説明

燃料電池発電システム

【課題】結露に伴う漏電、補機の故障を防止することが可能な燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】燃料ガスと酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池1と、燃料電池1を囲む筐体15と、筐体15内に設置された、制御基板18と、少なくとも筐体15の天板15eの内側壁面に取り付けられた断熱材27と、筐体15内において、燃料電池1が存在する第1空間と制御基板18が存在する第2空間とを仕切る仕切板17と、第2空間を形成する筐体15の側面に設けられた第1吸気部23と、第1空間を形成する筐体15の側面に設けられた排気部25とを備え、第1吸気部23より吸気された空気が制御基板18上を通過した後、第2空間の上方より第1空間に流入し、流入した後、排気部25より排出されるように構成されている、燃料電池発電システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を用いて発電を行う燃料電池発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池発電システムでは、アノード排ガス中の水滴、カソード排ガス中の水滴や、降雨による水滴が本体内部に侵入することを防止することによって、本体内部における結露対策を行っていた。
【0003】
具体的には、吸気部には水を遮断するためのギャラリーが設けられており、又、排気部には、仕切板が設けられており、本体内部への水滴の侵入が防止されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−259491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に示すような方法では、水滴は防ぐことが出来るものの、細かな水粒子、水蒸気等が内部に侵入することを防ぐことは出来なかった。そのため、細かな水粒子が装置内部に侵入し、結露の発生する要因となっていた。そして、結露によって、漏電、燃料電池を動作させるための補機の故障などが発生する可能性があった。
【0006】
又、特許文献1に示す方法では、外部からの水滴の侵入は防ぐことが可能であるが、(a)アノード排ガスを吸気する場合、(b)カソード排ガスを吸気する場合、(c)本体内部のシールが不十分であり、シール部から蒸気が漏れる場合、(d)空気抜き弁から蒸気が漏れる場合、(e)冷却水タンクや凝縮水タンクが開放になっている場合、等の装置内部で発生する水蒸気によって生じる結露、又は、燃料電池を冷却するための冷水が流通している配管部分に生じる結露に対する対策はなされていなかった。
【0007】
上記従来の課題を考慮して、本発明の目的は、結露に伴う、漏電、補機の故障を防止することが可能な燃料電池発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の本発明は、
燃料ガスと酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池を囲む筐体と、
前記筐体内に設置された、制御基板と、
少なくとも前記筐体の天板の内側壁面に取り付けられた断熱材と、
前記筐体内において、前記燃料電池が存在する第1空間と前記制御基板が存在する第2空間とを仕切る仕切板と、
前記第2空間を形成する前記筐体の側面に設けられた第1吸気部と、
前記第1空間を形成する前記筐体の側面に設けられた排気部とを備え、
前記第1吸気部より吸気された空気が前記制御基板上を通過した後、前記第2空間の上方より前記第1空間に流入し、前記流入した後、前記排気部より排出されるように構成されている、燃料電池発電システムである。
【0009】
又、第2の本発明は、
前記燃料電池を冷却するための冷却水を貯蔵するための冷却水タンクを備え、
前記冷却水タンクは、前記筐体内に対して大気開放されている、第1の本発明の燃料電池発電システムである。
【0010】
又、第3の本発明は、
前記燃料電池のアノード側及び/又はカソード側の排ガス中に含まれている水分を分離するための気液分離器と、
前記気液分離器によって分離された水分を貯蔵するための凝縮水タンクとを備え、
前記凝縮水タンクは、前記筐体内に対して大気開放されている、第1または第2の本発明の燃料電池発電システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結露に伴う漏電、補機の故障を防止することが可能な燃料電池発電システムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる実施の形態における燃料電池発電システムの構成図
