燃料電池及びその製造方法
【課題】セル本体とともに積層される枠体部材に含まれるガスシール部材の良好なガスシール性を保つことができる燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池は、電解質層12及びその両面の電極層11、13を備えた平板状のセル本体10と、厚み方向にセル本体10の電極層13を露出させる開口部を備えるとともにセル本体10とともに積層される枠体状の枠体部材とを有して構成され、枠体部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材26、27を備えている。ガスシール部材26、27は、枠体部材の開口部を形成する内周端面に、多層構造の断面部分が加熱溶融された溶融部が形成されている。ガスシール部材26、27の内周端面に形成された溶融部により、電極層11、13に供給されるガスに対するガスシール性を高めることができる。
【解決手段】本発明の燃料電池は、電解質層12及びその両面の電極層11、13を備えた平板状のセル本体10と、厚み方向にセル本体10の電極層13を露出させる開口部を備えるとともにセル本体10とともに積層される枠体状の枠体部材とを有して構成され、枠体部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材26、27を備えている。ガスシール部材26、27は、枠体部材の開口部を形成する内周端面に、多層構造の断面部分が加熱溶融された溶融部が形成されている。ガスシール部材26、27の内周端面に形成された溶融部により、電極層11、13に供給されるガスに対するガスシール性を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状のセル本体と枠体状の枠体部材とからなる燃料電池において、ガスリークを防止するためのガスシール部材を設けた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池の一種として、固体電解質(固体酸化物)を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。SOFCは、例えば、固体電解質の両側に、燃料ガスに接する燃料極層と酸化剤ガス(空気)に接する空気極層とを対向配置した平板状のセル本体を設け、その周囲に枠体状の枠体部材を配置した構造を有している。このような構造のSOFCにおいては、燃料極層に供給される燃料ガスと空気極層に供給される酸化剤ガスとを隔離する必要があるため、例えば、隔離セパレータにセル本体を一体的に接合した構造が採用される。隔離セパレータは、例えば、セル本体を取り囲む金属フレーム等を含む枠体部材に取り付けられる。このような枠体部材は複数の枠体部材を積層した構造を有するので、部材間の隙間から燃料ガスや酸化剤ガスがリークする恐れがある。そのため、枠体部材の部材間にガスリーク部材を密着した状態で配置することにより、ガスリークを防止する構造を採用することが望ましい。例えば、フェロケイ酸塩鉱物の一種であるマイカ(雲母)からなる多様な構造のマイカシートが知られているので(例えば、特許文献1〜5参照)、このようなマイカシートを燃料電池のガスシール部材として利用することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−219493号公報
【特許文献2】特開2001−114312号公報
【特許文献3】特開2003−246132号公報
【特許文献4】特開2009−276483号公報
【特許文献5】特願2010−120839
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のマイカシートは、例えば、雲母結晶からなる薄い箔シートを多層に積層した平板状の積層シートである。このような構造により、マイカシートのそれぞれの結晶層の界面に微小な隙間が存在し、それが燃料ガスや酸化剤ガスのリークパスとして作用する可能性がある。つまり、平板状のマイカシートは、表面や裏面のみが露出した状態であれば良好なシール性が保たれるが、多層構造が存在する端面(側面)がガスに接する状態で露出している場合はシール性が劣化する。そのため、マイカシートの開口部の内周端面を介して燃料ガス流路や空気流路の近傍のガスが流入し、層間のリークパスを経由してガスが外部にリークする恐れがある。このようなメカニズムでガスリークが発生することにより、燃料電池の発電効率を低下させるという問題がある。また、マイカシートの層間のリークパスを頻繁にガスが通ることにより、マイカシートの耐久性が劣化するという問題がある。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、マイカ等のフェロケイ酸塩鉱物からなるガスシール部材を用いる場合であっても、その多層構造の端面におけるガスリークに起因するガスシール性の劣化を有効に防止するとともに、ガスシール部材の耐久性を高めることができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池は、電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池において、前記枠体部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を備え、前記ガスシール部材は、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に、前記多層構造の断面部分が加熱溶融された溶融部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の燃料電池によれば、燃料電池のセル本体と一体的に積層される枠体部材に含まれるガスシール部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層して形成され、その開口部の内周端面には溶融部が形成され、多層構造の断面部分が加熱溶融された状態になっている。通常、ガスシール部材は、その側面において各結晶層の多層構造が露出した状態となるが、本発明の構造における開口部の内周端面に関しては、加熱溶融部を形成することで多層構造が直接的に露出しない状態になっている。そのため、ガスシール部材には、結晶層間の界面を経由するリークパスが内周端面にて遮断された構造となるので、ガス流路から供給されるガスが抜けることを防止することができる。よって、燃料電池のガスシール性の向上と、ガスシール部材の耐久性の劣化の防止を実現することができる。
【0008】
前記ガスシール部材としては、例えば、マイカ(雲母)からなるマイカシートを用いることができる。マイカシートは、雲母結晶からなる薄い箔シートを束ねて形成された多層構造のシートであり、その側面に多層構造の断面構造がリークパスとして露出するので、加熱溶融部を形成することによりリークパスを遮断することができる。また、マイカは十分抵抗が高い絶縁材料であり、金属フレームやインターコネクタに接してマイカシートを配置する構造に適している。
【0009】
前記溶融部を形成する加熱手段としてレーザ加工を採用することができる。すなわち、前記ガスシール部材に対して前記セル本体の位置に対応する開口部を形成する際、内周端面に沿ってレーザ光を照射して切断加工を行うと同時に内周端面を加熱すればよい。このとき、レーザ出力や送り速度を適切に調整することにより、前記ガスシール部材の内周端面の多層構造の断面部分を十分に加熱溶融させ、その結晶構造を変質させてリークパスを遮断することができる。
【0010】
前記ガスシール部材に前記溶融部を形成する内周端面は、前記セル本体の周囲のガス流路に面する多様な位置に形成することができる。例えば、前記電極層が前記枠体部材の厚み方向の開口部から露出する構造の場合は、ガスシール部材の開口部に面する内周端面の全面にわたって形成することが望ましい。この場合、ガスシール部材の外周端面に溶融部を形成しなくても、内周端面の全面に溶融部が形成されていればガスが流れ込むことはない。ただし、ガスシール部材の外周端面を含む全ての端面に溶融部を形成したとしても、本発明の適用は可能である。
