説明

燃料電池

【課題】大きさを抑制しつつ、安定して電力を出力できる燃料電池を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る燃料電池は、燃料の供給により発電する燃料電池本体と、燃料電池本体が発電した電力により充電される蓄電素子と、燃料電池本体の発電時に発生する熱が蓄電素子に伝達される状態で、燃料電池本体および蓄電素子を収納する筐体と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池等の蓄電素子を備えた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
【0003】
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
【0004】
これらのうち、内部気化型等のパッシブ方式はDMFCの小型化に対して特に有利である。パッシブ型DMFCにおいては、例えば燃料極、電解質膜および空気極を有する膜電極接合体(燃料電池セル)を、樹脂製の箱状容器からなる燃料収容部上に配置した構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、DMFC方式では、発電時の化学反応により生じる熱のために膜電極接合体の温度が上昇し、膜電極接合体を構成する部材や、膜電極接合体の周囲に配置されている部材が、熱によって変形や変質等の劣化を生じ、燃料電池の出力が低下するという問題があった。これを防ぐためには、膜電極接合体の温度を検知して、この検知された温度が予め設定された値を上回った場合には、膜電極接合体への燃料の供給を遮断もしくは抑制する方法や、燃料電池の筺体表面に放熱部材を設け、膜電極接合体の熱を外部へ放熱する方法などが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/112172号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、燃料の供給を遮断もしくは抑制する場合、発電反応が抑制され、結果として燃料電池の出力が低下する虞がある。また、膜電極接合体の熱を外部へ放熱する場合、膜電極接合体で生じる熱を十分に放熱するために放熱部材が外部と熱交換する表面積を大きくとる必要があり、燃料電池も大きくなる虞がある。
この発明は、かかる従来の問題を解消するためになされたもので、大きさを抑制しつつ、安定して電力を出力できる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る燃料電池は、燃料の供給により発電する燃料電池本体と、燃料電池本体が発電した電力により充電される蓄電素子と、燃料電池本体の発電時に発生する熱が蓄電素子に伝達される状態で、燃料電池本体および蓄電素子を収納する筐体と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大きさを抑制しつつ、安定して電力を出力できる燃料電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る燃料電池の構成を示した図である。
【図2】第1の実施形態に係る燃料電池の発電セルの構成の一例を示した図である。
【図3】第1の実施形態に係る燃料電池の燃料分配機構の構成の一例を示した図である。
【図4A】第1の実施形態に係る燃料電池の燃料電池本体と二次電池の配置関係の一例を示した図である。
【図4B】第1の実施形態に係る燃料電池の燃料電池本体と二次電池の配置関係の一例を示した図である。
【図5A】第1の実施形態に係る燃料電池の燃料電池本体と二次電池の配置関係の他の例を示した図である。
【図5B】第1の実施形態に係る燃料電池の燃料電池本体と二次電池の配置関係の他の例を示した図である。
【図6】その他の実施形態に係る燃料電池の燃料電池本体と二次電池の配置関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池1の構成を示した図である。第1の実施形態に係る燃料電池1は、バルブ101、ポンプ102、燃料電池本体103、DC/DCコンバータ104(昇圧型DC/DCコンバータ)、燃料タンク105、制御部106、リチウムイオン二次電(LIB:Lithium-ion Battery)充電回路107、蓄電素子であるリチウムイオン二次電池(以下、LIB;Lithium-ion Batteryと称する)108、DC/DCコンバータ109(昇圧型DC/DCコンバータ)、出力端子110、筺体111を具備する。なお、この第1の実施形態では、燃料電池1として、直接メタノール型燃料電池(以下、DMFC; Direct Methanol Fuel Cellと称する。)を例に説明する。
【0012】
燃料タンク105は、発電に使用する液体燃料を収容する。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。
【0013】
制御部106は、この第1の実施形態に係る燃料電池1全体を制御する。制御部106は、バルブ101、ポンプ102、DC/DCコンバータ104、LIB充電回路107、DC/DCコンバータ109などを制御する。
【0014】
バルブ101は、燃料タンク105から燃料電池本体103への燃料の供給経路を開閉する。ポンプ102は、燃料タンク105に貯蔵されている燃料を燃料電池本体103へ供給する。燃料電池本体103へ燃料が供給されると、燃料が空気中の酸素と化学反応を起こし発電する。
【0015】
燃料電池本体103で発電された電力は、DC/DCコンバータ104で昇圧される。DC/DCコンバータ104で昇圧された電力は、LIB充電回路107によりLIB108へ供給される。LIB108は、充放電が可能であり、燃料電池本体103から供給される電力を一旦蓄え、必要に応じて放出する。
