説明

燃料電池発電システム

【課題】系統停電時に自立発電運転を行っている燃料電池を劣化させることなく安全に停止させることができる燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】燃料電池本体1で発電された電力を系統20に連系させる系統連系リレー33を備え、系統停電時には系統連系リレー33を開放して燃料電池の自立発電運転を行う燃料電池発電システムにおいて、自立発電運転停止処理用の電源として蓄電池38を設ける。そして、自立発電運転中に自立発電運転の停止要求があったときには、蓄電池38に蓄電された電力を用いて燃料電池を停止させるための発電運転停止処理を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料電池発電システムに関し、より詳細には、系統停電中に自立発電運転を行う燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用のコージェネレーションシステムなどに使用される燃料電池発電システムは、燃料電池を備えた燃料電池ユニットAと、燃料電池の排熱を回収する貯湯タンクを備えた排熱回収ユニットBとを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、このような燃料電池発電システムの一例を示している。この図5に示す燃料電池発電システムは、燃料電池ユニットAと、排熱回収ユニットBとを別ユニットで構成している。
【0004】
上記燃料電池ユニットAは、直流電力を発電する燃料電池本体(燃料電池)1と、この燃料電池本体1の付属機器で構成される補機本体2とを主要部として備えている。燃料電池本体1は、天然ガス、石油などの炭化水素系の燃料を水蒸気改質することによって得られる水素ガス(燃料ガス)と空気(酸素)とを用いて直流電力を発電する周知の構成の発電装置であって、この燃料電池本体1には、たとえば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や固体高分子形燃料電池(PEFC)などが用いられている。
【0005】
補機本体2は、燃料電池本体1の起動や制御などに用いる周辺機器で構成されており、燃料電池本体1で発電された直流電力を商用電源などの系統20に連系させるためのパワーコンディショナ3と、燃料電池本体1や燃料電池ユニット内の図示しない各種アクチュエータ(たとえば、排熱回収ユニットBの貯湯タンク内の湯水を燃料電池ユニットA内の熱交換器(図示せず)に強制循環させるための循環ポンプ)などの制御を行うマイコン(FC制御部)を備えたFC制御基板4とが含まれている。なお、ここで「FC」とは、「燃料電池(Fuel Cell)」の略称である。
【0006】
上記排熱回収ユニットBは、燃料電池ユニットAに設けられた熱交換器で加熱昇温された温水を貯湯する貯湯タンク5と、貯湯タンク5内の湯水をさらに加熱昇温させる際に使用する補助熱源機6と、補助熱源機6や排熱回収ユニット内に設けられる図示しない各種アクチュエータ(たとえば、熱交換器から供給される温水を貯湯タンク5をバイパスして熱交換器に戻す流路を形成させる流路切替弁や、熱交換器に供給する湯水を冷却する冷却装置)などの制御を行うマイコン(EHU制御部)を備えたEHU制御基板7とを主要部として備えている。なお、ここで「EHU」とは、「排熱回収ユニット(Exhaust Heat Unit)」の略称である。
【0007】
燃料電池ユニットAと排熱回収ユニットBとの間には、貯湯タンク5内の低温の湯水を燃料電池ユニットAの熱交換器に供給するための排熱低温配管8と、熱交換器で加熱昇温された高温の温水を排熱回収ユニットBの貯湯タンク5に供給するための排熱高温配管9とが配設される。また、EHU制御基板7のマイコンとFC制御基板4のマイコンは、相互に通信できるようにユニット間通信線10によって通信接続されている。また、上記EHU制御基板7には、これら燃料電池ユニットAや排熱回収ユニットBを屋内の台所や浴室から遠隔操作したり、台所や浴室においてこれら燃料電池ユニットAや排熱回収ユニットBの状況(たとえば、発電状況や貯湯タンク5の状況など)を表示・監視するためのリモコン11(台所リモコン11aや浴室リモコン11bなど)がリモコン通信線12を介して通信接続されている。
【0008】
