説明

燃料電池装置、および燃料電池の運転方法

【課題】出力と停止とを繰り返す用途、小さな出力電流、負荷変動の大きな用途においても、燃料供給空間に蓄積した不純物ガスの影響を軽減できる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池スタックを主発電部分51Sと副発電部分52Sとに分割する。燃料供給の上流側に位置する主発電部分51Sには出力電流の変動が大きな変動負荷53を接続する。燃料供給の下流側に位置する副発電部分52Sには出力電流の変動が小さい定常負荷54を接続する。副発電部分52Sを構成する発電セル45は、一定の発電による一定の燃料消費を継続して、一定流量の水素ガスを発電セルに流入させ続けるので、発電セル45に濃縮蓄積された不純物ガスが上流側へ漏れ出さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体燃料が供給される燃料供給空間を連通させた複数の発電セルを備えた燃料電池、詳しくは、燃料供給空間に拡散した窒素ガス等の不純物ガスによる出力への影響を軽減する制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質層の片面側に配置されて気体燃料が供給される燃料供給空間を直列に接続した燃料電池が実用化されている。また、相互に並列接続された燃料供給空間の数を下流側へ向かって次第に減少させて直列に接続するカスケード方式で複数の燃料供給空間を配置したフロー型の燃料電池が実用化されている。カスケード方式によれば、電解質層を通じた気体燃料の消費による下流側での流量減少を補って、最上流から最下流まで、燃料供給空間における安定した気体燃料の供給流量を確保できる。
【0003】
電解質層として高分子電解質膜を用い、高分子電解質膜の片側を大気に連通させ、気体燃料の電気化学反応に伴って大気中の酸素を消費するエアブリージング型燃料電池が実用化されている。高分子電解質膜は完全な気密膜ではないので、高分子電解質膜を挟んで燃料供給空間と大気連通空間とが配置されると、大気連通空間から燃料供給空間へ大気中の窒素が濃度拡散する。燃料供給空間に侵入した窒素は、燃料供給空間における気体燃料の分圧を低下させて発電効率を低下させるので、定期的にパージを行って、窒素を含む不純物ガスを燃料供給空間から大気中へ追い出すことが望ましい。
【0004】
特許文献1には、カスケード方式の接続による別の効果に着目して効率的に燃料供給空間のパージを行わせるデッドエンド型の燃料電池が示される。カスケード方式に燃料供給空間を接続することにより、最も下流側に位置する燃料供給空間へ不純物ガスが濃縮されて蓄積される。
【0005】
最上流から最下流まで、すべての燃料供給空間に気体燃料の一定の流れが形成されて常時パージ状態となるので、最下流の燃料供給空間以外には不純物ガスが蓄積しない。そして、蓄積した不純物ガスの影響によって、最下流の燃料供給空間の出力電圧が所定のしきい値を割り込むと、最下流の燃料供給空間の下流側に配置された開閉弁が開かれる。最下流の燃料供給空間の容積に相当させた気体燃料を最下流の燃料供給空間に上流側から注ぎ込むことにより、燃料供給空間から濃縮された不純物ガスが大気中に押し出される。
【0006】
【特許文献1】特表2004−536438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される燃料電池では、直列に接続された燃料供給空間の上流側から下流側へ向かう気体燃料の流れが最下流の燃料供給空間へ不純物ガスを蓄積する。最下流の燃料供給空間に流れ込む気体燃料の流れが最下流の燃料供給空間の濃縮された不純物ガスの上流側への拡散を押し止めている。
【0008】
従って、燃料電池の出力を停止させて気体燃料の流れが途絶えると、最下流の燃料供給空間の濃縮された不純物ガスが上流側へ拡散して、燃料電池全体に不純物ガスが行き渡ってしまう。出力停止までには至らなくても、燃料電池の出力が小さいと、最下流の燃料供給空間に不純物ガスを十分に濃縮できなくなる。
【0009】
そして、十分に不純物ガスが濃縮されていない状態でパージを行うと、大気中に大量の気体燃料が無駄に排出されてしまう。従って、燃料電池を搭載する機器側には、気体燃料の大量排出を前提とした設計を行う必要がある。
【0010】
そして、十分に不純物ガスが濃縮されていない状態では、最下流の発電セルの出力電圧が所定のしきい値を割り込むまでに相当な時間が経過して、パージが手遅れになる可能性がある。最下流の燃料供給空間の不純物ガスの濃度が低い状態でも燃料電池の全体には致命的な量の不純物ガスが蓄積されてしまう。この状態で出力電流を増大させると、上流側から下流側へ向かう気体燃料の流れが強まって不純物ガスを下流側へ押し流し、最下流の燃料供給空間における不純物ガスの濃度が一気に高まる。これにより、最下流の発電セルが発電停止すると、上流側から下流側までのすべての発電セルを直列に接続した燃料電池全体の出力も停止してしまう。
【0011】
すなわち、特許文献1に示される燃料電池は、負荷変動が少ない定常的に大きな出力電流を流し続ける用途においては、適正なタイミングで効果的なパージを行える。しかし、出力と停止とを繰り返す用途、設計値よりも小さな出力電流を流し続ける用途、負荷変動の大きな用途等においては、パージのタイミングが不適切である。パージに伴う気体燃料の無駄も多くなる。
【0012】
