説明

燃料電池システム

【課題】水を霧化させる機能を保持したまま騒音を低減させることができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】排出管46にはベンチュリ部52が設けられるとともに、ベンチュリ部52内には、タンク50に貯留された水をベンチュリ部52に導入するための導入用ノズル50bが突出されている。また、排出管46のベンチュリ部52よりも下流側には、霧化された霧化水の一部が水滴となって貯留される膨張室36が設けられている。さらに、膨張室36には、貯留された水をベンチュリ部52に戻すための戻し配管55が設けられるとともに、膨張室36の出口56eには、膨張室36内に突出するようにカラー61が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排気ガスによる地球温暖化の抑制のために動力源として電気を用いた電気自動車や、低燃費や排気ガス削減のため、始動時や低速域ではモータで駆動輪を駆動し、中高速域ではエンジン(内燃機関)で駆動輪を駆動する所謂ハイブリッド車が実用化されている。また、電源として、バッテリではなく、燃料電池を使用する電気自動車(燃料電池車)も一部実用化されている。
【0003】
燃料電池車に搭載されている燃料電池システムでは、燃料電池に水素と空気(酸素)とを供給して電気化学反応によって起電力を発生させており、水素と酸素との反応によって水が生成されるため、排気には多量の水が含まれる。排気に含まれる水は気液分離器で分離されるとともに、水を除いた排気(空気オフガス)は排気路から排出され、水は例えば外部排気弁を介して外部に排出されるようになっている。
【0004】
屋外を走行する車両の場合は、タンクに貯留された水は少しずつであれば、走行中に排出しても差し支えないが多量に排出されると、路面等が水浸しになる等して好ましくない。また、屋内作業用車両や構内において屋内と屋外とを往復して作業を行うフォークリフトのような車両の場合は、タンク内の水が屋内で排出されると床(フロア)が水で濡れてしまい好ましくない。そこで、燃料電池で生成された水を霧化させるとともに、霧化された水を大気に排出することが考えられる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の生成水排出装置は、タンクに貯留された水を吸入するとともに吸入した水を加圧する電動式の排水ポンプを装備し、排水ポンプから吐出された水を微小ノズルを通過させて放出口から噴霧することにより、水を霧化させて車体の外部に放出するものである。このようにすれば、放出された水は大気で拡散されて路面や床が濡れることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−141475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃料電池車はエンジン車両に比べて動力源から発せられる騒音が少ないため、生成水排出装置から発せられる騒音が問題になる場合がある。しかしながら、特許文献1の生成水排出装置においては、生成水排出装置から発せられる騒音対策のための構造については何ら開示されていない。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、水を霧化させる機能を保持したまま騒音を低減させることができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃料電池と、前記燃料電池から排出されるオフガスから水を分離する気液分離器と、前記気液分離器で分離された水を貯留可能なタンクと、前記気液分離器で水が分離されたガスを前記気液分離器から排出するとともにベンチュリ部を有する排出管と、前記タンクに貯留された水を前記ベンチュリ部に導入するために前記ベンチュリ部内に突出するように設けられた導入用ノズルと、前記排出管における前記ベンチュリ部よりも下流側に設けられるとともに前記ベンチュリ部に導入されて霧化された霧化水の一部が水滴となって貯留される膨張室と、前記膨張室に貯留された水を前記ベンチュリ部に戻すための戻し配管と、前記膨張室の出口に前記膨張室内に突出するように設けられる筒状部材とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、タンクに貯留された水は導入用ノズルからベンチュリ部内に導入されるとともに、ベンチュリ部内に導入された水は、ベンチュリ部を通過する際に急激に流速が上がった状態のガスにより霧化されて霧化水となる。ここで、ベンチュリ部内では、導入用ノズルに衝突するガスと衝突しないガスとが存在するため、導入用ノズルよりも下流側では、ガスの流れが不均一になり流速のばらつきが生じる。しかし、膨張室でガスが整流されるとともに、ガスの流れが均一になり流速のばらつきが抑えられるため、流速のばらつきに起因した騒音を低減させることができる。
【0011】
