説明

燃料電池システム

【課題】高温環境下であっても、水の回収性が良く直噴水の不足を防止できる直噴水タイプの燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】本発明によれば、給気経路における下流側熱交換器より空気取入口側の供給空気、即ち、下流側熱交換器に流入される前の供給空気に対して、第2の水供給手段により液体水を霧状に噴射することができるように構成されている。かかる構成により、下流側熱交換器に流入される供給空気の温度を、噴霧された液体水の蒸発潜熱によって下げることができる。よって、液体水の噴霧された供給空気が冷却媒体として作用し、下流側熱交換器における水の凝縮能力を高めることができる。その結果、かかる下流側熱交換器における液体水の回収性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子型の燃料電池を含む直噴水タイプの燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池の単位セルは、燃料極(水素極、アノード極)と空気極(酸素極、カソード極)との間に固体高分子電解質膜を挟持した構成を有し、燃料極へ供給される燃料ガス(例えば、水素)と空気極へ供給される酸化剤ガス(例えば、空気)とを電気化学的に反応させることにより発電を行う。
【0003】
この発電に伴い発熱した空気極を冷却すると共に固体高分子電解質膜の乾燥を防ぎ発電性能を高める目的で、例えば、特開平11−242962号公報(特許文献1)において、空気極に液体水を霧状に噴射する直噴水タイプの燃料電池システム(燃料電池装置)が提案されている。
【0004】
ここで、図7を参照して、従来における直噴水タイプの燃料電池システムの概略を説明する。図7は、従来の直噴水タイプの燃料電池システム200の構成を示すブロック図である。
【0005】
図7に示すように、従来の燃料電池システム200は、複数の単位セルが積層されて構成される燃料電池スタック140と、燃料ガスとしての水素ガスを、燃料電池スタック140を構成する各単位セルの燃料極へ供給するための水素ガス供給系150と、酸化剤ガスとしての空気を、燃料電池スタック140を構成する各単位セルの空気極へ常圧で供給するための空気供給系160と、燃料電池スタック140の空気極へ霧状の液体水を供給して単位セルを冷却し加湿(湿潤)する水供給系180と、燃料電池スタック140の空気極から排出された排気を排出する排気系120とを備えている。
【0006】
かかる燃料電池システム200では、水素供給系150において水素貯蔵タンク151に貯蔵される水素を燃料電池スタック140における各単位セルの燃料極へ供給すると共に、空気供給系160において送風機161により取り入れた外気(空気)を、空気マニホールド162を介して各単位セルの空気極へ常圧で供給することによって発電を行う。
【0007】
その一方で、水供給系180において水タンク181に貯留されている液体水を給水ポンプ180によってノズル182へ圧送し、このノズル182から、液体水を空気マニホールド162に向けて噴射する。このように空気マニホールド162へ噴射された液体水は、空気供給系162を流通する空気流によって霧状となって燃料電池スタック140に送り込まれ、空気極を冷却し、固体高分子電解質膜を加湿する。
【0008】
排気系120における排気経路上には、凝縮器121が設けられている。この凝縮器121は、燃料電池スタック140の空気極から排出された排気を外気温との熱交換によって冷却し、該排気中に含まれる水分を凝縮して分離する。凝縮器121によって分離された液体水は、回収ポンプ184によって水タンク181へと圧送される。
【0009】
このように、直噴水タイプの燃料電池システム200の水供給系180は、水タンク181に貯留される液体水を燃料電池スタック140の冷却水及び加湿水として供給し、燃料電池スタック140から排出される排気中に含まれる水分を凝縮器121によって凝縮して液体水として回収し、回収した液体水を水タンク181に戻す循環系として構成されている。
【特許文献1】特開平11−242962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、かかる循環系として構成される水供給系180は、外気温が高い場合には、凝縮器121と外気との温度差が小さくなるので、凝縮器121による熱交換(即ち、冷却)能力が低くなる。その結果、凝縮器121による水の凝縮効率が悪くなるため、排気から十分な液体水を回収することができず、燃料電池スタック140へ供給する液体水(直噴水)が不足するという問題があった。直噴水が不足すると、燃料電池スタック140の冷却及び加湿が不十分となり、発電効率の低下が生じる。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、高温環境下であっても、水の回収性が良く直噴水の不足を防止できる直噴水タイプの燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、請求項1記載の燃料電池システムは、固体高分子電解質膜とその固体高分子電解質膜を両側から挟持する燃料極及び空気極とを含んで構成される燃料電池と、燃料ガスを前記燃料極に供給する燃料ガス供給手段と、空気取入口を介して系外から取り入れた供給空気を、給気経路を介して前記空気極へ常圧で供給する酸化剤ガス供給手段と、液体水を貯留する貯水手段と、その貯水手段に貯留されている液体水を霧状に噴射して前記空気極へ前記液体水を供給する第1の水供給手段と、前記燃料電池における前記空気極から排出された排気を系外へ導出する排気経路の前記燃料電池側に位置し、熱交換による前記排気の冷却によって該排気から水分を凝縮して液体水として分離する上流側熱交換器と、その上流側熱交換器より前記排気経路の出口側に位置すると共に、前記給気経路上に位置し、熱交換による前記排気の冷却によって該排気から水分を凝縮して液体水として分離する下流側熱交換器と、前記上流側熱交換器及び下流側熱交換器から液体水を回収して前記貯水手段へ戻す水回収手段と、前記給気経路における前記下流側熱交換器より前記空気取入口側に液体水を霧状に噴射する第2の水供給手段と、を備えている。
【0013】
請求項2記載の燃料電池システムは、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記水回収手段による液体水の回収性を示す指標を取得する水回収性把握手段と、その水回収性把握手段により取得した指標に応じて、前記第2の水供給手段による水の噴射を制御する噴射制御手段を備えている。
