説明

燃料電池システム

【課題】簡単且つコンパクトな構成で、複数の燃料電池モジュールを良好に積層することを可能にする。
【解決手段】燃料電池システム10は、2段に積層される燃料電池モジュール12を備える。各燃料電池モジュール12は、複数の燃料電池16が積層される燃料電池スタック14と、前記燃料電池スタック14に積層方向に荷重を付与する荷重付与機構138と、前記荷重付与機構138及び複数の前記燃料電池16を挟持するとともに、互いの離間間隔を保持する第1プレート部材140及び第2プレート部材142とを設ける。燃料電池モジュール12同士は、各燃料ガス供給部84同士を連通させる燃料ガス供給管154及び各酸化剤ガス供給部90同士を連通させる酸化剤ガス供給管156により連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に配設される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層される燃料電池スタックを備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極及びカソード電極を配設した電解質・電極接合体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、通常、MEAとセパレータとが所定数だけ積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池スタックでは、発電量を増加させるために、燃料電池の個数を増やして積層段数を増加させる必要がある。その際、上下の積層方向では、特に下段に配置されているセパレータには、上段に配置されているセパレータに比べて過度の荷重が付与されてしまう。このため、下段のセパレータには、歪み等が発生し易いという問題がある。
【0004】
さらに、積層段数が増えると、各セパレータの寸法誤差が蓄積され、燃料電池スタック全体の寸法に誤差が惹起され易くなる。その他、シール方法や反応ガスの供給方法等により、構成が複雑化し、組み立て工数やコストが高騰する等の問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている燃料電池スタックでは、図11に示すように、単位電池1aが多数積層された積層体2aを、複数のプレート3aにより奇数個の単位電池群4aに分割している。各プレート3aに隣接するもの同士は、弾性圧力付与機構5aにより所定の締め付け圧力で締め付けられている。燃料電池スタック全体は、両端をエンドプレート6a、6aで挟み、テンションロッド7aにより固定している。
【0006】
これにより、燃料電池スタック全体の大型化を招くことがなく、単位電池1aが複数積層された積層体2aの積層方向の面圧分を均一化する、としている。
【0007】
また、特許文献2に開示されている構造では、図12に示すように、(n+1)枚の発電セル1bのうち、i番目の発電セル1bの燃料極層2bと、(i+1)番目の発電セル1bの酸化剤極層3bとの間には、セパレータ4bが一枚ずつ合計n枚だけ階層されている。
【0008】
n枚のセパレータ4bの外周部には、連結部材5bが前記セパレータ4bの積層方向に電気的に絶縁されて挿通されている。(n+1)枚の発電セル1b及びn枚のセパレータ4bを積層する時に、n枚のセパレータ4bは、個々に、あるいは1枚置きに、又は複数枚置きに、固定部材6bにより前記連結部材5bに固定されている。
【0009】
このため、各発電セル1bへの荷重均等化を図ることができ、下部の発電セル1bの破損を防止する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−164969号公報
【特許文献2】特開2002−280052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1では、単位電池1aの積層段数が増加すると、介装されるプレート3aの数が増加するとともに、弾性圧力付与機構5aの数も増加してしまう。このため、燃料電池スタックは、積層構造が相当に複雑化するとともに、大型化するという問題がある。
【0012】
また、上記の特許文献2では、発電セル1bの積層段数が増加すると、セパレータ4bを連結部材5bに固定するための固定部材6bの数も増加し、スタック全体の構造が相当に複雑化するという問題がある。
【0013】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単且つコンパクトな構成で、複数の燃料電池モジュールを良好に積層することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る燃料電池システムは、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に配設される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層されるとともに、前記アノード電極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部及び前記カソード電極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部が、それぞれ前記燃料電池の積層方向に形成される燃料電池スタックと、前記積層方向の一端側に配置され、前記燃料電池スタックに該積層方向に荷重を付与する荷重付与機構と、前記積層方向の両端側に配置され、前記荷重付与機構及び複数の前記燃料電池を挟持するとともに、互いの離間間隔を保持する第1プレート部材及び第2プレート部材とが設けられる燃料電池モジュールを備えている。
【0015】
そして、複数の燃料電池モジュールは、積層方向に直列に配設されるとともに、前記燃料電池モジュール同士は、各燃料ガス供給部同士を連通させる燃料ガス供給管及び各酸化剤ガス供給部同士を連通させる酸化剤ガス供給管により連結されている。
【0016】
また、この燃料電池システムでは、複数の燃料電池モジュールは、重力方向に直列に配設されることが好ましい。
【0017】
さらに、この燃料電池システムでは、重力方向に直列に配設される複数の燃料電池モジュールが、水平方向に複数並列されることが好ましい。
【0018】
さらにまた、この燃料電池システムでは、原燃料を改質して改質ガスを生成し、前記改質ガスを燃料ガスとして燃料ガス供給部を介しアノード電極に供給する改質器と、酸化剤ガスを燃料電池モジュールに供給する前に加熱し、加熱された前記酸化剤ガスを酸化剤ガス供給部を介しカソード電極に供給する熱交換器と、積層方向一端の前記燃料電池モジュールを設置するための燃料電池モジュール設置部材と、前記改質器、前記熱交換器及び前記燃料電池モジュール設置部材を保持するための台部材とを備える流体部と、前記流体部に、前記燃料電池モジュールが配置される一方側とは反対の他方側に隣接して配置され、燃焼により発生する燃焼ガスによって前記改質器及び前記熱交換器を加熱する燃焼器とを備えることが好ましい。