そして、パワーコンディショナ3は、図6に示すように、燃料電池本体1から供給される直流電力を昇圧するDC−DCコンバータ31と、DC−DCコンバータ31で昇圧された直流電力を交流電力に変換するDC−ACインバータ32とを備えており、DC−ACインバータ32で生成された交流電力(AC200V)が系統連系リレー(開閉器)33を備えた電源線13を介して屋内の配電盤21に供給され、配電盤21を介して系統20と連系できるようになっている。また、このDC−ACインバータ32は、FC制御基板4に供給する交流電力(AC100V)も生成するようになっており、当該交流電力(AC100V)が補機用交流電源線14を介してFC制御基板4に供給されるようになっている。さらに、このパワーコンディショナ3には、FC制御基板4に供給する直流電力(図示例では、DC24V)を生成するDC−DCコンバータ34も備えられており、このDC−DCコンバータ34で生成された直流電力(DC24V)が補機用直流電源線15を介してFC制御基板4に供給されるようになっている。
【0009】
しかして、このように構成されてなる燃料電池発電システムでは、パワーコンディショナ3は、燃料電池本体1が発電をしているときには、発電された直流電力を補機用の電源(AC100VとDC24V)に変換して補機類(燃料電池本体1の起動・運転・停止に必要な周辺機器)に供給する一方、燃料電池本体1が発電を行っていないときには、電源線13を介して系統20から供給される電力を補機用の電源に変換して(上記DC−ACインバータ32を逆動作させてAC−DCコンバータとして用いて)補機類に供給するようになっている。
【0010】
一方、排熱回収ユニットBは、配電盤21からの交流電力(AC100V)が交流電源線16を介してEHU制御基板7に供給されるようになっており、この交流電力(AC100V)が補助熱源機用電源線17を介して補助熱源機6にも供給されている。つまり、排熱回収ユニットBは、補助熱源機6およびEHU制御基板7のそれぞれに、配電盤21から供給される交流電力から所望の直流電力(たとえば、各種電磁弁やリモコン11などに供給するDC15Vなど)を生成する電源回路(整流回路やスイッチング電源など)が備えられており、系統20から供給される電力によって動作するようになっている。
【0011】
ところで、このような構成の燃料電池発電システムでは、系統20が停電した場合には、燃料電池本体1で発電した電力を系統側に供給(売電)することができない(禁止されている)ことから、燃料電池本体1が発電運転中に系統20が停電したような場合には、燃料電池ユニットAを系統20から解列して自立発電運転を行わせたいが、上述した構成では、排熱回収ユニットBは系統20から電力供給を受けるようになっているため、系統20の停電中に排熱回収ユニットBを使用することができない。
【0012】
そのため、最近では、系統停電時の自立発電運転で発電された電力を排熱回収ユニットBに供給し、系統停電時においても排熱回収ユニットBが動作できるようにした燃料電池発電システムも提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−151978号公報の図1
【特許文献2】特開2009−243353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記いずれの構成の燃料電池発電システムにおいても、系統停電時における補機類への電力供給は、自立発電運転によって発電された電力を利用するものであることから、この状態で上記FC制御部に対して自立発電運転の停止要求があり、燃料電池本体1での発電を停止させてしまうと、補機類に対する電力供給も停止することになり、燃料電池本体1が高温状態のままとなって劣化を早めるおそれがある。
【0015】
すなわち、発電運転中の燃料電池本体1は高温(たとえば、700℃程度)になっていることから、発電中の燃料電池の運転停止は、燃料電池本体1の温度を徐々に下げながら行う必要がある。通常、この種の燃料電池において発電運転を停止する場合、(1)発電電力を最低出力まで低下させる、(2)燃料電池の補機である空気ブロワや、水、空気、ガスの各供給経路の電磁弁や、排熱回収ポンプを一斉に停止させる、(3)一定時間(たとえば、十数時間程度)が経過するまで燃料電池本体1の温度低下を監視する、(4)燃料電池本体1の温度が所定温度(たとえば、200℃)未満になることを条件に空気ブロワを動作させて残留ガスを排出する、といった一連の処理(発電運転停止処理)手順を経るところ、これらの処理を行うには燃料電池の補機類が動作していることが条件となるため、これらの処理が完了する前に補機類への電力供給が停止すると、燃料電池本体1が高温のまま放置されることになって燃料電池のスタックの劣化を招くことになる。