本発明は、出力と停止とを繰り返す用途、小さな出力電流、負荷変動の大きな用途においても、燃料供給空間に蓄積した不純物ガスの影響を軽減できる燃料電池装置を提供することを目的としている。また、パージを行う場合には、適正なタイミングで効果的なパージを行える燃料電池装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の燃料電池装置は、気体燃料が供給される燃料供給空間をそれぞれ有する複数の発電セルが前記燃料供給空間を直列に接続して配置されたものである。燃料供給における下流側に位置する一以上の前記発電セルが直列に接続された下流側発電部分と、前記下流側発電部分よりも上流側に位置する一以上の前記発電セルが直列に接続された上流側発電部分とを備える。そして、前記下流側発電部分に対しては、前記上流側発電部分に対してよりも電力変動の小さな負荷を接続してある。
【0014】
別の発明の燃料電池装置は、気体燃料が供給される燃料供給空間をそれぞれ有する複数の発電セルが前記燃料供給空間を直列に接続して配置されたものである。燃料供給における下流側に位置する一以上の前記発電セルが直列に接続された下流側発電部分と、前記下流側発電部分に接続する負荷を制御して、予め定めた最低水準以上の出力電流を前記下流側発電部分から取り出し続ける出力制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の燃料電池装置では、燃料供給における下流側の下流側発電部分に、燃料電池装置が備える複数の負荷のうちで出力変動の小さな負荷を選択的に接続してある。下流側発電部分では、出力変動の小さな負荷によって、発電セルの出力電流が安定的に確保される。これにより、下流側発電部分の燃料供給空間には、不純物ガスを必要十分に濃縮して上流側への拡散を阻止するに十分な気体燃料の流れが確保される。
【0016】
従って、上流側発電部分で出力と停止とが繰り返しても、小さな出力電流が継続しても、負荷変動が大きくても、下流側発電部分の燃料供給空間では、不純物ガスが必要十分な濃度で蓄積され続ける。下流側発電部分に蓄積された不純物ガスが上流側へ拡散することもない。
【0017】
小さな出力電流を長期継続した後に急激に出力電流を高めた場合でも、大きな負荷変動を繰り返した場合でも、下流側発電部分の燃料供給空間における不純物ガスの濃度の変動が抑制される。下流側発電部分の燃料供給空間へ不純物ガスを高濃度に閉じ込めるので、下流側発電部分(あるいは最も下流側)の燃料供給空間に相当するだけのわずかな気体燃料でも燃料電池全体の不純物ガスの大部分を系外へ排出できる。高い濃度で不純物ガスのパージを行えば、パージに伴う気体燃料の大気中への無駄な排出が減って燃料タンクが長持ちする。
【0018】
下流側発電部分の発電セルの出力電圧でパージタイミングを制御する場合、特許文献1の制御に比較して、不純物ガス濃度の高まりによって、いきなり発電停止に至る可能性が減る。
【0019】
別の発明の燃料電池装置では、出力制御手段が、下流側発電部分の出力電流を最低水準以上に確保させる。最低水準とは、下流側発電部分の最も下流側の発電セルに、不純物ガスを必要十分に濃縮して上流側への拡散を阻止するために十分な気体燃料の流れを確保できる出力電流である。これにより、上記発明と同様に、出力と停止とを繰り返す用途、小さな出力電流、負荷変動の大きな用途においても、適正なタイミングで効果的なパージを行える。出力を増大させた際に、不純物ガス濃度の高まりによって燃料電池全体がいきなり発電停止に至る可能性も減る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の燃料電池装置の一実施形態である燃料電池について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の燃料電池装置は、以下に説明する各実施形態の限定的な構成には限定されない。発電セルの燃料供給空間に気体燃料を供給して発電が行われる限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
【0021】
本実施形態では、燃料タンクに貯蔵した水素ガスを用いて発電を行うが、水素原子を含むメタノール等の液体燃料を燃料タンクに貯蔵して、刻々必要なだけ水素ガスに改質反応させて発電セルの燃料供給空間に供給してもよい。
【0022】
本実施形態の燃料電池装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、プロジェクタ、プリンタ、ノート型パソコン等の持ち運び可能な電子機器に着脱可能に装備される独立したユニットとしても実施できる。また、電子機器に燃料電池装置の発電部だけを一体に組み込んで、燃料タンクを着脱させる形式でも実施できる。
【0023】
なお、特許文献1に示される燃料電池の構造、運転方法、触媒層、高分子電解質膜、膜電極接合体等については、繰り返しの煩雑を回避すべく一部図示を省略し、詳細な説明も省略する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の燃料電池の斜視図、図2は燃料電池スタックの断面図、図3はセパレータの説明図、図4は第1実施形態の燃料電池装置の模式図である。図2は、図1中A−A’の断面を示す。
【0025】
図1に示すように、燃料電池装置20は、燃料電池スタック20Aと燃料タンク20Bとを着脱自在に接続して組み立てられる。燃料電池スタック20Aは、一組のエンドプレート21、22の間に、複数の発電セル23、45(図2)を積層している。燃料タンク20Bは、水素ガスを充填され、必要な圧力に調圧された水素ガスを燃料電池スタック20Aに供給する。
【0026】