また、ベンチュリ部内で霧化された霧化水の一部は、膨張室の内面に付着して水滴に戻り、落下する。落下した水滴は筒状部材上に落下するため、膨張室を流れるガスと共に出口から放出されることが防止される。そして、筒状部材上に落下した水滴は、筒状部材の外面を伝って膨張室内に貯留される。膨張室内に貯留された水は、戻し配管を介してベンチュリ部内に戻されて再び霧化されて霧化水となる。よって、水を霧化させる機能を保持したまま騒音を低減させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記戻し配管の先端には、前記ベンチュリ部内に突出する戻し用ノズルが設けられるとともに、前記ベンチュリ部内において、前記戻し用ノズルが前記導入用ノズルよりも上流側に配設されていることを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、戻し用ノズルが導入用ノズルよりも上流側に設けられているため、導入用ノズルからベンチュリ部に導入されて霧化された霧化水が戻し用ノズルに衝突して水滴に戻ってしまうことがない。一方、戻し用ノズルからベンチュリ部に戻されて再び霧化された霧化水の一部は、導入用ノズルに衝突して水滴に戻ってしまうが、戻し用ノズルからベンチュリ部に戻される水量は、導入用ノズルからベンチュリ部に導入される水量よりも少ない。よって、ベンチュリ部内で水滴に戻る水量を少なくして、膨張室内に貯留される水を少なくすることができ、膨張室で必要とされる水溜め用のスペースを小さくすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記燃料電池システムは、屋内用産業車両に搭載されたものであることを要旨とする。
この発明によれば、燃料電池を駆動源として走行あるいは作業を行う屋内用産業車両が、水を霧化させて大気へ排出することができ、屋内で水を垂れ流して床を濡らしてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、水を霧化させる機能を保持したまま騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態におけるフォークリフトの概略側面図。
【図2】燃料電池システムの概略構成図。
【図3】気液分離器の平断面図。
【図4】気液分離器及びタンクを示す模式斜視図。
【図5】排出管の一部を拡大して示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を屋内用産業車両として使用されるフォークリフトの燃料電池システムに具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。なお、図1において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、フォークリフトの運転者が車両前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を示す。
【0018】
図1に示すように、屋内用産業車両としてのフォークリフト10には、車体11の前部にマスト12が設けられている。マスト12にはフォーク13がリフトブラケット14を介して昇降可能に装備されるとともに、リフトシリンダ15の伸縮運動によりフォーク13がリフトブラケット14とともに昇降される。車体11の前下部には駆動輪(前輪)16が設けられるとともに、駆動輪16は車軸に装備された差動装置及びギヤ(いずれも図示せず)を介して走行用モータ17により駆動される。
【0019】
車体11の後方には、燃料電池システム18が搭載されるとともに、燃料電池システム18はフード19で覆われている。燃料電池システム18は、リフトシリンダ15及びティルトシリンダの油圧源となる油圧モータ(図示せず)及び走行用モータ17の電源として使用される。
【0020】
次に、燃料電池システム18を図2にしたがって説明する。
図2に示すように、燃料電池システム18は、例えば固体高分子型の燃料電池20を備えるとともに、燃料電池20の水素供給ポート(図示せず)には流路27を介して水素タンク21が接続されている。また、燃料電池システム18は、コンプレッサ22を備えるとともに、コンプレッサ22は、流路28を介して加湿器23に接続されている。加湿器23は、供給流路29を介して燃料電池20の酸素供給ポート(図示せず)に接続されるとともに、流路30を介してオフガス排出ポート(図示せず)に接続されている。そして、コンプレッサ22で加圧された空気が加湿器23で加湿された後、燃料電池20の酸素供給ポート(図示せず)に供給されるとともに、燃料電池20のカソード極(図示せず)からのオフガス(カソードオフガス)は流路30を介して加湿器23に排出される。
【0021】
燃料電池20は、水素タンク21から供給される水素と、コンプレッサ22から供給される空気中の酸素とを反応させて直流の電気エネルギー(直流電力)を発生する。流路27には燃料電池20へ供給される水素の圧力を調整する調圧弁(図示せず)が設けられている。調圧弁は、水素タンク21に高圧で貯蔵された水素を所定の圧力まで減圧させて一定圧力で供給する圧力制御弁である。