【0016】
LIB108は、非水電解質二次電池の一種であり、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池である。LIB108は、正極(陽極)にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイトなどの炭素材を用いるのが一般的であり、正極の素材により次のような種類に分類できる
【0017】
1.コバルト系リチウムイオン二次電池
2.ニッケル系リチウムイオン二次電池
3.マンガン系リチウムイオン二次電池
4.鉄系、バナジウム系など、他のリチウム金属酸化物を用いるリチウムイオン二次電池
【0018】
上記の中では、コバルト系リチウムイオン二次電池が広く使用されており、正極にコバルト酸リチウム、負極に炭素材料、電解液には、有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものを用いている。充電時における化学反応式は次の通りである。なお、この化学反応は吸熱反応である。
正極:LiCoO → LiCoO+(1−x)Li+(1−x)e …(1)
負極:(1−x)Li+(1−x)e+C → Li1−x …(2)
(xは、0<x<1となる数で、通常は約0.5である)
【0019】
DC/DCコンバータ109は、LIB108から供給される電力を所定の値まで昇圧して出力端子110を介してこの燃料電池1に接続された外部負荷へ供給する。つまり、本実施の形態においては、燃料電池本体103で発電された電力はLIB108へ一旦充電された後、この燃料電池1に接続された外部負荷へ出力される。なお、LIB108に充電された電力は、この燃料電池1を動作させる際に必要な電力(例えば、バルブ101やポンプ102)を供給する際にも使用される。
【0020】
図2および図3は、燃料電池1の燃料電池本体103の構成の一例を示した図である。以下、図2、3を参照して、燃料電池本体103の構成について説明する。
【0021】
燃料電池本体103は、アノード(燃料極)22、カソード(空気極/酸化剤極)24および電解質膜23から構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)21を具備する。アノード(燃料極)22は、アノード触媒層22aとアノードガス拡散層22bとを有する。カソード(空気極/酸化剤極)24は、カソード触媒層24bとカソードガス拡散層24aとを有する。電解質膜23は、アノード触媒層22aとカソード触媒層24bとで挟持され、プロトン(水素イオン)伝導性を有する。
【0022】
アノード触媒層22aやカソード触媒層24bに含有される触媒として、Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が使用できる。アノード触媒層22aには、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層24bにはPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、上記触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用できる。また、触媒は炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒または無担持触媒などが使用できる。
【0023】
電解質膜23を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料などが使用できる。
【0024】
アノードガス拡散層22bは、アノード触媒層22aに燃料を均一に供給するアノード触媒層22aの集電体である。カソードガス拡散層24aは、カソード触媒層24bに酸化剤を均一に供給するカソード触媒層24bの集電体である。アノードガス拡散層22bおよびカソードガス拡散層24aは多孔質基材で構成されている。
【0025】
アノードガス拡散層22bやカソードガス拡散層24aには、必要に応じて集電体としての導電層が積層される。これら導電層としては、例えばAu、Niのような導電性金属材料からなる多孔質層(例えば、メッシュ)、多孔質膜、箔体あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材等が使用できる。また、グラファイト(黒鉛)等の炭素質材料も使用できる。電解質膜23と後述する燃料分配機構31およびカバープレート25との間には、それぞれゴム製の0リング26が介在する。これら0リング26は、燃料電池本体103からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止する。
【0026】
カバープレート25は酸化剤である空気を取入れるための不図示の開口を有している。カバープレート25とカソード24との間には、必要に応じて保湿層や表面層が配置される。保湿層はカソード触媒層24bで生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層24bへの空気の均一拡散を促進するものである。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。この保湿層は、例えば、ポリエチレン製多孔質フィルム等からなる平板で構成される。
【0027】
燃料電池本体103のアノード(燃料極)22側には、燃料分配機構31が配置されている。燃料分配機構31には配管のような液体燃料の流路36を介して燃料タンク105が接続されている。
【0028】
