燃料電池用ガスケット

【課題】電解質膜およびセパレータ間をシールする燃料電池用ガスケットを提供する。
【解決手段】凸リップ2は、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aを有し、平リップ4は、マニホールド通路シール部2Aに対応して対応シール部4Cを有する。対応シール部4Cの内側に凸リップよりなる第2シール5を設け、このシール5はマニホールド穴22gの周りに全周に亙って設ける。マニホールド通路シール部2Aの内側に平リップよりなる第2シール6を設け、このシール6はマニホールド穴21bの周りにガス通路21cを除いて設ける。
【解決手段】凸リップ2は、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aを有し、平リップ4は、マニホールド通路シール部2Aに対応して対応シール部4Cを有する。対応シール部4Cの内側に凸リップよりなる第2シール5を設け、このシール5はマニホールド穴22gの周りに全周に亙って設ける。マニホールド通路シール部2Aの内側に平リップよりなる第2シール6を設け、このシール6はマニホールド穴21bの周りにガス通路21cを除いて設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセルシールとして用いられる燃料電池用ガスケットに係り、更に詳しくは、電解質膜とその厚さ方向両側に配置されるセパレータとの間をシールする燃料電池用ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から図7および図8に示す燃料電池用ガスケット1が知られており、このガスケット1は、電解質膜11とその厚さ方向両側に配置されるセパレータ21,22との間をシールするものであって、一方(例えばカソード側)のセパレータ21に保持されて電解質膜11の一方の面11aに密接する凸リップ2と、他方(例えばアノード側)のセパレータ22に保持されて電解質膜11の他方の面11bに密接する凸リップ3とよりなる凸リップ2,3同士の組み合わせにより構成されている。凸リップ2,3はそれぞれ断面山形状のシールリップ部2a,3aを基部2b,3bに一体成形したものであって、この形状のシールリップ部2a,3aには、相手材(電解質膜11)に対する接触幅が狭いことからシール面圧を大きく設定することができ、よって高いシール性を発揮することができる特徴がある。
【0003】
尚、図7は、互いに重ねられる一対のセパレータ21,22を分解した状態を示しており、一対のセパレータ21,22は、図上イ部とイ部、ロ部とロ部、ハ部とハ部、ニ部とニ部をそれぞれ対面させるようにして重ねられる。すなわち一対のセパレータ21,22を上下方向に重ねるものとして、図7(A)は上側に配置されるセパレータ21の底面図(下面図)を示すとともに、図7(C)は下側に配置されるセパレータ22の平面図(上面図)を示している。また図7(B)は、両面にそれぞれ電極およびガス拡散層12,13を重ねた電解質膜11をその厚さ方向に見た正面図を示している。
【0004】
図7(A)の上側のセパレータ21の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部21aが設けられ、この発電部21aの周りを取り囲むようにして凸リップ2が配置されている。セパレータ21にはガス供給用のマニホールド穴21bが設けられているので、このマニホールド穴21bから発電部21aへガスを供給するようマニホールド穴21bと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21cが設けられ、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aが設けられている。また、セパレータ21にはガス排出用のマニホールド穴21dが対応して設けられているので、このマニホールド穴21dへ発電部21aからガスを排出するようマニホールド穴21dと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21eが設けられ、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21dおよびガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bが設けられている。セパレータ21には他にもマニホールド穴21f,21g,21h,21iが設けられているが、これらのマニホールド穴21f,21g,21h,21iは発電部21aへガスを給排しないので、これらの周りには凸リップ2が全周に亙って設けられている。
【0005】
また、図7(C)の下側のセパレータ22の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部22aが設けられ、この発電部22aの周りを取り囲むようにして凸リップ3が配置されている。セパレータ22にはガス供給用のマニホールド穴22bが設けられているので、このマニホールド穴22bから発電部22aへガスを供給するようマニホールド穴22bと発電部22aとの間に、凸リップ3が設けられていないガス通路22cが設けられ、これに合わせて凸リップ3にその一部として、マニホールド穴22bおよびガス通路22cの周りをシールするマニホールド通路シール部3Aが設けられている。また、セパレータ22にはガス排出用のマニホールド穴22dが対応して設けられているので、このマニホールド穴22dへ発電部22aからガスを排出するようマニホールド穴22dと発電部22aとの間に、凸リップ3が設けられていないガス通路22eが設けられ、これに合わせて凸リップ3にその一部として、マニホールド穴22dおよびガス通路22eの周りをシールするマニホールド通路シール部3Bが設けられている。セパレータ22には他にもマニホールド穴22f,22g,22h,22iが設けられているが、これらのマニホールド穴22f,22g,22h,22iは発電部22aへガスを給排しないので、これらの周りには凸リップ3が全周に亙って設けられている。
【0006】
図8(A)に断面を示す凸リップ2,3同士の組み合わせよりなるガスケット1はスタッキング時、締め付け荷重が作用すると同図(B)に示すように圧縮されて弾性変形し、上記したように断面山形状のシールリップ部2a,3aのシール面圧が大きいことから高いシール性を発揮することが可能とされているが、凸リップ2,3同士の幅方向の位置合せをきわめて高精度に行なう必要があり、図9(A)に示すように凸リップ2,3同士が幅方向にオフセットして配置されると、同図(B)に示すように間に挟まれる電解質膜11に偏荷重が作用し、これを原因として電解質膜11が大きく変形して破損したり、凸リップ2,3のシール面圧が不足して漏れが発生したりする。したがって、凸リップ2,3同士の組み合わせよりなるガスケット1には、シール性に優れるものの、スタッキング性(組立作業性)が良くない不都合がある。
【0007】
上記スタッキング性についての不都合を解消するには、凸リップ2,3同士の組み合わせであったものを、図10に示すように一方(例えばアノード側)を平リップ4に代えることが考えられ、この凸リップ2と平リップ4の組み合わせによれば、平面状の当接面4aを有する平リップ4が広い受け幅を有することから凸リップ2が多少オフセットして配置されても電解質膜11は変形せず、シール性を保つことが可能とされる(特許文献1または2参照)。
【0008】
しかしながら、この凸リップ2と平リップ4の組み合わせを図7に示した燃料電池セルに適用すると、以下のような不都合がある。
【0009】
すなわち、凸リップ2と平リップ4の組み合わせは、両リップ2,4が平面上互いに対応する位置に配置されてスタッキング時に厚さ方向に圧縮されることにより良好なシール性を発揮するものであるところ、図7(C)に示したように他方のセパレータ22にはマニホールド穴22bおよび発電部22a間にガス通路22cが設けられているので、このガス通路22cには平リップ4が設けられておらず、よって図11(A)に示すように一方のセパレータ21側の凸リップ2は電解質膜11の裏面側(図では下面側)に受けを有しないことなる。また同様に、図7(A)に示したように一方のセパレータ21にはマニホールド穴21bおよび発電部21a間にガス通路21cが設けられているので、このガス通路21cには凸リップ2が設けられておらず、よって図11(B)に示すように他方のセパレータ22側の平リップ4は電解質膜11の裏面側(図では上面側)に受けを有しないことなる。したがって図11(A)(B)の状態で凸リップ2および平リップ4は殆ど圧縮されず、シール面圧が不足し、よって漏れが発生することが懸念される。
【0010】
また、この懸念を解消すべく両リップ2,4のシール面圧を増大するため、図12(A)(B)に示すように電解質膜11に重ねられるガス拡散層12,13の周辺部に舌片状の張り出し部12a,13aを設け(張り出し部12a,13aはその平面形状を図7(A)(C)に点線で示している)、この張り出し部12a,13aをガス通路21c,22cに配置して、リップ2,4の電解質膜11裏面側の受けとして作用させることが考えられる。
【0011】
