説明

燃料電池システム

【課題】水供給配管に気泡が混入した場合であっても、改質器に適切な流量で水を供給することが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池セル84と、水流量調整ユニット28と、燃料流量調整ユニット38と、蒸発部20aと、燃料ガスを水蒸気改質する改質部20bとを備えた燃料電池システム1において、水流量調整ユニット28は、配管159と、配管159を通して水を圧送するパルスポンプ158と、配管159に設けられた水流量センサ134とを備え、水流量調整ユニット28は、水流量センサ134が配管159中の気泡を検出したとき、気泡が蒸発部20aに到達する時点において、気泡による水供給量の減少分を気泡より下流側の配管159内の水によって予め補うように、気泡が蒸発部20aに到達するまでの間にパルスポンプ158による水供給量を増加させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に、燃料を水蒸気改質する改質器を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池システムでは、燃料電池モジュールに水を供給する水供給ポンプを備えた構成の燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された燃料電池システムでは、水供給路において、燃料電池の入口と出口に圧力センサがそれぞれ設けられ、これら圧力センサによって通路内の気泡の混入を検出している。そして、この燃料電池システムは、気泡が検出された場合に流量を増加させて気泡を押し流すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−147240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、燃料ガスを水蒸気と反応させて水素ガスを生成する水蒸気改質を行う改質器を備えた燃料電池(固体電解質形燃料電池:SOFC)では、蒸発器で水が気化され、改質器へ供給されるように構成されている。この水蒸気改質に用いられる水の供給量は、毎分数ミリリットルといった僅かな量であるので、水供給配管に少しでも気泡が混入すると、改質器で一時的に水不足状態になってしまう。改質器で水不足状態になると、炭素析出が発生し改質器を劣化させてしまうという問題があった。
【0005】
特に、水自立システムを備えた燃料電池の場合、水蒸気を含む排気ガスから回収した凝縮水を利用するため、外部から気泡が混入しなくても、燃料電池内で発生した炭酸ガスにより気泡が混入するおそれがある。
【0006】
一方、水不足を回避するために、常に水を過剰に供給すると、水が酸化源となって、改質触媒が劣化し燃料電池システムの寿命を縮めてしまう場合がある。したがって、水蒸気改質を行う燃料電池においては、水を適切な流量で蒸発器及び改質器へ供給することが重要となる。
【0007】
したがって、上記特許文献1のように、気泡が検出されたときに単に気泡を追い出すために、流量を増大させるだけでは、適切な流量で水を供給することができず、燃料電池システムの劣化を招くことになる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、水蒸気改質を行う改質器を備えた燃料電池システムにおいて、水供給配管に気泡が混入した場合であっても、改質器に適切な流量で水を供給することが可能な燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、燃料電池セルと、水を供給する水供給手段と、燃料ガスを供給する燃料供給手段と、水供給手段から供給された水を気化する蒸発器と、蒸発器から供給された水を用いて、燃料供給手段から供給された燃料ガスを水蒸気改質して燃料電池セルに供給する改質器と、を備えた凝縮水を利用した水自立型燃料電池システムにおいて、水供給手段は、水を蒸発器へ供給する配管と、配管を通して水を圧送する圧送ポンプと、圧送ポンプの下流の配管に設けられた気泡検知手段と、を備え、水供給手段は、気泡検知手段が配管中の気泡を検出したとき、気泡が蒸発器に到達する時点において、気泡による水供給量の減少分を気泡より下流側の配管内の水によって予め補うように、気泡が蒸発器に到達するまでの間に圧送ポンプによる水供給量を増加させるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
上述のように燃料を水蒸気改質するために必要な水供給量は僅かである。したがって、圧送ポンプによって水を蒸発器へ送るための配管内に気泡があると、気泡が到達したときに蒸発器から改質器へ供給される水蒸気量が減少し、改質器内で必要な水蒸気量が一時的に不足してしまう。
【0011】
