説明

燃料電池用膜電極接合体の製造方法及びその装置

【課題】 電解質膜に電極層を塗工してなる膜電極接合体に皺が発生するのを防止することができる燃料電池用膜電極接合体の製造装置を提供する。
【解決手段】 固体高分子の電解質膜2に溶媒としてアルコールを含む電極ペースト1を塗工して電極層を形成する燃料電池用膜電極接合体の製造装置であって、電極ペースト1が塗工された電解質膜2が変形しないように固定すると共に電解質膜2を乾燥させる3つの第1固定ローラ3と、これらの第1固定ローラ3により送り出された電解質膜2が変形しないように固定すると共に電解質膜2に水分を吸収させる2つの第2固定ローラ4と、これらの固定ローラ3,4の間などに配設された6つの小径のローラ5などを備えてなる。水分の電解質膜2への吸収は、常温環境下で放置することにより行う。なお、作業環境の湿度を30%〜60%に調整しておくことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子の電解質膜に電極層を塗工してなる燃料電池用膜電極接合体の製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、近年車両などの動力源として開発が進められている。燃料電池に使用する膜電極接合体は、触媒をアルコールなどの溶媒に分散させた電極インクやペーストを、ダイコータなどを用いて電解質膜の表面に塗工することにより作製される。ところが、電解質膜は電極インク中の溶媒や水分などの吸収状態により膨潤・収縮を生じ易いという性質があり、電極インクの塗工・乾燥により電解質膜に皺が発生するという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するために、特許文献1には、電解質膜が面方向に変形しないよう、電解質膜を粘着シート上に固着して電極インクの塗工・乾燥を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、ヒータ付きプレートに電解質膜の周囲を押えて取り付け、電極インクを塗工する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−339062号公報
【特許文献2】特開2007−53064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の技術のように、電解質膜を面方向に変形しないように固定して電極インクを電解質膜に塗工・乾燥するだけでは、電解質膜に発生する皺を防止するには十分ではなかった。例えば、乾燥後に電解質膜の固定を直ちに解放すると、その後に皺が生じる場合があった。
【0006】
これは、電極インクに含まれるアルコールが電解質膜を変性させるため、電極インクが塗工された部分が乾燥により収縮し易くなり、電極インクが塗工されていない部分との間に膨潤・収縮性の差が生じ、乾燥後の電解質膜が水分を吸収する際の電極インクの塗工部・非塗工部との間の内部応力に差が生じるためであると考えられる。
【0007】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電解質膜に電極層を塗工してなる膜電極接合体に皺が発生するのを防止することができる燃料電池用膜電極接合体の製造方法及びその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、固体高分子の電解質膜に電極層を塗工してなる燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、電解質膜に溶媒としてアルコールを含む電極ペーストを塗工する塗工工程と、この塗工工程で電極ペーストが塗工された電解質膜を固定部材に固定して乾燥させる乾燥工程と、この乾燥工程で乾燥させた電解質膜を固定部材に固定しつつ電解質膜に水分を吸収させる吸湿工程を備えるものである。
【0009】
また、前記吸湿工程では、前記電解質膜を加熱せず、雰囲気中の水分を前記電解質膜に吸収させることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、固体高分子の電解質膜に溶媒としてアルコールを含む電極ペーストを塗工して電極層を形成する燃料電池用膜電極接合体の製造装置であって、前記製造装置は、電解質膜に塗工された電極ペーストを乾燥させる乾燥部と、この乾燥部を経た電解質膜に水分を吸収させる吸湿部を備え、前記乾燥部は電極ペーストが塗工された電解質膜が変形しないように固定する一つ又は複数の第1固定手段と、この第1固定手段に固定された電解質膜を乾燥させる乾燥手段を備え、前記吸湿部は乾燥された電解質膜が変形しないように固定する第2固定手段を備えるものである。