【0014】
請求項3記載の燃料電池システムは、請求項2記載の燃料電池システムにおいて、前記貯水手段に貯留される液体水の貯水量を検出する貯水量検出手段を備え、前記水回収性把握手段は、前記貯水量検出手段により検出される貯水量を、前記液体水の回収性を示す指標として取得する。
【0015】
請求項4記載の燃料電池システムは、請求項2記載の燃料電池システムにおいて、系内における水分量の収支に基づいて、前記水回収手段による液体水の推定回収量を算出する回収量推定手段と、前記水回収性把握手段は、前記回収量推定手段により算出される液体水の推定回収量を、前記液体水の回収性を示す指標として取得する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の燃料電池システムによれば、固体高分子型燃料電池の燃料極には、燃料ガス供給手段によって燃料ガスが供給される一方で、空気極には、酸化剤ガス供給手段によって系外から取り入れられた空気(供給空気)が給気経路を介して常圧で供給される。その結果、燃料電池は、燃料ガスと空気との電気化学的反応により発電する。
【0017】
このとき、第1の水供給手段により、貯留手段に貯留されている液体水が空気極へ霧状に噴射(噴霧)される。即ち、請求項1記載の燃料電池システムは、直噴水タイプの燃料電池システムとして構成されるものであり、かかる霧状の液体水(直噴水)によって空気極が冷却され加湿される。
【0018】
燃料電池における空気極から排出された排気は、排気経路上に位置する上流側熱交換器及び下流側熱交換器をこの順で通過し、これらの熱交換器によって冷却された後、排気経路の出口から系外へ導出される。ここで、上流側熱交換器及び下流側熱交換器では、それぞれ、熱交換による冷却によって排気中の水分が凝縮して液体水として分離される。
【0019】
上流側熱交換器及び下流側熱交換器において分離された液体水は、水回収手段によって回収され、貯水手段に戻される。それによって、第1の水供給手段によって燃料電池の空気極へ冷却水及び加湿水として供給するための液体水を、水回収手段によって該空気極から排出される排気から回収して循環する系が構成される。
【0020】
ここで、請求項1記載の燃料電池システムによれば、給気経路における下流側熱交換器より空気取入口側の供給空気、即ち、下流側熱交換器に流入される前の供給空気に対して、第2の水供給手段により液体水を霧状に噴射(噴霧)することができるように構成されている。
【0021】
かかる構成により、下流側熱交換器に流入される供給空気の温度を、噴霧された液体水の蒸発潜熱によって下げることができる。よって、液体水の噴霧された供給空気が冷却媒体として作用し、下流側熱交換器における水の凝縮能力を高めることができる。その結果、かかる下流側熱交換器における液体水の回収性を向上させることができる。
【0022】
従って、熱交換器による液体水の回収性が低くなる傾向にある高温環境下であっても、液体水を十分に回収して貯水手段に戻すことができるので、第1の水供給手段により燃料電池の空気極へ供給される液体水の量が、燃料電池の冷却や加湿を行うのに不十分な量となることを防止することができるという効果がある。
【0023】
請求項2記載の燃料電池システムによれば、請求項1記載の燃料電池システムの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。第2の水供給手段は、噴射制御手段により、水回収性把握手段によって取得された水回収手段による液体水の回収性を示す指標に応じて制御されるように構成されている。
【0024】
このように、第2の水供給手段による液体水の噴射を必要に応じて行わせることにより、下流側熱交換器における液体水の回収性を必要に応じて高めることができるという効果がある。従って、例えば、水回収性把握手段により取得された指標が水回収性の低さを示す場合に、第2の水供給手段によって液体水の噴射を行わせるよう制御させることにより、下流側熱交換器における液体水の回収性を高めることができ、結果として、第1の水供給手段により燃料電池の空気極へ供給される液体水の量が、燃料電池の冷却や加湿を行うのに不十分な量となることを好適に防止することができる。
【0025】
請求項3記載の燃料電池システムによれば、請求項2記載の燃料電池システムの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。貯水量検出手段により検出される貯水手段の貯水量が、水回収性把握手段により、液体水の回収性を示す指標として取得される。よって、液体水の回収性を示す指標を容易に取得することができるので、噴射制御手段による制御、即ち、液体水の回収性を向上させるための制御を容易に行うことができるという効果がある。
【0026】
請求項4記載の燃料電池システムによれば、請求項2記載の燃料電池システムの奏する効果に加えて、次の効果を奏する。系内における水分量の収支に基づいて回収量推定手段により算出された水回収手段による液体水の推定回収量が、水回収性把握手段により、液体水の回収性を示す指標として取得される。よって、液体水の回収性を示す指標が液体水の推定回収量であるので、噴射制御手段による制御、即ち、液体水の回収性を向上させるための制御を、予測制御(見込み制御)によって行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の燃料電池システムである燃料電池システム100の一実施形態を示すブロック図である。
【0028】
この燃料電池システム100は、燃料電池スタック40と、燃料ガスとしての水素ガスを、燃料電池スタック40を構成する各単位セル10(図4など参照)の燃料極(水素極、アノード極)13(図4参照)へ供給するための水素ガス供給系50と、酸化剤ガスとしての空気を、燃料電池スタック40を構成する各単位セル10の空気極(酸素極、カソード極)12(図4参照)へ供給するための空気供給系60と、燃料電池スタック40を構成する各単位セル10の空気極12へ霧状の液体水を供給して単位セル10を冷却し加湿する水供給系80と、燃料電池スタック40(各単位セル10の空気極12)から排出される排気を系外へ排出する排気系110とを備えている。
【0029】
なお、図1に示す燃料電池システム100では、空気(供給空気、排気)の流通経路(空気供給路63や空気排出路111など)を最も太い実線により表しており、水素ガスの流通経路(水素ガス供給流路51aやガス導出路51dなど)を次に太い実線で表しており、水の流通経路(導水路81aや給水路81cなど)を点線で表している。また、燃料電池スタック40からの電気的な出力経路を二点鎖線で表している。