【0011】
本発明は、多様な構造の燃料電池に対して適用することができる。例えば、電解質が固体酸化物からなり、両面の電極層として燃料極層及び空気極層を積層した固体酸化物形燃料電池を挙げることができる。また、本発明の適用対象は、燃料電池の基本的な構成単位である燃料電池セル(単位セル)に加えて、この単位セルを複数個積層した燃料電池スタックが含まれる。
【0012】
また、本発明の燃料電池の製造方法は、電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池の製造方法において、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を準備し、前記ガスシール部材を、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に対応すべく切断予定線に沿って加熱溶融することにより、前記内周端面を切断形成するとともに、当該内周端面に多層構造の断面部分が溶融された溶融部を形成し、前記セル本体及び前記枠体部材を積層することを特徴としている。
【0013】
本発明の燃料電池の製造方法において、前記溶融部は、前記ガスシール部材の前記内周端面に対し前記枠体部材の厚み方向からレーザ光を照射することにより形成することができる。また、前記ガスシール部材としては、マイカシートを用いることができる。この場合、レーザ光の出力や送り速度を適切に設定することにより、前記マイカシートの前記内周端面を加熱溶融して前記溶融部を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セル本体及び枠体部材によって構成される燃料電池において、枠体部材に含まれるガスシール部材を、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層して形成し、その開口部の内周端面における多層構造の断面部分を加熱溶融したので、内周端面の結晶層間を経由するガスリークを確実に防止することができる。よって、ガスシール部材のガスシール性を向上させ、燃料電池の発電効率を高めることができる。また、ガスシール部材は、開口部の内周端面からのガスの流入が防止されるので、耐久性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の固体酸化物形燃料電池の側面図である。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池の上面図である。
【図3】1個の単位セルに関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造図である。
【図4】単位セル内のインターコネクタの平面構造図である。
【図5】単位セル内の金属フレームの平面構造図である。
【図6】単位セル内の隔離セパレータの平面構造図である。
【図7】単位セル内のセル本体の平面構造図である。
【図8】単位セル内の下側のガスシール部材の平面構造図である。
【図9】単位セル内の上側のガスシール部材の平面構造図である。
【図10】ガスシール部材の構造を表す斜視図である。
【図11】ガスシール部材において未対策の内周端面の表面状態の画像例を示す図である。
【図12】ガスシール部材において加熱処理を施した内周端面の表面状態の画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の一実施形態について具体的に説明する。図1は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池1の側面図を示し、図2は、図1の固体酸化物形燃料電池1の上面図を示している。なお、図1は、図2の矢印A方向から見た側面図に対応する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池1は、基本的な構成単位である燃料電池セル(以下、単位セルと呼ぶ)3を複数個積層した燃料電池スタック2を備えている。また、燃料電池スタック2は、複数のボルトB1〜B8及び複数のナットNによって一体的に固定されている。各ボルトB1〜B8のうち、図2の方形平面内の四隅に位置する4個のボルトB1、B3、B5、B7は、燃料電池スタック2を固定する連結部材としてのみ用いられる。一方、各ボルトB1〜B8のうち、図2の方形平面内に位置する4個のボルトB2、B4、B6、B8は、上記連結部材に加えて、積層方向に沿う貫通孔に連通し、それぞれ燃料ガスの流路(燃料ガス流路)又は酸化剤ガスの流路(空気流路)の一部として機能する。具体的には、ボルトB2は燃料ガス流路の入口側の燃料ガス導入管Finに連通し、ボルトB2の対向位置のボルトB6は燃料ガス流路の出口側の燃料ガス排出管Foutに連通する。また、ボルトB4は空気流路の入口側の空気導入管Ainに連通し、ボルトB4の対向位置のボルトB8は空気流路の出口側の空気排出管Aoutに連通する。
【0018】
次に、図1の固体酸化物形燃料電池1に含まれる単位セル3の基本構造について説明する。図3は、1個の単位セル3に関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造を示している。図3に示す単位セル3は、発電機能を担うセル本体10を備えている。セル本体10は、下層側から順に、燃料極層11と、固体電解質層12と、空気極層13とが積層形成されてなる。また、単位セル3は、上下1対のインターコネクタ20、21と、下側のインターコネクタ20と燃料極層11との間に配置された燃料極側集電体22と、上側のインターコネクタ21と空気極層13との間に配置された空気極側集電体23と、燃料極層11の側面を取り囲む金属フレーム24と、セル本体10と一体的に接合され、燃料極層11の側の燃料ガス流路Fpと空気極層13の側の空気流路Apとを隔離する隔離セパレータ25と、金属フレーム24と下側のインターコネクタ20との間に配置されたガスシール部材26と、隔離セパレータ25と上側のインターコネクタ21との間に配置されたガスシール部材27と、を備えている。なお、上記のうち、金属フレーム24、隔離セパレータ25、ガスシール部材26、27は、いずれも中央に後述の形状の開口部が形成され、単位セル3における枠体状の枠体部材を構成する。
【0019】
燃料極層11は、水素源となる燃料ガスに接触し、単位セル3のアノードとして機能する。燃料極層11は、セル本体10を支持する支持基体層となるので、機械的強度を確保できる程度の十分な厚みで形成することが望ましい。例えば、燃料極層11の材料としては、Ni等の金属粒子とセラミック粒子からなるサーメットを用いることができる。固体電解質層12は、イオン導電性を有する各種の固体電解質からなる。例えば、固体電解質層12の材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等を用いることができる。空気極層13は、酸素源となる空気ガスに接触し、単位セル3のカソードとして機能する。例えば、空気極層13の材料としては、ペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットを用いることができる。なお、燃料極層11、固体電解質層12、空気極層13は、いずれも方形(例えば、正方形)の平面形状を有する。
【0020】
以下、単位セル3内の主な構成部材の構造について説明する。以下の説明において、図4〜図9に示す各部材の平面構造は、いずれも図2と平面内で方向が一致する。まず、下側のインターコネクタ20は下層に隣接する単位セル3との電気的接続を担い、上側のインターコネクタ21は上層に隣接する単位セル3との電気的接続を担う。図4に示すように、インターコネクタ20、21は、例えばフェライト系ステンレスからなる薄型の金属板であり、その外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。また、下側のインターコネクタ20に接合された燃料極側集電体22は、例えば、通気性を有するNiフェルトからなり、上側のインターコネクタ21に接合された空気極側集電体23は、例えば、金属及び導電性セラミックからなる。
