説明

燃焼器

【課題】混合管2の前端部に炎口部材3を嵌合して成る管状バーナ1を複数並設した燃焼器であって、これら管状バーナの複数の混合管は、混合管の半割り形状部分4aを間隔を存して複数成形した2枚の板材4,4を接合して構成され、両板材の前端部間に、隣接する混合管同士を結ぶ隙間が設けられ、この隙間により混合ガスが前方に噴出する細長形状の火移り炎口5が構成されるものにおいて、火移り炎口の長手方向中間部での前方への噴出ガス量不足を解消して、火移り性能を向上できるようにする。
【解決手段】火移り炎口5の長手方向中間部に、火移り炎口5の他の部分よりも後方に凹入する中間炎口部5aを設ける。更に、両板材4,4に、中間炎口部5aの前方に生ずる凹入空間を挟んで対峙するカバー部4d,4dを設ける。カバー部4d,4d間の隙間は火移り炎口5よりも幅広にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口を有する混合管の前端部に、複数の炎口を有する炎口部材が嵌合され、燃料ガスと一次空気との混合ガスがこれら炎口から前方に噴出して燃焼するようにした管状バーナを複数並設した燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃焼器の従来例として、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例では、並設する複数の管状バーナの複数の混合管が、混合管の半割り形状部分を間隔を存して複数成形した2枚の板材を接合して構成されている。そして、両板材の前端部間に、隣接する一方の混合管と他方の混合管とを結ぶ隙間が設けられ、この隙間により混合ガスが前方に噴出する細長形状の火移り炎口が構成されている。
【0003】
ところで、火移り炎口の各混合管に近い部分では、各混合管からの混合ガスが十分に噴出するが、火移り炎口の長手方向中間部では、各混合管からの混合ガスが噴出しにくくなり、火移り性能が悪化する。そこで、上記従来例では、火移り炎口の長手方向中間部に、火移り炎口の他の部分の前端よりも後方に凹入する中間炎口部を設けている。
【0004】
ここで、上記従来例では、各板材の前端に、後方に凹入する切欠き部を形成して中間炎口部を構成している。これにより、中間炎口部から混合ガスが噴出しやすくなるが、混合ガスは中間炎口部から前方に噴出するだけでなく、切欠き部を通して板材の法線方向に拡散してしまう。その結果、火移りに必要な前方への噴出ガス量が減少し、十分な火移り性能が得られなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5186620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、火移り炎口の長手方向中間部での前方への噴出ガス量不足を解消して、火移り性能を向上できるようにした燃焼器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口を有する混合管の前端部に、複数の炎口を有する炎口部材が嵌合され、燃料ガスと一次空気との混合ガスがこれら炎口から前方に噴出して燃焼するようにした管状バーナを複数並設した燃焼器であって、これら管状バーナの複数の混合管は、混合管の半割り形状部分を間隔を存して複数成形した2枚の板材を接合して構成され、両板材の前端部間に、隣接する一方の混合管と他方の混合管とを結ぶ隙間が設けられ、この隙間により混合ガスが前方に噴出する細長形状の火移り炎口が構成されると共に、火移り炎口の長手方向中間部に、火移り炎口の他の部分の前端よりも後方に凹入する中間炎口部が設けられるものにおいて、火移り炎口の中間炎口部以外の部分の前端と同じ前後方向位置で中間炎口部の前方に引いた線と中間炎口部との間に生ずる空間を凹入空間として、両板材に、凹入空間を挟んで対峙するカバー部が設けられ、カバー部間の隙間は火移り炎口よりも幅広であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、火移り炎口の長手方向中間部に位置する中間炎口部から噴出した混合ガスが板材の法線方向に拡散することをカバー部により防止できる。そのため、中間炎口部から噴出する混合ガスは全て凹入空間を介して前方に噴出する。従って、火移り炎口の長手方向中間部からの前方への噴出ガス量が上記従来例のものに比し増え、火移り性能が向上する。尚、カバー部間の隙間は火移り炎口の隙間より幅広であるため、カバー部間の通気抵抗により噴出ガス量が減少することはない。
【0009】
ところで、両板材の凹入空間に対面する部分を切欠き、両板材の外面に、この切欠きを覆うように別の板を取付けてカバー部を構成することも可能である。然し、これでは部品点数が増してコストアップを招く。
【0010】