【0011】
前記乾燥手段は加熱乾燥炉であり、前記第1固定手段は平板の載置台の表面に電解質膜を固定する固定ステージであり、前記第2固定手段として前記第1固定手段を用い、前記第1固定手段を前記加熱乾燥炉から前記吸湿部へ移動させる移動手段を備えることができる。
【0012】
また、前記乾燥手段は加熱乾燥炉であり、前記第1固定手段および前記第2固定手段は、側面に吸引孔を設け、この吸引孔から真空吸引して電解質膜を固定する固定ローラであり、前記第1固定手段の固定ローラは前記加熱乾燥炉内に設けられ、前記第2固定手段の固定ローラは前記加熱乾燥炉外の前記吸湿部に設けることができる。
【0013】
また、前記第1固定手段および前記第2固定手段は、側面に吸引孔を設け、この吸引孔から真空吸引して電解質膜を固定する固定ローラであり、前記乾燥手段は、前記第1固定手段の固定ローラを加熱させることにより電解質膜を乾燥させ、前記第2固定手段の固定ローラは前記吸湿部を設けることができる。
【0014】
更に、前記固定ローラの間に前記固定ローラより小径のローラを配設し、これらの小径のローラの中心は前記固定ローラの中心を通る直線上に位置することができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、面内方向に変形しないよう固定部材に電解質膜を固定して乾燥させた後、電解質膜を固定したまま電解質膜に水分を吸収させる工程を設けることにより、面内変形が抑制された状態で水分が吸収される。すると、電極ペーストの塗工部・非塗工部の膨潤・収縮性による内部応力の差は、電解質膜に水分が吸収されるに従い、減少していく。そこで、電解質膜の吸水量が所定量を超えた段階で電解質膜の固定を解放すると、その後の皺の発生を抑制することができる。
【0016】
また、電解質膜を加熱せず、雰囲気中の水分を電解質膜に吸収させたりすれば、強制的に水分を供給せず、電解質膜に自発的に水分を吸収させることにより、電解質の膨潤が均質になり、局所的な内部応力差の発生を抑制することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、電解質膜を固定した状態のまま、途中で固定を解放することなく電解質膜の乾燥・吸湿を行うことができるので、皺の発生を抑制することができる。
【0018】
また、第1固定手段および第2固定手段を、側面に吸引孔を設け、この吸引孔から真空吸引して電解質膜を固定する固定ローラとしたり、固定ローラ自体が電解質膜を加熱する加熱ローラとしたりすれば、電解質膜を連続体の状態で製造することができ、製造効率を高めることができる。
【0019】
更に、固定ローラの間に、固定ローラより小径のローラを配設し、これらの小径のローラの中心を固定ローラの中心を通る直線上に位置させて、小径のローラを介して固定ローラ間を電解質膜の連続体が通るようにすれば、固定ローラ間の電解質膜の連続体の非固定状態の部分を短くすることができ、電解質膜の皺の発生を一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第1実施の形態の概要説明図
【図2】小径のローラの作用説明図で、(a)は小径のローラを固定ローラの間に配設した場合、(b)は小径のローラを配設しない場合
【図3】本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第2実施の形態の説明図で、(a)は固定ステージの説明図、(b)は全体の説明図
【図4】本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第3実施の形態の概要説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第1実施の形態は、図1に示すように、電極ペースト(電極インク)1が塗工された電解質膜2が変形しないように固定すると共に電解質膜2を乾燥させる3つの第1固定ローラ3と、これらの第1固定ローラ3により送り出された電解質膜2が変形しないように固定すると共に電解質膜2に水分を吸収させる2つの第2固定ローラ4と、これらの固定ローラ3,4の間などに配設された6つの小径のローラ5などを備えてなる。
【0022】
ここで、6は巻き出し用の電解質膜ロール、7は巻き取られた電解質膜ロール、8は電解質膜2に電極ペースト1を塗布するダイヘッド、9は第1固定ローラ3と同じ構造の塗工用ローラ、10はガイドローラ、11は電極ペースト1を電解質膜2に施したペースト塗工部である。
【0023】
