯留部に貯留されている前記冷媒の温度よりも低い場合に、当該冷媒を前記燃料電池に供給する燃料電池システム。

【図1】
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