説明

燃料電池

【課題】温度調整を良好に行いつつ、燃料電池ユニット及びスタック構造体における温度分布の均一化を実現することができる燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池ユニットU1を間隙を介して積層してスタック構造体Sを形成すると共に、スタック構造体SをケースCに収容し、各燃料電池ユニットU1の内部に、燃料ガスを供給すると共に、ケースC内に酸化剤ガスを供給して燃料電池ユニットU1同士の間隙に酸化剤ガスを流通させる構造を有する燃料電池FC1であって、燃料ガスの流通域と酸化剤ガスの流通域とを隔てる隔壁部材であるセパレータ2等に微細な凹凸Aを設けたことにより、隔壁部材の熱伝達率を高めて、燃料電池ユニットU1及びスタック構造体Sにおける温度分布の均一化を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料電池ユニットを積層してスタック構造体を形成すると共に、そのスタック構造体をケースに収容した構成を有する燃料電池の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池としては、ケースに、複数の燃料電池ユニットを積層して成るスタック構造体を収容し、ケースの壁部に設けた予熱空洞に反応用ガスを流通させて、スタック構造体の放射熱で予熱空洞内の反応用ガスを予熱するものがあった(特許文献1参照)。
【特許文献1】2004−139960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、燃料電池において、発電時の燃料電池ユニットの発熱量がスタック構造体の放熱量よりも大きくなるような高負荷運転時には、スタック構造体の燃料電池ユニット間に冷却ガスを導入してスタック構造体の全体を冷却する必要がある。
【0004】
ここで、スタック構造体の燃料電池ユニット間に冷却ガスを導入しないと、スタック構造体の温度が高温になり過ぎ、各燃料電池ユニットにおいて、金属腐食による電気抵抗の増大、単セル(発電要素)における電極と電解質の界面剥離による発電出力の低下、単セルとセル板との接合部の強度低下による破壊などが生じる可能性が無いとは言えないという問題点があった。
【0005】
また、スタック構造体の燃料電池ユニット間に冷却ガスを直接導入すると、スタック構造体の内部での温度分布の差が顕著になり、各燃料電池ユニットにおいて、金属材料の変形に起因する接触不良、接触不良による発電性能の低下、単セルとセル板の熱膨張率の差に起因する熱応力破壊などが生じる可能性が無いとは言えないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、高負荷運転及び低負荷運転における温度調整を良好に行いつつ、燃料電池ユニット及びスタック構造体における温度分布の均一化を実現することができる燃料電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料電池は、複数の燃料電池ユニットを互いに間隙を介して積層してスタック構造体を形成すると共に、スタック構造体をケースに収容している。また、燃料電池は、各燃料電池ユニットの内部に、燃料ガス及び酸化剤ガスのいずれか一方の反応用ガスを供給すると共に、ケース内に他方の反応用ガスを供給して燃料電池ユニット同士の間隙に他方の反応用ガスを流通させる構造を有している。
【0008】
そして、燃料電池は、一方の反応用ガスの流通域と他方の反応用ガスの流通域とを隔てる隔壁部材に、熱伝達促進用の微細な凹凸を設けた構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池は、とくに、一方の反応用ガスの流通域と他方の反応用ガスの流通域とを隔てる隔壁部材において、微細な凹凸により同隔壁部材の熱伝達率を向上させ、両反応用ガスの熱交換効率を高めて両反応用ガスの温度差を低減することができ、これにより、高負荷運転及び低負荷運転における温度調整を良好に行いつつ、燃料電池ユニット及びスタック構造体における温度分布の均一化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明の燃料電池の一実施形態を説明する図である。