第1固定ローラ3と第2固定ローラ4は、その側面に吸引孔(不図示)が設けられ、この吸引孔から真空吸引して電解質膜2を吸引固定する。また、第1固定ローラ3は、ローラ自身が昇温する加熱ローラであり、固定している電解質膜2を乾燥させる。一方、第2固定ローラ4は、電解質膜2を吸引固定するものの、電解質膜2を加熱せず電解質膜2に水分を吸収させる。小径のローラ5は、固定ローラ3,4より小径で、その中心は固定ローラ3,4の中心を通る直線上に位置している。
【0024】
電解質膜2は、プロトン伝導性を有する高分子よりなり、例えばデュポン社製のナフィオン(製品名)などのパーフルオロスルホン酸系高分子膜を用いることができる。電極ペースト1は、白金或いは白金と他の金属との合金などの触媒と、電解質膜2と同様のプロトン伝導性を有する高分子を混合し、水・アルコールなどの溶媒に分散させたものである。
【0025】
アルコールとしては、エタノールやプロパノールが好適に用いられる。なお、電極ペースト1中には触媒と高分子の他、炭素繊維などの他の材料を加えることもできる。また、触媒としては、白金やその合金を炭素粒子に坦持させたものを用いることもできる。
【0026】
以上のように構成された本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第1実施の形態の作用及び燃料電池用膜電極接合体の製造方法について説明する。先ず、電解質膜ロール6から巻き出され、塗工用ローラ9に吸引固定された電解質膜2の一面に電極ペースト1をダイコータが備えるダイヘッド8により塗工する(塗工工程)。電解質膜2に塗工された電極ペースト1の塗工形状は、適宜決定することができるが、例えば方形形状とすることができる。
【0027】
次いで、電極ペースト1中の溶媒成分を蒸発させ、電極層を形成するために電極ペースト1を塗工した電解質膜2を、3つの第1固定ローラ3に順次吸引固定した状態で加熱したローラにより乾燥させる(乾燥工程)。電解質膜2を第1固定ローラ3に吸引固定させることにより、電解質膜2の面内方向の変形が生じないようにすることができる。乾燥は、電解質膜2を例えば80〜120℃に加熱することにより行われる。
【0028】
次いで、3つの第1固定ローラ3で乾燥させた電解質膜2を、更に2つの第2固定ローラ4に順次吸引固定した状態で電解質膜2に水分を吸収させる(吸湿工程)。水分の電解質膜2への吸収は、常温環境下で放置することにより行う。なお、作業環境の湿度を30%〜60%に調整しておくことが好ましい。
【0029】
このように作業環境湿度を調整することにより、水分の吸収条件を一定にすることができ、また作業環境湿度を60%以下とすることで、急激な水分吸収を防止できるため、皺の防止効果を一層高めることができる。
【0030】
次いで、このような状態で電解質膜2に水分を吸収させ、電解質膜2の吸水量が所定量を超えた時点(例えば、飽和吸水量の30%以上になった時点)で、第2固定ローラ4による電解質膜2の固定を解放する。このように、電解質膜2の乾燥後、電解質膜2を直ちに固定から解放させることなく、固定した状態で水分を吸収させることにより皺の発生を抑制することができる。
【0031】
なお、小径のローラ5は、図2(a)に示すように、第1固定ローラ3よりも小径で第1固定ローラ3の間に配設されている。更に、小径のローラ5の中心は、第1固定ローラ3の中心を通る直線12上に位置している。小径のローラ5は、第1固定ローラ3と第2固定ローラ4の間及び第2固定ローラ4の間についても同様に配設されている。
【0032】
このように、小径のローラ5を介して固定ローラ3間を電解質膜2の連続体が通るようにすれば、固定ローラ3間の電解質膜2の連続体の非固定状態の部分(渡りの部分)13を短くすることができる。すると、図2(b)に示すように、小径のローラ5を用いないために渡り部分13が長くなる場合と比べて、電解質膜2の皺の発生を一層抑制することができる。
【0033】
また、小径のローラ5を介して固定ローラ3間を電解質膜2の連続体が通るようにすれば、図2(a)に示すように、電極ペースト1が固定ローラ3と直接接触することがない。一方、小径のローラ5を用いない場合には、図2(b)に示すように、電極ペースト1が接触面の大きい固定ローラ3と直接接触することになり、加熱された固定ローラ3によって電極ペースト1が乾燥され、固定ローラ3に付着してしまう虞がある。
【0034】
次に、本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第2実施の形態は、図3に示すように、電解質膜2が変形しないように固定する固定ステージ21と、固定ステージ21に固定された状態で電極インク1が塗工された電解質膜2を乾燥させる加熱乾燥炉22と、電解質膜2を固定した状態の固定ステージ21を加熱乾燥炉22内から加熱乾燥炉22外の吸湿部23へ移動させる移動手段24などを備える。
