説明

燃焼装置の運転制御方法及び燃焼装置

【課題】石油系残渣を燃料とする燃焼装置の運転制御方法及び燃焼装置を提供する。
【解決手段】石油系残渣を燃料とする燃焼装置であって、還元雰囲気の火炉11内に、燃料12を供給する複数の燃料供給バーナ13(上段バーナ13a、中段バーナ13b、下段バーナ13c)と、所定期間経過後に、定格運転から低負荷運転に変更する指示を実行する図示しない制御手段とを備えてなり、前記低負荷運転の際に、火炉11内を酸素リッチ状態として、火炉壁の伝熱管における灰付着を低減するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油系残渣を燃料とする燃焼装置の運転制御方法及び燃焼装置に関し、特に燃焼装置の伝熱管における灰付着を低減したものである。
【背景技術】
【0002】
石油系残渣(例:石油コークス等)を燃料とする燃焼装置(ボイラ)では火炉内に灰が固着し、冷却管の伝熱阻害を引き起こす、という問題がある。
このため、従来においては、火炉内に燃料添加物として、例えばマグネシウム化合物(MgO)、鉄系化合物(例えばFe23)、CaCO3、Na2CO3、有機系添加材等を供給することで、付着灰の低減を図っていた(特許文献1〜3)。
【0003】
なお、石油系残渣燃料中に含まれるバナジウムは複数の酸化状態をとり、最大酸化数である5価の酸化物(V25)では融点が約680℃と低いが、燃料添加剤として例えばMgO添加剤を入れると、その融点が上昇することは知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−45691号公報
【特許文献2】特開平4−13798号公報
【特許文献3】特開平11−94234号公報
【特許文献4】特開2008−240102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃焼装置の燃料として重油を用いる場合には、バナジウムの量が少量(約200ppm以下)であり、火炉内における酸素濃度が高い燃焼装置においては、バナジウムの酸化状態は5価となるので、MgO添加剤を入れることで、灰の付着を抑制することができるが、石油系残渣燃料中のバナジウムの量は重油よりも多量(500〜1500ppm)であり、しかも、近年の燃焼装置では炉内脱硝をするために、還元雰囲気としており、火炉内ではバナジウムの酸化状態は最大の酸化数5価ではなく、ほとんどが4価の状態となっている。
【0006】
この4価のバナジウムは、化合物単体では融点が高い(約1400℃)が、燃料である石油系残渣(例:石油コークス)を、例えば運搬中において海水に接触して、Na等の混入がある場合に、燃焼すると、NaとVとの複合化合物(バナジル・バナジン酸塩(mNaO・(n−p)V・pV))となり(特許文献4)、溶融物が生成しやすくなるので、火炉内の灰付着が、通常よりも多く発生するという、問題がある。
【0007】
図8に石油コークスにNaを添加した際の灰の軟化点(℃)の低下する関係図を示す。図8に示すように、還元雰囲気中(CO/CO2=60%/40%)において、Naを添加するにつれて、灰の軟化点が低下するのが判る。
【0008】
すなわち、通常のガスに同伴される飛灰の場合には、ガス化ガスと共に後流側に流れ、後流側に設置される除塵装置(例えば電気集塵器)により捕集されるが、飛灰の一部が溶融する場合には、火炉内に付着すると、伝熱阻害により火炉内部の温度が上昇することとなり、燃焼装置の適正な運用ができない場合が発生する。
なお、前記Na等の石油系残渣燃料への混入は、海上を運搬中においては、なかなか回避できないため、石油系残渣燃料を燃焼する際において、効果的な対策が切望されている。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、石油系残渣を燃料とする燃焼装置の運転制御方法及び燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、石油系残渣を燃料とする燃焼装置の運転制御方法であって、所定期間経過後に、定格運転から低負荷運転に変更する運転を行い、前記低負荷運転の際に、火炉内を酸素リッチ状態として、火炉壁の伝熱管における灰付着を低減することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記低負荷運転を、過熱蒸気中にスプレ水を供給して減温する減温装置への指令の際又はその後に行うことを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、燃料に燃料添加剤を添加することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、燃料に燃料添加剤を傾斜配分添加することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0014】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、燃料供給バーナが、火炉壁面に沿って、燃料と空気とを吹き込み、炉壁近傍に酸素濃度の高い領域を形成することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0015】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、火炉内に、固形物を添加し、灰溶融割合を相対的に低下することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0016】
第7の発明は、第6の発明において、前記固形物が、石炭灰、鉄系添加剤、シリカ系添加剤又はマグネシウム系添加剤の少なくとも一種であることを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0017】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、定格運転の運転初期から低酸素運転を行い、灰中未燃焼分の割合を増大させることを特徴とする燃焼装置の運転制御方法にある。
【0018】
第9の発明は、石油系残渣を燃料とする燃焼装置であって、還元雰囲気の火炉内に、燃料を供給する複数の燃料供給バーナと、所定期間経過後に、定格運転から低負荷運転に変更する指示を前記燃料供給バーナに対して行う制御手段とを備えてなり、前記低負荷運転の際に、火炉内を酸素リッチ状態として、火炉壁の伝熱管における灰付着を低減することを特徴とする燃焼装置にある。
【0019】
第10の発明は、第9の発明において、前記低負荷運転を、過熱蒸気中にスプレ水を供給して減温する減温装置の指令の際に行うことを特徴とする燃焼装置にある。
【0020】
第11の発明は、第9又は10の発明において、燃料供給バーナの下流側に、火炉内に酸素を追加供給する酸素供給ノズルを有することを特徴とする燃焼装置にある。
【0021】
第12の発明は、第9乃至11のいずれか一つの発明において、燃料供給バーナが、火炉壁面に沿って、吹き込むことを特徴とする燃焼装置にある。
【0022】
第13の発明は、第9乃至12のいずれか一つの発明において、火炉内に、固形物を添加することを特徴とする燃焼装置にある。
【0023】
第14の発明は、第9乃至13のいずれか一つの発明において、前記固形物が、石炭灰、鉄系添加剤、シリカ系添加剤又はマグネシウム系添加剤の少なくとも一種であることを特徴とする燃焼装置にある。
【0024】
第15の発明は、第9乃至14のいずれか一つの発明において、前記制御手段が、定格運転の運転初期から低酸素運転を行う制御を行うことを特徴とする燃焼装置にある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、所定運転後に、定格運転から低負荷運転とすることにより、火炉内部の灰付着を低減することができ、燃焼設備の適正な運用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、石油系残渣を燃料とする燃焼装置の概略図である。
【図2】図2は、過熱蒸気の流れ図である。
【図3】図3は、火炉の壁面の水冷管に灰が付着する様子を示す図である。
【図4】酸化数3価、4価、5価の各々の酸化バナジウムが、温度と酸素分圧とにより、固体状態から溶融状態の溶融スラグ45に変化する相関図である。
【図5】図5は、燃焼装置の各部所における酸化バナジウムの酸化状態の挙動の変化を示す図である。
【図6】図6は、添加物の添加による溶融割合(wt%)と灰付着力(g/cm2)との関係図である。
【図7】図7は、火炉断面概略図である。
【図8】図8は、石油コークスにNa分(Nacl)を添加した割合と灰の軟化点(℃)との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0028】
本発明による実施例に係る石油系残渣を燃料とする燃焼装置の運転制御方法及び燃焼装置について、図面を参照して説明する。
図1は、石油系残渣を燃料とする燃焼装置の概略図である。図1に示すように、本実施例に係る石油系残渣を燃料とする燃焼装置10は、石油系残渣を燃料とする燃焼装置であって、還元雰囲気の火炉11内に、燃料12を供給する複数の燃料供給バーナ13(上段バーナ13a、中段バーナ13b、下段バーナ13c)と、所定期間経過後に、定格運転から低負荷運転に変更する指示を実行する図示しない制御手段とを備えてなり、前記低負荷運転の際に、火炉11内を酸素リッチ状態として、火炉壁の伝熱管における灰付着を低減するものである。
【0029】