【0019】
また、この燃料電池システムでは、燃料電池モジュール設置部材に連結され、複数の燃料電池モジュールを収容する第1ケース部材と、台部材に連結され、前記第1ケース部材及び流体部を収容する第2ケース部材とを備え、前記燃料電池モジュール設置部材と熱交換器とには、前記燃料電池モジュールで発電反応に使用された燃料ガス及び酸化剤ガスからなるオフガスを、前記第1ケース部材の内部空間から前記熱交換器に加熱用媒体として供給するための通路部材の両端が接続されるとともに、前記熱交換器から排出される熱交換後の前記オフガスは、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に形成されたオフガス通路を通って排出されることが好ましい。
【0020】
さらに、この燃料電池システムでは、燃料電池は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、第1セパレータ及び第2セパレータ間に配設され、前記第1セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、電極面に沿って燃料ガスを供給する燃料ガス通路が設けられる第1挟持部と、前記燃料ガスを前記燃料ガス通路に供給するための燃料ガス供給連通孔が積層方向に形成される燃料ガス供給部と、前記第1挟持部と前記燃料ガス供給部とを連結し、前記燃料ガスを前記燃料ガス供給連通孔から前記燃料ガス通路に供給するための燃料ガス供給通路が形成される第1橋架部とを備え、前記第2セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、電極面に沿って酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路が設けられる第2挟持部と、前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス通路に供給するための酸化剤ガス供給連通孔が積層方向に形成される酸化剤ガス供給部と、前記第2挟持部と前記酸化剤ガス供給部とを連結し、前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス供給連通孔から前記酸化剤ガス通路に供給するための酸化剤ガス供給通路が形成される第2橋架部とを備えるとともに、各第1挟持部、各第2挟持部、各燃料ガス供給部及び各酸化剤ガス供給部には、それぞれ前記燃料電池スタックに発生した変位を吸収するための変位吸収機構が設けられることが好ましい。
【0021】
さらにまた、この燃料電池システムでは、積層方向一端に配置される燃料電池モジュールを構成する第1プレート部材には、第1ポール部材が接続されるとともに、積層方向他端に配置される前記燃料電池モジュールを構成する第2プレート部材には、第2ポール部材が接続され、前記第1ポール部材は、一方の電流取り出し端子を構成し、且つ前記第2ポール部材は、他方の電流取り出し端子を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料電池モジュールは、互いの離間間隔を保持する第1プレート部材及び第2プレート部材間に、荷重付与機構及び複数の燃料電池が挟持されている。このため、各燃料電池モジュールは、独立して積層方向の荷重により締結されており、それぞれ個別のユニットとして構成される。
【0023】
そして、各燃料電池モジュール同士は、燃料ガス供給管及び酸化剤ガス供給管により連結されている。このため、燃料ガス供給管及び酸化剤ガス供給管は、隣接する燃料電池モジュール同士を繋ぐ反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)の流通経路、電気の導通経路及び荷重伝達経路として機能することができる。
【0024】
しかも、各燃料電池モジュールは、各燃料ガス供給部同士を連通させる燃料ガス供給管及び各酸化剤ガス供給部同士を連通させる酸化剤ガス供給管により連結されている。従って、複数の燃料電池モジュールを重力方向に積層しても、それぞれの燃料電池モジュールに作用する積層方向の荷重を一定に維持することができる。これにより、例えば、積層方向下方のセパレータ及び電解質・電極接合体に歪み等が発生することを、可及的に阻止することが可能になる。
【0025】
従って、特別な機構や構造も必要がなく、段数によるセパレータの損傷もなく、複数の燃料電池モジュールを簡便に積層することが可能になる。これにより、簡単且つコンパクトな構成で、複数の燃料電池モジュールを良好に積層することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムの一部分解斜視図である。
【図2】前記燃料電池システムの概略断面図である。
【図3】前記燃料電池システムを構成する燃料電池モジュールの概略断面図である。
【図4】前記燃料電池システムを構成する燃料電池スタックの分解斜視説明図である。
【図5】前記燃料電池スタックを構成する燃料電池の分解斜視説明図である。
【図6】前記燃料電池スタックの反応ガスの流れ説明図である。
【図7】前記燃料電池スタックの、図4中、VII−VII線断面である。
【図8】前記燃料電池スタックを構成する変位吸収機構の拡大説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システムの概略断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システムの概略断面図である。
【図11】特許文献1の燃料電池スタックの側面説明図である。
【図12】特許文献2の構造の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池モジュール12を備えるとともに、前記燃料電池モジュール12は、多段、例えば、2段に矢印A方向(重力方向)に直列に積層される。燃料電池システム10は、定置用の他、可搬用、車載用等の種々の用途に用いられる。
【0028】
燃料電池モジュール12、図1〜図3に示すように、燃料電池スタック14を備えるとともに、前記燃料電池スタック14は、複数の燃料電池16が矢印A方向に積層されて構成される。
【0029】
燃料電池16は、固体電解質型燃料電池であり、この燃料電池16は、図4〜図6に示すように、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)20の両面に、カソード電極22及びアノード電極24が設けられた電解質・電極接合体(MEA)26を備える。電解質・電極接合体26は、円板状に形成されるとともに、少なくとも外周端面部には、発電反応後の酸化剤ガス及び燃料ガスからなる排ガス(オフガス)の進入や排出を阻止するためにバリアー層(図示せず)が設けられている。