エンドプレート21には、燃料タンク20Bを接続して燃料電池スタック20Aに水素ガスを供給する燃料流路入り口24が設けられる。膜電極接合体25は、高分子電解質膜の上下両面に白金微粒子を担持させた触媒層を形成してあり、図中上面の触媒層が酸化剤極、下面の触媒層が燃料極となっている。複数の膜電極接合体25は、セパレータ26を介して積層される。
【0027】
図2に示すように、膜電極接合体25とセパレータ26との間には、ガス拡散層23A、23Bが配置される。ガス拡散層23A、23Bは、カーボンクロスのような反応物を透過する導電性を有するシート材料である。
【0028】
大気中の酸素は、セパレータ26に設けられた酸化剤流路41を介して、紙面垂直方向より各段の発電セル23、45に進入し、ガス拡散層23Aを通じて膜電極接合体25の上面全体に拡散供給される。
【0029】
水素ガスは、燃料流路入り口24を通じて図中左の供給側主流路43へ供給され、供給側主流路43から分岐して各段の燃料流路42に分配供給される。供給側主流路43は、セパレータ26に設けられた貫通口を重ね合わせて形成される。
【0030】
ガス拡散層23Bに接する膜電極接合体25の触媒層では、水素ガスが触媒反応によって水素原子に分解されてイオン化し、水素イオンが高分子電解質膜に供給される。ガス拡散層23Aに接する膜電極接合体25の触媒層では、高分子電解質膜から供給される水素イオンに、触媒反応によって酸素が化合して水分子を生成する。膜電極接合体25の高分子電解質膜は、ガス拡散層23A側からガス拡散層23B側へ水素イオンを移動させる。この電気化学反応に伴ってガス拡散層23B側で過剰となった電子が外部回路を経てガス拡散層23A側へ移動する。
【0031】
各段の発電セル23の燃料流路42は、下流側(図中右側)で排出側主流路44に合流し、排出側主流路44は、最も下流側の発電セル45の燃料流路42に接続されている。
【0032】
発電セル45の燃料流路42の下流側は、流路板27の燃料流路出口43に接続し、燃料流路出口43には、パージバルブ47が設置される。パージバルブ47は、通常は閉じられているので、燃料電池スタック20Aはデッドエンド型の運転となる。デッドエンド型の燃料電池スタック20Aは、燃料循環用の配管やポンプが不要なので、燃料電池装置20の小型化に適した構成である。また、水素ガスを循環させないフロー型の燃料電池に比べて、垂れ流す水素ガスが無い分、燃料の有効利用に好適である。
【0033】
図3に示すように、セパレータ26の表面(図中下側)には、平行な溝状の酸化剤流路41が形成されている。図2に示すように、酸化剤流路41は、ガス拡散層23Aを介して、膜電極接合体25の酸化剤極に大気中の酸素を供給する。
【0034】
図3に示すように、セパレータ26の裏面(図中上側)には、つづら折り状の燃料流路42が形成されている。図2に示すように、燃料流路42は、ガス拡散層23Bを介して、膜電極接合体25の燃料極に水素ガスを供給する。
【0035】
図3に示すように、セパレータ26の端部には、図2の燃料流路入り口24から供給される水素ガスを各段の発電セル23に導くための貫通口43が設けられる。
【0036】
燃料電池スタック20Aは、酸化剤極が大気に開放された大気開放型であるため、燃料流路42に進入する不純物ガスの主成分は、空気中に含まれる窒素ガスである。燃料電池スタック20Aでは、窒素ガス分圧がほぼ80kPaの酸化剤極からほぼ0Paの燃料流路42へ主に膜電極接合体25を介して窒素ガスが濃度拡散する。膜電極接合体25における窒素ガス進入レートは、発電させた出力電流密度に応じて変化する。実験的には、動作電流密度200mA/cmで発電を行うと、膜電極接合体25の単位面積あたり窒素ガス進入レートは、1.7×10−5ml/sec・cm(1×10−3sccm/cm)程度であることが確認された。
【0037】
第1実施形態の燃料電池スタック20Aでは、直列に接続された燃料流路42の構成によって、不純物ガスは、最も下流側の発電セル45の燃料流路42に濃縮されて蓄積される。上流側の発電セル23に形成された水素ガスの流れによって、発電セル23の燃料流路42における不純物ガス濃度は下流側ほど高くなる。発電セル23で不純物ガス濃度が高められた水素ガスは、排出側主流路44を通じて最も下流側の発電セル45に流れ込む。
【0038】
発電セル45の燃料流路42の入り口における不純物ガス濃度は、排出側主流路44の不純物ガス濃度とバランスする。発電セル45の膜電極接合体25は、不純物ガスを残して水素ガスを取り込むので、発電セル45内でも下流側へ向かう水素ガスの流れが形成されて、不純物ガス濃度は下流側ほど高くなる。これにより、発電セル45の燃料流路42には、高濃度の不純物ガスが蓄積される。発電セル45の燃料流路42の不純物ガスは、濃度差に駆動されて燃料流路42を上流側へ拡散しようとする。しかし、発電セル45の燃料流路42へ流れ込む水素ガスが拡散を妨げ、燃料流路42内の水素ガスの流れが不純物ガスを下流側へ吹き寄せて、不純物ガスの高濃度を保持させる。
【0039】
図2に示すように、燃料電池スタック20Aには、上流側端子部材51と下流側端子部材52との2箇所から独立して電力が取り出される。N段の発電セル23を直列に接続した出力電圧が上流側端子部材51と下流側端子部材52との間から取り出される。最も下流側の発電セル45の出力電力が下流側端子部材52と端子部材55との間から取り出される。上流側端子部材51と下流側端子部材52と端子部材55とが燃料電池搭載機器50に接続されて電力供給する。
【0040】
燃料電池搭載機器50の複数の負荷のうち電力変動が小さい定常負荷54が下流側端子部材52と端子部材55との間に接続されて発電セル45の発電出力を割り当てられる。電力変動が大きい変動負荷53が上流側端子部材51と下流側端子部材52との間に接続されて発電セル23の発電出力を割り当てられる。
