説明

燃料電池用電極電解質分散体およびそれを用いた電極ペースト、膜−電極接合体

【課題】プロトン伝導性や寸法安定性、耐メタノール性、機械的特性に優れ、かつ、膜−電極接合体作製時の加工適正性を付与した燃料電池用電極電解質分散体を提供する。
【解決手段】膜電極接合体の靱性、機械的強度、加工性(プロトン電動膜・ガス拡散層と電極槽の接合性)に寄与する屈曲性のメタ結合を含むスルホン酸基を有する構成単位A、フッ素を含みAの溶解性、加工性に寄与する構成単位B、スルホン酸基を含む構成単位Cからなるポリアリーレン系共重合体がメジアン径0.1〜5μmで分散媒中に分散されていることを特徴とする電極電解質分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構成単位を有するポリアリーレンを含有する電解質が分散媒中に分散している電極電解質分散体、電極ペースト、該電極ペーストから形成される燃料電池用電極および該電極を有する膜−電極接合体に関する。好ましくは、直接メタノール型燃料電池や、水素系の定置または携帯型燃料電池等に用いられる該電解質分散体、電極ペースト、電極および膜−電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、発電を担う反応の起こるアノードおよびカソードの両電極と、アノードおよびカソード間のプロトン伝導体となる高分子固体電解質膜とがセパレータで挟まれたセルをユニットとして構成されている。
【0003】
上記電極は、ガス拡散の促進および集電を行う電極基材と、実際に電気化学反応場となる触媒層とから構成されている。触媒層は白金等の触媒微粒子を表面に担持させたカーボン粒子と電極電解質などにより形成される。具体的にはアノードでは、触媒微粒子上で燃料ガスが反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは電極電解質を移動し高分子固体電解質膜へと伝導する。一方、カソードでは、触媒微粒子上で酸化ガスと、高分子固体電解質膜からカソードの電極電解質を通って伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。
【0004】
このように燃料電池は生成物が水だけであり、またエネルギー交換率が高いため次世代の電源として活発に研究されている。
【0005】
燃料電池の電極電解質としては、デュポン社製Nafion(登録商標)およびスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体(特許文献1、2)等が知られている。燃料電池で高出力を得るためには、電極での電極電解質と触媒との反応効率を増大させることが求められており、触媒を担持した炭素粒子の分散液と電極電解質のアルコール溶液とを混合して固体電解質のコロイドを生成させる技術等が知られている(特許文献3、4)。
【特許文献1】特開2003−331868号公報
【特許文献2】特開2004−149056号公報
【特許文献3】特開平08−264190号公報
【特許文献4】特開2002−63912号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のポリアリーレン系の電極電解質は、その化学構造に由来する高い耐熱性、溶媒耐性のため、電極電解質を用いて製造された電極は加工性に乏しい問題がある。具体的には、高い熱変形温度のために膜−電極接合体作製時にプロトン伝導膜およびガス拡散層と電極層との熱圧着接合が難しく、また、ポリマーの溶解性は低いために発電特性改良に際し電極層の構造制御するための溶媒の選択範囲が狭いといった問題があった。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、プロトン伝導性や寸法安定性、耐メタノール性、機械的特性に優れ、かつ、膜−電極接合体作製時の加工適正性を付与した燃料電池用電極電解質分散体を提供し、さらに該電極電解質分散体を含む、電極ペースト、電極、膜−電極接合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況のもと本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、重合体の熱変形温度、溶解性に着目した特定の構造を重合体に導入したポリアリーレン系共重合体を電極電解質に用いることに加えて、該電極電解質を貧溶媒に分散して得られる一定メジアン径を有する電極電解質分散体を採用することにより、上記問題をいずれも解決することを見出した。すなわち、特定のポリアリーレン系重合体を使用することで、高いスルホン酸濃度の重合体が合成できる。これにより、プロトン伝導度の高い材料設計が可能となり、該電極電解質を貧溶媒に分散して得られる電極電解質分散体を採用することにより電極電解質と触媒との反応効率を増大させることができ、寸法安定性、耐メタノール性、機械的特性や加工適正に優れた材料設計が可能となる。
【0009】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]下記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4)からなる群から選
ばれる少なくとも1つ構成単位(A)と、下記一般式(B−1)または(B−2)で表される構成単位(B)と、下記一般式(C−1)で表される構成単位(C)とを有するスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体(以下、「共重合体」という。)がメジアン径0.1〜5μmで分散媒中に分散されていることを特徴とする電極電解質分散体。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R19は互いに独立であり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化
アルキル基、アリール基、シアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは単結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2p−(ここで、p
は1〜10の整数である)、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Jは単結合、−O−、−S−、−CH2−、CO−、−SO2
−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CH32−、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R20〜R35は互いに独立であり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基、シアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Tは単結合、−CO−、−SO2−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の
整数である)、または−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Qは単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CO−、−SO2−、−(CF2)p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CH32−、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示す。R20〜R35は、T、Qは、少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)f
−(fは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH2)h−(hは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示し、Arはスルホン酸基を有する芳香族基を示す。jは0〜10の整数を示し、kは0〜10の整数を示し、iは1〜4の整数を示す。)
[2]前記共重合体が、該共重合体を構成する全構成単位100モル%に対して、構成単位
(A)を5〜85モル%及び構成単位(B)を10〜90モル%有する[1]の電極電解質
分散体。
[3]前期分散媒が、その全量100質量%に対して、水を0.01〜20質量%含有する[1]または[2の電極電解質分散体。
[4]燃料電池用である[1]〜[3]の電極電解質分散体。
[5][1]〜[3]の電極電解質分散体と、触媒粒子とを含む電極ペースト。
[6][5]の電極ペーストから形成されてなることを特徴とする電極。
[7][6]の電極を、高分子電解質膜の少なくとも片面に備える膜−電極接合体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安価で、触媒金属の回収が容易であり、プロトン伝導性、寸法安定性、機械的特性、および加工性(プロトン伝導膜・ガス拡散層と電極層の接合性)に優れ、かつ、電極の対溶剤耐性が高く、発電特性に優れた燃料電池用電極電解質分散体、電極ペースト、燃料電池用電極、膜−電極接合体が提供され、燃料電池の発電性能向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る電極電解質分散体、電極ペースト、電極および膜−電極接合体について詳細に説明する。
〔電極電解質〕
本発明の燃料電池用電極電解質は、下記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4)からなる群から選ばれる少なくとも1つ構成単位(A)と、下記一般式(B−1)または(B−2)で表されるフッ素を含有する構成単位(B)、および下記一般式(C−1)で表わされる構成単位(C)を有するポリアリーレン共重合体(以下「スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体」ともいう)を含むことを特徴とする。このような構造を有するスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、屈曲性のメタ結合を含む構成単位(A)によって膜−電極接合体の靭性、機械的強度、加工性(プロトン伝導膜・ガス拡散層と電極層の接合性)などが向上するとともに、フッ素を含む構成単位(B)によって重合体の溶解性、加工性などが向上する。
(スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体)
<構成単位(A)および構成単位(B)>
i)構成単位(A)
構成単位(A)は屈曲性のメタ結合を含むため、構成単位(A)を有するスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を採用することにより、膜−電極接合体の靭性、機械的強度、加工性(プロトン伝導膜・ガス拡散層と電極層の接合性)などが向上させることができる。
【0018】
【化4】