【0030】
燃料電池16は、第1セパレータ28a及び第2セパレータ28b間に1個の電解質・電極接合体26が挟持される。第1セパレータ28a及び第2セパレータ28bは、同一形状のセパレータ構造体を互いに180°反転させることにより構成される。なお、一対のセパレータ間に複数枚のMEAを挟持して構成してもよい。
【0031】
第1セパレータ28aは、例えば、ステンレス等の板金で構成される第1プレート30a及び第2プレート32aを有する。第1プレート30a及び第2プレート32aは、互いに拡散接合、レーザー溶接又はろう付け等により接合される。
【0032】
第1プレート30aは、略平板状に形成されるとともに、積層方向(矢印A方向)に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔34が形成される第1燃料ガス供給部36を有する。この第1燃料ガス供給部36から外方に延在する第1橋架部38を介して第1挟持部40が一体に設けられる。
【0033】
第1挟持部40は、電解質・電極接合体26と同一形状もしくは電解質・電極接合体26よりも大径な寸法に設定されるとともに、前記第1挟持部40のアノード電極24に接する面には、複数の凸部42が設けられる。凸部42は、アノード電極24の電極面に沿って燃料ガスを供給するための燃料ガス通路44を形成するとともに、集電機能を有する。第1挟持部40の中央部には、アノード電極24の中央部に向かって燃料ガスを供給するための燃料ガス供給孔46が形成される。
【0034】
第2プレート32aは、燃料ガス供給連通孔34が形成される第2燃料ガス供給部48を有する。この第2燃料ガス供給部48から外方に延在する第2橋架部50を介して第2挟持部52が一体に設けられる。第2プレート32aの外周を周回して第1プレート30a側に突出する周回凸部54が設けられ、この周回凸部54に前記第1プレート30aが接合される。
【0035】
第2燃料ガス供給部48、第2橋架部50及び第2挟持部52の第1プレート30aに向かう面には、前記第1プレート30aに接して複数の突起部56が形成される。
【0036】
第1橋架部38及び第2橋架部50間には、燃料ガス供給連通孔34に連通する燃料ガス供給通路58が形成される。燃料ガス供給通路58は、第1挟持部40及び第2挟持部52間に形成される燃料ガス充填室60を介して燃料ガス供給孔46に連通する。
【0037】
第2セパレータ28bは、第1セパレータ28aと同一形状に構成されており、第1プレート30a及び第2プレート32aに対応する第1プレート30b及び第2プレート32bを有する。第1プレート30b及び第2プレート32bは、積層方向に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔62が形成される第1酸化剤ガス供給部64及び第2酸化剤ガス供給部66を有する。
【0038】
第1プレート30b及び第2プレート32bは、第1酸化剤ガス供給部64及び第2酸化剤ガス供給部66から外方に突出する第1橋架部68及び第2橋架部70を介して第1挟持部72及び第2挟持部74が一体に設けられる。
【0039】
第1挟持部72のカソード電極22に接触する面には、複数の凸部42を介し前記カソード電極22の電極面に沿って酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路76が形成される。第1挟持部72の中央部には、カソード電極22の中央部に向かって酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給孔78が形成される。
【0040】
第2プレート32b内には、第1プレート30bが接合されることにより酸化剤ガス供給連通孔62に連通する酸化剤ガス供給通路80が、第1橋架部68及び第2橋架部70間に対応して形成される。第2挟持部74内には、酸化剤ガス供給連通孔62と酸化剤ガス供給通路80を介して連通する酸化剤ガス充填室82が形成される。
【0041】
図4及び図5に示すように、第1セパレータ28aは、第1燃料ガス供給部36及び第2燃料ガス供給部48により燃料ガス供給部84を構成し、第1橋架部38及び第2橋架部50により第1橋架部86を構成し、第1挟持部40及び第2挟持部52により第1挟持部88を構成する。第2セパレータ28bは、第1酸化剤ガス供給部64及び第2酸化剤ガス供給部66により酸化剤ガス供給部90を構成し、第1橋架部68及び第2橋架部70により第2橋架部92を構成し、第1挟持部72及び第2挟持部74により第2挟持部94を構成する。
【0042】
積層方向(矢印A方向)に互いに隣接する一対の第1セパレータ28aを構成する各燃料ガス供給部84には、燃料電池スタック14に発生した積層方向の変位を吸収する第1変位吸収機構(燃料ガス側変位吸収機構)96が設けられるとともに、前記積層方向に互いに隣接する一対の第2セパレータ28bを構成する各酸化剤ガス供給部90には、前記積層方向の変位を吸収する第2変位吸収機構(酸化剤ガス側変位吸収機構)98が設けられる。
【0043】
図5及び図7に示すように、第1変位吸収機構96は、第1セパレータ28aを構成する第1プレート30a及び第2プレート32aにおいて、第1燃料ガス供給部36及び第2燃料ガス供給部48の突起部56とは反対の面に、例えば、溶接により固着される連結部材100a、100bを備える。連結部材100a、100bは、積層方向に隣接する一対の第1セパレータ28aの燃料ガス供給部84同士を連結し、且つ前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する。連結部材100a、100bは、例えば、ステンレス等の金属薄板により構成され、実質的にベローズ形状を有する。
【0044】
連結部材100aは、図7に示すように、第1プレート30aの第1燃料ガス供給部36に溶接(結合)されるセパレータ結合部位102aと、積層方向に隣接する連結部材100a、100b同士を係合する係合部位104aと、前記セパレータ結合部位102aと前記係合部位104aとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位106aとを備える。連結部位106aは、第1燃料ガス供給部36から離間する方向に傾斜する一方、係合部位104aは、水平方向に延在する。
【0045】