【0022】
加湿器23は排出流路31を介して気液分離器24に接続されるとともに、排出流路31には調圧バルブ32が設けられている。また、燃料電池20の水素排出ポート(図示せず)は水素配管としてのパージガス用配管33を介して気液分離器24に接続されるとともに、燃料電池20のアノード極(図示せず)からのオフガス(アノードオフガス)はパージガス用配管33を介して気液分離器24に排出される。パージガス用配管33には開閉弁(アノードパージバルブ)34が設けられている。
【0023】
次に、気液分離器24について説明する。
図3に示すように、気液分離器24は縦長の四角箱状に形成されている。気液分離器24は、第1室41と第2室42とが仕切り板43により区画されている。仕切り板43は、基端が気液分離器24の側板24aに固定されるとともに、仕切り板43の先端と気液分離器24の内壁面24bとの間に、第1室41と第2室42とを連通させる隙間44が形成される状態に設けられている。
【0024】
気液分離器24の側板24aには、排出流路31が第1室41内と連通するように接続されている。また、気液分離器24の側壁24dには、パージガス用配管33が第2室42内と連通するように接続されている。さらに、気液分離器24の側板24aには、排出管46が第1室41内と連通するように接続されている。気液分離器24には排出流路31から導入されるカソードオフガスの流れと外れるように(外れた位置に)第1の孔48が形成されるとともに、パージガス用配管33から導入されるアノードオフガスの流れと外れるように(外れた位置に)第2の孔49が形成されている。
【0025】
図4に示すように、気液分離器24の外側にはタンク50が設けられている。タンク50は、気液分離器24の外面に取付けられるとともに、気液分離器24とタンク50とは、第1の孔48及び第2の孔49を介して連通している。なお、第1の孔48及び第2の孔49には、逆流防止部51が、タンク50内に突出するように設けられている。
【0026】
図5に示すように、排出管46は、気液分離器24側となる上流側が金属管57によって形成されるとともに、金属管57よりも下流側が樹脂材料からなる筒状の流路形成ブロック56によって形成されている。流路形成ブロック56の一端には導入口56aが形成されるとともに、金属管57が接続されている。また、流路形成ブロック56の他端には出口56eが形成されている。
【0027】
また、流路形成ブロック56内において、気液分離器24側にはベンチュリ部52が形成されるとともに、ベンチュリ部52よりも下流側には膨張室36が形成されている。ベンチュリ部52は、排出管46の流路が最も絞られる部位である小径部53を有するとともに、小径部53から気液分離器24側及び膨張室36側へ向かうにつれて拡径する第1及び第2拡径部54a,54bを有する。
【0028】
タンク50には、タンク50に貯留された水を排出管46に導入するための導入管50aの基端が接続されている。また、導入管50aの先端には導入用ノズル50bが設けられるとともに、導入用ノズル50bは、流路形成ブロック56を貫通してベンチュリ部52の小径部53内に突出している。よって、ベンチュリ部52内とタンク50とは、導入管50a及び導入用ノズル50bを介して連通している。
【0029】
膨張室36は、第2拡径部54bよりも拡径する拡径部36aと、この拡径部36aにおける最も拡径した部位から排出管46の軸方向に沿って同径で延びる同径部36bとを有する。膨張室36において、同径部36bに対応する部位には、水抜き穴36cが形成されるとともに、この水抜き穴36cには戻し配管55の基端が接続されている。戻し配管55の先端には戻し用ノズル55aが設けられるとともに、戻し用ノズル55aは、流路形成ブロック56を貫通してベンチュリ部52の小径部53内に突出している。小径部53において、戻し用ノズル55aは導入用ノズル50bよりも上流側に配設されている。よって、ベンチュリ部52内と膨張室36とは、戻し配管55及び戻し用ノズル55aを介して連通している。
【0030】
出口56eには円筒状をなす筒状部材としてのカラー61が設けられている。カラー61は金属材料からなる。カラー61の一端側は、出口56eから膨張室36内に突出するとともに、カラー61における一端側の外周面と膨張室36の内周面との間に隙間が形成されている。一方、カラー61の他端側は、その外周面全体が出口56eの内周面全体と接するとともに、カラー61における他端側の外周面と出口56eとの間がシールされている。
【0031】
次に、上記構成の燃料電池システム18の作用を説明する。