【図2】本発明にかかる実施の形態における燃料電池発電システムの斜視図
【図3】本発明にかかる実施の形態における燃料電池発電システムの吸気部近傍の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態における燃料電池発電システムの構成図である。図1に示すように、本実施の形態の燃料電池発電システムは、カソードに供給される空気とアノードに供給される水素を用いて発電を行う燃料電池1と、都市ガスなどの原料から水素を生成するための燃料処理器2とを備えている。又、燃料電池1を冷却するための冷却水を貯蔵する冷却水タンク3と、燃料電池1と冷却水タンク3の間を冷却水を循環させるための冷却水配管4が設置されている。
【0014】
又、冷却水の流通方向を基準として、燃料電池1の下流側の冷却水配管4には、熱交換器5が設置されている。この熱交換器5を通るように、貯湯循環水流路6が配置されており、燃料電池1を冷却し高温となった冷却水から、貯湯循環水流路6の水に熱が伝えられ、温水としてユーザーが利用することが出来る。この貯湯用の水の流通方向を基準として、熱交換器5の下流側には、貯湯循環水流路6内の空気を抜くための空気抜き弁7が設置されている。
【0015】
又、アノード排ガス流路8上には、アノード排ガスを気液分離させることによって凝縮水を取り出すためのオートドレイン9が設置されており、取り出した凝縮水は、凝縮水貯蔵配管を通って凝縮水タンク10に貯蔵される。この凝縮水タンク10には、凝縮水を排水するための排水路11が配置されており、排水路11上には、排水路開閉弁12が設置されている。凝縮水タンク10内の凝縮水の量が多くなった場合には、適宜排水される。
【0016】
又、凝縮水タンク10と冷却水タンク3は、凝縮水供給配管13によって連結されており、凝縮水供給配管13上には、凝縮水を濾過するための純水装置14が設置されている。冷却水タンク3内の冷却水が蒸発などにより不足した場合には、凝縮水が純水装置14によって濾過され、冷却水として冷却水タンク3内に送り込まれる。
【0017】
尚、図1では、本実施の形態の燃料電池発電システムの概略図を示しているため、冷却水配管4及び凝縮水供給配管13に設置されているポンプ等は図示していない。
【0018】
図2は、図1で説明した本実施の形態の燃料電池発電システムを筐体に組み込んだ状態の斜視図である。
【0019】
図2に示すように、燃料電池1は、冷却水タンク3とともに筐体15の上部の載置台16上に載置されており、載置台16の下方には、燃料処理器2、オートドレイン9、及び凝縮水タンク10が配置されている。又、載置台16と筐体15の右側面15aとの間には、熱交換器5が配置されており、この熱交換器5の近傍に空気抜き弁7が配置されている。又、熱交換器5を通るように下方から貯湯循環水流路6が配置されており、この貯湯循環水流路6は、筐体15の外部の貯湯タンクへと連結している。尚、載置台16は、筐体15の奥に位置する側面15bの内側壁面とは接しているが、手前に位置する側面15cの内側壁面とは接していない。すなわち、手前に位置する側面15cの内側壁面と載置台16の間には隙間20が設けられている。
【0020】
又、載置台16の左側面15d側には、筐体15を左右に分割するように仕切板17が設置されている。この仕切板17の左側面15d側には、制御基板18及びインバーター19が配置されている。尚、仕切板17は、筐体15の底面15fの内側壁面には接しているが、筐体15の天板15eの内側壁面に接しておらず、仕切板17と天板15eの間には隙間21が設けられている。尚、この隙間20、21は、図2において点線で示している。
【0021】
又、天板15eの内側壁面には、断熱材27が設置されている。この断熱材27としては、燃料電池1の触媒を被毒する物質である硫黄成分、塩素成分を発生しないものが好ましい。具体的には、発泡EPDM、フッ素ゴム、CR系ゴムなどが挙げられる。
【0022】
又、筐体15の底面15fには、結露等によって発生した水分を排出するためのドレイン29が設けられている。図示していないが、底面15fにはドレイン29に接続している溝と、この溝に向かって傾斜が設けられている。
【0023】
又、熱交換器5の近傍の右側面15aには吸気部22が、制御基板18の近傍の左側面15dには吸気部23が形成されている。更に、手前に位置する側面15cの底部にも、吸気部24が形成されている。又、奥に位置する側面15bの上部には、排気部25が形成されており、排気部25には排気のためのファン26が設けられている。
【0024】