【0030】
燃料電池スタック40は、単位セル10(図4など参照)と、隣接する単位セル10の間に介装されて隣接する単位セル10を電気的に接続するセパレータ20(図4など参照)とを、単位セル10及びセパレータ20の厚み方向に積層した構成とされている。なお、燃料電池スタック40(各単位セル10)は、本発明の燃料電池システムを構成する燃料電池に該当する。
【0031】
水素ガス供給系50は、本発明の燃料電池システムを構成する燃料ガス供給手段に該当し、水素源となる水素ボンベである水素貯蔵タンク52と、その水素貯蔵タンク52に一端側が接続される水素ガス供給流路51aと、その水素ガス供給流路51aに一端側が接続され、他端側が燃料電池スタック40のガス取入口41に接続される水素ガス供給流路51bとを含んで構成される。
【0032】
なお、水素ガス供給流路51aには、水素貯蔵タンク52の側から水素ガスの流通方向に向かって、水素元電磁弁(図示せず)と、一次圧センサ(図示せず)と、レギュレータ(図示せず)と、二次圧センサSE1と、並列接続される水素調圧弁53a及び水素起動電磁弁(図示せず)と、ガス供給弁53bと、三次圧センサSE2とが順に設けられている。
【0033】
また、水素ガス供給系50は、燃料電池スタック40のガス排出口42に一端側が接続されるガス排出流路51cと、そのガス排出流路51cの他端側に接続され、ガス排出口42から排出された水素ガスに含まれる水を回収するためのトラップ54とを含んでいる。
【0034】
さらに、水素ガス供給系50は、トラップ53に一端側が接続され、他端側が後述する排気流路111に接続されて、燃料電池スタック40から排出された水素ガスを系外へ導出するためのガス導出路51dを含んでいる。このガス導出路51dには、排気電磁弁53fが設けられている。
【0035】
加えて、水素ガス供給系50は、トラップ53に一端側が接続されて、燃料電池スタック40から排出された水素ガスを循環させる循環流路51eを有している。なお、この循環流路51eには、トラップ54の側からガスの流通方向に向かって、循環ポンプ55と、循環調圧弁53cとが順に設けられている。
【0036】
また、水素ガス供給系50は、一端側が水素ガス供給流路51bに接続される外気導入路51gを有している。この外気導入路51gの他端側は外部に開口している。外気導入路51gには、開口側から順に、フィルタ56と、外気導入電磁弁53dとが設けられている。なお、循環流路51eにおけるガスの出口側の端部は、外気導入路51gにおける外気導入電磁弁53dよりも水素ガス供給流路51bの側に接続されている。
【0037】
また、水素ガス供給系50は、減圧排出路51fを有している。この減圧排出路51fは、循環流路51eにおける循環ポンプ55と循環調圧弁53cとの間に一端側が接続され、他端側が後述する排気流路111に接続されている。この減圧排出路51fには、減圧電磁弁53eが設けられている。
【0038】
空気供給系60は、給気経路である空気供給路63と、燃料電池スタック40における図示されない空気流路の上流側に設けられ、空気供給路63の出口側の端部が接続される空気マニホールド62とを含んで構成される。
【0039】
空気供給路63には、外気の取入口側から空気の流通方向に向かって、フィルタ64と、外気温センサSE6と、シロッコファンやターボファンなどの空気ファン61と、空気入口温度センサSE5とが順に設けられている。
【0040】
かかる構成を有する空気供給系60は、空気ファン61の駆動によって系外から取り入れた外気を、空気供給路63及び空気マニホールド62を介して、燃料電池スタック40の空気流路へ供給する。よって、本実施形態の燃料電池システム100は、常圧の空気(酸化剤ガス)を燃料電池スタック40に供給するシステムである。なお、この空気供給系60は、本発明の燃料電池システムを構成する酸化剤ガス供給手段に該当する。
【0041】
また、図1に示すように、空気供給路63の経路上(具体的には、フィルタ64と空気ファン61との間)に、下流側熱交換器としての下流側凝縮器113が配設されている。
【0042】
排気系110は、燃料電池スタック40における空気流路の下流側に設けられた図示されない排気マニホールドに一端側が接続される排気経路として空気排出路111を含んで構成される。
【0043】
この空気排出路111の経路上には、燃料電池スタック40の側から空気(排気)の流通方向に向かって、排気温度センサSE9と、上流側熱交換器としての上流側凝縮器112と、下流側熱交換器としての下流側凝縮器113と、凝縮器排気温センサ(図示せず)と、フィルタ114とが順に設けられ、フィルタ114を通過した排気が系外へと排出される。
【0044】
上流側凝縮器112及び下流側凝縮器113は、どちらも、外気温との熱交換によって排気の温度を冷却(調整)し、排気中に含まれる水分を凝縮により分離して回収するものである。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム100では、上流側凝縮器112の容量の方が、下流側凝縮器113の容量より大きく、それによって、上流側凝縮器112の熱交換容量の方が、下流側凝縮器113の熱交換容量より大きくなるように構成されている。よって、燃料電池スタック40から排出された高温の排気を、まず、上流側凝縮器112にて外気温程度に十分に冷却した後、下流側凝縮器113へ流入させることができる。
【0046】
詳細は後述するが、本実施形態の燃料電池システム100では、下流側凝縮器113に流入される前の供給空気に対してノズル83bから液体水を霧状に噴射(噴霧)し、その水の蒸発潜熱を利用して下流側凝縮器113に流入される供給空気の温度を外気温以下に下げることによって、下流側凝縮器113における水の凝縮能力を高め、水の回収性を向上させるように構成されている。
【0047】
従って、燃料電池スタック40から排出された高温の排気が上流側凝縮器112にて十分に冷却されたことによって、下流側凝縮器113の内部の温度を比較的低い温度に抑制することができる。そのため、高温の気体の高い飽和蒸気圧によって水分が系外へ持ち出されることを防ぐことができると共に、液体水の噴霧によって冷却された供給空気による排気からの水の凝縮を高効率に行うことができる。
【0048】
図1に示すように、上流側凝縮器112には、放熱用のファン112aが設けられている。かかるファン112aにより上流側凝縮器112からの熱の放出量を調整することができる。
