説明

燃焼装置およびジャケット

【課題】破損リスクの増大化、装置の大型化、およびメンテナンス性の低下を防ぎつつ、熱効率を向上させることができる燃焼装置およびジャケットを提供することにある。
【解決手段】燃焼装置本体2から放熱される熱を利用して保温空間18内の空気を加熱し、当該加熱された空気を燃焼器7内に送る。従って、本発明では、保温空間18内の空気を燃焼用空気として用いることとなるので、熱損失を低減でき、熱効率を向上させることができる。加えて、燃焼装置本体2内に設けられる断熱材14の厚みを、熱効率の向上のために厚くする必要がなくなるので、断熱材14の破損リスクの増大化、当該装置1の大型化、およびメンテナンス性の低下を防ぐことができる。加えて、本発明は、既存の燃焼装置をジャケット3で覆うなどして改修することで実現できるので、既存の燃焼装置の熱効率を比較的安価にかつ安全に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置およびジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
〔燃焼装置〕
燃焼装置とは、発熱量を持つ気体、液体、固体を、概ね大気圧の2倍を超えない範囲の圧力で酸化させる燃焼器を備えた装置のことを言う。このような燃焼装置としては、発熱量を持つ物質自身の減量の為に当該物質を燃焼させる焼却炉や、大気中の有機系有害物を酸化処理する脱臭炉などのほか、外燃機関の構成要素であり、燃焼器を熱源として用いるボイラが良く知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、外燃機関とは、作動媒体に熱源から熱エネルギーを供給し、作動媒体を膨張・収縮等させることにより熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、この作動媒体の有する運動エネルギーを利用して機械仕事を得る機関のことをいう。例えば外燃機関としては、燃焼器の熱により水を気化させて蒸気を出力するボイラと、ボイラから出力される蒸気を用いて機械仕事を取り出す蒸気タービン等の取出部とを備えた発電所などを挙げることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−322672号公報
【0004】
〔断熱材、耐火材〕
燃焼器内では、通常800〜1500℃の範囲で酸化反応が進行する。また、流動床や蓄熱式等の低温酸化法の燃焼器の場合には、200〜800℃の範囲で酸化反応が進行する。このように、燃焼器内では高熱が発生するが、熱効率を向上させるためには、燃焼器の壁面を断熱材や耐火材などの低熱伝導物質で構成し、燃焼器内を保温する必要がある。
【0005】
〔水冷壁〕
しかしながら、単に燃焼器の壁面を断熱材で構成した場合には、断熱材が高温となりすぎてしまい、断熱材の耐久性の維持が図れない。そこで、通常、ボイラにおいては、燃焼器の壁面の一部を水管チューブで構成し、水管チューブ内に作動媒体としての水を流通させることにより、作動媒体である水への熱エネルギーの供給、壁面の耐久性の維持、および燃焼器内を保温することによる熱効率の向上を図っている。このように、一部が水管チューブにより構成された壁面を水冷壁という。また、水管チューブ内に水以外の液体を流通させる壁面の場合も、一般的には断熱材で覆われた燃焼器と区別する為に水冷壁と呼ばれている。
【0006】
〔丸ボイラ〕
燃焼器の壁面を作動媒体への伝熱面として用いたボイラとしては丸ボイラが知られている。丸ボイラは、作動媒体であるボイラ水を保持する円筒形の鋼板容器と、鋼板容器を貫通するように、かつボイラ水の中に設けられた炉筒とを備えている。炉筒が燃焼器を構成する。この炉筒内を進行する燃焼ガスの熱は、炉筒の壁面を介してボイラ水に供給される。このような丸ボイラでは、ボイラ水を保持する鋼板容器の周囲を断熱材で覆い、ボイラ水を保温することにより、熱効率の向上を図っている。
【0007】
〔熱損失法による熱効率〕
ここで熱効率ηは、熱損失法では、排ガス損失エネルギー(排ガスエンタルピー−燃焼用空気エンタルピー)をGE、燃料の持つエネルギーをH、排ガス以外による損失(装置損失)をαとした時に、η=(H−GE−α)/H×100で表される。装置損失αは、小型装置に関しては測定が容易であるが、大型装置の場合には推定が難しい。
【0008】
〔入出力法による熱効率〕
一方熱効率ηは、入出力法では、熱エネルギーを燃料エネルギーで除算することで求められる。この入出力法においては、前述の排ガス損失エネルギーGEおよび装置損失αを含んだ真の熱効率ηを求める事ができるが、熱エネルギーを受け取る対象物の量や温度変化等が正確には判らない場合には誤差が大きくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
〔燃焼装置の熱損失対策〕
前述したように、焼却炉や脱臭炉、およびボイラなどの燃焼装置は、通常、断熱材で保温され、表面温度が80〜200℃以内となるように設計されている。そして、断熱材によって放熱を防ぐことにより、熱効率を向上させている。しかしながら、いまだ装置損失が熱効率の1〜15%もある。
【0010】
〔断熱材の厚みを増すことによる問題〕
そこで、壁面を構成する断熱材の厚みを厚くし、壁面の熱伝導率をさらに下げることにより、熱損失を低減させて熱効率を向上させることが考えられる。しかしながら、この場合、断熱材の厚みが増すため、断熱材に熱膨張差が生じ、断熱材の破損リスクが増えてしまうという問題や、装置が大型化してしまうという問題、メンテナンス性が損なわれてしまうという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、破損リスクの増大化、装置の大型化、およびメンテナンス性の低下を防ぎつつ、熱効率を向上させることができる燃焼装置、およびジャケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る燃焼装置は、内部で燃料を燃焼させる燃焼器、および前記燃焼器に空気を供給する空気供給手段を有する燃焼装置本体と、断熱性および可撓性を有するとともに、前記燃焼装置本体を覆い、前記燃焼装置本体との間に保温空間を形成するジャケットと、前記燃焼装置本体からの放熱により加熱された前記保温空間内の空気を、前記空気供給手段が取り入れるための空気取り入れ手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明によれば、燃焼装置本体から放熱される熱を利用して保温空間内の空気を加熱し、当該加熱された空気を、空気供給手段が空気取り入れ手段を介して取り入れて燃焼器内に送る。従って、本発明では、保温空間内の空気を燃焼用空気として用いることとなるので、熱損失を低減でき、熱効率を向上させることができる。
加えて、燃焼装置本体内に設けられる断熱材の厚みを、熱効率の向上のために厚くする必要がなくなるので、断熱材の破損リスクの増大化、当該装置の大型化、およびメンテナンス性の低下を防ぐことができる。