図1(a)(b)に示す燃料電池FC1は、複数の燃料電池ユニットU1を互いに間隙を介して積層してスタック構造体Sを形成し、このスタック構造体SをケースCに収容した構造を有している。
【0011】
図示例の燃料電池ユニットU1は、円盤状を成すと共に、中心部分で互いに連結してスタック構造体Sを形成する。このため、スタック構造体Sは概略円柱状を成し、このスタック構造体Sを収容するケースCは円筒状を成している。
【0012】
図示例の燃料電池FC1は、スタック構造体Sの中心部分に、一方の反応用ガスである燃料ガスの導入管11A及び排出管11Bを備えると共に、ケースC内に、他方の反応用ガスである酸化剤ガス(空気)の導入管12A及び排出管12Bを燃料電池ユニットU1の積層方向に沿って備えている。これにより、燃料電池FC1は、各燃料電池ユニットU1の内部に燃料ガスを供給すると共に、ケースC内に酸化剤ガスを供給して、燃料電池ユニットU1同士の間隙に酸化剤ガスを流通させる。
【0013】
燃料電池ユニットU1は、図2(a)に示すように、発電要素である環状の単セル1と、単セル1の燃料極側の面に対向するセパレータ2と、単セル1の中央穴に装着する内周部材3と、単セル1の外周部に接合する外周部材4を備えている。この実施形態では、内周部材3及び外周部材4が単セル1を保持するセル板部材であり、単セル1、内周部材3及び外周部材4によりセル板を構成している。
【0014】
単セル1は、固体電解質層を燃料極層と空気極層とで挟持したものであり、構成がとくに限定されるものではなく、例えば、電極支持型セル、電解質支持型セル、及び多孔質金属支持型セルなどのいずれのものでも良い。
【0015】
なお、一例として、固体電解質層は、8モル%イットリア安定化ジルコニアであり、燃料極層は、ニッケル+イットリア安定化ジルコニアのサーメットであり、空気極層は、ランタンストロンチュウムマンガナイトである。
【0016】
燃料電池ユニットU1は、単セル1とセパレータ2の間にユニット内集電体5を介装して、セパレータ2と外周部材4の外縁部同士を気密的に接合することで、単セル1とセパレータ2の間に袋綴じ構造の扁平なガス室を形成する。また、単セル1の空気極側の面には、隣接する燃料電池ユニットU1との間に介装すユニット外集電体6が設けてある。これらの集電体5,6には、発泡銀等の発泡金属を用いることができる。
【0017】
セパレータ2、内周部材3及び外周部材4には、単セル1に対して熱膨脹率が近い材料又は熱膨脹率がほぼ一致する材料を選択する。例えば、固体酸化物型燃料電池のニッケルとイットリア安定化ジルコニアのサーメットを燃料極に用いた燃料極支持型セルの場合には、熱膨張率が約10.E−6[1/K]程度となるフェライト系金属などが良い。とくにフェライト系の中でもSUS430、耐酸化性及び耐腐食性に優れたZMG232、若しくはCroffer22APUなどがより好ましい。セパレータ2と外周部材4は、外縁部をプレスにより加工し、外縁部同士を溶接、ろう付及び超音波接合などにより接合することができる。
【0018】
さらに、セパレータ2及び内周部材3は、中心部に、円形穴から成る燃料ガスの導入部7が設けてあると共に、その周囲に、同じく円形穴から成る燃料ガスの排出部8が90度間隔で配置してある。これらの導入部7及び排出部8は、図2(b)に示すように、複数の燃料電池ユニットU1を積層したスタック構造体Sにおいて、互いに連続して先述の導入管11A及び排出管11Bを形成する。
【0019】
また、図1に示す燃料電池FC1は、ケースCの内部に、一対の酸化剤ガスの導入管12A,12Aと、両導入管12A,12Aの間に配置した排出管12Bを備えている。一対の導入管12A,12Aは、燃料電池ユニットU1同士の間隙に対応する位置に、互いに相反する方向に向いた導入孔12aを有している。また、排出管12Bは、燃料電池ユニットU1同士の間隙に対応する位置で開口している。
【0020】