しかしながらこの場合、凸リップ2については上記したようにもともとシール面圧が高いことから、張り出し部13aを受けとして作用させることによりシール性を確保することができるが(図13(A)参照)、平リップ4についてはシール面圧が高くないことから、張り出し部12aを受けとして作用させてもシール性を確保することができない場合がある(図13(B)参照)。以上の説明はガスの供給側にて説明を行なったが、ガスの排出側についても同様である。
【0012】
【特許文献1】特開2001−185174号公報
【特許文献2】特開2004−303723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上の点に鑑みて、凸リップと平リップの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、平リップの受けとして、対応する位置に必ず凸リップを配置し、リップが片方のみ配置される部位についてはこれを必ず平リップではなくシール面圧の大きな凸リップとし、もってシール性を向上させることが可能な燃料電池用ガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の燃料電池用ガスケットは、電解質膜とその厚さ方向両側に配置されるセパレータとの間をシールする燃料電池用ガスケットであって、一方のセパレータに保持されて電解質膜の一方の面に密接する凸リップと、他方のセパレータに保持されて電解質膜の他方の面に密接する平リップとの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、前記凸リップは、一方のセパレータに設けたマニホールド穴および前記マニホールド穴から発電部へガスを給排するガス通路の周りをシールするマニホールド通路シール部を有し、前記平リップは、前記凸リップのマニホールド通路シール部に対応して設けられた対応シール部を有し、前記平リップの対応シール部の内側に凸リップよりなる第2シールを設け、この凸リップよりなる第2シールは、他方のセパレータに設けたマニホールド穴の周りに全周に亙って設けられ、前記凸リップのマニホールド通路シール部の内側に平リップよりなる第2シールを設け、この平リップよりなる第2シールは、一方のセパレータに設けた前記マニホールド穴の周りに前記ガス通路を除いて設けられていることを特徴とする。
【0015】
一方のセパレータ側の凸リップにマニホールド通路シール部を設け、他方のセパレータ側の平リップに対応して対応シール部を設ける。したがってこのマニホールド通路シール部と対応シール部の組み合わせ部位はすべて凸リップと平リップの組み合わせとなり、よって十分なシール性を発揮する。
【0016】
また、平リップの対応シール部の内側に凸リップよりなる第2シールを設け、この凸リップよりなる第2シールは、他方のセパレータに設けたマニホールド穴の周りに全周に亙って設けられるものとする。一方、凸リップのマニホールド通路シール部の内側に平リップよりなる第2シールを設け、この平リップよりなる第2シールは、一方のセパレータに設けたマニホールド穴の周りにガス通路を除いて設けられるものとする。凸リップよりなる第2シールはマニホールド穴の周りに全周に亙って設けられ、一方、平リップよりなる第2シールはマニホールド穴の周りにガス通路を除いて設けられるので、両第2シールの組み合わせ部位は凸リップと平リップの組み合わせとなり、よって十分なシール性を発揮する。また、片方のリップのみが設けられる部位すなわちガス通路は、前者の凸リップよりなる第2シールのみが設けられ、凸リップのみが配置されるため、十分なシール性を発揮する。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明によれば所期の目的どおり、凸リップと平リップの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、平リップの受けとして、対応する位置に必ず凸リップが配置され、リップが片方のみ配置される部位についてはこれが必ず平リップではなくシール面圧の大きな凸リップとされることから、ガスケットによるシール性を向上させることができる。凸リップ同士の組み合わせではないため、スタッキング性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0019】
(1)セルシールのリップライン形状を変更し、アノード側(もしくはカソード側)のマニホールド部のシールリップラインを二重にし、平リップと凸リップの組み合わせとする。凸リップを設けたセパレータのガス導入排出路(ガス通路)が形成されるマニホールドには、該路の口を除く3方面の第1シールの内側に、平リップからなる第2シールを設け、これに相対するセパレータのマニホールドの第1シールの内側全周には凸リップの第2シールを設ける。この改良により、アノード側(もしくはカソード側)に新たに設けられた凸リップと反対側の平リップとの組み合わせにより、マニホールド周りのシールが成立するため、スタッキングの際のシールリップの高い位置決め精度が不要で、マニホールド部もきっちりとシールすることができるようになる。
【0020】
(2)また本発明は、電解質膜およびセパレータ間をシールする燃料電池用ガスケットであって、一方のセパレータ側の凸リップと他方のセパレータ側の平リップの組み合わせよりなるガスケットにおいて、平リップの受けとして対応する位置に必ず凸リップを配置し、リップが片方のみ配置される部位についてはこれを必ずシール面圧の大きな凸リップとし、もってシール性を向上させることを課題とし、この課題達成のため、凸リップは、マニホールド穴およびガス通路の周りをシールするマニホールド通路シール部を有し、平リップは、マニホールド通路シール部に対応して対応シール部を有する。対応シール部の内側に凸リップよりなる第2シールを設け、このシールはマニホールド穴の周りに全周に亙って設ける。マニホールド通路シール部の内側に平リップよりなる第2シールを設け、このシールはマニホールド穴の周りにガス通路を除いて設ける。凸リップよりなる第2シールと平リップよりなる第2シールの対応関係において、前者の凸リップよりなる第2シールのみが配置される部位には、この部位の凸リップを圧縮するため、電解質裏面側に受けを設けるのが好ましい。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
図1ないし図5に示すように、当該実施例に係るガスケット1は、電解質膜11とその厚さ方向両側に配置されるセパレータ21,22との間をシールする燃料電池用のガスケットであって、一方のカソード側のセパレータ21に保持(一体成形)されて電解質膜11の一方の面11aに密接する凸リップ(凸リップよりなる第1シール)2と、他方のアノード側のセパレータ22に保持(一体成形)されて電解質膜11の他方の面11bに密接する平リップ(平リップよりなる第1シール)4との組み合わせにより構成されている。
【0023】
図1(A)に示すように、ガスの供給側において、凸リップ2は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21bおよびこのマニホールド穴21bから発電部(発電ガス流路)21aへガスを供給するガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aを有しており、一方、図1(C)に示すように、平リップ4は、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aに対応して設けられた対応シール部4Cを有している。平リップ4の対応シール部4Cの内側には、凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5は、セパレータ22に設けたマニホールド穴22gの周りに全周に亙って設けられている。また凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aの内側には、平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21bの周りにガス通路21cを除いて設けられている。
【0024】
また、図1(A)に示すように、ガスの排出側において、凸リップ2は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21dおよびこのマニホールド穴21dへ発電部21aからガスを排出するガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bを有しており、一方、図1(C)に示すように、平リップ4は、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bに対応して設けられた対応シール部4Dを有している。平リップ4の対応シール部4Dの内側には、凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5は、セパレータ22に設けたマニホールド穴22iの周りに全周に亙って設けられている。また凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bの内側には、平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21dの周りにガス通路21eを除いて設けられている。
【0025】