【0049】
水供給系80は、水タンク82と、その水タンク82に一端側が接続され、水タンク82に貯留されている水を燃料電池スタック40へ供給するための給水路81cを含んで構成される。なお、この水供給系80における給水路81cは、本発明の燃料電池システムを構成する第1の水供給手段に該当する。
【0050】
水タンク82は、燃料電池スタック40へ冷却水及び加湿水となる水を供給するための水を貯留するものであり、この水タンク82には、水温センサSE7と、水位センサSE8とが設けられている。
【0051】
給水路81cには、水タンク82の側から水の流通方向に向かって、フィルタ84と、給水ポンプ85と、水供給電磁弁86と、給水路81cからの水の出口となるノズル83aとが順に設けられている。
【0052】
ノズル83aの先端は、空気マニホールド62に向けられており、給水路81cを介して水タンク82から導かれた水は、ノズル83aの先端から噴射される。ノズル83aから空気マニホールド62へ向けて噴射された水は、空気供給系60を流通する供給空気の流れによって霧状となって燃料電池スタック40へ送り込まれる。この霧状に噴射された水は、各単位セル10(図4など参照)の空気極12へと流れ込み、燃料電池スタック40に対する冷却水及び加湿水として作用する。
【0053】
また、給水路81cにおける水タンク82とフィルタ84との間には、外気取入路81dが接続されており、この外気取入路81には、外気取入電磁弁87が設けられている。
【0054】
図1に示すように、水供給系80はまた、上流側凝縮器112により回収された水を水タンク82へ導く導水路81aと、下流側凝縮器113により回収された水を水タンク82へ導く導水路81bとを含んでいる。なお、この水供給系80における導水路81a,81bは、本発明の燃料電池システムを構成する水回収手段に該当する。
【0055】
導水路81aは、その一端側が上流側凝縮器112に接続され、他端側が水タンク82に接続された経路であり、この導水路81aには、回収ポンプ88が設けられている。また、導水路81bは、その一端側が下流側凝縮器113に接続され、他端側が導水路81aにおける上流側凝縮器112と回収ポンプ88との間に接続されている。
【0056】
このように、水供給系80は、水タンク82に貯留される液体水を、給水路81cを介して燃料電池スタック40の冷却水及び加湿水として供給し、燃料電池スタック40から排出される排気中に含まれる水分を凝縮器112,113によって凝縮して液体水として分離し、かかる水を導水路81a,81bを介して水タンク82に戻す循環系として構成されている。
【0057】
また、 図1に示すように、水供給系80は、給水路81cにおける給水ポンプ85より燃料電池スタック40側から分岐し、水タンク82に貯留されている水を、下流側凝縮器113へ流入する前の空気へ供給するための給水路81eを含んでいる。なお、この水供給系80における給水路81eは、本発明の燃料電池システムを構成する第2の水供給手段に該当する。
【0058】
給水路81eは、上述のように給水路81cにおける給水ポンプ85より燃料電池スタック40側から分岐した水の流通経路であり、他端側が、空気供給路63における下流側凝縮器113とフィルタ64との間に接続されている。この給水路81eには、水タンク82の側から水の流通方向に向かって、水供給電磁弁89と、給水路81eからの水の出口となるノズル83bとが順に設けられている。
【0059】
給水路81eを流通してきた水は、ノズル83bの先端から、空気供給路63を流通する空気(供給空気)に向けて噴霧される。その結果、噴霧された水の蒸発潜熱によって供給空気が外気温以下に冷却された後、下流側凝縮器113に流入される。
【0060】
よって、下流側凝縮器113に流入する供給空気(即ち、系外から取り入れられ、水が噴霧された供給空気)が冷却媒体として作用し、その結果、下流側凝縮器113における水の凝縮能力が高まり、下流側凝縮器113における水の回収性が向上する。
【0061】
なお、詳細は後述するが、本実施形態の燃料電池システム100は、水位センサSE8によって水タンク82に貯留される貯留水の水位が所定レベル以下となった場合に、水供給電磁弁89を開放してノズル83bから水を噴霧させ、それによって、下流側凝縮器113における水の回収性を向上させるように構成されている。
【0062】
以上のように構成された燃料電池システム100を運転する場合には、空気ファン61を駆動させ、系外から取り入れた外気(空気)を燃料電池スタック40の空気流路内へ供給すると共に、水供給系80の給水ポンプ85を駆動させて水を供給する。一方で、水素ガス供給系50の各電磁弁(電磁弁51a〜51gなど)を調整し、水素ガスを所定の圧力として燃料電池スタック40の水素ガス流路内へ供給する。
【0063】
その結果、燃料電池スタック40を構成する各単位セル10にて水素と酸素とによる水生成反応(電極反応)が行われ、生じた電流が負荷系90へ流れる。かかる燃料電池システム100の運転中は、霧状となって供給される水によって各単位セル10が冷却及び加湿される。
【0064】
上記構成を有する燃料電池システム100には、負荷系90が接続されており、燃料電池スタック40から出力される電力は、この負荷系90に供給される。燃料電池スタック40の電極は、配線91を介して、リレー92,93に接続されている。さらに、これらのリレー92,93には、インバータ94を介してモータ95に接続されている。また、インバータ94には、出力制御装置95を介して補助電源96が接続されている。この負荷系90には、燃料電池スタック40の出力電圧を検出する電圧センサSE4と、燃料電池スタック40の出力電流を検出する電流センサSE3とが設けられている。
【0065】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池システム100の運転を制御する制御装置70をさらに有している。この制御装置70は、中央演算処理装置であるCPU71と、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであるROM72と、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するRAM73と、これらのCPU71、ROM72、及びRAM73とバスライン74を介して接続される入出力ポート75とから主に構成される。
【0066】