【0021】
金属フレーム24は、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料からなり、セル本体10及び隔離セパレータ25を単位セル3に固定する役割がある。図5に示すように、金属フレーム24の中央には方形の開口部30が形成されている。また、金属フレーム24の4辺に沿って4つの開口部31が形成され、四隅には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。4つの開口部31は、インターコネクタ20、21の各辺中央に位置する丸孔に重なる部分から辺方向の両側に延びる溝状に形成されている。
【0022】
隔離セパレータ25は、可撓性を有する金属材料として、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料を用いて、厚み0.02〜0.3mm程度の枠体状の薄板に形成されている。図6に示すように、隔離セパレータ25の中央には方形の開口部32が形成され、4辺に沿って4つの開口部33が形成され、四隅には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。このうち、4つの開口部33及び4つの丸孔については、金属フレーム24と同位置及び同形状に形成されている。一方、中央の開口部32は、金属フレーム24の開口部30よりもサイズが小さい方形であり、厚み方向で金属フレーム24の開口部30に対向する位置関係にある。
【0023】
セル本体10は、図7に示すように、方形の外周形状を有する。セル本体10は、隔離セパレータ25に接合されるので、隔離セパレータ25の外周形状よりサイズが小さく、かつ隔離セパレータ25の開口部32よりもサイズが大きい方形の外周形状を有する。一方、セル本体10の上層の空気極層13の外周形状は、セル本体10の外周形状よりもサイズが小さく、さらには隔離セパレータ25の開口部32よりもサイズが小さい方形に形成されている。これにより、図3の断面構造に示すように、セル本体10の外周側が隔離セパレータ25に接合された状態で、開口部32から空気極層13が露出可能な構造にすることができる。
【0024】
次に第1実施形態の単位セル3の特徴的な構造として、ガスシール部材26、27の構造について説明する。図8は、下側のガスシール部材26の平面構造を示し、図9は、上側のガスシール部材27の平面構造を示している。下側のガスシール部材26は、燃料極層11に供給される燃料ガスをガスシールする役割があり、上側のガスシール部材27は、空気極層13に供給される酸化剤ガスをガスシールする役割がある。本実施形態において、ガスシール部材26、27としては、フェロケイ酸塩鉱物の一種であるマイカ(雲母)からなるマイカシートが用いられる。マイカは高い絶縁性を有するため、ガスシール部材26、27により、下側のインターコネクタ20と金属フレーム24との間、及び上側のインターコネクタ21と隔離セパレータ25との間は電気的に絶縁された状態に保たれる。
【0025】
下側及び上側のガスシール部材26、27は基本構造が共通であり、その配置のみが異なるので、以下では代表して下側のガスシール部材26の構造について説明する。まず、図8に示すように、ガスシール部材26の中央には開口部34が形成されるとともに、外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。中央の開口部34は、金属フレーム24の開口部30よりもサイズが小さい方形であり、金属フレーム24の開口部30及び隔離セパレータ25の開口部32のそれぞれと厚み方向で対向する位置関係にある。また、開口部34には、方形の対向する2辺において外縁部に延伸される各4本の切り欠き34aが形成されている。これらの切り欠き34aは、金属フレーム24の2辺における2つの開口部31に連通し、燃料ガス流路Fpの一部となる。従って、燃料ガス導入管Finから取り込まれた燃料ガスは、ガスシール部材26の切り欠き34aを経由し、開口部34を抜けて燃料極層11に達する。
【0026】
ここで、図10は、図8のガスシール部材26の構造を斜視図で表している。図10においては、ガスシール部材26の中央の開口部34のうち、その方形の各側面部分と、上記8本の切り欠き34aを構成する側面部分とを含む内周端面IFが示されている。この内周端面IFには、上述の燃料ガス流路Fpを流れる燃料ガスが直接接する構造となっている。なお、図10において、ガスシール部材26の外周端面EFには、燃料ガス流路Fpを流れる燃料ガスが直接接することはない。マイカシートであるガスシール部材26は、雲母結晶からなる薄い箔シートを多層に積層した断面構造を有するため、例えばプレス加工等で開口部34を形成した時点の内周端面IFは結晶層の多層構造の断面部分が露出した状態になる。そのため、この状態のままでガスシール部材26として用いる場合は、内周端面IFの層間にリークパスが形成されることになる。本実施形態では、以下で具体的に説明するように、内周端面IFに加熱処理を施して加熱溶融部を形成することにより、リークパスの形成に対する対策を施すものである。
【0027】
以下、図11及び図12を参照して、本実施形態のガスシール部材26に関し、開口部34の内周端面IFに対するリークパスへの対策の具体例について説明する。図11は、本実施形態との比較のため、ガスシール部材26において未対策の内周端面IFの表面状態の画像例を示している。一方、図12は、本実施形態のガスシール部材26において加熱処理を施した内周端面IFの表面状態の画像例を示している。図11の未対策の内周端面IFは、マイカシートの多層の箔シートによる多層構造が観察され、これが横方向に延びる縞状のリークパスとして作用する。これに対し、図12の対策後の内周端面IFは、図11の状態から内周端面IFをレーザによって加熱溶融したものであり、図11の内周端面IFの断面部分が融けて結晶構造が変質した状態(結晶構造変質部)となり、図11の多層構造に基づくリークパスが消失している。なお、図12では、内周端面IFに縦方向の縞状の模様が形成されているが、これは厚さ方向から照射されるレーザ光によるものである。レーザ照射による内周端面IFの具体的な加熱処理の方法については後述する。
【0028】
上述したように、切り欠き34aを含めた開口部34の内周端面IFの全面にわたって、図12に示す加熱処理に基づく溶融部を形成することにより、燃料極層11に燃料ガスを供給する際にガスシール部材26の開口部34の付近を通過したとしても、内周端面IFの溶融部によって燃料ガスを遮断することができる。従って、本実施形態の加熱処理を適用することで、内周端面IFがリークパスとして作用することを防止し、ガスシール部材26のガスシール性を高めることができる。これにより、ガスシール部材26のガスリークに起因する単位セル3の発電効率の低下を防止することできる。さらに、ガスシール部材26の内周端面IFの層間を介して燃料ガスが流入しないことは、ガスシール部材26の耐久性の向上に効果がある。
【0029】