燃料分配機構31には燃料タンク105から流路36を介して燃料が導入される。流路36は燃料分配機構31や燃料タンク105と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構31と燃料タンク105とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ燃料の流路であってもよい。燃料分配機構31は流路36を介して燃料タンク105と接続されていればよい。
【0029】
図3に示すように、燃料分配機構31は、燃料が流路36を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口35と、燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口33とを有する燃料分配板32を備えている。この燃料分配板32は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリイミド系樹脂等で構成される。また図2に示すように、燃料分配板32の内部には、燃料注入口35から導かれた燃料の通路となる空隙部34が設けられている。複数の燃料排出口33は燃料通路として機能する空隙部34にそれぞれ直接接続されている。
【0030】
燃料注入口35から燃料分配機構31に導入された燃料は空隙部34に入り、この燃料通路として機能する空隙部34を介して複数の燃料排出口33にそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口33には、例えば燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。この気液分離体は、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などから構成される。なお、気液分離体は燃料分配機構31とアノード22との間に気液分離膜等として設置してもよい。燃料の気化成分は複数の燃料排出口33からアノード22の複数個所に向けて排出される。
【0031】
燃料排出口33は、燃料分配板32のアノード22と接する面に複数設けられている。これにより、燃料電池本体103の全体に燃料を供給することができる。燃料排出口33の個数は2個以上であればよいが、燃料電池本体103の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cmの燃料排出口33が存在するように形成することが好ましい。
【0032】
燃料分配機構31と燃料タンク105の間を接続する流路36には、燃料移送制御手段としてのポンプ102が挿入されている。このポンプ102は燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料タンク105から燃料分配機構31に燃料を移送する燃料供給ポンプである。このようなポンプ102で必要時に燃料を送液することによって、燃料供給量の制御性を高めるものである。
【0033】
この場合、ポンプ102としては、少量の燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。なお、燃料は重力や毛細管現象を利用して送液するようにしてもよい。重力を利用する場合、燃料タンク105は、燃料電池本体103よりも上になるよう配置する。また、毛細管現象を利用する場合、燃料の流路36に多孔質体を充填する。
【0034】
ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液する。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアプラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。上記ポンプのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアプラムポンプを使用することがより好ましい。なお、燃料分配機構31から膜電極接合体21への燃料供給が行われる構成であればポンプ102を使用せずバルブ101のみで構成とすることも可能である。この場合には、バルブ101は、流路36による液体燃料の供給を制御するために設けられる。
【0035】
このような構成において、燃料タンク105に収容された燃料は、ポンプ102により流路36を移送され、燃料分配機構31に供給される。そして、燃料分配機構31から放出された燃料は、燃料電池本体103のアノード(燃料極)22に供給される。燃料電池本体103内において、燃料はアノードガス拡散層22bで拡散されアノード触媒層22aに供給される。燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層22aで下記(3)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。
【0036】
なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層24bで生成した水や電解質膜23中の水をメタノールと反応させて下記(l)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
【0037】
CHOH+HO → CO十6H+6e …(3)
この反応で生成した電子(e)は集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる出力として負荷側に供給された後、カソード(空気極)24に導かれる。また、(3)式の内部改質反応で生成したプロトン(H)は電解質膜23を経てカソード24に導かれる。カソード24には酸化剤として空気が供給される。カソード24に到達した電子(e)とプロトン(H)は、カソード触媒層24bで空気中の酸素と下記(4)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成される。
