説明

燃料電池

酸化還元燃料電池であって、少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液を含み、該陰極液は酸化還元メディエーター対を含み、再産生域が、前記燃料電池の膜電極アセンブリから分離し、前記電池に酸化剤を供給する手段が、前記再産生域に前記酸化剤を供給するように構成され、前記再産生域における陰極液の体積が、前記再産生域および前記陰極のチャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%である、酸化還元燃料電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関し、特に、自動車産業のための燃料電池および電子装置および携帯電子装置のための微小燃料電池とともに、固定電力、予備電力および複合熱電力(chp)事情における用途を有する間接的なまたは酸化還元燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、自動車および携帯電子技術等の携帯用途として非常に長い間知られているが、燃料電池が非常に実用的な評価対象になったのはごく最近である。最も単純な形態では、燃料電池は、燃料および酸化剤を反応生成物に転換する電気化学エネルギー転換装置であり、この工程において電気および熱を生成する。このような電池の一実施例では、水素が燃料として使用され、空気または酸素が酸化剤として使用され、前記反応の生成物は水である。これらのガスがそれぞれ供給されて、前記2つの電極間にて電気的に荷電された粒子を運ぶ固体電解質または液体電解質によって分離された拡散型電極を触媒する。間接的なまたは酸化還元燃料電池では、前記酸化剤(場合によっては、前記酸化剤および/または燃料)は前記電極と直接反応しないが、代わりに、酸化還元対の還元された形態(燃料に対して酸化された形態)と反応し、この酸化種が前記陰極に供給される。
【0003】
異なる電解質によって特徴付けられるいくつかの型の燃料電池が存在する。前記液体電解質であるアルカリ電解質の燃料電池は、前記電解質がCOを溶解する点で元来の不都合を有し、定期的に交換する必要がある。プロトン伝導性固体電池膜を有するポリマー電解質またはPEM型電池は酸性であり、この問題を回避する。しかしながら、酸素還元反応が相対的に乏しい電極触媒作用に起因して、実際は、理論上最大レベルに到達するようなシステムから電力生産量を達成するのが困難であることが判明している。加えて、高価な貴金属の電解触媒がしばしば用いられる。
【0004】
chpに関連して、自動車産業における燃料電池用途では、理想的には、前記燃料電池システムで産生される熱の効率的な移動が求められる。自動車用途においては、ポリマー電解質膜から熱を取り除いて、前記膜の電気化学的性能を劣化させるのを回避することが望ましく、典型的には、移送された熱は前記システムから除去される。複合熱電力用途では、燃料電池の作動時に産生される熱は、前記膜から取り除かれて、次いで、さらなる目的に使用される。熱移動の効率が、前記電池の作動温度の関数である場合、作動温度が上昇するほど、熱移動がより効率的になる。しかしながら、上記に定義されたように、実行可能な作動温度は、前記膜の前記電気化学的特性を保存する必要に限定されるため、特に、プロトン伝導性および耐久性−特性に関して、典型的には、例えば、約80℃−95℃を超える作動温度になるだろう。したがって、前記電池に供給される冷却剤、または、より広く用いられている電池スタックは、前記膜から熱を移動させることを目的として、いずれにおいても前記電池の作動温度より低い温度にて、典型的には約95℃より低い温度(例えば、しばしば80℃より低い温度)にて前記電池またはスタックから排出するだろう。特に、自動車用途および複合熱電力において、相反する膜の熱感受性の要求と生産性に優れた方法で前記電池によって産生される熱を用いることの望ましさとのバランスをとる必要が、電池性能の非効率性を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開番号第WO/2006/097438号
【特許文献2】国際公開番号第WO/2007/110663号
【特許文献3】国際公開番号第WO/2008/009992号
【特許文献4】国際公開番号第WO/2008/009993号
【特許文献5】国際公開番号第WO/2009/040577号
【特許文献6】国際公開番号第WO/2009/093080号
【特許文献7】国際公開番号第WO/2009/093081号
【特許文献8】国際公開番号第WO/2009/093082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の1または2以上の不都合を克服または改善することである。本発明のさらなる目的は、一般に、典型的な膜電極アセンブリ(特に、そのポリマー電解質膜成分)の熱感受性によって課せられた制限を踏まえて、燃料電池内の熱管理のための改善された酸化還元燃料電池構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は酸化還元燃料電池であって、
各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された陽極および陰極を含む複数の該膜電極アセンブリのスタックと、
前記各膜電極アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーと、
前記各膜電極アセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーと、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間にそれぞれ電気回路を提供する手段と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
前記膜電極アセンブリから分離する再産生域と、
を含み、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記再産生域に前記酸化剤を供給するように構成され、
前記再産生域における陰極液の体積は、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%である、前記酸化還元燃料電池を提供する。
【0008】
「陰極チャンバー」は、一方の側に前記膜電極アセンブリの前記陰極側が取り付けられた前記電池の部分を意味する。あるいは、または、加えて、前記「陰極チャンバー」は、少なくとも前記陰極液の一部が、前記電池の作動時において前記膜電極アセンブリの前記陰極側と接触して流れる前記電池の部分として考えられてもよい。
【0009】
前記電池の作動時において、前記陰極液は、各陰極チャンバーを介して各陰極と流体(fluid)のやりとりを行う流れを提供する。
【0010】
前記酸化還元メディエーター対は、前記電池の作動時において、各陰極にて少なくとも部分的に還元され、前記陰極でのこのような還元の後に前記酸化剤を用いた反応によって少なくとも部分的に再産生される。前記少なくとも部分的な前記酸化還元メディエーター対の再産生は、前記再産生域において達成される。
【0011】
したがって、本発明は、酸化還元燃料電池であって、
アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーおよびアセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーを含む各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された該陽極および該陰極を含む複数の該膜電極アセンブリのスタックと、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間にそれぞれ電気回路を提供する手段と、
前記陰極と流体のやり取りを行う際に流れる少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、前記電池の作動時において前記陰極で少なくとも部分的に還元され、かつ前記陰極での前記還元の後に前記酸化剤を用いた反応により少なくとも部分的に再産生される酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
前記膜電極アセンブリから分離する再産生域と、
を含み、
前記酸化還元メディエーター対の少なくとも部分的な再産生は、前記再産生域において生じ、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記再産生域に前記酸化剤を供給するように構成され、
前記再産生域における陰極液の体積は、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%である、前記酸化還元燃料電池を提供する。
【0012】
好ましくは、前記再産生域における陰極液の前記体積は、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総体積の約25%〜約85%であり、より好ましくは、約25%〜約80%である。
【0013】
典型的には、前記再産生域における陰極液の体積と前記陰極チャンバーにおける陰極液の体積との合計は、前記燃料電池における陰極液の総体積から、関連ポンプ、陰極液貯蔵容器、熱交換器、パイプ付属品(pipe−work)、およびその他の電池付属部品に存在する前記体積を差し引いたものである。
【0014】
一般に、前記再産生域における陰極液を相対的に低い容量(inventory)に維持することで、前記電池の操作者は、前記再産生域を前記陰極液の領域よりも高い温度に維持することができ、そして、有用な目的のために前記再産生域において産生される熱を使用することができる。本発明のある実施形態では、前記陰極チャンバーと前記再産生域との間の前記陰極液を冷却するのが望ましい場合があり、例えば、適切な熱交換器によって、前記再産生域は前記陰極チャンバーの温度よりも高い温度にて維持されなくてもよいが(維持されるかもしれないが)、少なくとも、冷却された前記陰極液よりも高い温度に維持されるだろう。典型的には、前記陰極液が前記再産生域の上流および前記陰極チャンバーの下流で冷却される可能性がある場合、しかしながら、前記再産生域の下流および前記陰極チャンバーの上流も冷却されるかもしれないし、または代わりに冷却されるかもしれない。
【0015】
それ故、本発明はまた、酸化還元燃料電池であって、
アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーおよびアセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーを含む各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された該陽極および該陰極を含む複数の該膜電極アセンブリのスタックと、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間にそれぞれ電気回路を提供する手段と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
任意に、前記陰極チャンバーの上流および/または下流において前記陰極液を冷却するための手段と、
を含み、
前記再産生域は、前記膜電極アセンブリから分離し、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記酸化剤を前記再産生域に供給するように構成され、
前記再産生域は、前記電池の作動時において、前記電池の前記陰極チャンバーよりも高い作動温度および/または前記冷却手段の作動温度よりも高い作動温度に維持される、前記酸化還元燃料電池を提供する。
【0016】
この場合、前記再産生域における陰極液の前記体積は好ましくは、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総複合体積の約25%〜約90%である。
【0017】
同様に、本発明はまた、
アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーとアセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーとを含む各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された該陽極および該陰極を含む複数の膜電極アセンブリのスタックを提供する工程と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液を提供する工程と、
前記膜電極アセンブリと分離する再産生域を提供する工程と、
任意に、前記陰極チャンバーと前記再産生域との間に、前記陰極液を冷却する手段を提供する工程と、
前記再産生域に酸化剤を供給する工程と、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する工程と、
前記電池の陽極および陰極の間にそれぞれ電気回路を提供する工程と、
前記電池の前記陰極チャンバーよりも高い作動温度および/または冷却された前記陰極液の温度に前記再産生域を維持する工程と、
を含む、酸化還元燃料電池の作動方法を提供する。
【0018】
好ましくは、この方法において、前記再産生域における陰極液の体積は、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%である。
【0019】
好ましくは、本発明の方法は、前記電池の前記再産生域から熱を移出させること、および任意にその熱を他の目的に使用することを含む。
【0020】
したがって、本発明はまた、酸化還元燃料電池であって、
イオン選択的ポリマー電解質膜によって分離される陽極および陰極と、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間に電気回路を提供する手段と、
前記陰極と流体のやり取りを行う際に流れる少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、前記電池の作動時において前記陰極で少なくとも部分的に還元され、かつ前記陰極での前記還元の後に前記酸化剤を用いた反応により少なくとも部分的に再産生される酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
を含み、
前記酸化還元メディエーター対の少なくとも部分的な再産生は、前記陰極の領域から分離された前記電極の再産生域において生じ、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記再産生域に前記酸化剤を供給するように構成され、
前記再産生域は、前記電池の作動時において、前記電池の前記陰極の領域よりも高い作動温度に維持される、酸化還元燃料電池を提供する。
【0021】