そこで、本発明では、配管中に気泡が検出された場合、この気泡が水流と共に配管を通って蒸発器に到達するまでの間に、圧送ポンプによる水供給量を増加させることによって、気泡よりも下流側の配管内の水を利用して、増量した水流量を蒸発器に送り込むように構成されている。これにより、気泡が蒸発器に到達する前に、気泡による水の不足分を予め補って供給しておくことができる。よって、本発明では、気泡の到達を考慮して、所定の単位時間当たりの水供給量がほぼ一定となるように水を供給することができ、気泡到達時に蒸発器で水不足の状態となることを防止して、水不足に起因する炭素析出を防止することが可能となる。なお、本発明において、気泡到達直前における水供給の過剰な状態はほんの一時的なものであるため、水過剰供給による触媒酸化等の問題を抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、水供給手段は、検出された気泡が、蒸発器から所定距離離れた所定位置に到達した時点から蒸発器に到達するまでの間に、圧送ポンプによる水供給量を増加させるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、気泡が所定位置に到達した時点から蒸発器に到達するまでの間に水供給量を増加させるので、気泡が蒸発器に到達する直前までに、一時的な水過剰状態としておくための必要最小限の水のみを供給することができる。
なお、気泡が所定位置及び蒸発器に到達したことは、気泡検知手段により気泡検知からの経過時間と水流量等から算出してもよいし、所定位置及び蒸発器近傍に設けられたそれぞれ別の気泡検知手段によって直接検知してもよい。
【0013】
本発明において、好ましくは、所定位置よりも上流側に圧送ポンプが配置され、圧送ポンプと所定位置との間に気泡検知手段が設けられる。
このように構成された本発明によれば、圧送ポンプが気泡検知手段よりも上流側に配置されているので、気泡検知手段で検知された気泡は、その後は圧送ポンプに噛み込むことなく蒸発器までスムーズに移動させることができる。したがって、気泡の到達による水不足を補うのに必要な量の水を、過不足無く正確に送ることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、気泡検知手段は、上記所定位置に設けられている。
このように構成された本発明によれば、気泡を検知した時点から所定時間の間、水供給量を増やした状態とするだけの制御となるため、気泡位置の推定誤差による水供給の過不足等の不具合を防止することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、水供給手段は、気泡が検知されてからの経過時間と圧送ポンプによる水流量に基づいて、配管における気泡の位置を推定する。
このように構成された本発明によれば、気泡検知後の経過時間と圧送ポンプによる水流量を用いて気泡位置を推定するので、気泡検知手段の設置位置によらず、適切なタイミングで水供給量を増やすことができる。また、蒸発器に気泡が到達したことを検知するためのセンサを不要とすることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、気泡検知手段は、ギヤ式流量センサである。
このように構成された本発明によれば、ギヤ式流量センサを用いることにより、気泡が通過する際のギヤ回転量の低下に基づいて、適切に閾値を設定することにより、配管内の気泡を確実に検出することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、圧送ポンプと気泡検知手段との間の配管に気泡を集約して大きな気泡にする気泡集約部が設けられている。
気泡は非常に微細な状態であるため、この微細な気泡を確実に検出するには非常に高精度な気泡検知手段が必要となるが、本発明においては、気泡集約手段を気泡検知手段の上流に設けていることから、気泡検知手段では比較的な大きな気泡を検出すればいいことになるため高精度な検出手段を必要とせずに確実に気泡を検出することができる。また、気泡が集約されるため改質器に微細な気泡がばらばらと離散的に到達することがなくなり、気泡が到達するタイミングに合わせて確実に水を増量させることが可能となる。
【0018】
本発明において、好ましくは、気泡検知手段と改質器の間の配管に気泡を集約して大きな気泡にする第2気泡集約部が設けられている。
気泡検知手段で集約されて大きくなった気泡を検出する際又は検出した後に、例えば気泡検知手段などの検出過程で気泡を分断してしまうような状況があった場合、分断され小さくなった複数の気泡毎の浮力や配管との接触抵抗の違いなどによって、改質器に各気泡が到達するタイミングが異なってしまうが、本発明によれば気泡検知手段の下流でさらに第2気泡集約手段によって気泡が再集約されることから気泡が改質器に到達するタイミングを確実に狙った通りにすることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、圧送ポンプと気泡検知手段の間の配管を上方から下方に向くように屈曲させた屈曲部を気泡集約手段として構成している。
このように構成された本発明によれば、配管の取り回しだけで配管の抵抗を形成することにより、気泡が上方に溜まるという特性を利用して確実に気泡の検出と水の増量タイミングを同期できるようにすることができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、気泡検知手段と改質器の配管途中に気泡検知手段から改質器へ向かう方向のみに水の供給を許容する一方向弁を設け、該一方向弁による配管抵抗を利用して第2気泡集約手段を構成している。