また、保温空間内の空気が燃焼器に送られることで、ジャケットと燃焼装置本体との間が換気されるので、燃焼装置本体の表面が高温になりすぎることを防止でき、信頼性を良好に維持できる。
さらに、本発明は、既存の燃焼装置(本発明の燃焼装置本体に相当)をジャケットで覆うなどして改修することで実現できるので、既存の燃焼装置の熱効率を比較的安価にかつ安全に向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る燃焼装置は、請求項1に記載の燃焼装置において、前記ジャケットは、ファスナーによって互いに連結された複数のサブジャケットにより構成されていることを特徴とする。
なお、ファスナーとしては、例えば面ファスナーやスライドファスナーを適用することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、ジャケットを構成する各サブジャケットは、ファスナーにより互いに連結されているので、取り外すことができる。従って、本発明によれば、燃焼器内をメンテナンスするための扉やバーナ周りなどの部分をジャケットで覆っても、当該部分のメンテナンスを行うことができるので、従来の2重ケーシング構造の燃焼装置ではメンテナンスの必要性のために2重ケーシング構造にすることができなかった前記メンテナンス用の扉やバーナ周りなどの部分を2重ケーシング構造にすることができ、十分熱効率を向上させることができる。
また、前記メンテナンス用の扉やバーナ周りなどを覆う部分のサブジャケットは、メンテナンスのために頻繁に取り外しを行う必要があるが、本発明のサブジャケットは、ファスナーにより他のサブジャケットと連結しており、容易に取り外すことができるので、燃焼装置のメンテナンスを容易にできる。
【0016】
本発明の請求項3に係る燃焼装置は、請求項1または請求項2に記載の燃焼装置において、前記ジャケットは、ガラスクロスと、前記ガラスクロス内に充填されたグラスウールとを備えていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明によれば、ジャケットは、ガラスクロスと、ガラスクロス内に充填されたグラスウールとを備えている。このようなジャケットは、比較的安価に製造できるので、燃焼装置の製造コストを低減できる。
【0018】
本発明の請求項4に係る燃焼装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃焼装置において、前記保温空間と前記燃焼器との間を自在に遮断可能な遮断手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
ここで、従来の2重ケーシング構造の燃焼装置では、燃料を燃焼しない機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中などにおいても、構造上、ドラフトや強制通風により、ケーシング間の空気を常に燃焼器に送ることとなるので、ケーシング間の空気が有する熱量の損失が生じるうえ、燃焼装置本体が冷却されてしまうという問題があった。
これに対し、請求項4の発明では、機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中には、遮断手段により保温空間から燃焼器内への送風を停止することができ、保温空間内の空気および燃焼装置本体を保温できるので、熱量の損失を十分に抑えることができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る燃焼装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の燃焼装置において、前記空気取り入れ手段は、前記保温空間から加熱された空気を取り入れ、前記空気供給手段に送る送風機を備えていることを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明によれば、送風機を備えた空気取り入れ手段により、強制的に保温空間内の空気を空気供給手段に送るので、誘引通風力のみを利用して保温空間内の空気を空気供給手段に送る場合に比べて、保温空間内の空気を確実に空気供給手段、ひいては燃焼器に送ることができる。
【0022】
本発明の請求項6に係る燃焼装置は、請求項5に記載の燃焼装置において、燃焼に必要な空気量に応じて前記送風機を制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0023】
請求項6の発明によれば、制御手段により、燃焼器における燃焼用空気の必要量に応じて、すなわち、燃焼器に送った保温空間内の空気の一部が無駄になってしまうことがないように、送風機を制御して保温空間内の空気を空気供給手段、ひいては燃焼器に送ることができる。従って、保温空間内の空気が有する熱量の損失を抑制でき、熱効率をより向上できる。
【0024】
本発明の請求項7に係る燃焼装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の燃焼装置において、前記空気取り入れ手段は、前記保温空間から加熱された空気を取り入れ、前記空気供給手段に送るエゼクタを備えていることを特徴とする。
【0025】
請求項7の発明によれば、機械的稼動部を持たず故障の少ないエゼクタを利用して保温空間内の空気を空気供給手段、ひいては燃焼器へ送るので、メンテナンスを容易にできる。
【0026】
本発明の請求項8に係る燃焼装置は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の燃焼装置において、前記保温空間は、前記燃焼装置本体の上方に位置する第1通風路と、前記燃焼装置本体の側方を通って前記第1通風路に接続されるとともに外部と連通し、外部から取り入れた空気を前記燃焼装置本体の側面に沿って流通させた後に前記第1通風路に送る第2通風路とを含んで形成され、前記空気取り入れ手段は、前記第1通風路内の加熱された空気を取り入れ、前記空気供給手段に送ることを特徴とする。
【0027】
請求項8の発明によれば、空気取り入れ手段は、燃焼装置本体の上方に位置する第1通風路から当該第1通風路および第2通風路内の加熱された空気を取り入れるので、その際に、燃焼装置本体の側方で加熱されて第2通風路内を上昇する空気の流れを利用することができ、効果的に第1,第2通風路内の空気を空気供給手段に送ることができる。
また、単にジャケットで燃焼装置本体を覆った際に生じるジャケットと燃焼装置本体との隙間だけでなく、ある程度の高さおよび長さを有する通風路が形成されているので、保温空間の体積を増加させることができ、加熱された空気をより円滑に燃焼器へ送ることができる。
【0028】
本発明の請求項9に係る燃焼装置は、請求項8に記載の燃焼装置において、前記第2通風路は、複数形成されていることを特徴とする。
【0029】
請求項9の発明によれば、第1通風路に連結される第2通風路が複数形成されているので、より保温空間の体積を増加させることができ、加熱された空気を一層円滑に燃焼器へ送ることができる。
【0030】