あるいは、熱交換器などの冷却手段が、前記陰極チャンバーと前記再産生域との間に提供され、前記再産生域の作動温度は、前記電池の前記陰極の領域における作動温度より必ずしも高くなくてもよいが、少なくとも、前記冷却手段から排出する前記陰極液の温度よりも高く維持されるだろう。
【0022】
前記再産生反応によって前記電池内で産生された熱は、前記酸化還元メディエーター対の特質、付随する酸化還元触媒の有無、前記酸化剤の特質、前記電池の物理的構造および他の多数の因子に応じて変化する。しかしながら、本出願人は、前記再産生反応が起きる場合、前記陰極液の前記温度は典型的には、前記ポリマー電解質膜に施す望ましい温度を超えてもよいことを見出している。したがって、前記電池の作動温度を超える温度、または前記電池の作動を超える5℃までの温度、または10℃までの温度、または15℃までの温度が、前記再産生反応の間に前記陰極液に生じてもよい。換言すると、本発明の前記燃料電池の作動中における前記再産生域の温度は、前記電池そのものの作動温度より高い。「前記電池の作動温度」は、前記電池の前記陰極の領域(例えば、前記膜と隣り合う、または前記陰極チャンバーにおける)における作動温度を意味する。前記電池の作動中における前記再産生域の温度は、80℃を超えてもよく、または90℃を超えてもよく、または95℃を超えてもよく、または100℃ですら超えてもよく、一方、典型的には、前記電池の作動温度は、膜の性能に影響を及ぼすことを避けるために、約80℃より低いだろう。したがって、前記再産生反応中の前記再産生域に存在する前記陰極液の当該部分において、80℃を超える温度(例えば90℃を超える温度、または95℃を超える温度または100℃を超える温度)が産生されてもよい。本出願人は、分離して提供された前記再産生域において、前記電池の前記陰極の領域で前記再産生反応が起きないようにすることにすることにより、ならびに、前記電池の膜の領域に関して前記再産生域の作動時の体積および/または温度を注意深く選択することにより、耐久性の恩恵をMEAに提供する、PEMの熱への潜在的に不都合な暴露を避けることができることを見出している。実際は、前記ポリマー電解質膜が前記電池の作動を施させる温度より高い作動温度にて前記再産生域を維持することにより、熱移動の効率の観点(すなわち家庭または他の場所を加熱するための移動された熱の摩擦)から、複合熱電力の作動における有益な利益を伴って、前記再産生反応の熱でさえも、前記電池内および前記電池とその外部環境との間の熱移動工程を改善するために使用することができる。より高い電池作動温度(例えば95℃またはそれ以上)に耐えることができる膜へと導くMEA技術において、現在、新しい発展がある。いずれにしても、前記再産生域の目的の一つは、前記膜における前記電池の作動温度が何度であっても、再産生における前記陰極液の温度を、前記膜の界面での還元において前記陰極液の温度より高くする(例えば、少なくとも約5℃高くする、または10℃高くする、または15℃高くする)ことである。
【0023】
本発明の燃料電池がchp用途に用いられる場合、典型的には、本発明の燃料電池には、前記再産生域から、例えば家庭用ボイラーまたは業務用ボイラー等の外部対象物に熱を移動させる、前記再産生域に関連する熱移動手段を提供されるだろう。熱移動手段は例えば、例えば冷たいパイプと暖かいパイプとの間の表面領域の接触を増加させるための密接に接触する配管、フィンおよび羽根を用いて、熱交換の標準的な原理の下で稼働してもよい。
【0024】
他の用途等では、より高い陰極液の温度は、熱を除去するためのより少ない熱交換成分を要求するけれども、同様の原理が自動車用途および固定用途に関して適用されるだろう。本発明の燃料電池において、前記再産生域の前記作動温度は典型的には、前記電池の前記陰極領域における前記作動温度より高く;好ましくは、少なくとも2℃高く;より好ましくは、少なくとも約5℃高く;最も好ましくは、少なくとも約10℃高い。
【0025】
好ましくは、本発明の燃料電池は、前記再産生域から熱を回収する手段を含む。
【0026】
また、本発明の燃料電池は、かかる回収された熱を前記電池の外側の位置に供給する手段を含むのが好ましい。
【0027】
前記再産生域において、より高い作動温度を提供する利点は2倍である。いずれにしても、過剰の熱が前記システム(例えば自動車用途において)から排出される用途では、電池性能の耐久性において結果的に改善された状態で、前記再産生反応で産生される熱から前記ポリマー電解質膜を遮蔽することで前記利点が生じる。過剰の熱が有用な目的(例えば複合熱電力用途)に供される用途では、前記燃料電池システムからの熱生産量の獲得の増大に関連して、付加的な利益が生じる。前記電池からの熱移動の効率は、前記電池または前記再産生域の作動温度の関数であり、より高い作動温度は、前記電池からの熱のより効率的な移動を促進する。
本発明はまた、酸化還元燃料電池であって、
アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーおよびアセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーを含む各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された該陽極および該陰極を含む複数の膜電極アセンブリのスタックと、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間にそれぞれ電気回路を提供する手段と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
を含み、
前記再産生域は、前記膜電極アセンブリから分離し、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記酸化剤を前記再産生域に供給するように構成される、酸化還元燃料電池を提供する。
前記陰極液が前記再産生域へと流れる前に熱が前記陰極液から抽出されるように(前記液の温度を下げる)、前記膜電極アセンブリと前記再産生域との間に熱交換器が配置される。この場合、前記液の温度は、該液が前記再産生域を通過する場合にさらに上昇するだろうが、前記再産生域での前記陰極液の温度または前記再産生域を通過した直後の前記陰極液の温度は、前記陰極チャンバーにおける温度よりも高くない場合がある。さらに、熱は前記再産生器によって抽出され、前記液体中に配置される任意の熱交換器によって、熱は前記再産生器の後を流れる。これは、ユニットからの熱抽出全体にとって、より都合がよい経路である場合があり、または、再産生反応にとって好ましい場合がある。
【0028】
この場合、前記再産生域における陰極液の前記体積は好ましくは、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%である。
【0029】
本発明の燃料電池は、前記陰極チャンバーおよび前記再産生域の合計における前記陰極液の容量の25%〜90%である、前記再産生域における陰極液の容量(inventory)にて作動する。前記再産生域が陰極液で十分に満たされていない場合にはより多くてもよいが、一般に言えば、前記再産生域の体積はまた、再産生域/陰極チャンバーの合計体積の25%〜90%を占めていてもよい。例えば、陰極液と酸化剤との間のより大きな表面領域の接触によって、前記陰極液を細かく分割しかつその再産生を促進する噴霧手段を有する前記再産生域を提供することが望ましい場合がある。しかしながら、この場合、前記再産生域における陰極液の体積は、前記再産生域そのものの体積よりも大幅に小さいことが明らかであろう。
【0030】