なお、ケースCは、例えばオーステナイト系ステンレスSUS316であって、内部表面に、輻射を高めるための銀コーティングが施してあり、図示しない断熱体で外側が被覆してある。導入管12A及び排出管12Bは、例えば、オーステナイト系ステンレスSUS316製である。
【0021】
ここで、燃料電池FC1は、各導入管12A,12Aからスタック構造体Sの外周部に沿ったガス誘導部材13を備えている。ガス誘導部材13は、例えば、セラミックスシートから成るもので、ケースCの内面との間に外周ガス流路14を形成すると共に、先端部同士の間に、スタック構造体Sの収容空間に通じる開口域15を形成している。
【0022】
また、燃料電池FC1は、図1(b)に示すように、ガス誘導部材13とスタック構造体Sとの間に、例えばセラミックスシートから成る絶縁層16が設けてあり、とくに、絶縁層16の近傍において、燃料電池ユニットU1の単セル1側の表面にはガラスコート17が施してある。
【0023】
そして、上記の燃料電池FC1は、燃料ガスの導入管11Aから、各燃料電池ユニットU1内に燃料ガスを導入し、燃料ガスを単セル1の燃料極に供給する。また、燃料電池FC1は、酸化剤ガス(空気)の導入管12Aから、ケースC内に酸化剤ガスを導入し、その酸化剤ガスを燃料電池ユニットU1同士の間隙に流通させて単セル1の空気極に供給する。これにより、燃料電池FC1は、単セル1において電気化学反応により電気エネルギを発生する。
【0024】
この際、燃料電池FC1は、ガス誘導部材13を介して、外周ガス流路14を流れる酸化剤ガスとスタック構造体Sとの間で熱交換を行うものとなっている。そして、燃料電池FC1は、ケースC内において酸化剤ガスを一方向に流すような構造に比べて、ガス誘導部材13の採用により燃料電池ユニットU1及びスタック構造体Sの温度分布の均一化が格段に向上したものとなる。
【0025】
また、燃料電池FC1は、上記の如く酸化剤ガスの熱交換効率を高める構成に加えて、以下に述べるように、燃料ガスと酸化剤ガスとの間の熱交換効率をも高める構成を採用しており、燃料電池ユニットU1及びスタック構造体Sの温度分布のさらなる均一化を実現するものとなる。
【0026】
すなわち、燃料電池FC1は、上述の如く、複数の燃料電池ユニットU1を互いに間隙を介して積層してスタック構造体Sを形成すると共に、スタック構造体SをケースCに収容し、各燃料電池ユニットU1の内部に、燃料ガスを供給すると共に、ケースC内に酸化剤ガスを供給して燃料電池ユニットU1同士の間隙に他方の反応用ガスを流通させる構造を有している。
【0027】
そして、燃料電池FC1は、一方の反応用ガスである燃料ガスの流通域と、他方の反応用ガスである酸化剤ガスの流通域とを隔てる隔壁部材に、熱伝達促進用の微細な凹凸Aが設けてある。
【0028】
この実施形態における隔壁部材は、セパレータ2、内周部材(セル板部材)3及び外周部材(セル板部材)4であり、これらの部材2〜4の両面に微細な凹凸Aが形成してある。なお、微細な凹凸Aは、これらの部材2〜4のうちの少なくとも一つの部材に形成したり、選択した部材2〜4の少なくとも一方の面に形成したりすることができるが、全ての部材2〜4の両面に形成することで熱伝達率がより一層高められる。
【0029】
上記の燃料電池FC1では、燃料ガスが改質されたガスであるうえに、発電時にスタック構造体Sが発熱することから、酸化剤ガスの温度に比べて燃料ガスの温度の方が高くなる。そこで、燃料電池FC1では、燃料ガスの流通域と酸化剤ガスの流通域とを隔てる隔壁部材において夫々熱交換をし、燃料電池ユニットU1に導入する燃料ガスを予熱して発電効率を高めるようにしている。
【0030】
そして、燃料電池FC1では、燃料ガスの流通域と酸化剤ガスの流通域とを隔てる隔壁部材であるセパレータ2、内周部材3及び外周部材4に微細な凹凸Aを設けることで、これらの部材2〜4の熱伝達率をさらに高くして熱交換効率を一層高め、高温の燃料ガスと酸化剤ガスとの温度差を低減することができる。これにより、燃料電池FC1では、燃料電池ユニットU1及びスタック構造体Sの内部を所望の温度範囲に抑えることができる。
【0031】