6e+6H+(3/2)O → 3HO …(4)
【0038】
図2にしめす燃料電池1は、セミパッシブと称される型の燃料電池である。セミパッシブ型の燃料電池は、燃料タンク105から膜電極接合体21に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料タンク105に戻されることはない。セミパッシブ型の燃料電池は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。
【0039】
また、燃料電池1は、燃料の供給にポンプ102を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。このため、燃料電池1は、上述したようにセミパッシブ方式と呼称される。なお、このセミパッシブ型の燃料電池では、燃料タンク105から膜電極接合体21への燃料供給が行われる構成であればポンプ102に代えてバルブ101のみを配置する構成とすることも可能である。この場合には、バルブ101は、流路36による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
【0040】
図4A、図4Bは、第1の実施形態に係る燃料電池1の燃料電池本体103およびLIB108の配置関係の一例を示した図である。図4Aは、燃料電池1の断面図、図4Bは、燃料電池1の平面図である。図4A、図4Bでは、燃料電池本体103およびLIB108以外の構成については、図示を省略している。
【0041】
燃料電池本体103とLIB108は、共通の筺体111に収納される。この筺体111は、燃料電池本体103やLIB108を保護すると共に、相互の位置関係を固定するためのものであり、材質や形状は特に限定されない。
【0042】
燃料電池本体103およびLIB108は、それぞれ少なくとも1箇所の平面部103a,108aを有し、燃料電池本体103の平面部103aおよびLIB108の平面部108aが互いに対向もしくは接触した状態で前記筺体内に収納されている。
【0043】
図4A、図4Bに示す例では、燃料電池本体103およびLIB108は、各々直方体の形状を有しており、燃料電池本体103の下面103aおよびLIB108の上面108aとを対向させた状態で筺体111内に収納されている。なお、燃料電池本体103の下面103aおよびLIB108の上面108aは、接触していてもよい。
【0044】
図4A、図4Bに示す例では、燃料電池本体103で生じる熱がLIB108に吸熱され、燃料電池本体103の温度上昇を抑制するため燃料の供給を遮断もしくは抑制したり、放熱部材を大きくする必要がない。また、燃料電池本体103で生じる熱がLIB108に吸熱され、燃料電池本体103の温度の上昇を抑制できるため安定して電力を出力できる。
【0045】
図5A、図5Bは、第1の実施形態に係る燃料電池1の燃料電池本体103およびLIB108の配置関係の他の一例を示した図である。図5Aは、燃料電池1の断面図、図5Bは、燃料電池1の平面図である。図5A、図5Bでは、燃料電池本体103およびLIB108以外の構成については、図示を省略している。
【0046】
図5A、図5Bに示す例では、燃料電池本体103の上面103aとLIB108の上面108aを略同一平面上に配置し、さらに、燃料電池本体103の上面103aおよびLIB108の上面108aを、熱伝導体112の下面112aに対向させた状態で筺体111内に収納している。なお、燃料電池本体103の上面103aと熱伝導体112の下面112a、およびLIB108の上面108aと熱伝導体112の下面112aは、それぞれ接触していてもよい。
【0047】
図5A、図5Bに示す例では、燃料電池本体103で生じる熱が熱伝導体112を介してLIB108に吸熱される。このため、燃料電池本体103で生じる熱がLIB108に吸熱され、燃料電池本体103の温度上昇を抑制するため燃料の供給を遮断もしくは抑制したり、放熱部材を大きくする必要がない。また、燃料電池本体103で生じる熱がLIB108に吸熱され、燃料電池本体103の温度の上昇を抑制できるため安定して電力を出力できる。さらに、この図5A、図5Bに示す例では、燃料電池1の筺体111を薄くでき、意匠性が向上する。
【0048】
なお、熱伝導体112としては、液体燃料や水、酸素等によって溶解や腐食、酸化等を生じることがなく、かつ熱伝導率λの高い物質(20℃における熱伝導率が、10W/mK以上、好ましくは50W/mK以上、より好ましくは200W/mK以上)からなることが望ましい。熱伝導率λが大きいほど、燃料電池本体103とLIB108との間の熱交換が効率よく行われるためである。
【0049】
熱伝導率λの高い物質としては、ステンレス、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン等の金属またはこれら金属の合金等を使用できる。また、グラファイト(黒鉛)等の炭素質材料も使用できる。熱伝導体112として金属材料を用いた場合、カソードで生成した水や、大気中に含まれる酸素や水蒸気等によって酸化、腐食を防止する必要がある。このため、熱伝導体112には、ステンレス等の腐食しにくい材料を使用するか、表面に金などの酸化しにくい金属をメッキしたり、炭素質の物質や、樹脂もしくはゴムでコーティングを施したり、液体燃料の蒸気に溶解しない塗料で塗装する等の対策が必要となる。
【0050】