【0035】
固定ステージ21は、図3(a)に示すように、電解質膜2を載置する平板の載置台25と、載置台25の表面25aに設けられ、電解質膜2をエア吸引するための複数の吸引孔25bを備えてなる。移動手段24としては、電解質膜2を固定した固定ステージ21を載置して搬送するコンベアなどが用いられる。
【0036】
以上のように構成された本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第2実施の形態の作用について説明する。先ず、固定ステージ21に固定された状態の電解質膜2に電極インク1を塗工する(塗工工程)。
【0037】
次いで、電解質膜2を固定した状態の固定ステージ21をコンベア24により加熱乾燥炉22に投入し、電極インク1が塗工された電解質膜2を乾燥させる(乾燥工程)。乾燥作業は、電極インク1中の溶媒成分を蒸発させ、電極層を形成するために電解質膜2を例えば80〜120℃に加熱することにより行われる。
【0038】
次いで、乾燥した電解質膜2を固定した状態の固定ステージ21をコンベア24により加熱乾燥炉22内から加熱乾燥炉22外の吸湿部23へ移動させる。吸湿部23では、水分の電解質膜2への吸収は、常温環境下で放置することにより行う(吸湿工程)。なお、作業環境の湿度を30%〜60%に調整しておくことが好ましい。
【0039】
このように作業環境湿度を調整することにより、水分の吸収条件を一定にすることができ、また作業環境湿度を60%以下とすることで、急激な水分吸収を防止できるため、皺の防止効果を一層高めることができる。
【0040】
次いで、このような状態で電解質膜2に水分を吸収させ、電解質膜2の吸水量が飽和吸水量の30%以上になった時点で、固定ステージ21による電解質膜2の固定を解放する。
【0041】
次に、本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第3実施の形態は、図4に示すように、電極ペースト(電極インク)1が塗工された電解質膜2が変形しないように固定する3つの第1固定ローラ30を加熱乾燥炉31内に配置し、この加熱乾燥炉31より送り出された電解質膜2が変形しないように固定すると共に電解質膜2に水分を吸収させる2つの第2固定ローラ32を吸湿部33に配置している。
【0042】
第1固定ローラ30と第2固定ローラ32の側面には、吸引孔(不図示)が設けられ、この吸引孔から真空吸引して電解質膜2を吸引固定する。その他の構成は、図1に示す第1実施の形態の構成と同様である。
【0043】
以上のように構成された本発明に係る燃料電池用膜電極接合体の製造装置の第3実施の形態の作用について説明する。先ず、電解質膜ロール6から巻き出され、塗工用ローラ9に吸引固定された電解質膜2の一面に電極ペースト1をダイコータが備えるダイヘッド8により塗工する(塗工工程)。電解質膜2に塗工された電極ペースト1の塗工形状は、適宜決定することができるが、例えば方形形状とすることができる。
【0044】
次いで、電極ペースト1中の溶媒成分を蒸発させ、電極層を形成するために電極ペースト1を塗工した電解質膜2を、加熱乾燥炉31内に配置した3つの第1固定ローラ30に順次吸引固定した状態で加熱し乾燥させる(乾燥工程)。電解質膜2を第1固定ローラ30に吸引固定させることにより、電解質膜2の面内方向の変形が生じないようにすることができる。乾燥は、電解質膜2を例えば80〜120℃に加熱することにより行われる。
【0045】
次いで、加熱乾燥炉31で乾燥させた電解質膜2を、更に吸湿部33に配置した2つの第2固定ローラ32に順次吸引固定した状態で電解質膜2に水分を吸収させる(吸湿工程)。水分の電解質膜2への吸収は、常温環境下で放置することにより行う。なお、作業環境の湿度を30%〜60%に調整しておくことが好ましい。
【0046】
このように作業環境湿度を調整することにより、水分の吸収条件を一定にすることができ、また作業環境湿度を60%以下とすることで、急激な水分吸収を防止できるため、皺の防止効果を一層高めることができる。
【0047】