図1は、互いに重ねられる一対のセパレータ21,22を分解した状態を示しており、一対のセパレータ21,22は、図上イ部とイ部、ロ部とロ部、ハ部とハ部、ニ部とニ部をそれぞれ対面させるようにして重ねられる。すなわち一対のセパレータ21,22を上下方向に重ねるものとして、図1(A)は上側に配置されるカソード側のセパレータ21の底面図(下面図)を示すとともに、図1(C)は下側に配置されるアノード側のセパレータ22の平面図(上面図)を示している。セパレータ21,22にはそれぞれ複数のマニホールド穴が設けられており、両セパレータ21,22が重ねられると、符号21iと22d、21bと22g、21hと22h、21fと22f、21dと22i、21gと22bの組み合わせにて各マニホールド穴が重ねられ、それぞれセパレータ21,22の厚さ方向に連通するマニホールド流路となる。また図1(B)は、両面にそれぞれ電極およびガス拡散層12,13を重ねた電解質膜11をその厚さ方向に見た正面図を示している。
【0026】
図1(A)のカソード側のセパレータ21の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部21aが設けられており、この発電部21aの周りを取り囲むようにして凸リップ2が配置されている。セパレータ21にはガス供給用のマニホールド穴21bが設けられているので、このマニホールド穴21bから発電部21aへガスを供給するようマニホールド穴21bと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21cが設けられており、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aが設けられている。また、セパレータ21にはガス排出用のマニホールド穴21dが対応して設けられているので、このマニホールド穴21dへ発電部21aからガスを排出するようマニホールド穴21dと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21eが設けられており、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21dおよびガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bが設けられている。セパレータ21には他にもマニホールド穴21f,21g,21h,21iが設けられているが、これらのマニホールド穴21f,21g,21h,21iは発電部21aへガスを供給・排出しないので、これらの周りには凸リップ2が全周に亙って設けられている。
【0027】
また、図1(C)のアノード側のセパレータ22の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部(発電ガス流路)22aが設けられており、この発電部22aの周りを取り囲むようにして平リップ4が配置されている。セパレータ22にはガス供給用のマニホールド穴22bが設けられているので、このマニホールド穴22bから発電部22aへガスを供給するようマニホールド穴22bと発電部22aとの間に、平リップ4が設けられていないガス通路22cが設けられており、これに合わせて平リップ4にその一部として、マニホールド穴22bおよびガス通路22cの周りをシールするマニホールド通路シール部4Aが設けられている。また、セパレータ22にはガス排出用のマニホールド穴22dが対応して設けられているので、このマニホールド穴22dへ発電部22aからガスを排出するようマニホールド穴22dと発電部22aとの間に、平リップ4が設けられていないガス通路22eが設けられており、これに合わせて平リップ4にその一部として、マニホールド穴22dおよびガス通路22eの周りをシールするマニホールド通路シール部4Bが設けられている。セパレータ22には他にもマニホールド穴22f,22g,22h,22iが設けられているが、これらのマニホールド穴22f,22g,22h,22iは発電部22aへガスを供給・排出しないので、これらの周りには平リップ4が全周に亙って設けられている。但し、符号22gおよび22iで示すマニホールド穴の周りには凸リップよりなる第2シール5が全周に亙って設けられて、この第2シール5によってマニホールド穴22g,22iの周りがシールされるので、平リップ4はこれらのマニホールド穴22g,22iの周りの一部のみ(セパレータ22の外周縁側のみ)に設けられている。
【0028】
上記したように図1(A)において、凸リップ2にはその一部として、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aが設けられており、図1(C)において、平リップ4にはその一部として、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aに対応する対応シール部4Cが設けられている。ここに対応するとは、スタッキング時に重ねられるよう配置されることを云う。また、平リップ4の対応シール部4Cの内側に凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5はマニホールド穴22gの周りに全周に亙って設けられている。また、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aの内側に平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6はマニホールド穴21bの周りにガス通路21cを除いて設けられている。ガス通路21cを除いて凸リップよりなる第2シール5と平リップよりなる第2シール6は対応して設けられている
【0029】
また、上記したように図1(A)において、凸リップ2にはその一部として、マニホールド穴21dおよびガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bが設けられており、図1(C)において、平リップ4にはその一部として、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bに対応する対応シール部4Dが設けられている。また、平リップ4の対応シール部4Dの内側に凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5はマニホールド穴22iの周りに全周に亙って設けられている。また、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bの内側に平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6はマニホールド穴21dの周りにガス通路21eを除いて設けられている。ガス通路21eを除いて凸リップよりなる第2シール5と平リップよりなる第2シール6は対応して設けられている。
【0030】
図2は、図1(A)におけるA−A線拡大断面を示しており、カソード側の凸リップ2におけるマニホールド通路シール部2Aの内側(図では左側)に平リップよりなる第2シール6が一体に設けられている。凸リップ2は断面山形状(三角形状)のシールリップ部2aを基部2bの一面に一体成形したものであり、平リップよりなる第2シール6は平面状のシール面(当接面)6aを有している。
【0031】
図3は、図1(C)におけるB−B線拡大断面を示しており、アノード側の平リップ4における対応シール部4Cの内側(図では左側)に凸リップよりなる第2シール5が一体に設けられている。平リップ4は平面状のシール面(当接面)4aを有しており、凸リップよりなる第2シール5は断面山形状(三角形状)のシールリップ部5aを基部5bの一面に一体成形したものである。
【0032】
図4は、両面にそれぞれ電極およびガス拡散層(GDL)12,13を重ねた電解質膜11の平面を示している。電解質膜11の上面側に配置されるガス拡散層12の周縁部には、カソード側のガス通路21c,21eに配置される舌片状の突き出し部12aが2箇所に設けられている。また、電解質膜11の下面側に配置されるガス拡散層13の周縁部には、アノード側のガス通路22c,22eに配置される舌片状の突き出し部13aが2箇所に設けられている。
【0033】
図5は、一対のセパレータ21,22をスタッキングした状態を模式的な図として示している。
【0034】
このうち、図5(A)は、図1(A)のカソード側のセパレータ21をC−C線の断面で見るとともに図1(C)のアノード側のセパレータ22をD−D線の断面で見たものであって、カソード側のセパレータ21のマニホールド穴21gの周りには、黒三角で示す凸リップ2が全周に亙って配置されている。またアノード側のセパレータ22のマニホールド穴22bおよびガス通路22cの周りには、黒四角で示す平リップ4のマニホールド通路シール部4Aが配置され、ガス通路22cにはガス拡散層13の張り出し部13aが配置されている。カソード側の右側の凸リップ2は、電解質膜11を挟んでアノード側の平リップ4が受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。カソード側の左側の凸リップ2は、電解質膜11を挟んでアノード側のガス拡散層13の突き出し部13aが受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。アノード側の平リップ4のマニホールド通路シール部4Aは、電解質膜11を挟んでカソード側の凸リップ2が相対の受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。ガス拡散層13の張り出し部13aはポーラス状のカーボン等よりなるので、ガスが浸透・透過してゆくことになる。尚、この図5(A)に示す構造は、これに対応する従来技術に係る図13(A)との比較から明らかなように従来と同じ構造である。