【0041】
図4に模式的に示すように、燃料供給の上流側に配置されたN個の発電セル23によって主発電部分51Sが構成される。主発電部分51Sには、燃料電池スタック20Aにより電力が供給される変動負荷53が接続される。変動負荷53は、CPU、駆動モータ等のように、燃料電池搭載機器50の動作状態に応じて電力消費が大きく変化する負荷である。主発電部分51Sには、燃料電池搭載機器50側の電圧要求に対応するために必要なDC−DCコンバータ等の回路を介して変動負荷53が接続されてもよい。
【0042】
一方、燃料電池スタック20Aの最下流の発電セル45は、副発電部分52Sを構成して定常負荷54に接続される。定常負荷54は、必要な電源電圧を得るための不図示の昇圧回路を含み、冷却ファン、液晶バックライト等のように、燃料電池搭載機器50の動作状態に関わらずほぼ一定の電力消費を継続する。
【0043】
従って、変動負荷53の電力消費がどんなに変化しても、最下流の発電セル45は一定の発電を継続して、毎秒一定量の水素ガスを消費する。最下流の発電セル45には一定流量の水素ガスが流れ込み続けるので、最下流の発電セル45に高濃度に蓄積された不純物ガスは上流側へ拡散しない。
【0044】
図5は燃料電池スタックの負荷変動に対する安定性の評価実験の説明図、図6は安定性の評価実験結果の線図である。
【0045】
図5に示すように、電子負荷装置83を用いて、燃料電池スタック20Aの出力電流を一定パターンで変化させることにより、燃料電池スタック20Aの負荷変動に対する安定性を評価した。図5の(a)に示す第1実施形態では、副発電部分52Sに抵抗負荷84を接続して安定電流を取り出し、主発電部分51Sに電子負荷装置83を接続した。これに対して、図5の(b)に示す比較例では、副発電部分52Sと主発電部分51Sとを直列接続して電子負荷装置83を接続した。電子負荷装置83は、可変電圧の電圧レギュレータ回路で構成され、図6の(a)に示すように、負荷抵抗値を変化させて、端子電圧を所定の三角波パターンに変化させる。
【0046】
図6の(b)には、実験中の主発電部分51Sにおける各発電セル23の起電力の変化が示される。図中、横軸は時間、縦軸は電子負荷装置83により燃料電池スタック20Aに印加した負荷電流である。
【0047】
図6の(b)に示すように、第1実施形態の接続では、主発電部分51Sの各発電セル23の出力が、負荷電流の増大に十分追従している。すなわち、負荷電流の増大に伴って、各発電セル23の出力電圧は低下するが、特定の発電セル23で出力電圧が大きく低下することはない。よって、第1実施形態の燃料電池装置20は、負荷変動によらず安定した出力を燃料電池搭載機器50に供給可能である。
【0048】
一方、図6の(b)に示すように、比較例の接続では、主発電部分51Sの一部の発電セル23が、負荷電流の増大に追従しない。すなわち、負荷電流の増大に伴って、出力電圧の急激な低下を生じる発電セルがある(図中矢印)。このように、比較例の接続を用いた従来の燃料電池装置では、負荷変動が比較的大きい時、安定した出力を燃料電池搭載機器50に供給できない。
【0049】
図4に示すように、第1実施形態の燃料電池スタック20Aでは、副発電部分52Sに対して主発電部分51Sとは独立した定常負荷54を接続する。これにより、少なくとも主発電部分51Sで発電が開始されるより前に、副発電部分52Sで発電が開始される。このため、副発電部分52Sに不純物ガスを高濃度に濃縮して閉じ込めることが可能となる。
【0050】
そして、変動負荷53が変動して主発電部分51Sの出力電流が低下しても、副発電部分52Sの不純物ガスが主発電部分51Sに拡散せず、主発電部分51Sの不純物ガス濃度は低く保たれる。これにより、変動負荷53が変動して主発電部分51Sの出力電流が急激に増大しても、不純物ガスの影響が無い安定した起電力が主発電部分51Sより供給可能となる。すなわち、負荷変動に対応可能な燃料電池スタック20Aが提供可能となる。
【0051】
図7はパージ動作の制御の説明図である。図2に示すように、燃料電池スタック20Aは、燃料電池搭載機器50がパージバルブ47を制御してパージ動作を実行する。パージバルブ47は、アクチュエータ或いは手動により開閉動作可能である。
【0052】
燃料電池搭載機器50は、最も下流側の発電セル45(副発電部分52S)の出力電圧が所定の最低水準を割り込むと、パージバルブ47を作動させる。あるいは、図4に示すように、副発電部分52Sに接続された定常負荷54に流れる電流が所定の最低水準を割り込むことで判断する。すなわち、副発電部分52Sの出力が低下したとき、不純物ガスの蓄積に起因すると判断してパージ動作を実行する。パージ動作時は、パージバルブ47を0.1秒間開いた後に閉じる動作を1秒間隔で3回行う。これにより、最も下流側の発電セル45に高濃度に蓄積された不純物ガスを燃料電池スタック20Aから大気中へ排出し、燃料電池装置20の長時間にわたる安定的な発電継続を可能にする。
【0053】
図7の(a)は、図5の(a)に示すように、第1実施形態の燃料電池スタック20Aを電子負荷装置83に接続した際の主発電部分51Sの各発電セル23の出力電圧を示す。図7の(b)は、この時の副発電部分52Sの発電セル45の出力電圧と、副発電部分52Sに接続された抵抗負荷84に流れる電流を示す。
【0054】
燃料電池装置20にて発電を行うと、図7の(b)中に矢印で示したように副発電部分52Sの発電セル45の出力低下が観測される。この出力低下は、不純物ガスの蓄積によって引き起こされる。これを検知してパージ動作を行うと、副発電部分52Sの出力が回復する。パージ動作中、主発電部分51Sの各燃料電池セル23の出力電圧は安定している。すなわち、主発電部分51Sにおける不純物ガスの影響を防止できる。