連結部材100bは、第2プレート32aの第2燃料ガス供給部48に溶接(結合)されるセパレータ結合部位102bと、積層方向に隣接する連結部材100a、100b同士を係合する係合部位104bと、前記セパレータ結合部位102bと前記係合部位104bとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位106bとを備える。連結部位106bは、第2燃料ガス供給部48から離間する方向に傾斜する一方、係合部位104bは、水平方向に延在する。
【0046】
第1変位吸収機構96は、図5に示すように、一対の連結部材100a、100bを一体に結合させるための結合部材108を備えるとともに、前記連結部材100a、100b同士が係合する領域及び前記連結部材100a、100bと前記結合部材108とが係合する領域に対応して、3つのシール部材110a、110b及び110cが介装される。
【0047】
結合部材108は、断面コ字状を有し、例えば、3つの前記結合部材108が、全体としてリング状に配置される。図7に示すように、各結合部材108は、内周側が開口しており、この内周側からシール部材110b、連結部材100aの係合部位104a、シール部材110a、連結部材100bの係合部位104b及びシール部材110cからなる積層体が挿入され、前記結合部材108がかしめられる。
【0048】
シール部材110a〜110cは、リング形状を有し、ガスシール機能及び絶縁機能、さらに好適には、耐熱性及び柔軟性を有する材料で構成される。具体的には、シール部材110a〜110cは、粘土鉱物及び有機高分子が複合化された粘土膜を備える薄膜状シールにより構成されるが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス系シール部材も用いることができる。
【0049】
第2変位吸収機構98は、第2セパレータ28bを構成する第2プレート32b及び第1プレート30bにおいて、第2酸化剤ガス供給部66及び第1酸化剤ガス供給部64の突起部56とは反対の面に、例えば、溶接により固着される連結部材112a、112bを備える。連結部材112a、112bは、積層方向に隣接する一対の第2セパレータ28bの酸化剤ガス供給部90同士を連結し、且つ前記積層方向の荷重を緩和するばね性を有する。
【0050】
連結部材112aは、図7に示すように、第2プレート32bの第2酸化剤ガス供給部66に溶接(結合)されるセパレータ結合部位114aと、積層方向に隣接する連結部材112a、112b同士を係合する係合部位116aと、前記セパレータ結合部位114aと前記係合部位116aとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位118aとを備える。連結部位118aは、第2酸化剤ガス供給部66から離間する方向に傾斜する一方、係合部位116aは、水平方向に延在する。
【0051】
連結部材112bは、第1プレート30bの第1酸化剤ガス供給部64に溶接(結合)されるセパレータ結合部位114bと、積層方向に隣接する連結部材112a、112b同士を係合する係合部位116bと、前記セパレータ結合部位114bと前記係合部位116bとを繋ぎ且つばね性を有する連結部位118bとを備える。連結部位118bは、第1酸化剤ガス供給部64から離間する方向に傾斜する一方、係合部位116bは、水平方向に延在する。
【0052】
第2変位吸収機構98は、図5に示すように、一対の連結部材112a、112bを一体に結合させるための結合部材120を備えるとともに、前記連結部材112a、112b同士が係合する領域及び前記連結部材112a、112bと前記結合部材120とが係合する領域に対応して、3つのシール部材122a、122b及び122cが介装される。
【0053】
結合部材120は、断面コ字状を有し、例えば、3つの前記結合部材120が、全体としてリング状に配置される。図7に示すように、各結合部材120は、内周側が開口しており、この内周側からシール部材122b、連結部材112aの係合部位116a、シール部材122a、連結部材112bの係合部位116b及びシール部材122cからなる積層体が挿入され、前記結合部材120がかしめられる。
【0054】
シール部材122a〜122cは、リング形状を有し、ガスシール機能及び絶縁機能、さらに好適には、耐熱性及び柔軟性を有する材料で構成される。具体的には、シール部材122a〜122cは、粘土鉱物及び有機高分子が複合化された粘土膜を備える薄膜状シールにより構成されるが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス系シール部材も用いることができる。
【0055】
図4及び図7に示すように、第1セパレータ28aの第1挟持部88には、燃料電池スタック14に発生した積層方向の変位を吸収する第3変位吸収機構(燃料ガス側変位吸収機構)130が設けられるとともに、第2セパレータ28bの第2挟持部94には、前記積層方向の変位を吸収する第4変位吸収機構(酸化剤ガス側変位吸収機構)132が設けられる。
【0056】
第1挟持部88の変位吸収機構130は、図5及び図7に示すように、第1挟持部40及び第2挟持部52間に形成される燃料ガス充填室60と、電解質・電極接合体26に対向する第1プレート30aに設けられ、燃料ガス通路44を形成する複数の凸部42と、第2プレート32aに、前記第1プレート30aに接して設けられる複数の突起部56とを備える。複数の凸部42と複数の突起部56とは、積層方向に互いに重ならない位置に配置される。
【0057】
図8に示すように、複数の凸部42は、例えば、格子状に配置されるとともに、4つの前記凸部42により単位領域134が形成される。1つの突起部56は、1つの単位領域134内に配置される一方、この単位領域134に隣接する他の単位領域134、すなわち、前記突起部56が配置される前記単位領域134を周回する8つの単位領域134には、前記突起部56が配置されない。なお、凸部42の配置状態や突起部56の配置状態は、種々変更可能である。
【0058】
第2挟持部94の変位吸収機構132は、図5及び図7に示すように、酸化剤ガス充填室82と、第1プレート30bに設けられ、酸化剤ガス通路76を形成する複数の凸部42と、第2プレート32bに、前記第1プレート30bに接して設けられる複数の突起部56とを備える。複数の凸部42と複数の突起部56とは、積層方向に互いに重ならない位置に配置される。
【0059】
図1〜図3に示すように、燃料電池モジュール12は、燃料電池16の積層方向の一端側に配置され、燃料電池スタック14に前記積層方向に荷重を付与する荷重付与機構138と、前記積層方向の両端側に配置され、前記荷重付与機構138及び複数の前記燃料電池16を挟持するとともに、互いの離間間隔を保持する第1プレート部材140及び第2プレート部材142とを設ける。
【0060】