上記の微細な凹凸Aは、大きさがとくに限定されるものではないが、凹部や凸部の個々の寸法、ピッチ及び高低差が、例えば数十μm程度のものである。なお、熱交換器では、フィンを設けて表面積を拡大することが一般的に行われているが、ガス流路に大きいフィンを設けると圧力損失が大きくなる。そこで、燃料電池FC1では、上記の微細な凹凸Aを設けることで、ガスの流れを乱すことなく熱交換効率を高めることができる。
【0032】
この実施形態の燃料電池FC1は、その他の特徴として、各燃料電池ユニットU1が円盤状であって、中心部分で互いに連結してスタック構造体Sを形成すると共に、スタック構造体Sが、その中心線に沿って燃料ガスの導入管11A及び排出管11Bを備え、各燃料電池ユニットU1内に燃料ガスを流通させる構造を有している。
【0033】
さらに、燃料電池FC1は、スタック構造体Sを収容するケースCを備えると共に、ケースC内に酸化剤ガスの導入管12A及び排出管12Bを配置して、燃料電池ユニットU1同士の間隙に酸化剤ガスを流通させる構造を有している。また、燃料電池FC1は、燃料電池ユニットU1の周上において、酸化剤ガスの排出管12Bとガス誘導部材13の開口域15を180度の位相で配置すると共に、排出管12Bの両側に導入管12A,12A及びガス誘導部材13,13を夫々配置している。これにより、酸化剤ガスの導入管12A、排出管12B、ガス誘導部材13、外周ガス流路14及び開口域15を線対称に配置している。
【0034】
燃料電池FC1は、上記の如く各構成部位の形状や配置を設定することで、燃料ガス及び酸化剤ガスをより均一に流通させて、燃料電池ユニットU1並びにスタック構造体Sの温度分布のさらなる均一化に貢献することができる。また、スタック構造体Sにおいては、その組み立てにおいて、中心部のみが加圧され、各燃料電池ユニットU1の外周部同士は何ら拘束されないので、運転時に発生する熱膨脹や熱応力を抑制することができる。
【0035】
図3は、本発明の燃料電池の他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
図示の燃料電池FC2は、先の実施形態の燃料電池(図1参照)と同等の構成を備えており、隔壁部材であるセパレータ2、内周部材(セル板部材)3及び外周部材(セル板部材)4の両面に、熱伝達促進用の微細な凹凸Aが形成してある。そして、この実施形態では、とくに、内周部材3及び外周部材4において、微細な凹凸Aが電気的絶縁性物質で形成してある。
【0037】
上記の燃料電池FC2では、先の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができるうえに、電気的絶縁性物質から成る微細な凹凸Aによって内周部材3及び外周部材4が絶縁部材となり、例えば、燃料電池ユニットU2の単セル1側の表面に設けるガラスコート(図1b中の符号17参照)が不要となり、構造の簡略化などに貢献することができる。
【0038】
図4及び図5は、本発明の燃料電池のさらに他の実施形態を説明する図である。
【0039】
図4に示す燃料電池ユニットU2は、発電要素である環状の単セル1と、単セル1の燃料極側の面(図中で上面)に対向するセパレータ2と、単セル1の中央穴に装着する内周部材3と、単セル1の外周部に接合する外周部材4を備えている。
【0040】
また、燃料電池ユニットU2は、単セル1とセパレータ2の間に、ユニット内集電体5と、ユニット内のガス流路部材21を介装して、単セル1とセパレータ2の外周部同士を外周部材4で気密的に接合することにより、単セル1とセパレータ2の間に袋綴じ構造の扁平なガス室を形成している。
【0041】
さらに、燃料電池ユニットU2は、セパレータ2の反単セル側の面(図中で上面)に、隣接する燃料電池ユニットU2との間に介装されるユニット外集電体7と、ユニット外のガス流路部材22と、隣接する燃料電池ユニットUとの間に間隙を形成するスペーサ23が設けてある。
【0042】
ユニット内及びユニット外の集電体5,6には、先の実施形態と同様に、発泡銀等の発泡金属が用いられる。ガス流路部材21,22及びスペーサ23には、例えば、フェライト系ステンレスSUS430が用いられる。なお、集電体5,6やガス流路部材21,22は、当然のことながら導電性を有するものである。
