燃焼炉
【課題】比較的多い量の木質チップや木質ペレット等の燃料を、安定して燃焼させることができる燃焼炉を提供すること。
【解決手段】燃焼炉1は、円筒形状の燃焼室2と、燃焼室2の外側を取り囲むように形成された水ジャケット3と、水ジャケット3の外周側に配置された円筒環形状の上部空気室4を備える。燃焼室壁21と上部ケーシング31には、上部空気室4の燃焼空気を燃焼室2に導く複数の空気供給管71,72,73が貫通して固定されている。燃焼室2の底面には、燃焼空気を吹き出す複数の貫通孔61,61,・・・と、燃料Fの受容部62を有する円盤状の底面板6が配置されている。空気供給管71,72,73から、燃焼空気の時計回りの旋回流と、下降流と、反時計回りの旋回流が吹き出して、乱流を形成する。
【解決手段】燃焼炉1は、円筒形状の燃焼室2と、燃焼室2の外側を取り囲むように形成された水ジャケット3と、水ジャケット3の外周側に配置された円筒環形状の上部空気室4を備える。燃焼室壁21と上部ケーシング31には、上部空気室4の燃焼空気を燃焼室2に導く複数の空気供給管71,72,73が貫通して固定されている。燃焼室2の底面には、燃焼空気を吹き出す複数の貫通孔61,61,・・・と、燃料Fの受容部62を有する円盤状の底面板6が配置されている。空気供給管71,72,73から、燃焼空気の時計回りの旋回流と、下降流と、反時計回りの旋回流が吹き出して、乱流を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質チップや木質ペレットを燃焼する燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質チップや木質ペレットを燃焼してボイラ等に熱を供給する燃焼炉として、円筒形状の燃焼室に、燃焼空気の旋回流を形成するように構成されたものがある。
【0003】
この種の燃焼炉としては、図11に示すように、内部に円筒形状の燃焼室202を形成する筒状の内壁221と、内壁221の外周側に配置されて内壁221との間に空気室204を形成する外壁241と、内壁221に周方向に配列して形成され、空気室204から燃焼室202へ燃焼空気を供給する複数の空気通路207を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
図12は、上記燃焼炉201の空気通路207を形成した位置における燃焼室202の軸直角方向の横断面図である。図12に示すように、空気通路207に燃焼空気を供給する空気室204は円筒環状を有し、空気室204の外壁241の接線方向に延びる給気管241aから燃焼空気が供給され、矢印F11で示されるように空気室204内に燃焼空気が均一に流れる。この空気室204内の燃焼空気が、空気通路207によって燃焼室202に吹き出される。
【0005】
図13は、燃焼室202の軸直角方向断面における空気通路207の近傍部分を示す拡大横断面図であり、図14は、空気通路207を、燃焼室202の軸を含む径方向断面に投影した様子を示す拡大縦断面図である。図13及び14に示すように、内壁221に形成された空気通路207は、燃焼室202の径方向に対して水平面内と鉛直面内で傾斜して形成されている。これにより、空気室204内の燃焼空気を、矢印F12で示すように、燃焼室202の中心軸に対して偏心し、かつ、燃焼室202の天面側に向いた方向に吹き出して、燃焼室202内に燃焼空気の上昇旋回流を形成する。
【0006】
また、上記燃焼室202の底面の中央には、燃焼室202の軸方向に延在するスクリューコンベヤ209が配置されており、スクリューコンベヤ209の先端の燃料供給口291には、回転駆動される燃料拡散棒293が設けられている。図示しない燃料ホッパからスクリューコンベヤ209で導かれた燃料210が、スクリューコンベヤ209の燃料供給口291から吐出されると共に、回転する燃料拡散棒293で燃焼室202の底面に分散する。
【0007】
このように、燃焼室202に燃焼空気の上昇旋回流を形成すると共に、燃焼室202の底面の中心に燃料210を供給することにより、化石燃料よりも燃焼し難い木質チップ等で形成された燃料210を、安定に燃焼させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−341409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の燃焼炉201は、燃料の供給量が比較的多い場合、所定の空燃費となるように燃焼空気の流量を増大させると、燃焼空気の燃焼室202内の滞在時間が少なくなり、燃料の未燃成分が燃焼を完了する前に排出される不都合がある。このような不都合を防止するため、燃焼空気の流量を減少させると、燃料に対する空気の量が不足し、不完全燃焼が生じる場合がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、比較的多い量の木質チップや木質ペレット等の燃料を、安定して燃焼させることができる燃焼炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の燃焼炉は、植物系再生燃料を燃焼するための燃焼炉であって、
円筒形状の燃焼室と、
上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給部と、
上記燃焼室の側面に設けられ、上記燃焼室の径方向に関して互いに異なる方向に燃焼空気を吹き出す複数の側部空気通路と
を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、複数の側部空気通路により、燃焼室の径方向に関して互いに異なる方向に燃焼空気が吹き出され、燃焼室内に燃焼空気の乱流が形成される。これにより、燃焼室内に旋回流が形成されるよりも、安定して燃料を完全燃焼させることができる。
【0013】
ここで、植物系再生燃料としては、例えば木質チップのように植物系の材料を破砕したものや、木質ペレットのように植物系の材料を成型したものがある。植物系の材料としては、オガ屑、木屑、間伐材及び剪定材等の木質系材料や、稲藁、籾殻、雑草及びバガス等の農業系材料や、建設廃材等の廃棄物系材料や、古紙や廃パルプ等の紙系材料がある。また、植物系再生燃料は、例えばRPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)のように、一部に植物系の材料を用いた燃料であってもよい。
【0014】
一実施形態の燃焼炉は、上記側部空気通路は、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の一方側に傾斜した第1空気通路と、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の他方側に傾斜した第2空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の底面側に傾斜した第3空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の天面側に傾斜した第4空気通路のうちの少なくとも2つを含む。
【0015】
上記実施形態によれば、燃焼室の軸直角面内で径方向の一方側に傾斜した第1空気通路と、燃焼室の軸直角面内で径方向の他方側に傾斜した第2空気通路と、燃焼室の軸包含面内で燃焼室の底面側に傾斜した第3空気通路と、燃焼室の軸包含面内で燃焼室の天面側に傾斜した第4空気通路のうちの少なくとも2つから燃焼空気が吹き出すことにより、燃焼室内に効果的に乱流が形成される。
【0016】
一実施形態の燃焼炉は、上記側部空気通路は、上記燃焼室を区画する壁を貫通して配置された複数の空気供給管で形成されている。
【0017】
上記実施形態によれば、空気供給管を、燃焼室を区画する壁を貫通して配置することにより、所定の方向に燃焼空気を吹き出す側部空気通路を容易に設置することができる。
【0018】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の外周側に設けられると共に上記側部空気通路に連通し、この側部空気通路を通して上記燃焼室に吹き出す燃焼空気が供給される空気室を備える。
【0019】
上記実施形態によれば、燃焼室の外周側に設けられた空気室に燃焼空気が供給され、この空気室に供給された燃焼空気が側部空気通路を通して燃焼室に吹き出される。これにより、複数の側部空気通路から均一の流速及び流量の燃焼空気を燃焼室に吹き出すことができる。また、燃焼室から伝わる熱により、燃焼室に吹き出す前の燃焼空気を空気室で加熱することができるので、燃焼空気による燃焼室内の温度の低下を防止できる。
【0020】
一実施形態の燃焼炉は、上記空気室は、円筒環形状を有し、この円筒環形状の空気室の側面の接線方向に燃焼空気が供給される。
【0021】
上記実施形態によれば、円筒環形状の空気室の側面の接線方向に燃焼空気が供給されることにより、空気室内の燃焼空気の流れが均一になるので、この空気室から側部空気通路を通って燃焼室に吹き出す燃焼空気の流速や流量を均一にできる。
【0022】
一実施形態の燃焼炉は、上記空気室は、複数の上記側部空気通路に対応して複数個設けられている。
【0023】
上記実施形態によれば、複数の空気室毎に燃焼空気を供給することにより、各空気室に連なる側部空気通路から燃焼室に吹き出す燃焼空気の流量を、側部空気通路毎に調節することができる。したがって、燃焼室内に形成する乱流を精度よく調整することができる。
【0024】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃焼空気を吹き出す底部空気通路を備える。
【0025】
上記実施形態によれば、底部空気通路を通して燃焼室内に燃焼空気を吹き出すことにより、燃料に燃焼空気を直接供給し、燃料の完全燃焼を促進できる。
【0026】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の上記側部空気通路が設置された位置よりも底面側に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備える。
【0027】
上記実施形態によれば、燃料供給口を通して燃焼室の側面から供給され、燃焼室の底面の近傍に落下した燃料が、複数の側部空気通路を通して供給された燃焼空気の乱流により、効果的に燃焼して十分な熱量を得ることができる。
【0028】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備える。
【0029】
上記実施形態によれば、燃料供給口を通して燃焼室の底面の近傍に供給された燃料が、複数の側部空気通路を通して供給された燃焼空気の乱流により、効果的に燃焼して十分な熱量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の燃焼炉を示す縦断面図である。
【図2】上部空気室及び下部空気室を示す平面図である。
【図3】底面板を示す斜視図である。
【図4A】側部空気通路を形成する空気供給管の配置を示す縦断面図である。
【図4B】空気供給管のうちの第1旋回流管の配置を示す平断面図である。
【図4C】空気供給管のうちの下降流管の配置を示す平断面図である。
【図4D】空気供給管のうちの第2旋回流管の配置を示す平断面図である。
【図5】他の空気供給管の配置を示す縦断面図である。
【図6】実施形態の燃焼炉を用いたボイラ装置を示す模式図である。
【図7】水熱交換器を示す模式断面図である。
【図8】第2実施形態の燃焼炉を示す縦断面図である。
【図9】空気供給管及び上部空気室を示す縦断面図である。
【図10】燃料供給部を示す縦断面図である。
【図11】従来の燃焼炉を示す断面図である。
【図12】従来の燃焼炉の空気通路の形成位置における横断面図である。
【図13】従来の燃焼炉の空気通路を示す拡大横断面図である。
【図14】従来の燃焼炉の空気通路を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態の燃焼炉を示す断面図である。本実施形態の燃焼炉1は、植物系再生燃料である木質チップを燃料とし、ボイラ装置の熱源に用いられる。
【0033】
第1実施形態の燃焼炉1は、円筒形状の燃焼室2と、燃焼室2の外側を取り囲むように形成された大略円筒環形状の水ジャケット3と、水ジャケット3の外周側に高さ方向の略中央に配置された円筒環形状の上部空気室4を備える。燃焼室2は、キャスタブル耐火物を用いて形成された円筒形状の燃焼室壁21で取り囲まれている。なお、燃焼室壁21は、耐火レンガ等の他の耐火性を有する材料を用いて形成されてもよい。燃焼室2の外側の水ジャケット3は、燃焼室壁21と上部ケーシング31との間に形成されている。
【0034】
燃焼室壁21と上部ケーシング31の側面には、上部空気室4の燃焼空気を燃焼室2に導く複数の空気供給管71,72,73が貫通して固定されている。空気供給管71,72,73は、内部に側部空気通路が形成され、後に詳述するように、燃焼室2の径方向又は軸方向に対して傾斜して固定されている。上部空気室4は、上部ケーシング31の周面を取り囲むように設置された空気室壁41の内側に形成され、この空気室壁41に接続された上部給気管42を通して、矢印A5で示すように燃焼空気が供給される。上部空気室4に供給された燃焼空気は、空気供給管71,72,73を通って燃焼室2に供給され、燃焼室2の空気供給管71,72,73で取り囲まれた領域に、燃焼空気の乱流を形成する。燃焼室2内で燃料Fが燃焼して生成された高温の燃焼ガスは、上記燃焼空気の乱流が形成される領域の上方で旋回状に流れ、燃焼室壁21の上部に接続された排気管22を通り、後述する水熱交換器14に供給される。