【0035】
これに対して、図5(B)に示す構造は、これに対応する従来技術に係る図13(B)に示す構造とは異なっており、これが本発明・本実施例の特徴である。
【0036】
すなわち、図5(B)は、図1(A)のカソード側のセパレータ21をE−E線の断面で見るとともに図1(C)のアノード側のセパレータ22をF−F線の断面で見たものであって、カソード側のセパレータ21のマニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りには、黒三角で示す凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aが配置され、その内側に黒四角で示す平リップよりなる第2シール6が配置されている。ガス通路21cにはガス拡散層12の張り出し部12aが配置されている。アノード側のセパレータ22のマニホールド穴22gの周りには、黒四角で示す平リップ4の対応シール部4Cが配置され、その内側(左側)に黒三角で示す凸リップよりなる第二シール5が配置されている。カソード側の凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aは、電解質膜11を挟んでアノード側の平リップ4の対応シール部4Cが受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。カソード側の平リップよりなる第2シール6は、電解質膜11を挟んでアノード側の凸リップよりなる第2シール5が相対の受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。ガス拡散層12の張り出し部12aはポーラス状のカーボン等よりなるので、ガスが浸透・透過してゆくことになる。アノード側の平リップ4の対応シール部4Cは、電解質膜11を挟んでカソード側の凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aが相対の受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。アノード側の右側の凸リップよりなる第2シール5は、電解質膜11を挟んでカソード側の平リップよりなる第2シール6が受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。アノード側の左側の凸リップよりなる第2シール5は、電解質膜11を挟んでカソード側のガス拡散層12の突き出し部12aが受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。図示および説明は省略するが、ガスの排出側も同様である。
【0037】
したがって以上のことから、本発明所期の目的どおり、凸リップと平リップの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、平リップの受けとして、対応する位置には必ず凸リップが配置され、リップが片方のみ配置される部位についてはこれが必ず平リップではなくシール面圧の大きな凸リップとされることから、ガスケットによるシール性を向上させることができる。凸リップ同士の組み合わせでないことから、スタッキング性も良好である。本願発明者らが試しに従来技術に係る図7の形状(凸リップ2,3同士の組み合わせ)のガスケット1を硬度40のシリコーンゴムで成形してスタッキングしたところ、きわめて精密な位置決め精度が必要とされるうえ、締め込む際にセパレータ21,22に横方向の力が加わるだけでリップ2,3先端がずれてしまい、電解質膜11が変形してしまった。図10の形状(凸リップ2と平リップ4の組み合わせ)のガスケット1では、スタッキングおよび締め付けの際の問題はないが、平リップ4のみが電解質膜11に当接するマニホールド部分はシール性がなかった。これらに対し、形状を改良した図1の形状のガスケット1を同様に、硬度40のシリコーンゴムで成形してスタッキングしたところ、スタッキング時に多少の位置ずれがあってもシールに問題がないうえ、マニホールド部分も良好にシールすることができた。
【0038】
尚、上記実施例では、カソード側のセパレータ21に凸リップ2および平リップよりなる第2シール6を設けるとともに、アノード側のセパレータ22に平リップ4および凸リップよりなる第2シール5を設けたが、その配置はカソード・アノード側にて反対であっても良い。
【0039】
また、セパレータ21,22としては、金属セパレータ、樹脂−カーボンセパレータ、カーボンセパレータ等のいずれの場合にも適用することができる。
【0040】
また、上記実施例では、リップが片方のみ配置される部位についてその電解質膜11裏面側の受けとしてガス拡散層12,13の張り出し部12a,13aを用いたが、これに代えてスペーサー(ガス供給部材)の類を用いても良い。例えば図6(A)では、スペーサー31はセパレータ21,22と別体のブロック状のものとして設定されている。スペーサー31はガス通路21c,21e,22c,22eに設置されるものであってガスを通過させる必要があるので、溝状のガス連通部32を所要数有している。また図6(B)の他の例では、スペーサー31はセパレータ21,22に一体成形されたブロック状のものとして設定されている。スペーサー31はやはり溝状のガス連通部32を有しているが、一体成形の場合には、溝状のガス連通部32が電解質膜11側に開口するので、電解質膜11に対する当接面を平坦とするため、スペーサー31にプレート33を組み合わせると良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルを分解した状態を示す図であって、(A)は一方のセパレータの底面図、(B)は電解質膜を含む中間層(発電体)の正面図、(C)は他方のセパレータの平面図
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】図1におけるB−B線拡大断面図
【図4】電解質膜を含む中間層(発電体)の平面図
【図5】同実施例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルをスタッキングした状態を示す説明図であって、(A)は図1におけるC−C線およびD−D線に対応する図、(B)は図1におけるE−E線およびF−F線に対応する図
【図6】(A)および(B)ともスペーサーの一例を示す斜視図
【図7】従来例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルを分解した状態を示す図であって、(A)は一方のセパレータの底面図、(B)は電解質膜を含む中間層(発電体)の正面図、(C)は他方のセパレータの平面図
【図8】(A)は従来例に係る燃料電池用ガスケットをスタッキングした状態の断面図、(B)は締め込み完了時の断面図
【図9】(A)および(B)とも同従来例に係る燃料電池用ガスケットの不具合発生状態を示す断面図
【図10】他の従来例に係る燃料電池用ガスケットをスタッキングした状態の断面図
【図11】(A)および(B)とも同従来例に係る燃料電池用ガスケットの不具合発生状態を示す断面図
【図12】(A)および(B)とも同従来例に係る燃料電池用ガスケットの不具合発生状態を示す断面図
【図13】(A)および(B)とも同実施例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルをスタッキングした状態を示す説明図
【符号の説明】
【0042】
1 燃料電池用ガスケット
2,3 凸リップ
2a,3a シールリップ部
2b,3b 基部
2A,2B,3A,3B,4A,4B マニホールド通路シール部
4 平リップ部
4a 当接面
4C,4D 受けシール部
5 凸リップよりなる第2シール部
6 平リップよりなる第2シール部
11 電解質膜
11a,11b 面
12,13 ガス拡散層
12a,13a 張り出し部
21,22 セパレータ
21a,22a 発電部
21b,21d,21f,21g,21h,21i,22b,22d,22f,22g,22h,22i マニホールド穴
21c,21e,22c,22e ガス通路
31 スペーサー
32 ガス連通部
33 プレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセルシールとして用いられる燃料電池用ガスケットに係り、更に詳しくは、電解質膜とその厚さ方向両側に配置されるセパレータとの間をシールする燃料電池用ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から図7および図8に示す燃料電池用ガスケット1が知られており、このガスケット1は、電解質膜11とその厚さ方向両側に配置されるセパレータ21,22との間をシールするものであって、一方(例えばカソード側)のセパレータ21に保持されて電解質膜11の一方の面11aに密接する凸リップ2と、他方(例えばアノード側)のセパレータ22に保持されて電解質膜11の他方の面11bに密接する凸リップ3とよりなる凸リップ2,3同士の組み合わせにより構成されている。凸リップ2,3はそれぞれ断面山形状のシールリップ部2a,3aを基部2b,3bに一体成形したものであって、この形状のシールリップ部2a,3aには、相手材(電解質膜11)に対する接触幅が狭いことからシール面圧を大きく設定することができ、よって高いシール性を発揮することができる特徴がある。