荷重付与機構138は、積層方向に配列される複数の皿ばね144を備え、燃料電池16に対して前記積層方向に弾性により荷重を付与する。第1プレート部材140と第2プレート部材142とは、複数のボルト部材(スタッドボルト)146により燃料電池スタック14を積層方向から締結することにより、燃料電池モジュール12がユニット化される。ボルト部材146と第2プレート部材142との間には、絶縁部材148が介装される。
【0061】
第1プレート部材140と最下方向位置の第2変位吸収機構98との間には、例えば、蛇腹状の連結管路150aが介装される。第2プレート部材142と最上方向位置の第1変位吸収機構96との間には、例えば、蛇腹状の連結管路150bが介装される。なお、蛇腹状の連結管路150a、150bに代えて、互いに摺動自在に嵌合する2本の筒状体、所謂、入れ子構造を採用してもよい。
【0062】
第1プレート部材140には、各燃料電池16の燃料ガス供給連通孔34と同軸上に配置され、前記燃料ガス供給連通孔34に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管154と、前記燃料電池16の酸化剤ガス供給連通孔62と同軸上に配置され、前記酸化剤ガス供給連通孔62に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給管156とが設けられる。
【0063】
図2に示すように、重力方向下方の燃料電池モジュール12を構成する第2プレート部材142と、重力方向上方の燃料電池モジュール12を構成する第1プレート部材140とは、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156のみにより連結される。重力方向下方(積層方向一端)の燃料電池モジュール12を構成する第1プレート部材140には、第1ポール部材158が接続されるとともに、重力方向上方(積層方向他端)の燃料電池モジュール12を構成する第2プレート部材142には、第2ポール部材159が接続される。
【0064】
燃料電池システム10は、ユニット化された流体部160を備える。流体部160は、原燃料を改質して改質ガスを生成し、前記改質ガスを燃料ガスとして燃料電池16のアノード電極24に供給する改質器162と、酸化剤ガスを燃料電池スタック14に供給する前に加熱し、加熱された前記酸化剤ガスを前記燃料電池16のカソード電極22に供給する熱交換器164と、下方の燃料電池モジュール12を設置するための板状燃料電池モジュール設置部材166と、前記改質器162、前記熱交換器164及び前記燃料電池モジュール設置部材166を保持するための台部材168とを備える。
【0065】
改質器162の入口には、原燃料供給管170が接続されるとともに、前記改質器162の出口には、改質ガス排出管172が接続される。熱交換器164の入口には、空気供給管174が接続されるとともに、前記熱交換器164の出口には、酸化剤ガス排出管176が接続される。
【0066】
燃料電池モジュール設置部材166には、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156を固定する固定具178及び180が設けられる。固定具178、180を介して燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156には、改質ガス排出管172及び酸化剤ガス排出管176が連結される。燃料電池モジュール設置部材166には、燃料電池スタック14で発電反応に使用された燃料ガス及び酸化剤ガスからなるオフガスを、熱交換器164に加熱用媒体として供給するためのオフガス通路部材181が設けられる。
【0067】
燃料電池モジュール12は、実質的に、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156のみにより、燃料電池モジュール設置部材166に保持される。なお、燃料電池モジュール12には、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156の他に、必要に応じて保持用の配管を設けることもできる。
【0068】
流体部160には、燃料電池モジュール12が配置される一方側とは反対の他方側に隣接して、具体的には、改質器162及び熱交換器164に隣接して、燃焼器182が配置される。燃焼器182は、燃焼により発生する燃焼ガスによって改質器162及び熱交換器164を加熱する機能を有する。燃焼器182は、台部材168に固定される。
【0069】
燃料電池システム10は、燃料電池モジュール設置部材166に連結され、2段の燃料電池モジュール12を収容する第1ケース部材184と、台部材168に連結され、前記第1ケース部材184(2段の燃料電池モジュール12を含む)及び流体部160を収容する第2ケース部材186とを備える。
【0070】
第1ケース部材184は、底部に開口部を有するとともに、前記底部に大径なフランジ部188を設ける。このフランジ部188は、燃料電池モジュール設置部材166に固着される。第1ケース部材184の上部閉塞部には、第1ポール部材158及び第2ポール部材159とに対応してこれらよりも大径な開口部を有する筒状部190、192が設けられる。
【0071】
第2ケース部材186は、底部に開口部を有するとともに、前記底部に大径なフランジ部194を設ける。このフランジ部194は、台部材168に固着される。第2ケース部材186の上部には、筒状部190、192が挿入される孔部196、198と、排ガス排出口200とが設けられる。排ガス排出口200は、第1ケース部材184と第2ケース部材186との間に形成されたオフガス通路202に連通するとともに、前記オフガス通路202は、流体部160が配置される室204に連通する(図2参照)。
【0072】
ポール部材挿通部位を構成する筒状部190、192には、第1ポール部材158及び第2ポール部材159に取り付けられたガイド部材206、208が摺動自在に配設される。ガイド部材206、208は、耐熱性、シール性及び絶縁性を有する部材、例えば、ガラス繊維(セラミック繊維)により構成される。
【0073】
このように構成される燃料電池システム10の動作について、以下に説明する。
【0074】
先ず、図2に示すように、原燃料供給管170から改質器162には、都市ガス(CH、C、C、C10を含む)等の原燃料に水蒸気が混在された混合燃料が供給される一方、空気供給管174から熱交換器164に酸化剤ガスである、例えば、空気が供給される。
【0075】
その際、燃焼器182では、図示しないバーナに着火されて燃焼が開始されている。このため、燃焼により発生する燃焼ガスを介して、改質器162及び熱交換器164が加熱される。
【0076】
