説明

燃料電池冷却装置

【課題】大きくて嵩の高い熱交換器を使わない改良された燃料電池冷却装置を提供する。
【解決手段】燃料電池スタックの排出水出口からの排出水を流通させる導管75と、前記冷却剤入口及び前記冷却剤出口に接続された熱交換ユニット76と、前記熱交換ユニット内に空気を吹き込むための送風機66と、第一のハウジング部分64、第二のハウジング部分68及び第三のハウジング部分86を有しているハウジングを備えた蒸発器ユニットと、を含み、前記第二のハウジング部分内に水噴射ユニット70が取り付けられており、該水噴射ユニットが、相互に隔置され且つ環状の列に配列された複数の水噴射機を含んでおり、前記導管が、前記燃料電池スタックからの排出水を前記水噴射ユニットへと流通させ、前記水噴射ユニットが前記排出水を前記蒸発器ユニット内に吹き込まれた空気内へと噴射し、同排出水は蒸発し且つ前記空気を冷却するようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールのための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的及び商業的に最も進んだタイプの燃料電池は、陽子交換膜すなわちPEM燃料電池である。現在のPEMタイプの燃料電池は、他のいくつかのタイプの燃料電池の作動温度よりも低い温度である約80℃の温度で作動する。排出物はたくさんの熱を奪い去らないので、冷却剤へと戻される熱は、内燃機関と比較して比較的高い。これは、比較的低い作動温度と関連して、燃料電池装置の冷却を困難にする。燃料電池装置は、大きくて嵩の高い熱交換器を必要とし且つ多量の電力を消費する冷却ファンを必要とするかもしれない。更に、燃料電池から排出された熱い液体は、植物を殺し且つ包囲された空間内の床をつるつる滑らせて安全性の問題を生じさせるかも知れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,761,316号
【特許文献2】米国特許第3,905,884号
【特許文献3】米国特許第4,623,596号
【特許文献4】米国特許第4,706,737号
【特許文献5】米国特許第4,824,740号
【特許文献6】米国特許第4,994,331号
【特許文献7】米国特許第5,206,094号
【特許文献8】米国特許第6,066,408号
【特許文献9】米国特許第6,195,999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、改良された燃料電池冷却装置を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、液体排出水の排出を減じるか又は排除する燃料電池冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの及びその他の目的は本発明によって達成される。本発明においては、冷却装置は、水素入口、空気入口、冷却剤入口、冷却剤出口及び排出水出口を有する燃料電池スタックに接続される。冷却装置は熱交換ユニットを含んでおり、同熱交換ユニットは、冷却剤入口、冷却剤出口、冷却剤を循環させるための冷却剤ポンプ及び熱交換ユニットに空気を吹き込むための送風機に接続される。冷却装置はまた、吹き込まれた空気に晒される蒸発器及び燃料電池スタックの排水出口からの排出水を蒸発器ユニットに流通させる導管をも含んでいる。排出水は、吹き込まれた空気内で蒸発させ、それによって空気を冷却し、液体排出水の量を減らす。一つの実施形態においては、蒸発器ユニットは、熱交換ユニットの外側面に取り付けられた吸い取り部材である。排出水が蒸発するとき、熱交換ユニットの冷却性能を増大させる。
【0006】
もう一つ別の実施形態においては、蒸発器ユニットは、排出水が熱交換ユニットに向かって吹き込まれるときに排出水を空気の中へ噴射する一組みの水噴射機を含んでいる。この噴射機は、送風機とラジエータとの間でハウジング内に配置された環状部材上に取り付けられている。取り外し可能な多孔質の蒸発器部材を、噴射機とラジエータとの間でハウジング内に取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による燃料電池冷却装置の参考例の簡素化された概略図である。