【0003】
尚、図7は、互いに重ねられる一対のセパレータ21,22を分解した状態を示しており、一対のセパレータ21,22は、図上イ部とイ部、ロ部とロ部、ハ部とハ部、ニ部とニ部をそれぞれ対面させるようにして重ねられる。すなわち一対のセパレータ21,22を上下方向に重ねるものとして、図7(A)は上側に配置されるセパレータ21の底面図(下面図)を示すとともに、図7(C)は下側に配置されるセパレータ22の平面図(上面図)を示している。また図7(B)は、両面にそれぞれ電極およびガス拡散層12,13を重ねた電解質膜11をその厚さ方向に見た正面図を示している。
【0004】
図7(A)の上側のセパレータ21の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部21aが設けられ、この発電部21aの周りを取り囲むようにして凸リップ2が配置されている。セパレータ21にはガス供給用のマニホールド穴21bが設けられているので、このマニホールド穴21bから発電部21aへガスを供給するようマニホールド穴21bと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21cが設けられ、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aが設けられている。また、セパレータ21にはガス排出用のマニホールド穴21dが対応して設けられているので、このマニホールド穴21dへ発電部21aからガスを排出するようマニホールド穴21dと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21eが設けられ、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21dおよびガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bが設けられている。セパレータ21には他にもマニホールド穴21f,21g,21h,21iが設けられているが、これらのマニホールド穴21f,21g,21h,21iは発電部21aへガスを給排しないので、これらの周りには凸リップ2が全周に亙って設けられている。
【0005】
また、図7(C)の下側のセパレータ22の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部22aが設けられ、この発電部22aの周りを取り囲むようにして凸リップ3が配置されている。セパレータ22にはガス供給用のマニホールド穴22bが設けられているので、このマニホールド穴22bから発電部22aへガスを供給するようマニホールド穴22bと発電部22aとの間に、凸リップ3が設けられていないガス通路22cが設けられ、これに合わせて凸リップ3にその一部として、マニホールド穴22bおよびガス通路22cの周りをシールするマニホールド通路シール部3Aが設けられている。また、セパレータ22にはガス排出用のマニホールド穴22dが対応して設けられているので、このマニホールド穴22dへ発電部22aからガスを排出するようマニホールド穴22dと発電部22aとの間に、凸リップ3が設けられていないガス通路22eが設けられ、これに合わせて凸リップ3にその一部として、マニホールド穴22dおよびガス通路22eの周りをシールするマニホールド通路シール部3Bが設けられている。セパレータ22には他にもマニホールド穴22f,22g,22h,22iが設けられているが、これらのマニホールド穴22f,22g,22h,22iは発電部22aへガスを給排しないので、これらの周りには凸リップ3が全周に亙って設けられている。
【0006】
図8(A)に断面を示す凸リップ2,3同士の組み合わせよりなるガスケット1はスタッキング時、締め付け荷重が作用すると同図(B)に示すように圧縮されて弾性変形し、上記したように断面山形状のシールリップ部2a,3aのシール面圧が大きいことから高いシール性を発揮することが可能とされているが、凸リップ2,3同士の幅方向の位置合せをきわめて高精度に行なう必要があり、図9(A)に示すように凸リップ2,3同士が幅方向にオフセットして配置されると、同図(B)に示すように間に挟まれる電解質膜11に偏荷重が作用し、これを原因として電解質膜11が大きく変形して破損したり、凸リップ2,3のシール面圧が不足して漏れが発生したりする。したがって、凸リップ2,3同士の組み合わせよりなるガスケット1には、シール性に優れるものの、スタッキング性(組立作業性)が良くない不都合がある。
【0007】
上記スタッキング性についての不都合を解消するには、凸リップ2,3同士の組み合わせであったものを、図10に示すように一方(例えばアノード側)を平リップ4に代えることが考えられ、この凸リップ2と平リップ4の組み合わせによれば、平面状の当接面4aを有する平リップ4が広い受け幅を有することから凸リップ2が多少オフセットして配置されても電解質膜11は変形せず、シール性を保つことが可能とされる(特許文献1または2参照)。
【0008】
しかしながら、この凸リップ2と平リップ4の組み合わせを図7に示した燃料電池セルに適用すると、以下のような不都合がある。
【0009】
すなわち、凸リップ2と平リップ4の組み合わせは、両リップ2,4が平面上互いに対応する位置に配置されてスタッキング時に厚さ方向に圧縮されることにより良好なシール性を発揮するものであるところ、図7(C)に示したように他方のセパレータ22にはマニホールド穴22bおよび発電部22a間にガス通路22cが設けられているので、このガス通路22cには平リップ4が設けられておらず、よって図11(A)に示すように一方のセパレータ21側の凸リップ2は電解質膜11の裏面側(図では下面側)に受けを有しないことなる。また同様に、図7(A)に示したように一方のセパレータ21にはマニホールド穴21bおよび発電部21a間にガス通路21cが設けられているので、このガス通路21cには凸リップ2が設けられておらず、よって図11(B)に示すように他方のセパレータ22側の平リップ4は電解質膜11の裏面側(図では上面側)に受けを有しないことなる。したがって図11(A)(B)の状態で凸リップ2および平リップ4は殆ど圧縮されず、シール面圧が不足し、よって漏れが発生することが懸念される。
【0010】
また、この懸念を解消すべく両リップ2,4のシール面圧を増大するため、図12(A)(B)に示すように電解質膜11に重ねられるガス拡散層12,13の周辺部に舌片状の張り出し部12a,13aを設け(張り出し部12a,13aはその平面形状を図7(A)(C)に点線で示している)、この張り出し部12a,13aをガス通路21c,22cに配置して、リップ2,4の電解質膜11裏面側の受けとして作用させることが考えられる。
【0011】
しかしながらこの場合、凸リップ2については上記したようにもともとシール面圧が高いことから、張り出し部13aを受けとして作用させることによりシール性を確保することができるが(図13(A)参照)、平リップ4についてはシール面圧が高くないことから、張り出し部12aを受けとして作用させてもシール性を確保することができない場合がある(図13(B)参照)。以上の説明はガスの供給側にて説明を行なったが、ガスの排出側についても同様である。
【0012】
【特許文献1】特開2001−185174号公報
【特許文献2】特開2004−303723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上の点に鑑みて、凸リップと平リップの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、平リップの受けとして、対応する位置に必ず凸リップを配置し、リップが片方のみ配置される部位についてはこれを必ず平リップではなくシール面圧の大きな凸リップとし、もってシール性を向上させることが可能な燃料電池用ガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の燃料電池用ガスケットは、電解質膜とその厚さ方向両側に配置されるセパレータとの間をシールする燃料電池用ガスケットであって、一方のセパレータに保持されて電解質膜の一方の面に密接する凸リップと、他方のセパレータに保持されて電解質膜の他方の面に密接する平リップとの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、前記凸リップは、一方のセパレータに設けたマニホールド穴および前記マニホールド穴から発電部へガスを給排するガス通路の周りをシールするマニホールド通路シール部を有し、前記平リップは、前記凸リップのマニホールド通路シール部に対応して設けられた対応シール部を有し、前記平リップの対応シール部の内側に凸リップよりなる第2シールを設け、この凸リップよりなる第2シールは、他方のセパレータに設けたマニホールド穴の周りに全周に亙って設けられ、前記凸リップのマニホールド通路シール部の内側に平リップよりなる第2シールを設け、この平リップよりなる第2シールは、一方のセパレータに設けた前記マニホールド穴の周りに前記ガス通路を除いて設けられていることを特徴とする。