【0043】
セパレータ2、内周部材3、ユニット内のガス流路部材21、及びスペーサ23には、燃料ガスの導入部7及び排出部8が設けてある。これらの導入部7及び排出部8は、先の実施形態と同様に、燃料電池ユニットU2を組立てた状態で互いに連通し、燃料電池ユニットU2を積層した状態において導入管11A及び排出管11Bを形成する。
【0044】
ここで、燃料電池ユニットU2は、先の実施形態と同様に、セパレータ2、内周部材3及び外周部材4が、燃料ガスの流通域と酸化剤ガスの流通域とを隔てる隔壁部材に相当する。これらの部材のうちの内周部材3及び外周部材4は、単セル1を保持するセル板部材である。
【0045】
そしてさらに、燃料電池ユニットU2は、上記の隔壁部材に対して熱伝達可能に接触する機能部材を備えており、この機能部材に熱伝達促進用の微細な凹部を設けている。この実施形態における機能部材は、ユニット内集電体5及びユニット内のガス流路部材21、ユニット外集電体6及びユニット外のガス流路部材22、並びにスペーサ23である。
【0046】
上記の燃料電池ユニットU2は、複数枚を積層することで、図5に示すように、スタック構造体Sを構成し、さらに、スタック構造体SをケースCに収容して燃料電池FC3を構成する。
【0047】
上記の燃料電池FC3にあっても、隔壁部材に対して熱伝達可能に接触する機能部材、すなわち、セパレータ2、内周部材3及び外周部材4に対して熱伝達可能に接触する集電体5,6、ガス流路部材21,22及びスペーサ23に微細な凹凸Aを設けたことで、これらの部材21〜23の熱伝達率をさらに高くして熱交換効率を一層高め、高温の燃料ガスと酸化剤ガスとの温度差を低減することができる。これにより、燃料電池ユニットU2及びスタック構造体Sの温度分布の均一化を実現すると共に、これらの内部を所望の温度範囲に抑えることができる。
【0048】
なお、図4及び図5に示す構造を有する燃料電池ユニットU2及び燃料電池FC3において、微細な凹凸Aは、機能部材であるガス流路部材21,22及びスペーサ23の全部に設けても良いし、機能部材のうちのいずれかに設けても良い。また、微細な凹凸Aは、機能部材及び隔壁部材の全てに設けても良い。
【0049】
また、上記実施形態において、ユニット内及びユニット外の集電体5,6は、発泡金属から成るものとしたが、金属製繊維を不職布状に成形したものを採用することもできる。さらに、図6に示すように、金属板から成る集電体25を採用することもできる。
【0050】
図6に示す集電体25は、板ばね状の多数の突片25Aを切り起しにより形成したものであって、単セル1とセパレータ2との間に介装することで、突片25Aの弾力性により燃料電池ユニットの変形に追従して、常に良好な電気的接触状態を維持するものである。
【0051】
図7は、本発明の燃料電池のさらに他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図示の燃料電池FC4は、ケースC内に、燃料電池ユニットUに供給する高温の燃料ガス(一方の反応用ガス)とケースC内に供給した酸化剤ガス(他方の反応用ガス)との間で熱交換を行う熱交換器31を備えている。
【0053】
図示例のスタック構造体Sは、その上下にフランジ部材41,42を設けると共に、上側のフランジ部材41に皿ばね43を設け、上側のフランジ部材41及び皿ばね43に貫通させたスタッドボルト44を下側のフランジ部材42に螺着することで、上下のフランジ部材41,42で挟持されている。
【0054】
また、熱交換器31は、ケース32に複数の熱交換用チューブ33を収容したものである。この熱交換器31は、気化器34及び改質器35で生成した高温の改質ガスを導入して、ケースC内に供給した酸化剤ガスとの間で熱交換をし、改質ガスを燃料ガスとしてスタック構造体Sに供給する。そして、この実施形態では、熱交換器31の表面に、熱伝達促進用の微細な凹凸Aが形成してある。
【0055】