【図2】図1の一部分の詳細な部分断面斜視図である。
【図3】本発明による燃料電池冷却装置の一つの実施例の簡素化された概略図である。
【図4】図3の線4−4に沿った図である。
【図5】図4の矢印5−5の方向での噴射機リングの一部分の詳細な断面図である。
【図6】図5に類似したもう一つ別の実施例の断面図である。
【参考例】
【0008】
図1を参照すると、燃料電池のスタック10は、PEM燃料電池(図示せず)として知られている市販によって入手可能な陽子交換膜又はポリマー電解質膜のような一般的な燃料電池を複数個含んでいる。スタック10は、水素入口12、空気入口14、冷却剤入口16、冷却剤出口18及び排出水のための出口20を含んでいる。
【0009】
冷却装置21は、ライン26を介して出口18と連通している上方タンク24、熱交換部分28及びライン32を介して入口16と連通している下方タンク30を有している熱交換器又はラジエータ22を含んでいる。冷却剤ポンプ34は、冷却剤を下方タンク30から冷却剤入口16へ圧送するためにライン32内に配置されるのが好ましい。モーター36はファン37を駆動し、ファン37は熱交換部分28を通るように空気を駆動する。
【0010】
水ライン40は、排出水を出口20から水貯蔵タンク42へと流通させる。ライン44と弁46とは、タンク42から上方タンク24の表面に取り付けられた吸い取りモジュール48への排出水の流通を制御する。
【0011】
図2を参照すると、吸い取りモジュール48は、例えば、溶接又はろう付けによってラジエータタンク24の上方部分に固定されたU字形状のチャネル50を含んでいる。ライン44は、排出水をチャネル50内へと導く。チャネル50は、排出水がチャネル50の下方に取り付けられた吸い取り部材54内へと流れ込むのを許容する複数の水抜き穴52を含んでいる。吸い取り部材54は、圧縮粉末金属のような多孔質の材料であるのが好ましい。吸い取り部材54は、垂直方向の長さを有し且つタンク24の底部端縁が吸い取り部材54の中央にほぼ隣接し且つ吸い取り部材54がラジエータ22を通して吹き込まれた空気に晒されるのを確実にするように配置されるのが好ましい。チャネル50と吸い取り部材54とは、ラジエータ22の水平方向の長さとほぼ同じ水平方向の長さを有するのが好ましい。
【0012】
排出水は、吸い取り部材54から蒸発するときにラジエータ22から熱を奪い去り、それによって、ラジエータの冷却性能を増大させる。排出水は、高い冷却負荷状態において必要とされるまでタンク42内に貯蔵されるか又は溜められても良い。次いで、排出水を吸い取り部材に供給するために弁46を開くことができる。
【実施例】
【0013】
図3を参照すると、冷却装置60は、送風機のファン66を包囲している第一の円筒形部分64、水噴射ユニット又は噴射機リング70を含んでいる第二の円筒形部分68及び蒸発器冷却部材74と熱交換ユニット76とを包囲している第三の矩形部分72を備えたハウジング62を含んでいる。
【0014】
第一のハウジング部分64は、均一な直径のほぼ円筒形とすることができる。ファン66は、空気を外部雰囲気から第二のハウジング部分68内へと吹き込む。第二のハウジング部分68は、直径がより大きい第一の端部78,直径がより小さい中央部分80及び第一の端部78の直径よりも大きいのが好ましいより大きい直径の第二の端部82を有している。この直径がより小さい部分は、噴射機リング70を通過する空気の移動速度を増大させる。蒸発器冷却部材74は、多孔質で、第三のハウジング部分72の第一の端部84によって形成されたプレナム内に取り付けられ、取り外し可能であるのが好ましい。蒸発器冷却部材74は、排出水の蒸発を支援し、蒸発されないと熱交換ユニット76の表面に堆積する物質を空気の流れから取り除く。ライン75は、排出水を燃料電池スタックの排出水出口20から噴射機リング70へ流通させる。
【0015】
熱交換ユニット又はラジエータ76は、第三のハウジング部分72の第二の端部86に取り付けられている。ラジエータ76は、ライン92を介して燃料電池スタック10の冷却剤出口18と連通している燃料電池スタックによって温められた冷却剤の入口90と、ポンプ96及びライン98を介して燃料電池スタック10の冷却剤入口16に連通している冷却剤出口94とを含んでいる。
【0016】