本発明の請求項10に係る燃焼装置は、請求項8または請求項9に記載の燃焼装置において、前記第1通風路および前記第2通風路のうち、少なくともいずれか一方は、前記ジャケットと前記燃焼装置本体の外面との間に介装された断面視コ字状の部材と、前記燃焼装置本体の外面とから形成されていることを特徴とする。
【0031】
請求項10の発明によれば、ジャケットと燃焼装置本体の外面との間に介装された断面視コ字状の部材により通風路を形成するので、当該通風路内の空気が空気取り入れ手段によって吸引されることにより通風路内が負圧となっても、当該通風路を覆う部分のジャケットが燃焼装置本体の外面に吸着することをコ字状の部材により防止することができ、確実に通風路を形成することができる。
【0032】
本発明の請求項11に係る燃焼装置は、請求項8または請求項9に記載の燃焼装置において、前記ジャケットには縫い目が施され、前記第1通風路および前記第2通風路のうち、少なくともいずれか一方は、前記ジャケットに施された縫い目によって前記ジャケットと前記燃焼装置本体の外面との間に生じる空間から形成されていることを特徴とする。
【0033】
請求項11の発明によれば、ジャケットを燃焼装置本体に被せるだけで通風路を形成することができるので、構造材によって通風路を形成する場合と比べ、構造材をジャケットと燃焼装置本体との間に介装する手間を省くことができる分、短時間でジャケットを設置することができる。
【0034】
本発明の請求項12に係るジャケットは、断熱性および可撓性を有し、燃焼装置本体を覆って前記燃焼装置本体との間に形成される保温空間内の空気を前記燃焼装置本体からの放熱により加熱するためのジャケットであって、当該ジャケットは、ファスナーによって互いに連結された複数のサブジャケットにより構成されていることを特徴とする。
【0035】
請求項12の発明によれば、ジャケットが燃焼装置本体を覆うので、ジャケットと燃焼装置本体との間に形成される保温空間内の燃焼装置からの放熱により加熱された空気を、燃焼用空気として燃焼器内に送ることで、熱損失を低減でき、熱効率を向上させることができる。
これにより、燃焼装置本体内に設けられる断熱材の厚みを、熱効率の向上のために厚くする必要がなくなるので、断熱材の破損リスクの増大化、当該装置の大型化、およびメンテナンス性の低下を防ぐことができる。
また、ジャケットが複数のサブジャケットにより構成され、これら各サブジャケットがファスナーにより互いに連結されているので、メンテナンスのために頻繁に取り外しが行われる部分のサブジャケットの取り外しを簡単に行うことができ、燃焼装置本体のメンテナンスを容易にできる。
【0036】
本発明の請求項13に係るジャケットは、請求項12に記載のジャケットにおいて、当該ジャケットには、所定の長さの縫い目が施され、前記縫い目により、前記ジャケットと前記燃焼装置本体の外面との間には、空気が流通可能な通風路が形成され、前記保温空間は、前記通風路を含んで形成されていることを特徴とする。
【0037】
請求項13の発明によれば、ジャケットを燃焼装置本体に被せるだけで通風路を形成することができるので、ジャケットと燃焼装置本体との間に構造材を介装することにより通風路を形成する場合に比べ、構造材をジャケットと燃焼装置本体との間に介装する手間を省くことができる分、短時間でジャケットを設置することができる。
【0038】
本発明の請求項14に係るジャケットは、請求項12または請求項13に記載のジャケットにおいて、前記サブジャケットは、ガラスクロスと、前記ガラスクロス内に充填されたグラスウールとを備えていることを特徴とする。
【0039】
請求項14の発明によれば、ジャケットは、ガラスクロスと、ガラスクロス内に充填されたグラスウールとを備えたものなので、比較的安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1は、本実施形態に係る丸ボイラ1を模式的に示す断面図、図2は、丸ボイラ1を模式的に示す図1のA−A線断面図である。
丸ボイラ1は、発電所などの外燃機関の構成要素であり、機械仕事を取り出す蒸気タービンなどの取出部へ蒸気を出力するための燃焼装置である。この丸ボイラ1は、図1および図2に示すように、燃焼装置本体としてのボイラ本体2と、ジャケット3とを備えている。
【0041】
〔ボイラ本体の構成〕
ボイラ本体2は、バーナ4と、押込送風機5と、内部に炉筒7および煙筒8が設けられた鋼板容器6と、炉筒7および煙筒8を接続する接続管9と、鋼板容器6に保持されたボイラ水10とを備えている。
バーナ4は、燃料を微粒化して炉筒7へ供給する。
【0042】
〔送風機の構成〕
押込送風機5は、外部と炉筒7とを連通する給気管12(給気路)の途中に設けられ、燃焼用空気を炉筒7へ供給する。このような送風機(ファン)としては、ターボ式シロッコ式等の遠心式ファン、軸流ファン、カスケードファン等がある。送風機は、遠心力や羽根の表面に生じる摩擦力等により風圧を生じさせるものであり、モーター等の電気動力で駆動される場合が多い。通常は、大気圧の2倍を越えない範囲の風圧を生じさせるものを総称して送風機と称する。本実施形態では、この押込送風機5と、給気管12とを備えて空気供給手段が構成されている。
【0043】
〔燃焼ガスの流れ〕
図3は、鋼板容器6を示す斜視図である。なお、図3における矢印は燃焼ガスの流れを示す。
炉筒7は、図3に示すように、円筒形の鋼板容器6内に設けられている。本実施形態ではこの炉筒7、接続管9、および煙筒8を含んで燃焼器が構成されている。炉筒7では、バーナ4から供給された燃料と、押込送風機5から供給された燃焼用空気とが混合し、燃料が燃焼する。これにより生じた燃焼火炎からの熱は、炉筒7の壁面を介してボイラ水10に伝達される。また、燃焼火炎により生じた燃焼ガスは、炉筒7の壁面を介してボイラ水10に熱を伝えつつ炉筒7を進行し、接続管9に入る。接続管9内に入った燃焼ガスは、接続管9内で複数に分割され、反転した後、鋼板容器6内に設けられた煙筒8内に入る。そして、燃焼ガスは、煙筒8の壁面を介してボイラ水10に熱を伝えつつ煙筒8内を進行し、ダクト13を介して図示しない大気汚染防止装置へ送られる。このようにして燃焼火炎および燃焼ガスは、熱を炉筒7および煙筒8の壁面を介してボイラ水に伝え、ボイラ水を気化させて蒸気を発生させる。発生した蒸気は、鋼板容器6の上部に設けられた蒸気管11から取り出され、機械仕事を取り出す蒸気タービンなどの取出部へ送られる。なお、このようなボイラ等の燃焼装置では、燃焼火炎からの熱の吸収を行う部分のことを輻射伝熱面、燃焼ガスの熱吸収を行う部分のことを接触伝熱部と称することがある。例えば、炉筒7の壁面を輻射伝熱面、煙筒8の壁面を接触伝熱部と称することがある。また、接続管9を後部煙室、ダクト13を前部煙室と称することがある。
【0044】
〔断熱材および外部ケーシングの構成〕
図1および図2に戻って、ボイラ本体2は、前述のような要素4〜13のほか、内部断熱材14と、外部ケーシング15とを備えている。内部断熱材14は、鋼板容器6や接続管9の周囲に設けられている。この内部断熱材14は、鋼板容器6や接続管9を断熱し、ボイラ水10を保温することにより丸ボイラ1の熱効率を向上させる。外部ケーシング15は、ボイラ本体2の外装であり、内部断熱材14を保持する。このようなボイラ本体2の接続管9側の面である前面200には、接続管9内に通じ、接続管9や炉筒7内のメンテナンス(清掃等)を行うための図示しない扉が設けられている。