【0015】
一方のセパレータ側の凸リップにマニホールド通路シール部を設け、他方のセパレータ側の平リップに対応して対応シール部を設ける。したがってこのマニホールド通路シール部と対応シール部の組み合わせ部位はすべて凸リップと平リップの組み合わせとなり、よって十分なシール性を発揮する。
【0016】
また、平リップの対応シール部の内側に凸リップよりなる第2シールを設け、この凸リップよりなる第2シールは、他方のセパレータに設けたマニホールド穴の周りに全周に亙って設けられるものとする。一方、凸リップのマニホールド通路シール部の内側に平リップよりなる第2シールを設け、この平リップよりなる第2シールは、一方のセパレータに設けたマニホールド穴の周りにガス通路を除いて設けられるものとする。凸リップよりなる第2シールはマニホールド穴の周りに全周に亙って設けられ、一方、平リップよりなる第2シールはマニホールド穴の周りにガス通路を除いて設けられるので、両第2シールの組み合わせ部位は凸リップと平リップの組み合わせとなり、よって十分なシール性を発揮する。また、片方のリップのみが設けられる部位すなわちガス通路は、前者の凸リップよりなる第2シールのみが設けられ、凸リップのみが配置されるため、十分なシール性を発揮する。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明によれば所期の目的どおり、凸リップと平リップの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、平リップの受けとして、対応する位置に必ず凸リップが配置され、リップが片方のみ配置される部位についてはこれが必ず平リップではなくシール面圧の大きな凸リップとされることから、ガスケットによるシール性を向上させることができる。凸リップ同士の組み合わせではないため、スタッキング性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0019】
(1)セルシールのリップライン形状を変更し、アノード側(もしくはカソード側)のマニホールド部のシールリップラインを二重にし、平リップと凸リップの組み合わせとする。凸リップを設けたセパレータのガス導入排出路(ガス通路)が形成されるマニホールドには、該路の口を除く3方面の第1シールの内側に、平リップからなる第2シールを設け、これに相対するセパレータのマニホールドの第1シールの内側全周には凸リップの第2シールを設ける。この改良により、アノード側(もしくはカソード側)に新たに設けられた凸リップと反対側の平リップとの組み合わせにより、マニホールド周りのシールが成立するため、スタッキングの際のシールリップの高い位置決め精度が不要で、マニホールド部もきっちりとシールすることができるようになる。
【0020】
(2)また本発明は、電解質膜およびセパレータ間をシールする燃料電池用ガスケットであって、一方のセパレータ側の凸リップと他方のセパレータ側の平リップの組み合わせよりなるガスケットにおいて、平リップの受けとして対応する位置に必ず凸リップを配置し、リップが片方のみ配置される部位についてはこれを必ずシール面圧の大きな凸リップとし、もってシール性を向上させることを課題とし、この課題達成のため、凸リップは、マニホールド穴およびガス通路の周りをシールするマニホールド通路シール部を有し、平リップは、マニホールド通路シール部に対応して対応シール部を有する。対応シール部の内側に凸リップよりなる第2シールを設け、このシールはマニホールド穴の周りに全周に亙って設ける。マニホールド通路シール部の内側に平リップよりなる第2シールを設け、このシールはマニホールド穴の周りにガス通路を除いて設ける。凸リップよりなる第2シールと平リップよりなる第2シールの対応関係において、前者の凸リップよりなる第2シールのみが配置される部位には、この部位の凸リップを圧縮するため、電解質裏面側に受けを設けるのが好ましい。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
図1ないし図5に示すように、当該実施例に係るガスケット1は、電解質膜11とその厚さ方向両側に配置されるセパレータ21,22との間をシールする燃料電池用のガスケットであって、一方のカソード側のセパレータ21に保持(一体成形)されて電解質膜11の一方の面11aに密接する凸リップ(凸リップよりなる第1シール)2と、他方のアノード側のセパレータ22に保持(一体成形)されて電解質膜11の他方の面11bに密接する平リップ(平リップよりなる第1シール)4との組み合わせにより構成されている。
【0023】
図1(A)に示すように、ガスの供給側において、凸リップ2は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21bおよびこのマニホールド穴21bから発電部(発電ガス流路)21aへガスを供給するガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aを有しており、一方、図1(C)に示すように、平リップ4は、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aに対応して設けられた対応シール部4Cを有している。平リップ4の対応シール部4Cの内側には、凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5は、セパレータ22に設けたマニホールド穴22gの周りに全周に亙って設けられている。また凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aの内側には、平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21bの周りにガス通路21cを除いて設けられている。
【0024】
また、図1(A)に示すように、ガスの排出側において、凸リップ2は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21dおよびこのマニホールド穴21dへ発電部21aからガスを排出するガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bを有しており、一方、図1(C)に示すように、平リップ4は、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bに対応して設けられた対応シール部4Dを有している。平リップ4の対応シール部4Dの内側には、凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5は、セパレータ22に設けたマニホールド穴22iの周りに全周に亙って設けられている。また凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bの内側には、平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6は、セパレータ21に設けたマニホールド穴21dの周りにガス通路21eを除いて設けられている。
【0025】
図1は、互いに重ねられる一対のセパレータ21,22を分解した状態を示しており、一対のセパレータ21,22は、図上イ部とイ部、ロ部とロ部、ハ部とハ部、ニ部とニ部をそれぞれ対面させるようにして重ねられる。すなわち一対のセパレータ21,22を上下方向に重ねるものとして、図1(A)は上側に配置されるカソード側のセパレータ21の底面図(下面図)を示すとともに、図1(C)は下側に配置されるアノード側のセパレータ22の平面図(上面図)を示している。セパレータ21,22にはそれぞれ複数のマニホールド穴が設けられており、両セパレータ21,22が重ねられると、符号21iと22d、21bと22g、21hと22h、21fと22f、21dと22i、21gと22bの組み合わせにて各マニホールド穴が重ねられ、それぞれセパレータ21,22の厚さ方向に連通するマニホールド流路となる。また図1(B)は、両面にそれぞれ電極およびガス拡散層12,13を重ねた電解質膜11をその厚さ方向に見た正面図を示している。
【0026】
図1(A)のカソード側のセパレータ21の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部21aが設けられており、この発電部21aの周りを取り囲むようにして凸リップ2が配置されている。セパレータ21にはガス供給用のマニホールド穴21bが設けられているので、このマニホールド穴21bから発電部21aへガスを供給するようマニホールド穴21bと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21cが設けられており、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aが設けられている。また、セパレータ21にはガス排出用のマニホールド穴21dが対応して設けられているので、このマニホールド穴21dへ発電部21aからガスを排出するようマニホールド穴21dと発電部21aとの間に、凸リップ2が設けられていないガス通路21eが設けられており、これに合わせて凸リップ2にその一部として、マニホールド穴21dおよびガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bが設けられている。セパレータ21には他にもマニホールド穴21f,21g,21h,21iが設けられているが、これらのマニホールド穴21f,21g,21h,21iは発電部21aへガスを供給・排出しないので、これらの周りには凸リップ2が全周に亙って設けられている。