一方、上側のガスシール部材27は、既に述べたように下側のガスシール部材26と基本構造が共通であるが、図9に示すように、平面内で図8の平面構造を90度回転させた平面構造を有している。よって、ガスシール部材27の中央には開口部35が形成されるとともに、図8とは異なる2辺において外縁部に延伸される各4本の切り欠き35aが形成されている。これらの切り欠き35aは、金属フレーム24の2辺における2つの開口部31に連通し、空気流路Apの一部となる。従って、空気導入管Ainから取り込まれた酸化剤ガスは、ガスシール部材27の切り欠き35aを経由し、開口部35を抜けて空気極層13に達する。本実施形態では、ガスシール部材27の開口部35の内周端面IFに対しても、図12と同様の加熱処理を施すことを想定する。従って、空気極層13に酸化剤ガスを供給する際であっても、内周端面IFがリークパスとして作用することを防止し、上述のガスシール部材26の場合と同様の効果を得ることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、燃料極層11の側のガスシール部材26と空気極層13の側のガスシール部材27の両方に対し、ガスシール性を高めるための内周端面IFの加熱処理を施す場合を示したが、これに限らず、ガスシール部材26、27の一方に対してのみ加熱処理を施してもよい。例えば、燃料ガスのガスリークに比べて酸化剤ガスのガスリークが十分に小さい場合は、燃料極層11の側のガスシール部材26に対してのみ上記加熱処理を施してもよい。
【0031】
次に、本実施形態の単位セル3の製造方法に関し、主に本発明の特徴的な構造に関連する工程について説明する。まず、周知の手法で、燃料極グリーンシートと固体電解質グリーンシートとを含む積層体を形成し、それを焼成することで燃料極層11と固体電解質層12からなる焼結体を得る。次いで、焼結体の上層に空気極層13を積層形成し、図7の平面構造を有するセル本体10を作製する。一方、金属の板材の打ち抜き加工により図6の平面構造を有する隔離セパレータ25を作製し、図3に示すように、セル本体10の外周側と隔離セパレータ25の内周側とを例えばロウ材を用いて接合することで両者を一体化する。
【0032】
また、本発明の特徴的な構造を有するガスシール部材26の元となる平板状のマイカシートを準備する。例えば、ガスシール部材26として、軟質マイカからなるマイカシートが用いられる。そして、マイカシートの表面に、例えば炭酸ガスレーザを用いてレーザ光を照射することにより、図8の開口部34の形状に沿って切断加工を施すと同時に、その内周端面IFを加熱溶融することでガスシール部材26を作製する。このとき、例えば、レーザ出力は110Wに、送り速度は250mm/minにそれぞれ設定される。この場合、レーザ出力は、内周端面IFがマイカの融点である1200度以上に加熱され、内周端面IFが溶融して断面部分にガラス層からなる溶融部を形成可能な範囲に調整することが望ましい。なお、レーザ出力が大き過ぎる場合は、内周端面IFの表面近傍にバリが多く発生するので望ましくない。また、レーザの種別は炭酸ガスレーザには限れられないが、レーザ出力と送り速度はレーザの種別に応じて適切に設定する必要がある。空気極層13の側のガスシール部材27に関しても、上記のガスシール部材26と同様に作製することができるので、説明を省略する。
【0033】
一方、金属フレーム24、燃料極側集電体22、空気極側集電体23、インターコネクタ20、21についても、それぞれ周知の手法で作製した後、上記のセル本体10と一体化された隔離セパレータ25と、ガスシール部材26、27とを図3に示す配置で一体化することにより、単位セル3を得ることができる。また、かかる構造の単位セル3を積層数に応じて繰り返し配置した状態で、複数のボルトB1〜B8及び複数のナットNによって一体的に固定することで、最終的に図1の構造を有する燃料電池スタック2を得ることができる。
【0034】
本発明は、燃料電池スタック2を構成する個々の単位セル3のガスシール部材26、27に対して適用する場合に加え、他の部材に対しても適用することができる。例えば、図1の構造において、燃料電池スタック2と各ナットNとの間に絶縁部材を介挿する場合、上記ガスシール部材26、27と同様、マイカシートからなる絶縁部材を用いてもよい。この場合、マイカからなる絶縁部材にはボルトB1〜B8を貫通させるための円形の開口部を設け、その開口部の内周端面にガスシール部材26、27の内周端面IFと同様の加工を施せばよい。これにより、各ボルトB1、B3、B5、B7が連通する燃料ガス流路及び空気流路を経由するガスが絶縁部材の開口部からリークすることを防止することができる。
【0035】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、ガスシール部材26、27に関しては、マイカシートに限られず、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造を有していれば、他の材料を用いて形成することができる。また、ガスシール部材26、27の形状及び寸法条件についても、本発明の目的を達成できる範囲で多様な設定が可能である。さらに、金属フレーム24や隔離セパレータ25などの他の部材に関しても、上記実施形態で説明した材料、形状、寸法条件等に制約されることなく多様な設定が可能である。また、ガスシール部材26、27に対する開口部34、35を形成する内周端面IFの加工方法は、本発明の目的を達成できる限り、レーザ照射に限られず他の手段を採用してもよい。その他の点についても上記各実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…固体酸化物形燃料電池
2…燃料電池スタック
3…単位セル(燃料電池セル)
10…セル本体
11…燃料極層
12…固体電解質層
13…空気極層
20、21…インターコネクタ
22…燃料極側集電体
23…空気極側集電体
24…金属フレーム
25…隔離セパレータ
26、27…ガスシール部材
34、35…ガスシール部の開口部
B1〜B8…ボルト
N…ナット
Ain…空気導入管
Aout…空気排出管
Ap…空気流路
Fin…燃料ガス導入管
Fout…燃料ガス排出管
Fp…燃料ガス流路
IF…ガスシール部の開口部の内周端面
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状のセル本体と枠体状の枠体部材とからなる燃料電池において、ガスリークを防止するためのガスシール部材を設けた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池の一種として、固体電解質(固体酸化物)を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。SOFCは、例えば、固体電解質の両側に、燃料ガスに接する燃料極層と酸化剤ガス(空気)に接する空気極層とを対向配置した平板状のセル本体を設け、その周囲に枠体状の枠体部材を配置した構造を有している。このような構造のSOFCにおいては、燃料極層に供給される燃料ガスと空気極層に供給される酸化剤ガスとを隔離する必要があるため、例えば、隔離セパレータにセル本体を一体的に接合した構造が採用される。隔離セパレータは、例えば、セル本体を取り囲む金属フレーム等を含む枠体部材に取り付けられる。このような枠体部材は複数の枠体部材を積層した構造を有するので、部材間の隙間から燃料ガスや酸化剤ガスがリークする恐れがある。そのため、枠体部材の部材間にガスリーク部材を密着した状態で配置することにより、ガスリークを防止する構造を採用することが望ましい。例えば、フェロケイ酸塩鉱物の一種であるマイカ(雲母)からなる多様な構造のマイカシートが知られているので(例えば、特許文献1〜5参照)、このようなマイカシートを燃料電池のガスシール部材として利用することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−219493号公報
【特許文献2】特開2001−114312号公報
【特許文献3】特開2003−246132号公報
【特許文献4】特開2009−276483号公報
【特許文献5】特願2010−120839
