説明

燃料電池用金属多孔体

【課題】
平坦部を形成してガスケットと一体化するか、分離板及びガスケットと一体化することにより、ハンドリング及び作業性に優れ、正確で精密な積層が可能で、セル性能の安定性、気密性、及び生産性を向上できる燃料電池用金属多孔体を提供する。
【解決手段】
本発明による燃料電池用金属多孔体は、膜電極接合体の反応領域に接合する反応領域部分が多孔体構造で形成され、反応領域に該当する多孔体部分を除いた残りの外周縁部分が平らな面構造の平坦部であることを特徴とする。このような本発明の燃料電池用金属多孔体は、外周縁部分に沿って平らな面構造の平坦部が形成されるため、鋭い切断面をなくして膜電極接合体の損傷を防止し、ガスケットを成形して一体化を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用金属多孔体に係り、より詳しくは、ハンドリング及び作業性に優れ、正確で精密な積層が可能で、燃料電池スタックの生産性を向上できる燃料電池用金属多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料が持っている化学エネルギーを燃焼により熱に変えず、燃料電池スタック内で電気化学的な反応により電気エネルギーに変換させる一種の発電装置であり、産業用、家庭用、及び車両駆動用電力を供給し、それだけでなく小型の電気/電子製品、特に携帯用装置の電力供給にも適用される。
【0003】
このような燃料電池としては、車両を駆動させるための電力供給源として最も多く研究されている高分子電解質膜燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)が挙げられるが、これは、水素イオンが移動する電解質膜を中心に、膜の両側に電気化学反応が起こる触媒電極層が設けられた膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)、反応気体を均一に分布させ、発生した電気エネルギーを伝達する気体拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)、反応気体及び冷却水の気密性と適正の締結圧を維持するためのガスケット及び締結機構、また反応気体及び冷却水を移動させる分離板(Bipolar Plate)を含んで構成される。
【0004】
この中、気体拡散層は、燃料電池の高分子電解質膜の表面に酸化極及び還元極のために塗布された触媒層の外表面に接着され、反応気体の水素及び空気(酸素)の供給、電気化学反応により生成された電子の移動、反応生成水の排出により燃料電池セル(Cell)内のフラッディング(Flooding)を最小化するなど、様々な機能を行う。
【0005】
最近、燃料電池用気体拡散層として炭素繊維(Carbon Fiber)の代わりに網状の構造を有する薄い金属板、すなわちエキスパンドメタル(Expanded Metal)及び金属メッシュ(Metal Mesh)などの多孔体構造物を適用する研究が国内外で盛んに進められている。(特許文献1)
【0006】
図1は、燃料電池用気体拡散層に用いられる金属多孔体としてエキスパンドメタル(図1の(a))と金属メッシュ(図1の(b))を示しており、エキスパンドメタル1は金属板を金型内でプレス(Pressing)またはロール(Rolling)加工して矩形孔1aを形成した多孔体板の例であり、金属メッシュ2は複数の金属ワイヤー2aを網状に交差して固定した多孔体板の例である。
【0007】
このような金属多孔体は、規則的な多孔体構造を有するため、セル内で使用する時、均一な性能を発揮でき、セル間のバラツキも減少させる利点がある。また、反応気体の拡散性に優れ、水の排出が容易であるため、セルの性能を向上させる。
【0008】
上記のような金属多孔体1,2を気体拡散層に用いる場合、通常と同様に、膜電極接合体、分離板、ガスケットなどのセルの構成部品と共に積層して燃料電池スタックを完成する。
【0009】
従来、図1に示す金属多孔体1,2を分離板内の反応領域(膜電極接合体の反応活性領域)の大きさに合わせて切断し、分離板上に単に載置するように組み立てたが、この時、金属多孔体1,2は、セルのどの構成品とも一体化されていない独立部品として存在する。
【0010】
しかし、金属多孔体を使用すると、素材の特性上、切断後に外周縁部分が非常に鋭くなるため、既存の独立部品の金属多孔体を適用する場合、セルの積層時、鋭い外郭形状によりハンドリング(Handling)及び作業性に問題が生じる。
【0011】
さらに、セルの積層により接触するようになる膜電極接合体(MEA)にピンホールなどの損傷をもたらし、燃料電池スタックの性能を低下させるなどの問題を引き起こす。