【0035】
燃焼室2の底面には、燃焼室壁21の下端に嵌合する円盤状の底面板6が配置され、この底面板6の下方に下部空気室5が配置されている。下部空気室5は、円筒形状の下部ケーシング51内に形成されている。底面板6には、燃焼空気を下部空気室5から燃焼室2に導く複数の底部空気通路としての貫通孔61,61,・・・が、外径部分に形成されている。底面板6の内径部分の燃焼室2に臨む面には、燃料Fを受け取る受容部62が形成されている。下部空気室5には、下部ケーシング51に設けられた下部給気管52を通して、矢印A6で示すように燃焼空気が供給される。
【0036】
図2は、平面視における上部空気室4と下部空気室5の形状を重ねて示した模式図である。図2に示すように、上部空気室4の側面に設けられた上部給気管42は、空気室4の側面の接線方向に延在している。上部給気管42を通して上部空気室4に接線方向に空気を供給することにより、円筒環形状の上部空気室4内に、周方向における偏りの少ない空気の流れを形成することができる。一方、下部空気室5の側面に設けられた下部給気管52は、平面視において下部空気室5の径方向に延在している。下部給気管52を通して下部空気室5に径方向に空気を供給することにより、円筒形状の下部空気室5に、偏りの少ない空気の流れが形成される。上部空気室4と下部給気管52には、上部給気管42と下部給気管52の上流側に接続された送風機20により、燃焼空気が供給される、
【0037】
図3は、底面板6を示す斜視図である。底面板6は、キャスタブル耐火物を円盤状に成型してなり、平面視において外径部分の環状の領域に、複数の貫通孔61,61,・・・が形成されている。この貫通孔61,61,・・・が形成された領域の径方向の内側である内径部分に、受容部62が設けられている。受容部62は、燃焼室2に臨む面に形成された円形の浅い凹部で構成されている。この受容部62に、燃料供給部としてのスクリューコンベヤ9から供給された燃料Fが受け取られる。受容部62は、燃焼炉1が水熱交換器14に熱を供給する燃焼運転を行う場合に、燃焼する燃料Fを保持する。一方、燃焼炉1が水熱交換器14に熱を供給しない待機運転を行う場合に、着火した状態の燃料Fを種火として保持する。待機運転時に受容部62が種火を保持することにより、燃焼室2への燃料Fと燃焼空気の供給量が増大すれば、迅速に燃焼運転に移行することができる。なお、燃料Fは、受容部62のみでなく、底面板6の受容部62の外径側に位置する部分で支持してもよい。
【0038】
燃焼室2の側面には、燃料Fを供給する燃料供給部としてのスクリューコンベヤ9が設置されている。スクリューコンベヤ9は、筒状のケーシング91と、ケーシング91内に配置された回転駆動軸92及び搬送スクリュー93で形成され、燃料Fを投入する投入管94に一端が接続されている。投入管94は、燃料Fの貯留及び供給を行う定量供給機11の供給コンベヤ12に、遮断弁13を介して接続されている。スクリューコンベヤ9の他端には、燃焼室2の側面に開口する燃料供給口91aが設けられている。燃料供給口91aの高さ方向の中心は、複数の空気供給管71,72,73が配列された領域よりも低い位置に設置されている。なお、燃料供給口91aの高さ方向の中心は、複数の空気供給管71,72,73が配列された領域の高さ方向の中心よりも低い位置に設置されていればよい。ここで、高さ方向とは、燃焼室2の中心軸の延在方向と実質的に同じであり、高さの低い側は下部ケーシング51の底面に近い側であり、また、高さの高い側は上部ケーシング31の天面に近い側である。上記スクリューコンベヤ9は、一端から他端に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜しており、これにより、高温の燃焼空気がスクリューコンベヤ9の内部を逆流し難くなっている。
【0039】
燃焼室2の外側に配置された水ジャケット3は、貯湯タンク15から供給された水を加熱するものであり、上部ケーシング31の下部に接続された加熱送り管33に、矢印W1で示すように、貯湯タンク15からの水が導入される。水ジャケット3で燃焼室2からの熱を受けて加熱された水は、上部ケーシング31の上部に接続された排水管32から、矢印W2で示すように水熱交換器14に向けて排出される。
【0040】
図4Aは、燃焼室2の側面に設置された空気供給管71,72,73の配置状態を示す縦断面図である。図4Aは、空気供給管71,72,73の設置位置において、燃焼室壁21と上部ケーシング31を、燃焼室2の中心軸を含む面内で切断した様子を示す断面図である。なお、図4Aでは、空気供給管71,73の径方向に対する傾斜は表現していない。
【0041】
図4Aに示すように、本実施形態の燃焼炉1には、燃焼室2の中心軸の延在方向に3段の空気供給管71,72,73が配列されている。これらの空気供給管71,72,73のうち、燃焼室2の最も天面側に位置する第1の空気供給管71は、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行の第1旋回流管である。この第1旋回流管は、図4Bの平断面図に示すように、燃焼室2の中心軸方向視において、径方向に対して時計回りに傾斜角αを成して配置されている。これにより、上部空気室4から第1旋回流管を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室2内に中心軸の偏心方向に吹き出される。
【0042】
上記第1の空気供給管71に対して燃焼室2の底面側に位置する第2の空気供給管72は、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の底面に向かって傾斜した下降流管である。この下降流管は、図4Aの縦断面図に示すように、燃焼室2の軸直角方向に対して傾斜角θを成して配置されていると共に、図4Cの平断面図に示すように、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に配置されている。これにより、上部空気室4から第2の空気供給管72を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室2内に底面方向に吹き出される。
【0043】
上記第2の空気供給管72に対して燃焼室2の底面側に位置する第3の空気供給管73は、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行の第2旋回流管である。この第2旋回流管は、図4Dの平断面図に示すように、燃焼室2の中心軸方向視において、径方向に対して反時計回りに傾斜角βを成して配置されている。第2旋回流管の径方向に対する傾斜角βは、第1旋回流管の径方向に対する傾斜角αと、径方向に関して逆向きの角度を成している。これにより、上部空気室4から第3の空気供給管73を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室2内に、中心軸に関して第1の空気供給管71と逆向きの偏心方向に吹き出される。
【0044】
上記第1の空気供給管71により偏心方向に吹き出される燃焼空気と、上記第2の空気供給管72により底面方向に吹き出される燃焼空気と、上記第3の空気供給管73により偏心方向に吹き出される燃焼空気とが衝突して、燃焼室2の空気供給管71,72,73で取り囲まれた領域とその周辺に、燃焼空気の乱流が形成される。燃焼室2内に燃焼空気の乱流を形成することにより、燃焼室2内に旋回流のみを形成するよりも、燃料Fを完全燃焼させることができ、一酸化炭素や煤の発生を少なくできる。したがって、一酸化炭素が漏洩する危険や、煤が水熱交換器14に蓄積して熱交換能力が低下する不都合を防止できる。
【0045】
ここで、第1の空気供給管71を構成する第1旋回流管の径方向に対する傾斜角αは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。また、第2の空気供給管72を構成する下降流管の軸直角方向に対する傾斜角θは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。また、第3の空気供給管73を構成する第2旋回流管の径方向に対する傾斜角βは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。
【0046】
なお、燃焼室2の空気供給管71,72,73は、図4Aの縦断面図のように、燃焼室2の天面側を第1旋回流管とし、中央の一段を下降流管とすると共に燃焼室2の底面側を第2旋回流管とするほか、図5の縦断面図のように、燃焼室2の天面側の第1の空気供給管71を下降流管とし、中央の第2の空気供給管72を旋回流管とすると共に燃焼室2の底面側の第3の空気供給管73を上昇流管としてもよい。上昇流管は、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の天面に向かって傾斜すると共に、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に配置される。この上昇流管で形成された第3の空気供給管73により、上部空気室4から導かれた燃焼空気が燃焼室2内に天面方向に吹き出され、下降流管で形成された第1の空気供給管71から吹き出された底面方向の燃焼空気の流れと、旋回流管で形成された第2の空気供給管72から吹き出された偏心方向の燃焼空気の流れに衝突して乱流が生成される。また、空気供給管の設置段数は、燃焼室2内に形成すべき流れに応じて適宜設定できる。また、全体の空気供給管の段数は3段以外の何段でもよい。
【0047】
また、側部空気通路は、空気供給管を用いて形成するほか、厚みのある壁体に貫通孔を設けて形成してもよい。この場合、貫通孔の延在方向を、燃焼室2の中心軸と直角の面や、中心軸を通る面に対して傾斜させ、あるいは、径方向に向けて、傾斜通路や旋回通路を形成することができる。
【0048】
図6は、実施形態の燃焼炉を用いて構成されたボイラ装置を示す模式図である。このボイラ装置10は、図6に示すように、上記燃焼炉1と、燃焼炉1から燃焼ガスが供給される熱機器としての水熱交換器14と、水熱交換器14及び燃焼炉1で加熱された高温水を貯留する貯湯タンク15と、水熱交換器14から導かれた排気の集塵を行うサイクロン集塵装置17と、サイクロン集塵装置17の排気口に連なる誘引ファン18を備える。
【0049】
燃焼炉1には、燃料としての木質チップが定量供給機11の供給コンベヤ12から巻き出され、燃焼室2内の気圧を保持するための遮断弁13を介してスクリューコンベヤ9に供給される。定量供給機11のサイロ部内には、径方向に延びる複数の攪拌棒が回転軸に固定されて成る攪拌装置114が設けられている。この攪拌装置114は、定量供給機11の側部に設置された駆動手段115で回転駆動され、定量供給機11のサイロ部に貯留された燃料Fを攪拌する。定量供給機11のサイロ部には、貯留する燃料Fの表面位置を検出して残量を検知するレベルセンサが設けられている。スクリューコンベヤ9には温度センサが設けられており、温度センサの検出温度に基づいて、スクリューコンベヤ9の搬送する燃料Fが燃焼室2からの高温空気によって着火していないかを監視している。温度センサが異常温度を検出して燃料Fの着火を検知すると、スクリューコンベヤ9に接続された給水管の開閉バルブを開いて消火を行うようになっている。
【0050】
燃焼炉1の燃焼室2から燃焼ガスを導く排気管22は、水熱交換器14に接続され、水熱交換器14の燃焼ガス通路の始端に連通している。燃焼室2から水熱交換器14に送られる燃焼ガスの温度は、燃焼室2のガス温度センサで検出され、このガス温度センサの検出値に基づいて、燃焼空気及び燃料Fの供給量が制御される。
【0051】
図7は、上記水熱交換器14を詳細に示す模式断面図である。この水熱交換器14は、縦長のケーシング141内の上部が、管板を兼ねる上部仕切板142と、隔壁144とで仕切られて、前煙室145と後煙室146が形成されている。また、ケーシング141内の下部が、管板を兼ねる下部仕切板143で仕切られて、中間煙室147が形成されている。上記ケーシング141の上部仕切板142と下部仕切板143の間が、水缶149となっており、上部仕切板142と下部仕切板143とに端部が溶接された複数の煙管148,148,・・・が、水缶149の内部に配置されている。この水熱交換機14では、燃焼炉1から前煙室145に流入した燃焼ガスが、矢印Gで示すように煙管148に流入し、水缶149内の水と熱交換をした後、中間煙室147に流れる。燃焼ガスは、中間煙室147で折り返し、矢印Hで示すように煙管148に流入し、水缶149内の水と更に熱交換をした後、後煙室146に流れる。後煙室146の燃焼ガスは、矢印Iで示すように排気管164を通って排出され、下流側のサイクロン集塵装置17に受け取られる。水缶149には、ケーシング141の下部に設けられた給水口160を通して、燃焼炉1の水ジャケット3からの水が矢印W2で示すように流入する。水缶149内で煙管148,149内を通る燃焼ガスと熱交換をして温度が上昇した水は、水缶149の上部に連通する連通管161と、この連通管161の上部に設けられた排水口162を通して、矢印W3で示すように排出される。連通管161の上端には、水缶149内の水蒸気が所定の圧力に達したときに水蒸気を大気に放出する大気開放弁163が設けられている。