【0055】
このように、第1実施形態の燃料電池装置20では、副発電部分52Sにおける出力をモニタすることにより、発電セル45に一定量の不純物ガスが濃縮状態で蓄積されたことを検知できる。そして、発電セル45の容積を少し越える程度の必要最小限のパージ動作を行うことによって、燃料電池スタック20A内の大部分の不純物ガスを追い出すことが可能である。これにより、燃料電池スタック20Aは、前回のパージ動作直後の状態に回復するので、安定した起電力を燃料電池搭載装置50に供給し続けることができる。
【0056】
<第1実施形態の変形例>
図8は燃料流路の接続パターンの説明図、図9は下流側の4段の発電セルを副発電部分とした変形例の説明図、図10は副発電部分の下流にバッファ空間を接続する変形例の説明図である。
【0057】
図4に示すように、第1実施形態の燃料電池スタック20Aにおける主発電部分51Sの燃料流路42は、図8の(a)に示すパラレル流パターンである。しかし、主発電部分51Sの燃料流路42は、図8の(b)に示すシリアル流パターン、あるいは図8の(c)に示すカスケード流パターンでもよい。
【0058】
図4に示すように、第1実施形態における副発電部分52Sは、1段の発電セル45で構成されるが、複数段の発電セルにより構成してもよい。例えば、図9に示すようにカスケード流パターンを採用して、発電セル23、48、45を直列に接続し、副発電部分52Sを下流側の4段の発電セル48、45に割り当ててもよい。上流側端子部材51と下流側端子部材52とが燃料電池スタック20Aから取り出される。副発電部分52Sには電力変動が小さい定常負荷54、主発電部分51Sには電力変動が大きい変動負荷53がそれぞれ接続される。
【0059】
第1実施形態の燃料電池スタック20Aは、副発電部分52Sを構成する発電セル45の下流に、不純物ガスを蓄積するバッファ空間を接続してもよい。バッファ空間は、例えば、図10に示すように、流路板27Bの上面に凹所49を形成して、エンドプレート22との間に設けることができる。発電セル45とパージバルブ47との間のバッファ空間である凹所49には、発電セル45の下流端の不純物ガス濃度とバランスした高い濃度の不純物ガスを蓄積する。
【0060】
第1実施形態の燃料電池スタック20Aは、少なくとも主発電部分51Sの発電が開始されるよりも前に、副発電部分52Sが発電を開始することが望ましい。副発電部分52Sに接続される定常負荷54は、一定の抵抗値を持った抵抗体であってもよいし、燃料電池装置20の動作を制御するための制御装置等に接続されてもよい。
【0061】
第1実施形態の燃料電池装置20は、発電セル23、45を積み重ねて直列に接続した燃料電池スタック20Aを備える。しかし、共通の燃料供給基板上に複数の発電セルを平面的に配置して、それぞれの燃料供給空間を直列(カスケード流パターンを含む)に接続した構成としてもよい。
【0062】
<第2実施形態>
図11は第2実施形態における制御の説明図である。第2実施形態では、第1実施形態と同じ燃料電池スタック20Aを用いて、変動負荷に応じた上流側端子部材51と下流側端子部材52との切り替え制御を行う。これ以外は第1実施形態と同様であるので、図2、図4と共通する構成には共通の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
図11に示すように、燃料電池スタック20Aには、上流側端子部材51、下流側端子部材52、および端子部材55が接続されている。二系統の切り替えスイッチ50Cは、下流側端子部材52と端子部材55とを変動負荷53に対して切り替え接続すると同時に、下流側端子部材52が接続された場合には、下流側端子部材52と端子部材55との間に抵抗負荷84を接続する。制御部50Bは、変動負荷53の電流値を検知する。そして、電流値が所定の下限値以上であれば、変動負荷53に端子部材55を接続して燃料電池スタック20Sの全段を直列に接続した出力を変動負荷53に供給する。しかし、電流値が所定の下限値を割り込むと、変動負荷53に下流側端子部材52を接続して主発電部分51Sの出力を変動負荷53に供給する。同時に、下流側端子部材52と端子部材55との間に抵抗負荷84を接続して、副発電部分52Sの電流値を下限値以上に確保する。
【0064】
下限値とは、副発電部分52Sを構成する発電セル45の燃料流路42に、不純物ガスを必要十分に濃縮して上流側への拡散を阻止するに十分な水素ガスの流れを確保できる出力電流である。
【0065】
<第3実施形態>
図12は第3実施形態における燃料電池スタックの構成の説明図である。第1実施形態は、1つの燃料電池スタック20Aの中に主発電部分51Sと副発電部分52Sとを積み重ねて配置した。これに対して、第3実施形態では独立した主発電部分20Eの燃料供給に関する下流側に独立した副発電部分20Fを接続している。図11中、図2と機能を共通とする構成部材には共通の符号を付して詳細な説明を省略するが、共通の符号を付した構成部材が同一寸法、同一材料という意味ではない。
【0066】
図12に示すように、主発電部分20Eおよび副発電部分20Fは、いずれも膜電極接合体25を挟んでガス拡散層23A、23Bを配置する。ガス拡散層23Aには、酸化剤流路を通じて膜電極接合体25の平面方向から大気中の酸素が供給される。ガス拡散層23Bには、燃料供給空間42Bを通じて水素ガスが供給される。
【0067】
