説明

燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器

【課題】 気温の変化に対応して空気供給量を補正し、適正な燃焼を行うことのできる熱機器を提供する。
【解決手段】 燃料を燃料ノズル4から噴射するとともに、送風機5からの燃焼用空気を空気噴射口6から噴射して燃焼を行う燃焼装置2と、燃焼装置2へ供給する燃料供給量及び燃焼用空気供給量を制御する燃焼制御装置10を持ち、燃料供給量と燃焼用空気供給量を増減することによって燃焼量の段階的な変更を可能としている熱機器において、空気噴射口6より上流側の燃焼用空気供給圧力と空気噴射口より下流側の炉内圧力の差圧である検出差圧(Ps)を検出する差圧検出装置3と、空気噴射口6より上流側の燃焼用空気供給温度である検出温度(Ta)を検出する給気温度検出装置9を設けておき、検出温度(Ta)の値に基づいて適正な燃焼用空気供給量決定に必要な目標差圧値を算出し、検出差圧(Pa)が目標差圧値に近づくように燃焼用空気の供給量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給量と燃焼用空気供給量を調節することで燃焼量の変更を行う熱機器であって、燃焼用空気供給温度に応じて燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料供給量及び燃焼用空気供給量を増減することで燃焼量を変更する熱機器が広く普及している。燃焼量を高燃焼・低燃焼・停止の3位置で変更する場合には、高燃焼用燃料供給量及び高燃焼用空気供給量と、低燃焼用燃料供給量及び低燃焼用空気供給量を設定しておき、燃料供給量の大小と空気供給量の大小を切り替えることで燃焼量を変更する。
高燃焼の場合には燃料供給量と燃焼用空気供給量を多くし、低燃焼の場合には燃料供給量と燃焼用空気供給量を少なくしており、それぞれの燃焼量で適正な量を供給することで、燃料と空気の比率が適正となるように設定している。
【0003】
しかしながら、実際には気温の変化等によって燃料と空気の比率にズレが生じていた。つまり、気温が上昇する夏季の場合には空気膨張によって空気密度が低下し、逆に気温が低下する冬季の場合には空気の収縮によって空気密度が上昇する。そのため夏季には、送風機から送っている燃焼用空気の風量が一定であっても一定容積内に含まれる酸素量は少なくなっているため、空気量(酸素量)が不足することになる。同様に冬季の場合には、一定容積内に含まれる酸素量が多くなるため、空気量(酸素量)が過剰となっていた。
【0004】
特願2003−362507号には、空気噴射口より上流側における燃焼用空気の供給圧力P1と空気噴射口より下流側の炉内圧力P2の差圧ΔPに基づいて、燃焼用空気供給量を調節することの記載がある。しかし、差圧が基準範囲内となるように風量調節を行っても、前記理由によって空気密度の低い夏季には空気量が不足し、空気密度の高い冬季には空気量が過剰となる問題が発生することがあった。
【0005】
【特許文献1】特願2003−362507号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、気温の変化に対応して空気供給量を補正し、適正な燃焼を行うことのできる熱機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、燃料供給ラインから送られてきた燃料を燃料ノズルから噴射するとともに、送風機から送られてきた燃焼用空気を空気噴射口から噴射することで燃料と燃焼用空気を混合して燃焼を行う燃焼装置と、燃焼装置へ供給する燃料供給量及び燃焼用空気供給量を制御する燃焼制御装置を持ち、燃焼制御装置には燃料供給量及び燃焼用空気供給量を段階的に設定しておき、燃料供給量と燃焼用空気供給量を増減することによって燃焼量の段階的な変更を可能としている熱機器において、