上記のようにコーティングを施すための樹脂もしくはゴムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、シリコーン樹脂等の樹脂、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム等のゴムが使用可能である。これら樹脂やゴムは金属に比べて熱伝導率が低いため、コーティングを施す場合には、コーティングする樹脂もしくはゴムはできる限り薄くすることが望ましい。
【実施例】
【0051】
次に、第1の実施形態に係る燃料電池1の具体的実施例およびその評価結果について記載する。
(実施例1,2、比較例1の構成)
以下に実施例1,2および比較例1の構成について説明する。
あまり詳細な説明とならないよう、本願発明の特徴である燃料電池本体103とLIB108の構成については、具体的な数値まで言及するのを避けるようにいたしました(他社に燃料電池の構成を開示しないため)。 → OKです。
【0052】
(実施例1)
この実施例1では、燃料電池本体103とLIB108を、図4A、図4Bに示した位置関係となるように配置した。以下、実施例1に係る燃料電池1の構成について説明する。
まず、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。このペーストをアノードガス拡散層22bである多孔質カーボンペーパに塗布してアノード触媒層22aを得た。
【0053】
カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。このペーストをカソードガス拡散層24aである多孔質カーボンペーパに塗布することによりカソード触媒層24bを得た。
【0054】
なお、アノードガス拡散層22bと、カソードガス拡散層24aとは、同形同大で厚さも等しく、これらのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層22aおよびカソード触媒層24bも同形同大である。
【0055】
上記したように作成したアノード触媒層22aとカソード触媒層24bとの間に、電解質膜23としてパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)をアノード触媒層22aとカソード触媒層24bとが対向するように位置を合わせた状態でホットプレスを施し、膜電極接合体を得た。
【0056】
カソードガス拡散層24aの上には、後述するカバープレート25の空気導入口に対応した位置に開口を有する金箔を積層し、カソード導電層を形成した。またアノードガス拡散層22bの下には、燃料分配層の穴に対応した位置に開口を有する金箔を積層し、アノード導電層を形成した。また、カソード導電層の上には、保湿層としてポリエチレン製多孔質フィルムを積層した。
【0057】
外気からカソードに供給される空気は、この保湿層を透過することとなる。この保湿層の上に長方形の空気導入口を複数個形成したステンレス板(SUS304)をカバープレート25として積層した。上記手順により最終的に得られた燃料電池本体103は、縦の長さが約64mm、横の長さが約44mm、厚さが約6mmの直方体となった。燃料電池本体103の全表面積は、約70.0cmである。
【0058】
このようにして作成した燃料電池本体103を、DC/DCコンバータ104を介して、LIB108(容量400mAhのアルミラミネート型リチウムイオン二次電池)と接続し、厚さ0.5mmのABS樹脂製の筐体111に収納した。なお、LIB108は、縦の長さが約38mm、横の長さが約30mm、厚さが約3.8mmの直方体である。ここで、燃料電池本体103の底面と、LIB108の上面とが対向し、かつその間の距離が4mmとなるように配置した。
【0059】
このとき、燃料電池本体103の全表面積のうち、LIB108の上面までの距離が5mm以下である面積は、約11.4cm(燃料電池本体103の全表面積の約16.3%)である。また、前記カソード触媒層24bを垂直に投影した面積のうち、LIB108の同じ方向からの投影面と重なる面積は約10.0cm(カソード触媒層24bの投影面積の51.9%)である。
【0060】
(実施例2)
この実施例2では、燃料電池本体103とLIB108を、図5A、図5Bに示した位置関係となるように配置した。なお、燃料電池本体103の構成は実施例1と同じである。
以下、実施例2に係る燃料電池1の構成について説明する。
【0061】
この実施例2では、燃料電池本体103の短辺(長さ約44mm)のうち一つが、LIB108の短辺(長さ約30mm)と4mmの距離を隔てて対向し、かつ、燃料電池本体103のカソード触媒層24bがなす平面とLIB108の外形のうち最も面積が広い面とが平行となるように配置した。
【0062】
更に、熱伝導体112として、縦の長さが100mm、横の長さが56mm、厚さ0.5mmのアルミニウム板(20℃における熱伝導率204W/mK)を、燃料電池本体103のカバープレート25との距離が0.5mmとなるように配置した。なお、この熱伝導体112(アルミニウム板)には、燃料電池本体103のカバープレート25に設けられた空気導入口と同じ配置で同形同大の穴を設けている。さらに、LIB108は、熱伝導体112との距離が0.5mmとなるように配置した。なお、LIB108の外形のうち最も面積が広い面が熱伝導体112と対向するように配置している。
【0063】
燃料電池本体103の全表面積のうち、熱伝導体112の最も近接した表面までの距離が2mm以下である面積は約28.7cm(燃料電池本体103の全表面積の約41%)である。また、前記カソード触媒層24bを垂直に投影した面積のうち全て(カソード触媒層24bの投影面積の100%)が、熱伝導体112の同じ方向からの投影面と重なっている。
【0064】
(比較例1)
この比較例1では、燃料電池本体103とLIB108を、実施例2と同様に図5A、図5Bに示した位置関係となるように配置したが、熱伝導体112を設けていない点が実施例2と異なる。なお、燃料電池本体103の構成は実施例1と同じである。