主発電部分20Eの燃料供給空間42Bには、燃料流路入り口24Bを通じて水素ガスが供給される。主発電部分20Eの燃料供給空間42Bの下流側に、燃料流路入り口24Cによって副発電部分20Fの燃料供給空間42Bが接続されている。副発電部分20Fの燃料供給空間42Bには、燃料流路入り口24Cを通じて、主発電部分20Eの燃料供給空間42Bから水素ガスが供給される。副発電部分20Fの下流側には、副発電部分20Fの燃料供給空間42Bに濃縮して蓄積された不純物ガスを大気中へ排出するパージ弁47が接続されている。
【0068】
主発電部分20Eには、出力電流の変動幅が大きい変動負荷53が接続される。一方、燃料供給の下流側に位置する副発電部分20Fには、出力電流の変動幅が小さい定常負荷54が接続される。副発電部分20Fが定常的な発電を行うことで、燃料流路入り口24Cからから副発電部分20Fへ一定流量の水素ガスが流れ込み続ける。この水素ガスの流れによって、仮に変動負荷53の電流が停止した場合でも、副発電部分20Fの濃縮された不純物ガスは、副発電部分20Fに止められて上流側へ漏れ出さない。
【0069】
第3実施形態においても、副発電部分20Fの出力変化を検知してパージ弁47を作動させることにより、適正なタイミングで、水素ガスの無駄な排出が少ないパージ動作を実行できる。また、変動負荷53の負荷変動に対して応答性高く、主発電部分20Eから電力供給を継続できる。従って、負荷変動の比較的大きな機器の要求出力に対応可能であり、安定した発電が可能な燃料電池装置が提供可能となる。
【0070】
<開発の経緯>
燃料電池装置は体積あたりの供給可能なエネルギー量が従来の電池に比べて、数倍から十倍近くになる可能性があり、さらに燃料を充填することにより、携帯電話、ノートPC等小型電気機器の長時間連続使用が可能となるため期待されている。
【0071】
電解質層として高分子電解質膜を用いる固体高分子型燃料電池は、常温に近い温度で使用でき、電解質が液体ではなく固体であるので、安全に持ち運べるという利点を有している。固体高分子型燃料電池の発電セルは、触媒層を高分子電解質膜の両面に配置した膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有している。
【0072】
固体高分子型燃料電池の発電セルは単セル出力電圧が最大でも1V強なので、実用的な出力電圧を得るため、複数の発電セルを電気的に直列に接続して、燃料電池スタックが形成される。
【0073】
セパレータは、燃料電池セルを電気的に直列に接続するための導電性を有すると共に、酸化剤と燃料とを分離するシール性を有する。セパレータの酸化剤極側には酸化剤を供給する酸化剤流路が、燃料極側には燃料を供給する燃料流路が設けられる。
【0074】
水素ガスと大気中の酸素とを電気化学反応させる燃料電池では、燃料流路には、燃料タンク等から水素ガスが燃料として供給され、酸化剤流路には空気中の酸素が酸化剤として供給される。このような燃料電池装置では、燃料がデッドエンドモードで動作するよう設計されることがある。
【0075】
デッドエンド型の燃料電池装置では、起動時や動作中に燃料流路内の不純物ガスを燃料流路より除去するためのパージバルブが設置される。これは、燃料に含まれる、或いは外部から混入する不純物ガスを除去するためである。
【0076】
特許文献1には、デッドエンド型の燃料電池におけるパージ動作の制御方法が示される。複数の発電セルは、カスケード流パターンで燃料流路を直列に接続されていて、最も下流側に位置する発電セルに、窒素ガス等の不純物ガスがたまりやすい。
【0077】
本願発明の発明者は、特許文献1の制御が、負荷変動が比較的少ない定常的な出力を必要とする機器には効果的でも、負荷変動の大きい機器の要求には十分対応できないという課題を見出した。発明者は、鋭意検討した結果、特許文献1の燃料電池では、負荷低下時に不純物ガスが燃料電池スタックに滞留してしまい、その後の急激な負荷増大時に十分な出力が得られなかったとの知見を得、本発明の提案に至った。
【0078】
すなわち、負荷変動が比較的少ない定常的な出力を要求する機器であれば、最も下流側に位置する発電セルの発電量も一定で、不純物ガスを効果的に蓄積可能である。しかし、外部負荷の要求出力の変動が大きい機器では、外部負荷の要求電力が低下した際には、最も下流側に位置する発電セルの発電も低下する。発明者は、このような場合、最も下流側に位置する発電セルに有効に不純物ガスが蓄積されないことを見出している。
【0079】
その結果、不純物ガスが最も下流側に位置する発電セル以外の燃料電池スタック内に蓄積する場合が発生する。この状況で、外部負荷の要求出力が急激に増大すると、不純物ガスの影響によって、燃料電池スタックの出力が十分に得られないことがある。
【0080】
<発明との比較>
燃料電池装置20は、気体燃料が供給される燃料流路42をそれぞれ有する複数の発電セル23、45を、燃料流路42を直列に接続して配置している。燃料供給における下流側に位置する一以上の発電セル45が直列に接続された副発電部分52Sと、副発電部分52Sよりも上流側に位置する一以上の発電セル23が直列に接続された主発電部分51Sとを備える。そして、副発電部分52Sに対しては、主発電部分51Sに対してよりも電力変動の小さな定常負荷54を接続してある。
【0081】
燃料電池装置20では、燃料供給における下流側の副発電部分52Sに、燃料電池装置20が電力供給する複数の負荷のうちで出力変動の小さな定常負荷54を選択的に接続してある。副発電部分52Sでは、出力変動の小さな定常負荷54によって、発電セル45の出力電流が安定的に確保される。これにより、副発電部分52Sの燃料流路42には、不純物ガスを必要十分に濃縮して上流側への拡散を阻止するために十分な気体燃料の流れが確保される。