【0016】
また、この他、補機類に対する電力供給が停止してしまうと、一度停止させた燃料電池本体1を再起動することができなくなるという問題もある。
【0017】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、系統停電時に自立発電運転を行っている燃料電池を劣化させることなく安全に停止させることができる燃料電池発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の燃料電池発電システムは、燃料電池で発電された電力を系統に連系させる開閉器を備え、系統停電時には上記開閉器を開放して燃料電池を系統から解列させた状態で、燃料電池の自立発電運転を行えるように構成された燃料電池発電システムにおいて、上記燃料電池の自立発電運転停止処理用の電源となる蓄電池を備えてなり、上記燃料電池の制御部は、上記自立発電運転の停止要求があったときに、上記蓄電池に蓄電された電力を用いて燃料電池の発電運転停止処理を実行させることを特徴とする。
【0019】
すなわち、この燃料電池発電システムでは、燃料電池の自立発電運転停止処理用に蓄電池を備えている。そして、自立発電運転の停止要求があったときは、上記蓄電池に蓄電された電力を用いて燃料電池の発電運転停止処理が行われるので、発電運転を停止させても系統が停電していないときと同じ手順で発電運転を停止させることができ、燃料電池が高温のまま停止することによる劣化を回避することができる。
【0020】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池発電システムは、請求項1に記載の燃料電池発電システムにおいて、上記燃料電池の制御部は、上記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段を備えてなり、上記自立発電運転の停止要求があったときは、この蓄電量検出手段で検出される蓄電量に応じて上記発電運転停止処理の内容を選択することを特徴する。
【0021】
すなわち、この請求項2に係る燃料電池発電システムでは、燃料電池の制御部が蓄電池の蓄電量に応じて発電運転停止処理の内容を選択するので、あらかじめ燃料電池の制御部に、蓄電池の蓄電量に応じて複数通りの発電運転停止処理を記憶させておくことにより、蓄電量に応じて最適の発電運転停止処理(たとえば、処理の各工程の時間を短縮したり、一部の工程を省略したりすることなど)ができ、自立発電運転の停止に伴う燃料電池の劣化を最小限に抑えることができる。
【0022】
また、本発明の請求項3に記載の燃料電池発電システムは、請求項2に記載の燃料電池発電システムにおいて、上記燃料電池の制御部は、前記蓄電量検出手段で検出される蓄電量が所定値以上である場合、自立発電運転停止後に燃料電池の再起動要求があったときには、上記蓄電池に蓄電された電力を用いて燃料電池の再起動処理を実行させることを特徴とする。
【0023】
すなわち、この請求項3に係る燃料電池発電システムでは、上記蓄電池の蓄電量が燃料電池の再起動を行うに足りるだけある(所定値以上の)場合には、燃料電池の制御部は、燃料電池の再起動要求に応じて蓄電池の電力を用いて燃料電池を再起動させる。したがって、この請求項3に係る燃料電池発電システムによれば、系統停電中であっても燃料電池を再起動させることができる。
【0024】
また、本発明の請求項4に記載の燃料電池発電システムは、請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池発電システムにおいて、上記蓄電池は、上記系統または上記燃料電池から供給される電力を上記燃料電池の制御部ならびに燃料電池の補機類に供給する電源供給ラインにスイッチ手段を介して並列に接続されており、このスイッチ手段を開放することで上記蓄電池からの電力が上記燃料電池の制御部ならびに燃料電池の補機類に供給されるように構成されていることを特徴とする。
【0025】
すなわち、この請求項4に係る燃料電池システムでは、蓄電池は系統または燃料電池から燃料電池の制御部ならびに燃料電池の補機類に電力を供給する電源ラインに蓄電池が接続されているので、蓄電池は系統または燃料電池からの出力電力によって充電される。そして、系統が停電し、かつ、燃料電池が発電しないときには、スイッチ手段の開放によって蓄電池に蓄電された電力が燃料電池の制御部ならびに燃料電池の補機類に供給される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、系統停電によって燃料電池が自立発電運転を行っているときに、自立発電運転の停止要求があったときには、蓄電池に蓄電された電力を用いて燃料電池の発電運転停止処理を実行するので、系統が停電していないときと同じ手順で発電運転を停止させることができ、高温のまま燃料電池が停止することによる燃料電池の劣化を回避することができる。