図3は、吸気部24の外観を示す斜視図である。図3に示すように、吸気部24は、側面15cに筐体開口部24cを有しており、筐体開口部24cは、覆い部24aによって覆われている。筐体開口部24cよりも下方に、覆い部24aによって開口部24bが形成されている。この開口部24bから吸引された外気は、筐体開口部24cを介して筐体15内部へと送り込まれる。尚、図3の矢印は、空気の流れを示している。又、吸気部22、23も吸気部24と同様の構造である。又、排気部25は、ファン26の外側に覆い部が配置されている。
【0025】
上記構成の本実施の形態の燃料電池発電システムの動作時には、燃料処理器2の改質部が600℃に保持され、制御基板18等からも発熱する。これに伴って、筐体15内部は高温となる。又、同時に、ファン26が動作し、吸気部22、23、24から外気が吸引され、排気部25から筐体15内の気体が排出されることにより換気が行われ、筐体15内の温度が下げられる。図2における矢印は、空気の流れを示している。
【0026】
ここで、吸気部22、23、24、及び排気部25には、覆い部が形成されているため、雨天においても、水滴は筐体15の内部には侵入しない。しかしながら、外気に含まれている細かな水粒子や、水蒸気は、筐体15内に吸引される。筐体15内は、燃料電池発電システムが動作しているため、温度が高くなっており、筐体15を挟んで外気との温度差が生じている。
【0027】
本実施の形態では、天板15eに断熱材27を配置しているため、天板15eの内側壁面には結露が生じず、側面15a、15b、15c、15dの内側内壁で結露により発生した水滴は、内壁をつたって底面15fに落下し、底面15fで発生した水滴とともにドレイン29により排水される。従って、天板で生じた水滴が落下することがないため漏電を防ぐことが可能となる。
【0028】
このように、天板15eの内側壁面にのみ断熱材27を配置することは、断熱材27を貼る面積が少なくて済むため、コストを最小限に抑える効果を有している。又、結露により生じた水滴は、側面では内壁をつたって落下するが、天板では基板等に落下するため、天板での結露が最も問題となっていた。そのため、本実施の形態のように、天板15eの内側壁面にのみ断熱材を配置することは、コストを最小限に抑えた上で、最も結露防止に効果的である。
【0029】
又、天板15e以外の内側壁面に断熱材27を配置しないことによって、結露しても排出可能な、天板15e以外の部分で積極的に結露させることとなる。このように積極的に結露させることにより筐体15内部の気体が含んでいる水分量を減らすことが出来るため、天板15eにおける結露を出来るだけ発生させないようにする効果も得ることができる。
【0030】
又、側面及び底面の内側壁面の全てに断熱材を設けた場合には、筐体15内部の放熱の効率が悪くなることも考えられるため、断熱材27を配置する面積は少ない方が好ましい。
【0031】
又、本実施の形態の燃料電池発電システムは、(a)水分を含んでいるアノード排ガスを吸気部22、23、24から吸引した場合、(b)及びカソード排ガスを吸引した場合、(c)筐体15内部の配管のシールが不十分な部分から蒸気が漏れる場合、(d)空気抜き弁7から蒸気が漏れる場合、(e)冷却水タンク3や凝縮水タンク10が筐体15の内部に大気開放されている場合、等の筐体15内部から発生する水蒸気が結露した場合であっても漏電を防止することが出来る。
【0032】
尚、本実施の形態では、天板15eの内側壁面にのみ断熱材27を配置したが、本発明の低温の冷却水が流通する経路部分の一例に相当する、図1に示した熱交換器5より下流側且つ燃料電池1の上流側に位置する冷却水配管4、凝縮水供給配管13、及び凝縮水貯蔵配管を少なくとも覆うように断熱材27を配置してもよい。このような構成とすることで、燃料電池1を冷却する前及び熱交換器5にて放熱した後の低温水が流通している配管近傍で生じる結露を防ぐことが出来る。
【0033】
又、本実施の形態では、天板15eの内側壁面の全部に断熱材27を配置しているが、一部に配置してもよい。一部に断熱材27を配置する場合には、例えば、制御基板18の上方に位置する天板15eの内側壁面に配置すれば、結露水が基板に落下することを効果的に防止することが出来る。
【0034】
又、本実施の形態では、天板15eの内側壁面にのみ断熱材27を配置しているが、電装部が配置されている周辺及び上方の内壁部分に断熱材を配置してもよい。このような構成とすることによって、電装部の周辺及び上方で発生する結露が防止され、水滴が電装部のハーネス等をつたって基板に落下することを防止する事が出来る。
【0035】
又、本発明の補機は、例えば、本実施の形態では筐体15内に設置された機器である、燃料処理器2、熱交換器5、凝縮水タンク10等に相当し、燃料電池1を駆動させるための機器の全てが筐体15内に位置しているが、一部が筐体15外に設置されていてもよい。