従って、改質器162では、混合燃料が水蒸気改質され、C2+(エタン以上)の炭化水素が除去(改質)されてメタンを主成分とする改質ガスが得られる。この改質ガスは、改質器162の出口に連通する改質ガス排出管172から燃料ガス供給管154を通って下段の燃料電池モジュール12に、さらに上方の燃料ガス供給管154から上段の燃料電池モジュール12に供給される。このため、改質ガスは、各段の燃料電池モジュール12を構成する各燃料電池スタック14の燃料ガス供給連通孔34に供給される。これにより、アノード電極24で改質ガス中のメタンが改質されて水素ガス、COを主成分とする改質ガス(燃料ガス)が得られる。
【0077】
一方、熱交換器164に供給される空気は、この熱交換器164内に沿って移動する際、燃焼ガスを介して、さらにオフガス通路部材181から供給される後述するオフガス(排ガス)との間で熱交換が行われ、所望の温度に予め加温されている。熱交換器164で加温された空気は、酸化剤ガス排出管176から下方の酸化剤ガス供給管156を通って下段の燃料電池モジュール12に、さらに上方の酸化剤ガス供給管156から上段の燃料電池モジュール12に供給される。このため、空気は、各段の燃料電池モジュール12を構成する各燃料電池スタック14の酸化剤ガス供給連通孔62に供給される。
【0078】
図4及び図6に示すように、燃料ガス(水素ガス)は、燃料電池スタック14の燃料ガス供給連通孔34に供給されるとともに、酸化剤ガス(空気)は、前記燃料電池スタック14の酸化剤ガス供給連通孔62に供給される。
【0079】
燃料ガスは、積層方向(矢印A方向)に移動しながら各燃料電池16を構成する第1セパレータ28aに形成された燃料ガス供給通路58に導入される。この燃料ガスは、第1橋架部38及び第2橋架部50間を燃料ガス供給通路58に沿って移動し、一旦、燃料ガス充填室60に充填される。
【0080】
さらに、燃料ガスは、燃料ガス供給孔46から燃料ガス通路44に導入される。その際、燃料ガス供給孔46は、各電解質・電極接合体26のアノード電極24の中央位置に設定されている。このため、燃料ガスは、アノード電極24の中心から燃料ガス通路44に沿って前記アノード電極24の外周部に向かって移動する。
【0081】
一方、酸化剤ガス供給連通孔62に供給された酸化剤ガスは、第2セパレータ28bを構成する第1橋架部68及び第2橋架部70間に形成された酸化剤ガス供給通路80に沿って移動し、一旦、酸化剤ガス充填室82に充填される。さらに、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給孔78から酸化剤ガス通路76に導入される。
【0082】
酸化剤ガス供給孔78は、各電解質・電極接合体26のカソード電極22の中央位置に設定されている。このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス通路76に沿ってカソード電極22の中央位置から外周部に向かって移動する。
【0083】
これにより、電解質・電極接合体26では、アノード電極24の電極面の中心側から周端部側に向かって燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極22の電極面の中心側から周端部側に向かって酸化剤ガスが供給される。その際、酸化物イオンが電解質20を通ってアノード電極24に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0084】
燃料ガス通路44を移動した使用済みの燃料ガス、及び酸化剤ガス通路76を移動した使用済みの酸化剤ガスは、各電解質・電極接合体26の外周部から導出され、この外周部周辺で混合されて比較的高温のオフガスとして排出される。図2に示すように、オフガスは、オフガス通路部材181から熱交換器164に加熱用媒体として供給され、燃料電池スタック14に供給される前の酸化剤ガスを加熱した後、第2ケース部材186内に排出される。
【0085】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池モジュール12は、互いの離間間隔を保持する第1プレート部材140及び第2プレート部材142間に、荷重付与機構138及び複数の燃料電池16が挟持されることによって、それぞれ個別のユニットとして構成されている。このため、各燃料電池モジュール12は、独立して積層方向の荷重により締結されており、積層方向の位置によって荷重の影響を受けることがない。
【0086】
そして、各燃料電池モジュール12は、各燃料ガス供給部84同士を連通させる燃料ガス供給管154及び各酸化剤ガス供給部90同士を連通させる酸化剤ガス供給管156により連結されている。
【0087】
従って、各燃料電池モジュール12同士は、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156により連結されている。このため、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156は、隣接する燃料電池モジュール12同士を繋ぐ反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)の流通経路、電気の流通経路及び荷重伝達経路として機能することができる。
【0088】
しかも、複数、例えば、2段の燃料電池モジュール12を重力方向に積層しても、それぞれの燃料電池モジュール12に作用する積層方向の荷重を一定に維持することができる。これにより、例えば、積層方向下方の燃料電池モジュール12を構成するセパレータ(第1セパレータ28a及び第2セパレータ28b)及び電解質・電極接合体26に歪等が発生することを、可及的の阻止することが可能になる。
【0089】
従って、特別な機構や構造の必要がなく、段数によるセパレータ(第1セパレータ28a及び第2セパレータ28b)の損傷もなく、複数の燃料電池モジュール12を簡便に積層することが可能になる。これにより、簡単且つコンパクトな構成で、複数の燃料電池モジュール12を良好に積層することができるという効果が得られる。
【0090】
また、各燃料電池モジュール12内の各燃料電池スタック14で発電反応後に排出されるオフガスが、加熱用媒体としてオフガス通路部材181から熱交換器164に導入されて、前記燃料電池モジュール12に供給される前の酸化剤ガスと熱交換している。このため、オフガスの排熱を有効に回収することができ、熱効率の向上が容易に図られる。特に、オフガスは、未使用の燃料ガスと酸化剤ガスとにより、第1ケース部材184内で燃焼するため、各燃料電池スタック14を直接加熱し、熱交換によって酸化剤ガスを加熱する加熱エネルギとして有効に利用することが可能になる。
【0091】
しかも、改質器162及び熱交換器164は、燃焼器182からの燃焼ガスにより加熱されている。従って、改質器162及び熱交換器164を通って加熱された燃料ガス及び酸化剤ガスが、各燃料電池スタック14に供給されるため、前記燃料電池スタック14を内側から良好に加熱することができる。