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のマイカシートは、例えば、雲母結晶からなる薄い箔シートを多層に積層した平板状の積層シートである。このような構造により、マイカシートのそれぞれの結晶層の界面に微小な隙間が存在し、それが燃料ガスや酸化剤ガスのリークパスとして作用する可能性がある。つまり、平板状のマイカシートは、表面や裏面のみが露出した状態であれば良好なシール性が保たれるが、多層構造が存在する端面(側面)がガスに接する状態で露出している場合はシール性が劣化する。そのため、マイカシートの開口部の内周端面を介して燃料ガス流路や空気流路の近傍のガスが流入し、層間のリークパスを経由してガスが外部にリークする恐れがある。このようなメカニズムでガスリークが発生することにより、燃料電池の発電効率を低下させるという問題がある。また、マイカシートの層間のリークパスを頻繁にガスが通ることにより、マイカシートの耐久性が劣化するという問題がある。
【0005】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、マイカ等のフェロケイ酸塩鉱物からなるガスシール部材を用いる場合であっても、その多層構造の端面におけるガスリークに起因するガスシール性の劣化を有効に防止するとともに、ガスシール部材の耐久性を高めることができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池は、電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池において、前記枠体部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を備え、前記ガスシール部材は、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に、前記多層構造の断面部分が加熱溶融された溶融部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の燃料電池によれば、燃料電池のセル本体と一体的に積層される枠体部材に含まれるガスシール部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層して形成され、その開口部の内周端面には溶融部が形成され、多層構造の断面部分が加熱溶融された状態になっている。通常、ガスシール部材は、その側面において各結晶層の多層構造が露出した状態となるが、本発明の構造における開口部の内周端面に関しては、加熱溶融部を形成することで多層構造が直接的に露出しない状態になっている。そのため、ガスシール部材には、結晶層間の界面を経由するリークパスが内周端面にて遮断された構造となるので、ガス流路から供給されるガスが抜けることを防止することができる。よって、燃料電池のガスシール性の向上と、ガスシール部材の耐久性の劣化の防止を実現することができる。
【0008】
前記ガスシール部材としては、例えば、マイカ(雲母)からなるマイカシートを用いることができる。マイカシートは、雲母結晶からなる薄い箔シートを束ねて形成された多層構造のシートであり、その側面に多層構造の断面構造がリークパスとして露出するので、加熱溶融部を形成することによりリークパスを遮断することができる。また、マイカは十分抵抗が高い絶縁材料であり、金属フレームやインターコネクタに接してマイカシートを配置する構造に適している。
【0009】
前記溶融部を形成する加熱手段としてレーザ加工を採用することができる。すなわち、前記ガスシール部材に対して前記セル本体の位置に対応する開口部を形成する際、内周端面に沿ってレーザ光を照射して切断加工を行うと同時に内周端面を加熱すればよい。このとき、レーザ出力や送り速度を適切に調整することにより、前記ガスシール部材の内周端面の多層構造の断面部分を十分に加熱溶融させ、その結晶構造を変質させてリークパスを遮断することができる。
【0010】
前記ガスシール部材に前記溶融部を形成する内周端面は、前記セル本体の周囲のガス流路に面する多様な位置に形成することができる。例えば、前記電極層が前記枠体部材の厚み方向の開口部から露出する構造の場合は、ガスシール部材の開口部に面する内周端面の全面にわたって形成することが望ましい。この場合、ガスシール部材の外周端面に溶融部を形成しなくても、内周端面の全面に溶融部が形成されていればガスが流れ込むことはない。ただし、ガスシール部材の外周端面を含む全ての端面に溶融部を形成したとしても、本発明の適用は可能である。
【0011】
本発明は、多様な構造の燃料電池に対して適用することができる。例えば、電解質が固体酸化物からなり、両面の電極層として燃料極層及び空気極層を積層した固体酸化物形燃料電池を挙げることができる。また、本発明の適用対象は、燃料電池の基本的な構成単位である燃料電池セル(単位セル)に加えて、この単位セルを複数個積層した燃料電池スタックが含まれる。
【0012】
また、本発明の燃料電池の製造方法は、電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池の製造方法において、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を準備し、前記ガスシール部材を、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に対応すべく切断予定線に沿って加熱溶融することにより、前記内周端面を切断形成するとともに、当該内周端面に多層構造の断面部分が溶融された溶融部を形成し、前記セル本体及び前記枠体部材を積層することを特徴としている。
【0013】
本発明の燃料電池の製造方法において、前記溶融部は、前記ガスシール部材の前記内周端面に対し前記枠体部材の厚み方向からレーザ光を照射することにより形成することができる。また、前記ガスシール部材としては、マイカシートを用いることができる。この場合、レーザ光の出力や送り速度を適切に設定することにより、前記マイカシートの前記内周端面を加熱溶融して前記溶融部を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セル本体及び枠体部材によって構成される燃料電池において、枠体部材に含まれるガスシール部材を、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層して形成し、その開口部の内周端面における多層構造の断面部分を加熱溶融したので、内周端面の結晶層間を経由するガスリークを確実に防止することができる。よって、ガスシール部材のガスシール性を向上させ、燃料電池の発電効率を高めることができる。また、ガスシール部材は、開口部の内周端面からのガスの流入が防止されるので、耐久性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の固体酸化物形燃料電池の側面図である。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池の上面図である。
【図3】1個の単位セルに関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造図である。
【図4】単位セル内のインターコネクタの平面構造図である。
【図5】単位セル内の金属フレームの平面構造図である。
【図6】単位セル内の隔離セパレータの平面構造図である。
【図7】単位セル内のセル本体の平面構造図である。
【図8】単位セル内の下側のガスシール部材の平面構造図である。
【図9】単位セル内の上側のガスシール部材の平面構造図である。
【図10】ガスシール部材の構造を表す斜視図である。
【図11】ガスシール部材において未対策の内周端面の表面状態の画像例を示す図である。