【0012】
また、周辺の部品と一体化されていない独立部品として提供されるため、セルの積層時に配列が不規則になるなど、正確で精密な積層が困難であり、空気吸入法などの自動組立(積層)方式を適用することも不可能であるため、スタックの生産性を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−40169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、ハンドリング及び作業性に優れた燃料電池用金属多孔体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、正確で精密な積層及び自動組立方式の適用が可能で、スタックの生産性を向上させる燃料電池用金属多孔体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するための本発明の燃料電池用金属多孔体は、金属多孔体で構成されるセルが積層されてなる燃料電池において、膜電極接合体の反応領域に接合する反応領域部分が多孔体構造で形成され、前記反応領域に該当する多孔体部分を除いた残りの外周縁部分が平らな面構造の平坦部であることを特徴とする。
【0016】
好ましい実施例では、前記平坦部において、前記多孔体部分の周辺にガスケットが一体に成形され、ガスケットと一体に接合されることを特徴とする。
【0017】
また、両端に位置する平坦部に、分離板の水素、空気、冷却水用マニホールドホールと一致する位置及び大きさをもって、水素、空気、冷却水が通過するマニホールドホールが形成され、前記平坦部の各マニホールドホールが、セルの積層後、分離板のマニホールドホールと共に水素、空気、冷却水用入口マニホールドと出口マニホールドを構成することを特徴とする。
【0018】
また、前記平坦部において、各マニホールドホールの周辺にガスケットが一体に成形され、マニホールドホールの周辺のガスケットと一体に接合されることを特徴とする。
【0019】
また、前記ガスケットは、金属多孔体の平坦部の両面上に成形して接合されるか、前記平坦部を外郭を含んで両面を囲むように成形して接合されることを特徴とする。
【0020】
また、分離板に積層された状態で、前記ガスケットが前記平坦部と共に前記分離板の外周縁部分を囲むように成形され、前記ガスケットにより分離板がさらに一体化した構造を有することを特徴とする。
【0021】
また、前記平坦部において、ガスケットが成形される位置に沿って貫通孔が形成され、前記貫通孔に充填(Insert)されたガスケットの樹脂により、平坦部の両面に成形されたガスケットと強固に一体化した構造を有することを特徴とする。
【0022】
また、前記平坦部において、ガスケットが成形される位置に沿って貫通孔が形成され、前記平坦部の貫通孔と一致する分離板の位置に貫通孔が形成され、前記分離板に積層された状態で、前記ガスケットが、貫通孔が形成された部分を含んで平坦部と共に分離板の外周縁部分を囲むように成形され、前記貫通孔によりガスケット及び分離板と強固に一体化した構造を有することを特徴とする。
【0023】
また、前記反応領域に該当する多孔体部分がエキスパンドメタルまたは金属メッシュであることを特徴とする。
【0024】
また、前記反応領域に該当する多孔体部分がエキスパンドメタルである場合、前記多孔体部分にだけホールが形成されたエキスパンドメタルとして製作され、ホールが形成されていない外周縁部分の金属板部分は、ホールが形成された多孔体部分に一体化した前記平坦部になることを特徴とする。
【0025】
また、前記反応領域に該当する多孔体部分が金属メッシュである場合、金属メッシュの外周縁部分を薄い金属膜で囲むか、四角枠状の金属部材の開口部の内側溝に金属メッシュの外周縁を係合して組み立てることにより、前記金属膜または金属部材が平坦部になり、前記金属メッシュが多孔体部分になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明による燃料電池用金属多孔体は、外周縁部分に沿って平らな面構造の平坦部が形成された構造であるため、ハンドリング及び作業性に優れた利点がある。
【0027】
また、本発明による平坦部を有する金属多孔体は、鋭い切断面がないため、気体拡散層として用いる場合、膜電極接合体にピンホールなどの損傷をもたらすことを防止し、その結果、スタック性能の低下を防止する。
【0028】
また、本発明による金属多孔体によれば、スタックを組み立てる時、正確で精密に積層し、自動組立方式が適用可能なため、スタックの生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】燃料電池用スタックセル構成部品に用いられる金属多孔体としてエキスパンドメタル(a)と金属メッシュ(b)の例を示す図面である。