燃料電池システム18は、燃料電池20の稼動時には、水素タンク21から所定の加圧状態で水素が燃料電池20のアノード(水素極)に供給される。また、コンプレッサ22が稼動されて、空気が所定の圧力に加圧されるとともに加湿器23で加湿されて燃料電池20のカソード(空気極)に供給される。アノードに供給された水素は、触媒によって水素イオンと電子とに解離し、水素イオンが電解質膜を通って水と共にカソードへ移動する。カソードでは、カソードに供給された空気中の酸素と、電解質膜中を移動してカソードに達した水素イオンと、外部回路を通ってきた電子とが結合して水を生成する。そして、調圧バルブ32が開放されると、カソードで発生した水は水蒸気の状態で未反応の空気とともにカソードオフガスとして加湿器23に排出され、加湿器23から排出流路31を介して気液分離器24の第1室41に導入される。
【0032】
気液分離器24において、排出流路31から第1室41に導入されたカソードオフガスは、仕切り板43に当たって拡がりながら仕切り板43の先端側に向かって移動し、隙間44から第2室42に流入する。また、カソードオフガスに含まれる水分の一部は、第1室41の壁面に付着してカソードオフガスから分離された後、第1の孔48を経てタンク50に貯留される。
【0033】
カソードの水や窒素の一部が電解質膜をカソード側からアノード側へ逆拡散するため、燃料電池20が稼動を続けると、アノードの水や窒素の濃度が高くなり、それらの濃度がある程度以上になると、発電効率が低下する。これを防止あるいは抑制するため、例えば、燃料電池20が所定時間稼動を継続した時点で開閉弁34が開放されて、アノードに溜まった水分及び窒素が水素ガスと共にパージガス用配管33へ排出されるアノードパージが行われる。アノードパージにより燃料電池20からパージガス用配管33へ排出されたアノードオフガス(パージガス)は、パージガス用配管33を介して気液分離器24の第2室42に導入される。また、アノードオフガスに含まれる水分の一部は、第2室42の壁面に付着してアノードオフガスから分離された後、第2の孔49を経てタンク50に貯留される。
【0034】
第2室42内では、アノードオフガスはカソードオフガスにより水素濃度が希釈される。そして、水が分離されたガスであるカソードオフガスとアノードオフガスとの混合ガスは、第2の孔49、タンク50、第1の孔48を通じて第1室41へ押出され、排出管46から気液分離器24外へ排出される。なお、パージガス用配管33から第2室42に導入され排出されなかったアノードオフガスは、アノードパージされない間に膨張、拡散しながら第2室42全体に拡散する(拡がる)状態になる。その後、第2室42内のアノードオフガスは第1室41へ移動し、カソードオフガスと混合されて混合ガスとしてタンク50を介して第1室41へ移動し排出管46に向かう流れとともに排出管46から気液分離器24外へ排出される。
【0035】
排出管46にはベンチュリ部52が形成されていることで、排出管46において、小径部53の圧力は、第1及び第2拡径部54a,54b内の圧力と比べて低くなる。よって、気液分離器24の第1室41から排出管46に流入した混合ガスの流速は、小径部53を通過する際に急激に上がる。また、小径部53内の圧力は、タンク50内の圧力と比べて低くなっているため、ベンチュリ効果によりタンク50に貯留されている水は導入管50aを介して導入用ノズル50bから小径部53内に導入される。すると、小径部53内に導入された水は、急激に流速が上がった状態の混合ガスにより霧化され霧化水となり、この霧化水は混合ガスとともに膨張室36内へ流入される。
【0036】
一方、ベンチュリ部52を通過する混合ガスの一部は、導入用ノズル50b及び戻し用ノズル55aに衝突するため、排出管46における小径部53よりも下流側では、混合ガスの流れが不均一になり流速のばらつきが生じる。しかし、この混合ガスが膨張室36内に流入することで、膨張室36内で整流されて流れが均一になり、流速のばらつきが抑制されるようになっている。
【0037】
また、膨張室36内に流入された霧化水の一部は、膨張室36の内周面に付着して水滴に戻る。そして、膨張室36の内周面に付着して水滴に戻った水は、カラー61上に向かって落下する際、混合ガスの流れにより、カラー61の外周面と膨張室36の内周面との間の隙間に向かって吹き飛ばされるとともに、その隙間に溜まる。よって、水が混合ガスと共に出口56eから外部へ放出されることがない。
【0038】
さらに、膨張室36内の圧力はベンチュリ部52の小径部53内の圧力に比べて低くなっているため、膨張室36に貯留された水は、戻し配管55を介してベンチュリ部52内に戻されて、混合ガスにより再び霧化されて霧化水となる。よって、膨張室36内で水滴となった水が出口56eから外部へ放出されることなく、水を霧化させて膨張室36の出口56eから大気へ排出することができる。