ここで、燃焼装置10の火炉11内において、燃焼領域15の出口側には、板型過熱器21、2次過熱器22、3次過熱器23、1次過熱器24及び節炭器25が煙道内に順に配され、煙道内において飽和蒸気を過熱して、過熱蒸気を得ている。なお、火炉11の炉底11a側には、溶融スラグ受け部26が設けられている。
【0030】
図2は飽和蒸気の流れ図であり、炉壁の水冷管内からの飽和蒸気30は、一次過熱器24、板型過熱器21、2次過熱器22及び3次過熱器23を順次通過し、過熱蒸気31とし、タービン側に供給している。
ここで、図2においては、火炉内の温度異常上昇の際に過熱器を保護するための減温器32が設けられており、必要に応じてスプレ弁33を調整して、水34を過熱蒸気内に供給して温度を下げるようにしている。
【0031】
よって、過熱蒸気温度が所定の温度以上にあがり、スプレ弁33を調整する指示が制御装置からなされた場合に、火炉11内部の温度上昇があったと判断して、その判断の際又は所定期間後に、前記定格運転から低負荷運転に切り替える指示を行うようにして、灰付着量を低減させて、適正な燃焼領域15に復帰するようにしている。
スプレー弁開度のかわりに、火炉燃焼域15出口に設置された過熱器(例えば板型過熱器21)の蒸気温度上昇分ΔTを検知して判断してもよい。
【0032】
図3は、火炉11の壁面の水冷管40に灰が付着する様子を示している。
図3中、水冷管40の内部は水(約330℃)41が流れており、火炉11を冷却している。水冷管40の炉内側には、石油系残渣を燃料として燃焼した際に発生した飛灰42の一部が溶融して、付着灰43として付着している。
【0033】
火炉11内が還元雰囲気中の場合(例えばCO/CO2=60%/40%)には、飛灰42中の酸化バナジウムが4価の状態で固体であるものの、例えばNaが含まれている燃料を燃焼すると、融点が1400℃から低下するので、その一部が溶融状態となる。この結果、飛灰41の一部において溶融状態となり、付着灰43に付着することで、灰の成長44が起こり、所定厚さDの成長灰44に成長する。
【0034】
ここで、負荷下げ運転すると、灰付着物が溶融するメカニズムを説明する。
定格の通常運転中は、付着灰中のバナジウムは、火炉11内部は還元雰囲気であるので、4価のバナジウムが支配している。
よって、付着した付着灰中のバナジウムも4価である。
これに対し、負荷下げ運転を行うことで、還元雰囲気から酸素リッチ雰囲気となり、付着灰中のバナジウムは、4価から5価のバナジウムとなる。5価のバナジウムは、融点が680℃であるので、炉壁の成長灰45の部分が溶融し、ランニングスラグとなって、スラグ受け部26(図1参照)にサラサラ流れ落ちることとなる。
【0035】
図4は、3価、4価、5価の各々の酸化バナジウムが、温度と酸素分圧(酸素濃度)とにより、固体状態から溶融状態の溶融スラグ45に変化する相関図である。
ここで、図4中、(1)〜(6)の各点は、還元雰囲気において、4価のバナジウム試薬を用いて、軟化溶融性の試験を行った結果である。(1)はN2(不活性)雰囲気で1210℃、(2)は1%O2雰囲気(N2バランス)1250℃、(3)は0.01%O2雰囲気(N2バランス)1590℃、(4)は0.1%O2雰囲気(N2バランス)1590℃、(5)は0.5%O2雰囲気(N2バランス)1300℃、(6)は1%O2雰囲気(N2バランス)1300℃の場合の固体間溶融状態を示している。
【0036】
図4に示すように、飛灰は温度が下がると一部が溶融して付着灰となるが、酸素濃度が上昇(O2濃度1%)すると、溶融状態となる
【0037】
図5は、燃焼装置10の各部所における酸化バナジウムの酸化状態の挙動の変化を示す図である。
横軸は、炉底、下段バーナ、上段バーナ、板型過熱器、節炭器、電気集塵器(EP)の場所を示しており、各場所における付着灰、灰の硫酸溶液に溶解させた溶液の酸化還元電位を測定したものである。
火炉の運転中は、下段バーナ〜上段バーナの領域では、4価のバナジウムが支配しており、板型過熱器以降は5価のバナジウムの存在が確認された。過熱器以降では5価のバナジウムとなりやすいことがわかる。
ここで、炉底において、酸化還元電位が0.86Vとバナジウムの酸化数が5価状態を示すのは火炉を停止した際に取得した灰に関して測定したものである。火炉を停止させると付着灰は低温・高酸素状態にさらされるのでバナジウムの酸化数は5価状態となりやすい。
【0038】
ここで、本発明において負荷下げ運転の負荷率は、定格運転(例えば100MW)を100%とすると、80%(80MW)以下、好ましくは60〜70%(60〜70MW)以下とするのがよい。また、下限値は燃焼装置の最低運転可能な負荷までとする。この燃焼装置の最低運転可能な負荷としては、例えば30%程度の負荷率である。
【0039】
また、負荷下げ運転時間としては、例えば一週間に1回(夜間、例えば7〜10時間程度)程度の負荷下げ運転を実行すればよい。