【図2】本発明による平坦部を有する金属多孔体を示す平面図である。
【図3】本発明によるガスケット一体型金属多孔体の実施例を示す平面図である。
【図4】本発明によるガスケット一体型金属多孔体の他の実施例を示す平面図である。
【図5】本発明でガスケットとの一体性を向上させた金属多孔体の実施例を説明するための図面である。
【図6】本発明でガスケットとの一体性を向上させた金属多孔体の実施例を説明するための図面である。
【図7】本発明による貫通孔を用いたガスケット一体型金属多孔体の更に他の実施例を示す平面図である。
【図8】本発明によるガスケット一体型金属多孔体と分離板、膜電極接合体の積層状態を示す図面である。
【図9】本発明によるガスケット一体型金属多孔体と分離板、膜電極接合体の積層状態を示す図面である。
【図10】本発明によるガスケット一体型金属多孔体と分離板、膜電極接合体の積層状態を示す図面である。
【図11】本発明によるガスケット一体型金属多孔体と分離板、膜電極接合体の積層状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付した図面を参照し本発明の実施例に対して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施するように詳細に説明する。
【0031】
本発明は、燃料電池スタックのセル構成部品における気体拡散層として用いられる燃料電池用金属多孔体に関し、特に、金属多孔体の外周縁部分に沿って平らな面構造の平坦部が形成された構造を有することを主な特徴とする。
【0032】
図2は、本発明による平坦部を有する金属多孔体を示す平面図であって、(a)は金属多孔体のエキスパンドメタルを用いた例を示し、(b)は他の形態の金属多孔体の金属メッシュを用いた例を示している。
【0033】
また、図2に、平坦部を有する金属多孔体の横断面図(「A−A」断面図、「B−B」断面図)を示した。
【0034】
図2に示すように、本発明による燃料電池用金属多孔体10は、既存のエキスパンドメタルと金属メッシュにおいて、燃料電池内(分離板内)の反応領域(Active Area)(膜電極接合体の触媒層に接合される反応活性領域)に該当する部分を従来と同様に多孔体部分11で形成し、これを除いた残りの部分、すなわち外周縁部分を平らな面構造を有する平坦部12で形成する。
【0035】
この時、素材に複数のホールを形成して製作するエキスパンドメタルの場合は、図2の(a)に示すように、外周縁部分にホールを加工せずに平坦部12が形成される。例えば、素材の金属板を金型内でプレス(Pressing)またはロール(Rolling)加工して複数の矩形孔を形成するが、平坦部に該当する所定の外周縁部分を除き、その内側領域だけ多孔体構造にしてホールを形成する。
【0036】
この場合、ホールが形成されない外周縁部分の金属板は平坦部12になり、ホールが形成される内側領域は燃料電池(分離板)内の反応領域に該当する多孔体部分11になる。
【0037】
一方、金属メッシュの場合は、素材そのものが複数のワイヤーを交差配置して固定した多孔体板であるため、エキスパンドメタルのように素材を用いて外周縁部分に一体型の平坦部を形成することは困難であり、平坦部12を形成するための別途の部材を組み合わせて製作する。
【0038】
すなわち、図2の(b)に示すように、燃料電池用金属多孔体10の中央に金属メッシュ(多孔体部分)11を張って四角枠状の金属部材(平坦部)12を製作し、「B−B」断面図に示すように、前記金属部材12において、矩形開口部の内側溝に金属メッシュ11の外周縁を係合して金属部材12の矩形開口部に金属メッシュ11が位置するように一体型に組み立てることにより、外周縁部分に平坦部12を有する金属メッシュ型の多孔体10を製作することができる。
【0039】
この場合、金属メッシュの外周縁に沿って配置される四角枠状の金属部材12が平坦部になり、金属メッシュ11が反応領域に該当する多孔体部分になる。
【0040】
また、金属メッシュの外周縁部分に沿って前記平坦部12に該当する領域に金属膜を被せて平坦部を形成してもよい。
【0041】
好ましい実施例では、上記のような金属多孔体10は、分離板の全体大きさとほぼ同様の大きさで製作され、セルの積層時、分離板及び膜電極接合体(MEA)に組み立てられるが、金属多孔体10の両端の平坦部12には水素と空気、冷却水が通過するマニホールドホール13が形成される。
【0042】