【0027】
また、蓄電池の蓄電量が燃料電池の再起動を行うに足りる電力を有する場合には、燃料電池の再起動要求に応じて蓄電池の電力を用いて燃料電池が再起動されるので、系統停電中であっても燃料電池を再起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る燃料電池発電システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】同燃料電池発電システムにおけるスイッチ手段の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】同燃料電池発電システムの他の実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図4】同燃料電池発電システムにおける自立発電運転時の電力制御手順を示すフローチャートである。
【図5】従来の燃料電池発電システムを適用した家庭用のコージェネレーションシステムの一例を示す概略構成図である。
【図6】従来の燃料電池発電システムにおけるパワーコンディショナの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1は、本発明に係る燃料電池発電システムの概略構成を示している。この図1に示す燃料電池発電システムは、図5に示した従来の燃料電池発電システムと同様に、家庭用のコージェネレーションシステムに適用した燃料電池システムを示している。したがって、従来の燃料電池システムと構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
この燃料電池発電システムは、従来の燃料電池発電システムおける排熱回収ユニットBへの電力供給方法を改変するとともに、系統20の停電時に行う自立発電運転における発電運転停止処理用の電源を備えたことを主たる特徴としている。
【0031】
図1に示すように、この燃料電池発電システムは、燃料電池ユニットAと、排熱回収ユニットBを主要部として備えている。図示例では、便宜上、パワーコンディショナ3を燃料電池ユニットAとは別体に示しているが、パワーコンディショナ3は燃料電池ユニットA内に内蔵されている。
【0032】
燃料電池ユニットAは、スタックなどの燃料電池本体1と、パワーコンディショナ3と、燃料電池の制御部(FC制御部)を構成するマイコン50や燃料電池の補機類51の駆動回路などが実装されたFC制御基板4とを主要部として構成されている。
【0033】
ここで、パワーコンディショナ3は、燃料電池本体1で発電された直流電力(DC80〜160V)を昇圧するDC−DCコンバータ31とFC制御基板4に供給する直流電力(DC24V)を生成するDC−DCコンバータ34とを備えた電源基板35と、電源基板35でDC220V程度に昇圧された直流電力を系統20に連系可能な交流電力(単相AC200V)に変換するDC−ACインバータ32を備えた電源基板36と、電源基板36で変換された交流電力を系統20に連系させるための系統連系リレー(開閉器)33とを備えている(図6参照)。
【0034】
そして、本実施形態の燃料電池発電システムでは、これらの構成に加えて、パワーコンディショナ3の電源基板35に、排熱回収ユニットBに供給する直流電力(DC15V)を生成するDC−DCコンバータ(図示せず)が備えられており、このDC−DCコンバータで生成されたDC15Vの直流電力が排熱回収ユニットBに供給されるようになっている。
【0035】
また、このパワーコンディショナ3には、自立発電運転停止処理用の電源を構成する電源回路37が備えられている。この電源回路37は、蓄電池38と、蓄電池38への充電を制御する充電回路39と、FC制御基板4と電源基板35との電気的な接続を解除して、蓄電池38に充電された電力をFC制御基板4に供給させるスイッチとなる電源切替リレー(スイッチ手段)40とを主要部として備えている。
【0036】