この制御装置70の入出力ポート75には、図示されない配線によって、各センサ(センサSE1〜SE9など)、各電磁弁(電磁弁51a〜51f,86,87など)、各ポンプ85,88、空気ファン61、インバータ94、及び出力制御装置95などに接続されている。制御装置70は、各センサからの検出値の入力に基づいて、各電磁弁(電磁弁51a〜51f,86,87など)、各ポンプ85,88、空気ファン61、インバータ94、及び出力制御装置95などの制御等、燃料電池システム100を運転するための各種制御を行う。
【0067】
また、図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム100では、制御装置70の入出力ポート75が、水タンク82に貯留される貯留水の水位を検出する水位センサSE8と、給水路81e上に設けられている水供給電磁弁89とに接続されている。
【0068】
詳細は後述するが、本実施形態の燃料電池システム100の制御装置70は、水位センサSE8による検出値(即ち、水タンク82に貯留される貯留水の水位)が所定レベル以下となった場合に、水の回収性が低いと判断し、下流側凝縮器113による水の回収性を上げるべく水供給電磁弁89を開放する。
【0069】
次に、図2〜図4を参照して、燃料電池スタック40の構成について説明する。図2(a)は、本実施形態における燃料電池スタック40を模式的に示す上面図であり、図2(b)は、燃料電池スタック40を構成するセルモジュール30を模式的に示す上面図である。なお、図2(a)では、2つのセルモジュール30を代表として図示し、その他のセルモジュール30の図示を省略している。また、図2(b)では、理解を容易にする目的で、単位セル10とセパレータ20との位置関係のみ図示し、具体的構成は省略している。
【0070】
また、図3(a)は、セルモジュール30を空気極側から見た正面図であり、図3(b)は、セルモジュール30を燃料極側から見た正面図である。図4(a)は、図3(a)のIVa−IVa矢視要部断面図であり、図4(b)は、図3(a)の矢視要部断面図である。
【0071】
図2(a)に示すように、本実施形態における燃料電池スタック40は、セルモジュール30を複数積層して構成される。
【0072】
セルモジュール30は、図2(b)に示すように、単位セル10と、隣接する単位セル10の間に介装されて隣接する単位セル10を電気的に接続するセパレータ20とを、単位セル10及びセパレータ20を支持するフレーム17,18を1セットとして、厚み方向に複数セット積層して構成される。なお、図2(b)に例示されるセルモジュール30は、単位セル10及びセパレータ20などを含む1セットが10セット積層されたものである。
【0073】
セルモジュール30は、隣接する単位セル10が所定の間隔に離間されて配置されるように、単位セル10とセパレータ20とが、2種類のフレーム17,18を交互にスペーサとして多段に重ねられて積層されている。
【0074】
セルモジュール30における積層方向の一端(図2(a)における上端面側)は、図3(a)に示すように、セパレータ20の空気極側コレクタ22の端面とフレーム17の端面とで終端している。一方で、セルモジュール30における積層方向の他端(図2(a)における下端面側)は、図3(b)に示すように、セパレータ20の燃料極側コレクタ23の端面とフレーム18の端面とで終端している。
【0075】
図4(a)及び図4(b)に示すように、単位セル10は、固体高分子電解質膜11と、その固体高分子電解質膜11の一方の面に当接する空気極12と、固体高分子電解質膜11の他方の面に当接する燃料極13とから構成されている。
【0076】
固体高分子電解質膜11としては、例えば、Nafion(登録商標:デュポン社製)やAciplex(登録商標:旭化成(株)製)など、固体高分子型燃料電池に適用可能な固体高分子電解質膜を使用することができる。
【0077】
空気極12は、空気(酸化剤ガス)を拡散しながら透過する導電性材料からなる拡散層(図示せず)と、その拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜11に当接される反応層(図示せず)とから構成されている。
【0078】
燃料極13は、水素ガス(燃料ガス)を拡散しながら透過する導電性材料からなる拡散層(図示せず)と、その拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜11に当接される反応層(図示せず)とから構成されている。
【0079】
なお、空気極12及び燃料極13を構成する拡散層は、ガス拡散が可能なカーボン製の織物やカーボン製の紙等から構成されるものであり、例えば、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボン繊維からなる不織布等を用いることができる。また、空気極12及び燃料極13を構成する反応層しては、例えば、白金触媒が担持されたカーボンとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とを含んで構成された反応層(触媒層)を採用することができる。
【0080】
単位セル10を構成する部材のうち、空気極12及び燃料極13は、それらの支持部材とされるフレーム18開口部の横方向寸法(短手方向寸法)より若干長い横方向寸法と、開口部の縦方向寸法(長手方向寸法)より若干長い縦方向寸法を有するものとされている。また、固体高分子電解質膜11は、開口部の縦横方向寸法より一回り大きな縦横方向寸法を有するものとされている。
【0081】
セパレータ20は、セパレータ本体21と、そのセパレータ本体21の一側に設けられ、単位セル10の空気極12の拡散層(図示せず)に当接される空気極側コレクタ22と、セパレータ本体21の他側に設けられ、単位セル10の燃料極13の拡散層(図示せず)に当接される燃料極側コレクタ23とから構成される。
【0082】
セパレータ本体21は、隣接する単位セル10間のガス遮断部材として機能する板厚の薄い金属薄板である。セパレータ本体21を構成する金属としては、導電性と耐蝕性とを有する金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金などに金メッキなどの耐蝕導電処理を施したものが挙げられる。
【0083】
空気極側コレクタ22は、空気極12と接触して集電すると共に、空気極12への空気の供給と空気極12からの生成水の排出とを可能にする多数の孔を有する導電性部材である。また、空気極側コレクタ22は、放熱板としても機能し、水供給系80のノズル83(図1参照)から噴射(噴霧)される水によって冷却される。なお、この空気極側コレクタ22の詳細構成については、図5などを参照して後述する。