本発明の燃料電池は好ましくは、前記電池の前記陰極の領域から前記再産生域に、少なくとも部分的に還元された酸化還元メディエーター対を供給する手段と、前記再産生域から前記陰極領域に、少なくとも部分的に再産生された酸化還元メディエーター対を供給する手段と、を含む。
【0031】
したがって、前記陰極液は前記酸化還元メディエーター対を含み、該陰極液は、前記電池の作動時において、少なくとも部分的に再産生された(酸化された)形態にて、前記再産生域から、少なくとも部分的に還元された前記陰極の領域へと循環し、その後、前記回路に戻る前に前記酸化剤と(酸化還元触媒が存在する場合、直接または間接に)反応する前記再産生域に戻る。
【0032】
前記回路における都合がよい位置で、前記陰極液の循環を駆動する1または2以上のポンプが提供されてもよい。好ましくは、少なくとも1つのポンプは、前記再産生域の下流端部と前記陰極の領域の上流端部との間に配置される。
【0033】
各陰極チャンバーは好ましくは、少なくとも部分的に再産生された酸化還元メディエーター対を前記再産生域から受け取るための入口と、少なくとも部分的に還元された酸化還元メディエーター対を前記再産生域に供給するための出口とを1または2以上を含む。
【0034】
前記再産生域は好ましくは、前記再産生反応が行われるチャンバーと、前記電池の前記陰極の領域から前記チャンバーに、還元された酸化還元メディエーターを受け取るための第1の入口と、前記電池の前記陰極の領域に、酸化された酸化還元メディエーター対を供給するための第1の出口と、酸化剤の供給を受け取るための第2の入口と、前記チャンバーから水蒸気および熱を放出するための第2の出口とを1または2以上を含む。
【0035】
コンデンサーは、水蒸気を濃縮するため、および、必要に応じて、前記濃縮された蒸気を前記再産生域に戻すために、前記再産生域の第2の出口の上流に提供されてもよい。
【0036】
前記再産生域チャンバーそれ自体は、前記酸化還元メディエーター対を効率良く再酸化するために、前記酸化剤および前記陰極液を接触させる手段を提供する。前記酸化剤が空気等のガス状である場合、例えば、撹拌タンク反応容器、流動床反応容器、固定床反応容器、インライン混合反応容器、または排出装置等の様々な反応容器を用いてもよい。しかしながら、前記燃料電池システムの全体の大きさを小さく維持し、かつ、前記再産生反応によって産生された熱は前記反応混合物の体積と独立しているため、相対的に小さい体積の再産生域は、より高い温度に上昇するであろう点で、前記体積は小さいほうが望ましい。したがって、小さい体積は前記再産生域の温度をさらに上昇させるだろう。2つの好ましい反応容器は、インライン(または静電)混合反応容器および質量移動率に対して小さい体積に基づく排出装置である。これは、質量移動率および単位体積(ka)あたりの表面領域の値の生産物として表すことができる。また、空気に曝された後に捕捉される霧の小滴を作成する噴霧器が提供されてもよい。
【0037】
インライン(または静電)ミキサーは、空気と液体との混合物(例えば、前記混合物の流れを通す集中的な管)を提供する手段から構成される。せん断力を用いて混合するように設定された混合要素が前記管に挿入される。適切な速度にて前記管を通って流れることにより、前記2つの相の激しい混合が生じる。前記管からの位置によって、互いに隣り合うかまたは互いに分離される幾つかの要素を用いてもよい。前記要素の直径およびその反復距離は、前記液体およびガスの特定の特性およびそれぞれの流速に関して設定される。混合要素の典型的な例は、Sulzer社から販売されているSMVシリーズである。
【0038】
注入装置、排出装置、蒸気排出装置または蒸気注入装置は、動力流体の圧力エネルギーを、吸入流体を引き込みかつ噴流する低い圧力域を作成する速度エネルギーに転換する収束−分散(converging−diverging)ノズルのVenturi効果を利用するポンプ様装置である。前記注入の口を通過した後、混合された前記流体は膨張し、前記速度が還元されて、速度エネルギーが圧力エネルギーへと元に転換されることにより、前記混合された前記流体が最終的に再圧縮されることとなる。前記効果は、小さい体積における液体相とガス相の激しい混合である。
【0039】
本発明の前記燃料電池は典型的には2以上の膜電極アセンブリを含み、燃料電池スタックとして当該技術分野で広く知られているように、各アセンブリは二極の分離平板によって分離されているであろうことは理解されるだろう。本発明の範囲内で、前記スタックの一部またはいくつかの部分から、還元された酸化還元メディエーター対を受け取り、かつ、前記スタックの同じ部分または異なる部分あるいは前記スタックの部分へと、酸化された酸化還元メディエーター対を戻す各再産生域を有する複数の再産生域を提供することが検討される。しかしながら、通常、単一の再産生域がスタック全体またはその一部を供給するであろう。
【0040】
本発明の燃料電池の酸化還元条件における作動は、以下の図表にしたがって、前記陰極領域(スタック)と前記再産生域(再産生器)との間のように特徴づけられてもよく、ここで、前記酸化還元触媒の存在および機能は任意であると理解されるべきである。
【0041】
【化1】

【0042】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2007/050151号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、ポリオキソメタレート化合物を含んでいてもよい。
【0043】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2008/050857号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、二価のカウンターイオンを有するポリオキソメタレート化合物を含んでいてもよい。
【0044】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2007/050421号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、N−ドナー化合物を含んでいてもよい。
【0045】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2009/050065号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、ピロール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、および上記ヘテロ環状基の1または2以上をアルキル基,アルケニル基,アリール基,シクロアルキル基,アルカリール基,アルケンアリール基,アラルキル基,アラルケニル基で置換した基から選ばれる少なくとも1つのヘテロ環状置換基を含む多数の歯状(multi−dentate)N−ドナーリガンドを含んでいてもよい。
【0046】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2009/050067号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、複数の歯状の大環状N−ドナーリガンドを含んでいてもよい。
【0047】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2007/050420号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、改質(modified)フェロセン種を含んでいてもよい。