【0045】
〔ジャケットの構成〕
図4は、サブジャケット30の構成を示す分解斜視図である。
ジャケット3は、ボイラ本体2に被せられ、ボイラ本体2を覆っている。このジャケット3は、複数のサブジャケット30により構成されている。サブジャケット30は、図4に示すように、シリコン樹脂によりコーティングされた一対のガラスクロス31と、ガラスクロス31内に充填された断熱性を有するグラスウール32とを備え、可撓性(柔軟性)を有している。グラスウール32は、0.03Kcal/mh℃程度の熱伝達係数を有するとともに厚みが10mm以上あることが好ましい
【0046】
図5は、サブジャケット30の連結部を示す斜視図、図6は、面ファスナーの構成を示す図である。
このようなサブジャケット30間の連結部においては、一方には、図5および図6に示すように、フック部16が設けられているとともに、他方にはループ部17が設けられており、これらフック部16およびループ部17が係合することにより、サブジャケット30同士が互いに連結され、ジャケット3が構成されている。
【0047】
なお、このようなジャケット3は、ボイラ本体2に巻きつけられ、重なり合う末端部分同士が面ファスナーによって連結されることによりボイラ本体2に取り付けられていてもよいし、単にボイラ本体2に被せられているだけでもよいし、ボイラ本体2に被せられた後に、適宜の手段によりボイラ本体2に固定されていてもよい。また、サブジャケット30間の連結は、どのような方法により行われていてもよく、例えばスライドファスナーを利用して行われていてもよい。
【0048】
このようなジャケット3において、ボイラ本体2の前面200に設けられたメンテナンス用の扉を覆う部分、およびバーナ4周りの部分は、適宜の大きさのサブジャケット30により構成されており、メンテナンスの際には、メンテナンス用の扉を覆う部分のサブジャケット30やバーナ4周りのサブジャケット30のみを取り外すことができるようになっている。
【0049】
このように、本実施形態では、ジャケット3が複数のサブジャケット30により構成され、これら各サブジャケット30が面ファスナーにより互いに連結されているので、ボイラ本体2の前面200に設けられたメンテナンス用の扉部分を覆う部分のサブジャケット30や、バーナ4周りのサブジャケット30など、ボイラ本体2のメンテナンスのために頻繁に取り外しが行われる部分のサブジャケット30の取り外しを簡単に行うことができ、ボイラ本体2のメンテナンスを容易にできる。
【0050】
〔ジャケットの利用〕
このようなジャケット3は、対象物から外部への輻射伝熱や対流伝熱を低減して対象物を保温でき、熱効率を向上させることができるうえ、可撓性を有しており、対象物に容易に取り付けることができるので、定期的なメンテナンスが必要になるバルブやフィルター、オートクレーブ、熱交換器等の大型装置の保温に一般的に用いられている。
【0051】
〔ジャケットによってボイラの保温を行うことの問題〕
図7は、ジャケット3で単に外部ケーシング15を覆った場合の丸ボイラ1を示す断面図である。
しかしながら、このようなジャケット3は、非常に高温となる高温部を内部に持つボイラ等の燃焼装置の保温には一般的には用いられていない。ボイラ2(ボイラ本体2)は、内部温度が500℃を超えた場合には、外部ケーシング15の表面温度が上昇して内部の熱が外部へ放熱されることにより、外部ケーシング15の熱劣化が防止されるように設計されている。しかしながら、図7に示すように、ジャケット3で単に外部ケーシング15を覆った場合、ジャケット3により外部ケーシング15からの放熱が阻害されてしまうので、外部ケーシング15の温度が上昇しすぎてしまい、外部ケーシング15が熱劣化してしまうからである。
【0052】
詳述すると、ジャケット3により外部ケーシング15を単に覆った場合において、ジャケット3と、外部ケーシング15内側の内部断熱材14との熱伝達係数が等しいと仮定した場合には、外部ケーシング15の表面温度は、内部温度と外気温度との略中間の温度になる。
よって、外部ケーシング15において、ボイラ水10の保持によりさほど高温にはならない鋼板容器6の外側に位置する部分の表面温度は、鋼板容器6の温度を200℃、室温を25℃と仮定した場合、87.5℃となる。
【0053】
ところが、外部ケーシング15において、ボイラ水10と接しず高温になる接続管9に近接するボイラ2の前面200部分の表面温度は、接続管9の温度を1000℃、室温を25℃と仮定した場合、512℃となり、一般鋼材の使用限度である400℃を超えてしまう。
従って、ジャケット3により外部ケーシング15を単に覆った場合には、接続管9に近接するボイラ2の前面200部分の外部ケーシング15の温度が上昇しすぎてしまい、外部ケーシング15が熱劣化してしまう。すなわち、外部ケーシング15の機械的強度が低減して信頼性が低下してしまう。また、ジャケット3に覆われるだけであり、機密性がさほど高くない外部ケーシング15の表面が高温になるということは、燃料等の引火性物質の共存もありえるボイラ2においては、発火のリスクが伴うという点でも問題である。さらに、内部断熱材14の温度が上昇することにより内部断熱材14の交換頻度が上がってしまうという問題もある。また、ジャケット3によって外部ケーシング15を覆うことによりボイラ2を保温しても、断熱した熱量がほとんど燃焼に用いられずに、排出される燃焼ガスの温度上昇に用いられてしまう場合があり、熱効率の向上という点ではそもそも効果は限定的である。
【0054】
〔通風間隙の構成〕
図8は、保温空間18を模式的に示す斜視図である。なお、図8では、バーナ4が設けられるボイラ本体2の後側(図8中手前側)の保温空間18については図示を省略してある。
そこで、本実施形態では、ジャケット3を、ボイラ本体2から放熱される熱を利用して燃焼用空気を予熱するために用いる。具体的には、本実施形態では、ジャケット3と、外部ケーシング15との間に、図8に示すような保温空間18が形成されている。
【0055】
保温空間18は、本実施形態では、ボイラ本体2の上方に位置しボイラ本体2の長手方向に延びる第1通風路18Aと、ボイラ本体2の上面、側面、および底面に沿って延び前記第1通風路18Aに連結される複数の第2通風路18Bとを含んで形成されている。第1通風路18Aは、給気管12の途中に開口する空気取り入れ手段としての接続管19(接続路)を介して給気管12と連通している。この第1通風路18Aには、後述するが、第2通風路18B内の空気が集合する。第1通風路18Aは、集合した第2通風路18B内の空気を通風することが可能な十分な大きさを有している。
【0056】
図9は、構造材Kにより形成された通風路18A,18Bを示す断面図である。