【0019】
上記式(A−1),(A−2)、(A−3)および(A−4)中、R1〜R20は互いに
独立であり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基、シアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。これらのうちで、R1〜R19としては、優れたメタノール耐性および耐水性と、
強度、靭性などの機械的特性とが両立できるため、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0020】
Wは単結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2p−(ここで、pは1〜1
0の整数である)、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を表し、これらのうちで、Wとしては、得られる重合体の加工性の観点から−CO−が好ましい。
【0021】
Jは単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CO−、−SO2−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CH32−、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を表す。これらのうちで、Jとしては、得られる重合体の加工性の観点から−O−、−S−、−C(CH32−、および−C(CF32−が好ましい。
【0022】
構成単位(A)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
また、下記化合物のように構成単位(A)を含む化合部でフッ素を含むものについては、構成単位(B)を含まない場合においても、溶解性を付与できることがある。
【0025】
【化6】

【0026】
また、上記構成単位の>C=Oが−SO2−に代わった構成単位も使用できる。
ii)構成単位(B)
構成単位(B)はフッ素を含むため、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の溶解性、加工性などが向上する。
【0027】
【化7】

【0028】
上記式(B−1)および/または(B−2)中、R20〜R35は互いに独立であり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基、シアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を表す。少なくとも1つ以上のフッ素原子を含有する。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。これらのうちで、R20〜R35としては、優れたメタノール耐性および耐水性と、強度、靭性などの機械的特性とが両立できるため、水素原子、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0029】
Tは単結合、−CO−、−SO2−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数で
ある)、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を表し、これらのうちで、Tとしては、得られる重合体の加工性の観点から−CO−が好ましい。
【0030】
Qは単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CO−、−SO2−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CH32−、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を表し、これらのうちで、Qとしては、得られる重合体の加工性の観点から得られる重合体の加工性の観点から−O−、−S−、−C(CH32−、および−C(CF3)2−が好ましい。
【0031】
構成単位(B)中の置換基、結合基のうち少なくとも1つ以上のフッ素原子もしくはフッ素を含有する基を含む。
【0032】
構成単位(B)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0033】
【化8】

【0034】
また、上記構成単位の>C=Oが、−SO2−に代わった構成単位も使用できる。
【0035】
また、上記構成単位のベンゾフェノンの部分が、下記構造に代わった構成単位も使用できる。
【0036】
【化9】

【0037】
上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体では、該共重合体を構成する全構成単位100モル%に対して、構成単位(A)の割合が5〜85モル%であり構成単位(B)の割合が10〜90モル%であることが好ましく、構成単位(A)の割合が10〜70モル%であり構成単位(B)の割合が20〜80モル%であることがさらに好ましい。
【0038】
上記構成単位(A)はスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の熱変形温度を低減する役割があり、導入量により熱変形温度を制御できる。熱変形温度を適正な領域に保つことで、靭性、機械的強度の確保、ホットプレスでの膜−電極接合体作製時の加工性(プロトン伝導膜・ガス拡散層と電極層の接合性)の付与により、高温でのホットプレスの必要がなく伝導度の低下を防止できる。
【0039】
上記構成単位(A)の割合aが少ないと熱変形温度が十分に低減できず、また多すぎてもメタノール耐性や耐水性が悪化する傾向がある。
【0040】
上記構成単位(B)はスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の溶解性を改善する役割があり、導入量により水を含む有機溶媒への溶解性を改良できる。フッ素を含む成分の導入量を適正な領域に保つことで、電極電解質分散体、電極ペーストに良好な塗工性を付与し、また、電極の加工性を改善することができる。たとえば、特開2006−96989号公報の実施例1に記載のスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体からなるプロトン伝導膜においては、通常、同様な化学構造を有する電極電解質ポリマーを含有する電極ペーストの伝導膜への直接塗工(電極層形成)は、伝導膜の溶解のため困難である。これに対して、所定量の構造単位(B)を導入することで、電極電解質の溶解性を大幅に改良し、プロトン伝導膜の貧溶媒となる溶媒組成を選択することでプロトン伝導膜への直接塗工が可能となり、量産性を付与できる。また、可溶な溶媒種が増加することにより、電極層の微細構造制御が可能となり発電特性も改良できる。
【0041】
上記構成単位(B)の割合bが少なすぎると溶解性が十分に改良できず、多すぎても熱変形温度が高くなり、接合性が悪化する傾向がある。
【0042】
上記構成単位(A)および(B)が上記範囲にあると、得られるスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、優れたメタノール耐性および疎水性とともに、優れた靭性等の機械的強度、優れた加工性などを有する。上記構成単位(A)および(B)に加えて、その他の構成単位もあわせて使用することができる。例えば、フルオレン骨格を有するビスフェノール類から誘導される構成単位を含有しているとメタノール耐性の高いスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体が得ることができる。
<スルホン酸基を含む構成単位(C)>
上記スルホン酸基を含む構成単位としては、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報、特開2001−342241号公報および特開2002−293889号公報に記載されているスルホン酸基を有する構成単位が好ましい。これらのうちで、下記一般式(C−1)で表される構成単位(C)は、得られるポリアリーレンにおいて、優れたプロトン伝導性と優れたメタノール耐性とが両立できるためより好ましい。したがって、構成単位(A)と(B)、さらに(C)を含むスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、燃料電池に好適に用いられる。
【0043】
【化10】