このように構成された本発明によれば、気泡検知手段の下流に一方向弁を設けたことによって、気泡検知手段に対する改質器側からの圧力変化影響を遮断できるため、気泡検知手段の検出精度を確実なものにすることができる。また、この一方向弁の抵抗によって一方向弁の上流側である気泡検知手段側で気泡を再集約できるため、別段の手段を設けることなく確実に気泡と水の増量タイミングを同期させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水蒸気改質を行う改質器を備えた燃料電池システムにおいて、水供給配管に気泡が混入した場合であっても、改質器に適切な流量で水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池システムを示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池セル単体を示す部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による燃料電池システムを示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による燃料電池システムの起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による燃料電池システムの運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による燃料電池システムの水供給装置を示す概略図である。
【図10】本発明の一実施形態による燃料電池システムの水流量センサの構成図である。
【図11】本発明の一実施形態による気泡混入時における流量指令値と流量検出値の時間変化である。
【図12】本発明の一実施形態による気泡検知に基づく水供給量補償処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)又は燃料電池システム1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0024】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0025】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、上述した残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0026】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水する第1の貯水タンク26aと、この第1の貯水タンク26aから供給される水をフィルターにより純水とする第2の貯水タンク(純水タンク)26bとを含む水流量調整ユニット28(詳細が後述する)を備え、この水流量調整ユニット28がこの第2の貯水タンク(純水タンク)26bから供給される純水の流量を調整して改質器20に純水を供給するようになっている。
また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒーター46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒーター48とを備えている。これらの第1ヒーター46と第2ヒーター48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0027】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0028】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0029】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、供給された水を気化する蒸発部20aと、蒸発器20aによる水蒸気を用いて燃料ガスの水蒸気改質を行う改質部20bが形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0030】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0031】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0032】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0033】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0034】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0035】
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0036】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0037】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0038】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0039】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0040】
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0041】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0042】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0043】