これら各通風路18A,18Bは、図9に示すように、ジャケット3と外部ケーシング15との間に鋼やアルミ等の断面コ字状の構造材Kが介装されることにより、ジャケット3と外部ケーシング15との間に生じる長手状の空間から形成されている。本実施形態では、このように、ジャケット3と外部ケーシング15との間に介装された構造材Kにより通風路18A,18Bが形成されるので、ある程度の大きさの空間、すなわち通風路18A,18Bをジャケット3と外部ケーシング15との間に確実に形成することができる。この構造材Kは、部分部分、所定距離、離して設けられている。また、ジャケット3と外部ケーシング15との間には、構造材Kによらずとも微少な隙間が形成されており、通風路18A,18Bは、面ファスナーにより連結されたサブジャケット30の連結部分に生じる隙間、ジャケット3と外部ケーシング15との間に自然生じる僅かな隙間、および構造材K間の隙間を介して外部と連通している。
【0057】
図10は、ミシン目Mを示すジャケット3の斜視図、図11は、ミシン目Mにより形成された通風路18A,18Bを示す断面図である。
なお、通風路18A,18Bは、図10および図11に示すように、例えばジャケット3にミシン目Mが入れられ、ジャケット3を外部ケーシング15に取り付けた際にこのミシン目Mによりジャケット3と外部ケーシング15との間に生じる長手状の空間から形成されていてもよい。この場合、ジャケット3を外部ケーシング15に被せるだけで通風路18A,18Bを形成することができるので、構造材Kによって通風路18A,18Bを形成する場合と比べ、構造材Kをジャケット3と外部ケーシング15との間に介装する手間を省くことができる分、短時間でジャケット3を設置することができる。
【0058】
このような通風路18A,18B内では、外部ケーシング15からの放熱によって空気が加熱される。サブジャケット30の面ファスナーによる連結部から第2通風路18B内に吸い込まれ、外部ケーシング15からの放熱により加熱された空気は、当該第2通風路18B内を上昇し、ボイラ本体2の上方に位置する第1通風路18A内に集合する。そして、第1通風路18A内に集合した加熱された空気は、予熱された燃焼用空気として、接続管19を介して押込送風機5により炉筒7に送られる。
【0059】
このように、本実施形態では、ジャケット3と外部ケーシング15との間に通風路18A,18Bを設け、外部ケーシング15により加熱された通風路18A,18B内の空気を燃焼用空気として炉筒7に送るので、外部ケーシング15から放熱される熱を利用して燃焼用空気を予熱することとなり、熱効率を向上させることができる。
【0060】
しかも、ジャケット3は、複数のサブジャケット30から構成され、メンテナンスに必要な部分のみを取り外すことができるので、ボイラ本体2の前面200に設けられたメンテナンス用の扉部分や、バーナ4周りなどをジャケット3で覆っても、当該部分のメンテナンスを行うことができる。これにより、外部ケーシングを2重にして当該外部ケーシング間の空気を炉筒7に送る構造となっている従来の2重ケーシング構造のボイラでは、ボイラ本体2の前面200に設けられた扉部分やバーナ4周りなどは、メンテナンスの必要性のために2重ケーシング構造にすることができなかったが、本実施形態では、2重ケーシング構造にすることができるので、十分効果的に熱効率を向上できる。
【0061】
加えて、熱効率の向上のために内部断熱材14の厚みを厚くする必要がなくなるので、内部断熱材14の破損リスクの増大化、ボイラ本体2の大型化、および炉筒7や鋼板容器6のメンテナンス性の低下を防止できる。そのうえ、ジャケット3として、シリコン樹脂によりコーティングされた一対のガラスクロス31と、前記ガラスクロス31内に充填されたグラスウール32とから構成された比較的安価なものを使用することができるので、コストを抑えることができる。
【0062】
また、通風路18A,18B内の空気を炉筒7に送ることで、ジャケット3と外部ケーシング15との間を換気できるので、外部ケーシング15が高温になりすぎることを防止でき、外部ケーシング15の信頼性を維持できる。
しかも、ケーシング間の空気が常に炉筒7内に送られ、燃焼用の空気として用いられる従来の2重ケーシング構造のボイラでは、ケーシング間の隙間の大きさが直接燃焼に影響を与えるので、当該隙間の大きさが信頼性に影響を与える。これに対し、本実施形態では、通風路18A,18Bを、元々炉筒7内に燃焼用空気を供給していた給気管12に接続し、通風路18A,18B内の空気を給気管12内の空気に混合して送る構成となっているので、通風路18A,18B内の空気が必ずしも燃焼に必要というわけではない。そのため、通風路18A,18Bを設けても、当該丸ボイラ1の信頼性を良好に維持できる。
加えて、本実施形態の丸ボイラ1は、既存の丸ボイラの外部ケーシング15をジャケット3で覆うなどして既存の丸ボイラを改修することで実現できるので、本実施形態の丸ボイラ1は、既存の丸ボイラの熱効率を比較的安価にかつ安全に向上させることができる。
【0063】
また、給気管12が保温空間18の上部(第1通風路18A)に接続されているので、保温空間18内の空気を吸引する際に、ボイラ本体2の下方および側方で加熱されて第2通風路18B内を上昇する空気の流れを利用することができ、効果的に保温空間18内の空気を炉筒7に送ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、保温空間18は、構造材Kによって形成されるジャケット3と外部ケーシング15との間の長手状の空間である通風路18A,18Bを備えていたが、保温空間18は、通風路18A,18Bを備えていなくてもよく、ジャケット3を外部ケーシング15に被せた際にジャケット3と外部ケーシング15との間に自然に生じる僅かな隙間からのみ形成されていてもよい。
【0065】
具体的に、ジャケット3の内側略全面に高さが1mmの保温空間18が形成されていれば、外部ケーシング15からの放熱を100kcal/m、保温空間18内の空気の温度を150℃として、保温空間18が1mあたり10m/hの風量で換気されていれば、すなわち流速0.43m/s以上で換気されていれば、外部ケーシング15の温度上昇を30℃に抑制できる。従って、ジャケット3とボイラ本体2との間には、1mmの隙間があれば、その隙間を保温空間18として機能させることができるので、ジャケット3とボイラ本体2との間には、構造材Kなどによって通風路18A,18Bなどの特別な隙間を設けなくてもよい。しかしながら、本実施形態のように、構造材Kなどにより、ある程度の高さおよび長さを有する空間、すなわち通風路18A,18Bを設けた場合には、より円滑にジャケット3とボイラ本体2との間を換気することができ、熱効率の上昇や、外部ケーシング15の温度上昇の抑制を十分に図ることができる。
【0066】
また、ガラスクロス31が複数の細孔を有するメッシュ状に形成されるなどしてジャケット3の機密性が低い場合、保温空間18内の換気効率が低下してしまい、上述した熱効率向上等の効果を十分には奏することができなくなるので、ジャケット3は一定の機密性を有していることが好ましい。
【0067】
〔第2実施形態〕