【0052】
水熱交換器14は、燃焼炉1の水ジャケット3で加熱された水を更に加熱し、貯湯タンク15に供給する。水熱交換器14の水缶149には、内部の水量を検出する水位センサが設けられている。水ジャケット3の排水管32には、水の温度を検出する温度センサが設けられている。貯湯タンク15には、貯留される水の温度を検出する温度センサと、内部の水量を検出する水位センサが設けられている。
【0053】
貯湯タンク15は、水熱交換器14から延びる加熱戻り管81と、循環ポンプ16に介設されて燃焼炉1の水ジャケット3に延びる加熱送り管33に接続されている。水熱交換器14と水ジャケット3と貯湯タンク15とで循環経路を構成している。更に、貯湯タンク15は、貯湯タンク15と水熱交換器14と水ジャケット3内の水位に応じて水を供給する給水管151と、矢印Dで示すように、温水を利用する利用設備に温水を供給する給湯管152と、矢印Eで示すように、利用設備から温水が戻る給湯戻り管153に接続されている。
【0054】
サイクロン集塵装置17は、側面に燃焼ガスの吸入口が設けられた円筒部171と、円筒部171の下方に連なって内部に旋回流が形成される逆円錐形の分離部172と、円筒部171内から上方に突出して配置された排気筒175を有する。分離部172の下端にはロータリーバルブ173が接続され、このロータリーバルブ173を介して塵収容器174が設けられている。このサイクロン集塵装置17は、水熱交換器14で熱交換を終えた燃焼ガスを円筒部171の吸入口から吸入し、円筒部171と分離部172で、矢印Y1で示すように燃焼ガスの旋回流を形成し、この旋回流の遠心力により燃焼ガスに含まれる粉塵を分離する。燃焼ガスから分離した粉塵はロータリーバルブ173から塵収容器174に排出する一方、粉塵が分離された燃焼ガスを、矢印Y2で示すように排気筒175から排出する。排気筒175に排出された燃焼ガスは、排気筒175に連なる排気管176を通して誘引ファン18に吸引される。
【0055】
誘引ファン18は、遠心式送風機で形成され、サイクロン集塵装置17から連なる排気管176に接続された吸気管181と、吸気管181の中心軸と同心に配置された回転翼を収容したファンケーシング182と、ファンケーシング182内の回転翼を駆動する駆動部183を有する。ファンケーシング182の側部に設けられた排気口に、鉛直方向に延びる煙突19が接続されている。
【0056】
このボイラ装置10は、定量供給機11のサイロ部のレベルセンサL1、スクリューコンベヤ9の温度センサT1と、燃焼室2のガス温度センサT2と、貯湯タンク15の温度センサT4及び水位センサL2と、水ジャケット3の温度センサT3及び水位センサL3の検出情報に基づいて、供給コンベヤ12、遮断弁13、スクリューコンベヤ9、開閉バルブV1、誘引ファン18、送風機20及び循環ポンプ16の動作を制御する制御部25を備える。この制御部25により、貯湯タンク15の温度が所定温度となり、また、貯湯タンク15の水位が所定水位となるように、燃焼室2で生成される熱量と、水ジャケット3と水熱交換器14と貯湯タンク15の水の循環量が制御される。
【0057】
上記構成の燃焼炉1及びボイラ装置10は、次のように動作する。まず、水熱交換器14及び貯湯タンク15の水位センサの検出情報により、これらの水位を確認する。水熱交換器14及び貯湯タンク15内の水位が基準値よりも少ない場合は、矢印Cで示すように給水管151を通して貯湯タンク15に水を供給する。なお、給水管151を通した貯湯タンク15への給水は、浮き球を有するボールタップで給水量を調節してもよい。水熱交換器14及び貯湯タンク15内の水位が基準値を満たす場合は、誘引ファン18と送風機20を起動すると共に、遮断弁13を開いて供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9を起動する。送風機20を起動して、上部給気管42を通して上部空気室4に燃焼空気を供給すると共に、下部給気管52を通して下部空気室5に燃焼空気を供給する。遮断弁13を開いて供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9を起動して、定量供給機11から供給コンベヤ12で燃料Fの木質チップを巻き出し、遮断弁13を通ってスクリューコンベヤ9で燃焼室2に燃料Fを投入する。
【0058】
燃焼炉1では、上部空気室4に供給された燃焼空気が、空気供給管71,72,73を通って燃焼室に供給される。このとき、第1旋回流管である第1の空気供給管71から燃焼室2の中心軸の偏心方向に吹き出す燃焼空気と、下降流管である第2の空気供給管72から底面側に吹き出す燃焼空気と、第2旋回流管である第3の空気供給管73から燃焼室2の中心軸の偏心方向に、第1の空気供給管71と反対側の偏心方向に吹き出す燃焼空気とが混合する。これにより、燃焼室2の空気供給管71,72,73で取り囲まれた領域の近傍に、矢印A2で示すように燃焼空気の乱流が形成される。この乱流が形成される領域の下部に位置する燃料供給口91aから、矢印F1で示すように、スクリューコンベヤ9で供給された燃料Fが燃焼室2内に投入され、投入された燃料Fは燃焼室2の底面板6の上に保持される。
【0059】
底面板6の上に保持された燃料Fは、石油燃料で作動する図示しないバーナで着火され、下部空気室5から底面板6の貫通孔61,61,・・・を通して矢印A1で示されるように供給される1次燃焼空気を受けて燃焼を開始する。1次燃焼空気を受けて燃焼を開始した燃料Fは、空気供給管71,72,73から供給された2次燃焼空気の乱流によって燃焼成分が効率的に燃焼する。燃料Fの燃焼に伴って生成された燃焼ガスは、燃焼室2内の乱流が生成される領域の上方を矢印A3で示すように旋回状に流れる。このように、本実施形態の燃焼炉1によれば、燃料Fが、燃焼空気の乱流が形成される領域の下方である底面板6の上に保持され、この底面板6の貫通孔61,61,・・・を通して1次燃焼空気が供給されるので、燃料Fが効果的に燃焼を開始する。さらに、1次燃焼空気が供給される領域の上方に、2次燃焼空気の乱流を形成するので、燃焼に伴って燃料Fから生じた燃焼成分が、高温の乱流領域で十分に燃焼空気と混合され、完全燃焼する。したがって、一酸化炭素や煤の発生を効果的に削減でき、植物系再生燃料である燃料Fを用いながら、安定した熱量が得られる。その結果、一酸化炭素がボイラ装置10の周辺に漏洩する危険や、煤が水熱交換器14に蓄積して熱交換能力が低下する不都合を防止できる。燃焼室2で燃焼が燃焼して生成された燃焼ガスは、排気管22を通って水熱交換器14に送られる。
【0060】
水熱交換機14に送られた燃焼ガスは、排気管22を通って水熱交換機14の前煙室145に導入され、煙管148,149を通る間に水缶149内の水と熱交換を行う。後煙室146に達した燃焼ガスは、サイクロン集塵装置17に導かれる。サイクロン集塵装置17では、円筒部171の吸入口から流入した燃焼ガスが分離部172に導かれ、分離部172内を旋回状に流れる際の遠心力で塵が分離する。燃焼ガスから分離した塵は、サイクロン集塵装置17の下部の塵収容器174に集められる。塵が分離された燃焼ガスは排気筒175を通り、排気塔175に連なる排気管176を通して誘引ファン18に吸引され、煙突19を通って排気される。なお、誘引ファン18の下流側に、燃焼ガスに含まれる微細な粒子を除去するバグフィルタを接続してもよい。
【0061】
貯湯タンク15内の水は、循環ポンプ16によって加熱送り管33を通して燃焼炉1の水ジャケット3に送られる。水ジャケット3で燃焼室2から伝わる熱を受けて加熱された水は、排水管32を通って水熱交換器14の水缶149に導かれ、水熱交換器14で燃焼ガスと熱交換を行って更に加熱される。水熱交換器14で加熱された水は、加熱戻り管81を通って貯湯タンク15に戻される。
【0062】
制御部25は、温度センサT4で検出された貯湯タンク15の水の温度に基づいて、供給コンベヤ12、遮断弁13及びスクリューコンベヤ9の動作を制御し、燃焼室2に供給する燃料Fの量を制御すると共に、誘引ファン18と送風機20の動作を制御し、燃焼室2に供給する燃焼空気の量を制御する。貯湯タンク15の水が利用設備で消費されるに伴い、給水管151からの低温の水の追加によって貯湯タンク15の水温が低下すると、制御部25は、貯湯タンク15の水の温度を上昇させる燃焼モードの制御を行う。すなわち、遮断弁13を開き、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料Fの供給量を増大すると共に、送風機20の送風量を増大して燃焼室2への燃焼空気の供給量を増大する。また、誘引ファン18の吸引量を増大してサイクロン集塵装置17の水熱交換器14から吸引する燃焼ガス量を増大する。更に、循環ポンプ16の送水量を増大し、水ジャケット3及び水熱交換機14に送る水の量を増大する。これにより、燃焼室2内で燃料Fが燃焼して生成される熱量が増大し、水ジャケット3及び水熱交換機14で加熱される水の量が増大し、貯湯タンク15の水温が上昇する。貯湯タンク15の水が所定温度に達すると、制御部25は、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料Fの供給量を減少させると共に、送風機20の送風量を減少させて燃焼室2への燃焼空気の供給量を減少させ、誘引ファン18の吸引量を減少させて水熱交換器14から吸引する燃焼ガス量を減少させ、循環ポンプ16の送水量を減少させる。供給コンベヤ12からスクリューコンベヤ9への燃料Fの供給を停止する場合は、遮断弁13を閉じて燃焼室2からの燃焼ガスや燃焼空気の逆流を防止する。
【0063】
温水の利用が停止したこと等により、水熱交換器14による水の加熱動作を停止する場合、制御部25は、燃焼モードの制御を停止して待機モードの制御を行う。すなわち、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料供給量を、燃焼モードにおけるよりも少なくすると共に、誘引ファン18の吸引量と送風機20の送風量を燃焼モードにおけるよりも少なくする。また、循環ポンプ16による水熱交換器14への送水を停止する。こにより、水熱交換器14への熱の供給を実質的に停止した状態で、燃焼室2に種火を保持する。このように、燃焼室2に臨む底面板6の受容部62に最小限の燃料Fを保持し、この燃料Fに種火を残すことにより、温水の使用が再開して水熱交換器14の動作が求められた場合に、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料供給量と、送風機20の送風量を増大すれば、燃料Fを迅速に着火させて燃焼室2で生成する熱量を迅速に回復することができる。すなわち、待機モードから燃焼モードに迅速に移ることができ、温水の需要に迅速に対応することができる。なお、待機モードでは、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料Fの供給は、連続的に行ってもよく、あるいは、断続的に行ってもよい。要は、種火を保持できる程度の燃料Fを供給できればよい。
【0064】
第1実施形態において、燃焼炉1は、熱機器としての水熱交換器14に熱を供給したが、他の熱機器に熱を供給してもよい。また、燃焼炉1は、燃焼室2の外周側に水ジャケット3を備えたが、水ジャケット3は無くてもよい。
【0065】
図8は、第2実施形態の燃焼炉を示す縦断面図である。本実施形態の燃焼炉100は、第1実施形態と同様に、植物系再生燃料である木質チップを燃料とする。
【0066】
第2実施形態の燃焼炉100は、円筒形状の燃焼室2と、キャスタブル耐火物で形成されて燃焼室2を取り囲む円筒形状の燃焼室壁21と、燃焼室壁21の外側面を取り囲む円筒形状の上部ケーシング31と、本体ケーシング31の外周側に高さ方向の略中央に配置された円筒環形状の上部空気室400を備える。
【0067】
燃焼室壁21と上部ケーシング31の側面には、燃焼室2内に燃焼空気を吹き出す複数の空気供給管71,72,73,74,75が貫通して固定されている。第2実施形態の燃焼炉100は、燃焼室2の軸方向に、5段の空気供給管71,72,73,74,75が配列されている。これらの空気供給管71,72,73,74,75は、内部に側部空気通路が形成され、燃焼室2の径方向又は軸方向に対して傾斜して固定されている。
【0068】