そのため、本発明においては、両板材の凹入空間に対面する部分を切欠かずに、この部分を両板材が離隔する方向に窪ませてカバー部を構成することが望ましい。これによれば、カバー部が板材に一体成形されることになり、部品点数の増加によるコストアップを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の燃焼器の斜視図。
【図2】図1のII−II線で切断した断面図。
【図3】(a)図1のIII−III線で切断した拡大断面図、(b)図3(a)のIIIb−IIIb線で切断した切断平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の実施形態の燃焼器は、管状バーナ1を2個並設して構成される。この燃焼器は、暖房機の熱源として用いるものである。そして、図2に示す如く、各管状バーナ1の前方に、室内空気との熱交換を行う各熱交換パイプPの流入端が対向配置される。
【0013】
管状バーナ1は、前後方向に長手の混合管2と、混合管2の前端部に嵌合させた炎口部材3とで構成される。混合管2は、後端の流入口21と、流入口21に対し縮径したベンチュリー部22と、ベンチュリー部22から前方に向けて次第に拡径するテーパー管部23とを有している。そして、流入口21に臨ませて配置したガスノズル(図示せず)から噴射する燃料ガスと一次空気とが流入口21から混合管2内に流入し、混合管2内で燃料ガスと一次空気との混合ガスが生成されるようにしている。
【0014】
混合管2の前端部は、テーパー管部23の前端のアール状の拡径部23aから前方にのびる円筒状に形成される。そして、混合管2の前端部に嵌合させる炎口部材3は、前板31とこれよりも後方に位置する円板状の後板32とで構成されている。
【0015】
前板31は、円板状の前面部分の外周から後方にのびて混合管2の前端部内周面に嵌合する筒状部31aを有している。前板31の前面部分には、中央部の第1炎口33と、第1炎口33の周囲に位置する、消炎距離以下の幅(例えば0.7mm)のスリット状の複数の第2炎口34とが形成されている。また、筒状部31aの前端のコーナーアール部には、周方向の間隔を存してスリット状の複数の保炎口35が形成されている。
【0016】
後板32には、中央部の第1通気孔36と、第1通気孔36の周囲に位置する、第1通気孔36よりも小径の複数の第2通気孔37とが形成されている。後板32には、更に、第1通気孔36の孔縁から第1炎口33に向けて前方に突出する筒部38が形成されている。そして、第1通気孔36に流入した混合ガスが筒部38を介して第1炎口33に導かれるようにしている。
【0017】
これによれば、第1炎口33に向かう混合ガスの流れが筒部38によって整流され、第1炎口33から前方に向けて混合ガスが勢いよく噴出する。一方、後板32の比較的小径の第2通気孔37を介して前板31のスリット状の第2炎口34から噴出する混合ガスの流速は比較的低く抑えられる。そのため、ベルヌーイの定理により、第2炎口34から噴出する混合ガスが第1炎口33から高速で噴出する混合ガスの流れに引き寄せられる。その結果、第1炎口33から噴出する混合ガスの燃焼で形成される火炎に第2炎口34から噴出する混合ガスの燃焼で形成される火炎が合体して、図2に示す如く前方に細長く伸びる集合火炎Faが形成され、熱交換パイプPに確実に火炎Faが送り込まれる。また、保炎口35から低速で噴出する混合ガスの燃焼によりリフトしにくい小火炎Fbが形成され、保炎性が確保される。
【0018】
ここで、燃焼器を構成する2個の管状バーナ1,1の2個の混合管2,2は、混合管2の半割り形状部分4aを横方向に間隔を存して2個成形した上下2枚の板材4,4を接合して構成される。尚、両板材4,4の横方向中間部には開口4bが形成されており、上側の板材4の開口4bの周縁部を下側の板材4の開口周縁部の下面に回り込むようにヘミング加工すると共に、上側の板材4の横方向両側の側縁部を下側の板材4の側縁部の下面に回り込むようにヘミング加工することで、両板材4,4を接合させている。
【0019】
また、両板材4,4の両混合管2,2の間に位置する部分の前端部には、両板材4,4が離隔する方向に窪ませた窪み部4c,4cが形成されており、窪み部4c,4c間に、両混合管2,2を結ぶ隙間が画成される。尚、窪み部4cの各混合管2寄りの側部は、その中間部よりも後方にのびて、炎口部材3を嵌合させる各混合管2の前端部よりも後方のテーパー管部23に達している。そのため、各混合管2のテーパー管部23から窪み部4c,4c間の隙間に混合ガスが分流する。そして、この隙間により、両混合管2,2の前端部間で混合ガスが前方に噴出する細長形状の火移り炎口5が構成され、両管状バーナ1,1間での火移りが行われる。
【0020】
ところで、火移り炎口5の各混合管2に近い部分では、各混合管2からの混合ガスが十分に噴出するが、火移り炎口5の長手方向中間部では、各混合管2からの混合ガスが噴出しにくくなり、火移り性能が悪化する。