図12は、本発明の第2実施形態に係る丸ボイラ1Aを模式的に示す断面図である。以下、既に説明した部分と同一機能部位については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の丸ボイラ1Aは、第1実施形態と同様の構成を備えているが、保温空間18から炉筒7に送る風量を制御できるように構成されている点が第1実施形態とは異なる主な点である。
【0068】
〔換気用送風機および遮断弁の構成〕
本実施形態では、図12に示すように、保温空間18と給気管12とを連通する接続管19(接続路)の途中に、換気用送風機20と、遮断弁21と、温度計28とが設けられている。
換気用送風機20は、後述するインバータ22から入力される制御信号に基づいて駆動し、保温空間18内の加熱された空気を給気管12に送る。このように、本実施形態では、換気用送風機20により強制的に保温空間18内の加熱された空気を吸引して給気管12、ひいては炉筒7に送るので、確実に保温空間18内の加熱された空気を給気管12、ひいては炉筒7に送ることができる。本実施形態では、この換気用送風機20と、接続管19とを備えて空気取り入れ手段が構成されている。
【0069】
遮断弁21は、遮断手段であり、詳しくは後述するが、後述する燃料遮断弁42および温度計28と連動して接続管19を開閉する。
温度計28は、接続管19内の空気、すなわち、当該接続管19内に送られた第1通風路18A内の空気の温度を計測し、後述するインバータ22に出力する。
【0070】
〔挿入管の構成〕
また、接続管19は、本実施形態では、第1通風路18A内に挿入される挿入管191を備えている。挿入管191には、合計面積が当該挿入管191の断面積を超えない範囲で複数の小孔19Aが開けられており、換気用送風機20が、挿入管191を介して第1通風路18Aの奥に位置する部分からも効率的に吸気することができるようになっている。
【0071】
〔ボイラダンパおよびコントロールモータの構成〕
給気管12において、押込送風機5とバーナ4との間には、ボイラダンパ23が設けられている。
ボイラダンパ23は、コントロールモータ24による制御の下、給気管12の断面積を変化させる。
コントロールモータ24には、バーナ4等を制御する図示しない主制御装置から、炉筒7に供給する燃料量に応じた量である炉筒7における燃焼用空気の必要量が入力される。コントロールモータ24は、入力される燃焼用空気の必要量に応じて、ボイラダンパ23を駆動制御して、炉筒7に送られる燃焼用空気の空気量を調整する。このコントロールモータ24は、ボイラダンパ23の開度を検出してインバータ22に出力する開度検出センサ25を備えている。
また、バーナ4に燃料を供給する燃料管41には、前述の主制御装置による制御の下、当該燃料管41を開閉する燃料遮断弁42が設けられている。この燃料遮断弁42には、当該燃料遮断弁42の燃料管の開閉を検出してインバータ22に出力する図示しない制御機構が設けられている。
【0072】
〔インバータの構成〕
インバータ22は、本実施形態における換気用送風機20の回転数制御手段であり、CPU(Central Processing Unit)が組み込まれた回路基板を備えている。このインバータ22は、保温空間18内の空気を炉筒7へ送ることにより燃焼用空気量が必要量を超えてしまい、炉筒7に送った保温空間18内の空気の一部が無駄になってしまうことがないように、検出されたボイラダンパ23の開度、すなわち、炉筒7における燃焼用空気の必要量に応じて換気用送風機20を制御し、保温空間18から炉筒7へ送る空気量を調整する。これにより、本実施形態では、保温空間18内の空気が有する熱量の損失を抑制でき、熱効率をより向上できる。
【0073】
また、インバータ22は、検出された第1通風路18A内の空気温度に基づいて、風量(回転数)と第1通風路18A内の空気温度とによる熱回収効果が最も高くなるように換気用送風機20の回転数を制御する。
具体的には、インバータ22は、換気用送風機20の回転数を下げ過ぎたことにより、第1通風路18A内の空気の送風量が低くなり過ぎてしまい、第1通風路18A内の空気温度は高いが熱回収効果が低下してしまった場合には、換気用送風機20の回転数を上げる。
一方、インバータ22は、回転数を上げ過ぎ、第1通風路18A内の空気が多量に送られてしまうことにより第1通風路18A内の空気温度が低下してしまい、送風量は多いが熱回収効果が低下してしまった場合には、換気用送風機20の回転数を下げる。このようにしてインバータ22は、熱回収効果が最も高くなるように、かつ、炉筒7が必要とする風量を超えない範囲で換気用送風機20の回転数を制御する。
【0074】
ここで、前述の遮断弁21は、燃料遮断弁42と連動して接続管19を開くように構成されている。すなわち、遮断弁21は、燃料遮断弁42が開いているバーナ4の燃焼中には接続管19を開く。一方、遮断弁21は、燃料遮断弁42が閉じている際、すなわち、機関停止中や、点火前に炉筒7内の残留燃焼ガスを排出するプレパージ中、燃焼停止後に炉筒7内の残留燃焼ガスを排出するポストパージ中などには接続管19を閉じる。ここで、従来の2重ケーシング構造のボイラでは、機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中などにも、構造上、ドラフトや強制通風によりケーシング間の空気を常に炉筒7内に送ることとなるので、機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中などに、保温空間18内の空気が有する熱量の損失が生じるうえ、ボイラが外側からも冷却されてしまうという問題があった。
【0075】
これに対し、本実施形態では、通風路18A,18B内の空気が必ずしも燃焼に必要というわけではないため、機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中などには、遮断弁21によって接続管19を閉じることができ、通風路18A,18B内の空気を炉筒7に送ってしまうことを防止できる。そのため、本実施形態では、機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中などに、通風路18A,18B内の空気およびボイラ本体2を保温することができ、熱量の損失を十分に抑えることができる。なお、本実施形態は、これらの効果のほか、第1実施形態と同様の構成を備えているので、第1実施形態と同様の効果も奏することができる。
【0076】
〔第3実施形態〕
図13は、本発明の第3実施形態に係る丸ボイラ1Bを模式的に示す断面図である。
本実施形態の丸ボイラ1Bは、第2実施形態と同様の構成を備えているが、換気用送風機20の代わりにエゼクタ26が設けられている点が第2実施形とは異なる第1の点である。また、本実施形態では、遮断弁21の代わりに、制御装置22Aによる制御の下、接続管19の断面積を変化させる換気用ダンパ21Aが設けられている点が第2実施形とは異なる第2の点である。
【0077】
〔エゼクタの構成〕