空気噴射口より上流側の燃焼用空気供給圧力と空気噴射口より下流側の炉内圧力の差圧である検出差圧(Ps)を検出する差圧検出装置と、空気噴射口より上流側の燃焼用空気供給温度である検出温度(Ta)を検出する給気温度検出装置を設けておき、給気温度検出装置にて検出する検出温度(Ta)の値に基づいて適正な燃焼用空気供給量決定に必要な目標差圧値を算出し、差圧検出装置にて検出している検出差圧(Pa)が目標差圧値に近づくように燃焼用空気の供給量を補正することを特徴とする燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、基準となる燃焼用空気の供給温度である基準温度(Tr)と、基準となる燃焼用空気の供給圧力と炉内圧力の差圧値である基準差圧(Pr)をあらかじめ設定しておき、
【数2】

に基づき目標差圧値の算出を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、燃焼量を高燃焼と低燃焼で切り替える場合には、先に燃焼用空気供給量の変更を開始し、燃焼用空気供給量の変更途中で燃料供給量の変更を行うように定めた熱機器であって、目標差圧値に基づいて燃焼用空気供給量の補正を行った場合には、燃焼用空気供給量の補正に連動させて燃焼量を変更する際に燃料供給量を変更するタイミングの補正を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、燃焼用空気の補正には所定の補正可能幅を設定しておき、補正可能幅の限界値に達しても検出差圧(Ps)が目標差圧値に到達しなかった場合には機器に異常が発生しているとの判定を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、差圧検出装置にて検出した検出差圧(Ps)が所定の範囲から外れる異常な値であった場合、差圧検出装置の異常であると判定し、差圧に基づく燃焼用空気供給量の補正を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明を実施することで、気温の変化によって空気の密度に変化が生じても、燃焼用空気供給量を補正して酸素量を調節することで適正な燃焼を行うことができる。また、燃焼用空気供給量の補正に連動して燃料供給量の増減を切り替えるタイミングを変更するので、燃焼状態が不安定になりやすい燃焼量変更時にも安定した燃焼を行うことができる。
【0013】
なお、差圧検出装置に異常が発生して正しい値を検出することができなくなった場合、誤った値に基づいて燃焼用空気供給量を調節したのではかえって異常な燃焼を招くことになるため、差圧検出装置の異常時には差圧に基づく燃焼用空気供給量の補正を中止することで燃焼の異常を防ぐ。また、燃焼用空気供給量を限界値まで補正しても目標差圧値とならなかった場合、異常が発生していると判定するので、ススによる閉塞などの異常を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明を実施しているボイラの概要を示した構成図、図2は本発明を実施しているボイラの燃焼用空気供給量補正のフローチャートである。ボイラ1は上部に燃焼装置2と送風機5を設けており、燃焼装置2には燃料ノズル4と空気噴射口6を設けている。送風機5と燃焼装置2の間にはウインドボックス11を設け、送風機5からの空気はウインドボックス11を通って燃焼装置2へと向かうようにしている。燃料ノズル4は燃料供給ライン15を通して送られてきた燃料を炉内13へ噴射し、空気噴射口6はウインドボックス11を通して送られてきた空気を炉内13へ噴射するものであり、炉内13で燃料と燃焼用空気を混合して燃焼を行う。
【0015】
ウインドボックス11に燃焼用空気の供給圧力(ウインドボックス圧)を検出する供給圧力検出装置7、炉内13には炉内圧力検出装置8を設ける。供給圧力検出装置7と炉内圧力検出装置8は差圧検出装置3の一部であり、差圧検出装置3は燃焼用空気供給圧力から炉内圧力を減算することで差圧(検出差圧(Ps))を検出する。検出した検出差圧(Ps)は、燃焼制御装置10へ出力する。ウインドボックス11には、燃焼用空気の供給温度(検出温度(Ta))を検出する給気温度検出装置9も設けており、給気温度検出装置9で検出した検出温度(Ta)も燃焼制御装置10へ出力するようにしている。
【0016】