【0048】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、同時係属している本出願人による国際特許出願第PCT/GB2009/050066号に記載されているように、前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒は、シクロペンタジエニル環の間に架橋ユニットを含んでいてもよい。
【0049】
一般に、前記酸化還元メディエーター対は結合遷移金属錯体を含むだろう。このような錯体を形成することができる適切な遷移金属イオンの特定の実施例は、酸化状態II−Vのマンガン、鉄I−IV、銅I−III、コバルトI−III、ニッケルI−III、クロム(II−VII)、チタンII−IV、タングステンIV−VI、バナジウムII−VおよびモリブデンII−VIを含む。リガンドは、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、リンを含むことができる。リガンドは、Fe/EDTAおよびMn/EDTA、NTA、2−ヒドロキシエチレンジアミントリ酢酸を含むキレート錯体であってもよく、または、シアン化物等の非キレートであってもよい。
【0050】
本発明の燃料電池は、該燃料電池の作動時に、前記陰極チャンバー内で、酸化剤の還元を触媒する酸化還元対を用いて直接作動してもよい。しかしながら、場合によっては、本発明の燃料電池は、酸化還元対を用いて、前記陰極液における触媒メディエーターを包含することが必要であるおよび/または望ましいことがある。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態では、前記イオン選択性PEMは、他のカチオンに比してプロトンを優位に選択的であるカチオン選択性膜である。
【0052】
前記カチオン選択的ポリマー電解質膜はいずれかの適切な材料から形成されていてもよいが、好ましくは、カチオン交換性能を有するポリマー基質を含む。適切な実施例は、フッ素樹脂型イオン交換樹脂および非フッ素樹脂型イオン交換樹脂を含む。フッ素樹脂型イオン交換樹脂は、パーフルオロカルボン酸樹脂、パーフルオロスルホン酸樹脂およびその均等物を含む。パーフルオロカルボン酸樹脂は好ましくは、例えば 「ナフィオン(Nafion)」(デュポン社)、「フレミオン(Flemion)」(旭硝子株式会社)、「アシプレックス(Aciplex)」(旭化成株式会社)、およびその均等物である。非フッ素樹脂型イオン交換樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、スチレン−ジビニルベンゼンイオン交換樹脂、およびその均等物、ならびにその金属塩を含む。非フッ素樹脂型イオン交換樹脂は好ましくは、ポリアルキレンオキサイド−アルカリ金属塩錯体を含む。これらは例えば、塩素酸リチウムまたは他のアルカリ金属塩の存在下でエチレンオキサイドオリゴマーを重合することにより得ることができる。他の実施例は、フェノールスルホン酸、ポリスチレンスルホン、ポリトリフルオロスチレンスルホン、スルホン化トリフルオロスチレン、α,β,β−トリフルオロスチレン単量体をベースとするスルホン化共重合体、照射グラフト化膜を含む。非フッ素化膜は、スルホン化ポリ(フェニルキノキサリン)、ポリ(2,6−ジフェニル−4−フェニレンオキサイド)、ポリ(アリールエーテルスルホン)、ポリ(2,6−ジフェニルエノール);酸ドープ化されたポリベンズイミダゾール、スルホン化ポリイミド;スチレン/エチレン−ブタジエン/スチレントリブロック共重合体;部分的にスルホン化されたポリアリーレンエーテルスルホン;部分的にスルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(PEEK);およびポリベンジルスルホン酸シロキサン(PBSS)を含む。
【0053】
場合によっては、前記イオン選択性ポリマー電解質膜は、国際出願番号PCT/EP2006/060640号に記載されたように、二重膜(b−layer)を含むのが望ましいこともある。
【0054】
本発明の別の態様によれば、
イオン選択的ポリマー電解質膜によって分離される陽極および陰極を提供する工程と、
前記電池の前記陽極の領域に燃料を供給する工程と、
前記電池に酸化剤を供給する工程と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間に電気回路を提供する工程と、
前記陰極と流体のやり取りを行う際に流れる少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、前記電池の作動工程において前記陰極で少なくとも部分的に還元され、かつ前記陰極での前記還元の後に前記酸化剤を用いた反応により少なくとも部分的に再産生される酸化還元メディエーター対を含む該陰極液を提供する工程と、
前記再産生域を、前記電池の前記陰極の領域よりも高い作動温度に維持する工程と、を含み、
前記酸化還元メディエーター対の少なくとも部分的な再産生は、前記陰極の領域から分離された前記電極の再産生域において生じ、前記酸化剤は前記再産生域に供給される、酸化還元燃料電池を提供する。
【0055】
本発明の工程は、すべての様々な実施形態、選好手段(preference)および代替手段において本発明の燃料電池を作動するのに使用してもよく、本明細書がかかる燃料電池のいずれかの特徴を記載する場合、該特徴はまた、本発明の工程において、選好手段または代替手段の工程の特徴であってもよいことも具体的に予測されることは理解されるだろう。
【0056】
本発明の燃料電池は、LPG、LNG、ガソリンまたは低分子量アルコール等の利用可能な燃料前駆体を、蒸気改質反応を介して燃料ガス(例えば水素)に転換するよう設定されている改質剤を含んでいてもよい。そして、前記電池は、前記陽極チャンバーに前記改質された燃料ガスを供給するよう設定されている燃料ガス供給装置を含んでいてもよい。
【0057】
前記電池の所定の用途では、燃料(例えば水素)が加湿するよう設定されている燃料加湿剤を提供することが望ましい場合がある。そして、前記電池は、前記陽極チャンバーに加湿された前記燃料を供給するよう設定されている燃料供給装置を含んでいてもよい。
【0058】
電力を負荷するよう設定されている電力負荷装置はまた、本発明の燃料電池に関連して提供されてもよい。
【0059】
好ましい燃料はLPG、LNGまたはガソリンとともに、水素、金属水素化物(例えば、燃料それ自体または水素の供給源として機能してもよいホウ化水素)、アンモニア、低分子量アルコール、アルデヒドおよびカルボン酸、糖類および生物燃料を含む。
【0060】
好ましい酸化剤は、空気、酸素および過酸化物を含む。
【0061】
本発明の酸化還元燃料電池における前記陽極は例えば、水素ガス陽極または直接メタノール陽極;エタノール、プロパノール、ジエチレングリコール等の他の低分子量アルコール;エチレングリコール;または、これらおよび蟻酸、エタン酸等の酸種から作成されたアルデヒドであってもよい。加えて、前記陽極は、細菌種が燃料を消費し、かつ、前記電極で酸化されるメディエーターを産生するかまたは細菌自身が前記電極を吸収し、前記陽極に直接電子を供与するバイオ燃料電池型システムから形成されていてもよい。
【0062】
