説明

燃料電池用シール構造体

【課題】本発明は、セパレータ間の間隙を出来るだけ小さくして、燃料電池スタック全体を小型化すること、及びセパレータ間の間隙のバラツキを無くすことを目的とする。
【解決手段】一対の電極間に配置した高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両面に配置した2枚のガス拡散層と、前記ガス拡散層の周縁に、自身のゴム部材の一部が含浸した結合層を介して前記ガス拡散層と一体化したゴム状弾性材製シール部材とが、マニホールド入り口から出口へ通じる反応ガス誘導通路を設けた1対のセパレータにより挟持されている燃料電池用シール構造体において、
前記2枚のガス拡散層の各々に、別個独立に形成した前記結合層を介して2種類のシール部材を設けると共に、前記各々の結合層を、互いに重なり合う事が無い様に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用シール構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、一対の電極間に配置した高分子電解質膜10と、この高分子電解質膜10の両面に配置した2枚のガス拡散層20、20と、このガス拡散層20、20の周縁に、ゴム部材の一部が含浸した結合層60を介してガス拡散層20、20と一体化したゴム状弾性材製シール部材30とが、マニホールド入り口から出口へ通じる反応ガス誘導通路40を設けた1対のセパレータ50、50により挟持されている燃料電池用シール構造体が知られている。(特許文献1)
【0003】
このシール構造体は、セパレータ50、50との間に挟持される前は、図5に示す構造を有している。
すなわち、ゴム状弾性材製シール部材30のゴム部材の一部が含浸した結合層60により、高分子電解質膜10と、この高分子電解質膜10の両面に配置した2枚のガス拡散層20、20と、ゴム状弾性材製シール部材30とが一体化されている。
そして、このシール構造体は、図4に示す様に、セパレータ50、50との間に挟持される。
【0004】
しかし、ガス拡散層20、20の周縁に存在する、ゴム部材の一部が含浸した結合層60は、ゴム部材が含浸ししているため、セパレータ50、50間で圧縮して結合層60の厚みを薄くすることは困難である。
また、予め、結合層60を構成するガス拡散層20をより多く圧縮して、結合層60の厚みを薄くする方法も試みられたが、ガス拡散層20を圧縮し過ぎると、ゴム部材の含浸が上手く行かず、シール部材30とガス拡散層20、20との一体化が難しくなる問題を招来した。
特に、セパレータ50、50が脆弱なカーボン材である場合は、特に困難であった。
このため、セパレータ50、50間の間隙を出来るだけ小さくして、燃料電池スタック全体を小型化すること、及びセパレータ50、50間の間隙のバラツキをなくすことが出来ない問題を惹起した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−47314号公報
【特許文献2】特開2007−26847号公報
【特許文献3】特開2008−293684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、セパレータ間の間隙を出来るだけ小さくして、燃料電池スタック全体を小型化すること、及びセパレータ間の間隙のバラツキを無くすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明にあっては、一対の電極間に配置した高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の両面に配置した2枚のガス拡散層と、前記ガス拡散層の周縁に、自身のゴム部材の一部が含浸した結合層を介して前記ガス拡散層と一体化したゴム状弾性材製シール部材とが、マニホールド入り口から出口へ通じる反応ガス誘導通路を設けた1対のセパレータにより挟持されている燃料電池用シール構造体において、
前記2枚のガス拡散層の各々に、別個独立に形成した前記結合層を介して2種類のシール部材を設けると共に、前記各々の結合層を、互いに重なり合う事が無い様に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の燃料電池用シール構造体によれば、セパレータ間の間隙を出来るだけ小さくして、燃料電池スタック全体を小型化すること、及びセパレータ間の間隙のバラツキを無くすことが出来る。