【0092】
さらに、台部材168には、改質器162及び熱交換器164と燃料電池モジュール設置部材166を介して2段の燃料電池モジュール12とが保持されている。そして、燃焼器182は、流体部160に隣接して配置されており、この燃焼器182から改質器162及び熱交換器164に燃焼ガスが供給されている。これにより、改質器162及び熱交換器164を加熱した燃焼ガスは、各燃料電池モジュール12内の燃料電池スタック14を加熱することが可能になり、熱効率の向上が図られる。
【0093】
その上、熱交換器164から排出される熱交換後のオフガスは、第1ケース部材184と第2ケース部材186との間に形成されたオフガス通路202を通って排ガス排出口200から外部に排出されている。このため、第1ケース部材184内に収容されている各燃料電池モジュール12は、オフガスによって外側から加熱されて前記燃料電池モジュール12からオフガス通路202への放熱を防止して熱効率の向上が容易に遂行される。
【0094】
また、下段の燃料電池モジュール12は、燃料電池モジュール設置部材166に設置されている。従って、燃料電池モジュール12は、燃料電池モジュール設置部材166から流体部160への放熱を良好に遮断することができ、前記燃料電池モジュール12の断熱性及び熱効率の向上を図ることが可能になる。
【0095】
さらに、第1セパレータ28aは、第1挟持部88、燃料ガス供給部84及び第1橋架部86を備えるとともに、第2セパレータ28bは、第2挟持部94、酸化剤ガス供給部90及び第2橋架部92を備えている。荷重付与機構138は、積層方向に沿って第1挟持部88及び第2挟持部94に重なる位置に配置され、前記第1挟持部88及び前記第2挟持部94に対して荷重を付与している。
【0096】
これにより、第1挟持部88及び第2挟持部94と電解質・電極接合体26との密着状態を確保し、集電性能の向上が図られるとともに、燃料ガス供給部84及び酸化剤ガス供給部90に対して所望のシール荷重を付与することができる。
【0097】
また、各燃料ガス供給部84、各酸化剤ガス供給部90、各第1挟持部88及び各第2挟持部94には、それぞれ燃料電池スタック14に発生した変位を吸収するための第1変位吸収機構96、第2変位吸収機構98、第3変位吸収機構130及び第4変位吸収機構132が設けられている。
【0098】
従って、急速昇温時に各燃料電池スタック14に発生した急激な変位は、第1変位吸収機構96〜第4変位吸収機構132を介して前記燃料電池スタック14全体で有効に吸収することができる。これにより、燃料電池スタック14に歪みが発生することを抑制するとともに、集電性能及びシール性能を良好に維持することができるという効果が得られる。
【0099】
また、第1ポール部材158及び第2ポール部材159は、第1ケース部材184から第2ケース部材186を貫通して前記第2ケース部材186の外部に延在するとともに、前記第1ケース部材184及び前記第2ケース部材186の挿通部位には、ガイド部材206、208が介装されている。
【0100】
ガイド部材206、208は、耐熱性、シール性及び絶縁性を有する部材、例えば、ガラス繊維(セラミック繊維)により構成されている。これにより、第1ポール部材158及び第2ポール部材159は、ガイド部材206、208の案内作用下に積層方向及び該積層方向に垂直な方向(矢印B方向)にも摺動可能になり、熱変位に容易且つ確実に追従することができる。
【0101】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池システム300の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0102】
燃料電池システム300は、多段、例えば、3段に配置される燃料電池モジュール12a、12b及び12cを備える。燃料電池モジュール12a、12b及び12cは、重力方向に向かって直列に接続される。
【0103】
最下段の燃料電池モジュール12aは、燃料電池モジュール設置部材166に燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156を介して接続される。最下段の燃料電池モジュール12aと中段の燃料電池モジュール12bとは、燃料ガス供給管154及び酸化剤ガス供給管156のみにより連結される。中段の燃料電池モジュール12bと最上段の燃料電池モジュール12cとは、同様に燃料ガス供給管154及び前記酸化剤ガス供給管156のみにより連結される。
【0104】
このように構成される第2の実施形態では、3段の燃料電池モジュール12a、12b及び12cが、重力方向に直列して複数個配置されている。このため、高電圧を得ることができるとともに、特に燃料電池システム300全体の設置面積は、水平方向に対し良好に狭小化されることが可能になる。その他、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
なお、第2の実施形態では、3段の燃料電池モジュール12a、12b及び12cを用いているが、これに限定されるものではなく、種々の積層段数(例えば、4段等)に設定可能である。
【0106】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システム400の概略構成説明図である。なお、上記の第1及び第2の実施形態に係る燃料電池システム10、300と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0107】
燃料電池システム400では、重力方向に多段、例えば、3段に直列される燃料電池モジュール12a1、12b1、12c1と、重力方向に対して3段に直列に接続される燃料電池モジュール12a2、12b2及び12c2とが、燃料電池モジュール設置部材166に並列される。これらの燃料電池モジュールは、図示しない導通部材によって連結される。
【0108】
従って、第3の実施形態では、高電圧及び大電流の大出力が得られる他、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0109】
10、300、400…燃料電池システム
12、12a、12b、12c、12a1、12b1、12c1、12a2、12b2、12c2…燃料電池モジュール
14…燃料電池スタック 16…燃料電池
20…電解質 22…カソード電極
24…アノード電極 26…電解質・電極接合体
28a、28b…セパレータ 30a、30b、32a、32b…プレート
34…燃料ガス供給連通孔 36、48、84…燃料ガス供給部
38、50、68、70、86、92…橋架部
40、52、72、74、88、94…挟持部
44…燃料ガス通路 46…燃料ガス供給孔