本発明の酸化還元燃料電池における前記陰極は、陰極材料として炭素、金、白金、ニッケル、金属酸化種を含んでいてもよい。しかしながら、高価な陰極材料は避けるのが好ましいため、好ましい陰極材料は炭素、ニッケルおよび金属酸化物を含む。前記陰極として好ましい材料の一つは、網状ガラス質炭素または炭素フエルト等の炭素ファイバーを基材とする電極である。他の例がニッケル発泡体である。前記陰極材料は、粒子状の陰極材料の微分散体から構築されていてもよく、前記微分散体は、適切な接着剤によってまたはプロトン伝導性ポリマー材料によって、結合している。前記陰極は、前記陰極の表面に陰極液の最大の流れを創るように設計されている。したがって、前記陰極は成形された流れ制御部または三次元電極から構成されてもよい;前記液体の流れは、前記電極に隣り合う液体チャネルが存在するか、または前記三次元電極の場合は前記液体が前記電極を介して流れることが必要とされる流れの配置にて管理されてもよい。前記電極の表面はまた電解触媒であることを意図しているが、前記電解触媒を沈着した粒子の形態で前記電極の表面に接着させるのに好都合かもしれない。
【0063】
本発明の燃料電池において使用される前記酸化還元対および他の付属の酸化還元対または触媒は、不揮発性であるべきであり、好ましくは、水性溶媒への溶解性を有する。好ましい酸化還元対は、前記燃料電池の前記電気回路において有用な電流を生じさせるのに有効な速度で前記酸化剤と反応すべきであり、かつ、水が前記反応の基本的な最終生成物であるように前記酸化剤と反応する。
【0064】
また、本発明によれば、
イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離される陽極および陰極であって、陽極チャンバーに該陽極を、陰極チャンバーに該陰極を提供する工程と、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する工程と、
前記電池に酸化剤を供給する工程と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間に電気回路を提供する工程と、
前記陰極と流体のやり取りを行う際に流れる少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、前記電池の作動時において前記陰極で少なくとも部分的に還元され、かつ前記陰極での前記還元の後に前記酸化剤を用いた反応により少なくとも部分的に再産生される酸化還元メディエーター対を含む該陰極液を提供する工程と、
前記再産生域における陰極液の体積を、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%に維持する工程と、を含み、
前記酸化還元メディエーター対の少なくとも部分的な再産生は、前記陰極の領域から分離された前記電極の再産生域において生じ、前記酸化剤は前記再産生域に供給される、酸化還元燃料電池が提供される。
【0065】
本発明はまた、
イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離される陽極および陰極を提供する工程と、
前記電池の前記陽極領域に燃料を供給する工程と、
前記電池に酸化剤を供給する工程と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間に電気回路を提供する工程と、
前記陰極と流体のやり取りを行う際に流れる少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、前記電池の作動時において前記陰極で少なくとも部分的に還元され、かつ前記陰極での前記還元の後に前記酸化剤を用いた反応により少なくとも部分的に再産生される酸化還元メディエーター対を含む該陰極液を提供する工程と、
前記再産生域を、前記電池の前記陰極の領域よりも高い作動温度に維持する工程と、を含み、
前記酸化還元メディエーター対の少なくとも部分的な再産生は、前記陰極の領域から分離された前記電極の再産生域において生じ、前記酸化剤は前記再産生域に供給される、酸化還元燃料電池を提供する。
【0066】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、熱および電力の複合産生のための燃料電池の使用が提供される。
【0067】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、車両に動力を提供する燃料電池の使用が提供される。
【0068】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、コンピュータシステムおよび携帯電話マストのための予備電力などの固定用途のための電力源として、また、ディーゼル発電機に代わる電力源としての燃料電池の使用が提供される。
【0069】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、電子部品における電力を産生するための上記燃料電池の使用が提供される。
【0070】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、少なくとも1つの燃料電池を含む複合熱電力システムが提供される。
【0071】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、少なくとも1つの燃料電池を含む車両が提供される。
【0072】
また、本発明によれば、本明細書で記載されるように、少なくとも1つの燃料電池を含む電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明に係る燃料電池の模式図を説明する。
【図2】図2は、図1に記載され、かつ実施例を参照して、ユニットのシステム自己発電の期間に達成される電位および電流生産量を説明する。
【図3】図3は、図2において言及されるシステム自己発電の期間に再産生域で測定されるPOM温度を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明の様々な態様を、本発明の実施形態を説明する以下の図面を参照して、より具体的に説明する。
【0075】
図1を参照すると、本発明に係る燃料電池1が示されている。前記電池は、2つの主要な成分:燃料電池スタック2および再産生器セクション3を含む。図示されるように、燃料スタック2は、4個の1/2膜電極アセンブリ4を含む。各1/2膜電極アセンブリは、図1の左側に示されるように、ガス拡散層および膜を含む陽極と、図1の右側に示されるように、陰極電極とを含む。各陽極および各陰極は、ポリマー電解質膜によって互いに分離され、前記陽極および膜は、半分の膜電極アセンブリおよび陰極4をそれぞれ構成する。各膜電極アセンブリおよび陰極4は、近隣の膜電極アセンブリおよび陰極から二極平板によって分離されており、該二極平板は、当該技術分野で良く知られている方法で、前記電池の作動時に燃料を電極表面にわたって拡散させるため(陽極側の場合)、および前記陰極電極および陰極液にウエルを配置させるため(陰極側の場合)の流路を含むことができる。燃料電池スタックの各端部には、単極の分離平板が備えられる(拡散チャネルは、前記陽極に関して片側(前記電極と対向する側)のみに設けられ、前記陰極に関して陰極ウエルが設けられることを意味する)。図1がこれらの平板を示すことを意図していないのは、これらの配置、アセンブリおよび機能は当該技術分野で良く知られているからである。
【0076】
燃料チャネル5は図1に模式的に示されており、矢印は前記電池の周りの燃料の流れの方向を示す。陰極液チャネル6は図1に模式的に示されており、矢印は前記電池の周りの陰極液の流れの方向を示す。
【0077】