次いで、このような状態で電解質膜2に水分を吸収させ、電解質膜2の吸水量が所定量を超えた時点(例えば、飽和吸水量の30%以上になった時点)で、第2固定ローラ32による電解質膜2の固定を解放する。このように、電解質膜2の乾燥後、電解質膜2を直ちに固定から解放させることなく、固定した状態で水分を吸収させることにより皺の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、電解質膜を固定した状態のまま、途中で固定を解放することなく電解質膜の乾燥・吸湿を行うことができるので、皺の発生が抑制される燃料電池用膜電極接合体の製造方法及びその装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…電極ペースト(電極インク)、2…電解質膜、3,30…第1固定ローラ、4,32…第2固定ローラ、5…小径のローラ、6…巻き出し用の電解質膜ロール、7…巻き取られた電解質膜ロール、8…ダイヘッド、9…塗工用ローラ、11…ペースト塗工部、12…直線、21…固定ステージ21、22,31…加熱乾燥炉、23,33…吸湿部、24…コンベア(移動手段)、25…載置台、25a…表面、25b…吸引孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子の電解質膜に電極層を塗工してなる燃料電池用膜電極接合体の製造方法であって、電解質膜に溶媒としてアルコールを含む電極ペーストを塗工する塗工工程と、この塗工工程で電極ペーストが塗工された電解質膜を固定部材に固定して乾燥させる乾燥工程と、この乾燥工程で乾燥させた電解質膜を固定部材に固定しつつ電解質膜に水分を吸収させる吸湿工程を備えることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造方法において、前記吸湿工程は、前記電解質膜を加熱せず、雰囲気中の水分を前記電解質膜に吸収させることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
【請求項3】
固体高分子の電解質膜に溶媒としてアルコールを含む電極ペーストを塗工して電極層を形成する燃料電池用膜電極接合体の製造装置であって、前記製造装置は、電解質膜に塗工された電極ペーストを乾燥させる乾燥部と、この乾燥部を経た電解質膜に水分を吸収させる吸湿部を備え、前記乾燥部は電極ペーストが塗工された電解質膜が変形しないように固定する一つ又は複数の第1固定手段と、この第1固定手段に固定された電解質膜を乾燥させる乾燥手段を備え、前記吸湿部は乾燥された電解質膜が変形しないように固定する第2固定手段を備えることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造装置において、前記乾燥手段は加熱乾燥炉であり、前記第1固定手段は平板の載置台の表面に電解質膜を固定する固定ステージであり、前記第2固定手段として前記第1固定手段を用い、前記第1固定手段を前記加熱乾燥炉から前記吸湿部へ移動させる移動手段を備えることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造装置。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造装置において、前記乾燥手段は加熱乾燥炉であり、前記第1固定手段および前記第2固定手段は、側面に吸引孔を設け、この吸引孔から真空吸引して電解質膜を固定する固定ローラであり、前記第1固定手段の固定ローラは前記加熱乾燥炉内に設けられ、前記第2固定手段の固定ローラは前記加熱乾燥炉外の前記吸湿部に設けられていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造装置。
【請求項6】
請求項3に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造装置において、前記第1固定手段および前記第2固定手段は、側面に吸引孔を設け、この吸引孔から真空吸引して電解質膜を固定する固定ローラであり、前記乾燥手段は、前記第1固定手段の固定ローラを加熱させることにより電解質膜を乾燥させ、前記第2固定手段の固定ローラは前記吸湿部を設けていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造装置において、前記固定ローラの間に前記固定ローラより小径のローラを配設し、これらの小径のローラの中心は前記固定ローラの中心を通る直線上に位置することを特徴とする燃料電池用膜電極接合体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−164422(P2012−164422A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21555(P2011−21555)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】