【図12】ガスシール部材において加熱処理を施した内周端面の表面状態の画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の一実施形態について具体的に説明する。図1は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池1の側面図を示し、図2は、図1の固体酸化物形燃料電池1の上面図を示している。なお、図1は、図2の矢印A方向から見た側面図に対応する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池1は、基本的な構成単位である燃料電池セル(以下、単位セルと呼ぶ)3を複数個積層した燃料電池スタック2を備えている。また、燃料電池スタック2は、複数のボルトB1〜B8及び複数のナットNによって一体的に固定されている。各ボルトB1〜B8のうち、図2の方形平面内の四隅に位置する4個のボルトB1、B3、B5、B7は、燃料電池スタック2を固定する連結部材としてのみ用いられる。一方、各ボルトB1〜B8のうち、図2の方形平面内に位置する4個のボルトB2、B4、B6、B8は、上記連結部材に加えて、積層方向に沿う貫通孔に連通し、それぞれ燃料ガスの流路(燃料ガス流路)又は酸化剤ガスの流路(空気流路)の一部として機能する。具体的には、ボルトB2は燃料ガス流路の入口側の燃料ガス導入管Finに連通し、ボルトB2の対向位置のボルトB6は燃料ガス流路の出口側の燃料ガス排出管Foutに連通する。また、ボルトB4は空気流路の入口側の空気導入管Ainに連通し、ボルトB4の対向位置のボルトB8は空気流路の出口側の空気排出管Aoutに連通する。
【0018】
次に、図1の固体酸化物形燃料電池1に含まれる単位セル3の基本構造について説明する。図3は、1個の単位セル3に関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造を示している。図3に示す単位セル3は、発電機能を担うセル本体10を備えている。セル本体10は、下層側から順に、燃料極層11と、固体電解質層12と、空気極層13とが積層形成されてなる。また、単位セル3は、上下1対のインターコネクタ20、21と、下側のインターコネクタ20と燃料極層11との間に配置された燃料極側集電体22と、上側のインターコネクタ21と空気極層13との間に配置された空気極側集電体23と、燃料極層11の側面を取り囲む金属フレーム24と、セル本体10と一体的に接合され、燃料極層11の側の燃料ガス流路Fpと空気極層13の側の空気流路Apとを隔離する隔離セパレータ25と、金属フレーム24と下側のインターコネクタ20との間に配置されたガスシール部材26と、隔離セパレータ25と上側のインターコネクタ21との間に配置されたガスシール部材27と、を備えている。なお、上記のうち、金属フレーム24、隔離セパレータ25、ガスシール部材26、27は、いずれも中央に後述の形状の開口部が形成され、単位セル3における枠体状の枠体部材を構成する。
【0019】
燃料極層11は、水素源となる燃料ガスに接触し、単位セル3のアノードとして機能する。燃料極層11は、セル本体10を支持する支持基体層となるので、機械的強度を確保できる程度の十分な厚みで形成することが望ましい。例えば、燃料極層11の材料としては、Ni等の金属粒子とセラミック粒子からなるサーメットを用いることができる。固体電解質層12は、イオン導電性を有する各種の固体電解質からなる。例えば、固体電解質層12の材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等を用いることができる。空気極層13は、酸素源となる空気ガスに接触し、単位セル3のカソードとして機能する。例えば、空気極層13の材料としては、ペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットを用いることができる。なお、燃料極層11、固体電解質層12、空気極層13は、いずれも方形(例えば、正方形)の平面形状を有する。
【0020】
以下、単位セル3内の主な構成部材の構造について説明する。以下の説明において、図4〜図9に示す各部材の平面構造は、いずれも図2と平面内で方向が一致する。まず、下側のインターコネクタ20は下層に隣接する単位セル3との電気的接続を担い、上側のインターコネクタ21は上層に隣接する単位セル3との電気的接続を担う。図4に示すように、インターコネクタ20、21は、例えばフェライト系ステンレスからなる薄型の金属板であり、その外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。また、下側のインターコネクタ20に接合された燃料極側集電体22は、例えば、通気性を有するNiフェルトからなり、上側のインターコネクタ21に接合された空気極側集電体23は、例えば、金属及び導電性セラミックからなる。
【0021】
金属フレーム24は、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料からなり、セル本体10及び隔離セパレータ25を単位セル3に固定する役割がある。図5に示すように、金属フレーム24の中央には方形の開口部30が形成されている。また、金属フレーム24の4辺に沿って4つの開口部31が形成され、四隅には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。4つの開口部31は、インターコネクタ20、21の各辺中央に位置する丸孔に重なる部分から辺方向の両側に延びる溝状に形成されている。
【0022】
隔離セパレータ25は、可撓性を有する金属材料として、例えばフェライト系ステンレス等の金属材料を用いて、厚み0.02〜0.3mm程度の枠体状の薄板に形成されている。図6に示すように、隔離セパレータ25の中央には方形の開口部32が形成され、4辺に沿って4つの開口部33が形成され、四隅には上記ボルトB1、B3、B5、B7に対応する4つの丸孔が形成されている。このうち、4つの開口部33及び4つの丸孔については、金属フレーム24と同位置及び同形状に形成されている。一方、中央の開口部32は、金属フレーム24の開口部30よりもサイズが小さい方形であり、厚み方向で金属フレーム24の開口部30に対向する位置関係にある。
【0023】
セル本体10は、図7に示すように、方形の外周形状を有する。セル本体10は、隔離セパレータ25に接合されるので、隔離セパレータ25の外周形状よりサイズが小さく、かつ隔離セパレータ25の開口部32よりもサイズが大きい方形の外周形状を有する。一方、セル本体10の上層の空気極層13の外周形状は、セル本体10の外周形状よりもサイズが小さく、さらには隔離セパレータ25の開口部32よりもサイズが小さい方形に形成されている。これにより、図3の断面構造に示すように、セル本体10の外周側が隔離セパレータ25に接合された状態で、開口部32から空気極層13が露出可能な構造にすることができる。
【0024】
次に第1実施形態の単位セル3の特徴的な構造として、ガスシール部材26、27の構造について説明する。図8は、下側のガスシール部材26の平面構造を示し、図9は、上側のガスシール部材27の平面構造を示している。下側のガスシール部材26は、燃料極層11に供給される燃料ガスをガスシールする役割があり、上側のガスシール部材27は、空気極層13に供給される酸化剤ガスをガスシールする役割がある。本実施形態において、ガスシール部材26、27としては、フェロケイ酸塩鉱物の一種であるマイカ(雲母)からなるマイカシートが用いられる。マイカは高い絶縁性を有するため、ガスシール部材26、27により、下側のインターコネクタ20と金属フレーム24との間、及び上側のインターコネクタ21と隔離セパレータ25との間は電気的に絶縁された状態に保たれる。
【0025】
下側及び上側のガスシール部材26、27は基本構造が共通であり、その配置のみが異なるので、以下では代表して下側のガスシール部材26の構造について説明する。まず、図8に示すように、ガスシール部材26の中央には開口部34が形成されるとともに、外縁部には上記ボルトB1〜B8が貫通する8つの丸孔が形成されている。中央の開口部34は、金属フレーム24の開口部30よりもサイズが小さい方形であり、金属フレーム24の開口部30及び隔離セパレータ25の開口部32のそれぞれと厚み方向で対向する位置関係にある。また、開口部34には、方形の対向する2辺において外縁部に延伸される各4本の切り欠き34aが形成されている。これらの切り欠き34aは、金属フレーム24の2辺における2つの開口部31に連通し、燃料ガス流路Fpの一部となる。従って、燃料ガス導入管Finから取り込まれた燃料ガスは、ガスシール部材26の切り欠き34aを経由し、開口部34を抜けて燃料極層11に達する。