陰極液は、ライン5aにおいて再利用ポンプ7を介して燃料スタックに供給され、ライン5bにおいて回収され、前記陰極液の前記酸化還元メディエーター対成分は前記電池の作動時に、前記陰極で少なくとも部分的に還元される。少なくとも部分的に還元された酸化還元メディエーター対を含む前記陰極液はライン5bにて回収され、第1の入口9を介して再産生チャンバー8に供給される。再産生チャンバー8はさらに、酸化剤の流れ(この場合空気)を用いて第2の入口10に供給される。前記電池の作動時において、前記再産生チャンバーにおける溶液中の前記酸化還元対の流れは、本発明において、以下にしたがって、酸素の還元のための触媒として使用される(式中、Spは前記酸化還元対種である。)。
【0078】
+4Spred+4H→2HO+4Spox
【0079】
この反応において産生された前記熱は、前記再産生チャンバーにおける前記陰極液の温度を、前記燃料電池スタックにおける前記陰極液の温度を超えるほどに上昇させる。
【0080】
再産生された酸化された酸化還元対を含む陰極液は、第1の出口11を介して再産生チャンバー8から回収され、再利用ポンプ6を介してライン5aへと直接供給されてもよく、または、図1に説明されているように、保持貯蔵容器12へと最初に供給されてもよい。保持貯蔵容器の使用は、製造者に再産生チャンバー8の体積を減少させ、これにより前記電池との作動時により高い温度上昇(より大きな再産生チャンバーと比較して)を保証する点で特に有用である。前記再産生反応において産生される水蒸気は、第2の出口13を介して放出され、ライン14において前記システム(およびさらなる熱産生能力において用いられる)から放出されてもよい。あるいは、または、加えて、水蒸気の一部または全部は、前記電池における湿度バランスの維持を補助するために、コンデンサー15に濃縮され、前記陰極液に戻されてもよい。
【0081】
前記電池の作動時に、よく知られている方法にて、電気回路(図示せず)における燃料ガスの酸化によって前記陽極に生じる電子が流れ、そして、前記陰極に戻される。
【0082】
再産生チャンバー8は例えば、静電ミキサーまたは注入型装置から適切に作成されてもよい。
【0083】
以下の実施例は、本発明の燃料電池の潜在的な利益をさらに説明する。
【実施例1】
【0084】
50Wユニットが図1にしたがって設計および構築された。前記システムは、制御された水素供給ラインと、ポンプを含む再循環POM陰極液ループと、10個の電池スタック(5×5cmの電池)および再産生器と、加えてコンデンサーとから構成されていた。前記システムは、水素供給のための流れおよび圧力および制御と、空気ラインおよび前記陰極液を監視する流れおよび圧力および温度とを含んでいた。前記システムを制御するためにplcが用いられた。前記再産生器の目的は、前記スタック内でその化学還元の後に行われる前記POMを再酸化することであった。前記再産生器は交差流バブルカラム原理(crossflow bubble colume prinsiple)に基づくものであり、多孔性焼結ガラス製基材が装着された1.1Lのチャンバーから構成された。前記多孔性焼結ガラス製基材を介して上層のPOMの流れの中に空気を送り込むことで、酸素の塊を表面領域に移動させた。
【0085】
以下に記載する試験は、発熱再産生反応の証拠を提供するために実行された。
【0086】
[自己発電および50Wユニットの熱的自己−持続作動]
(手順)
システムの熱損失を最小限にするために、前記POM回路はガラス製ファイバー絶縁材料を用いて熱的に被覆された。次いで、外部ヒーターを用いて前記循環POM温度を〜75℃に昇温した。準備運転の間、前記システムの内部負荷に供給される電力は、バッテリーを介して伝達された。温度が到達したら、外部ヒーターおよびバッテリー支持体は取り外され、前記スタックがシステム電力(スクロールするLEDサインにも電力が供給されている)の唯一の源として従事する。次いで、自己発電システムの性能が約6時間監視された。試験流速は以下のように設定した:〜0.8L/分でのPOM再循環および〜4.7L/分での再産生器の空気伝達。前記陰極液回路は、前記スタック内に含まれる50cmの前記陰極液および前記再産生器に含まれる450cmの前記陰極液とともに、〜0.6LのPOMを含んでいた。
【0087】
(結論)
図2は、前記実験の期間にわたる前記スタック電位およびスタック電流の生産量を示す。電力産生は、変動する需要に十分に応答していることが示された。電力変動は、循環LEDサインの需要、バルブの周期的な駆動(Hの放出および濃縮返還)およびコンデンサーのファンの周期的な駆動に起因するものであった。この事情において、安定した電力の需要および産生が達成された。
【0088】
前記スタックは、4.8Vの電位にて8.2Aの平均電流を供給することが実証された。このことは、平均水素供給流速が平均0.8L/分であることをもたらした。この電位において、前記電力産生反応は、〜40%の効率(すなわち4.8V/12.3V×100)であると算出された。したがって、電気生産量が40Wであると仮定した場合、このことは〜60Wの熱の共産生を示唆するだろう。図3は、前記再産生器への前記入口(前記燃料電池スタックの前記出口に近い)で記録されたPOM温度が65℃であり、前記再産生器の前記出口で70℃であることを示している。
【0089】
(結論)
前記再産生器において、酸素を用いた前記ポリオキソメタレート触媒/メディエーターシステムの反応の発生は、再産生器にわたる5℃の温度上昇の検出によって実証され、前記再産生器の前記入口の温度は、前記スタックの出口の代表である。本発明の前記再産生器の設計は、陰極液のより小さな相対的な体積を有し、これにより、前記再産生器と電池との間にかなり大きな温度差が得られるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元燃料電池であって、
各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された陽極および陰極を含む複数の該膜電極アセンブリのスタックと、
前記各膜電極アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーと、
前記各膜電極アセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーと、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間にそれぞれ電気回路を提供する手段と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
前記膜電極アセンブリから分離する再産生域と、
を含み、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記再産生域に前記酸化剤を供給するように構成され、
前記再産生域における陰極液の体積は、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約90%である、酸化還元燃料電池。
【請求項2】
前記再産生域における陰極液の体積が、前記再産生域および前記陰極チャンバーにおける陰極液の総合計体積の約25%〜約85%である、請求項1に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項3】
酸化還元燃料電池であって、
アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーおよびアセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーを含む各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された該陽極および該陰極を含む複数の該膜電極アセンブリのスタックと、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する手段と、