前記マニホールドホール13は、分離板の水素、空気、冷却水が通過するマニホールドホールと一致する位置及び大きさで形成され、これによって、金属多孔体10の両端の各マニホールドホール13が、セルの積層後、分離板のマニホールドホールと共に、水素、空気、冷却水を各単位セル(分離板の各流路)に供給したり、単位セルから排出したりする燃料電池スタックの入口マニホールド及び出口マニホールドになる。
【0043】
結局、上記のように製作された金属多孔体10は、外周縁部分に沿って平坦部12を有するため、前記平坦部12にガスケットを一体に成形でき、これによって、ガスケット一体型金属多孔体を製造することが可能になる。
【0044】
図3は、本発明によるガスケット一体型金属多孔体の実施例を示す平面図であって、(a)はエキスパンドメタルを用いたガスケット一体型金属多孔体10を、(b)は金属メッシュを用いたガスケット一体型金属多孔体10を示している。
【0045】
前記ガスケット一体型金属多孔体10は、図2のように製作された金属多孔体10(平坦部と多孔体部分が一体化されたもの)を射出金型内に固定した後、ガスケットの素材であるゴム樹脂を平坦部12の表面のガスケット20の位置に沿って射出成形して製作する。
【0046】
このように金属多孔体10の平坦部12にガスケット20を射出して一体に接合するに当たって、金属多孔体10の平坦部の両面にガスケットを射出成形して接合する。
【0047】
図3を参照すると、ガスケット20を反応領域に該当する多孔体部分11と各マニホールドホール13の周辺の全体周縁に沿って射出成形して金属多孔体10と一体に接合した構造が示されている。
【0048】
従来、金属多孔体(平坦部のない構造)にガスケットを射出して一体化することが不可能であったが、本発明では図3に示すように、金属多孔体10の外周縁部分に平坦部12が形成されるため、この平坦部12上にガスケット20を射出成形してガスケット一体型の金属多孔体10を製作することができる。
【0049】
結局、本発明によるガスケット一体型の金属多孔体10を製作して使用することにより、単位セルを積層して燃料電池スタックを組み立てるときの生産性を向上できる利点がある。
【0050】
また、従来の金属多孔体は外周縁部分が鋭いが、本発明による金属多孔体10は、基本的に外周縁部分に沿って平坦部12が形成されるため、セルの積層時、取り扱い性及び作業性に優れ、膜電極接合体の損傷も最小化でき、セル性能の均一性及び安全性が向上する。
【0051】
図4は、本発明によるガスケット一体型金属多孔体の他の実施例を示す平面図であって、(a)はエキスパンドメタルを用いたガスケット一体型金属多孔体10を、(b)は金属メッシュを用いたガスケット一体型金属多孔体10を示している。
図4の実施例は、金属多孔体10において、反応領域の多孔体部分11と、セルの積層後、スタックの入口・出口マニホールドを形成する各マニホールドホール13を除いた平坦部(図2の図面符号「12」)を、その外郭と共に両面全体をガスケット20が囲むようにして一体化した実施例である。
【0052】
図4に示すように、金属多孔体10の両面に、平坦部を囲むようにガスケット20を射出成形することができ、多孔体部分11及び各マニホールドホール13の周辺の平坦部の領域にガスケットの素材であるゴム樹脂を射出して多孔体部分11及び各マニホールドホール13の周辺の平坦部がガスケット20と一体化されたガスケット−金属多孔体の接合体を製作する。
【0053】
このように平坦部にガスケット20を接合したガスケット一体型金属多孔体10は、空気吸入法などの自動積層方式を適用したスタック組立設備の使用を可能にする。
【0054】
一方、図5と図6は、図3のような金属多孔体とガスケットの一体性を向上させた実施例を説明するための図面であって、図5は、ガスケットを接合する前の状態を、図6は、ガスケットを一体に接合した状態をそれぞれ示す。また、図5と図6で、(a)は金属多孔体としてエキスパンドメタルを用いた実施例を、(b)は金属多孔体として金属メッシュを用いた実施例を示す。
【0055】
図5と図6に示すように、金属多孔体10の平坦部12において、ガスケット20が射出される位置に沿って貫通孔14を形成した後、この貫通孔14が埋め立てられるように平坦部12にガスケット20を射出成形するが、射出時にゴム樹脂が貫通孔14内に充填(insert)されるため、金属多孔体10の平坦部12にガスケット20が強固に固定される。
【0056】
特に、金属多孔体10の両面において、それぞれの平坦部12の貫通孔14の位置に沿ってガスケット20が射出成形されるため、金属多孔体10の両面のガスケット20が貫通孔14を介して連結して一体化され、強固に固定されることになる。
【0057】