【0026】
ここで、図10は、図8のガスシール部材26の構造を斜視図で表している。図10においては、ガスシール部材26の中央の開口部34のうち、その方形の各側面部分と、上記8本の切り欠き34aを構成する側面部分とを含む内周端面IFが示されている。この内周端面IFには、上述の燃料ガス流路Fpを流れる燃料ガスが直接接する構造となっている。なお、図10において、ガスシール部材26の外周端面EFには、燃料ガス流路Fpを流れる燃料ガスが直接接することはない。マイカシートであるガスシール部材26は、雲母結晶からなる薄い箔シートを多層に積層した断面構造を有するため、例えばプレス加工等で開口部34を形成した時点の内周端面IFは結晶層の多層構造の断面部分が露出した状態になる。そのため、この状態のままでガスシール部材26として用いる場合は、内周端面IFの層間にリークパスが形成されることになる。本実施形態では、以下で具体的に説明するように、内周端面IFに加熱処理を施して加熱溶融部を形成することにより、リークパスの形成に対する対策を施すものである。
【0027】
以下、図11及び図12を参照して、本実施形態のガスシール部材26に関し、開口部34の内周端面IFに対するリークパスへの対策の具体例について説明する。図11は、本実施形態との比較のため、ガスシール部材26において未対策の内周端面IFの表面状態の画像例を示している。一方、図12は、本実施形態のガスシール部材26において加熱処理を施した内周端面IFの表面状態の画像例を示している。図11の未対策の内周端面IFは、マイカシートの多層の箔シートによる多層構造が観察され、これが横方向に延びる縞状のリークパスとして作用する。これに対し、図12の対策後の内周端面IFは、図11の状態から内周端面IFをレーザによって加熱溶融したものであり、図11の内周端面IFの断面部分が融けて結晶構造が変質した状態(結晶構造変質部)となり、図11の多層構造に基づくリークパスが消失している。なお、図12では、内周端面IFに縦方向の縞状の模様が形成されているが、これは厚さ方向から照射されるレーザ光によるものである。レーザ照射による内周端面IFの具体的な加熱処理の方法については後述する。
【0028】
上述したように、切り欠き34aを含めた開口部34の内周端面IFの全面にわたって、図12に示す加熱処理に基づく溶融部を形成することにより、燃料極層11に燃料ガスを供給する際にガスシール部材26の開口部34の付近を通過したとしても、内周端面IFの溶融部によって燃料ガスを遮断することができる。従って、本実施形態の加熱処理を適用することで、内周端面IFがリークパスとして作用することを防止し、ガスシール部材26のガスシール性を高めることができる。これにより、ガスシール部材26のガスリークに起因する単位セル3の発電効率の低下を防止することできる。さらに、ガスシール部材26の内周端面IFの層間を介して燃料ガスが流入しないことは、ガスシール部材26の耐久性の向上に効果がある。
【0029】
一方、上側のガスシール部材27は、既に述べたように下側のガスシール部材26と基本構造が共通であるが、図9に示すように、平面内で図8の平面構造を90度回転させた平面構造を有している。よって、ガスシール部材27の中央には開口部35が形成されるとともに、図8とは異なる2辺において外縁部に延伸される各4本の切り欠き35aが形成されている。これらの切り欠き35aは、金属フレーム24の2辺における2つの開口部31に連通し、空気流路Apの一部となる。従って、空気導入管Ainから取り込まれた酸化剤ガスは、ガスシール部材27の切り欠き35aを経由し、開口部35を抜けて空気極層13に達する。本実施形態では、ガスシール部材27の開口部35の内周端面IFに対しても、図12と同様の加熱処理を施すことを想定する。従って、空気極層13に酸化剤ガスを供給する際であっても、内周端面IFがリークパスとして作用することを防止し、上述のガスシール部材26の場合と同様の効果を得ることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、燃料極層11の側のガスシール部材26と空気極層13の側のガスシール部材27の両方に対し、ガスシール性を高めるための内周端面IFの加熱処理を施す場合を示したが、これに限らず、ガスシール部材26、27の一方に対してのみ加熱処理を施してもよい。例えば、燃料ガスのガスリークに比べて酸化剤ガスのガスリークが十分に小さい場合は、燃料極層11の側のガスシール部材26に対してのみ上記加熱処理を施してもよい。
【0031】
次に、本実施形態の単位セル3の製造方法に関し、主に本発明の特徴的な構造に関連する工程について説明する。まず、周知の手法で、燃料極グリーンシートと固体電解質グリーンシートとを含む積層体を形成し、それを焼成することで燃料極層11と固体電解質層12からなる焼結体を得る。次いで、焼結体の上層に空気極層13を積層形成し、図7の平面構造を有するセル本体10を作製する。一方、金属の板材の打ち抜き加工により図6の平面構造を有する隔離セパレータ25を作製し、図3に示すように、セル本体10の外周側と隔離セパレータ25の内周側とを例えばロウ材を用いて接合することで両者を一体化する。
【0032】
また、本発明の特徴的な構造を有するガスシール部材26の元となる平板状のマイカシートを準備する。例えば、ガスシール部材26として、軟質マイカからなるマイカシートが用いられる。そして、マイカシートの表面に、例えば炭酸ガスレーザを用いてレーザ光を照射することにより、図8の開口部34の形状に沿って切断加工を施すと同時に、その内周端面IFを加熱溶融することでガスシール部材26を作製する。このとき、例えば、レーザ出力は110Wに、送り速度は250mm/minにそれぞれ設定される。この場合、レーザ出力は、内周端面IFがマイカの融点である1200度以上に加熱され、内周端面IFが溶融して断面部分にガラス層からなる溶融部を形成可能な範囲に調整することが望ましい。なお、レーザ出力が大き過ぎる場合は、内周端面IFの表面近傍にバリが多く発生するので望ましくない。また、レーザの種別は炭酸ガスレーザには限れられないが、レーザ出力と送り速度はレーザの種別に応じて適切に設定する必要がある。空気極層13の側のガスシール部材27に関しても、上記のガスシール部材26と同様に作製することができるので、説明を省略する。
【0033】
一方、金属フレーム24、燃料極側集電体22、空気極側集電体23、インターコネクタ20、21についても、それぞれ周知の手法で作製した後、上記のセル本体10と一体化された隔離セパレータ25と、ガスシール部材26、27とを図3に示す配置で一体化することにより、単位セル3を得ることができる。また、かかる構造の単位セル3を積層数に応じて繰り返し配置した状態で、複数のボルトB1〜B8及び複数のナットNによって一体的に固定することで、最終的に図1の構造を有する燃料電池スタック2を得ることができる。
【0034】
本発明は、燃料電池スタック2を構成する個々の単位セル3のガスシール部材26、27に対して適用する場合に加え、他の部材に対しても適用することができる。例えば、図1の構造において、燃料電池スタック2と各ナットNとの間に絶縁部材を介挿する場合、上記ガスシール部材26、27と同様、マイカシートからなる絶縁部材を用いてもよい。この場合、マイカからなる絶縁部材にはボルトB1〜B8を貫通させるための円形の開口部を設け、その開口部の内周端面にガスシール部材26、27の内周端面IFと同様の加工を施せばよい。これにより、各ボルトB1、B3、B5、B7が連通する燃料ガス流路及び空気流路を経由するガスが絶縁部材の開口部からリークすることを防止することができる。