前記電池に酸化剤を供給する手段と、
前記電池の前記陽極と前記陰極との間にそれぞれ電気回路を提供する手段と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液と、
任意に、前記陰極チャンバーの上流および/または下流において前記陰極液を冷却するための手段と、
を含み、
前記再産生域は、前記膜電極アセンブリから分離し、
前記電池に酸化剤を供給する手段は、前記酸化剤を前記再産生域に供給するように構成され、
前記再産生域は、前記電池の作動時において、前記電池の前記陰極チャンバーよりも高い作動温度および/または前記冷却手段の作動温度よりも高い作動温度に維持される、酸化還元燃料電池。
【請求項4】
前記再産生域から熱を回収する手段をさらに含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項5】
回収された前記熱を前記電池の外の位置に供給する手段をさらに含む、請求項4に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項6】
各陰極チャンバーは、
少なくとも部分的に再産生された酸化還元メディエーター対を前記再産生域から受け取るための入口と、
少なくとも部分的に還元された酸化還元メディエーター対を前記再産生域に供給するための出口と、
を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項7】
前記再産生域は、
前記再産生反応が行われるチャンバーと、
前記電池の前記陰極の領域から前記チャンバーに、還元された酸化還元メディエーターを受け取るための第1の入口と、
前記電池の前記陰極の領域に、酸化された酸化還元メディエーター対を供給するための第1の出口および/または酸化剤の供給を受け取るための第2の入口と、
前記チャンバーから水蒸気および熱を放出するための第2の出口と、
を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項8】
水蒸気を濃縮し、かつ、任意に、前記濃縮された前記水蒸気を前記再産生域に戻すための前記再産生域の前記第2の出口の上流に提供されるコンデンサーをさらに含む、請求項7に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項9】
前記陰極液は、前記酸化剤と前記少なくとも部分的に還元された前記酸化還元メディエーター対との間の電子移動を補助するための酸化還元触媒をさらに含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項10】
前記酸化還元メディエーター対および/または前記酸化還元触媒が存在する場合、該酸化還元メディエーター対および/または該酸化還元触媒は、
ポリオキソメタレート化合物、
二価のカウンターイオンを有するポリオキソメタレート化合物、
N−ドナー化合物、
ピロール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、およびアルキル,アルケニル,アリール,シクロアルキル,アルカリール,アルケンアリール,アラルキル,アラルケニル基で上記ヘテロ環状基の1種または2種以上を置換したものから選ばれる少なくとも1つのヘテロ環状置換基を含む複数の歯状のN−ドナーリガンド、
複数の歯状の大環状N−ドナーリガンド、
改質フェロセン種、
シクロペンタジエニル環の間の架橋ユニットを含む改質フェロセン種、および/または
結合遷移金属錯体、
を含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の酸化還元燃料電池。
【請求項11】
アセンブリの陽極と隣り合う陽極チャンバーとアセンブリの陰極と隣り合う陰極チャンバーとを含む各膜電極アセンブリが、イオン選択性ポリマー電解質膜によって分離された該陽極および該陰極を含む複数の膜電極アセンブリのスタックを提供する工程と、
少なくとも1つの不揮発性陰極成分を含む陰極液であって、酸化還元メディエーター対を含む該陰極液を提供する工程と、
前記膜電極アセンブリと分離する再産生域を提供する工程と、
任意に、前記陰極チャンバーと前記再産生域との間に、前記陰極液を冷却する手段を提供する工程と、
前記再産生域に酸化剤を供給する工程と、
前記電池の前記陽極チャンバーに燃料を供給する工程と、
前記電池の陽極および陰極の間にそれぞれ電気回路を提供する工程と、
前記電池の前記陰極チャンバーよりも高い作動温度および/または冷却された前記陰極液の温度に前記再産生域を維持する工程と、
を含む、酸化還元燃料電池の作動方法。
【請求項12】
前記再産生域は少なくとも約70℃に維持される、請求項11に記載の酸化還元燃料電池の操作方法。
【請求項13】
前記再産生域は、前記燃料電池の前記陰極チャンバーにおける前記作動温度および/または前記冷却された陰極液の前記温度よりも少なくとも約2℃以上高い温度に維持される、請求項11または12に記載の酸化還元燃料電池の操作方法。
【請求項14】
前記再産生域は、前記燃料電池の前記陰極の領域における前記作動温度および/または前記冷却された陰極液の前記温度よりも少なくとも約5℃以上高い温度に維持される、請求項13に記載の酸化還元燃料電池の操作方法。
【請求項15】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池を作動するための請求項11ないし14のいずれか1項に記載の酸化還元燃料電池の操作方法。
【請求項16】
熱および電力の複合産生のための請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池の使用。
【請求項17】
動力を車両に提供する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池の使用。
【請求項18】
電子部品において電力を産生する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池の使用。
【請求項19】
少なくとも1つの請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池を含む、複合熱電力システム。
【請求項20】
少なくとも1つの請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池を含む、車両。
【請求項21】
少なくとも1つの請求項1ないし10のいずれか1項に記載の燃料電池を含む、電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526344(P2012−526344A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509094(P2012−509094)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050746
【国際公開番号】WO2010/128333
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(510200598)エーシーエーエル・エナジー・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】