【0084】
燃料極側コレクタ23は、燃料極13と接触して集電すると共に、燃料極13への水素ガスの供給を可能にする多数の孔を有する導電性部材である。なお、この燃料極側コレクタ23は、空気極側コレクタ22と同様に構成できるので、詳細な説明は省略する。
【0085】
セパレータ20の外側には、単位セル10を含めて所定の位置関係に保持できるよう、フレーム17,18が配置される。これらのフレーム17,18は、絶縁性材料から構成される。
【0086】
より具体的には、空気極側コレクタ22の左右両側にフレーム17が配置され、燃料極側コレクタ23の周縁部にフレーム18が設けられている。なお、最も外端に配置されるフレーム17は、図3に示すように、その上下端が相互にバックアッププレート17a及び17bによって連結されて枠状に構成されている。
【0087】
図4(a)及び図4(b)に示すように、空気極側コレクタ22側に配置されるフレーム17は、外端(図4(a)における最上端、図4(b)における左端)に配置されるものを除き、空気極側コレクタ22の短辺に沿う両側に配置される縦枠部171から構成されている。このフレーム17の板厚は、空気極側コレクタ22の厚みに匹敵する厚さとされている。
【0088】
縦枠部171には、板厚方向に貫通する長孔172が水素ガス流路形成のために設けられている。なお、セパレータ本体21の面における縦横方向寸法は、フレーム17の面における縦横方向寸法に匹敵する大きさとされ、フレーム17の長孔172に重なる位置に、同様の長孔212を備える構成とされている。
【0089】
かかるフレーム17の配置により、左右両側の縦枠部171の間には、単位セル10の空気極12とセパレータ本体21とで囲まれた空気室が形成される。なお、詳細は後述するが、かかる空気室内には、図4(a)における紙面垂直方向に延びる線状のリブ部材222(空気極側コレクタ22の一部)が、複数本、平行に立設されており、かかるリブ部材222の設置により、一方向(図4(a)における紙面垂直方向)に全通する空気流路が形成される。
【0090】
一方、図4(b)に示すように、燃料極側コレクタ23及び単位セル10を囲むフレーム18は、左右縦枠部と上下横枠部182とを有する枠状部材であり、枠状に構成されたフレーム17(図3(a))と同じ大きさに構成されている。なお、フレーム18における左右縦枠部は、図4(a)の記載範囲よりさらに右側に位置するために図示されていないが、フレーム17の両縦枠部171の左右両側端と同じ位置に両側端を有し、短手方向長さ(幅)が上下横枠部182の短手方向長さと略同じに構成されている。
【0091】
図4(a)に示すように、かかるフレーム18は、外端(図2(b)における最下端、図3(b)示す面)に配置されるものを除き、左右縦枠部と平行に延び、燃料極側コレクタ23の左右端(図4(a)における左右方向の端部)に重なる薄板状のバックアッププレート18aと厚板状のバックアッププレート18bとから構成されている。なお、フレーム18の板厚は、燃料極側コレクタ23の厚みに匹敵する厚さとされている。
【0092】
バックアッププレート18aと縦枠部171とにより囲まれる空間が、上述したフレーム17を板厚方向に貫通する長孔172と共に、水素ガス流路形成のための空間を構成している。また、各フレーム18の内周側に、単位セル10の燃料極13とセパレータ本体21とで囲まれた燃料室が形成される。
【0093】
なお、かかる燃料室内には、リブ部材222と直交する方向(即ち、図4(b)における紙面垂直方向、図4(a)における左右方向)に延びる線状のリブ部材232(燃料極側コレクタ23の一部)が、複数本、平行に立設されている。かかるリブ部材232の設置により、上述した空気流路に直交する方向に(図4(b)における紙面垂直方向)に全通する水素ガス流路が形成される。
【0094】
次に、図5を参照して、空気極側コレクタ22の詳細構成について説明する。図5(a)は、空気極側コレクタ22をセパレータ本体21側から見た正面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるVb方向から見た側面図である。なお、図5(a)及び図5(b)では、ベースコレクタ221に開口される孔221a,221bの図示を省略している。
【0095】
図5(a)及び図5(b)に示すように、本実施形態の空気極側コレクタ22は、ベースコレクタ221と、複数本のリブ部材222とから構成される。
【0096】
ベースコレクタ221は、単位セル10の空気極12に当接され、空気極12から集電する導電性の板状体である。かかるベースコレクタ221は、導電性と耐蝕性とを有する金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金などに金メッキなどの耐蝕導電処理を施したものから作製される。
【0097】
また、ベースコレクタ221は、多数の孔が開口された多孔体、例えば、エキスパンドメタルやパンチングメタルなどから構成される。なお、ベースコレクタ221に開口される孔の形状は、本実施形態では図示を省略するが、例えば、菱形や、正方形や、六角形や、円形等の形状を適宜採用することができる。
【0098】
ベースコレクタ221に開口される孔は、その形状が菱形である場合には、例えば、短い方の対角寸法を約0.7mm〜約1.3mm程度に、長い方の対角寸法を約0.8mm〜約2.8mm程度に設計することができる。また、ベースコレクタ221に開口される孔の開口率は、約30〜約50%程度であることが好ましい。
【0099】
一方、複数本のリブ部材222は、図5(a)及び図5(b)に示すように、各々、矩形状の断面を有する線状体であり、これらのリブ部材222は、ベースコレクタ221における空気極12との当接面とは反対側の面に、互いに略平行に配列された状態で立設される。リブ部材222は、例えば、拡散接合によってベースコレクタ221の表面に接合される。
【0100】
このように、ベースコレクタ221上に立設されたリブ部材222は、空気極側コレクタ22において、ベースコレクタ221とセパレータ本体21との間に介挿されて、空気流路(空気室)となる空間を形成する。
【0101】