【0044】
上記式(C−1)中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO
−、−(CF2f−(fは1〜10の整数である)、−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を表す。このうちYとしては、−CO−、−SO2−が好ま
しい。
【0045】
Zは直接結合または、−(CH2h−(hは1〜10の整数である)、−C(CH32−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を表す。このうちZとしては、直接結合、−O−が好ましい。
【0046】
Arはスルホン酸基を有する芳香族基を表す。上記芳香族基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらのうちで、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0047】
上記芳香族基は、少なくとも1個のスルホン酸基(−SO3H)置換を有しており、該
芳香族基がナフチル基である場合には2個以上置換していることが好ましい。
【0048】
i、j、kの値とY、Z、Arの構造についての好ましい組み合わせとして、(1)j=0、k=0であり、Yは−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェ
ニル基である構造、(2)j=1、k=0であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、(3)j=1、k=
1、i=1であり、Yは−CO−であり、Zは−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、(4)j=1、k=0であり、Yは−CO−であり
、Zは−O−であり、Arが置換基として2個の−SO3Hを有するナフチル基である構
造などを挙げることができる。
(スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の製造方法)
上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の製造には、例えば下記に示す方法(特開2004−137444号公報参照)が用いられる。この方法では、まず、下記化合物(D)とスルホン酸エステル基を含む単量体とを重合し、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン(本明細書において、このポリアリーレンを「前駆体ポリマー(E)」ともいう)を製造し、次いで、前駆体ポリマー(E)中のスルホン酸エステル基を脱エステル化して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換する。これにより、構成単位(A)、(B)とともに、スルホン酸基を含む構成単位(C)を有するスルホン酸基を
有するポリアリーレン系共重合体が得られる。
【0049】
<化合物(D)>
化合物(D)は、上記構成単位(A)及び構成単位(B)のうち少なくとも一方の構成単位が1つ以上直鎖状に結合した構造を有しており、両末端は、それぞれ独立にフッ素を除くハロゲン原子、すなわち、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、これらの中では塩素原子が好ましい。化合物(D)は、構成単位(A)及び構成単位(B)のいずれをも有していることが好ましいが、構成単位(A)のみを有している化合物(D)と構成単位(B)のみを有している化合物(D)を併用して後述の前駆体ポリマー(E)を合成してもよい。化合物(D)の構成単位(A)は、前述の一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)および(A−4)で表わされる少なくとも1種からなる。また、化合物(D)の構成単位(B)は、前述の一般式(B−1)および/または(B−2)からなる。
【0050】
化合物(D)では、上記構成単位(A)の割合aが5〜85モル%であり、さらに好ましくは10〜70モル%である。
【0051】
また、化合物(D)の分子量は、ゲル・パーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)法によって、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として40℃で測定され、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜50000、好ましくは1000〜30000であり、重量平均分子量(Mw)が1000〜100000、好ましくは2000〜60000である。
【0052】
化合物(D)は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、構成単位(A)と構成単位(B)が同一の化合物(D)に含まれていても、それぞれの構成単位を含む複数の化合物(D)を用いても良い。
【0053】
例えば、化合物(D)は、構成単位(A)となるメタ置換ジヒドロキシベンゼン類(A’)および構成単位(B)となるフッ素含有ジヒドロキシベンゼン類(B’)(本明細書において、これらをまとめて「ビスフェノール類」ともいう。)を、4,4’−ジハロベンゾフェノンおよび/または4,4’−ジハロジフェニルスルホン(本明細書において、これらをまとめて「ジハロゲン化物」ともいう。)、もしくはパーフルオロフルオロベンゼンおよび/またはパーフルオロベンゾフェノンなどとともに重合して合成される。また、ビスフェノール類とジハロゲン化物の構造を入れ替えて合成できることもある。
【0054】
メタ置換ジヒドロキシベンゼン類(A’)としては、以下の化合物が挙げられる。これらの化合物から誘導される化合物(D)から得られるスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体において、優れた靭性、機械的強度、加工性が得られる。上記ジヒドロキシベンゼン類は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
レゾルシノール、3,3’−ビフェノール、3,4’−ビフェノール、3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、3,3’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、3,3’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,3−フェニレンビスヘキサフルオロプロピリデン)ビスフェノール、3,3’−(1,3−フェニレンビスヘキサフルオロプロピリデン)ビスフェノール、3,3’−(1,4−フェニレンビスヘキサフルオロプロピリデン)ビスフェノール、などが挙げられる。
【0056】
フッ素含有ジヒドロキシベンゼン類(B’)としては、以下の化合物が挙げられる。これらの化合物から誘導される化合物(D)から得られるスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体において、優れた溶解性、加工性が得られる。上記ジヒドロキシベンゼン類は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチル)ベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)スルホン、などが挙げられる。
【0058】
上記構成単位(A)および(B)を構成する化合物に加えて、その他の構成単位を構成する化合物もあわせて重合されていてもよい。例えば、フルオレン骨格を有するビスフェノール類を併用するとメタノール耐性の高いスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体が得られる。
【0059】
フルオレン類で連結されたビスフェノールとしては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−フェニルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。上記ビスフェノールは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
フッ素、塩素などのハロゲン原子で置換された4,4’−ジハロベンゾフェノンとしては、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンなどが挙げられ、フッ素、塩素などのハロゲン原子で置換された4,4’−ジハロジフェニルスルホンとしては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらのうちで、4,4’−ジハロベンゾフェノンを用いることが好ましい。上記ジハロゲン化物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
その他のハロゲン化物として、パーフルオロフルオロベンゼンおよび/またはパーフルオロベンゾフェノンも使用できる。
【0062】
化合物(D)の合成において、まず、上記ビスフェノール類(A’+B’)をアルカリ金属塩とする。ここで、メタ置換ジヒドロキシベンゼン類(A’)を5〜85モル%であり、さらに好ましくは10〜70モル%である。フッ素含有ジヒドロキシベンゼン類(B’)を10〜90モル%、好ましくは20〜80モル%である(ここで、a+b≦100モル%、上記ジヒドロキシベンゼン類の量およびその他のビスフェノールの量の合計は100モル%である)。このとき、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中で、上記ビスフェノール類に対して、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
【0063】
上記アルカリ金属は、上記ビスフェノール類の水酸基に対して過剰気味で反応させるため、上記ジヒドロキシベンゼン類および上記フルオレン類で連結されたビスフェノールに含まれる水酸基の総量に対して通常1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量で使用する。このとき、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソールなど、水と共沸する溶媒を共存させて、反応の進行を促進させることが好ましい。
【0064】
次いで、アルカリ金属塩となった上記ビスフェノール類と上記ジハロゲン化物とを反応させる。
【0065】
反応に用いられる上記ジハロゲン化物の量(上記4,4’−ジハロベンゾフェノンおよび/または4,4’−ジハロジフェニルスルホンの総量)は、上記ビスフェノール類の量(上記ジヒドロキシベンゼン類および上記フルオレン類で連結されたビスフェノールの総量)に対し1.0001〜3倍モル、好ましくは1.001〜2倍モルである。
【0066】
また、化合物(D)の両末端が塩素原子となるように、反応終了後に再度、例えば4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンを過剰に加えて反応させてもよい。例えば、上記ジハロゲン化物を、上記ビスフェノール類に対し0.01〜3倍モル、好ましくは0.05〜2倍モル加えて反応させてもよい。4,4’−ジフルオロベンゾフェノンおよび/または4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンを用いた場合には、反応後半で4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよび/または4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンを添加するなどの方法で、化合物(D)がジクロロ体になるよう反応を工夫することが好ましい。
【0067】
これらの反応は、反応温度が60℃〜300℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で、反応時間が15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲で行われる。
【0068】
得られた化合物(D)は、ポリマーの一般的な精製方法、例えば、溶解−沈殿の操作によって精製してもよい。なお、化合物(D)の分子量の調整は、上記ジハロゲン化物と上記フェノール類との反応モル比によって行うことができる。
【0069】
化合物(D)の構造は、1H−NMRにより確認できる。構成単位の比は、使用する各
モノマーの化学シフトにより構造の同定を行い、上記シグナルの強度比によって求められる。
【0070】
また、末端の構造は、蛍光X線分析により、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン含量を定量して確認できる。
【0071】
<スルホン酸エステル基を含む単量体>
スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体に構成単位(C)を導入するために用いられる上記スルホン酸エステル基を有する単量体としては、具体的には、特開2004−137444号公報、特願2003−143903および特願2003−143904に記載されているスルホン酸エステル類が挙げられる。
【0072】
これらのうちで、下記一般式(C−2)で表される単量体が好適に用いられる。
【0073】
【化11】