上記の燃料電池FC4は、微細な凹凸Aにより、熱交換器31のケース32の熱伝達率が高いものとなり、熱交換器31における熱交換効率が向上する。これにより、スタック構造体Sの内部に供給する燃料ガスと、ケースC内に供給する酸化剤ガスとの温度差を低減して、温度分布の均一化を図ることができ、ひいては燃料電池ユニットU及びスタック構造体Sの内部を所望の温度範囲に抑制することができる。
【0056】
図8は、本発明の燃料電池のさらに他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
図示の燃料電池FC5は、ケースC内に、燃料電池ユニットUに供給する燃料ガスとケースC内に供給した酸化剤ガスとの間で熱交換を行う熱交換器51を備えている。
【0058】
熱交換器51は、燃料電池ユニットUとほぼ同等の直径及び厚さを有する複数の扁平ケース52を備え、これらの扁平ケース52を互いに間隙を介して積層した構造になっている。各扁平ケース52は、その内部が上下方向に互いに連通している。この熱交換器51は、上側及び下側のスタック構造体Sの間に同軸状に介装してあると共に、その上下において各スタック構造体Sと内部で互いに連通している。そして、熱交換器51は、各扁平ケース52の表面に熱伝達促進用の微細な凹凸Aが形成してある。
【0059】
また、この実施形態では、ケースCが、上部のスタック構造体Sを収容する上段ケースC1と、熱交換器51を収容する中段ケースC2と、下部のスタック構造体Sを収容する下段ケースC3に区分けしてある。上段、中段及び下段のケースC1〜C3は、上下に互いに連通している。
【0060】
上記の燃料電池FC5は、微細な凹凸Aにより、熱交換器53の各扁平ケース52の熱伝達率が高いものとなり、熱交換器51における熱交換効率が向上する。これにより、中段ケースC2において、高温の燃料ガスと酸化剤ガスとの間で熱交換を行って、上下のスタック構造体Sの内部に供給する燃料ガスと、上段及び下段のケースC1,C3に供給する酸化剤ガスとの温度差を低減して、温度分布の均一化を図ることができ、ひいては燃料電池ユニットU及びスタック構造体Sの内部を所望の温度範囲に抑制することができる。
【0061】
図9〜図11は、微細凹凸構造の製造方法を説明する図である。
図9に示すように、隔壁部材の基材Mに、加圧空気とともに金属製の微細粒子を吹き付け、基材Mの表面の一部を除去して粗面化することにより、基材Mの表面に微細な凹凸Aを形成することができる。
【0062】
上記の微細凹凸構造の製造方法は、比較的簡単な作業により、ガス流路の圧力損失を生じさせずに隔壁部材の熱伝達率向上を実現し得る微細な凹凸Aを形成することが可能となる。
【0063】
また、図10に示すように、隔壁部材の基材Mに、加圧空気とともに微細粒子Gを吹き付けて堆積させることで、微細粒子Gで多孔質状の層を形成し、基材Mの表面に微細な凹凸Aを形成することができる。
【0064】
上記の微細凹凸構造の製造方法にあっても、比較的簡単な作業により、ガス流路の圧力損失を生じさせずに隔壁部材の熱伝達率向上を実現し得る微細な凹凸Aを形成することが可能となる。
【0065】
また、上記の微細凹凸構造の製造方法では、電気絶縁性物質から成る微細粒子Gを用いることができ、この場合には、隔壁部材そのものが絶縁性を有するものとなり、別の絶縁層を省略して構造の簡素化などに貢献することができる。
【0066】
さらに、図11に示すように、金属被膜を有する隔壁部材の基材Mを陽極酸化処理することで、基材Mの表面に酸化被膜Pによる微細な凹凸Aを形成することができる。
【0067】
上記の微細凹凸構造の製造方法にあっても、比較的簡単な作業により、ガス流路の圧力損失を生じさせずに隔壁部材の熱伝達率向上を実現し得る微細な凹凸Aを形成することが可能となる。また、当該製造方法では、熱伝達を促進する微細凹凸構造を広範囲にわたって廉価に形成することが可能となり、とくに、外側からの加工が困難な熱交換部位に非常に有効であり、隔壁部材(セル板部材を含む隔壁部材)や機能部材の表面全体に微細な凹凸Aを容易に形成することができる。また、酸化被膜Pが絶縁性を有するので、別の絶縁層を省略して構造の簡素化などに貢献することができる。