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0044】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0045】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0046】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、第1の貯水タンク26aと第2の貯水タンク(純水タンク)26bのそれぞれの水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0047】
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0048】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
【0049】
次に図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0050】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒーター46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒーター48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0051】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0052】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0053】
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
【0054】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0055】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
【0056】
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
【0057】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0058】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
【0059】
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0060】
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
【0061】
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、発電用空気流量調整ユニット45による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後(例えば、水蒸気改質反応(SR)運転が開始されてから5時間後)、発電室の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
【0062】
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
【0063】
次に、図9により、上述した本実施形態による水流量調整ユニット28について詳細に説明する。図9は、本発明の一実施形態による燃料電池システム1の水流量調整ユニット28を示す概略図である。
図9に示すように、純水を生成して改質器20に供給する水流量調整ユニット28は、上流側から順に、水供給源24からの水の流量を調整する流量調整弁152と、水供給源24からの水を一時的に貯蔵する第1の貯水タンク26aと、この第1の貯水タンク26a内の水を供給するポンプ154と、この供給された水を浄化して純水を生成するためのRO膜(逆浸透膜)156と、生成された純水を一時的に貯蔵する第2の貯水タンク(純水タンク)26bと、この純水を燃料電池モジュール2の改質器20にパルス制御により間欠的に供給するパルスポンプ(圧送ポンプ)158と、気泡集約手段163と、水流量センサ134と、一方向弁164を備えている。
また、熱交換器160や、水及び純水が凍結するのを防止するためのヒーター162や、第1の貯水タンク26aと第2の貯水タンク26bのそれぞれの水位を検出する水位センサ136も備えている。
【0064】
本実施形態では、改質器20で行われる水蒸気改質反応のために、パルスポンプ158を用いて所定の水流量で純水を蒸発器20aへ圧送している。水蒸気改質に必要な水流量は、毎分数ミリリットルという僅かな水量であり、過不足なく正確な量だけ送出することが望ましい。すなわち、水供給量が不足すると改質器20内で炭素析出が生じ、水供給量が過剰であると改質器20内の触媒が失われる等の不具合が生じるおそれがある。したがって、本実施形態では、僅かな水流量を正確に出力することができるパルスポンプ158が用いられている。