【0074】
上記式(C−2)中、Y、Z、i、j、kは、上記式(C−1)におけるものと同様であり、好ましい範囲も同じである。Xは、フッ素を除くハロゲン原子、すなわち、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0075】
Rは、炭素原子数4〜20の炭化水素基を示し、具体的には、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員の複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらのうちで、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、ネオペンチル基がより好ましい。
【0076】
Ar’は、スルホン酸エステル基(−SO3R)で表される置換基を有する芳香族基を
表す意味する。Rは上記と同様のものが挙げられ、好ましいものも同じである。上記芳香族基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらのうちで、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0077】
上記芳香族基は、少なくとも1個の−SO3Rを有しており、該芳香族基がナフチル基
である場合には、2個以上の−SO3Rを有していることが好ましい。
【0078】
<前駆体ポリマー(E)の製造>
前駆体ポリマー(E)を得るための、化合物(D)と前記スルホン酸エステル基を含む単量体との重合は触媒の存在下に行われる。この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒であり、この触媒は、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(本明細書において、「配位子成分」ともいう。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。これらの触媒成分の具体例、各成分の使用割合としては、特開2001−342241号公報に記載のものが挙げられる。
【0079】
また、反応溶媒、濃度、温度、時間等の重合条件についても、特開2001−342241号公報に記載の条件が好適に用いられる。
【0080】
<脱エステル化>
次いで、前駆体ポリマー(E)を特開2004−137444号公報に記載の方法で脱エステル化すれば、上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体が得られる。
【0081】
(スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体)
上記のような方法により製造される、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体のイオン交換容量は通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く発電性能が低くなる傾向にあり、5meq/gを超えると、耐水性およびメタノール耐性が大幅に低下する傾向にある。
【0082】
上記のイオン交換容量は、例えば、単量体(具体的には、化合物(D)、および上記式(C−1)で表される単量体などの他の単量体)の種類、使用割合、組み合わせを変えることで調整できる。また、イオン交換容量の測定方法は後述のとおりである。
【0083】
上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の分子量は、ゲル・パーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)法によって、臭化リチウムおよび燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用いて40℃で測定され、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が0.5万〜50万、好ましくは1万〜40万であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
【0084】
(添加剤)
本発明の電極電解質は、上記スルホン化ポリマー以外に、酸化防止剤、硫酸、リン酸などの無機酸、リン酸ガラス、タングステン酸、リン酸塩水和物、β−アルミナプロトン置換体、プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子、カルボン酸を含む有機酸、スルホン酸を含む有機酸、ホスホン酸を含む有機酸、適量の水などを添加されていてもよい。
【0085】
上記酸化防止剤としては、分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物が好ましい。このような酸化防止剤を含有することにより、電解質としての耐久性をより向上させることができる。
【0086】
上記ヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX 1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA−80)などを挙げることができる。
【0087】
本発明の電極電解質に添加される添加剤の量は、特に限定されず、電極電解質に要求される酸化耐性、プロトン伝導性、強度および弾性率などに応じて、最適な量を用いればよい。たとえば、上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体100重量部に対して、添加剤の全重量が0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部の範囲で添加することが望ましい。また、添加剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
〔電極電解質分散体〕
本発明の電極電解質分散体(「電極ワニス」ともいう。)は、前記の電極電解質が分散媒中に分散されてなる。電極電解質が溶媒中に溶解した状態ではなく、一定のメジアン径を有する電極電解質が分散媒中に分散した分散体の状態になっているため、後述の電極ペーストを製造する際に、触媒粒子との均一に混合されやすく電解質と触媒の反応面積が増大する。また、電極の耐溶剤性の低下もなく、高濃度メタノール条件でも発電特性に優れた燃料電池を得ることができる。
【0089】
本発明の電極電解質分散体中に分散されている電極電解質のメジアン径は、0.1〜5μmであると電極電解質が沈降しにくくコロイド安定性に優れるほか、触媒粒子との反応面積が増大するため、電極の対溶剤耐性が向上し、燃料電池の発電特性において優れている。電極電解質のメジアン径は、好ましくは、0.3〜3μmであり、さらに好ましくは、0.5〜2μmである。なお、メジアン径は、堀場製作所製動的光散乱粒度分布計を用いて測定した。メジアン径とは、粒径分布を粒径とその粒径を有する粒子集団の体積で表した場合に、粒径分布曲線の積分値が最大値の50%となる粒径値である。
【0090】
電極電解質分散体は、電極電解質をその貧溶媒中に分散して得られる。
【0091】
本発明の電極電解質分散体に用いられる分散媒は、上記電極電解質の貧溶媒であり、上記電極電解質を溶解しない溶剤であればよく、具体的には、水;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、1−プロパノール(n−プロパノール)、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−メチル−2−プロパノール、2−ブタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル1−プロパノール、シクロヘキサノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール)などのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ブチルエーテル、フェニルエーテル、イソペンチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、シネオール、ベンジルエチルエーテル、アニソール、フェネトール、アセタールなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−オクタノンなどのケトン類;γーブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、酪酸メチル、酪酸エチル、
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類;テトラメチル尿素などの非プロトン性極性有機溶剤;トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素系有機溶剤などが挙げられる。これらの分散媒は、1種単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
上記分散媒の中では、特に、水と他の貧溶媒との混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を構成するために水と組み合わせて用いられる貧溶媒としては、アルコール系溶媒が好ましく、さらには、1−プロパノール(n−プロパノール)、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−メチル−2−プロパノール、2−ブタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル1−プロパノール、シクロヘキサノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノールがさらに好ましく、n−プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。分散媒中の水の量は、水と貧溶媒の全量100質量%に対して、0.01〜20質量%であり、0.1〜10質量%であることが好ましい。水の添加量は他の貧溶媒に較べて少ないため、電極電解質を湿度が飽和水蒸気圧又は飽和水蒸気圧に近い湿度環境下に10〜100時間、好ましくは24〜96時間放置することにより電極電解質に吸湿させることにより添加することもできる。
【0093】
電極電解質分散体中の電極電解質の濃度は、0.1〜10質量%であり、0.3〜7質量%であることが好ましい。
【0094】
本発明の電極電解質分散体には、必要に応じてさらに分散剤を添加してもよい。このような分散剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。
【0095】
本発明の電極電解質分散体に上記分散剤を添加すると、発電特性、保存安定性および流動性に優れ、塗工時の生産性が向上する。
【0096】
電極電解質が所定のメジアン径を有する電極電解質分散体は、例えば電極電解質を上記分散媒中に混合し、高い剪断力を与えて電極電解質を微分散することにより得ることができる。このような剪断力を与える方法としては、例えば、回転式攪拌機により撹拌する方法、超音波を発生する方法等を挙げることができる。撹拌条件は目標とするメジアン径や分散媒の種類等に応じて任意に選択することができるが、例えば、2,000〜30000rpmで5分以上、好ましくは5〜240分分散する方法が好ましい。また、攪拌を主としたジグ構成で、5000〜20000rpmで5〜10分間の予備分散工程(「プレ分散工程」ともいう。)を行った後に、分散を主としたジグ構成で10,000〜30,000rpmで5分以上、好ましくは5〜200分の分散工程(「本分散工程」ともいう。)を行うことが好ましい。
【0097】
また、プレ分散工程及び本分散工程は2〜20回に分割して行うことができる。分散工程で分散体の温度が上昇すると電解質による網目構造形成によるゲル化や粒子の二次凝集を招き、好ましいメジアン径が得られない場合があるので、分散体の温度を60℃以上に上昇させないよう適宜冷却しつつ撹拌することが好ましい。このため、例えば、プレ分散または本分散を高速回転(5000〜30000rpm)で10分程度行った後に、2,000rpm程度の低速回転で5分程度の冷却工程を行い、分散工程10分と冷却工程5分
等の組合せを1〜20回繰り返す方法等を採ることができる。
【0098】
また、分散を行う前に電極電解質をより分散しやすくするために、予め電極電解質に水を微量添加して脱泡攪拌機(シンキー製脱泡攪拌機)により500〜2000rpmで1〜10分攪拌し水を湿潤した後、さらにアルコール系の有機溶媒を添加して500〜2000rpmで1〜10分攪拌することが出来る。
【0099】
〔電極ペースト〕
本発明の電極ペーストは、上記電極電解質分散体と触媒粒子の分散体であり、これらには必要に応じて分散剤、炭素繊維などの他の成分を含んでいてもよい。
【0100】
<触媒粒子>
触媒粒子は、触媒がカーボン、金属酸化物の担体に担持されたもの、または、触媒の単体からなる。
【0101】
触媒としては、白金または白金合金が用いられる。白金合金を使用すると、電極触媒としての安定性や活性をさらに付与させることもできる。このような白金合金としては、白金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、鉄、コバルト、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛およびスズから選ばれる1種以上と白金との合金が好ましく、該白金合金には白金と合金化される金属との金属間化合物が含有されていてもよい。
【0102】
触媒は、単体でも、担体に担持された状態でも、触媒粒子を形成している。上記触媒を担持する担体としては、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。また、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素などを用いてもよい。
【0103】
上記オイルファーネスブラックとしては、キャボット社製「バルカンXC−72」、「バルカンP」、「ブラックパールズ880」、「ブラックパールズ1100」、「ブラックパールズ1300」、「ブラックパールズ2000」、「リーガル400」、ライオン社製「ケッチェンブラックEC」、三菱化学社製「#3150、#3250」などが挙げられる。また、上記アセチレンブラックとしては電気化学工業社製「デンカブラック」などが挙げられる。
【0104】
これらのカーボンの形態としては、粒子状のほか、繊維状も用いることができる。また、カーボンに担持される触媒の量としては、有効に触媒活性が発揮できる量であれば特に制限されるものではないが、担持量がカーボン重量に対して、0.1〜9.0g−metal/g−carbon、好ましくは0.25〜2.4g−metal/g−carbonの範囲である。
【0105】
また、担体としては、カーボンの他に、金属酸化物、たとえば、チタニア、酸化亜鉛、シリカ、セリア、アルミナ、アルミナスピネル、マグネシア、ジルコニアなどであってもよい。
【0106】
<炭素繊維>
本発明の電極ペーストには、必要に応じてさらに炭素繊維を添加することができる。このような炭素繊維しては、レーヨン系炭素繊維、PAN系炭素繊維、リグニンポバー系炭
素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維等を用いることができ、好ましくは、気相成長炭素繊維である。
【0107】
電極ペーストに炭素繊維を添加すると、電極中の細孔容積が増加することにより、燃料ガスや酸素ガスの拡散性が向上し、また、生成する水によるフラッディング等を改善でき、発電性能が向上する。
【0108】
<その他の添加物>
本発明の電極ペーストには、必要に応じてさらに他の成分を添加することができる。たとえば、フッ素系ポリマーやシリコン系ポリマーなどの撥水剤を添加してもよい。撥水剤は生成する水を効率よく排出する効果を奏し、発電性能の向上に寄与する。
【0109】
<組成>
本発明の電極ペーストでは、電極ペースト全量に対して、触媒粒子の含有量は1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%であり、電極電解質の含有量は0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%であり、分散媒の含有量は50〜95重量%、好ましくは70〜90重量%である。また、必要に応じて用いられる分散剤の含有量は0〜10重量%、好ましくは0〜2重量%であり、炭素繊維の含有量は0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。なお、上記成分の含有量の合計が、100重量%を超えることはない。
【0110】
上記触媒粒子の含有量が、上記範囲未満であると電極反応率が低下することがあり、上記範囲を超えると電極ペーストの粘度が増加し、塗工時に塗りむらが発生することがある。
【0111】
上記電極電解質の含有量が、上記範囲未満であるとプロトン伝導度が低下するとともに、バインダーとしての役割を果たせなくなり、電極を形成できないことがあり、上記範囲を超えると、電極中の細孔容積が減少する傾向にある。
【0112】
上記溶媒の含有量が、上記範囲内にあると、発電に必要な電極中の細孔容積が十分確保できるとともに、ペーストとしてのハンドリングに好適である。
【0113】
上記分散剤の含有量が、上記範囲内にあると保存安定性に優れた電極ペーストが得られる。
上記炭素繊維の含有量が、上記範囲未満であると、電極中の細孔容積の増加効果が低くなり、上記範囲を超えると、電極反応率が低下することがある。
【0114】
<電極ペーストの調製>
本発明の電極ペーストおよび電極ペーストは、たとえば、上記各成分を上記含有量となるように混合し、従来公知の方法で混練することにより調製することができる。
【0115】
各成分の混合順序は特に限定されないが、たとえば、全ての成分を混合して一定時間攪拌を行うか、分散剤以外の成分を混合して一定時間攪拌を行った後、必要に応じて分散剤を添加してさらに一定時間攪拌を行うことが好ましい。また、必要に応じて、溶媒の量を調整して、ペーストの粘度を調整してもよい。
【0116】
〔燃料電池用電極〕
本発明に係る燃料電池用電極は、上記電極ペーストを転写基材上に塗布し、溶媒を除去することにより得られる。すなわち、本発明の電極は、上記本発明の電極電解質および上記触媒粒子を含む。
【0117】
上記転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系ポリマーからなるシート、または、表面を離型剤処理したガラス板、金属板、ポリエチレンテレフタレート(PET)のシートなども用いることができる。
【0118】
電極ペーストを転写基材上に塗布する方法としては、刷毛塗り、筆塗り、バーコーター塗布、ナイフコーター塗布、ドクターブレード法、スクリーン印刷、スプレー塗布などがある。
【0119】
また、上記電極電解質を含む電極ペーストを直接、プロトン伝導膜もしくはガス拡散層、カーボンペーパーに塗工してもよい。
【0120】
〔膜−電極接合体〕
本発明の膜−電極接合体では、上記電極が固体高分子電解質膜の少なくとも片面に備えられており、上記転写基材上に形成された電極層を、該電解質膜の少なくとも片面、好ましくは両面に転写することにより得られる。
【0121】
上記固体高分子電解質膜としては、プロトン伝導性の固体高分子膜であれば、特に限定されることなく用いることができる。たとえば、Nafion(DuPont社製)、Flemion(旭硝子製)、Aciplex(旭化成製)などのパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマーからなる電解質膜;パーフルオロアルキルスルホン酸ポリマーに、ポリテトラフルオロエチレンの繊維や多孔質膜と複合化した補強型電解質膜;ポリテトラフルオロエチレングラフトスルホン化ポリスチレンなどの部分フッ素化スルホン化ポリマーからなる電解質膜;スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体、スルホン化ポリフェニレン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルニトリル、スルホン化ポリフェニレンエーテル、スルホン化ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリベンズイミダゾール、スルホン化ポリベンズオキサゾール、スルホン化ポリベンズチアゾールなどの芳香族スルホン化ポリマーからなる電解質膜;スルホン化ポリスチレン、スルホン酸含有アクリル系ポリマーなどの脂肪族スルホン化ポリマーからなる電解質膜;これらを多孔質膜と複合化した細孔フィリング型電解質膜;ポリベンズオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズチアゾールなどのポリマーにリン酸や硫酸などを含浸させた酸含浸型ポリマーからなる電解質膜などが挙げられる。これらの中では、芳香族スルホン化ポリマーからなる電解質膜が好ましい。
【0122】
さらに上記電極電解質で使用したスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を、固体高分子電解質膜に使用してもよい。この場合、電極電解質と高分子固体電解質とで、同じスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を使用してもよく、たとえば一方のスルホン酸基量を異なるようにしてもよい。
【0123】
また、燃料電池を製造する場合には、優れたプロトン伝導性とメタノール耐性、加工性とを有するため、上述した構成単位(A)、(B)さらに(C)を含むスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体から得られる電極電解質と上記固体高分子電解質膜が好適に用いられる。
【0124】
上記電極層の電解質膜への転写は、ホットプレス法により行うことができる。ホットプレス法は、カーボンペーパーまたは離型シートに電極ペーストを塗布し、電極ペースト塗布面と電解質膜とを圧着する方法である。ホットプレスは、通常、50〜250℃の温度範囲で1〜180分間、10〜500kg/cm2の圧力をかけて行う。
【0125】
本発明の膜−電極接合体を得るための別の方法として、プロトン伝導膜もしくはガス拡散層、カーボンペーパー上に直接、電極層を形成して膜−電極接合体を作製してよい。こ
のとき、塗布や乾燥の順序に特に制限はない。
【0126】
たとえば、PETフィルム等の基材上に、高分子電解質溶液を塗布して乾燥することにより電解質膜を形成した後、該電解質膜上に上記電極ペーストを塗布し、乾燥して溶媒を除去することにより電極層を形成する。次に、上記基材をはがして、電解質膜のもう一方の面に電極ペーストを塗布し、溶媒を除去することにより、電解質膜の両面に電極層が形成された膜−電極接合体が得られる。
【0127】
電極層の厚さは、特に制限されるものではないが、触媒として担持された金属が、単位面積あたり、0.05〜4.0mg/cm2、好ましくは0.1〜3.0mg/cm2の範囲で電極層中に存在することが望ましい。この範囲にあれば、十分に高い触媒活性が発揮され、また効率的にプロトンを伝導することができる。
【0128】
電極層の細孔容積は、0.05〜4.0ml/g、好ましくは0.1〜3.0ml/gの範囲にあることが望ましい。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、得られた電極電解質ポリマーの特性評価は、得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解し、15重量%NMP溶液を調製した後、ガラス板上にキャストして作製した。膜厚は40μmであった。
(分子量)
上記化合物(D)の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル・パーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)法によって、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0129】
上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の重量平均分子量は、ゲル・パーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)法によって、臭化リチウムおよび燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて40℃で測定し、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(構造解析)
上記化合物(D)および上記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の構造確認は1H−NMRにより行い、構成単位の割合はその積分比から算出した。
(イオン交換容量)
得られたスルホン化ポリマーの水洗水がpH4〜6になるまで洗浄して、フリーの残存している酸を除去後、十分に洗浄し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解し、フェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液にて滴定し、中和点からイオン交換容量を求めた。
【0130】
(電極接合性)
触媒付電解質膜と市販のカーボンペーパーを160℃で5分間75kg/cm2でプレ
スした。これを10重量%メタノール水溶液に24時間浸漬し、電極の接着状態を目視で観察した。剥離のないものを○、剥離したものを×とした。
(分散液の分析) 粒度分布・沈降速度・粘度
粒度分布:堀場製作所製「動的光散乱粒度分布計」(LB−500型)を用いて、5回メジアン径を測定し、これらの平均値からもっとも遠いメジアン径の値2点を除外し、残り3個のメジアン径についてそれらの平均値を求め、メジアン径の評価値とした。
分散安定性:L.U.M.Gmbt社製「分散安定性装置」(LUMifuge116)を用いて、1000r
pmで1000秒間遠心力をかけた際の、分散体の透過光の変化率(%/hr)により沈降速度を測定して分散安定性の指標とした。
粘度:東機産業社製「E型粘度計」(viscometer TV-33)を用いて、せん断速度を変更した場合の粘度を測定し、せん断速度=3.83s-1での粘度を確認した。
(ペースト乾燥速度)
底面3cm×3cmアルミカップを精密天秤上に置き、作製したペースト約1.0gを均一に全カップ内に入れ、添加時=0secとし、10秒おきに重量減少を確認した。測定時は、25℃50%RH環境下で実施した。
(電極耐溶剤試験)
触媒付電極電解質膜をそれぞれ3cm×3cmにカットし、20Mの60℃メタノール水溶液中に6時間浸漬し、メタノール浸漬前後の重量変化率を測定した。
(発電特性)
各実施例、比較例により得られた電極−膜接合体を市販の燃料電池用評価セル2枚のチタン製の集電体で挟み、さらにその外側にヒーターを配置し、有効面積25cm2の評価
用燃料電池を作製した。作製した燃料電池の温度を40℃に保ち、5モル/Lのメタノール水溶液を供給した。それぞれの条件で最大出力(mW/cm2)を測定した。
(活性表面積)
上記発電特性を評価した後の燃料電池について、その測定電極側に100%RH窒素ガス、対極に100%RH水素ガスを充填し、0.1V〜0.7Vの範囲でサイクリックボルタメトリにより該当電極の活性表面積を測定した。この際、Pt−Hの吸着時に必要な電気量は2.1C/m2として計算した。
【0131】
〔合成例1〕化合物(D−1)の合成
撹拌羽根、温度計、窒素導入管、Dean-Stark管および冷却管を取り付けた3
Lセパラブル4口フラスコに4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(BisM) 90.80g(262mmol)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール(BisAF) 400.5g(1191mmol)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPFL)47.31g(135mmol)、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(DFBP) 308.05g(1412mmol)、4-クロロ-4'-フルオロベンゾフェノン(CFBP) 78.68g(335mmo
l)、炭酸カリウム263.41g(1906mmol)を加えた。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) 1875ml、トルエン750mlを加えた。155℃
まで昇温し、反応によって生成する水をトルエンとの共沸により、Dean-Stark
管から取り除いた。水の生成が認められなくなるまで、3時間反応した後、トルエンを系外に取り除きながら165℃まで昇温し、その後160〜165℃で5時間撹拌した。次に、CFBP45.55g(194mmol)を加え、再度160〜165℃で3時間撹拌した。
【0132】
得られた反応溶液は、DMAc1213mLで希釈した後、メタノール/硫酸/水 (7903g/ 51g/ 1174g) 中に少しずつ注ぎ凝固させ、1時間攪拌した。凝固液をろ過して得られた沈殿物に水7.5Lを加えて55−60℃条件下で2時間攪拌洗浄する操作を2回繰り返した。次に、得られた固形分にメタノール7.5Lを加えて55−60℃条件下で2時間攪拌洗浄する操作を繰り返した。得られた生成物を乾燥し、620.54g(収率95%)の目的物(化合物D−1)を得た。
【0133】
化合物(D−1)のGPCで求めたポリスチレン換算の数平均分子量は6500、重量平均分子量は12100あった。また、1H−NMRスペクトルを図1に示す。この化合
物(D−1)は、下記式で表される構成単位(A)、(B)、および第3成分(フルオレン骨格)を含み、それぞれの割合aが16.5モル%であり、bが75モル%、第3成分が8.5モル%であった。
【0134】
【化12】