【0040】
定期的に負荷下げ運転をする一例を説明する。
一般に、火炉内部温度が上昇したら、過熱器の温度上昇を防止するために、図2に示す減温器32が作動(スプレ弁33が作動して水34を減温器32内に供給して過熱蒸気温度を下げる。)して、過熱器を保護する制御を開始する。この場合には、炉内温度が通常よりも高い状態となっていることを示しており、成長した灰付着の厚さが許容値以上となって、炉内温度が上昇していることである。
【0041】
このような状態になったら、負荷下げ運転により、成長した成長灰を溶融状態として除去するようにすればよい。
すなわち、制御装置においてスプレ弁の開度情報を元に、負荷下げ運転行う指令を制御装置から行うようにすることで、灰付着情報を確実に取得して、燃焼装置の灰付着を低減することができる。
【0042】
また、燃料供給バーナ13から燃料添加剤(MgO)を供給する場合には、傾斜配分投入を行うようにすればよい。傾斜配分は後流側に多く傾斜させる。
前記燃料添加剤(MgO)の傾斜配分投入の一例としては、上段バーナ13aを1、中段バーナ13bから0、下段バーナ13cから0の割合で添加する方法や、上段バーナ13aを0.8、中段バーナ13bから0.1、下段バーナ13cから0.1の割合で添加する方法等がある。
これにより、燃料添加剤によるバナジウムの融点上昇を抑えるようにしている。
このように燃料添加剤MgOをV25比でモル比1以上供給する理由は、ボイラ火炉後流側の部材の腐食(5価のバナジウム)を、MgOによって防止するためであるので、燃焼に影響を与えず、しかもバナジウムの融点上昇を防止するためである。
【0043】
ここで、本発明で燃料添加剤としては、酸化マグネシウム(MgO)以外に、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)等のマグネシウム化合物を例示することができる。
【0044】
また、定格で運転しているときに、上段バーナ13aの上段側に設けられた空気を追加供給する空気供給ノズル(図示せず)から空気と共に、燃料添加剤(MgO)を投入するようにしてもよい。
【実施例2】
【0045】
実施例1では、定格運転で所定の期間経過して、低負荷運転をすることで、確実に灰付着を低減するようにしているが、実施例2では、例えば夏場等において定期的な負荷下げが実施できない場合の一時的な運転についての対応である。
【0046】
実施例2においては、定格運転(100%負荷運転)において、溶融物を希釈するために燃料添加剤に、例えば高融点の石炭灰の固体物を燃料の0.5〜5%添加するものである。
石油残渣系燃料中の灰分は0.5%程度と少ないので、固体物の石炭灰で希釈されることにより、灰の付着力は小さくなる。この結果、何も添加しない場合よりも付着灰の成長の期間が長くなる。
なお、上述のように固体物の添加量を規定するのは、5重量%を超えると、石油残渣系燃料の本来の燃焼に悪影響を与えることとなるからであり、一方、0.5重量%未満では添加効果が発現しないからである。
【0047】
図6は、添加物の添加による溶融割合(wt%)と灰付着力(g/cm2)との関係図である。図6においては、粉体として、石英粉を添加したものであり、石英粉との化学反応がないとした場合の溶融割合が、低下すると灰の付着力は低減する。
すなわち、溶融割合は(溶融量)/(固体物量+溶融物量)により決定され、固体物量を増大することで、溶融割合を相対的に低下させることができる。
【0048】
これにより、定格運転を下げずに、灰付着を抑制することができる。
よって、夏場の電力需要大の場合、所定期間(約2〜3週間程度)は、負荷下げ運転をせずに、定格運転をする際、固形物を供給することで、付着灰を抑制する。
【0049】
また、燃料添加剤MgOのモル比(V25に対する)を増大(モル比:1〜3)させるようにしてもよい。
さらに、添加剤として、鉄系添加剤、シリカ系添加剤を添加する(モル比:1〜10)ことで、付着の成長を防止するようにしてもよい。
【0050】
また、固形物を別途供給するのではなく、運転初期から、低酸素運転を行うようにして、灰中の未燃分を増大させるようにしてもよい。すなわち、燃焼条件を調整して、低酸素運転とすることで、未燃焼割合が増加し、溶融灰の希釈となる。
よって、別途固形物を別途供給する必要がなく、定格運転の期間を長くすることができ、結果として低負荷運転の回数を少なくすることができる。
【実施例3】
【0051】
実施例1では、定格運転で所定の期間経過して、低負荷運転をすることで、確実に灰付着を低減するようにしているが、実施例3では、既存の燃焼装置において、バーナ形状を交換することで、定格運転期間を長期化させるようにするものである。
図7は、火炉断面概略図である。
図7に示すように、火炉11の内部に供給する燃料のバーナの配置を角部近傍に設置し、火炉11の各角部近傍から、壁面に沿うように燃料と空気とを供給する燃料供給バーナ13a−1〜13a−4を用いるものである。