前記貫通孔14は、平坦部12におけるガスケット20が接合される位置、すなわち反応領域の多孔体部分11及び各マニホールドホール13の周辺に所定間隔で複数形成される。本発明の実施例では円形の貫通孔14が示されているが、貫通孔の形状は三角形、四角形など様々な形状にしてもよく、貫通孔の個数、大きさ、間隔なども金属多孔体の大きさに応じて変えてもよい。本発明では、貫通孔の形状や個数、大きさ、間隔などに対しては特に限定しない。
【0058】
また、ガスケット20の形状及び大きさも金属多孔体10の大きさなどを考慮して多様に選択適用してもよく、多孔体部分11と各マニホールドホール13の気密性を維持できる構造であれば、本発明で特に限定しない。
【0059】
図7は、本発明による貫通孔を用いたガスケット一体型金属多孔体の更に他の実施例を示す平面図であって、図6のように貫通孔(図6の図面符号「14」)を形成した後、金属多孔体10の平坦部(図6の図面符号「12」)をガスケット20により囲むように一体化した実施例を示している。
【0060】
図7に示すように、金属多孔体10の両面に、平坦部を囲むようにガスケット20を射出成形することができ、多孔体部分11及び各マニホールドホール13の周辺の平坦部の領域にガスケットの素材であるゴム樹脂を射出して多孔体部分11及び各マニホールドホール13の周辺の平坦部がガスケットにより一体化されたガスケット−金属多孔体の接合体を製作することができる。
【0061】
一方、図8から図11は、本発明によるガスケット一体型金属多孔体10、分離板30、膜電極接合体40の積層状態を示す図面であって、本発明の金属多孔体10は、ガスケット20と一体に接合して積層してもよく(図8及び図10参照)、金属多孔体10、ガスケット20、分離板30を一体に接合して積層してもよい(図9及び図11参照)。
【0062】
このように本発明は、ガスケット一体型金属多孔体10と、分離板30がさらに一体化された金属多孔体10、すなわちガスケット20及び分離板30が一体型である金属多孔体10を含み、これらを膜電極接合体40と共に繰り返し積層してスタックを構成する。
【0063】
図8と図9は、平面型金属分離板を、図10と図11は、流路型金属分離板をそれぞれ示しており、図2の「A−A」、「B−B」線と同一方向から見たときの積層構造の断面図を示す。
【0064】
各図面で(a)はガスケット20が一体に接合された金属多孔体10の使用例を、(b)はガスケット20と共に分離板30が一体化された金属多孔体10の使用例を示す。
【0065】
図8の(a)は、図5に示すように、金属多孔体10の平坦部12に貫通孔14を形成し、図6に示すように、ガスケット20を射出して貫通孔14によりガスケット20と金属多孔体10を強固に一体化したガスケット−金属多孔体の接合体を用いた例を示す。
【0066】
ここで、ガスケット20と一体化された金属多孔体10としてエキスパンドメタルまたは金属メッシュが用いられ、図面ではガスケット20が貫通孔の位置に沿って射出された図6のガスケット一体型金属多孔体10が積層されているが、このような図6のガスケット一体型金属多孔体の代わりに、貫通孔14を含んで平坦部を囲むようにガスケット20を射出成形した図7のガスケット一体型金属多孔体10が用いられてもよい。
【0067】
積層状態は、図8の(a)に示すように、膜電極接合体40の両側にガスケット一体型金属多孔体10が積層され、ガスケット一体型金属多孔体10の外側に分離板30が積層された構造である。
【0068】
すなわち、分離板30、ガスケット一体型金属多孔体10、膜電極接合体40、ガスケット一体型金属多孔体10、分離板30の順で繰り返し積層され、この時、金属多孔体10に一体に接合されたガスケット20が、分離板30と膜電極接合体40の高分子電解質膜41に接合された状態で気密性を維持することになる。
【0069】
図9の(a)は、貫通孔を形成せずに一体化したガスケット−金属多孔体の接合体を用いた例、すなわち図3のガスケット−金属多孔体の接合体を用いた例を示している。
【0070】
ここで、ガスケット一体型金属多孔体10は、図3に示すように、反応領域(膜電極接合体の反応活性領域)の多孔体部分11と各マニホールドホール(図9には図示せず、図3の図面符号「13」)の周縁に沿ってガスケット20を射出成形して製造したものであるが、このようなガスケット一体型金属多孔体10の代わりに平坦部12を囲むようにガスケット(図7の図面符号「20」)を射出成形して製造したガスケット一体型金属多孔体を用いてもよい(図7の実施例で貫通孔を省略した構造)。
【0071】