エゼクタ26は、流体の持つ圧力を速度エネルギーに転換する際に生じる負圧を利用して、保温空間18内の空気を吸引し、給気管12ひいては炉筒7に送る。このエゼクタ26は、図13に示すように、接続管19(接続路)の途中に設けられ、噴出部261と、噴出部261に若干の隙間を介して対向配置された吸込部262と、前記隙間に向かって配置された吐出部263と、これら噴出部261、吸込部262、および吐出部263が内部に設けられた壁部264とから構成されている。なお、接続管19は、本実施形態では、第1通風路18Aおよびエゼクタ26を連通する挿入管191と、エゼクタ26および給気管12を連通する出口管192とを備えている。
【0078】
〔噴出部の構成〕
噴出部261は、一端が給気管12における押込送風機5の出口付近に接続された換気用空気供給管27の他端部であり、先端が先細り状に形成されている。この噴出部261は、押込送風機5から換気用空気供給管27を介して供給される高圧の空気を駆動ガスとして吸込部262へ向けて噴出する。
【0079】
〔吐出部の構成〕
吐出部263は、一端側が第1通風路18A内に挿入された挿入管191の他端部であり、噴出部261から吸込部262へ向けて噴出される空気噴流(高圧の空気)によって生じる当該空気噴流周りの負圧により、第1通風路18A内の空気を挿入管191を介して吸引して空気噴流に向けて吐出する。
【0080】
〔吸込部の構成〕
吸込部262は、一端が給気管12に接続された出口管192の他端部であり、噴出部261から噴出された空気(空気噴流)と、吐出部263から吐出されて空気噴流に引き込まれた第1通風路18A内の空気とを吸い込み、出口管192を介して給気管12、ひいては炉筒7へ送る。
このように、本実施形態では、機械的稼動部を持たず故障の少ないエゼクタ26を利用して第1通風路18A内の空気を炉筒7へ送るので、メンテナンスを容易にできる。なお、本実施形態では、このエゼクタ26、接続管19、および換気用空気供給管27を備えて空気取り入れ手段が構成されている。
【0081】
〔エゼクタを使う際の押込送風機の構成〕
本実施形態では、炉筒7へ送る分の風量に、エゼクタ26へ供給する分の風量を加えた風量を押込送風機5によって送風する必要があるので、押込送風機5の能力に余裕が無い場合には、押込送風機5の容量を上げる必要がある様に思える。
しかしながら、本実施形態は、数%の省エネルギー効果があるので、この省エネルギー率に応じて炉筒7での燃料の燃焼量を減少させても、本実施形態が採用されない丸ボイラと同一のボイラ水の蒸発量を得ることができる。すなわち、本実施形態は、結果的に押込送風機5の送風量を減ずる事ができるので、本実施形態では、押込送風機5の構成に特別な変更を加えて押込送風機5の容量を上げる必要は無い。
【0082】
〔制御装置の構成〕
制御装置22Aは、第2実施形態のインバータ22と同様にCPUが組み込まれているが、換気用送風機20の回転数制御を行うのではなく、換気用ダンパ21Aの接続管19の開度を比例的に制御する。
具体的に、制御装置22Aは、検出されたボイラダンパ23の開度に応じて、すなわち、炉筒7における燃焼用空気の必要量に応じて換気用ダンパ21Aを制御し、炉筒7に送った保温空間18内の空気の一部が無駄になってしまうことがないように、炉筒7へ送られる燃焼用空気量を調整する。例えば制御装置22Aは、丸ボイラ1Bの低負荷時には、換気用ダンパ21Aの開度を下げ、保温空間18から炉筒7へ送られる空気量を低減することにより、炉筒7に送った保温空間18内の空気の一部が無駄になってしまうことを抑制する。
【0083】
また、制御装置22Aは、温度計28によって検出された第1通風路18A内の空気温度に基づいて、最も熱回収効率が高くなるように換気用ダンパ21Aの開度を制御する。これにより、本実施形態でも、保温空間18内の空気が有する熱量の損失を抑制でき、熱効率をより向上できる。
なお、換気用ダンパ21Aは、第二実施形態の遮断弁21と同様、燃料遮断弁42が閉じている時には全閉動作を行うように構成されている。これにより、本実施形態でも、第二実施形態と同様に、機関停止中やプレパージ中、ポストパージ中の通風路18A,18B内の空気およびボイラ本体2の保温効果を高める事ができる。
【0084】
また、換気用ダンパ21Aを全閉とした場合には、エゼクタ26では、噴出部261が噴出する風量と吸込部262が吸い込む風量とが同一となり、単に同一風量が循環するだけとなるので、エゼクタ26を設けたことによって換気量が過剰になる事は無い。
ここで、近年の省エネルギー化が進んだボイラでは、押込送風機が、ボイラ側の制御装置によってインバーター制御されることがある。この場合、押込送風機は、ボイラ側の制御装置によりボイラ負荷に応じて制御されることとなる。
本実施形態の構成に、このようなボイラ本体2(ボイラ)側の制御装置による押込送風機5の制御を加える場合には、ボイラ本体2側の制御装置による押込送風機5の制御により、エゼクタ26が吸い込む保温空間18内の空気量を炉筒7へ送風する空気量に応じて変化させることができるので、押込送風機5制御用の制御装置22Aを省略し、換気用ダンパ21Aを比例的に制御せずに、第二実施形態の様に遮断弁21に変更して単に燃料遮断弁42との連動制御とすることができる。
【0085】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、接続管19は、保温空間18の上部(第1通風路18A)に接続されていたが、接続管19は、保温空間18の下部(第2通風路18Bにおいてボイラ本体2の下方に位置する部分)に接続されていてもよく、保温空間18に接続されていればよい。
前記各実施形態では、燃焼装置における燃料の燃焼方式は、燃料をバーナ4により燃焼させるバーナ燃焼方式であったが、燃焼装置における燃料の燃焼方式は、燃料を火格子上で燃焼させる火格子燃焼方式であってもよい。
前記各実施形態では、空気供給手段は、押込送風機5と給気管12とを備えていたが、給気管12のみを備えていてもよい。
【0086】
前記各実施形態では、各伝熱部や管路などに燃焼用空気および燃焼ガスを通過させる際の通風抵抗に抗する圧力である通風力を得るために、押込通風(方法)を用いていたが、平衡通風、誘引通風、自然通風で通風力を得てもよい。
ここで押込通風とは、燃焼器に押込送風機によって空気を押込む事で通風力を得る方法であり、燃焼器の密閉度の高い装置に用いられる。なお、送風機のうち、燃焼器に燃焼用空気を供給するものを押込送風機といい、燃焼器から燃焼ガスを排出するものを誘引送風機という。
【0087】
平衡通風は、押込送風機と誘引送風機とにより、燃焼器内の圧力を大気圧と同等に保つ事を特徴とし、密閉度の低い装置や加熱対象物を頻繁に出し入れする場合に用いられる。固体燃料の燃焼にはこの方法を用いる場合が多い。
誘引通風は、誘引送風機により、燃焼器内を常に大気圧より低く保つ方法である。未燃の状態で、有害性の高い物質を燃焼処分する場合や、熱反応させる場合に用いられる。
自然通風は、機械的な送風機を用いず、煙突を利用して、排ガスと空気の密度差から通風力を得る方法であり、小規模なボイラや外燃機関、家庭用のストーブ等に用いられる。自然換気とも言う。
【0088】