燃焼制御装置10は、燃料供給量や燃焼用空気供給量の調節など燃焼の制御を行うものであり、燃料供給ライン15に設けている燃料供給量制御装置14と、送風機5の運転を制御する送風機回転速度制御装置であるインバータ装置12とも接続しておく。ボイラ1の運転を行う場合は、燃焼制御装置10が燃料供給量制御装置14とインバータ装置12の制御を行う。
【0017】
燃焼量を高燃焼・低燃焼・停止の3位置で変更するボイラの場合、燃焼制御装置10では高燃焼用燃料供給量及び高燃焼用空気供給量と、低燃焼用燃料供給量及び低燃焼用空気供給量を設定しておき、燃料供給量の大小と空気供給量の大小を切り替えることで燃焼量を変更する。ボイラの運転制御は、蒸気発生量の少ない低燃焼時に保有している蒸気の圧力値が設定値以下まで低下すると、燃焼量を低燃焼から高燃焼へ増加することで蒸気の発生量を増加し、蒸気発生量の多い高燃焼時に蒸気圧力値が設定値以上まで上昇すると、燃焼量を高燃焼から低燃焼へ減少する制御を行う。
【0018】
燃焼用空気供給量は、インバータ装置12から出力する周波数を増減して送風機の回転速度を変更することで燃焼用空気供給量を調節しているため、高燃焼用の周波数と低燃焼用の周波数を設定しておく。また、燃焼量を高燃焼と低燃焼で切り替える場合に燃料供給量を変更するタイミングの周波数を設定しておく。燃焼量切替用の設定値は、燃焼量を低燃焼から高燃焼へ切り替える場合に燃料供給量を増加するタイミングを定めた設定値の方が、燃焼量を高燃焼から低燃焼へ切り替える場合に燃料供給量を減少するタイミングの設定値よりも低い値とする。
【0019】
周波数の設定は、初期値として、例えば高燃焼用の周波数を55Hz、低燃焼用の周波数を30Hzとし、低燃焼から高燃焼への燃焼量変更時において燃料供給量を増加する周波数を35Hz、高燃焼から低燃焼への燃焼量変更時において燃料供給量を減少する周波数を50Hzというふうに設定しておく。
【0020】
低燃焼から高燃焼へ移行する場合、燃焼制御装置10は、まずインバータ装置12に対して低燃焼用の周波数から高燃焼用の周波数へ出力周波数を増加させる指令の出力を行い、インバータ装置12の出力周波数を増加させる。燃焼制御装置10ではインバータ装置12から出力している周波数を検出しておき、インバータ装置12による出力周波数が、低燃焼から高燃焼へ燃料供給量を変更する設定値である35Hzに達すると、燃焼制御装置10は燃料供給量制御装置14に対して燃料供給量を増加する指令を出力する。同様に、高燃焼から低燃焼へ移行する場合、燃焼制御装置10は、まずインバータ装置12に対して高燃焼用の周波数から低燃焼用の周波数へ出力周波数を減少させる指令の出力を行い、インバータ装置12の出力周波数を減少させる。インバータ装置12による出力周波数が高燃焼から低燃焼へ燃料供給量を変更する設定値である50Hzに達すると、燃料供給量制御装置14に対して燃料供給量を減少する指令を出力する。
【0021】
周波数の設定値は燃焼用空気供給温度が一定であれば変更する必要はないが、燃焼用空気供給温度は季節によって変化し、適切な燃焼用空気供給量が変化するため、燃焼用空気供給量を補正する。燃焼制御装置10は、給気温度検出装置9によって検出する検出温度(Ta)に基づいて目標差圧値を算出し、差圧検出装置3にて検出している検出差圧(Ps)が目標差圧値に近づくように燃焼用空気供給量を調節する。
【0022】
目標差圧値の算出には、基準となる燃焼用空気の温度を基準温度(Tr)とし、基準となる燃焼用空気の供給圧力と炉内圧力の差圧を基準差圧(Pr)としてあらかじめ定めておき、次式に基づいて目標差圧値の決定を行う。
【数3】

ボイラ毎の設置環境には差があるため、ボイラ設置時に燃焼調整を行い、ボイラごとに適切となる燃焼用空気供給量を設定するようにしている。そのため、基準温度(Tr)は燃焼調整時における燃焼用空気の供給温度、基準差圧(Pr)は燃焼調整時における燃焼用空気の供給圧力と炉内圧力の差圧とし、燃焼調整時点で各基準値を燃焼制御装置10に入力する。基準差圧(Pr)と基準温度(Tr)は、高燃焼用と低燃焼用でそれぞれ設定しておき、高燃焼の場合は高燃焼用基準差圧(PrH)と高燃焼用基準温度(TrH)、低燃焼の場合は低燃焼用基準差圧(PrL)と低燃焼用基準温度(TrL)としておく。
【0023】