これは、燃料電池スタックを組み立てる時、分離板30、ガスケット一体型金属多孔体10、膜電極接合体40、ガスケット一体型金属多孔体10、分離板30の順で繰り返し積層されることが図8の(a)と同様である。
【0072】
反面、図8の(b)は、分離板30の外周縁部分に、金属多孔体10の貫通孔14と一致する別途の貫通孔31を形成した後、積層された状態の金属多孔体10と分離板30における貫通孔の位置にガスケット20を射出成形することで、ガスケット20により金属多孔体10と分離板30が一体に接合されたガスケット−分離板−金属多孔体の接合体を使用した例を示す。
【0073】
図面に示すように、金属多孔体10が分離板30に積層された状態で、貫通孔14,31の位置を含む金属多孔体10の平坦部12と分離板30の外周縁部分にガスケット20を射出成形し、両面に射出されたガスケット20が貫通孔14,31により連結されることにより、分離板30をさらに一体化して製作することができる。
【0074】
この場合、燃料電池スタックを組み立てる時、膜電極接合体40を挟んで膜電極接合体の両側にガスケット20−分離板30−金属多孔体10の接合体が配置されるように積層するが、スタックが組み立てられた状態で全体的に膜電極接合体40の両側に金属多孔体10が、金属多孔体10の外側に分離板30が配置される積層構造となる。
【0075】
すなわち、分離板30、金属多孔体10、膜電極接合体40、金属多孔体10、分離板30の順で繰り返し積層される。
【0076】
図8の(b)には、ガスケット20が貫通孔14,31の位置に沿って射出されたガスケット−分離板−金属多孔体接合体が示されているが、このようなガスケット−分離板−金属多孔体接合体の代わりに、貫通孔と共に金属多孔体の平坦部及び分離板の外周縁部分を囲むようにガスケットを射出成形した図7のガスケット−分離板−金属多孔体接合体を用いてもよい(図9の(b)で貫通孔を追加した構造)。
【0077】
次に、図9の(b)は、貫通孔を形成せずに一体化したガスケット20−分離板30−金属多孔体10の接合体を示した例である。
【0078】
ここで、ガスケット20−分離板30−金属多孔体10の接合体は、ガスケット20により分離板30と金属多孔体10を一体化するために、金属多孔体10の平坦部12及び分離板30の外周縁部分を共に囲むようにガスケット20を射出成形して一体化したものである。
【0079】
この場合、図9の(a)に示すように、燃料電池スタックを組み立てる時、膜電極接合体40を挟んで膜電極接合体の両側にガスケット20−分離板30−金属多孔体10の接合体が配置されるように積層するが、スタックが組み立てられた状態で全体的に膜電極接合体40の両側に金属多孔体10が、金属多孔体10の外側に分離板30が配置される積層構造となる。
【0080】
すなわち、分離板30、金属多孔体10、膜電極接合体40、金属多孔体10、分離板30の順で繰り返し積層される。
【0081】
図8と図9の(b)に示すように、金属多孔体と一体化された分離板を用いる場合、分離板のマニホールドホールの周辺に沿ってガスケットが一体に成形される。
【0082】
一方、図10と図11は、図8と図9の平板型金属分離板の代わりに流路型金属分離板を用いたが、図8と図9の平板型金属分離板を用いた場合の一体化接合構造及び積層構造とほぼ同様である。
【0083】
すなわち、図10及び図11の(a)に示すガスケット20と金属多孔体10の一体化接合構造、及びガスケット20−金属多孔体10の接合体と膜電極接合体40、分離板30の積層順序が、図8及び図9の(a)とほぼ同様であり、図10及び図11の(b)に示すガスケット20と分離板30、金属多孔体10の一体化接合構造、及びガスケット20−分離板30−金属多孔体10の接合体と膜電極接合体40の積層順序が図8及び図9の(b)とほぼ同様である。
【0084】
図10は、貫通孔14,31を形成して一体化した構造、図11は、貫通孔を形成せずに一体化した構造である。
【0085】
以上、本発明の実施例に対して詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義する本発明の基本概念を用いた様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、ハンドリング及び作業性に優れ、正確で精密な積層が可能で、燃料電池スタックの生産性を向上できる燃料電池用金属多孔体に関する分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 金属多孔体
11 多孔体部分(反応領域)
12 平坦部
14 貫通孔
20 ガスケット
30 分離板
31 貫通孔