【0082】
従って、主発電部分51Sで出力と停止とが繰り返しても、小さな出力電流が継続しても、負荷変動が大きくても、副発電部分52Sの燃料流路42では、不純物ガスが必要十分な濃度で蓄積され続ける。副発電部分52Sに蓄積された不純物ガスが上流側へ拡散することもない。
【0083】
小さな出力電流を長期継続した後に急激に出力電流を高めた場合でも、大きな負荷変動を繰り返した場合でも、副発電部分52Sの燃料流路42における不純物ガスの濃度の変動が抑制される。副発電部分52Sの燃料流路42へ高濃度の不純物ガスを閉じ込めるので、副発電部分52Sの燃料流路42に相当するだけのわずかな気体燃料でも燃料電池スタック20S全体の不純物ガスの大部分を排出できる。高い濃度の不純物ガスをパージすれば、パージ動作に伴う気体燃料の大気中への無駄な排出が減って燃料タンク20Bが長持ちする。
【0084】
副発電部分52Sの発電セル23の出力電圧でパージタイミングを制御する場合、特許文献1の制御に比較して、不純物ガス濃度の高まりによって、いきなり発電停止に至る可能性が減る。
【0085】
図11に示す変形例における燃料電池スタック20Aは、気体燃料が供給される燃料流路42をそれぞれ有する複数の発電セル23を、燃料流路42を直列に接続して配置している。燃料供給における下流側に位置する一以上の発電セル45が直列に接続された副発電部分52Sと、副発電部分52Sに接続する負荷を制御して、予め定めた最低水準以上の出力電流を副発電部分52Sから取り出し続ける制御部50Bとを備える。
【0086】
図11に示す変形例では、制御部50Bが、副発電部分52Sの出力電流を最低水準以上に確保させる。最低水準とは、副発電部分52Sの最も下流側の発電セル45に、不純物ガスを必要十分に濃縮して上流側への拡散を阻止するために十分な気体燃料の流れを確保できる出力電流である。これにより、上記発明と同様に、出力と停止とを繰り返す用途、小さな出力電流、負荷変動の大きな用途においても、適正なタイミングで効果的なパージを行える。出力を増大させた際に、不純物ガス濃度の高まりによって燃料電池装置20がいきなり発電停止に至る可能性も減る。
【0087】
図11に示す変形例では、制御部50Bは、副発電部分52Sから取り出した出力電流が予め定めた下限値を下回ると、副発電部分52Sに予め定めた抵抗負荷83を接続して前記最低水準を確保する。従って、変動負荷53が下限値以上の電流を流している限り、抵抗負荷83による無駄な電力消費が発生しない。
【0088】
燃料電池装置20は、副発電部分52Sが燃料供給における最も下流側に位置する発電セル45を含む。そして、副発電部分52Sのさらに下流側における最も下流位置に、燃料流路42に蓄積された不純物ガスを排出させるパージバルブ47を接続している。
【0089】
図10に示す変形例では、副発電部分52S(発電セル45)の下流側に、燃料流路42の不純物ガスが蓄積されるバッファ空間(凹所49)を接続している。
【0090】
燃料電池装置20における副発電部分52Sは、燃料流路42が別の燃料流路42に対して並列接続されていない1つの発電セル45である。従って、2以上が並列に接続されている場合に比較して少ない気体燃料の流量で、上流側への不純物ガスの漏れ出しを防止できる。
【0091】
図9に示す変形例では、相互に並列接続された燃料流路42(図2)の数を下流側へ向かって次第に減少させて直列に接続するカスケード方式で、複数の燃料流路42が連通している。従って、最も下流に位置する発電セル45へ蓄積される不純物ガスの濃度が3段階に高められ、2段階の場合よりも高濃度の不純物ガスをパージ排出できる。
【0092】
燃料電池スタック20Aは、複数の発電セル23、45がそれぞれ等しい平面形状に形成されて積み重ねられる。大気に連通して前記発電セル23の平面方向から大気中の酸素を取り入れる酸化剤流路41と、隣接する発電セル23の燃料流路42と酸化剤流路41とを分離して隣接する発電セル23を電気的に直列接続するセパレータ26とを備える。副発電部分52Sから出力電流を取り出す下流側端子部材52がセパレータ26に接続されている。
【0093】
図12に示す第3実施形態では、気体燃料が一方向に流れる燃料流路42を備える。主発電部分51Sの燃料流路42の最も下流側に接続されて主発電部分51Sの燃料流路42Bの不純物ガスが蓄積される副発電部分52Sの燃料流路42Bと、副発電部分52Sの燃料流路42Bに配置されて、副発電部分52Sの燃料流路42Bの気体燃料を消費して発電する膜電極接合体25と、膜電極接合体25に接続されて膜電極接合体25から予め定めた最低水準以上の出力電流を取り出し続ける定常負荷54とを備える。
【0094】
燃料電池装置20は、気体燃料が供給される燃料流路42をそれぞれ有する複数の発電セル23を、前記燃料流路42を直列に接続して配置している。そして、燃料供給における下流側の発電セル45の出力電流を予め定めた最低値以上に維持することにより、下流側の発電セル45の燃料流路42から上流側へ向かう不純物ガスの拡散を抑制している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1実施形態の燃料電池の斜視図である。
【図2】燃料電池スタックの断面図である。
【図3】セパレータの説明図である。
【図4】第1実施形態の燃料電池スタックの模式図である。
【図5】燃料電池スタックの負荷変動に対する安定性の評価実験の説明図である。
【図6】安定性の評価実験結果の線図である。
【図7】パージ動作の制御の説明図である。
【図8】燃料流路の接続パターンの説明図である。