一定圧力の気体の体積は絶対温度に比例し、差圧は供給する気体体積の二乗に比例するため、絶対温度に換算した検出温度値を絶対温度に換算した基準温度値で割り、その値を二乗したものに基準差圧(Pr)を掛けることで、目標差圧値が求まる。目標差圧値となるように燃焼用空気供給量を調節すれば、気温の変化によって空気の密度が変化していても必要な酸素量を供給することができる。燃焼制御装置10は、給気温度検出装置9で検出している検出温度(Ta)と、あらかじめ設定しておいた基準差圧(Pr)及び基準温度(Tr)を目標差圧値算出式に代入することによって目標差圧値を算出する。
【0024】
燃焼制御装置10は、差圧検出装置3によって検出している検出差圧(Ps)を算出式から算出した目標差圧値と比較することで、燃焼用空気供給量の補正が必要であるか否かを判定する。燃焼制御装置10では、検出差圧(Ps)が目標差圧値より0.1kPa以上低い場合にはインバータ装置12からの出力周波数を増加する制御を行い、検出差圧(Ps)と目標差圧値の差をなくすように燃焼用空気供給量を増加させる。逆に、検出差圧(Ps)が目標差圧値より0.1kPa以上高い場合にはインバータ装置12からの出力周波数を減少する制御を行い、検出差圧(Ps)と目標差圧値の差をなくするように燃焼用空気供給量を減少させる。
【0025】
例えば、高燃焼時において、高燃焼用基準差圧(PrH)=4.0kPa、高燃焼用基準温度(TrH)=20℃、検出温度(Ta)=30℃、検出差圧(Ps)=4.0kPaであったとする。目標差圧値算出式に前記の各値を代入すると、目標差圧値=4.0×((30+273/(20+273)) となり、計算すると目標差圧値=4.28kPaとなる。現在の差圧である検出差圧(Ps)は4.0kPaであり、目標差圧値の4.28kPaよりも0.28kPa低いことが分かる。
【0026】
このケースでは、燃焼調整時よりも気温が上昇しており、燃焼用空気量を増加しなければ酸素量が不足することになるため、燃焼制御装置10はインバータ装置12の出力周波数を増加する制御を行う。インバータ装置12の出力周波数を増加すれば送風機5の回転数が増加し、供給する燃焼用空気量が多くなるため、供給酸素量が増加する。また燃焼用空気供給量を増加すればウインドボックス11での圧力も増加するため、ウインドボックス11と炉内13の差圧(検出差圧(Ps))は増加していく。
【0027】
インバータ装置12による出力周波数は0.1Hz刻みで増加していき、出力周波数を増加した状態で差圧の検出を行う。差圧検出装置3にて検出する検出差圧(Ps)が目標差圧値に達していなければれば、さらにインバータ装置12からの出力周波数を増加し、目標差圧値に達するするまで送風機の出力周波数を上昇させていく。なお、検出差圧(Ps)と目標差圧値が完全に一致する必要はなく、検出差圧(Ps)と目標差圧値の差が一定量より小さく(例:0.1kPa未満)なれば、両者は等しくなったと判断してもよい。
【0028】
本実施例では、高燃焼の初期設定周波数は55Hzとしていたため、燃焼制御装置10ではまずインバータ装置12の出力する周波数を55Hzから55.1Hzへと補正し、この状態で差圧検出装置3によって検出差圧(Ps)の検出を行う。インバータ装置12の周波数を55.1Hzに補正すると、空気供給量が増加するため検出差圧(Ps)は増加し、この状態において検出差圧(Ps)が目標差圧値に達したか否かを判定する。周波数を0.1Hz増加したことで検出差圧(Ps)が0.05KPa増加したとすると、この時の検出差圧(Ps)は4.05KPaとなるが、依然として検出差圧(Ps)は目標差圧値より低いため、再びインバータ装置12の周波数を増加する。差圧の検出と周波数の変更は1秒程度の間隔を開けて繰り返し、検出差圧(Ps)が目標差圧値に達するまで行う。
【0029】
気温が上昇すると、空気は膨張して密度が低下するため、圧力と容積が同じであれば酸素含有量は少なくなる。送風機の回転速度が一定であった場合、送風機によって送り込む燃焼用空気の容積量は一定となるため、気温の上昇によって空気の密度が低下した分だけ酸素量が不足することになっていた。インバータ装置12の出力周波数を増加すると、送風機5の回転速度が増加するため、送風機5から供給している燃焼空気量を増加することができる。密度の低下によって酸素含有量が低下していても、燃焼用空気供給量の増加によって酸素量を増やすことで、適正量の酸素を供給することができ、適正な燃焼が行える。