【0065】
また、本実施形態では、第2の貯水タンク26bと燃料電池モジュール2の改質器20は、水供給配管159で連結されている。水供給配管159は、第2の貯水タンク26bとパルスポンプ158とを連結する配管159aと、パルスポンプ158と水流量センサ134を連結する配管159bと、水流量センサ134と改質器20を連結する配管159cとから構成されている。これにより、パルスポンプ158及び水流量センサ134は、運転中に燃料電池モジュール2からの熱を避けるため、配管159b,159cにより、燃料電池モジュール2から離間した位置に配置されている。本実施形態では、水流量センサ134が改質器20から配管159cによって離間されているため、後述するように、この配管159c内の水を、気泡による水不足を補うためのバッファ分として用いることができる。
【0066】
また、本実施形態では、気泡集約手段163が配管159bに設けられている。気泡集約手段163は、配管159bを上方から下方に向くように上下方向に屈曲させた屈曲部163a,163bを備えている。すなわち、屈曲部163a,163bは、それぞれパルスポンプ158側から延びる配管159bが一旦垂直又は斜め方向に上方へ立ち上がり、その後垂直又は斜め方向に立ち下がるように屈曲されている。したがって、各屈曲部163a,163bは、立ち上がり部と立下がり部と、これらを繋ぐ空気溜まり部として機能するである頂部を有している。
【0067】
気泡は水よりも軽いため、屈曲部163a,163bの頂部(すなわち空気溜まり部)に気泡が捕えられる。これにより、屈曲部163a,163bは、配管159b内を押し流されてきた微細な気泡を捕え、比較的大きな気泡に集約することができる。ある程度の大きさに集約されると、その気泡は、屈曲部163aから屈曲部163bへ押し出され、また、屈曲部163bから水流量センサ134へ向けて押し出される。
【0068】
また、本実施形態では、一方向弁164が配管159cの途中に設けられている。この一方向弁164は、水流量センサ134から改質器20へ向かう方向の水流のみを許容するように構成されている。一方向弁164を設けることにより、配管159cを通して、改質器20側から水流量センサ134に対して伝えられる圧力変化の影響や熱による影響を遮断することができ、水流量センサ134による検出精度を良好に維持することができる。
また、一方向弁164は配管159c内の抵抗でもあるので、大きく集約された気泡が水流量センサ134で分断され微細化されても、一方向弁164で再集約させ、再び集約された気泡で改質器20へ向けて送り出すことができる。
【0069】
また、本実施形態では、水自立システムが構成されている。なお、水道水である水供給源24からの水を改質器20へ供給するように構成してもよい。水自立システムでは、水供給源24が、排気ガス中に含まれる水を回収し、凝縮水を第1の貯水タンク26aに供給する構成となっている。なお、水道水を用いた場合、改質器20へ供給する際に気泡があらわれるおそれがあり、水自立システムの場合においても、排気ガス中に含まれた炭酸ガスが気泡としてあらわれるおそれがある
【0070】
図10は、水流量センサ134の構成図である。本実施形態の水流量センサ134は、気泡検知手段としても機能するものであり、ケース134a内に2つの歯車134d,134eを備えた歯車式(ギヤ式)の流量センサである。この水流量センサ134では、ケース134aの入口134bから入った流体は、ケース134aの内面に沿って流れ、対向する位置に設けられた出口134cから出力されるようになっている。2つの歯車134d,134eは、この流体によって回転し、流量に応じた回転速度信号(流量検出信号)を制御部110へ出力する。
【0071】
制御部110は、流量検出信号から水流量センサ134を通過している流体(水)の流量を検出することができる。水供給配管159内に気泡が混入した場合には、歯車134d,134eの回転速度が低下するので、気泡通過前後と比べて気泡通過中は、流量検出信号が小さくなる。これにより、制御部110は、気泡が水流量センサ134を通過したことを検出することができる。
【0072】
本実施形態では、制御部110が流量指令値に基づく駆動信号をパルスポンプ158へ送出することにより、パルスポンプ158が駆動信号に基づき、流量指令値の水流量(水供給量)で水を圧送する。また、制御部110は、水流量センサ134から流量検出信号を受け取り、水流量を検出する。本実施形態では、水供給手段として、制御部110と水流量調整ユニット28を含んでいる。
【0073】
次に、図11及び図12により、本実施形態の燃料電池システム1の作用について説明する。
図11は、気泡が混入した際に水流量センサ134によって得られる水流量(水供給量)の時間変化を示している。
図11では、時間t0〜t3の間、制御部110は、所定の水流量Q0を指示する流量指令値に基づいてパルスポンプ158を作動させており、これにより、パルスポンプ158は、単位時間当たりの水供給量が水流量Q0となるように継続的に作動する。また、このとき、水流量センサ134からの流量検出信号は、水流量Q0を示す(時間t0〜t1)。なお、このときの流量指令値に基づく水流量Q0は、改質器20内で水蒸気改質反応を行うのに適切な水供給量に設定されたものである。
【0074】