【図9】下流側の4段の発電セルを副発電部分とした変形例の説明図である。
【図10】副発電部分の下流側にバッファ空間を接続した変形例の説明図である。
【図11】第2実施形態における制御の説明図である。
【図12】第3実施形態における燃料電池スタックの構成の説明図である。
【符号の説明】
【0096】
20 燃料電池装置
20A 燃料電池スタック
20B 燃料タンク
21、22 エンドプレート
23 発電セル
23A、23B ガス拡散層
24 燃料流路入り口
25 膜電極接合体
26 セパレータ部材(セパレータ)
27 流路板
41 大気連通空間(酸化剤流路)
42 燃料供給空間(燃料流路)
45 最も下流に位置する発電セル
47 パージ弁(パージバルブ)
49 バッファ空間(凹所)
50、50B 出力制御手段(燃料電池搭載機器、制御部)
51 上流側端子部材
51S、20E 上流側発電部分(主発電部分)
52 下流側端子部材
52S、20F 下流側発電部分(副発電部分)
53 変動負荷
54 電力変動の小さな負荷(定常負荷)
84 規定負荷(抵抗負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料が供給される燃料供給空間をそれぞれ有する複数の発電セルを、前記燃料供給空間を直列に接続して配置した燃料電池装置において、
燃料供給における下流側に位置する一以上の前記発電セルが直列に接続された下流側発電部分と、
前記下流側発電部分よりも上流側に位置する一以上の前記発電セルが直列に接続された上流側発電部分と、を備え、
前記下流側発電部分に対しては、前記上流側発電部分に対してよりも電力変動の小さな負荷を接続したことを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
気体燃料が供給される燃料供給空間をそれぞれ有する複数の発電セルを、前記燃料供給空間を直列に接続して配置した燃料電池装置において、
燃料供給における下流側に位置する一以上の前記発電セルが直列に接続された下流側発電部分と、
前記下流側発電部分に接続する負荷を制御して、予め定めた最低水準以上の出力電流を前記下流側発電部分から取り出し続ける出力制御手段と、を備えたことを特徴とする燃料電池装置。
【請求項3】
前記出力制御手段は、前記下流側発電部分から取り出した出力電流が予め定めた下限値を下回ると、前記下流側発電部分に予め定めた規定負荷を接続して前記最低水準を確保することを特徴とする請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記下流側発電部分は、燃料供給における最も下流側に位置する発電セルを含み、
前記下流側発電部分の下流側における最も下流位置に、前記燃料供給空間に蓄積された不純物ガスを排出させるパージ弁を接続したことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記下流側発電部分の下流側に、前記燃料供給空間の不純物ガスが蓄積されるバッファ空間を接続したことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記下流側発電部分は、前記燃料供給空間が別の前記燃料供給空間に対して並列接続されていない1つの発電セルであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の燃料電池装置。
【請求項7】
相互に並列接続された前記燃料供給空間の数を下流側へ向かって次第に減少させて直列に接続するカスケード方式で、複数の前記燃料供給空間が連通していることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の燃料電池装置。
【請求項8】
前記複数の発電セルがそれぞれ等しい平面形状に形成されて積み重ねられ、
大気に連通して前記発電セルの平面方向から大気中の酸素を取り入れる酸化剤流路と、
隣接する前記発電セルの前記燃料供給空間と前記酸化剤流路とを分離して隣接する前記発電セルを電気的に直列接続するセパレータ部材と、を備え、
前記下流側発電部分から出力電流を取り出す下流側端子部材が前記セパレータ部材に接続されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の燃料電池装置。
【請求項9】
気体燃料が一方向に流れる燃料供給空間を備えた燃料電池装置において、
前記燃料供給空間の最も下流側に接続されて前記燃料供給空間の不純物ガスが蓄積されるバッファ空間と、
前記バッファ空間に配置されて、前記バッファ空間の気体燃料を消費して発電する発電手段と、
前記発電手段に接続されて前記発電手段から予め定めた最低水準以上の出力電流を取り出し続ける負荷手段と、を備えたことを特徴とする燃料電池装置。
【請求項10】
気体燃料が供給される燃料供給空間をそれぞれ有する複数の発電セルを、前記燃料供給空間を直列に接続して配置した燃料電池の運転方法において、
燃料供給における下流側の発電セルの出力電流を予め定めた最低値以上に維持することにより、前記下流側の発電セルの前記燃料供給空間から上流側へ向かう不純物ガスの拡散を抑制することを特徴とする燃料電池の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−242266(P2007−242266A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59181(P2006−59181)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】