【0027】
また、図1(C)のアノード側のセパレータ22の平面中央には、発電時にガスが流れる発電部(発電ガス流路)22aが設けられており、この発電部22aの周りを取り囲むようにして平リップ4が配置されている。セパレータ22にはガス供給用のマニホールド穴22bが設けられているので、このマニホールド穴22bから発電部22aへガスを供給するようマニホールド穴22bと発電部22aとの間に、平リップ4が設けられていないガス通路22cが設けられており、これに合わせて平リップ4にその一部として、マニホールド穴22bおよびガス通路22cの周りをシールするマニホールド通路シール部4Aが設けられている。また、セパレータ22にはガス排出用のマニホールド穴22dが対応して設けられているので、このマニホールド穴22dへ発電部22aからガスを排出するようマニホールド穴22dと発電部22aとの間に、平リップ4が設けられていないガス通路22eが設けられており、これに合わせて平リップ4にその一部として、マニホールド穴22dおよびガス通路22eの周りをシールするマニホールド通路シール部4Bが設けられている。セパレータ22には他にもマニホールド穴22f,22g,22h,22iが設けられているが、これらのマニホールド穴22f,22g,22h,22iは発電部22aへガスを供給・排出しないので、これらの周りには平リップ4が全周に亙って設けられている。但し、符号22gおよび22iで示すマニホールド穴の周りには凸リップよりなる第2シール5が全周に亙って設けられて、この第2シール5によってマニホールド穴22g,22iの周りがシールされるので、平リップ4はこれらのマニホールド穴22g,22iの周りの一部のみ(セパレータ22の外周縁側のみ)に設けられている。
【0028】
上記したように図1(A)において、凸リップ2にはその一部として、マニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りをシールするマニホールド通路シール部2Aが設けられており、図1(C)において、平リップ4にはその一部として、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aに対応する対応シール部4Cが設けられている。ここに対応するとは、スタッキング時に重ねられるよう配置されることを云う。また、平リップ4の対応シール部4Cの内側に凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5はマニホールド穴22gの周りに全周に亙って設けられている。また、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aの内側に平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6はマニホールド穴21bの周りにガス通路21cを除いて設けられている。ガス通路21cを除いて凸リップよりなる第2シール5と平リップよりなる第2シール6は対応して設けられている
【0029】
また、上記したように図1(A)において、凸リップ2にはその一部として、マニホールド穴21dおよびガス通路21eの周りをシールするマニホールド通路シール部2Bが設けられており、図1(C)において、平リップ4にはその一部として、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bに対応する対応シール部4Dが設けられている。また、平リップ4の対応シール部4Dの内側に凸リップよりなる第2シール5が設けられており、この凸リップよりなる第2シール5はマニホールド穴22iの周りに全周に亙って設けられている。また、凸リップ2のマニホールド通路シール部2Bの内側に平リップよりなる第2シール6が設けられており、この平リップよりなる第2シール6はマニホールド穴21dの周りにガス通路21eを除いて設けられている。ガス通路21eを除いて凸リップよりなる第2シール5と平リップよりなる第2シール6は対応して設けられている。
【0030】
図2は、図1(A)におけるA−A線拡大断面を示しており、カソード側の凸リップ2におけるマニホールド通路シール部2Aの内側(図では左側)に平リップよりなる第2シール6が一体に設けられている。凸リップ2は断面山形状(三角形状)のシールリップ部2aを基部2bの一面に一体成形したものであり、平リップよりなる第2シール6は平面状のシール面(当接面)6aを有している。
【0031】
図3は、図1(C)におけるB−B線拡大断面を示しており、アノード側の平リップ4における対応シール部4Cの内側(図では左側)に凸リップよりなる第2シール5が一体に設けられている。平リップ4は平面状のシール面(当接面)4aを有しており、凸リップよりなる第2シール5は断面山形状(三角形状)のシールリップ部5aを基部5bの一面に一体成形したものである。
【0032】
図4は、両面にそれぞれ電極およびガス拡散層(GDL)12,13を重ねた電解質膜11の平面を示している。電解質膜11の上面側に配置されるガス拡散層12の周縁部には、カソード側のガス通路21c,21eに配置される舌片状の突き出し部12aが2箇所に設けられている。また、電解質膜11の下面側に配置されるガス拡散層13の周縁部には、アノード側のガス通路22c,22eに配置される舌片状の突き出し部13aが2箇所に設けられている。
【0033】
図5は、一対のセパレータ21,22をスタッキングした状態を模式的な図として示している。
【0034】
このうち、図5(A)は、図1(A)のカソード側のセパレータ21をC−C線の断面で見るとともに図1(C)のアノード側のセパレータ22をD−D線の断面で見たものであって、カソード側のセパレータ21のマニホールド穴21gの周りには、黒三角で示す凸リップ2が全周に亙って配置されている。またアノード側のセパレータ22のマニホールド穴22bおよびガス通路22cの周りには、黒四角で示す平リップ4のマニホールド通路シール部4Aが配置され、ガス通路22cにはガス拡散層13の張り出し部13aが配置されている。カソード側の右側の凸リップ2は、電解質膜11を挟んでアノード側の平リップ4が受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。カソード側の左側の凸リップ2は、電解質膜11を挟んでアノード側のガス拡散層13の突き出し部13aが受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。アノード側の平リップ4のマニホールド通路シール部4Aは、電解質膜11を挟んでカソード側の凸リップ2が相対の受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。ガス拡散層13の張り出し部13aはポーラス状のカーボン等よりなるので、ガスが浸透・透過してゆくことになる。尚、この図5(A)に示す構造は、これに対応する従来技術に係る図13(A)との比較から明らかなように従来と同じ構造である。
【0035】
これに対して、図5(B)に示す構造は、これに対応する従来技術に係る図13(B)に示す構造とは異なっており、これが本発明・本実施例の特徴である。
【0036】
すなわち、図5(B)は、図1(A)のカソード側のセパレータ21をE−E線の断面で見るとともに図1(C)のアノード側のセパレータ22をF−F線の断面で見たものであって、カソード側のセパレータ21のマニホールド穴21bおよびガス通路21cの周りには、黒三角で示す凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aが配置され、その内側に黒四角で示す平リップよりなる第2シール6が配置されている。ガス通路21cにはガス拡散層12の張り出し部12aが配置されている。アノード側のセパレータ22のマニホールド穴22gの周りには、黒四角で示す平リップ4の対応シール部4Cが配置され、その内側(左側)に黒三角で示す凸リップよりなる第二シール5が配置されている。カソード側の凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aは、電解質膜11を挟んでアノード側の平リップ4の対応シール部4Cが受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。カソード側の平リップよりなる第2シール6は、電解質膜11を挟んでアノード側の凸リップよりなる第2シール5が相対の受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。ガス拡散層12の張り出し部12aはポーラス状のカーボン等よりなるので、ガスが浸透・透過してゆくことになる。アノード側の平リップ4の対応シール部4Cは、電解質膜11を挟んでカソード側の凸リップ2のマニホールド通路シール部2Aが相対の受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。アノード側の右側の凸リップよりなる第2シール5は、電解質膜11を挟んでカソード側の平リップよりなる第2シール6が受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。アノード側の左側の凸リップよりなる第2シール5は、電解質膜11を挟んでカソード側のガス拡散層12の突き出し部12aが受けとして作用するので、十分なシール性が発揮される。図示および説明は省略するが、ガスの排出側も同様である。