図4を参照すると、噴射機リング70は、径方向に延びている複数の支持部材102によってハウジング部分80内の中心に取り付けられている環状のハウジング又はウェブ100を含んでいる。噴射機リング70は、燃料電池スタックの水出口20から水を受け取る複数の噴射機104を含んでいる。各噴射機104は、冷却ユニット60内を流れる空気内に排出水の噴射を形成する。
【0017】
排出水が噴射機リング70を通過して吹き付ける空気の流れの中で蒸発するとき、空気から熱を奪い去り、更に熱交換器76を冷却する助けとなり、それによって、その冷却性能を高める。
【0018】
図5を参照すると、噴射機リングの環状ハウジング100は、より大きな上流端部110からその下流端部112の薄いより小さな端縁までテーパーが付けられた空気力学的断面形状を有している。より大きな端部110には環状の水供給管114が包囲されている。供給管114は、ライン75を介してスタック排出水を受け取る。各噴射機104は、供給管114から水を受け取る上流端部118を備えた概して円筒形の中空本体116を含んでいる。本体116の下流端部120は、そこから水の噴射124を排出するオリフィス又はノズル122を形成している。矢印Aは、ハウジング100を通過する空気の流れの方向を示している。
【0019】
図6を参照すると、代替的な実施形態において、噴射機リングは、一部品の環状のハウジング130を含んでおり、同環状のハウジング130は、より大きな上流端部132から下流端部134の薄くより小さい端縁までテーパーが付けられた空気力学的断面形状を有している。環状の水供給ボア136がより大きな端部132内に包囲されている。供給ボア136は、ライン75を介してスタックの排出水を受け取る。複数の噴射機ボア138が、供給ボア136からハウジング130の下流端部134の対応するノズル140まで概して軸線方向に延びている。矢印Bは、ハウジング130を通過する空気の流れの方向を示している。
【0020】
以上、本発明を特定の実施形態と関連して説明したが、上記の説明を参考にすると、多くの代替例、変形例及び変更例が当業者に明らかとなるであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲の精神及び範囲に含まれるこのような代替例、変形例及び変更例の全てを包含することを意図している。
【符号の説明】
【0021】
10 燃料電池スタック、 12 水素入口、
14 空気入口、 16 冷却剤入口、 18 冷却剤出口、
20 排出水出口、 21 冷却装置、 22 熱交換器、
24 上方タンク、 26 ライン、 28 熱交換部分、
30 下方タンク、 32 ライン、 34 冷却剤ポンプ、
36 モーター、 37 ファン、 40 水ライン、
42 水貯蔵タンク、 44 ライン、 46 弁、
48 吸い取りモジュール、 50 チャネル、
52 水抜き穴、 54 吸い取り部材、
60 冷却装置、 62 ハウジング、
64 第一のハウジング部分、 66 ファン、
68 第二のハウジング部分、 70 水噴射ユニット、
72 第三のハウジング部分、 74 蒸発器冷却部材、
75 ライン、 76 熱交換ユニット、
90 冷却剤入口、 92 ライン、
94 冷却剤出口、 96 ポンプ、
98 ライン、 100 ハウジング、 102 支持部材、
104 噴射機 114 水供給管、
116 本体、 122 ノズル、
130 ハウジング、 136 水供給ボア、
138 噴射機ボア、 140 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤入口、冷却剤出口及び排出水出口を有する燃料電池スタックのための冷却装置であって、
前記燃料電池スタックの排出水出口からの排出水を流通させる導管と、
前記冷却剤入口及び前記冷却剤出口に接続された熱交換ユニットと、
前記熱交換ユニット内に空気を吹き込むための送風機と、
第一のハウジング部分、第二のハウジング部分及び第三のハウジング部分を有しているハウジングを備えた蒸発器ユニットと、を含み、
前記送風機が、前記蒸発器ユニット内に空気を吹き込むために第一のハウジング部分内に取り付けられており、
前記熱交換ユニットが、前記第三のハウジング部分内に取り付けられており、