気泡が水流量センサ134を通過するとき、噛み込んだ気泡の分だけ、水流から歯車134d,134eへ与えられる回転駆動力が減少するので、歯車134d,134eの回転速度が低下する。これにより、水流量センサ134から制御装置110へ出力される流量検出信号の値が低下するので、微小な気泡であっても確実に検出することができる。
なお、本実施形態では、気泡集約手段163により微細な気泡が検知し易い適切な大きさに集約され、この集約された気泡が水流量センサ134を通過するので、水流量センサ134によって確実に気泡検知することができる。また、気泡を集約する構成を採用することにより、水流量センサ134の精度が微細な気泡を検出できるような高精度なものでなくてもよくなり、ある程度の大きさの気泡を確実に検出可能であればよい。
【0075】
制御部110は、低下した流量検出信号が気泡判別のための流量閾値Qthを下回ると、気泡が通過したことを検知する。なお、この流量閾値Qthは、固定値であってもよいし、流量指令値に基づく水流量Q0の大きさに応じて設定される値であってもよいし、流量指令値に基づく水流量Q0からの低下量又は低下割合から決定される値であってもよい。
【0076】
図11の場合、制御部110は、時間t1〜t2の間、気泡の通過を検出している。
時間t2以降、気泡の通過後は、再び、水流が水流量Q0で水流量センサ134を通過するので、水流量センサ134からの流量検出信号は水流量Q0に戻る(時間t2〜t3)。
【0077】
気泡が配管159中に混入すると、気泡が蒸発器20aへ到達したとき、気泡の体積分だけ水供給量が減少することになる。しかも、水蒸気改質反応に用いられる水流量は時間当たり僅かであるので、必要な水流量に対するこの気泡分の減少は相対的に大きいものとなる。これにより、一時的に水不足状態となり、上述のように炭素析出により改質器20が劣化するおそれがある。
【0078】
このため、本実施形態では、気泡到達に起因して水不足状態となることを防止するために、所定の短期間毎に時間平均した場合に、水蒸気改質反応に必要な水流量Q0が適切に供給されるように構成されている。したがって、気泡到達前には、短時間の間、一時的に水供給過剰となる。具体的には、本実施形態では、気泡が蒸発器20aに到達する前の所定期間に、パルスポンプ158によるポンプ供給速度を、水蒸気改質反応に必要な流量指令値に基づく水流量Q0よりも増加することにより、気泡よりも下流側(蒸発器20a側)にある配管159c内の水を、水流量Q0よりも大きい流量で予め蒸発器20aに供給する。
【0079】
これにより、気泡が蒸発器20aに到達した時点で、気泡の体積分の水を予め蒸発器20aに事前に供給しておくことができ、時間的に平均すると水流量Q0で蒸発器20aに水供給することが可能となる。これにより、気泡に起因した水不足状態を回避することができる。
【0080】
制御部110は、気泡の検知後、所定条件が満たされると(例えば、気泡検知から所定期間T1経過して、気泡が水流量センサ134と蒸発器20aの間の所定位置に到達したこと)、所定期間T2の間、流量指令値をΔQだけ増量し水流量をQ0+ΔQに設定する(時間t3〜t4)。これにより、検出された気泡が蒸発器20bへ到達する前までに、気泡到達による不足分の水を蒸発器20aに供給することができる。なお、気泡は、時間t4に、又は、時間t4以降に蒸発器20aに到達することになる。
【0081】
制御部110は、所定期間T2が経過すると、又は、気泡が蒸発器20aに到達すると、流量指令値を再び元の水流量Q0へ戻す。これにより、気泡到達後は、再び、適切な水流量Q0で水が蒸発器20aに供給される。
【0082】
より詳細には、制御部110は、気泡が蒸発器20aから所定距離D2だけ離れた所定位置Pに到達した時点(時間t3)から蒸発器20aに到達するまでの間(〜時間t4)に、水流量を増量する。気泡が検出されてから気泡が位置Pに到達するまでの期間T1は、気泡検知までの実測した水流量(Q0)(又は流量指令値に基づく水流量),水流量センサ134から位置Pまでの経路距離D1,配管159の管径等に応じて算出されるものであり、より具体的には、水流量Q0のときに気泡が配管159を移動する速度で経路距離D1を割る(除算)ことにより算出することができる。
【0083】
また、気泡が位置Pから蒸発器20aに到達するまでの期間T2(又は、気泡が蒸発器20aに到達した時点t4)は、実測した水流量(Q0)(又は流量指令値に基づく水流量)に増量分ΔQを加算した水流量(Q0+ΔQ),位置Pから蒸発器20aまでの経路距離D2,配管159の管径等に応じて算出されるものであり、より具体的には、水流量Q0+ΔQ(=Q1)のときに気泡が配管159を移動する速度で経路距離D2を割る(除算)ことにより算出することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、気泡が位置Pに到達する時点及び蒸発器20aに到達する時点を計算処理により推定しているが、これに限らず、位置P及び蒸発器20aの入口近傍に別の気泡検知センサを設けて、気泡の各位置への到達を直接検出するように構成してもよい。
【0085】