【0068】
なお、電気的絶縁物質から成る微細粒子Gを用いて形成した微細な凹凸Aや、陽極酸化処理により形成した微細な凹凸Aは、当然、集電体等のように導電性を要する部材以外の隔壁部材や機能部材に形成することとなる。
【0069】
図12は、微細な凹凸Aの有無による熱伝達率の相違を示すグラフである。ここでは、凹凸の無い未処理の試料と、図9に示す如く粗面化による凹凸Aを有する試料と、図11に示す如く陽極酸化処理による凹凸Aを有する試料を用意した。そして、ヒータの上に断熱性を有するスペーサを介して試料を載置し、ヒータをオンにして各試料を赤外線カメラで観察し、各試料の温度上昇を調べた。
【0070】
その結果、図12から明らかなように、未処理の試料に比べて、微細な凹凸Aを有する試料はいずれも表面温度が高くなり、微細な凹凸Aにより熱伝達率が向上していることを確認した。
【0071】
なお、本発明の燃料電池は、その構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、構成の細部を適宜変更することができ、隔壁部材や機能部材の両面又は片面に微細な凹凸Aを設けることができる。
【0072】
さらに、上記各実施形態では、燃料電池ユニットU,U1,U2内に一方の反応用ガスである燃料ガスを流通させると共に、ケースC内に他方の反応用ガスである酸化剤ガス(空気)を流通させるものとして説明したが、燃料電池ユニットの構成によっては、燃料ガスと酸化剤ガスの流通域を逆の関係にすることもあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の燃料電池の一実施形態を説明する斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図2】燃料電池ユニットを分解状態で説明する斜視図(a)及びスタック構造体の斜視図(b)である。
【図3】本発明の燃料電池の他の実施形態を説明する断面図である。
【図4】本発明の燃料電池のさらに他の実施形態における燃料電池ユニットを分解状態で説明する斜視図である。
【図5】図4に示す燃料電池ユニットを備えた燃料電池を説明する断面図である。
【図6】集電体の他の例を説明する平面図である。
【図7】本発明の燃料電池のさらに他の実施形態を説明する断面図である。
【図8】本発明の燃料電池のさらに他の実施形態を説明する断面図である。
【図9】微細凹部構造の製造方法を説明する基材の断面図である。
【図10】微細凹部構造の他の製造方法を説明する基材の断面図である。
【図11】微細凹部構造のさらに他の製造方法を説明する基材の平面図(a)及び断面図(b)である。
【図12】微細な凹凸の有無による熱伝達率の相違を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
A 微細な凹凸
C ケース
FC1〜FC5 燃料電池
S スタック構造体
U U1 U2 燃料電池ユニット
1 単セル
2 セパレータ(隔壁部材)
3 内周部材(隔壁部材:セル板部材)
4 外周部材(隔壁部材:セル板部材)
5 ユニット内集電体(機能部材)
6 ユニット外集電体(機能部材)
7 導入部
8 排出部
11A 導入管(燃料ガスの導入管)
11B 排出管(燃料ガスの排出管)
12A 導入管(酸化剤ガスの導入管)
12B 排出管(酸化剤ガスの排出管)
21 22 ガス流路部材(機能部材)
23 スペーサ(機能部材)
25 集電体(機能部材)
31 51 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池ユニットを互いに間隙を介して積層してスタック構造体を形成すると共に、スタック構造体をケースに収容し、各燃料電池ユニットの内部に、燃料ガス及び酸化剤ガスのいずれか一方の反応用ガスを供給すると共に、ケース内に他方の反応用ガスを供給して燃料電池ユニット同士の間隙に他方の反応用ガスを流通させる構造を有する燃料電池であって、