図9は、空気供給管71,・・・,75と、これらの空気供給管71,・・・,75に燃焼空気を供給する上部空気室400を示す縦断面図である。図9に示すように、上部空気室400は、互いに隔てられて上部ケーシング31を取り囲む環状の第1乃至第5空気室401,402,403,404,405を有する。これらの第1乃至第5空気室401,402,403,404,405は、第1乃至第5空気室壁411,421,431,441,451により各々形成されている。上記第1乃至第5空気室401,402,403,404,405は、空気供給管71,72,73,74,75に各々連通している。第1乃至第5空気室401,402,403,404,405は、第1乃至第5空気室壁411,421,431,441,451の円筒環形状の側面に、接線方向に延在する第1乃至第5給気管412,422,432,442,452が各々接続されている。これらの第1乃至第5給気管412,422,432,442,452を通して、矢印A11,A12,A13,A14,A15で示すように、第1乃至第5空気室401,402,403,404,405に、燃焼空気が各々供給される。第1乃至第5給気管412,422,432,442,452から、第1乃至第5空気室401,402,403,404,405に、第1乃至第5空気室壁411,421,431,441,451の側面の接線方向に燃焼空気が供給されることにより、第1乃至第5空気室401,402,403,404,405の周方向において燃焼空気の均一の流れが得られる。これにより、各空気供給管71,・・・,75から燃焼室2に供給する燃焼空気の流量が、周方向に均一となるように形成されている。
【0069】
第1乃至第5給気管412,422,432,442,452から第1乃至第5空気室401,402,403,404,405に供給する燃焼空気の流量は、第1乃至第5給気管412,422,432,442,452の間で独立して調整可能になっている。これにより、各空気供給管71,・・・,75から燃焼室2に吹き出す燃焼空気の流量が、互いに独立して調整可能になっている。
【0070】
上記第1乃至第5空気室401,402,403,404,405を通して燃焼空気が供給される空気供給管71,72,73,74,75のうち、燃焼室2の天面に最も近い第1の空気供給管71は、第1実施形態と同様に、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行であり、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して時計回りに傾斜角αを成して配置された第1旋回流管である。この第1の空気供給管71の燃焼室2の底面側に隣接する第2の空気供給管72は、第1実施形態と同様に、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の底面に向かって傾斜した下降流管である。この第2の空気供給管72の燃焼室2の底面側に隣接する第3の空気供給管73は、第1実施形態と同様に、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行であり、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して反時計回りに傾斜角βを成して配置された第2旋回流管である。この第3の空気供給管73の燃焼室2の底面側に隣接する第4の空気供給管74は、上記第2の空気供給管72と同様に、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の底面に向かって傾斜した下降流管である。この第4の空気供給管74の燃焼室2の底面側に隣接する第5の空気供給管75は、上記第1の空気供給管71と同様に、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行であり、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して時計回りに傾斜角αを成して配置された第1旋回流管である。
【0071】
このように、上記空気供給管71,72,73,74,75により、燃焼室2の天面側から順に、時計回りの旋回流と、下降流と、反時計回りの旋回流と、下降流と、時計回りの旋回流を、燃焼室2内に吹き出す。これらの燃焼空気の流れが燃焼室2内で混合することにより、燃焼室2の空気供給管71,72,73,74,75の配置領域及びその周辺に、燃焼空気の乱流を安定して形成するように形成されている。燃焼室2の乱流の形成領域よりも天面側には、燃料が燃焼してなる燃焼ガスの旋回流が形成され、この燃焼ガスは、排気管22を通して図示しない水熱交換器等に供給される。
【0072】
図10は、第2実施形態の燃焼炉100が有する燃焼室2の底面近傍の断面図である。本実施形態の燃焼炉100の燃焼室2底面には、燃料供給部としてのスクリューコンベヤ109と、スクリューコンベヤ109で供給された燃料を保持して回転駆動される回転受皿106が設けられている。スクリューコンベヤ109は、鉛直方向に延在し、燃焼室2の中心軸と同心位置に配置される。スクリューコンベヤ109は、筒状のケーシング91と、ケーシング91内に配置された回転駆動軸92及び搬送スクリュー93で形成され、図示しない定量供給機の供給コンベヤから供給された燃料Fを、燃焼室2の下方から底面の中心に供給するように構成されている。
【0073】
燃焼室2の底面には、スクリューコンベヤ109の先端部の周りを取り囲むように、円錐台形の回転受皿106が配置されている。回転受皿106は、径方向に延びるスリット状の複数の給気孔107,107,・・・と、周縁から径方向に延びる複数のスクレーパ108,108,・・・と、裏面に設けられた環状のラック111を有する。回転受皿106は、ベアリング110を介して下部空気室500内の支持壁503上に回動可能に支持されている。
【0074】
下部空気室500は、円筒形状の下部ケーシング501内の下側部分に形成され、底面に設けられた下部給気管502を通して、矢印A21で示すように燃焼空気が供給される。下部空気室500を区画する支持壁503の上に、回転受皿106を回転自在に支持するベアリング110が設置されている。下部空気室500の天面に設けられた通気孔505を通して、矢印A22で示すように燃焼空気が回転受皿106の下側に供給される。この燃焼空気が、矢印A23で示すように給気孔107を通り、回転受皿106の上側に吹き出し、この回転受皿106上の燃料に燃焼空気を供給するようになっている。
【0075】
下部ケーシング501内には、回転受皿106の裏面に設けられたラック111に噛合するピニオン112が配置されている。このピニオン112は、下部ケーシング501の外側に配置されたモータ113の出力軸に接続されている。こおモータ113の回転力がピニオン112を介してラック111に伝達され、回転受皿106が回転駆動されるようになっている。
【0076】
回転受皿106の周縁に設けられたスクレーパ108は、回転受皿106の径方向に延びる支持回転軸と、この支持回転軸回りに回動可能に形成された矩形のスクレーパ本体で形成されている。スクレーパ108は、下部ケーシング501の内側面から内径側に張り出して形成された環状樋506の内側に嵌合しており、回転受皿106が回転駆動されるに伴い、環状樋506の内側を摺動するように形成されている。環状樋506の底面には、図示しない灰出し孔が設けられている。環状樋506内には、円錐台形の回転受皿106の上側面から外径側に移動した燃料の灰等が落下する。この灰等を、回転受皿106と共に回動するスクレーパ108が収集し、灰出し孔から外部へ排出するようになっている。
【0077】
第2実施形態の燃焼炉100は、5段の空気供給管71,72,73,74,75が、燃焼室2の軸方向に隣接する空気供給管71,72,73,74,75から吹き出す燃焼空気の流れの方向が互いに異なると共に、燃焼室2の軸方向の天面側と底面側の空気供給管71,75からの燃焼空気の流れが互いに同じ方向であり、かつ、燃焼室2の軸方向の中央の空気供給管73からの燃焼空気の流れが、天面側及び底面側の空気供給管71,75からの燃焼空気の流れと反対側である。さらに、これらの燃焼室2の軸方向における天面側、中央及び底面側の空気供給管71,73,75の間の空気供給管72,74による燃焼空気の流れは、燃焼室2の底面側である。これにより、燃焼室2内に、安定した燃焼空気の乱流を形成することができ、燃料を安定して完全燃焼することができる。
【0078】
本実施形態において、5段の空気供給管71,72,73,74,75に第1乃至第5給気管412,422,432,442,452から第1乃至第5空気室401,402,403,404,405を介して燃焼空気を個別に供給したが、単一の空気供給管から単一又は複数の空気室を介して空気供給管71,72,73,74,75に燃焼空気を供給してもよい。また、5段の空気供給管71,72,73,74,75が吹き出す燃焼空気の量を適宜変更し、燃焼室2内に形成する燃焼空気の乱流の形態を変更してもよい。また、燃焼室2内には、乱流に限らず、第1旋回流管による第1の空気供給管71のみから燃焼空気を吹き出して旋回流のみを形成したり、下降流管による第2の空気供給管72のみから燃焼空気を吹き出して下降流のみを形成したり、第2旋回流管による第3の空気供給管73のみから燃焼空気を吹き出して旋回流のみを形成してもよい。
【0079】
また、空気供給管として、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に対して傾斜し、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して傾斜して配置され、上昇かつ旋回方向や、下降かつ旋回方向に燃焼空気を吹き出す管を用いてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態では、燃焼室2の中心軸に対して傾斜して配置され、燃焼室2の側面から燃料を供給するスクリューコンベヤ9を燃料供給部として設置し、上記第2実施形態では、燃焼室2の中心軸と同心に配置され、燃焼室2の底面から燃料を供給するスクリューコンベヤ109を燃料供給部として設置したが、燃料供給部の形態はこれらに限定されない。
【0081】
また、上記第1実施形態では3段の空気供給管71,72,73を配置し、第2実施形態では5段の空気供給管71,72,73,74,75を配置したが、空気供給管の段数はこれらに限定されず、2段以上の何段であってもよい。また、各段に設置する空気供給管の種類は、燃焼室2内に形成すべき乱流の程度に応じて適宜設定することができる。
【0082】
また、上記実施形態において、植物系再生燃料として、木質チップからなる燃料を用いたが、木質ペレット等のように、植物系の材料を成型した再生燃料を用いてもよい。植物系の材料としては、オガ屑、木屑、間伐材及び剪定材等の木質系材料や、稲藁、籾殻、雑草及びバガス等の農業系材料や、建設廃材等の廃棄物系材料や、古紙や廃パルプ等の紙系材料がある。また、植物系再生燃料は、例えばRPFのように、一部に植物系の材料を用いた燃料であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 燃焼炉
2 燃焼室
4 上部空気室
6 底面板
9 スクリューコンベヤ
61 底面板の貫通孔
71,72,73 空気供給管
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質チップや木質ペレットを燃焼する燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質チップや木質ペレットを燃焼してボイラ等に熱を供給する燃焼炉として、円筒形状の燃焼室に、燃焼空気の旋回流を形成するように構成されたものがある。
【0003】
この種の燃焼炉としては、図11に示すように、内部に円筒形状の燃焼室202を形成する筒状の内壁221と、内壁221の外周側に配置されて内壁221との間に空気室204を形成する外壁241と、内壁221に周方向に配列して形成され、空気室204から燃焼室202へ燃焼空気を供給する複数の空気通路207を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
図12は、上記燃焼炉201の空気通路207を形成した位置における燃焼室202の軸直角方向の横断面図である。図12に示すように、空気通路207に燃焼空気を供給する空気室204は円筒環状を有し、空気室204の外壁241の接線方向に延びる給気管241aから燃焼空気が供給され、矢印F11で示されるように空気室204内に燃焼空気が均一に流れる。この空気室204内の燃焼空気が、空気通路207によって燃焼室202に吹き出される。
【0005】
図13は、燃焼室202の軸直角方向断面における空気通路207の近傍部分を示す拡大横断面図であり、図14は、空気通路207を、燃焼室202の軸を含む径方向断面に投影した様子を示す拡大縦断面図である。図13及び14に示すように、内壁221に形成された空気通路207は、燃焼室202の径方向に対して水平面内と鉛直面内で傾斜して形成されている。これにより、空気室204内の燃焼空気を、矢印F12で示すように、燃焼室202の中心軸に対して偏心し、かつ、燃焼室202の天面側に向いた方向に吹き出して、燃焼室202内に燃焼空気の上昇旋回流を形成する。
【0006】