【0030】
高燃焼の周波数を0.5Hz増加して55.5Hzに補正することで、検出差圧(Ps)が目標差圧値にほぼ等しくなったとすると、燃焼制御装置10ではインバータ装置12の出力周波数を変更する操作を終了する。また燃焼制御装置10では、高燃焼から低燃焼へ変更する際に燃料供給量を変更する設定値も同じ0.5Hzだけ増加する補正を行っておく。高燃焼から低燃焼へ変更する際に燃料供給量を減少するタイミングは、高燃焼時の燃焼用空気供給量より一定量分低い値であるため、高燃焼時の燃焼用空気供給量を変更した場合には、高燃焼から低燃焼へ変更する際に燃料供給量を減少するタイミングも変更しておかないと、燃焼量変更時に空燃比のバランスが崩れるおそれがある。そのため、高燃焼用燃料供給量から低燃焼燃料供給量へ変更する設定値も0.5Hz増加して50.5Hzとしておく。この状態で蒸気圧力値の上昇によって高燃焼から低燃焼への燃焼移行を行う場合、燃焼制御装置10はまずインバータ装置12の出力周波数を55.5Hzから30Hzへ変更する指令を出力する。燃焼制御装置10ではインバータ装置12からの出力周波数を検出しておき、出力周波数が50.5Hzに達したことを検出すると、燃料供給量制御装置14に対して燃料供給量を減少する指令を出力する制御を行う。
【0031】
低燃焼の場合も同様であり、例えば低燃焼用基準差圧(PrL)=1.0kPa、低燃焼用基準温度(TrL)=20℃、検出温度(Ta)=30℃、検出差圧(Ps)=1.0kPaであったとする。目標差圧値算出式に前記の各値を代入すると、目標差圧値=1.0kPa×((30+273/(20+273)) となり、計算すると目標差圧値=1.07kPaとなる。検出差圧(Ps)は1.0kPaであり、目標差圧値の1.07kPaよりも0.07kPa低いので厳密には酸素の割合が少なくなっているのであるが、目標差圧値と検出差圧(Ps)の差が0.1kPa未満の場合、空燃比はほぼ適正であると判断することができるため、この場合には燃焼用空気供給量の補正は不要である。
【0032】
低燃焼から高燃焼へ変更する際に燃料供給量を増加するタイミングは、低燃焼時の燃焼用空気供給量より一定量分高い値であるため、低燃焼時の燃焼用空気供給量を変更する場合には、低燃焼から高燃焼へ変更する際に燃料供給量を増加するタイミングも変更しておかないと、燃焼量変更時に空燃比のバランスが崩れるおそれがある。そのため、低燃焼の周波数を変更した場合には、低燃焼から高燃焼へ変更する際に燃料供給量を増加する設定値も同じ幅分だけずらす補正を行うが、本実施例では低燃焼の周波数は変更していないため、燃料供給量を増加するタイミングを定めた設定値は変更しない。
【0033】
また、燃焼制御装置10にはインバータ周波数の変動可能幅を設定しておき、変動可能幅の限界に達しても検出差圧(Ps)が目標差圧値に達しなかった場合には、異常発生との判定を行う。低燃焼時周波数の最大値と最小値及び、高燃焼時周波数の最大値と最小値を設定しておき、周波数が各燃焼状態での限界値に達しても検出差圧(Ps)が目標差圧値に達しなかった場合には、点検表示を出力するようにしておく。変動幅を±5Hzとしていた場合には、初期値から±5Hzまでは増減するが、±5Hzに達するとそれ以上に周波数変更は行わない。変動幅の限界までインバータ装置12の周波数を変更しても検出差圧(Ps)が目標差圧値に達しないということは、ススの付着によって燃焼ガス流路がふさがれたことによって炉内圧力が異常に上昇したなど、何らかの異常が発生していると考えられるため、この場合には点検表示灯を点滅させるなどして異常を報知する。
【0034】