【0052】
この結果、炉壁面において、酸素濃度が高い領域50を形成することとなり、還元雰囲気においても、炉壁部分の酸素濃度を上昇させて、付着灰中のバナジウムを5価の酸化物(V25)に変化させて、流下スラグを発生させるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る燃焼装置によれば、所定運転後に、定格運転から低負荷運転とすることにより、火炉内部の灰付着を低減することができ、燃焼設備の適正な運用を図ることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 燃焼装置
11 火炉
12 燃料
13 燃料供給バーナ
15 燃焼領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系残渣を燃料とする燃焼装置の運転制御方法であって、
所定期間経過後に、定格運転から低負荷運転に変更する運転を行い、
前記低負荷運転の際に、火炉内を酸素リッチ状態として、火炉壁の伝熱管における灰付着を低減することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記低負荷運転を、過熱蒸気中にスプレ水を供給して減温する減温装置への指令の際又はその後に行うことを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
燃料に燃料添加剤を添加することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項4】
請求項3において、
燃料に燃料添加剤を傾斜配分添加することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
燃料供給バーナが、火炉壁面に沿って、燃料と空気とを吹き込み、炉壁近傍に酸素濃度の高い領域を形成することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
火炉内に、固形物を添加し、灰溶融割合を相対的に低下することを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記固形物が、石炭灰、鉄系添加剤、シリカ系添加剤又はマグネシウム系添加剤の少なくとも一種であることを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
定格運転の運転初期から低酸素運転を行い、灰中未燃焼分の割合を増大させることを特徴とする燃焼装置の運転制御方法。
【請求項9】
石油系残渣を燃料とする燃焼装置であって、
還元雰囲気の火炉内に、燃料を供給する複数の燃料供給バーナと、
所定期間経過後に、定格運転から低負荷運転に変更する指示を前記燃料供給バーナに対して行う制御手段とを備えてなり、
前記低負荷運転の際に、火炉内を酸素リッチ状態として、火炉壁の伝熱管における灰付着を低減することを特徴とする燃焼装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記低負荷運転を、過熱蒸気中にスプレ水を供給して減温する減温装置の指令の際に行うことを特徴とする燃焼装置。
【請求項11】
請求項9又は10において、
燃料供給バーナの下流側に、火炉内に空気を追加供給する空気供給ノズルを有することを特徴とする燃焼装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一つにおいて、
燃料供給バーナが、火炉壁面に沿って、吹き込むことを特徴とする燃焼装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一つにおいて、
火炉内に、固形物を添加することを特徴とする燃焼装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか一つにおいて、
前記固形物が、石炭灰、鉄系添加剤、シリカ系添加剤又はマグネシウム系添加剤の少なくとも一種であることを特徴とする燃焼装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか一つにおいて、
前記制御手段が、定格運転の運転初期から低酸素運転を行う制御を行うことを特徴とする燃焼装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−52895(P2011−52895A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202030(P2009−202030)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】