【0035】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、ガスシール部材26、27に関しては、マイカシートに限られず、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造を有していれば、他の材料を用いて形成することができる。また、ガスシール部材26、27の形状及び寸法条件についても、本発明の目的を達成できる範囲で多様な設定が可能である。さらに、金属フレーム24や隔離セパレータ25などの他の部材に関しても、上記実施形態で説明した材料、形状、寸法条件等に制約されることなく多様な設定が可能である。また、ガスシール部材26、27に対する開口部34、35を形成する内周端面IFの加工方法は、本発明の目的を達成できる限り、レーザ照射に限られず他の手段を採用してもよい。その他の点についても上記各実施形態により本発明の内容が限定されるものではなく、本発明の作用効果を得られる限り、適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…固体酸化物形燃料電池
2…燃料電池スタック
3…単位セル(燃料電池セル)
10…セル本体
11…燃料極層
12…固体電解質層
13…空気極層
20、21…インターコネクタ
22…燃料極側集電体
23…空気極側集電体
24…金属フレーム
25…隔離セパレータ
26、27…ガスシール部材
34、35…ガスシール部の開口部
B1〜B8…ボルト
N…ナット
Ain…空気導入管
Aout…空気排出管
Ap…空気流路
Fin…燃料ガス導入管
Fout…燃料ガス排出管
Fp…燃料ガス流路
IF…ガスシール部の開口部の内周端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、
厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池において、
前記枠体部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を備え、
前記ガスシール部材は、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に、前記多層構造の断面部分が加熱溶融された溶融部が形成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記ガスシール部材の前記溶融部は、
加熱により結晶構造が変質した結晶構造変質部を有する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガスシール部材の前記溶融部は、
前記開口部を形成する前記内周端面をレーザ照射により形成される請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記溶融部は、前記内周端面の全面に渡って形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記ガスシール部材は、マイカシートであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記電解質層は、固体酸化物からなる請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項7】
電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、
厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池の製造方法において、
フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を準備し、
前記ガスシール部材を、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に対応すべく切断予定線に沿って加熱溶融することにより、前記内周端面を切断形成するとともに、当該内周端面に多層構造の断面部分が溶融された溶融部を形成し、
前記セル本体及び前記枠体部材を積層する、
ことを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項8】
前記溶融部は、前記ガスシール部材の前記内周端面に対し前記枠体部材の厚み方向からレーザ光を照射することにより形成されることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項9】
前記ガスシール部材は、マイカシートであることを特徴とする請求項7又は8に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、
厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池において、
前記枠体部材は、フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を備え、
前記ガスシール部材は、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に、前記多層構造の断面部分が加熱溶融された溶融部が形成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記ガスシール部材の前記溶融部は、
加熱により結晶構造が変質した結晶構造変質部を有する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガスシール部材の前記溶融部は、
前記開口部を形成する前記内周端面をレーザ照射により形成される請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記溶融部は、前記内周端面の全面に渡って形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記ガスシール部材は、マイカシートであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記電解質層は、固体酸化物からなる請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項7】
電解質層と、前記電解質層の両面に設けられた電極層とを備えた平板状のセル本体と、
厚み方向に開口部を備え、前記セル本体の前記電極層を前記開口部より露出させ、かつ前記セル本体とともに積層される枠体状の枠体部材と、を有する燃料電池の製造方法において、
フェロケイ酸塩鉱物を主成分とする薄層を多層積層してなる多層構造のガスシール部材を準備し、
前記ガスシール部材を、前記枠体部材の前記開口部を形成する内周端面に対応すべく切断予定線に沿って加熱溶融することにより、前記内周端面を切断形成するとともに、当該内周端面に多層構造の断面部分が溶融された溶融部を形成し、
前記セル本体及び前記枠体部材を積層する、
ことを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項8】
前記溶融部は、前記ガスシール部材の前記内周端面に対し前記枠体部材の厚み方向からレーザ光を照射することにより形成されることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法。
【請求項9】
前記ガスシール部材は、マイカシートであることを特徴とする請求項7又は8に記載の固体酸化物燃料電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−4271(P2013−4271A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133317(P2011−133317)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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