前記各実施形態では、空気取り入れ手段は、換気用送風機20やエゼクタ26を備えていたが、空気取り入れ手段は、自然通風よりも大きな吸引力もっていればよく、圧縮機など、これら以外の装置を備えていてもよい。空気取り入れ手段は、電気的または機械的エネルギーにより、羽根やピストンを駆動し、遠心力、摩擦力、容積変化の少なくともいずれかひとつを利用して、保温空間18内の加熱された空気を吸引して燃焼器に送る装置を備えていてもよい。なお、圧縮機は、高圧の風圧を発生させるものをいい、ポンプやコンプレッサーとも称する。圧縮機は、容積変化を利用するピストン式、スクリュー式、水封式などがある。圧縮機は、ターボや軸流式を大型化したり多段にする事により、大気圧の2倍以上の圧力を発生させる事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、焼却炉や脱臭炉、ボイラなどの燃焼装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態に係る丸ボイラを模式的に示す断面図。
【図2】丸ボイラを模式的に示す図1のA−A線断面図。
【図3】鋼板容器を示す斜視図。
【図4】ジャケットの構成を模式的に示す分解斜視図。
【図5】サブジャケットの連結部を示す斜視図。
【図6】面ファスナーの構成を示す図。
【図7】ジャケットで単に外部ケーシングを覆った場合の丸ボイラを示す断面図。
【図8】保温空間模式的に示す斜視図。
【図9】構造材により形成された通風路を示す断面図。
【図10】ミシン目を示すジャケットの斜視図。
【図11】ミシン目により形成された通風路を示す断面図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る丸ボイラを模式的に示す断面図。
【図13】本発明の第3実施形態に係る丸ボイラを模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0091】
1,1A,1B…丸ボイラ(燃焼装置)、3…ジャケット、18…保温空間、18A…第1通風路、18B…第2通風路、20…換気用送風機(送風機)、21…遮断弁(遮断手段)、21A…換気用ダンパ(遮断手段)、22…インバータ(制御手段)、26…エゼクタ、30…サブジャケット、31…ガラスクロス、32…グラスウール、K…構造材(コ字状の部材)、M…縫い目。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で燃料を燃焼させる燃焼器、および前記燃焼器に空気を供給する空気供給手段を有する燃焼装置本体と、
断熱性および可撓性を有するとともに、前記燃焼装置本体を覆い、前記燃焼装置本体との間に保温空間を形成するジャケットと、
前記燃焼装置本体からの放熱により加熱された前記保温空間内の空気を、前記空気供給手段が取り入れるための空気取り入れ手段とを備えている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置において、
前記ジャケットは、ファスナーによって互いに連結された複数のサブジャケットにより構成されている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃焼装置において、
前記ジャケットは、ガラスクロスと、前記ガラスクロス内に充填されたグラスウールとを備えている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃焼装置において、
前記保温空間と前記燃焼器との間を自在に遮断可能な遮断手段を備えている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の燃焼装置において、
前記空気取り入れ手段は、前記保温空間から加熱された空気を取り入れ、前記空気供給手段に送る送風機を備えている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼装置において、
燃焼に必要な空気量に応じて前記送風機を制御する制御手段を備えている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の燃焼装置において、
前記空気取り入れ手段は、前記保温空間から加熱された空気を取り入れ、前記空気供給手段に送るエゼクタを備えている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の燃焼装置において、
前記保温空間は、
前記燃焼装置本体の上方に位置する第1通風路と、
前記燃焼装置本体の側方を通って前記第1通風路に接続されるとともに外部と連通し、外部から取り入れた空気を前記燃焼装置本体の側面に沿って流通させた後に前記第1通風路に送る第2通風路とを含んで形成され、
前記空気取り入れ手段は、前記第1通風路内の加熱された空気を取り入れ、前記空気供給手段に送る
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項9】
請求項8に記載の燃焼装置において、
前記第2通風路は、複数形成されている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の燃焼装置において、
前記第1通風路および前記第2通風路のうち、少なくともいずれか一方は、前記ジャケットと前記燃焼装置本体の外面との間に介装された断面視コ字状の部材と、前記燃焼装置本体の外面とから形成されている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項11】
請求項8または請求項9に記載の燃焼装置において、
前記ジャケットには縫い目が施され、
前記第1通風路および前記第2通風路のうち、少なくともいずれか一方は、前記ジャケットに施された縫い目によって前記ジャケットと前記燃焼装置本体の外面との間に生じる空間から形成されている
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項12】
断熱性および可撓性を有し、燃焼装置本体を覆って前記燃焼装置本体との間に形成される保温空間内の空気を前記燃焼装置本体からの放熱により加熱するためのジャケットであって、
当該ジャケットは、ファスナーによって互いに連結された複数のサブジャケットにより構成されている
ことを特徴とするジャケット。
【請求項13】
請求項12に記載のジャケットにおいて、
当該ジャケットには、所定の長さの縫い目が施され、
前記縫い目により、前記ジャケットと前記燃焼装置本体の外面との間には、空気が流通可能な通風路が形成され、
前記保温空間は、前記通風路を含んで形成されている
ことを特徴とするジャケット。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のジャケットにおいて、
前記サブジャケットは、ガラスクロスと、前記ガラスクロス内に充填されたグラスウールとを備えている
ことを特徴とするジャケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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