前記第一のハウジング部分と前記第三のハウジング部分との間の前記第二のハウジング部分内に水噴射ユニットが取り付けられており、該水噴射ユニットが、相互に隔置され且つ環状の列に配列された複数の水噴射機を含んでおり、
前記導管が、前記燃料電池スタックからの排出水を前記水噴射ユニットへと流通させ、前記水噴射ユニットが前記排出水を前記蒸発器ユニット内に吹き込まれた空気内へと噴射し、同排出水は蒸発し且つ前記空気を冷却するようになされた、冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記水噴射ユニットと前記熱交換ユニットとの間で前記ハウジング内に取り付けられている多孔質の蒸発器部材を更に含んでいる、冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記蒸発器ユニットが、前記導管を介して排出水を受け取り且つ前記排出水を前記吹き込まれた空気内へ噴射する水噴射機を含んでいる、冷却装置。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記蒸発器ユニットが、
前記送風機と前記熱交換ユニットとの間に配置され、前記導管を介して排出水を受け取り且つ前記排出水を前記吹き込まれた空気内へ噴射する前記水噴射機と、
同水噴射機と前記熱交換ユニットとの間に取り付けられた多孔質の蒸発器部材と、を含んでいる、冷却装置。
【請求項5】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記蒸発器ユニットが、前記送風機と前記熱交換ユニットとの間に配置され、相互に隔置されており、前記導管を介して排出水を受け取り、各々が前記排出水を前記吹き込まれた空気内へ噴射する、複数の水噴射機を含んでいる、冷却装置。
【請求項6】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記蒸発器ユニットが、
前記吹き込まれた空気に晒されるように取り付けられた環状部材と、
相互に隔置され且つ前記環状部材上に取り付けられ、前記導管を介して排出水を受け取り且つ同排出水を吹き込まれた空気内へ噴射する複数の水噴射ノズルと、を含んでいる、冷却装置。
【請求項7】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記蒸発器ユニットが、
前記吹き込まれた空気に晒されるように取り付けられた環状部材であって、吹き込まれた空気の方向に関して厚みがより厚い上流端部とより薄い下流端部とを有する環状部材と、
前記導管を介して排出水を受け取る環状の水供給管と、
互いに隔置され且つ前記環状部材上に取り付けられ、前記環状の水供給管から排出水を受け取り且つ同排出水を前記吹き込まれた空気内へと噴射する複数の水噴射ノズルと、を含んでいる、冷却装置。
【請求項8】
請求項7に記載の冷却装置であって、
前記環状部材が中空であり、
前記水供給管が同環状部材によって包囲されている、冷却装置。
【請求項9】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記蒸発器ユニットが、
前記送風機と前記熱交換ユニットとの間に取り付けられた水噴射ユニットと、
同噴射ユニットと前記熱交換ユニットとの間に取り付けられた多孔質の蒸発器部材と、を含み、
前記導管が、前記燃料電池スタックからの排出水を前記水噴射ユニットへ連通させ、当該水噴射ユニットは排出水を前記蒸発器部材内へ吹き込まれた空気内へ噴射し、前記排出水は蒸発し且つ前記熱交換ユニットへ入る前に前記空気を冷却するようになされた水供給ラインを含んでいる冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−40401(P2011−40401A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213713(P2010−213713)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2003−147719(P2003−147719)の分割
【原出願日】平成15年5月26日(2003.5.26)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
【Fターム(参考)】