58…燃料ガス供給通路 62…酸化剤ガス供給連通孔
64、66、90…酸化剤ガス供給部 76…酸化剤ガス通路
78…酸化剤ガス供給孔 80…酸化剤ガス供給通路
96、98、130、132…変位吸収機構
138…荷重付与機構 140、142…プレート部材
144…皿ばね 154…燃料ガス供給管
156…酸化剤ガス供給管 158、159…ポール部材
160…流体部 162…改質器
164…熱交換器 166…燃料電池モジュール設置部材
168…台部材 181…オフガス通路部材
182…燃焼器 184、186…ケース部材
190、192…筒状部 202…オフガス通路
204…室 206、208…ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、セパレータ間に配設される燃料電池を備え、複数の前記燃料電池が積層されるとともに、前記アノード電極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部及び前記カソード電極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部が、それぞれ前記燃料電池の積層方向に形成される燃料電池スタックと、
前記積層方向の一端側に配置され、前記燃料電池スタックに該積層方向に荷重を付与する荷重付与機構と、
前記積層方向の両端側に配置され、前記荷重付与機構及び複数の前記燃料電池を挟持するとともに、互いの離間間隔を保持する第1プレート部材及び第2プレート部材と、
が設けられる燃料電池モジュールを備え、
複数の前記燃料電池モジュールは、前記積層方向に直列に配設されるとともに、
前記燃料電池モジュール同士は、各燃料ガス供給部同士を連通させる燃料ガス供給管及び各酸化剤ガス供給部同士を連通させる酸化剤ガス供給管により連結されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、複数の前記燃料電池モジュールは、重力方向に直列に配設されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池システムにおいて、前記重力方向に直列に配設される複数の前記燃料電池モジュールが、水平方向に複数並列されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、原燃料を改質して改質ガスを生成し、前記改質ガスを前記燃料ガスとして前記燃料ガス供給部を介し前記アノード電極に供給する改質器と、前記酸化剤ガスを前記燃料電池モジュールに供給する前に加熱し、加熱された前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス供給部を介し前記カソード電極に供給する熱交換器と、前記積層方向一端の前記燃料電池モジュールを設置するための燃料電池モジュール設置部材と、前記改質器、前記熱交換器及び前記燃料電池モジュール設置部材を保持するための台部材とを備える流体部と、
前記流体部に、前記燃料電池モジュールが配置される一方側とは反対の他方側に隣接して配置され、燃焼により発生する燃焼ガスによって前記改質器及び前記熱交換器を加熱する燃焼器と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池モジュール設置部材に連結され、複数の前記燃料電池モジュールを収容する第1ケース部材と、
前記台部材に連結され、前記第1ケース部材及び前記流体部を収容する第2ケース部材と、
を備え、
前記燃料電池モジュール設置部材と前記熱交換器とには、前記燃料電池モジュールで発電反応に使用された前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスからなるオフガスを、前記第1ケース部材の内部空間から前記熱交換器に加熱用媒体として供給するための通路部材の両端が接続されるとともに、
前記熱交換器から排出される熱交換後の前記オフガスは、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に形成されたオフガス通路を通って排出されることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記燃料電池は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体が、第1セパレータ及び第2セパレータ間に配設され、
前記第1セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、電極面に沿って前記燃料ガスを供給する燃料ガス通路が設けられる第1挟持部と、
前記燃料ガスを前記燃料ガス通路に供給するための燃料ガス供給連通孔が積層方向に形成される燃料ガス供給部と、
前記第1挟持部と前記燃料ガス供給部とを連結し、前記燃料ガスを前記燃料ガス供給連通孔から前記燃料ガス通路に供給するための燃料ガス供給通路が形成される第1橋架部と、
を備え、
前記第2セパレータは、前記電解質・電極接合体を挟持するとともに、電極面に沿って酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路が設けられる第2挟持部と、
前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス通路に供給するための酸化剤ガス供給連通孔が積層方向に形成される酸化剤ガス供給部と、
前記第2挟持部と前記酸化剤ガス供給部とを連結し、前記酸化剤ガスを前記酸化剤ガス供給連通孔から前記酸化剤ガス通路に供給するための酸化剤ガス供給通路が形成される第2橋架部と、
を備えるとともに、
各第1挟持部、各第2挟持部、各燃料ガス供給部及び各酸化剤ガス供給部には、それぞれ前記燃料電池スタックに発生した変位を吸収するための変位吸収機構が設けられることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、積層方向一端に配置される前記燃料電池モジュールを構成する前記第1プレート部材には、第1ポール部材が接続されるとともに、
積層方向他端に配置される前記燃料電池モジュールを構成する前記第2プレート部材には、第2ポール部材が接続され、
前記第1ポール部材は、一方の電流取り出し端子を構成し、且つ前記第2ポール部材は、他方の電流取り出し端子を構成することを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−221630(P2012−221630A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83952(P2011−83952)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】