【0037】
したがって以上のことから、本発明所期の目的どおり、凸リップと平リップの組み合わせよりなる燃料電池用ガスケットにおいて、平リップの受けとして、対応する位置には必ず凸リップが配置され、リップが片方のみ配置される部位についてはこれが必ず平リップではなくシール面圧の大きな凸リップとされることから、ガスケットによるシール性を向上させることができる。凸リップ同士の組み合わせでないことから、スタッキング性も良好である。本願発明者らが試しに従来技術に係る図7の形状(凸リップ2,3同士の組み合わせ)のガスケット1を硬度40のシリコーンゴムで成形してスタッキングしたところ、きわめて精密な位置決め精度が必要とされるうえ、締め込む際にセパレータ21,22に横方向の力が加わるだけでリップ2,3先端がずれてしまい、電解質膜11が変形してしまった。図10の形状(凸リップ2と平リップ4の組み合わせ)のガスケット1では、スタッキングおよび締め付けの際の問題はないが、平リップ4のみが電解質膜11に当接するマニホールド部分はシール性がなかった。これらに対し、形状を改良した図1の形状のガスケット1を同様に、硬度40のシリコーンゴムで成形してスタッキングしたところ、スタッキング時に多少の位置ずれがあってもシールに問題がないうえ、マニホールド部分も良好にシールすることができた。
【0038】
尚、上記実施例では、カソード側のセパレータ21に凸リップ2および平リップよりなる第2シール6を設けるとともに、アノード側のセパレータ22に平リップ4および凸リップよりなる第2シール5を設けたが、その配置はカソード・アノード側にて反対であっても良い。
【0039】
また、セパレータ21,22としては、金属セパレータ、樹脂−カーボンセパレータ、カーボンセパレータ等のいずれの場合にも適用することができる。
【0040】
また、上記実施例では、リップが片方のみ配置される部位についてその電解質膜11裏面側の受けとしてガス拡散層12,13の張り出し部12a,13aを用いたが、これに代えてスペーサー(ガス供給部材)の類を用いても良い。例えば図6(A)では、スペーサー31はセパレータ21,22と別体のブロック状のものとして設定されている。スペーサー31はガス通路21c,21e,22c,22eに設置されるものであってガスを通過させる必要があるので、溝状のガス連通部32を所要数有している。また図6(B)の他の例では、スペーサー31はセパレータ21,22に一体成形されたブロック状のものとして設定されている。スペーサー31はやはり溝状のガス連通部32を有しているが、一体成形の場合には、溝状のガス連通部32が電解質膜11側に開口するので、電解質膜11に対する当接面を平坦とするため、スペーサー31にプレート33を組み合わせると良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルを分解した状態を示す図であって、(A)は一方のセパレータの底面図、(B)は電解質膜を含む中間層(発電体)の正面図、(C)は他方のセパレータの平面図
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】図1におけるB−B線拡大断面図
【図4】電解質膜を含む中間層(発電体)の平面図
【図5】同実施例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルをスタッキングした状態を示す説明図であって、(A)は図1におけるC−C線およびD−D線に対応する図、(B)は図1におけるE−E線およびF−F線に対応する図
【図6】(A)および(B)ともスペーサーの一例を示す斜視図
【図7】従来例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルを分解した状態を示す図であって、(A)は一方のセパレータの底面図、(B)は電解質膜を含む中間層(発電体)の正面図、(C)は他方のセパレータの平面図
【図8】(A)は従来例に係る燃料電池用ガスケットをスタッキングした状態の断面図、(B)は締め込み完了時の断面図
【図9】(A)および(B)とも同従来例に係る燃料電池用ガスケットの不具合発生状態を示す断面図
【図10】他の従来例に係る燃料電池用ガスケットをスタッキングした状態の断面図
【図11】(A)および(B)とも同従来例に係る燃料電池用ガスケットの不具合発生状態を示す断面図
【図12】(A)および(B)とも同従来例に係る燃料電池用ガスケットの不具合発生状態を示す断面図
【図13】(A)および(B)とも同実施例に係る燃料電池用ガスケットを備えた燃料電池セルをスタッキングした状態を示す説明図
【符号の説明】
【0042】
1 燃料電池用ガスケット
2,3 凸リップ
2a,3a シールリップ部
2b,3b 基部
2A,2B,3A,3B,4A,4B マニホールド通路シール部
4 平リップ部
4a 当接面
4C,4D 受けシール部
5 凸リップよりなる第2シール部
6 平リップよりなる第2シール部
11 電解質膜
11a,11b 面
12,13 ガス拡散層
12a,13a 張り出し部
21,22 セパレータ
21a,22a 発電部
21b,21d,21f,21g,21h,21i,22b,22d,22f,22g,22h,22i マニホールド穴
21c,21e,22c,22e ガス通路
31 スペーサー
32 ガス連通部
33 プレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜(11)とその厚さ方向両側に配置されるセパレータ(21)(22)との間をシールする燃料電池用ガスケット(1)であって、一方のセパレータ(21)に保持されて電解質膜(11)の一方の面(11a)に密接する凸リップ(2)と、他方のセパレータ(22)に保持されて電解質膜(11)の他方の面(11b)に密接する平リップ(4)との組み合わせよりなる燃料電池用ガスケット(1)において、
前記凸リップ(2)は、一方のセパレータ(21)に設けたマニホールド穴(21b)(21d)および前記マニホールド穴(21b)(21d)から発電部(21a)へガスを給排するガス通路(21c)(21e)の周りをシールするマニホールド通路シール部(2A)(2B)を有し、
前記平リップ(4)は、前記凸リップ(2)のマニホールド通路シール部(2A)(2B)に対応して設けられた対応シール部(4C)(4D)を有し、
前記平リップ(4)の対応シール部(4C)(4D)の内側に凸リップよりなる第2シール(5)を設け、この凸リップよりなる第2シール(5)は、他方のセパレータ(22)に設けたマニホールド穴(22g)(22i)の周りに全周に亙って設けられ、
前記凸リップ(2)のマニホールド通路シール部(2A)(2B)の内側に平リップよりなる第2シール(6)を設け、この平リップよりなる第2シール(6)は、一方のセパレータ(21)に設けた前記マニホールド穴(21b)(21d)の周りに前記ガス通路(21c)(21e)を除いて設けられていることを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【請求項1】
電解質膜(11)とその厚さ方向両側に配置されるセパレータ(21)(22)との間をシールする燃料電池用ガスケット(1)であって、一方のセパレータ(21)に保持されて電解質膜(11)の一方の面(11a)に密接する凸リップ(2)と、他方のセパレータ(22)に保持されて電解質膜(11)の他方の面(11b)に密接する平リップ(4)との組み合わせよりなる燃料電池用ガスケット(1)において、
前記凸リップ(2)は、一方のセパレータ(21)に設けたマニホールド穴(21b)(21d)および前記マニホールド穴(21b)(21d)から発電部(21a)へガスを給排するガス通路(21c)(21e)の周りをシールするマニホールド通路シール部(2A)(2B)を有し、
前記平リップ(4)は、前記凸リップ(2)のマニホールド通路シール部(2A)(2B)に対応して設けられた対応シール部(4C)(4D)を有し、
前記平リップ(4)の対応シール部(4C)(4D)の内側に凸リップよりなる第2シール(5)を設け、この凸リップよりなる第2シール(5)は、他方のセパレータ(22)に設けたマニホールド穴(22g)(22i)の周りに全周に亙って設けられ、
前記凸リップ(2)のマニホールド通路シール部(2A)(2B)の内側に平リップよりなる第2シール(6)を設け、この平リップよりなる第2シール(6)は、一方のセパレータ(21)に設けた前記マニホールド穴(21b)(21d)の周りに前記ガス通路(21c)(21e)を除いて設けられていることを特徴とする燃料電池用ガスケット。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【公開番号】特開2008−97899(P2008−97899A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276034(P2006−276034)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]