また、請求項2記載の発明の燃料電池用シール構造体によれば、セパレータ間の間隙を出来るだけ小さくして、より確実に燃料電池スタック全体を小型化することが出来る。
【0009】
更に、請求項3記載の発明の燃料電池用シール構造体によれば、セパレータ間に大きな面圧を与えることなく、反応ガスの外部への漏洩を確実に阻止することが出来る。
更に、請求項4記載の発明の燃料電池によれば、より確実にセパレータ間の間隙を小さく抑えることが出来る。
【0010】
更に、請求項5記載の発明の燃料電池用シール構造体によれば、成形が容易である。
【0011】
更に、請求項6記載の発明の燃料電池用シール構造体によれば、脆弱なカーボン材製のセパレータを使用する燃料電池用として特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る燃料電池用シール構造体の部分断面図である。
【図2】本発明に係る燃料電池用シール構造体の各構成部品を示した図である。
【図3】図2の各構成部品を重ね合わせた状態の図である。
【図4】従来例に係る燃料電池用シール構造体を示す部分断面図である。
【図5】図4に示した燃料電池用シール構造体をセパレータ間に挟持する前の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
第1図乃至3図に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
図1に示す様に、本発明の燃料電池用シール構造体は、一対の電極間に配置した高分子電解質膜1と、この高分子電解質膜1の両面に配置した2枚のガス拡散層2a、2bと、このガス拡散層2a、2bの周縁に、自身のゴム部材の一部が含浸した結合層6a、6bを介してガス拡散層2a、2bと一体化したゴム状弾性材製シール部材3a、3bとが、マニホールド入り口から出口へ通じる反応ガス誘導通路4a、4bを設けた1対のセパレータ5a、5bにより挟持されている。
【0015】
そして、この2枚のガス拡散層2a、2bの各々には、別個独立に形成した結合層6a、6bを介して2種類のシール部材3a、3bを設けると共に、各々の結合層6a、6bを、互いに重なり合う事が無い様に配置している。
すなわち、本発明の燃料電池用シール構造体は、図4の従来技術の様に、高分子電解質膜10と、この高分子電解質膜10の両面に配置した2枚のガス拡散層20、20と、このガス拡散層20、20の周縁に、ゴム部材の一部が含浸した結合層60を介してガス拡散層20、20と一体化したゴム状弾性材製シール部材30とが全て一体化された形で成形されるのではなく、図2に示す様に、2枚のガス拡散層2a、2bの各々には、別個独立に形成した結合層6a、6bを介して2種類のシール部材3a、3bを設けると共に、2枚のガス拡散層2a、2bに挟まれる形で高分子電解質膜1が配置される態様としている。
本実施例では、高分子電解質膜1の端部が、結合層6bの端部と略一致する長さとしているが、高分子電解質膜1の長さを更に長くして、シール部材3a、3b間で挟持する形とすると、シール性能を更に高める事が出来る。
【0016】
そして、このシール部材3a、3bには、セパレータ5a、5bと当接するリップ部31a、31bを備えている。
更に、このシール部材3a、3bには、リップ部31a、31bと結合層6a、6bとを連結している連結部32a、32bが存在する。
【0017】
そして、この連結部32a、32bの肉厚Za、Zbは、結合層6a、6bの厚さWa、Wbより薄い構成としている。
このことにより、図1に示す様に、1対のセパレータ5a、5bにより挟持された際、一方の結合層6a(図上上方側)が、他方の結合層6b(図上下方側)を超えて他方のセパレータ5b側(図上下方側)に移動できる為、より確実にセパレータ間の間隙を小さく抑えることが出来る。
【0018】
また、図2の各部材を重ね合わせた状態を示す図3から明らかなように、一方のシール部材3a(図上上方)の連結部32a長さは、他方のシール部材3b(図上下方)の連結部32bの長さに、結合層6bの長さをプラスした長さより長くなる設計としている。
しかし、他方のシール部材3b(図上下方)の連結部32bの長さは、極力短いことが、燃料電池の発電効率を高める上で好ましい。
同様に、一方のシール部材3a(図上上方)の連結部32aの長さは、各々の結合層6a、6bが重なり合う事が避けられる範囲の最小の長さが好ましく、あまり長くなり過ぎると、燃料電池の発電効率を高める上で好ましくない。
【0019】
この様な構成とすることにより、図3に示す様に、各々の結合層6a、6bが、互いに重なり合う事が無い。