【0039】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)排出管46にはベンチュリ部52が設けられている。よって、タンク50に貯留された水が導入用ノズル50bからベンチュリ部52内に導入されると霧化されて霧化水となる。また、排出管46におけるベンチュリ部52よりも下流側に膨張室36が設けられている。よって、気液分離器24から排出された混合ガスが導入用ノズル50bに衝突して混合ガスにおける流速にばらつきが生じたとしても、膨張室36内で混合ガスが整流されるとともに、混合ガスの流れが均一になり流速のばらつきが抑えられるため、流速のばらつきに起因した騒音を低減させることができる。また、ベンチュリ部52内で霧化された霧化水の一部は、膨張室36の内周面に付着して水滴に戻り、落下する。落下した水滴は、カラー61上に落下するため、膨張室36を流れる混合ガスと共に出口56eから放出されることが防止される。そして、カラー61上に落下した水滴は、カラー61の外周面を伝って膨張室36に貯留される。膨張室36に貯留された水は、戻し配管55を介してベンチュリ部52内に戻されて再び霧化されて霧化水となる。よって、水を霧化させる機能を保持したまま騒音を低減させることができ、燃料電池20を駆動源として走行あるいは作業を行うフォークリフト10が屋内で水を垂れ流して床を濡らしてしまうことを抑制することができる。
【0040】
(2)ベンチュリ部52の小径部53内において、戻し用ノズル55aは、導入用ノズル50bよりも上流側に配設されている。よって、導入用ノズル50bからベンチュリ部52に導入されて霧化された霧化水が戻し用ノズル55aに衝突して水滴に戻ってしまうことがない。一方、戻し用ノズル55aからベンチュリ部52に戻されて再び霧化された霧化水の一部は、導入用ノズル50bに衝突して水滴に戻ってしまうが、戻し用ノズル55aからベンチュリ部52に戻される水量は、導入用ノズル50bからベンチュリ部52に導入される水量よりも少ない。よって、ベンチュリ部52内で水滴に戻る水量を少なくして、膨張室36内に貯留される水を少なくすることができ、膨張室36で必要とされる水溜め用のスペースを小さくすることができる。
【0041】
(3)ベンチュリ部52内と膨張室36とは、戻し配管55及び戻し用ノズル55aを介して連通している。よって、膨張室36内の圧力とベンチュリ部52内の圧力との差を利用することで、膨張室36に貯留された水をベンチュリ部52内に戻すことができる。したがって、膨張室36に貯留された水をベンチュリ部52に戻すためのポンプを別途設ける場合に比べて、燃料電池システム18の構造を簡素化することができる。
【0042】
(4)膨張室36は、騒音を低減させる機能と膨張室36内で水滴に戻った水を溜める機能との二つの機能を兼ねている。よって、膨張室36内で水滴に戻った水を溜めるための水溜り部を膨張室36とは別に設ける場合に比べて、燃料電池システム18の構成をコンパクトにすることができる。
【0043】
(5)本実施形態によれば、排水ポンプを用いずにタンク50に貯留された水を霧化させて大気へ排出することができる。よって、タンク50に貯留された水を霧化するために、例えば、排水ポンプで水を加圧する必要がなく、排水ポンプにおける駆動のためのエネルギーが必要なくなり、フォークリフト10における消費エネルギーを低減することができる。また、排水ポンプを設置するスペースも必要なくなり、フォークリフト10内部において省スペース化が図れる。さらに、本実施形態では、排水ポンプのような可動部品を必要としないため、可動部品であるがために起こり得る耐久性の問題が発生してしまうことがなく、また、排水ポンプを設置するためのコストを低減することができる。
【0044】
(6)気液分離器24に、アノードオフガスに含まれる水素を希釈させる希釈機能を持たせた。よって、燃料電池20の発電効率が低下することを防止あるいは抑制するアノードパージが行われたとき、アノードオフガスは気液分離器24に導入されるとともに、希釈機能を有した気液分離器24によりアノードオフガスに含まれる水素が希釈される。したがって、水素を希釈するための希釈器を別途設ける構成と比べて、燃料電池システム18の構成をコンパクトにすることができる。
【0045】
(7)流路形成ブロック56は樹脂材料から形成されている。よって、例えば、流路形成ブロック56が金属材料から形成されている場合に比べて、流路形成ブロック56自体を水によって腐食し難くすることができる。
【0046】
(8)カラー61における他端側の外周面全体は、出口56eの内周面全体と接している。これにより、カラー61における他端側の外周面と出口56eとの間がシールされるため、膨張室36の内周面に付着して水滴に戻った水が、カラー61の外周面と出口56eとの間から外部に漏れ出てしまうことを抑制することができる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、ベンチュリ部52の小径部53内において、戻し用ノズル55aを、導入用ノズル50bよりも上流側に配設したが、これに限らず、ベンチュリ部52の小径部53内において、導入用ノズル50bと対向する位置、又は導入用ノズル50bよりも下流側に戻し用ノズル55aを配設してもよい。
【0048】
○ 実施形態において、気液分離器24に上記希釈機能を持たせずに、例えば、パージガス用配管33の途中にアノードオフガスの水素濃度を希釈することができる希釈器を別途設けてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、流路形成ブロック56は樹脂材料から形成されていたが、これに限らず、水によって腐食し難い材質であれば、流路形成ブロック56を形成する材質は特に限定されない。