検出差圧(Ps)にも検出幅を設定しておき、供給圧力検出装置7及び炉内圧力検出装置8で検出した圧力の差圧が検出幅を外れた場合(ノイズを防ぐため一定時間継続して外れた場合)にも異常発生との判定を行う。低燃焼時と高燃焼時でそれぞれ正常と判断できる検出幅を設定しておき、各燃焼状態において検出差圧(Ps)の値が検出幅を外れた場合、供給圧力検出装置7又は炉内圧力検出装置8のいずれかに異常が発生したと考えることができる。異常な差圧検出装置3による誤った検出値に基づいて燃焼用空気供給量を調節したのではかえって異常な燃焼を招くことになるため、差圧検出装置3の異常発生時には差圧に基づく燃焼用空気供給量の変更を中止することで燃焼状態が異常になることを防ぐ。供給圧力検出装置7又は炉内圧力検出装置8に異常が発生し、正しい差圧を検出できなくなった場合、差圧に基づく燃焼用空気供給量の補正は中止するが、ボイラの運転まで停止する必要はないため、最初に設定しておいた燃焼用空気供給量でボイラの運転を行う。この場合、風量の補正を行っていない通常のボイラと同じになるため、点検表示灯を点滅させるなどして異常を報知する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を実施しているボイラの構成図
【図2】本発明の燃焼用空気供給量補正のフローチャート
【符号の説明】
【0036】
1 ボイラ
2 燃焼装置
3 差圧検出装置
4 燃料ノズル
5 送風機
6 空気噴射口
7 供給圧力検出装置
8 炉内圧力検出装置
9 給気温度検出装置
10 燃焼制御装置
11 ウインドボックス
12 インバータ装置
13 炉内
14 燃料供給量制御装置
15 燃料供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給ラインから送られてきた燃料を燃料ノズルから噴射するとともに、送風機から送られてきた燃焼用空気を空気噴射口から噴射することで燃料と燃焼用空気を混合して燃焼を行う燃焼装置と、燃焼装置へ供給する燃料供給量及び燃焼用空気供給量を制御する燃焼制御装置を持ち、燃焼制御装置には燃料供給量及び燃焼用空気供給量を段階的に設定しておき、燃料供給量と燃焼用空気供給量を増減することによって燃焼量の段階的な変更を可能としている熱機器において、
空気噴射口より上流側の燃焼用空気供給圧力と空気噴射口より下流側の炉内圧力の差圧である検出差圧(Ps)を検出する差圧検出装置と、空気噴射口より上流側の燃焼用空気供給温度である検出温度(Ta)を検出する給気温度検出装置を設けておき、給気温度検出装置にて検出する検出温度(Ta)の値に基づいて適正な燃焼用空気供給量決定に必要な目標差圧値を算出し、差圧検出装置にて検出している検出差圧(Pa)が目標差圧値に近づくように燃焼用空気の供給量を補正することを特徴とする燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、基準となる燃焼用空気の供給温度である基準温度(Tr)と、基準となる燃焼用空気の供給圧力と炉内圧力の差圧値である基準差圧(Pr)をあらかじめ設定しておき、
【数1】

に基づき目標差圧値の算出を行うことを特徴とする燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、燃焼量を高燃焼と低燃焼で切り替える場合には、先に燃焼用空気供給量の変更を開始し、燃焼用空気供給量の変更途中で燃料供給量の変更を行うように定めた熱機器であって、目標差圧値に基づいて燃焼用空気供給量の補正を行った場合には、燃焼用空気供給量の補正に連動させて燃焼量を変更する際に燃料供給量を変更するタイミングの補正を行うことを特徴とする燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、燃焼用空気の補正には所定の補正可能幅を設定しておき、補正可能幅の限界値に達しても検出差圧(Ps)が目標差圧値に到達しなかった場合には機器に異常が発生しているとの判定を行うことを特徴とする燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器において、差圧検出装置にて検出した検出差圧(Ps)が所定の範囲から外れる異常な値であった場合、差圧検出装置の異常であると判定し、差圧に基づく燃焼用空気供給量の補正を中止することを特徴とする燃焼用空気供給量の調節を行う熱機器。

【図1】
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【図2】
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