燃料電池における高効率発電を実現すると共に、補機の動力損失を抑えるためには、空気流路の空気流れ抵抗を極力低くすることが好ましい。よって、単位セル10に空気を供給する流路の高さ、即ち、リブ部材222の高さ寸法を適切に確保する必要がある一方で、燃料電池スタック40の小型化、即ち、セルモジュール30の小型化を図るためには、リブ部材222の高さ寸法は低ければ低いほど好ましい。従って、リブ部材222の高さ寸法は、これらの条件を両立する高さに設定され、例えば、約0.5mm〜約0.9mm程度に設定される。
【0102】
このリブ部材222は、導電性と耐蝕性とを有する金属から構成されている。なお、リブ部材222を構成する材料(材質)は、上述したベースコレクタ221と同材料であっても、相違する材料であってもよい。また、リブ部材222の断面形状は、図5(b)に示した矩形状に限らず、例えば、三角形や円形など、他の形状であってもよい。
【0103】
なお、燃料極側コレクタ23も、空気極側コレクタ22と同様に構成することができる。即ち、燃料極側コレクタ23を、ベースコレクタ221に相当するベースコレクタ231(図4(b)参照)と、リブ部材222に相当するリブ部材232(図4(b)参照)とから構成すればよい。
【0104】
次に、図6を参照して、上記構成を有する燃料電池システム100において、下流側凝縮器113からの水の回収性を制御する方法について説明する。図6は、燃料電池システム100における制御装置70において実行される水供給電磁弁開閉処理を示すフローチャートである。
【0105】
この水供給電磁弁開閉処理は、水位センサSE8による検出値に応じて水供給電磁弁89を開閉するための処理であり、制御装置70の電源が投入されている間、CPU71により定期的に(例えば、0.5s間隔で)繰り返し実行される。なお、この水供給電磁弁開閉処理を実行する制御プログラムは、ROM72内に格納されている。
【0106】
図7に示すように、この供給空気温度調整処理では、まず、水位センサSE8による検出値、即ち、水タンク82に貯留される貯留水の水位を示す検出値を、液体水の回収性を示す指標として取得する(S1)。S1の処理後、取得された指標、即ち、水位センサSE8による検出値が示す水位が、低い側の閾値である第1閾値未満であるか否かを確認する(S2)。
【0107】
S2の処理により確認した結果、水位が第1閾値未満である場合には(S2:Yes)、水の回収性が低いと判断して、水供給電磁弁89を開放し(S3)、この水供給電磁弁開閉処理を終了する。
【0108】
S3の処理により水供給電磁弁89が開放されると、ノズル83bから水が空気供給路63へ向けて霧状に噴射(噴霧)されて、水の蒸発潜熱によって供給空気が冷却される。その結果、そのように冷却された供給空気が下流側凝縮器113へ流入されるので、供給空気(即ち、水が噴霧された供給空気)が冷却媒体として作用して、下流側凝縮器113における液体水の回収性が向上する。
【0109】
一方、S2の処理により確認した結果、水位が第1閾値以上である場合には(S2:No)、S1の処理によって取得された検出値が示す温度が、高い側の閾値である第2閾値以上であるか否かを確認する(S4)。
【0110】
S4の処理により確認した結果、水位が第2閾値以上である場合には(S4:Yes)、水は十分に回収されていると判断して、水供給電磁弁89を閉鎖し(S5)、この水供給電磁弁開閉処理を終了する。S5の処理により、水供給電磁弁89が開放されると、ノズル83bからの水の噴霧が停止する。
【0111】
一方、S4の処理により確認した結果、水位が第2閾値未満である場合には(S4:No)、何も行うことなく、即ち、水供給電磁弁89の開閉状態を維持したまま、この水供給電磁弁開閉処理を終了する。
【0112】
この水供給電磁弁開閉処理によれば、水供給電磁弁89の開閉を、水位センサSE8による検出値に応じて制御するように構成されている。よって、下流側凝縮器113へ流入される前の供給空気に対し、水を必要に応じて噴霧することができる。
【0113】
また、この水供給電磁弁開閉処理によれば、水位センサSE8による検出値に応じて、水供給電磁弁89の開閉、即ち、ノズル83bからの水の噴霧を制御するので、水の回収性を向上させるための制御を容易に行うことができる。
【0114】
なお、上述した水供給電磁弁開閉処理におけるS1の処理が、本発明における水回収性把握手段に該当する一方で、S2,S3,S4,S5の処理が、本発明における噴射制御手段に該当する。
【0115】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム100によれば、下流側凝縮器113へ流入される前の供給空気に対し、水を霧状に噴射(噴霧)できるように構成されているので、供給空気を水の蒸発潜熱により外気温以下に冷却させてから下流側凝縮器113へ流入させることができ、このように冷却された供給空気を冷却媒体として作用させることができる。よって、下流側凝縮器113における水の凝縮能力を高めることができ、かかる下流側凝縮器113における液体水の回収性を向上させることができる。
【0116】
従って、凝縮器(熱交換器)による液体水の回収性が低くなる傾向にある高温環境下であっても、下流側凝縮器113による水の回収性を向上させることにより、燃料電池スタック40から排出される排気から水分を十分に回収し、水タンク82へ戻すことができる。
【0117】
よって、水タンク82の水量が過剰に減少し、給水路81cを介してノズル83aから燃料電池スタック40へ供給される液体水の量が、燃料電池スタック40の冷却や加湿を行うのに不十分な量となることを防止することができる。その結果、冷却及び加湿不足による燃料電池スタック40の発電効率の低下が防止される。
【0118】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0119】
例えば、上記実施形態では、上流側凝縮器112と下流側凝縮器113とを各々別体の凝縮器として構成した。これに換えて、1の凝縮器の内部を2区画に分離し、外気の導入部を2区画のうち、排気経路の出口側(即ち、排気経路の下流側)に位置する区画から導入するように構成してもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、液体水の回収性を示す指標として水位センサSE8の検出値を使用する構成としたが、系内における水分量の収支に基づいて回収量推定手段により液体水の推定回収量を算出し、算出された推定回収量を液体水の回収性を示す指標として使用する構成としてもよい。
【0121】
例えば、空気排出路111における下流側凝縮器113とフィルタ114との間に設けられている凝縮器排気温センサ(図示せず)により検出される排気の温度と、系外からの空気の取り入れ量(即ち、空気の供給量)とから水の推定回収量を算出し、その値を液体水の回収性を示す指標として使用することができる。