以下、比較例1に係る燃料電池1の構成について説明する。
【0065】
燃料電池本体103の全表面積のうち、LIB108に最も近接した表面までの距離が5mm以下である面積は、約2.6cm(燃料電池本体103の全表面積の約3.7%)である。また、前記カソード触媒層24bを垂直に投影した面積のうち、LIB108の同じ方向からの投影面と重なる面積はゼロである。
【0066】
(実施例1,2、比較例1の比較)
次に、こうして従来例1、実施例1,2および比較例1で得られた燃料電池1を起動し、リチウムイオン二次電池の電圧が3.0Vから4.0Vになるまで充電するために要した時間(分)を測定した。
【0067】
測定は、温度が25℃、相対湿度が50%の環境下において行った。また、表面カバーの中央部の表面に熱電対を取り付け、この熱電対で測定した温度が45℃で一定になるように、純メタノール(純度99.9重量%)の供給量を制御している。さらに、DC/DCコンバータ104により、燃料電池本体103の出力電圧(DC/DCコンバータ104の入力電圧)が1.4Vで一定になるように電流を制御し、かつLIB108の電圧が3.0Vから4.0Vになるまで充電した。
【0068】
上記条件下で充電に要した時間(分)を表1に示す。
【表1】

【0069】
表1に示すように、実施例1,2および比較例1に係る燃料電池1が充電に要した時間は、それぞれ240分、230分および280分である。このことから明らかなように、実施例1,2に係る燃料電池1では、比較例1に係る燃料電池1に比べて、LIB108の充電に要する時間が短い。このことから、実施例1,2の燃料電池1では、燃料電池1の出力(単位時間あたりに発生する電力)が、比較例1よりも高いことが推測できる。
【0070】
これは、燃料電池1の発電に伴って発生する熱の少なくとも一部が、LIB108が充電されるときの吸熱反応によって吸収され、燃料電池1の温度が過度に上昇することなく、前記した式(3)や式(4)で示される反応が円滑に進行した結果によるものと考えられる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、図6に示すように、燃料電池本体103、熱伝導体112、LIB108を同順に積層した状態で筺体111内に収納するようにしてもよい。この場合、燃料電池本体103で生じる熱が熱伝導率の高い熱伝導体112を介してLIB108に吸熱されるため、LIB108による吸熱効果がより大きくなることを期待できる。なお、燃料電池本体103と熱伝導体112、およびLIB108と熱伝導体112とは、各々接触した状態で積層してもよく、間に空間を設けても積層してもよい。
【0072】
また、上記第1の実施形態では、特電素子として、二次電池であるリチウムイオン二次電池(LIB108)を例に説明したが、充電時に吸熱反応するものであれば、他の種類の蓄電素子を使用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1…燃料電池、101…バルブ、102…ポンプ、103…燃料電池本体、104…DC/DCコンバータ、105…燃料タンク、106…制御部、107…LIB充電回路、108…LIB(蓄電素子)、109…DC/DCコンバータ、110…出力端子、111…筺体、112…熱伝導体、22…アノード、23…電解質膜、24…カソード、25…カバープレート、26…Oリング、31…燃料分配機構、32…燃料分配板、33…燃料排出口、34…空隙部、35…燃料注入口、36…流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の供給により発電する燃料電池本体と、
前記燃料電池本体が発電した電力により充電される蓄電素子と、
前記燃料電池本体の発電時に発生する熱が前記蓄電素子に伝達される状態で、前記燃料電池本体および前記蓄電素子を収納する筐体と、
を具備することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記燃料電池本体で発生する熱を前記蓄電素子へ伝達する熱伝導体をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記燃料電池本体および前記蓄電素子は、それぞれ少なくとも1箇所の平面部を有し、前記燃料電池本体の少なくとも1箇所の平面部および前記蓄電素子の少なくとも1箇所の平面部が互いに対向もしくは接触した状態で前記筺体内に収納されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料電池本体および前記蓄電素子は、それぞれ直方体形であり、この直方体形を構成する前記燃料電池本体の下面および前記蓄電素子の上面が互いに対向もしくは接触した状態で前記筺体内に収納されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記燃料電池本体および前記蓄電素子は、前記燃料電池本体と前記蓄電素子との距離が5mm以下で、かつ、前記燃料電池本体の前記蓄電素子と対向もしくは接触する面積が、前記燃料電池本体の全表面積の15%以上となるように前記筺体内に収納されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記蓄電素子は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−113912(P2011−113912A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271563(P2009−271563)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】