蓄電池38は、直流電力(DC24V)を蓄電する充電式の電池で構成されており、この蓄電池38の正極および負極の各端子が電源基板35とFC制御基板4を接続する補機用直流電源線(電源供給ライン)15,15に並列に接続されている。より詳細には、蓄電池38の負極(−極)が電源切替リレー40を介して電源基板35の負極と接続されるとともに、蓄電池38の正極(+極)が逆流防止用のダイオード41を介して電源基板35の正極と接続される。また、充電回路39は、一端が電源基板35の正極と接続されるとともに、他端が逆流防止用のダイオード42を介して蓄電池38の正極に接続されている。
【0037】
すなわち、この蓄電池38は、上記電源切替リレー40を短絡(閉成)させることによって、電源基板35からFC制御基板4に供給される直流電力により充電されるようになっており、電源切替リレー40を開放(開成)することによって、蓄電池38に充電された直流電力がFC制御基板4(マイコン50や補機類51)に供給されるようになっている。なお、充電回路39には、蓄電池38の蓄電量(充電量)を検出する蓄電量検出手段(図示せず)が備えられており、この蓄電量検出手段で検出される蓄電量に基づいて充電回路39が蓄電池38への充電の開始/停止を制御するようになっている。また、この蓄電量検出手段で検出される蓄電池38の蓄電量に関する情報はマイコン50にも与えられ、後述するマイコン50による制御に利用される。
【0038】
FC制御部を構成するマイコン50は、燃料電池ユニットAの各部に設けられる図示しないセンサ類から与えられる情報や、排熱回収ユニットBのEHU制御部との通信(リモコン11との通信を含む)によって得られる情報などに基づいて、燃料電池ユニットAの各部を制御する制御装置であって、このマイコン50には、燃料電池ユニットAを制御するための各種制御プログラムや制御データが記憶されている(詳細は後述する)。
【0039】
上記排熱回収ユニットBは、貯湯タンク5、補助熱源機6、EHU制御基板7を主要部として備えている。そして、本実施形態に示す排熱回収ユニットBでは、補助熱源機6を始めとする排熱回収ユニットBの各部(たとえば、貯湯タンク5の流路切替弁や冷却装置のファンなど)やEHU制御基板7に接続されるリモコン11は、パワーコンディショナ3の電源基板35から供給される直流電力(DC15V)に基づいて動作するように構成されている。
【0040】
なお、このリモコン11は、従来の燃料電池発電システムと同様に排熱回収ユニットBに備えさせることができるほか、図1の一点鎖線で示すように、燃料電池ユニットAのFC制御基板4(具体的には、マイコン50)側に接続されるように構成することも可能である。その場合、リモコン11はFC制御基板4から電力供給を受けるように構成しておくことで、後述する自立発電運転の停止後においてもFC制御基板4(蓄電池38)から電力供給を受けて操作可能な状態を維持することができる。
【0041】
次に、このように構成された燃料電池発電システムの動作について説明する。
この燃料電池発電システムでは、系統20が停電しておらず、かつ、燃料電池本体1が発電運転を行っている場合、燃料電池本体1で発電された電力はパワーコンディショナ3を介して系統20に連系される(系統連系リレー33は短絡させる)とともに、発電された電力がパワーコンディショナ3(電源基板35)を介して燃料電池ユニットAのFC制御基板4および排熱回収ユニットBに供給される。このとき、マイコン50は、上記電源切替リレー40を短絡させて蓄電池38を充電可能な状態にし、蓄電池38からFC制御部4への電力供給を遮断させている。
【0042】
これに対して、燃料電池本体1が発電運転を行っていない場合(発電停止中の場合)は、燃料電池ユニットAのFC制御基板4および排熱回収ユニットBには燃料電池本体1から電力を供給することができないので、この場合は、これらに対して系統20側から電力を供給する。すなわち、この場合、電源基板36のDC−ACインバータ32を逆動作させて直流電力を生成し、この直流電力から電源基板35がDC24VとDC15Vを生成して、FC制御基板4および排熱回収ユニットBに供給する。なお、このときもマイコン50は、上記電源切替リレー40を短絡させて蓄電池38を充電可能な状態にしている。
【0043】
そして、燃料電池本体1が発電運転中に系統20が停電した場合、マイコン50は、系統連系リレー33を開放して燃料電池本体1を系統20から解列するとともに、その状態で燃料電池本体1による発電運転を継続し、燃料電池に自立発電運転を行わせる。この自立発電運転中は、上述した通常の発電運転の場合と同様に、燃料電池本体1で発電された電力がパワーコンディショナ3の電源基板35を介して燃料電池ユニットAのFC制御基板4および排熱回収ユニットBに供給される。また、このとき、上記電源切替リレー40は短絡状態とされ、蓄電池38からFC制御部4への電力供給は遮断されたままとされる。