【0036】
又、本実施の形態では、換気の目的のための吸気部のみ設置しているが、燃料電池1のカソードに供給する空気を吸引するための吸気部を設けてもよい。
【0037】
又、本実施の形態では、アノード排ガスのみから凝縮水を取り出しているが、カソード排ガスからも取り出しても良い。
【0038】
(実施例)
図2に示した天板の内側壁面にのみ断熱材を配置した燃料電池発電システムと、天板の内側壁面並びに電装部周辺及び上方の内側壁面に断熱材を配置した燃料電池発電システムの2種類を用い、運転中に放水を行い、放水条件下において、起動、発電、停止を正常に行うことが可能か試験を行った。又、放水終了後、入力端子とアースの絶縁抵抗を測定し、漏電がないかを確認した。
【0039】
放水量は、霧によって2.5L/min、シャワーによって35L/min、放水管によって15L/minの条件で行った。又、放水は同時に行い、燃料電池発電システムに直接かけた。又、霧は上方から、シャワーは斜上方から、放水管は正面から放水を行った。
【0040】
又、比較例として、断熱材を全く配置していない燃料電池発電システムについても同様の試験を行った。
【0041】
結果として、断熱材を配置した2種類の燃料電池発電システムでは、放水中にも安定運転することが可能であり、放水後の絶縁抵抗は100MΩ以上であった。
【0042】
又、比較例の燃料電池発電システムでは、放水中の正常運転は不可能であり、放水後の絶縁抵抗は10MΩ以下と絶縁破壊がおこっていた。又、筐体内部では、天板からの結露水の落下が発生していた。
【0043】
このように、少なくとも天板の内側壁面に断熱材を配置することによって、燃料電池発電システムの結露水による漏電を防止する効果が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる燃料電池発電システムは、結露に伴う、漏電、補機の故障を防止することが可能な効果を有し、屋外に設置されている燃料電池発電システム等として有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 燃料電池
2 燃料処理器
3 冷却水タンク
4 冷却水配管
5 熱交換器
6 貯湯循環水経路
7 空気抜き弁
8 アノード排ガス流路
9 オートドレイン
10 凝縮水タンク
11 排水路
12 排水路開閉弁
13 凝縮水供給配管
14 純水装置
15 筐体
15e 天板
18 制御基板
22、23、24 吸気部
25 排気部
27 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスを用いて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池を囲む筐体と、
前記筐体内に設置された、制御基板と、
少なくとも前記筐体の天板の内側壁面に取り付けられた断熱材と、
前記筐体内において、前記燃料電池が存在する第1空間と前記制御基板が存在する第2空間とを仕切る仕切板と、
前記第2空間を形成する前記筐体の側面に設けられた第1吸気部と、
前記第1空間を形成する前記筐体の側面に設けられた排気部とを備え、
前記第1吸気部より吸気された空気が前記制御基板上を通過した後、前記第2空間の上方より前記第1空間に流入し、前記流入した後、前記排気部より排出されるように構成されている、燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記燃料電池を冷却するための冷却水を貯蔵するための冷却水タンクを備え、
前記冷却水タンクは、前記筐体内に対して大気開放されている、請求項1記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記燃料電池のアノード側及び/又はカソード側の排ガス中に含まれている水分を分離するための気液分離器と、
前記気液分離器によって分離された水分を貯蔵するための凝縮水タンクとを備え、
前記凝縮水タンクは、前記筐体内に対して大気開放されている、請求項1または2記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−182149(P2012−182149A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118814(P2012−118814)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2005−42375(P2005−42375)の分割
【原出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】