【0021】
そこで、本実施形態では、図1、図3に示す如く、火移り炎口5の長手方向中間部に、各混合管2からの混合ガスが噴出しやすくなるように、火移り炎口5の他の部分の前端よりも後方にV字状に凹入する中間炎口部5aを設けている。尚、本実施形態では、中間炎口部5aの設置個所を火移り炎口5の長手方向中央の1箇所のみとしているが、火移り炎口5の長手方向中間部の複数個所に中間炎口部を設けることも可能である。
【0022】
更に、本実施形態では、火移り炎口5の中間炎口部5a以外の部分の前端と同じ前後方向位置で中間炎口部5aの前方に引いた線Lと中間炎口部5aとの間に生ずる空間を凹入空間5bとして、両板材4,4に、凹入空間5bを挟んで対峙するカバー部4d,4dを設けている。また、カバー部4d,4d間の隙間は、火移り炎口5よりも幅広にしている。具体的には、火移り炎口5の隙間幅とカバー部4d,4d間の隙間幅を、夫々例えば0.8mm、1.5mmとしている。
【0023】
これによれば、火移り炎口5の長手方向中間部に位置する中間炎口部5aから噴出した混合ガスが板材4,4の法線方向(上下方向)に拡散することをカバー部4d,4dにより防止できる。そのため、中間炎口部5aから噴出する混合ガスは全て凹入空間5bを介して前方に噴出する。従って、火移り炎口5の長手方向中間部からの前方への噴出ガス量が増え、火移り性能が向上する。尚、カバー部4d,4d間の隙間は火移り炎口5の隙間より幅広であるため、カバー部4d,4d間の通気抵抗により噴出ガス量が減少することはない。
【0024】
ところで、両板材4,4の窪み部4c,4cの凹入空間5bに対面する部分を切欠き、窪み部4c,4cの外面に、この切欠きを覆うように別の板を取付けてカバー部を構成することも可能である。然し、これでは部品点数が増してコストアップを招く。
【0025】
そこで、本実施形態では、両板材4,4の窪み部4c,4cの凹入空間5bに対面する部分を切欠かずに、この部分を両板材4,4が離隔する方向に更に窪ませる絞り加工を行い、カバー部4d,4dを構成している。これによれば、カバー部4dが板材4に一体成形されることになり、部品点数の増加によるコストアップを回避できる。尚、カバー部4dの絞り加工は、半割り形状部分4a及び窪み部4cの絞り加工と同時に行われる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、中間炎口部5aの後方への凹入形状をV字状としているが、この凹入形状はU字状であってもよい。また、上記実施形態の燃焼器は管状バーナ1を2個並設したものであるが、管状バーナ1の並設個数は3個以上であってもよい。
【0027】
また、以上の説明では、混合管2の長手方向を前後方向としているが、前後方向は燃焼器の使用時の方向を規定するものではなく、混合管2の前端部を上方に向けた上向き姿勢で使用される燃焼器も本発明の燃焼器に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1…管状バーナ、2…混合管、21…流入口、3…炎口部材、33,34…炎口、4…板材、4a…混合管の半割り形状部分、4d…カバー部、5…火移り炎口、5a…中間炎口部、5b…凹入空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口を有する混合管の前端部に、複数の炎口を有する炎口部材が嵌合され、燃料ガスと一次空気との混合ガスがこれら炎口から前方に噴出して燃焼するようにした管状バーナを複数並設した燃焼器であって、
これら管状バーナの複数の混合管は、混合管の半割り形状部分を間隔を存して複数成形した2枚の板材を接合して構成され、両板材の前端部間に、隣接する一方の混合管と他方の混合管とを結ぶ隙間が設けられ、この隙間により混合ガスが前方に噴出する細長形状の火移り炎口が構成されると共に、火移り炎口の長手方向中間部に、火移り炎口の他の部分の前端よりも後方に凹入する中間炎口部が設けられるものにおいて、
火移り炎口の中間炎口部以外の部分の前端と同じ前後方向位置で中間炎口部の前方に引いた線と中間炎口部との間に生ずる空間を凹入空間として、
両板材に、凹入空間を挟んで対峙するカバー部が設けられ、カバー部間の隙間は火移り炎口よりも幅広であることを特徴とする燃焼器。
【請求項2】
前記両板材の前記凹入空間に対面する部分を切欠かずに、この部分を両板材が離隔する方向に窪ませて前記カバー部を構成することを特徴とする請求項1記載の燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189269(P2012−189269A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53817(P2011−53817)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】