【0044】
そして、この自立発電運転中に燃料電池の制御部に自立発電運転の停止要求があったとき(たとえば、リモコン11で自立発電運転の停止操作がなされたり、あるいは、マイコン50が燃料電池本体1などの異常を検出して停止要求を発した場合など)には、マイコン50は、上記電源切替リレー40を開放し、蓄電池38に蓄電された電力を用いて、あらかじめマイコン50に記憶された手順にしたがって発電運転停止処理を行う。
【0045】
すなわち、マイコン50は、自立発電運転の停止要求があった場合、図2に示すように、系統20が停電しており(図2ステップS1でYes)、かつ、自立発電運転の停止要求によって発電を停止させることを条件(図2ステップS2でYes)に、電源切替リレー40を開放するようになっている(図2ステップS3参照)。なお、その他の場合は、上述したとおり、電源切替リレー40は短絡状態とされる(図2ステップS4参照)。
【0046】
ここで、マイコン50が実施する発電運転停止処理の内容は、一つの処理内容として特定しておくこともできるが、本実施形態では、上記蓄電量検出手段で検出される蓄電池38の蓄電量に応じてマイコン50が処理の内容を選択するようになっている。
【0047】
すなわち、マイコン50には、発電運転停止処理の手順としてあらかじめ複数通りの手順が記憶されており、マイコン50は蓄電池38の蓄電量に応じて(蓄電量で実施可能な範囲で)最適な手順を選択するように構成されている。具体的には、発電運転停止処理の手順は、通常の手順(系統20が停電していない状態で燃料電池本体1を停止させるときの手順)に従えば、(1)燃料電池本体1の発電電力を最低出力まで低下させる、(2)燃料電池の補機である空気ブロワや、水、空気、ガスの各供給経路の電磁弁や、排熱回収ポンプを一斉に停止させる、(3)一定時間(たとえば、十数時間程度)が経過するまで燃料電池本体1の温度低下を監視する、(4)燃料電池本体1の温度が所定温度(たとえば、200℃)未満になることを条件に空気ブロワを動作させて残留ガスを排出する、といった一連の手順の各工程を一定時間ずつ実施するようにプログラムされているが、これらすべての工程を通常の手順で行うには蓄電池38の蓄電量が不足する場合がある。本実施形態では、このような蓄電量に不足がある場合を想定して、マイコン50には、上述した通常の手順に加えて、処理の各工程の時間を短縮したり、あるいは、一部の工程を省略したり、さらには、一部の部品への電力供給を遮断する手順を含めるなどの数通りの発電運転停止処理手順が記憶されており、マイコン50はこれらのうちから蓄電池38の蓄電量で実施可能な処理手順(たとえば、時間短縮や省略された工程の少ない処理手順)を選択するように構成されている。
【0048】
なお、この発電運転停止処理手順の一例としては、たとえば、空気ブロワによる残留ガスの排出開始温度を高めに設定した処理手順や、空気ブロワによる残留ガスの排出時間を短縮した処理手順、リモコン11が燃料電池ユニットA側に設けられている場合には、リモコン11への通電を遮断する手順を含んだ処理手順、さらには、これらを組み合わせた手順などが採用できるが、その具体的な内容は適宜設定可能である。
【0049】
また、本実施形態の燃料電池発電システムでは、このような構成に加えて、マイコン50は、蓄電量検出手段で検出される蓄電池38の蓄電量が所定値以上である場合、つまり、上述した発電運転停止処理実行後においても燃料電池本体1を起動するに十分な電力が蓄電池38に蓄電されている場合には、自立発電運転停止後に燃料電池の再起動要求があれば、蓄電池38に蓄電された電力を用いて燃料電池本体1に対する再起動処理を実行するようになっている。
【0050】
すなわち、この場合、マイコン50は、自立発電運転停止後も電源切替リレー40を開放状態に維持し、燃料電池ユニットAに備えられるリモコン11を操作可能な状態に保つことで、リモコン11による燃料電池の再起動の指示を可能にし、当該指示があれば、蓄電池38に残っている電力を用いて燃料電池本体1を再起動させる処理を実行するようになっている。つまり、この構成を採用する場合、リモコン11は燃料電池ユニットA側に設けられる必要がある。
【0051】