【0135】
化合物(D−1)の両末端は塩素原子であった。
【0136】
〔合成例2〕化合物(E−1)の合成
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた0.5Lのフラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル38.66g(96.3mmol)、合成例1で得られた化合物D−1を23.77g(3.7mmol)を使用し、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.96g(3.0mmol)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0mmol)、トリフェニルホスフィン10.49g(40.0mmol)、亜鉛15.69g(240mmol)を加え、該フラスコ内を乾燥窒素で置換した。次いで、上記フラスコにDMAc200mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら、3時間攪拌を続けた後、DMAc200mLを加えて希釈し、不溶物を濾過し、前駆体ポリマー(E−1)を得た。
【0137】
得られた前駆体ポリマー(E−1)を含む溶液を、攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lのフラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化リチウム25.1g(290mmol)を加えた。7時間攪拌後、上記溶液を水1Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、アセトン、10%硫酸水溶液、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー(1)41.2gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は、104,000であった。1H−NMRスペクトルを図1に示す。得られた重合体は、下記式で
表される構成単位(A)、(B)、(C)および、フルオレン骨格を含有する第3成分(F)を含み、構成単位(A)、(B)、およびフルオレン骨格を含有する第3成分(F)の全量に対して、構成単位(A)の割合aが16.5モル%であり、構成単位(B)の割合bが75モル%、第3成分(F)が17モル%であると推定される。また、全構成単位に対して、構成単位(A)、(B)、および第3成分(F)の合計量の割合が8.5モル%であり、構成単位(C)の割合が95.9モル%であると推定される。イオン交換容量は1.9meq/gであった。
【0138】
【化13】