【0122】
この場合には、算出された推定回収量が所定量より低い場合に、水供給電磁弁89を開放するように制御を行うようにすればよい。なお、所定量としては、ノズル83aから噴霧する水量(即ち、燃料電池スタック40への水の供給量)であったり、その水量に所定のオフセットを加えた値などを採用することができる。
【0123】
このように、系内における水分量の収支に基づいて算出される推定回収量を液体水の回収性を示す指標として使用することにより、液体水の回収性を向上させるための制御を、予測制御(見込み制御)によって行うことができる。
【0124】
また、水位センサSE8の検出値に換えて、水タンク82の重量など、水タンク82内の水量を表す値をを液体水の回収性を示す指標とする構成であってもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、下流側凝縮器113へ流入される前の供給空気に対して噴霧する水(即ち、ノズル83bから噴霧される水)と、燃料電池スタック40に対して冷却及び加湿のために噴霧する水(即ち、ノズル83aから噴霧される水)とが、どちらも同一の水タンク82から給水されるように構成したが、ノズル83bから噴霧される水と、ノズル83aから噴霧される水とが、各々、専用の水タンクから給水される構成としてもよい。なお、上記実施形態のように、水タンク82を給水源として共用する構成とすることによって、システムの大型化を抑制しつつ、液体水の回収性を向上させることができる。
【0126】
また、上記実施形態では、水位センサSE8による検出値が示す水位と比較する閾値として、第1閾値と第2閾値との2つの閾値を用いる構成としたが、1つの閾値のみを用いて、その閾値以上であるか以下であるかに応じて水供給電磁弁89の開閉を制御するように構成してもよい。あるいは、2つ以上の閾値を用いて水供給電磁弁89の開閉を制御する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の燃料電池システムである燃料電池システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】(a)は、燃料電池スタックを模式的に示す上面図であり、(b)は、燃料電池スタックを構成するセルモジュールを模式的に示す上面図である。
【図3】(a)は、セルモジュールを空気極側から見た正面図であり、(b)は、セルモジュールを燃料極側から見た正面図である。
【図4】(a)は、図3(a)のIVa−IVa矢視要部断面図であり、(b)は、図3(a)の矢視要部断面図である。
【図5】(a)は、空気極側コレクタをセパレータ本体側から見た正面図であり、(b)は、(a)におけるVb方向から見た側面図である。
【図6】制御装置において実行される供給空気温度調整処理を示すフローチャートである。
【図7】従来の直噴水タイプの燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0128】
10 単位セル(燃料電池)
11 固体高分子電解質膜
12 空気極
13 燃料極
40 燃料電池スタック(燃料電池)
50 水素供給系(燃料ガス供給手段)
60 空気供給系(酸化剤ガス供給手段)
63 空気供給経路(給気経路)
80 水供給系(第1の水供給手段、水回収手段、第2の水供給手段)
81a 導水路(水回収手段)
81b 導水路(水回収手段)
81c 給水路(第1の水供給手段)
81e 給水路(第2の水供給手段)
82 水タンク(貯水手段)
100 燃料電池システム
111 空気排出路(排気経路)
112 上流側凝縮器(上流側熱交換器)
112a 放熱用のファン
113 下流側凝縮器(下流側熱交換器)
SE8 水位センサ(貯水量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜とその固体高分子電解質膜を両側から挟持する燃料極及び空気極とを含んで構成される燃料電池と、
燃料ガスを前記燃料極に供給する燃料ガス供給手段と、
空気取入口を介して系外から取り入れた供給空気を、給気経路を介して前記空気極へ常圧で供給する酸化剤ガス供給手段と、
液体水を貯留する貯水手段と、
その貯水手段に貯留されている液体水を霧状に噴射して前記空気極へ前記液体水を供給する第1の水供給手段と、
前記燃料電池における前記空気極から排出された排気を系外へ導出する排気経路の前記燃料電池側に位置し、熱交換による前記排気の冷却によって該排気から水分を凝縮して液体水として分離する上流側熱交換器と、
その上流側熱交換器より前記排気経路の出口側に位置すると共に、前記給気経路上に位置し、熱交換による前記排気の冷却によって該排気から水分を凝縮して液体水として分離する下流側熱交換器と、
前記上流側熱交換器及び下流側熱交換器から液体水を回収して前記貯水手段へ戻す水回収手段と、
前記給気経路における前記下流側熱交換器より前記空気取入口側に液体水を霧状に噴射する第2の水供給手段と、を備えていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記水回収手段による液体水の回収性を示す指標を取得する水回収性把握手段と、
その水回収性把握手段により取得した指標に応じて、前記第2の水供給手段による水の噴射を制御する噴射制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記貯水手段に貯留される液体水の貯水量を検出する貯水量検出手段を備え、
前記水回収性把握手段は、前記貯水量検出手段により検出される貯水量を、前記液体水の回収性を示す指標として取得することを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
系内における水分量の収支に基づいて、前記水回収手段による液体水の推定回収量を算出する回収量推定手段と、
前記水回収性把握手段は、前記回収量推定手段により算出される液体水の推定回収量を、前記液体水の回収性を示す指標として取得することを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−238391(P2009−238391A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79260(P2008−79260)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】