このように、本実施形態に示す燃料電池発電システムでは、系統20の停電によって燃料電池本体1が自立発電運転を行っているときに、自立発電運転の停止要求があったときは、蓄電池38に蓄電された電力を用いて燃料電池本体1の発電運転停止処理を実行するようにしているので、高温のまま燃料電池本体1を停止させることによる燃料電池スタックの劣化を防止することができる。しかも、蓄電池38に燃料電池本体1を再起動させるに足る電力が残っている場合には、燃料電池の再起動要求に応じて燃料電池本体1を再起動することができるので、系統停電中であっても燃料電池の再起動を行うことができる。
【0052】
実施形態2
次に、本発明の第2の実施形態を図3および図4に基づいて説明する。
この第2の実施形態に示す燃料電池発電システムは、排熱回収ユニットBに供給する電力をDC15VからAC100Vに変更するとともに、系統20が停電したときでも使用できるコンセント(FC専用コンセント55)を屋内に設けている。その他の構成は上述した実施形態1と同様であるので、構成が共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
具体的には、本実施形態に示す燃料電池発電システムは、上述した実施形態1に示す燃料電池発電システムにおいてパワーコンディショナ3の電源基板35に備えられていた排熱回収ユニット用のDC15V出力のDC−DCコンバータを廃止し、その代わりに、電源基板36に備えられているDC−ACインバータ32からAC100Vの交流電力を出力して排熱回収ユニットBおよびFC専用コンセント55に供給するように構成している。
【0054】
より詳細には、この燃料電池発電システムでは、電源基板36に、排熱回収ユニットBおよびFC専用コンセント55に対してAC100Vを供給するAC100V出力電源線56を接続するための端子台(図示せず)を設けるとともに、系統20が停電していないときは系統20から得られるAC100Vを、また、系統20が停電し、かつ、燃料電池本体1が自立発電運転を行っているときには自立発電運転に伴ってDC−ACインバータ32で生成される交流電力から得られるAC100Vを上記端子台に供給する電源切替回路(図示せず)を設けている。なお、系統20が停電し、かつ、燃料電池本体1が自立発電運転を行っていない場合には、電源切替回路自体に電力が供給されないので、上記端子台にも電力は供給されない。また、系統停電が復旧し系統20からの電力供給が再開した場合には、マイコン50が系統復旧を検出して、上記電源切替回路を切り替えて系統20からの電力を端子台に供給する。
【0055】
これにより、排熱回収ユニットBおよびFC専用コンセント55には、系統20が停電し、かつ、燃料電池本体1が自立発電運転を行っていない場合以外は常にAC100Vが供給されるようになる。なお、これに伴って、本実施形態の排熱回収ユニットBには、AC100V出力電源線56を介して供給されるAC100Vから所望の直流電力を生成するAC−DCコンバータ(図示せず)が備えられる。
【0056】
次に、このように構成された燃料電池発電システムの動作について図4に基づいて説明する。
【0057】
この図4は、系統20の停電に伴う燃料電池本体1の自立発電運転時における電力制御の手順を示している。すなわち、マイコン50は、燃料電池本体1が発電中に系統20の停電を検出すると、系統連系リレー33を開放して燃料電池を系統20から解列するが、これらの処理を行うと(図4ステップS1〜S3参照)、マイコン50は、FC専用コンセント55と系統20の接続を遮断するとともに(図4ステップS4参照)、燃料電池本体1の発電能力を最大(定格出力)に制御して(図4ステップS5,S6参照)、FC専用コンセント55を燃料電池側に接続する(図4ステップS7参照)。つまり、上記電源切替回路による接続を、系統20側から自立発電運転によって生成される交流電力が供給されるDC−ACインバータ32側に切り替える。これにより、排熱回収ユニットBおよびFC専用コンセント55には燃料電池本体1で発電された電力が供給されるようになる。
【0058】
このようにして、燃料電池本体1で発電した電力を排熱回収ユニットBおよびFC専用コンセント55に供給すると、これらによる消費電力が少なければ燃料電池本体1の発電電圧は上昇し、反対に、これらによる消費電力が多ければ発電電圧は下降するので、この関係に基づいて、マイコン50は、発電電力が所定電圧(αV)以上であれば(図4ステップS8でYes)、燃料電池本体1の発電能力を下げる制御を行う(図4ステップS9参照)。一方、発電電力が第2所定電圧(βV)未満であれば(図4ステップS10でYes)、燃料電池本体1の発電能力を上げる制御を行う(図4ステップS11参照)。