この結果、図1に示す様に、本発明の燃料電池用シール構造体が、1対のセパレータ5a、5bにより挟持された際、2種類の結合層6a、6bが相互に重なり合うことが無い為、セパレータ5a、5b間の間隙を、より小さく出来る効果を発揮出来る。
また、1対のセパレータ5a、5bの間隙Xは、結合層6a、の厚さWaと結合層6bの厚さWbの合計厚さよりも小さく設計されている。
このことにより、セパレータ間の間隙を出来るだけ小さくして、より確実に燃料電池スタック全体を小型化することが出来る。
【0020】
更に、図3に示す様に、セパレータ5a、5bにより挟持される前の両リップ部31a、31b間の間隙Vは、セパレータ5a、5bにより挟持される前の2枚のガス拡散層2a、2bと高分子電解質膜1とを重ね合わせた合計厚さYよりも大きい設計としている。
このことにより、より確実に、反応ガスの外部への漏洩を阻止することが出来る。
【0021】
また、シール部材3a、3bは、一般的な合成ゴムや、TPEが用いられるが、成形性の観点から、液状ゴムが好ましい。
液状ゴムとしては、液状シリコーンゴム、液状フッ素ゴム、液状EPDM、液状ACM等である。
【0022】
更に、セパレータ5a、5bの材質としては、金属材、カーボン材等適宜選択して用いられるが、本発明に係る燃料電池用シール構造体は、脆弱なカーボン材に好適に用いられる。
【0023】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0024】
1 高分子電解質膜
2a、2b ガス拡散層
3a、3b シール部材
4a、4b 反応ガス誘導通路
5a、5b セパレータ
6a、6b 結合層
31a、31b リップ部
32a、32b 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に配置した高分子電解質膜(1)と、前記高分子電解質膜(1)の両面に配置した2枚のガス拡散層(2a)、(2b)と、前記ガス拡散層(2a)、(2b)の周縁に、自身のゴム部材の一部が含浸した結合層(6a)、(6b)を介して前記ガス拡散層(2a)、(2b)と一体化したゴム状弾性材製シール部材(3a)、(3b)とが、マニホールド入り口から出口へ通じる反応ガス誘導通路(4a)、(4b)を設けた1対のセパレータ(5a)、(5b)により挟持されている燃料電池用シール構造体において、
前記2枚のガス拡散層(2a)、(2b)の各々に、別個独立に形成した前記結合層(6a)、(6b)を介して2種類のシール部材(3a)、(3b)を設けると共に、前記各々の結合層(6a)、(6b)を、互いに重なり合う事が無い様に配置したことを特徴とする燃料電池用シール構造体。
【請求項2】
前記1対のセパレータ(5a)、(5b)の間隙(X)は、前記結合層(6a)の厚さ(Wa)と前記結合層(6b)の厚さ(Wb)の合計厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1記載の燃料電池用シール構造体。
【請求項3】
前記シール部材(3a)、(3b)は、前記セパレータ(5a)、(5b)と当接するリップ部(31a)、(31b)を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池用シール構造体。
【請求項4】
前記シール部材(3a)、(3b)は、前記リップ部(31a)、(31b)と前記結合層(6a)、(6b)とを連結している連結部(32a)、(32b)が存在すると共に、前記連結部(32a)、(32b)の肉厚(Za)、(Zb)は、前記結合層(6a)、(6b)
の厚さ(Wa)、(Wb)より薄いことを特徴とする請求項3記載の燃料電池用シール構造体。
【請求項5】
前記シール部材(3a)、(3b)が液状ゴムを用いて成形されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の燃料電池用シール構造体。
【請求項6】
前記セパレータ(5a)、(5b)が、カーボン材製であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の燃料電池用シール構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−170973(P2011−170973A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30772(P2010−30772)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】