また、上記燃焼室202の底面の中央には、燃焼室202の軸方向に延在するスクリューコンベヤ209が配置されており、スクリューコンベヤ209の先端の燃料供給口291には、回転駆動される燃料拡散棒293が設けられている。図示しない燃料ホッパからスクリューコンベヤ209で導かれた燃料210が、スクリューコンベヤ209の燃料供給口291から吐出されると共に、回転する燃料拡散棒293で燃焼室202の底面に分散する。
【0007】
このように、燃焼室202に燃焼空気の上昇旋回流を形成すると共に、燃焼室202の底面の中心に燃料210を供給することにより、化石燃料よりも燃焼し難い木質チップ等で形成された燃料210を、安定に燃焼させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−341409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の燃焼炉201は、燃料の供給量が比較的多い場合、所定の空燃費となるように燃焼空気の流量を増大させると、燃焼空気の燃焼室202内の滞在時間が少なくなり、燃料の未燃成分が燃焼を完了する前に排出される不都合がある。このような不都合を防止するため、燃焼空気の流量を減少させると、燃料に対する空気の量が不足し、不完全燃焼が生じる場合がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、比較的多い量の木質チップや木質ペレット等の燃料を、安定して燃焼させることができる燃焼炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の燃焼炉は、植物系再生燃料を燃焼するための燃焼炉であって、
円筒形状の燃焼室と、
上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給部と、
上記燃焼室の側面に設けられ、上記燃焼室の径方向に関して互いに異なる方向に燃焼空気を吹き出す複数の側部空気通路と
を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、複数の側部空気通路により、燃焼室の径方向に関して互いに異なる方向に燃焼空気が吹き出され、燃焼室内に燃焼空気の乱流が形成される。これにより、燃焼室内に旋回流が形成されるよりも、安定して燃料を完全燃焼させることができる。
【0013】
ここで、植物系再生燃料としては、例えば木質チップのように植物系の材料を破砕したものや、木質ペレットのように植物系の材料を成型したものがある。植物系の材料としては、オガ屑、木屑、間伐材及び剪定材等の木質系材料や、稲藁、籾殻、雑草及びバガス等の農業系材料や、建設廃材等の廃棄物系材料や、古紙や廃パルプ等の紙系材料がある。また、植物系再生燃料は、例えばRPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)のように、一部に植物系の材料を用いた燃料であってもよい。
【0014】
一実施形態の燃焼炉は、上記側部空気通路は、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の一方側に傾斜した第1空気通路と、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の他方側に傾斜した第2空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の底面側に傾斜した第3空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の天面側に傾斜した第4空気通路のうちの少なくとも2つを含む。
【0015】
上記実施形態によれば、燃焼室の軸直角面内で径方向の一方側に傾斜した第1空気通路と、燃焼室の軸直角面内で径方向の他方側に傾斜した第2空気通路と、燃焼室の軸包含面内で燃焼室の底面側に傾斜した第3空気通路と、燃焼室の軸包含面内で燃焼室の天面側に傾斜した第4空気通路のうちの少なくとも2つから燃焼空気が吹き出すことにより、燃焼室内に効果的に乱流が形成される。
【0016】
一実施形態の燃焼炉は、上記側部空気通路は、上記燃焼室を区画する壁を貫通して配置された複数の空気供給管で形成されている。
【0017】
上記実施形態によれば、空気供給管を、燃焼室を区画する壁を貫通して配置することにより、所定の方向に燃焼空気を吹き出す側部空気通路を容易に設置することができる。
【0018】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の外周側に設けられると共に上記側部空気通路に連通し、この側部空気通路を通して上記燃焼室に吹き出す燃焼空気が供給される空気室を備える。
【0019】
上記実施形態によれば、燃焼室の外周側に設けられた空気室に燃焼空気が供給され、この空気室に供給された燃焼空気が側部空気通路を通して燃焼室に吹き出される。これにより、複数の側部空気通路から均一の流速及び流量の燃焼空気を燃焼室に吹き出すことができる。また、燃焼室から伝わる熱により、燃焼室に吹き出す前の燃焼空気を空気室で加熱することができるので、燃焼空気による燃焼室内の温度の低下を防止できる。
【0020】
一実施形態の燃焼炉は、上記空気室は、円筒環形状を有し、この円筒環形状の空気室の側面の接線方向に燃焼空気が供給される。
【0021】
上記実施形態によれば、円筒環形状の空気室の側面の接線方向に燃焼空気が供給されることにより、空気室内の燃焼空気の流れが均一になるので、この空気室から側部空気通路を通って燃焼室に吹き出す燃焼空気の流速や流量を均一にできる。
【0022】
一実施形態の燃焼炉は、上記空気室は、複数の上記側部空気通路に対応して複数個設けられている。
【0023】
上記実施形態によれば、複数の空気室毎に燃焼空気を供給することにより、各空気室に連なる側部空気通路から燃焼室に吹き出す燃焼空気の流量を、側部空気通路毎に調節することができる。したがって、燃焼室内に形成する乱流を精度よく調整することができる。
【0024】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃焼空気を吹き出す底部空気通路を備える。
【0025】
上記実施形態によれば、底部空気通路を通して燃焼室内に燃焼空気を吹き出すことにより、燃料に燃焼空気を直接供給し、燃料の完全燃焼を促進できる。
【0026】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の上記側部空気通路が設置された位置よりも底面側に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備える。
【0027】
上記実施形態によれば、燃料供給口を通して燃焼室の側面から供給され、燃焼室の底面の近傍に落下した燃料が、複数の側部空気通路を通して供給された燃焼空気の乱流により、効果的に燃焼して十分な熱量を得ることができる。
【0028】
一実施形態の燃焼炉は、上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備える。
【0029】
上記実施形態によれば、燃料供給口を通して燃焼室の底面の近傍に供給された燃料が、複数の側部空気通路を通して供給された燃焼空気の乱流により、効果的に燃焼して十分な熱量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の燃焼炉を示す縦断面図である。
【図2】上部空気室及び下部空気室を示す平面図である。
【図3】底面板を示す斜視図である。
【図4A】側部空気通路を形成する空気供給管の配置を示す縦断面図である。
【図4B】空気供給管のうちの第1旋回流管の配置を示す平断面図である。
【図4C】空気供給管のうちの下降流管の配置を示す平断面図である。
【図4D】空気供給管のうちの第2旋回流管の配置を示す平断面図である。
【図5】他の空気供給管の配置を示す縦断面図である。
【図6】実施形態の燃焼炉を用いたボイラ装置を示す模式図である。
【図7】水熱交換器を示す模式断面図である。
【図8】第2実施形態の燃焼炉を示す縦断面図である。
【図9】空気供給管及び上部空気室を示す縦断面図である。
【図10】燃料供給部を示す縦断面図である。
【図11】従来の燃焼炉を示す断面図である。
【図12】従来の燃焼炉の空気通路の形成位置における横断面図である。
【図13】従来の燃焼炉の空気通路を示す拡大横断面図である。
【図14】従来の燃焼炉の空気通路を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態の燃焼炉を示す断面図である。本実施形態の燃焼炉1は、植物系再生燃料である木質チップを燃料とし、ボイラ装置の熱源に用いられる。
【0033】
第1実施形態の燃焼炉1は、円筒形状の燃焼室2と、燃焼室2の外側を取り囲むように形成された大略円筒環形状の水ジャケット3と、水ジャケット3の外周側に高さ方向の略中央に配置された円筒環形状の上部空気室4を備える。燃焼室2は、キャスタブル耐火物を用いて形成された円筒形状の燃焼室壁21で取り囲まれている。なお、燃焼室壁21は、耐火レンガ等の他の耐火性を有する材料を用いて形成されてもよい。燃焼室2の外側の水ジャケット3は、燃焼室壁21と上部ケーシング31との間に形成されている。
【0034】
燃焼室壁21と上部ケーシング31の側面には、上部空気室4の燃焼空気を燃焼室2に導く複数の空気供給管71,72,73が貫通して固定されている。空気供給管71,72,73は、内部に側部空気通路が形成され、後に詳述するように、燃焼室2の径方向又は軸方向に対して傾斜して固定されている。上部空気室4は、上部ケーシング31の周面を取り囲むように設置された空気室壁41の内側に形成され、この空気室壁41に接続された上部給気管42を通して、矢印A5で示すように燃焼空気が供給される。上部空気室4に供給された燃焼空気は、空気供給管71,72,73を通って燃焼室2に供給され、燃焼室2の空気供給管71,72,73で取り囲まれた領域に、燃焼空気の乱流を形成する。燃焼室2内で燃料Fが燃焼して生成された高温の燃焼ガスは、上記燃焼空気の乱流が形成される領域の上方で旋回状に流れ、燃焼室壁21の上部に接続された排気管22を通り、後述する水熱交換器14に供給される。
【0035】
燃焼室2の底面には、燃焼室壁21の下端に嵌合する円盤状の底面板6が配置され、この底面板6の下方に下部空気室5が配置されている。下部空気室5は、円筒形状の下部ケーシング51内に形成されている。底面板6には、燃焼空気を下部空気室5から燃焼室2に導く複数の底部空気通路としての貫通孔61,61,・・・が、外径部分に形成されている。底面板6の内径部分の燃焼室2に臨む面には、燃料Fを受け取る受容部62が形成されている。下部空気室5には、下部ケーシング51に設けられた下部給気管52を通して、矢印A6で示すように燃焼空気が供給される。
【0036】
図2は、平面視における上部空気室4と下部空気室5の形状を重ねて示した模式図である。図2に示すように、上部空気室4の側面に設けられた上部給気管42は、空気室4の側面の接線方向に延在している。上部給気管42を通して上部空気室4に接線方向に空気を供給することにより、円筒環形状の上部空気室4内に、周方向における偏りの少ない空気の流れを形成することができる。一方、下部空気室5の側面に設けられた下部給気管52は、平面視において下部空気室5の径方向に延在している。下部給気管52を通して下部空気室5に径方向に空気を供給することにより、円筒形状の下部空気室5に、偏りの少ない空気の流れが形成される。上部空気室4と下部給気管52には、上部給気管42と下部給気管52の上流側に接続された送風機20により、燃焼空気が供給される、
【0037】
図3は、底面板6を示す斜視図である。底面板6は、キャスタブル耐火物を円盤状に成型してなり、平面視において外径部分の環状の領域に、複数の貫通孔61,61,・・・が形成されている。この貫通孔61,61,・・・が形成された領域の径方向の内側である内径部分に、受容部62が設けられている。受容部62は、燃焼室2に臨む面に形成された円形の浅い凹部で構成されている。この受容部62に、燃料供給部としてのスクリューコンベヤ9から供給された燃料Fが受け取られる。受容部62は、燃焼炉1が水熱交換器14に熱を供給する燃焼運転を行う場合に、燃焼する燃料Fを保持する。一方、燃焼炉1が水熱交換器14に熱を供給しない待機運転を行う場合に、着火した状態の燃料Fを種火として保持する。待機運転時に受容部62が種火を保持することにより、燃焼室2への燃料Fと燃焼空気の供給量が増大すれば、迅速に燃焼運転に移行することができる。なお、燃料Fは、受容部62のみでなく、底面板6の受容部62の外径側に位置する部分で支持してもよい。
【0038】
燃焼室2の側面には、燃料Fを供給する燃料供給部としてのスクリューコンベヤ9が設置されている。スクリューコンベヤ9は、筒状のケーシング91と、ケーシング91内に配置された回転駆動軸92及び搬送スクリュー93で形成され、燃料Fを投入する投入管94に一端が接続されている。投入管94は、燃料Fの貯留及び供給を行う定量供給機11の供給コンベヤ12に、遮断弁13を介して接続されている。スクリューコンベヤ9の他端には、燃焼室2の側面に開口する燃料供給口91aが設けられている。燃料供給口91aの高さ方向の中心は、複数の空気供給管71,72,73が配列された領域よりも低い位置に設置されている。なお、燃料供給口91aの高さ方向の中心は、複数の空気供給管71,72,73が配列された領域の高さ方向の中心よりも低い位置に設置されていればよい。ここで、高さ方向とは、燃焼室2の中心軸の延在方向と実質的に同じであり、高さの低い側は下部ケーシング51の底面に近い側であり、また、高さの高い側は上部ケーシング31の天面に近い側である。上記スクリューコンベヤ9は、一端から他端に向かうにつれて位置が高くなるように傾斜しており、これにより、高温の燃焼空気がスクリューコンベヤ9の内部を逆流し難くなっている。