40 膜電極接合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属多孔体で構成されるセルが積層されてなる燃料電池において、
膜電極接合体の反応領域に接合する反応領域部分が多孔体構造で形成され、前記反応領域に該当する多孔体部分を除いた残りの外周縁部分が平らな面構造の平坦部であることを特徴とする燃料電池用金属多孔体。
【請求項2】
前記平坦部において、前記多孔体部分の周辺にガスケットが一体に成形され、ガスケットと一体に接合されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項3】
両端に位置する平坦部に、分離板の水素、空気、冷却水用マニホールドホールと一致する位置及び大きさをもって、水素、空気、冷却水が通過するマニホールドホールが形成され、前記平坦部の各マニホールドホールが、セルの積層後、分離板のマニホールドホールと共に水素、空気、冷却水用入口マニホールドと出口マニホールドを構成することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項4】
前記平坦部において、各マニホールドホールの周辺にガスケットが一体に成形され、マニホールドホールの周辺のガスケットと一体に接合されることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項5】
前記ガスケットは、金属多孔体の平坦部の両面上に成形して接合されるか、前記平坦部の外郭を含んで平坦部の両面を囲むように成形して接合されることを特徴とする請求項2または4に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項6】
分離板に積層された状態で、前記ガスケットが前記平坦部と共に前記分離板の外周縁部分を囲むように成形され、前記ガスケットにより分離板がさらに一体化した構造を有することを特徴とする請求項2または4に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項7】
前記分離板と一体化された構造において、分離板のマニホールドホールの周辺に沿ってガスケットが成形されて接合されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項8】
前記平坦部において、ガスケットが成形される位置に沿って貫通孔が形成され、前記貫通孔に充填(Insert)されたガスケットの樹脂により平坦部の両面に成形されたガスケットと強固に一体化した構造を有することを特徴とする請求項2または4に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項9】
前記平坦部において、ガスケットが成形される位置に沿って貫通孔が形成され、
前記平坦部の貫通孔と一致する分離板の位置に貫通孔が形成され、
前記分離板に積層された状態で、前記ガスケットが、貫通孔が形成された部分を含んで平坦部と共に分離板の外周縁部分を囲むように成形され、前記貫通孔によりガスケット及び分離板と強固に一体化した構造を有することを特徴とする請求項2または4に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項10】
前記反応領域に該当する多孔体部分がエキスパンドメタルまたは金属メッシュであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項11】
前記反応領域に該当する多孔体部分がエキスパンドメタルである場合、前記多孔体部分にだけホールが形成されたエキスパンドメタルとして製作され、ホールが形成されていない外周縁部分の金属板部分は、ホールが形成された多孔体部分に一体化した前記平坦部になることを特徴とする請求項10に記載の燃料電池用金属多孔体。
【請求項12】
前記反応領域に該当する多孔体部分が金属メッシュである場合、金属メッシュの外周縁部分を薄い金属膜で囲むか、四角枠状の金属部材の開口部の内側溝に金属メッシュの外周縁を係合して組み立てることにより、前記金属膜または金属部材が平坦部になり、前記金属メッシュが多孔体部分になることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属多孔体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−104475(P2012−104475A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221538(P2011−221538)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】