本実施形態では、経路距離D2は固定値であり、この場合、水流量Q0や気泡検知期間(例えば、時間t1〜t2)に応じて増量分ΔQを変更することにより、気泡による水の不足分を過不足無く正確に補償することができる。例えば、気泡による水の不足分は、気泡検知期間に所定の係数を乗算することにより推定することができ、増量分ΔQと期間T2を乗算した値に等しくなる。よって、水流量Q0、経路距離D2等に基づいて、期間T2及び増分量ΔQを算出することができる。定性的には、水流量Q0が小さい場合や気泡検知期間が短い場合には、増量分ΔQがより小さい値に設定され、水流量Q0が大きい場合や気泡検知期間が長い場合には、増量分ΔQがより大きい値に設定される。
【0086】
なお、経路距離D2は可変値であってもよく、この場合、増量分ΔQは固定値とすることができ、水流量Q0や気泡検知期間(例えば、時間t1〜t2)に応じて経路距離D2を変更することにより、気泡による水の不足分を過不足無く正確に補償することができる。例えば、水流量Q0、増分量ΔQ等に基づいて、期間T2及び経路距離D2を算出することができる。定性的には、水流量Q0が小さい場合や気泡検知期間が短い場合には、増量分ΔQがより小さい値に設定され、水流量Q0が大きい場合や気泡検知期間が長い場合には、増量分ΔQがより大きい値に設定される。
【0087】
さらには、経路距離D2及び増量分ΔQを共に可変値として、気泡による水の不足分を正確に補償するように構成してもよい。
また、気泡による水の不足分を厳密な正確さで補償しなくてよい場合は、経路距離D2及び増量分ΔQを共に固定値としてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、気泡集約手段163により微細な気泡を集約し、集約されて有る程度の大きさになった気泡を水流量センサ134に送り出すので、微細な気泡がばらばらと離散的に水流量センサ134やその下流の改質器20へ到達することがなくなる。これにより、本実施形態では、気泡が改質器20へ到達するタイミングに合わせて確実に水を増量させることができる。
【0089】
また、気泡集約手段163によって集約された気泡が、水流量センサ134を通過する間に分断されるおそれがある。分断されると、小さくなった気泡毎に配管159との接触抵抗が相違し、この相違によって各気泡が改質器20へ到達するタイミングが異なるおそれがある。
しかしながら、本実施形態では、水流量センサ134の下流側に第2気泡集約手段である一方向弁164が設けられているので、集約された気泡が水流量センサ134で分断され、微細化された場合であっても、一方向弁164で再集約させることができる。これにより、水流量センサ134で検出された(集約された)気泡を、再集約させて、計算通りに正確に位置P及び改質器20へ送り出すことができ、気泡の到達に合わせてタイミング良く水を増量することが可能となる。
【0090】
なお、本実施形態では、位置Pが水流量センサ134よりも下流側(蒸発器20a側)に設定されているが、これに限らず、水流量センサ134の位置を位置Pに一致させてもよい。このように構成すると、気泡が位置Pに到達するまでの時間T1を算出する必要がなくなり、計算処理に起因する水供給量の推定誤差を低減することができる。
また、本実施形態では、水流量センサ134が、パルスポンプ158よりも下流側(蒸発器20a側)に配置されているが、これに限らず、水流量センサ134をパルスポンプ158よりも上流側に配置してもよい。
【0091】
図12により、制御部110によって実行される気泡検知に基づく水供給量補償処理の処理フローについて説明する。この処理は、所定時間毎に繰り返し実行されるものである。
まず、この水供給量補償処理では、制御部110は、流量閾値Qthに基づき、水流量センサ134から受け取る流量検出信号に応じて、水流量センサ134を気泡が通過しているか否かを判定する(ステップS1)。
気泡が検出されなかった場合(ステップS1:No)、制御部110は、水供給量補償処理を終了し、所定時間後にステップS1の処理を再実行する。
一方、気泡が検出された場合(ステップS1:Yes)、制御部110は、タイマーをスタートする(ステップS2)。
【0092】
制御部110は、上述のように算出された期間T1が経過するまでは待機し(ステップS3:No)、期間T1が経過すると(ステップS3:Yes)、水流量をΔQだけ増量した流量指令値に基づく駆動信号を、パルスポンプ158へ送出する(ステップS4)。これにより、パルスポンプ158はΔQだけ増量されたポンプ供給速度で作動する。
【0093】
制御部110は、駆動信号をパルスポンプ158へ送出すると同時に、タイマーをリセットし、再びスタートする(ステップS5)。
制御部110は、上述のように算出された期間T2が経過するまでは待機し(ステップS6:No)、期間T2が経過すると(ステップS6:Yes)、水流量をΔQだけ減量し、元に戻した流量指令値に基づく駆動信号を、パルスポンプ158へ送出し(ステップS7)、処理を終了する。
【0094】
このように本実施形態では、気泡が検知された場合に、気泡が蒸発器20aに到達する前に、蒸発器20aで気泡により不足することになる水の不足分を予め補うように、パルスポンプ158による水供給速度を一時的に短時間増大させる。そして、気泡が蒸発器20aに到達すると、水流量を元に戻し、水供給過剰な状態が継続することを防止する。これにより、本実施形態では、気泡混入による水不足が原因となる改質器20での炭素析出を防止して、改質器20の劣化を抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態では、気泡の混入が検出された場合だけ、水供給量を一時的に増大させるので、常時は、適切な水供給量で蒸発器20aに水を供給できる。したがって、水不足を考慮して、常時、水供給過剰とすることを防止でき、過剰供給された水による不具合を防止することができる。例えば、改質器20に使用されている改質触媒がルテニウムである場合には、過剰な水によって改質触媒が酸化され失われる不具合が生じるが、本実施形態ではこのような不具合を防止することができる。