【0139】
〔合成例3〕化合物(E−2)の合成
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた0.5Lのフラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル37.30g(93.0mmol)、合成例1で得られた化合物D−1を45.77g(7.0mmol)を使用し、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.96g(3.0mmol)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0mmol)、トリフェニルホスフィン10.49g(40.0mmol)、亜鉛15.69g(240mmol)を加え、該フラスコ内を乾燥窒素で置換した。次いで、上記フラスコにDMAc200mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら、3時間攪拌を続けた後、DMAc200mLを加えて希釈し、不溶物を濾過し、前駆体ポリマー(E−2)を得た
得られた前駆体ポリマー(E−2)を含む溶液を、攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lのフラスコに入れ、115℃に加熱攪拌し、臭化チウム25.1g(290mmol)を加えた。7時間攪拌後、上記溶液を水1Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、アセトン、10%硫酸水溶液、純水の順に洗浄後、乾燥して目的のスルホン化ポリマー(2)59.0gを得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は、102,000であった。1H−NMRスペクトルを図1に示す。得られた重合体は、下記式で表
される構成単位(A)、(B)、(C)および、フルオレン骨格を含有する第3成分(F)を含み、構成単位(A)、(B)、およびフルオレン骨格を含有する第3成分(F)の全量に対して、構成単位(A)の割合aが16.5モル%であり、構成単位(B)の割合bが75モル%、第3成分(F)が17モル%であると推定される。また、全構成単位に対して、構成単位(A)、(B)、および第3成分(F)の合計量の割合が8.5モル%であり、構成単位(C)の割合が95.9モル%であると推定される。イオン交換容量は1.3meq/gであった。
【0140】
【化14】