一方の反応用ガスの流通域と他方の反応用ガスの流通域とを隔てる隔壁部材に微細な凹凸を設けたことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
各燃料電池ユニットが、円盤状を成すと共に、中心部分で互いに連結してスタック構造体を形成し、スタック構造体が、その中心部分に一方の反応用ガスの導入管及び排出管を備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
各燃料電池ユニットが、発電要素である単セルと、単セルとの間にガス室を形成するセパレータを備え、セパレータが、一方及び他方の反応用ガスの流通域を隔てる隔壁部材であって、セパレータに微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
各燃料電池ユニットが、単セルを保持するセル板部材を備え、セル板部材が、一方及び他方の反応用ガスの流通域を隔てる隔壁部材であって、セル板部材に微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
微細な凹凸が、電気的絶縁物質で形成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
隔壁部材に対して熱伝達可能に接触する機能部材を備え、機能部材に微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項7】
各燃料電池ユニットが、その内部に収容したユニット内集電体と、隣接する燃料電池ユニットとの間に介装するユニット外集電体を備え、ユニット内集電体及びユニット外集電体が、隔壁部材に対して熱伝達可能に接触する機能部材であって、ユニット内集電体及びユニット外集電体の少なくとも一方に微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
各燃料電池ユニットが、その内部に一方の反応用ガスのガス流路を形成するユニット内流路部材と、隣接する燃料電池ユニットとの間に他方の反応用ガスのガス流路を形成するユニット外流路部材を備え、ユニット内流路部材及びユニット外流路部材が、隔壁部材に対して熱伝達可能に接触する機能部材であって、ユニット内流路部材及びユニット外流路部材の少なくとも一方に微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池。
【請求項9】
ケース内に、燃料電池ユニットに供給する一方の反応用ガスとケース内に供給した他方の反応用ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を備え、熱交換器の表面に微細な凹凸を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池における微細な凹凸を形成するに際し、隔壁部の基材に微細粒子を吹き付けて表面を粗面化することにより、基材の表面に微細な凹凸を形成することを特徴とする微細凹凸構造の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池における微細な凹凸を形成するに際し、隔壁部の基材に微細粒子を吹き付けて堆積させることにより、基材の表面に微細な凹凸を形成することを特徴とする微細凹凸構造の製造方法。
【請求項12】
微細粒子が、電気絶縁性物質であることを特徴とする請求項11に記載の微細凹凸構造の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池における微細な凹凸を形成するに際し、金属被膜を有する隔壁部の基材を陽極酸化処理することにより、基材の表面に微細な凹凸を形成することを特徴とする微細凹凸構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−33865(P2010−33865A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194395(P2008−194395)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】