【0096】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は以下のように改変してもよい。
上記実施形態では、気泡検知手段として、機械式(歯車式)の水流量センサを用いているが、これに限らず、電気式の水流量センサ又は気泡検知センサを用いてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、気泡検知手段として、水流量センサを用いているが、これに限らず、配管内の気泡の有無(又は水の有無)のみを検出する気泡検知センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 固体電解質形燃料電池(燃料電池システム)
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
20a 蒸発部(蒸発器)
20b 改質部(改質器)
22 空気用熱交換器
28 水流量調整ユニット(水供給手段)
38 燃料流量調整ユニット(燃料供給手段)
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット
54 インバータ
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
134 水流量センサ(気泡検知手段)
158 パルスポンプ(圧送ポンプ)
159 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルと、
水を供給する水供給手段と、
燃料ガスを供給する燃料供給手段と、
前記水供給手段から供給された水を気化する蒸発器と、
前記蒸発器から供給された水を用いて、前記燃料供給手段から供給された燃料ガスを水蒸気改質して前記燃料電池セルに供給する改質器と、
を備えた凝縮水を利用した水自立型燃料電池システムにおいて、
前記水供給手段は、水を前記蒸発器へ供給する配管と、前記配管を通して水を圧送する圧送ポンプと、前記圧送ポンプの下流の配管に設けられた気泡検知手段と、を備え、
前記水供給手段は、前記気泡検知手段が前記配管中の気泡を検出したとき、前記気泡が前記蒸発器に到達する時点において、前記気泡による水供給量の減少分を前記気泡より下流側の前記配管内の水によって予め補うように、前記気泡が前記蒸発器に到達するまでの間に前記圧送ポンプによる水供給量を増加させるように構成されていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記水供給手段は、検出された気泡が、前記蒸発器から所定距離離れた所定位置に到達した時点から前記蒸発器に到達するまでの間に、前記圧送ポンプによる水供給量を増加させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記所定位置よりも上流側に前記圧送ポンプが配置され、前記圧送ポンプと前記所定位置との間に前記気泡検知手段が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記気泡検知手段は、前記所定位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記水供給手段は、前記気泡が検知されてからの経過時間と前記圧送ポンプによる水流量に基づいて、前記配管における前記気泡の位置を推定することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記気泡検知手段は、ギヤ式流量センサであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記圧送ポンプと前記気泡検知手段との間の配管に気泡を集約して大きな気泡にする気泡集約手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記気泡検知手段と前記改質器の間の配管に気泡を集約して大きな気泡にする第2気泡集約手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記圧送ポンプと前記気泡検知手段の間の配管を上方から下方に向くように屈曲させた屈曲部を気泡集約手段として構成したことを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記気泡検知手段と前記改質器の配管途中に前記気泡検知手段から前記改質器へ向かう方向のみに水の供給を許容する一方向弁を設け、該一方向弁による配管抵抗を利用して前記第2気泡集約手段を構成したことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−69390(P2012−69390A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213469(P2010−213469)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】