【0059】
そして、系統停電が復旧すると(図4ステップS12でNo)、マイコン50は、FC専用コンセント55と燃料電池側との接続を遮断するとともに(図4ステップS13参照)、燃料電池本体1の発電能力を最小に制御して(図4ステップS14参照)、系統連系リレー33を接続すると(図4ステップS15参照)、FC専用コンセント55を系統20側に接続する(図4ステップS16参照)。つまり、この場合は、上記電源切替回路による接続を、DC−ACインバータ32側から系統20側に切り替える。これにより、排熱回収ユニットBおよびFC専用コンセント55には系統20からの電力が供給されるようになる。
【0060】
このように、本実施形態の燃料電池発電システムでは、系統停電時であっても燃料電池本体1が自立発電運転を行っていれば常にAC100Vの電力が供給されるFC専用コンセント55が備えられているので、系統停電時であっても動作させる必要のある電力負荷(たとえば、冷蔵庫や医療機器など)をこのFC専用コンセント55に接続しておくことで、系統停電によりこれらの電力負荷が動作を停止することを回避できる。
【0061】
なお、この実施形態においても、自立発電運転中に、自立発電運転の停止要求があったときは、マイコン50は、蓄電池38に蓄電された電力を用いて燃料電池本体1の発電運転停止処理を実行させる。また、蓄電池38に燃料電池本体1を再起動させるに足る電力が残っている場合には、再起動要求に応じて蓄電池38の電力を使って燃料電池本体1の再起動が行われる。
【0062】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料電池本体
2 補機本体
3 パワーコンディショナ
4 FC制御基板
5 貯湯タンク
6 補助熱源機
7 EHU制御基板
11 リモコン
15 補機用直流電源線(電源供給ライン)
20 系統
31 昇圧用のDC−DCコンバータ
32 DC−ACインバータ
33 系統連系リレー(開閉器)
38 蓄電池
39 充電回路
40 電源切替リレー(スイッチ手段)
50 マイコン(燃料電池の制御部)
51 補機類
A 燃料電池ユニット
B 排熱回収ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池で発電された電力を系統に連系させる開閉器を備え、系統停電時には前記開閉器を開放して燃料電池を系統から解列させた状態で、燃料電池の自立発電運転を行えるように構成された燃料電池発電システムにおいて、
前記燃料電池の自立発電運転停止処理用の電源となる蓄電池を備えてなり、
前記燃料電池の制御部は、前記自立発電運転の停止要求があったときに、前記蓄電池に蓄電された電力を用いて燃料電池の発電運転停止処理を実行させることを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記燃料電池の制御部は、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出手段を備えてなり、前記自立発電運転の停止要求があったときは、この蓄電量検出手段で検出される蓄電量に応じて前記発電運転停止処理の内容を選択することを特徴する請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記燃料電池の制御部は、前記蓄電量検出手段で検出される蓄電量が所定値以上である場合、自立発電運転停止後に燃料電池の再起動要求があったときには、前記蓄電池に蓄電された電力を用いて燃料電池の再起動処理を実行させることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記蓄電池は、前記系統または前記燃料電池から供給される電力を前記燃料電池の制御部ならびに燃料電池の補機類に供給する電源供給ラインにスイッチ手段を介して並列に接続されており、このスイッチ手段を開放することで前記蓄電池からの電力が前記燃料電池の制御部ならびに燃料電池の補機類に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97942(P2013−97942A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238200(P2011−238200)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】