【0039】
燃焼室2の外側に配置された水ジャケット3は、貯湯タンク15から供給された水を加熱するものであり、上部ケーシング31の下部に接続された加熱送り管33に、矢印W1で示すように、貯湯タンク15からの水が導入される。水ジャケット3で燃焼室2からの熱を受けて加熱された水は、上部ケーシング31の上部に接続された排水管32から、矢印W2で示すように水熱交換器14に向けて排出される。
【0040】
図4Aは、燃焼室2の側面に設置された空気供給管71,72,73の配置状態を示す縦断面図である。図4Aは、空気供給管71,72,73の設置位置において、燃焼室壁21と上部ケーシング31を、燃焼室2の中心軸を含む面内で切断した様子を示す断面図である。なお、図4Aでは、空気供給管71,73の径方向に対する傾斜は表現していない。
【0041】
図4Aに示すように、本実施形態の燃焼炉1には、燃焼室2の中心軸の延在方向に3段の空気供給管71,72,73が配列されている。これらの空気供給管71,72,73のうち、燃焼室2の最も天面側に位置する第1の空気供給管71は、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行の第1旋回流管である。この第1旋回流管は、図4Bの平断面図に示すように、燃焼室2の中心軸方向視において、径方向に対して時計回りに傾斜角αを成して配置されている。これにより、上部空気室4から第1旋回流管を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室2内に中心軸の偏心方向に吹き出される。
【0042】
上記第1の空気供給管71に対して燃焼室2の底面側に位置する第2の空気供給管72は、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の底面に向かって傾斜した下降流管である。この下降流管は、図4Aの縦断面図に示すように、燃焼室2の軸直角方向に対して傾斜角θを成して配置されていると共に、図4Cの平断面図に示すように、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に配置されている。これにより、上部空気室4から第2の空気供給管72を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室2内に底面方向に吹き出される。
【0043】
上記第2の空気供給管72に対して燃焼室2の底面側に位置する第3の空気供給管73は、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行の第2旋回流管である。この第2旋回流管は、図4Dの平断面図に示すように、燃焼室2の中心軸方向視において、径方向に対して反時計回りに傾斜角βを成して配置されている。第2旋回流管の径方向に対する傾斜角βは、第1旋回流管の径方向に対する傾斜角αと、径方向に関して逆向きの角度を成している。これにより、上部空気室4から第3の空気供給管73を通って導かれた燃焼空気は、燃焼室2内に、中心軸に関して第1の空気供給管71と逆向きの偏心方向に吹き出される。
【0044】
上記第1の空気供給管71により偏心方向に吹き出される燃焼空気と、上記第2の空気供給管72により底面方向に吹き出される燃焼空気と、上記第3の空気供給管73により偏心方向に吹き出される燃焼空気とが衝突して、燃焼室2の空気供給管71,72,73で取り囲まれた領域とその周辺に、燃焼空気の乱流が形成される。燃焼室2内に燃焼空気の乱流を形成することにより、燃焼室2内に旋回流のみを形成するよりも、燃料Fを完全燃焼させることができ、一酸化炭素や煤の発生を少なくできる。したがって、一酸化炭素が漏洩する危険や、煤が水熱交換器14に蓄積して熱交換能力が低下する不都合を防止できる。
【0045】
ここで、第1の空気供給管71を構成する第1旋回流管の径方向に対する傾斜角αは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。また、第2の空気供給管72を構成する下降流管の軸直角方向に対する傾斜角θは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。また、第3の空気供給管73を構成する第2旋回流管の径方向に対する傾斜角βは、0°よりも大きく50°以下であり、好ましくは、1°以上30°以下である。
【0046】
なお、燃焼室2の空気供給管71,72,73は、図4Aの縦断面図のように、燃焼室2の天面側を第1旋回流管とし、中央の一段を下降流管とすると共に燃焼室2の底面側を第2旋回流管とするほか、図5の縦断面図のように、燃焼室2の天面側の第1の空気供給管71を下降流管とし、中央の第2の空気供給管72を旋回流管とすると共に燃焼室2の底面側の第3の空気供給管73を上昇流管としてもよい。上昇流管は、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の天面に向かって傾斜すると共に、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に配置される。この上昇流管で形成された第3の空気供給管73により、上部空気室4から導かれた燃焼空気が燃焼室2内に天面方向に吹き出され、下降流管で形成された第1の空気供給管71から吹き出された底面方向の燃焼空気の流れと、旋回流管で形成された第2の空気供給管72から吹き出された偏心方向の燃焼空気の流れに衝突して乱流が生成される。また、空気供給管の設置段数は、燃焼室2内に形成すべき流れに応じて適宜設定できる。また、全体の空気供給管の段数は3段以外の何段でもよい。
【0047】
また、側部空気通路は、空気供給管を用いて形成するほか、厚みのある壁体に貫通孔を設けて形成してもよい。この場合、貫通孔の延在方向を、燃焼室2の中心軸と直角の面や、中心軸を通る面に対して傾斜させ、あるいは、径方向に向けて、傾斜通路や旋回通路を形成することができる。
【0048】
図6は、実施形態の燃焼炉を用いて構成されたボイラ装置を示す模式図である。このボイラ装置10は、図6に示すように、上記燃焼炉1と、燃焼炉1から燃焼ガスが供給される熱機器としての水熱交換器14と、水熱交換器14及び燃焼炉1で加熱された高温水を貯留する貯湯タンク15と、水熱交換器14から導かれた排気の集塵を行うサイクロン集塵装置17と、サイクロン集塵装置17の排気口に連なる誘引ファン18を備える。
【0049】
燃焼炉1には、燃料としての木質チップが定量供給機11の供給コンベヤ12から巻き出され、燃焼室2内の気圧を保持するための遮断弁13を介してスクリューコンベヤ9に供給される。定量供給機11のサイロ部内には、径方向に延びる複数の攪拌棒が回転軸に固定されて成る攪拌装置114が設けられている。この攪拌装置114は、定量供給機11の側部に設置された駆動手段115で回転駆動され、定量供給機11のサイロ部に貯留された燃料Fを攪拌する。定量供給機11のサイロ部には、貯留する燃料Fの表面位置を検出して残量を検知するレベルセンサが設けられている。スクリューコンベヤ9には温度センサが設けられており、温度センサの検出温度に基づいて、スクリューコンベヤ9の搬送する燃料Fが燃焼室2からの高温空気によって着火していないかを監視している。温度センサが異常温度を検出して燃料Fの着火を検知すると、スクリューコンベヤ9に接続された給水管の開閉バルブを開いて消火を行うようになっている。
【0050】
燃焼炉1の燃焼室2から燃焼ガスを導く排気管22は、水熱交換器14に接続され、水熱交換器14の燃焼ガス通路の始端に連通している。燃焼室2から水熱交換器14に送られる燃焼ガスの温度は、燃焼室2のガス温度センサで検出され、このガス温度センサの検出値に基づいて、燃焼空気及び燃料Fの供給量が制御される。
【0051】
図7は、上記水熱交換器14を詳細に示す模式断面図である。この水熱交換器14は、縦長のケーシング141内の上部が、管板を兼ねる上部仕切板142と、隔壁144とで仕切られて、前煙室145と後煙室146が形成されている。また、ケーシング141内の下部が、管板を兼ねる下部仕切板143で仕切られて、中間煙室147が形成されている。上記ケーシング141の上部仕切板142と下部仕切板143の間が、水缶149となっており、上部仕切板142と下部仕切板143とに端部が溶接された複数の煙管148,148,・・・が、水缶149の内部に配置されている。この水熱交換機14では、燃焼炉1から前煙室145に流入した燃焼ガスが、矢印Gで示すように煙管148に流入し、水缶149内の水と熱交換をした後、中間煙室147に流れる。燃焼ガスは、中間煙室147で折り返し、矢印Hで示すように煙管148に流入し、水缶149内の水と更に熱交換をした後、後煙室146に流れる。後煙室146の燃焼ガスは、矢印Iで示すように排気管164を通って排出され、下流側のサイクロン集塵装置17に受け取られる。水缶149には、ケーシング141の下部に設けられた給水口160を通して、燃焼炉1の水ジャケット3からの水が矢印W2で示すように流入する。水缶149内で煙管148,149内を通る燃焼ガスと熱交換をして温度が上昇した水は、水缶149の上部に連通する連通管161と、この連通管161の上部に設けられた排水口162を通して、矢印W3で示すように排出される。連通管161の上端には、水缶149内の水蒸気が所定の圧力に達したときに水蒸気を大気に放出する大気開放弁163が設けられている。
【0052】
水熱交換器14は、燃焼炉1の水ジャケット3で加熱された水を更に加熱し、貯湯タンク15に供給する。水熱交換器14の水缶149には、内部の水量を検出する水位センサが設けられている。水ジャケット3の排水管32には、水の温度を検出する温度センサが設けられている。貯湯タンク15には、貯留される水の温度を検出する温度センサと、内部の水量を検出する水位センサが設けられている。
【0053】
貯湯タンク15は、水熱交換器14から延びる加熱戻り管81と、循環ポンプ16に介設されて燃焼炉1の水ジャケット3に延びる加熱送り管33に接続されている。水熱交換器14と水ジャケット3と貯湯タンク15とで循環経路を構成している。更に、貯湯タンク15は、貯湯タンク15と水熱交換器14と水ジャケット3内の水位に応じて水を供給する給水管151と、矢印Dで示すように、温水を利用する利用設備に温水を供給する給湯管152と、矢印Eで示すように、利用設備から温水が戻る給湯戻り管153に接続されている。
【0054】
サイクロン集塵装置17は、側面に燃焼ガスの吸入口が設けられた円筒部171と、円筒部171の下方に連なって内部に旋回流が形成される逆円錐形の分離部172と、円筒部171内から上方に突出して配置された排気筒175を有する。分離部172の下端にはロータリーバルブ173が接続され、このロータリーバルブ173を介して塵収容器174が設けられている。このサイクロン集塵装置17は、水熱交換器14で熱交換を終えた燃焼ガスを円筒部171の吸入口から吸入し、円筒部171と分離部172で、矢印Y1で示すように燃焼ガスの旋回流を形成し、この旋回流の遠心力により燃焼ガスに含まれる粉塵を分離する。燃焼ガスから分離した粉塵はロータリーバルブ173から塵収容器174に排出する一方、粉塵が分離された燃焼ガスを、矢印Y2で示すように排気筒175から排出する。排気筒175に排出された燃焼ガスは、排気筒175に連なる排気管176を通して誘引ファン18に吸引される。
【0055】
誘引ファン18は、遠心式送風機で形成され、サイクロン集塵装置17から連なる排気管176に接続された吸気管181と、吸気管181の中心軸と同心に配置された回転翼を収容したファンケーシング182と、ファンケーシング182内の回転翼を駆動する駆動部183を有する。ファンケーシング182の側部に設けられた排気口に、鉛直方向に延びる煙突19が接続されている。
【0056】
このボイラ装置10は、定量供給機11のサイロ部のレベルセンサL1、スクリューコンベヤ9の温度センサT1と、燃焼室2のガス温度センサT2と、貯湯タンク15の温度センサT4及び水位センサL2と、水ジャケット3の温度センサT3及び水位センサL3の検出情報に基づいて、供給コンベヤ12、遮断弁13、スクリューコンベヤ9、開閉バルブV1、誘引ファン18、送風機20及び循環ポンプ16の動作を制御する制御部25を備える。この制御部25により、貯湯タンク15の温度が所定温度となり、また、貯湯タンク15の水位が所定水位となるように、燃焼室2で生成される熱量と、水ジャケット3と水熱交換器14と貯湯タンク15の水の循環量が制御される。
【0057】