【0141】
〔実施例1〕
<電極電解質分散体の調製>
合成例2で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を25℃50%RH環境下に4日間放置して、吸湿により含水させた。含水率はエー・アンド・デイ社製「加熱乾燥式水分計」(TV−33)を用いて11.7質量%であった。その後、回転式撹拌乳化装置(クレアミックスCLM−22;エム・テクニック株式会社)の350cc処理容器に、前記含水させたポリアリーレン系重合体1.46g及び1−プロパノール(以下NPA)240gを投入した。撹拌用ローター(型番R4)及びスクリーン(スクリーン幅1.5mm×24本)を取り付けた回転部分を装着して、回転数2000rpmで5分間撹拌した後、回転数20000rpmで10分間撹拌した。以上を予備分散とする。予備分散中の試料温度は45℃を上限に冷却により制御した。予備分散後、再び回転数2000rpmで5分間攪拌して試料温度を室温まで冷却した。得られた分散体に前記含水させたポリアリーレン系重合体を1.46g追加して上記撹拌を再度行う工程を合計8回
繰り返して、予備分散を完了した。
【0142】
予備分散後、撹拌用ローターを型番R1に、スクリーンは幅1.0mm×24本に変え、回転数23,000rpmで10分間撹拌し、さらに回転数2000rpmで5分間攪拌して試料を冷却した。以上を本分散とする。本分散を10回繰り返して電極電解質分散体を得た。本分散の合計撹拌時間は、100分間(23,000rpmの撹拌時間)である。
<アノード用電極ペーストの作製>
PtRu担持カーボン粒子(田中貴金属工業株式会社製「TEC81E94」)5.42g、蒸留水5.11g、上記電極電解質分散体33.36g、1−プロパノール6.45gを順に脱泡攪拌機(株式会社シンキー、ARV−310)で事前に混合した。得られた均一混合物を分散機(プライミクス株式会社、FM−56−50)で分散し、目的の電極ペーストを得た。
<膜−電極接合体の作製>(ガス拡散電極(GDE)経由での作製方法)
市販のガス拡散層(25BC;SGLカーボンジャパン社製)上に上記の電極ペーストをドクターブレードで塗布し、50℃×20分、80℃×30分条件で乾燥し、白金塗布量が3.0mg/cm2のアノード用ガス拡散電極を作製した。カソード用ガス拡散電極
も、上記と同様に、多孔性基材上に塗布し、白金塗布量が1.2mg/cm2になるよう
に作製した。
<膜−電極接合体の作製>
上記で得られたガス拡散電極を、カソード用ガス拡散電極、カソード、公知のスルホン化ポリマー(特開2006−96989号公開)から得られるプロトン伝導膜、アノード、アノード用ガス拡散電極の構成になるように目的の膜−電極接合体を作製した。(プレス条件は160℃×60kgf/cm2、10分間。)
〔実施例2〕
本分散の繰り返し回数を10回から18回に変更した以外は実施例1と同様にして、電極電解質分散体を得た。また、その後は実施例1と同様にして電極ペースト及び膜−電極接合体を調製した。
【0143】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして電極電解質分散体及び電極ペーストを調製した後、以下の方法で膜−電極接合体を調製した。
<膜−電極接合体の作製>(CCM(catalyst coated membrane)経由での作製方法)
スルホン化ポリアリーレン(特開2006−96989号公報の実施例1に記載のプロトン伝導膜)からなる電解質膜(30μm)を1枚用意し、上記の電極ペーストを70℃加熱条件下、ドクターブレードで塗布し、80℃×30分条件で乾燥し、白金塗布量が3.0mg/cm2のアノード用ガス拡散電極を作製した。カソード電極についても同様の
操作を実施し、白金塗布量が1.2mg/cm2になるように作製した。得られたCCM
の両側を市販のガス拡散層(25BC;SGLカーボンジャパン社製)で挟み、ホットプレスして膜−電極接合体を作製した。(プレス条件は160℃×60kgf/cm2、1
0分間。)
〔実施例4〕
合成例3で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体2.79gを25℃50%RHに4日間放置して、11質量%まで含水させた。その後、水 7.82g、1−プロパノール 70.39g (以下NPA)を事前に攪拌機(株式会社シンキー、APV−310)で均一に混合した。さらに、回転式撹拌乳化装置(プライミクス株式会社、FLM−56−50)に、上記の混合物を加え、18400rpmで5分間攪拌した(プレ分散)。続いて本分散として、17600rpmで40分攪拌し、目的の分散体を得た。また、本分散中の試料温度は60℃を上限に冷却により制御した。上液の分散状態は、本分散時に10分おきに沈降速度を確認し、10%以下になるようにした。
【0144】
〔比較例1〕
実施例1の電極電解質分散体に替えて合成例2で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の水/1,2−ジメトキシエタン/1−メトキシ−2−プロパノールの混合溶剤にスターラーで溶解した10重量%溶液を用いた。具体的な触媒調製方法は下記の通りである。
【0145】
PtRu担持カーボン粒子(田中貴金属工業株式会社製「TEC81E94」)7.15g、蒸留水8.91g、上記電極電解質溶液14.70g、1,2−ジメトキシエタン18.47g、1−メトキシ−2−プロパノール0.85gを順に脱泡攪拌機(株式会社シンキー、ARV−310)で事前に混合した。得られた均一混合物を分散機(プライミクス株式会社、FM−56−50)で分散し、電極ペーストを得た。この電極ペーストを用いて、実施例1と同様にして膜−電極接合体を作製した。
【0146】
各実施例、比較例で得られた電極電解質分散体の特性を評価した結果を表1に示す。
【0147】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、化合物(D−1)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、スルホン化ポリマー(1)の1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、スルホン化ポリマー(2)の1H−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)または(A−4)からなる群から選ばれる少なくとも1つ構成単位(A)と、下記一般式(B−1)または(B−2)で表される構成単位(B)と、下記一般式(C−1)で表される構成単位(C)とを有するスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体(以下、「共重合体」という。)がメジアン径0.1〜5μmで分散媒中に分散されていることを特徴とする電極電解質分散体。
【化1】