【0050】
○ 実施形態において、カラー61は円筒状であったが、これに限らず、例えば、四角筒状であってもよく、カラー61の外形が出口56eの形状と同一形状であれば、カラー61の形状は特に限定されない。
【0051】
○ 実施形態において、カラー61における他端側の外周面全体は、出口56eの内周面全体と接していたが、これに限らず、カラー61における他端側の外周面一部が、出口56eの内周面に接していなくてもよい。すなわち、カラー61の外形が出口56eの形状と同一形状でなくてもよい。
【0052】
○ 実施形態において、カラー61は金属材料から形成されていたが、これに限らず、例えば、樹脂材料から形成されていてもよく、カラー61の材質は特に限定されるものではない。
【0053】
○ 本発明を屋内用産業車両としてのフォークリフト10に適用したが、これに限らず、例えば、屋内用産業車両としての牽引車やハンドリフタ(移動は作業者が押すことで行い、荷の昇降はリフタで行う装置)等に適用してもよい。
【0054】
○ フォークリフト10は、屋内用に限らず、屋外で作業を行うフォークリフトであってもよい。また、本発明をフォークリフト以外の他の屋外作業用の産業車両に適用してもよい。
【0055】
○ 本発明を産業車両に限らず、他の車両に適用してもよい。
○ 本発明は、必ずしも車両等の移動体に限らず、電源を必要とする電気製品に装備したり、定置式の燃料電池システムに適用したりしてもよい。
【0056】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記気液分離器には、前記燃料電池からのアノードオフガスを前記気液分離器に導く水素配管が接続されるとともに、前記気液分離器は、前記アノードオフガスに含まれる水素を希釈させる希釈機能を有していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【0057】
(ロ)前記排出管は、該排出管の一部を形成するとともに前記ベンチュリ部及び前記膨張室が形成される流路形成ブロックを備え、前記流路形成ブロックは樹脂材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(イ)のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【0058】
(ハ)前記筒状部材の外面全体が前記出口の内面全体と接していることを特徴とする請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(イ),(ロ)のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【符号の説明】
【0059】
10…屋内用産業車両としてのフォークリフト、18…燃料電池システム、20…燃料電池、24…気液分離器、33…水素配管としてのパージガス用配管、36…膨張室、46…排出管、50…タンク、50b…導入用ノズル、52…ベンチュリ部、55…戻し配管、55a…戻し用ノズル、56…流路形成ブロック、56e…出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池から排出されるオフガスから水を分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水を貯留可能なタンクと、
前記気液分離器で水が分離されたガスを前記気液分離器から排出するとともにベンチュリ部を有する排出管と、
前記タンクに貯留された水を前記ベンチュリ部に導入するために前記ベンチュリ部内に突出するように設けられた導入用ノズルと、
前記排出管における前記ベンチュリ部よりも下流側に設けられるとともに前記ベンチュリ部に導入されて霧化された霧化水の一部が水滴となって貯留される膨張室と、
前記膨張室に貯留された水を前記ベンチュリ部に戻すための戻し配管と、
前記膨張室の出口に前記膨張室内に突出するように設けられる筒状部材とを備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記戻し配管の先端には、前記ベンチュリ部内に突出する戻し用ノズルが設けられるとともに、
前記ベンチュリ部内において、前記戻し用ノズルが前記導入用ノズルよりも上流側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池システムは、屋内用産業車両に搭載されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−146351(P2011−146351A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8409(P2010−8409)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】