上記構成の燃焼炉1及びボイラ装置10は、次のように動作する。まず、水熱交換器14及び貯湯タンク15の水位センサの検出情報により、これらの水位を確認する。水熱交換器14及び貯湯タンク15内の水位が基準値よりも少ない場合は、矢印Cで示すように給水管151を通して貯湯タンク15に水を供給する。なお、給水管151を通した貯湯タンク15への給水は、浮き球を有するボールタップで給水量を調節してもよい。水熱交換器14及び貯湯タンク15内の水位が基準値を満たす場合は、誘引ファン18と送風機20を起動すると共に、遮断弁13を開いて供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9を起動する。送風機20を起動して、上部給気管42を通して上部空気室4に燃焼空気を供給すると共に、下部給気管52を通して下部空気室5に燃焼空気を供給する。遮断弁13を開いて供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9を起動して、定量供給機11から供給コンベヤ12で燃料Fの木質チップを巻き出し、遮断弁13を通ってスクリューコンベヤ9で燃焼室2に燃料Fを投入する。
【0058】
燃焼炉1では、上部空気室4に供給された燃焼空気が、空気供給管71,72,73を通って燃焼室に供給される。このとき、第1旋回流管である第1の空気供給管71から燃焼室2の中心軸の偏心方向に吹き出す燃焼空気と、下降流管である第2の空気供給管72から底面側に吹き出す燃焼空気と、第2旋回流管である第3の空気供給管73から燃焼室2の中心軸の偏心方向に、第1の空気供給管71と反対側の偏心方向に吹き出す燃焼空気とが混合する。これにより、燃焼室2の空気供給管71,72,73で取り囲まれた領域の近傍に、矢印A2で示すように燃焼空気の乱流が形成される。この乱流が形成される領域の下部に位置する燃料供給口91aから、矢印F1で示すように、スクリューコンベヤ9で供給された燃料Fが燃焼室2内に投入され、投入された燃料Fは燃焼室2の底面板6の上に保持される。
【0059】
底面板6の上に保持された燃料Fは、石油燃料で作動する図示しないバーナで着火され、下部空気室5から底面板6の貫通孔61,61,・・・を通して矢印A1で示されるように供給される1次燃焼空気を受けて燃焼を開始する。1次燃焼空気を受けて燃焼を開始した燃料Fは、空気供給管71,72,73から供給された2次燃焼空気の乱流によって燃焼成分が効率的に燃焼する。燃料Fの燃焼に伴って生成された燃焼ガスは、燃焼室2内の乱流が生成される領域の上方を矢印A3で示すように旋回状に流れる。このように、本実施形態の燃焼炉1によれば、燃料Fが、燃焼空気の乱流が形成される領域の下方である底面板6の上に保持され、この底面板6の貫通孔61,61,・・・を通して1次燃焼空気が供給されるので、燃料Fが効果的に燃焼を開始する。さらに、1次燃焼空気が供給される領域の上方に、2次燃焼空気の乱流を形成するので、燃焼に伴って燃料Fから生じた燃焼成分が、高温の乱流領域で十分に燃焼空気と混合され、完全燃焼する。したがって、一酸化炭素や煤の発生を効果的に削減でき、植物系再生燃料である燃料Fを用いながら、安定した熱量が得られる。その結果、一酸化炭素がボイラ装置10の周辺に漏洩する危険や、煤が水熱交換器14に蓄積して熱交換能力が低下する不都合を防止できる。燃焼室2で燃焼が燃焼して生成された燃焼ガスは、排気管22を通って水熱交換器14に送られる。
【0060】
水熱交換機14に送られた燃焼ガスは、排気管22を通って水熱交換機14の前煙室145に導入され、煙管148,149を通る間に水缶149内の水と熱交換を行う。後煙室146に達した燃焼ガスは、サイクロン集塵装置17に導かれる。サイクロン集塵装置17では、円筒部171の吸入口から流入した燃焼ガスが分離部172に導かれ、分離部172内を旋回状に流れる際の遠心力で塵が分離する。燃焼ガスから分離した塵は、サイクロン集塵装置17の下部の塵収容器174に集められる。塵が分離された燃焼ガスは排気筒175を通り、排気塔175に連なる排気管176を通して誘引ファン18に吸引され、煙突19を通って排気される。なお、誘引ファン18の下流側に、燃焼ガスに含まれる微細な粒子を除去するバグフィルタを接続してもよい。
【0061】
貯湯タンク15内の水は、循環ポンプ16によって加熱送り管33を通して燃焼炉1の水ジャケット3に送られる。水ジャケット3で燃焼室2から伝わる熱を受けて加熱された水は、排水管32を通って水熱交換器14の水缶149に導かれ、水熱交換器14で燃焼ガスと熱交換を行って更に加熱される。水熱交換器14で加熱された水は、加熱戻り管81を通って貯湯タンク15に戻される。
【0062】
制御部25は、温度センサT4で検出された貯湯タンク15の水の温度に基づいて、供給コンベヤ12、遮断弁13及びスクリューコンベヤ9の動作を制御し、燃焼室2に供給する燃料Fの量を制御すると共に、誘引ファン18と送風機20の動作を制御し、燃焼室2に供給する燃焼空気の量を制御する。貯湯タンク15の水が利用設備で消費されるに伴い、給水管151からの低温の水の追加によって貯湯タンク15の水温が低下すると、制御部25は、貯湯タンク15の水の温度を上昇させる燃焼モードの制御を行う。すなわち、遮断弁13を開き、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料Fの供給量を増大すると共に、送風機20の送風量を増大して燃焼室2への燃焼空気の供給量を増大する。また、誘引ファン18の吸引量を増大してサイクロン集塵装置17の水熱交換器14から吸引する燃焼ガス量を増大する。更に、循環ポンプ16の送水量を増大し、水ジャケット3及び水熱交換機14に送る水の量を増大する。これにより、燃焼室2内で燃料Fが燃焼して生成される熱量が増大し、水ジャケット3及び水熱交換機14で加熱される水の量が増大し、貯湯タンク15の水温が上昇する。貯湯タンク15の水が所定温度に達すると、制御部25は、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料Fの供給量を減少させると共に、送風機20の送風量を減少させて燃焼室2への燃焼空気の供給量を減少させ、誘引ファン18の吸引量を減少させて水熱交換器14から吸引する燃焼ガス量を減少させ、循環ポンプ16の送水量を減少させる。供給コンベヤ12からスクリューコンベヤ9への燃料Fの供給を停止する場合は、遮断弁13を閉じて燃焼室2からの燃焼ガスや燃焼空気の逆流を防止する。
【0063】
温水の利用が停止したこと等により、水熱交換器14による水の加熱動作を停止する場合、制御部25は、燃焼モードの制御を停止して待機モードの制御を行う。すなわち、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料供給量を、燃焼モードにおけるよりも少なくすると共に、誘引ファン18の吸引量と送風機20の送風量を燃焼モードにおけるよりも少なくする。また、循環ポンプ16による水熱交換器14への送水を停止する。こにより、水熱交換器14への熱の供給を実質的に停止した状態で、燃焼室2に種火を保持する。このように、燃焼室2に臨む底面板6の受容部62に最小限の燃料Fを保持し、この燃料Fに種火を残すことにより、温水の使用が再開して水熱交換器14の動作が求められた場合に、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料供給量と、送風機20の送風量を増大すれば、燃料Fを迅速に着火させて燃焼室2で生成する熱量を迅速に回復することができる。すなわち、待機モードから燃焼モードに迅速に移ることができ、温水の需要に迅速に対応することができる。なお、待機モードでは、供給コンベヤ12及びスクリューコンベヤ9による燃料Fの供給は、連続的に行ってもよく、あるいは、断続的に行ってもよい。要は、種火を保持できる程度の燃料Fを供給できればよい。
【0064】
第1実施形態において、燃焼炉1は、熱機器としての水熱交換器14に熱を供給したが、他の熱機器に熱を供給してもよい。また、燃焼炉1は、燃焼室2の外周側に水ジャケット3を備えたが、水ジャケット3は無くてもよい。
【0065】
図8は、第2実施形態の燃焼炉を示す縦断面図である。本実施形態の燃焼炉100は、第1実施形態と同様に、植物系再生燃料である木質チップを燃料とする。
【0066】
第2実施形態の燃焼炉100は、円筒形状の燃焼室2と、キャスタブル耐火物で形成されて燃焼室2を取り囲む円筒形状の燃焼室壁21と、燃焼室壁21の外側面を取り囲む円筒形状の上部ケーシング31と、本体ケーシング31の外周側に高さ方向の略中央に配置された円筒環形状の上部空気室400を備える。
【0067】
燃焼室壁21と上部ケーシング31の側面には、燃焼室2内に燃焼空気を吹き出す複数の空気供給管71,72,73,74,75が貫通して固定されている。第2実施形態の燃焼炉100は、燃焼室2の軸方向に、5段の空気供給管71,72,73,74,75が配列されている。これらの空気供給管71,72,73,74,75は、内部に側部空気通路が形成され、燃焼室2の径方向又は軸方向に対して傾斜して固定されている。
【0068】
図9は、空気供給管71,・・・,75と、これらの空気供給管71,・・・,75に燃焼空気を供給する上部空気室400を示す縦断面図である。図9に示すように、上部空気室400は、互いに隔てられて上部ケーシング31を取り囲む環状の第1乃至第5空気室401,402,403,404,405を有する。これらの第1乃至第5空気室401,402,403,404,405は、第1乃至第5空気室壁411,421,431,441,451により各々形成されている。上記第1乃至第5空気室401,402,403,404,405は、空気供給管71,72,73,74,75に各々連通している。第1乃至第5空気室401,402,403,404,405は、第1乃至第5空気室壁411,421,431,441,451の円筒環形状の側面に、接線方向に延在する第1乃至第5給気管412,422,432,442,452が各々接続されている。これらの第1乃至第5給気管412,422,432,442,452を通して、矢印A11,A12,A13,A14,A15で示すように、第1乃至第5空気室401,402,403,404,405に、燃焼空気が各々供給される。第1乃至第5給気管412,422,432,442,452から、第1乃至第5空気室401,402,403,404,405に、第1乃至第5空気室壁411,421,431,441,451の側面の接線方向に燃焼空気が供給されることにより、第1乃至第5空気室401,402,403,404,405の周方向において燃焼空気の均一の流れが得られる。これにより、各空気供給管71,・・・,75から燃焼室2に供給する燃焼空気の流量が、周方向に均一となるように形成されている。
【0069】
第1乃至第5給気管412,422,432,442,452から第1乃至第5空気室401,402,403,404,405に供給する燃焼空気の流量は、第1乃至第5給気管412,422,432,442,452の間で独立して調整可能になっている。これにより、各空気供給管71,・・・,75から燃焼室2に吹き出す燃焼空気の流量が、互いに独立して調整可能になっている。
【0070】
上記第1乃至第5空気室401,402,403,404,405を通して燃焼空気が供給される空気供給管71,72,73,74,75のうち、燃焼室2の天面に最も近い第1の空気供給管71は、第1実施形態と同様に、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行であり、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して時計回りに傾斜角αを成して配置された第1旋回流管である。この第1の空気供給管71の燃焼室2の底面側に隣接する第2の空気供給管72は、第1実施形態と同様に、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の底面に向かって傾斜した下降流管である。この第2の空気供給管72の燃焼室2の底面側に隣接する第3の空気供給管73は、第1実施形態と同様に、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行であり、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して反時計回りに傾斜角βを成して配置された第2旋回流管である。この第3の空気供給管73の燃焼室2の底面側に隣接する第4の空気供給管74は、上記第2の空気供給管72と同様に、燃焼室2の中心軸の直角面に対して、燃焼室2に臨む側が燃焼室2の底面に向かって傾斜した下降流管である。この第4の空気供給管74の燃焼室2の底面側に隣接する第5の空気供給管75は、上記第1の空気供給管71と同様に、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に平行であり、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して時計回りに傾斜角αを成して配置された第1旋回流管である。
【0071】