(式中、R1〜R19は互いに独立であり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化
アルキル基、アリール基、シアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Wは単結合、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CF2p−(ここで、p
は1〜10の整数である)、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Jは単結合、−O−、−S−、−CH2−、CO−、−SO2−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CH32−、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示す。)
【化2】

(式中、R20〜R35は互いに独立であり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基、シアノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Tは単結合、−CO−、−SO2−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10
の整数である)、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の原子または基を示し、Qは単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CO−、−SO2−、−(CF2p−(ここで、pは1〜10の整数である)、−C(CH32−、または−C(CF32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示す。R20〜R35は、T、Qは、少なくとも1つ以上のフッ素原子を含む。)
【化3】

(式中、Yは−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)f
−(fは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示し、Zは直接結合または、−(CH2)h−(hは1〜10の整数である)、−C(CH3)2−、−O−、−S−からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を示し、Arはスルホン酸基を有する芳香族基を示す。jは0〜10の整数を示し、kは0〜10の整数を示し、iは1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
前記共重合体が、該共重合体を構成する全構成単位100モル%に対して、構成単位(A)を5〜85モル%及び構成単位(B)を10〜90モル%有することを特徴とする請求項1に記載の電極電解質分散体。
【請求項3】
前期分散媒が、その全量100質量%に対して、水を0.01〜20質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電極電解質分散体。
【請求項4】
燃料電池用である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極電解質分散体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一に記載の電極電解質分散体と、触媒粒子とを含むことを特徴とする電極ペースト。
【請求項6】
請求項5に記載の電極ペーストから形成されてなることを特徴とする電極。
【請求項7】
請求項6に記載の電極を、高分子電解質膜の少なくとも片面に備える膜−電極接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−3435(P2011−3435A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146346(P2009−146346)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】