このように、上記空気供給管71,72,73,74,75により、燃焼室2の天面側から順に、時計回りの旋回流と、下降流と、反時計回りの旋回流と、下降流と、時計回りの旋回流を、燃焼室2内に吹き出す。これらの燃焼空気の流れが燃焼室2内で混合することにより、燃焼室2の空気供給管71,72,73,74,75の配置領域及びその周辺に、燃焼空気の乱流を安定して形成するように形成されている。燃焼室2の乱流の形成領域よりも天面側には、燃料が燃焼してなる燃焼ガスの旋回流が形成され、この燃焼ガスは、排気管22を通して図示しない水熱交換器等に供給される。
【0072】
図10は、第2実施形態の燃焼炉100が有する燃焼室2の底面近傍の断面図である。本実施形態の燃焼炉100の燃焼室2底面には、燃料供給部としてのスクリューコンベヤ109と、スクリューコンベヤ109で供給された燃料を保持して回転駆動される回転受皿106が設けられている。スクリューコンベヤ109は、鉛直方向に延在し、燃焼室2の中心軸と同心位置に配置される。スクリューコンベヤ109は、筒状のケーシング91と、ケーシング91内に配置された回転駆動軸92及び搬送スクリュー93で形成され、図示しない定量供給機の供給コンベヤから供給された燃料Fを、燃焼室2の下方から底面の中心に供給するように構成されている。
【0073】
燃焼室2の底面には、スクリューコンベヤ109の先端部の周りを取り囲むように、円錐台形の回転受皿106が配置されている。回転受皿106は、径方向に延びるスリット状の複数の給気孔107,107,・・・と、周縁から径方向に延びる複数のスクレーパ108,108,・・・と、裏面に設けられた環状のラック111を有する。回転受皿106は、ベアリング110を介して下部空気室500内の支持壁503上に回動可能に支持されている。
【0074】
下部空気室500は、円筒形状の下部ケーシング501内の下側部分に形成され、底面に設けられた下部給気管502を通して、矢印A21で示すように燃焼空気が供給される。下部空気室500を区画する支持壁503の上に、回転受皿106を回転自在に支持するベアリング110が設置されている。下部空気室500の天面に設けられた通気孔505を通して、矢印A22で示すように燃焼空気が回転受皿106の下側に供給される。この燃焼空気が、矢印A23で示すように給気孔107を通り、回転受皿106の上側に吹き出し、この回転受皿106上の燃料に燃焼空気を供給するようになっている。
【0075】
下部ケーシング501内には、回転受皿106の裏面に設けられたラック111に噛合するピニオン112が配置されている。このピニオン112は、下部ケーシング501の外側に配置されたモータ113の出力軸に接続されている。こおモータ113の回転力がピニオン112を介してラック111に伝達され、回転受皿106が回転駆動されるようになっている。
【0076】
回転受皿106の周縁に設けられたスクレーパ108は、回転受皿106の径方向に延びる支持回転軸と、この支持回転軸回りに回動可能に形成された矩形のスクレーパ本体で形成されている。スクレーパ108は、下部ケーシング501の内側面から内径側に張り出して形成された環状樋506の内側に嵌合しており、回転受皿106が回転駆動されるに伴い、環状樋506の内側を摺動するように形成されている。環状樋506の底面には、図示しない灰出し孔が設けられている。環状樋506内には、円錐台形の回転受皿106の上側面から外径側に移動した燃料の灰等が落下する。この灰等を、回転受皿106と共に回動するスクレーパ108が収集し、灰出し孔から外部へ排出するようになっている。
【0077】
第2実施形態の燃焼炉100は、5段の空気供給管71,72,73,74,75が、燃焼室2の軸方向に隣接する空気供給管71,72,73,74,75から吹き出す燃焼空気の流れの方向が互いに異なると共に、燃焼室2の軸方向の天面側と底面側の空気供給管71,75からの燃焼空気の流れが互いに同じ方向であり、かつ、燃焼室2の軸方向の中央の空気供給管73からの燃焼空気の流れが、天面側及び底面側の空気供給管71,75からの燃焼空気の流れと反対側である。さらに、これらの燃焼室2の軸方向における天面側、中央及び底面側の空気供給管71,73,75の間の空気供給管72,74による燃焼空気の流れは、燃焼室2の底面側である。これにより、燃焼室2内に、安定した燃焼空気の乱流を形成することができ、燃料を安定して完全燃焼することができる。
【0078】
本実施形態において、5段の空気供給管71,72,73,74,75に第1乃至第5給気管412,422,432,442,452から第1乃至第5空気室401,402,403,404,405を介して燃焼空気を個別に供給したが、単一の空気供給管から単一又は複数の空気室を介して空気供給管71,72,73,74,75に燃焼空気を供給してもよい。また、5段の空気供給管71,72,73,74,75が吹き出す燃焼空気の量を適宜変更し、燃焼室2内に形成する燃焼空気の乱流の形態を変更してもよい。また、燃焼室2内には、乱流に限らず、第1旋回流管による第1の空気供給管71のみから燃焼空気を吹き出して旋回流のみを形成したり、下降流管による第2の空気供給管72のみから燃焼空気を吹き出して下降流のみを形成したり、第2旋回流管による第3の空気供給管73のみから燃焼空気を吹き出して旋回流のみを形成してもよい。
【0079】
また、空気供給管として、燃焼室2の中心軸と直角をなす面に対して傾斜し、かつ、燃焼室2の中心軸方向視において径方向に対して傾斜して配置され、上昇かつ旋回方向や、下降かつ旋回方向に燃焼空気を吹き出す管を用いてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態では、燃焼室2の中心軸に対して傾斜して配置され、燃焼室2の側面から燃料を供給するスクリューコンベヤ9を燃料供給部として設置し、上記第2実施形態では、燃焼室2の中心軸と同心に配置され、燃焼室2の底面から燃料を供給するスクリューコンベヤ109を燃料供給部として設置したが、燃料供給部の形態はこれらに限定されない。
【0081】
また、上記第1実施形態では3段の空気供給管71,72,73を配置し、第2実施形態では5段の空気供給管71,72,73,74,75を配置したが、空気供給管の段数はこれらに限定されず、2段以上の何段であってもよい。また、各段に設置する空気供給管の種類は、燃焼室2内に形成すべき乱流の程度に応じて適宜設定することができる。
【0082】
また、上記実施形態において、植物系再生燃料として、木質チップからなる燃料を用いたが、木質ペレット等のように、植物系の材料を成型した再生燃料を用いてもよい。植物系の材料としては、オガ屑、木屑、間伐材及び剪定材等の木質系材料や、稲藁、籾殻、雑草及びバガス等の農業系材料や、建設廃材等の廃棄物系材料や、古紙や廃パルプ等の紙系材料がある。また、植物系再生燃料は、例えばRPFのように、一部に植物系の材料を用いた燃料であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 燃焼炉
2 燃焼室
4 上部空気室
6 底面板
9 スクリューコンベヤ
61 底面板の貫通孔
71,72,73 空気供給管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物系再生燃料を燃焼するための燃焼炉であって、
円筒形状の燃焼室と、
上記燃焼室の側面に設けられ、上記燃焼室の径方向に関して互いに異なる方向に燃焼空気を吹き出す複数の側部空気通路と
を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記側部空気通路は、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の一方側に傾斜した第1空気通路と、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の他方側に傾斜した第2空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の底面側に傾斜した第3空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の天面側に傾斜した第4空気通路のうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする燃焼炉。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記側部空気通路は、上記燃焼室を区画する壁を貫通して配置された複数の空気供給管で形成されていることを特徴とする燃焼炉。
【請求項4】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の外周側に設けられると共に上記側部空気通路に連通し、この側部空気通路を通して上記燃焼室に吹き出す燃焼空気が供給される空気室を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項5】
請求項4に記載の燃焼炉において、
上記空気室は、円筒環形状を有し、この円筒環形状の空気室の側面の接線方向に燃焼空気が供給されることを特徴とする燃焼炉。
【請求項6】
請求項4に記載の燃焼炉において、
上記空気室は、複数の上記側部空気通路に対応して複数個設けられていることを特徴とする燃焼炉。
【請求項7】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃焼空気を吹き出す底部空気通路を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項8】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の上記側部空気通路が設置された位置よりも底面側に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項9】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項1】
植物系再生燃料を燃焼するための燃焼炉であって、
円筒形状の燃焼室と、
上記燃焼室の側面に設けられ、上記燃焼室の径方向に関して互いに異なる方向に燃焼空気を吹き出す複数の側部空気通路と
を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記側部空気通路は、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の一方側に傾斜した第1空気通路と、上記燃焼室の軸直角面内で径方向の他方側に傾斜した第2空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の底面側に傾斜した第3空気通路と、上記燃焼室の軸包含面内で燃焼室の天面側に傾斜した第4空気通路のうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする燃焼炉。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記側部空気通路は、上記燃焼室を区画する壁を貫通して配置された複数の空気供給管で形成されていることを特徴とする燃焼炉。
【請求項4】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の外周側に設けられると共に上記側部空気通路に連通し、この側部空気通路を通して上記燃焼室に吹き出す燃焼空気が供給される空気室を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項5】
請求項4に記載の燃焼炉において、
上記空気室は、円筒環形状を有し、この円筒環形状の空気室の側面の接線方向に燃焼空気が供給されることを特徴とする燃焼炉。
【請求項6】
請求項4に記載の燃焼炉において、
上記空気室は、複数の上記側部空気通路に対応して複数個設けられていることを特徴とする燃焼炉。
【請求項7】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃焼空気を吹き出す底部空気通路を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項8】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の上記側部空気通路が設置された位置よりも底面側に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備えることを特徴とする燃焼炉。
【請求項9】
請求項1に記載の燃焼炉において、
上記燃焼室の底面に、上記燃焼室内に燃料を供給する燃料供給口を備えることを特徴とする燃焼炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−79733(P2013−79733A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218439(P2011−218439)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】
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