燃焼装置
【課題】予混合ガスと燃焼ガスとの間の熱交換の効率が高く、ガスの圧力損失が低減されている、燃焼装置を提供する。
【解決手段】ほぼ中心に配置され、燃焼室2と、供給流路31のあるガス供給部3と、燃焼ガス流路41のある排気部4と、供給流路31及び燃焼室2に連通して予混合ガスG1を燃焼室2へ供給する流入流路11と、燃焼室2及び燃焼ガス流路41に連通して燃焼ガスG2を排気部4へ排出する排気流路12と、流入流路11と排気流路12とを隔てるとともに燃焼ガスG2からの熱により予混合ガスG1を予熱する伝熱壁13と、がある熱交換部5と、を有し、熱交換部5において、流入流路11及び排気流路12が、燃焼室2を中心として放射状に、交互に、並行させて、複数設けられて、流入流路11及び排気流路12の流路断面積が、中心の側から外周側に向かって漸次減少している、燃焼装置1とする。
【解決手段】ほぼ中心に配置され、燃焼室2と、供給流路31のあるガス供給部3と、燃焼ガス流路41のある排気部4と、供給流路31及び燃焼室2に連通して予混合ガスG1を燃焼室2へ供給する流入流路11と、燃焼室2及び燃焼ガス流路41に連通して燃焼ガスG2を排気部4へ排出する排気流路12と、流入流路11と排気流路12とを隔てるとともに燃焼ガスG2からの熱により予混合ガスG1を予熱する伝熱壁13と、がある熱交換部5と、を有し、熱交換部5において、流入流路11及び排気流路12が、燃焼室2を中心として放射状に、交互に、並行させて、複数設けられて、流入流路11及び排気流路12の流路断面積が、中心の側から外周側に向かって漸次減少している、燃焼装置1とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合ガスとこれを燃焼させて生じる燃焼ガスとの間で熱が交換されることにより、エネルギー効率が向上されている燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への負荷を小さくするために、省エネ化が進められている。熱エネルギーを使う際、エネルギー効率良く熱を発生させることができれば、化石燃料等の資源の節約、二酸化炭素(CO2)の排出の低減にも貢献できる。
【0003】
省エネ化の技術としては、熱交換器、あるいはマイクロコンバスタと呼ばれる燃焼装置がある。この燃焼装置では、燃焼後に排出される燃焼ガスの熱を活用して、予混合ガスの燃焼効率が向上している。
【0004】
一般に、従来公知の燃焼装置では、燃焼ガスの流れる流路と予混合ガスの流れる流路とが伝熱壁を隔てて配置されて、燃焼ガスの熱が予混合ガスを予熱する。近年の技術としては、例えば、次の4つの特許文献に開示されている。特許文献1には、予混合ガスの流れる流路と燃焼ガスの流れる流路とが1つずつ設けられ、両流路が並行しながらスイスロール型に巻回している、マイクロコンバスタが開示されている。特許文献2には、予混合ガスの流れる流路が1つ巻回している層と、燃焼ガスの流れる流路が1つ巻回している層とが積層している、2層式燃焼器が開示されている。特許文献3には、予混合ガスの流れる流路と燃焼ガスの流れる流路とがそれぞれ複数設けられ、両流路が交互に配置されている、燃焼加熱器が開示されている。また、特許文献4には、熱交換の効率を向上させるために、セラミックス製の部材が用いられている、熱交換器の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4041984号公報
【特許文献2】特開2008−224197号公報
【特許文献3】特開2007−212081号公報
【特許文献4】特開平9−253945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている装置では、燃焼ガスの流れる流路が長いため、この流路の上流側と下流側での燃焼ガスの温度差が大きい。燃焼ガスに予熱される予混合ガスについてみると、予混合ガスは、燃焼場所から近く温度の高い燃焼ガスによって予熱されると体積の増加の割合が大きくなり、燃焼場所から遠く温度の低い燃焼ガスによって予熱されると体積の増加の割合が小さくなる。ガスの体積が流路内で大きく異なるとき、ガスの体積が小さい側から大きい側へ予混合ガスを流すためには、ガスの体積の増加に逆らって、ガスを押し込む圧力が必要になる。すなわち、ガスの圧力損失が生じてしまう。この問題への対策として、特許文献2では、温度によるガスの体積の変化を考慮し、流路の断面積が漸次変化されている。しかしながら、この特許文献2に開示される装置でも、熱交換器内でのガスの滞在時間である伝熱時間を長くするために、流路を巻回することにより伝熱時間を長くしている点では、特許文献1に開示されるスイスロール型の装置と同じであり、特許文献1の装置にて問題とされた圧力損失の増大は、本質的には解決されていない。
【0007】
特許文献3に開示されている装置では、複数の流路が、放射状に形成されている。この装置では、予混合ガスが中心部から外周部へ放射状に流れ、外周部で予混合ガスが燃焼して燃焼ガスが発生し、燃焼ガスが中心部へ収束されように流れる。しかしながら、特許文献3では、予混合ガスを燃焼する燃焼室の体積を増大させて、燃焼負荷率を低くすることに焦点が向けられ、熱交換の効率を向上させる観点からの実施形態は開示されず、流路を流れるガスの圧力損失への対策が考慮されていない。
【0008】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、予混合ガスと燃焼ガスとの間の熱交換の効率が高く、内部を流れるガスの圧力損失が低減されている、燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者は、鋭意検討して本発明を完成するに至った。具体的に述べると、本発明として、以下に示す燃焼装置が提供される。
【0010】
[1] ほぼ中心に配置され、予混合ガスを燃焼させて燃焼ガスとするための着火手段が設けられている燃焼室と、外周側から前記燃焼室に向かって供給される前記予混合ガスを流す、供給流路が設けられているガス供給部と、前記燃焼室から前記外周側に向かって排出される前記燃焼ガスを流す、燃焼ガス流路が設けられている排気部と、前記外周側から前記中心の側に前記混合ガスを流すために、前記供給流路及び前記燃焼室に連通する流入流路と、前記中心の側から前記外周側に前記燃焼ガスを流すために、前記燃焼室及び前記燃焼ガス流路に連通する排気流路と、が設けられ、さらに、前記流入流路と前記排気流路とを隔てるとともに前記燃焼ガスからの熱により前記予混合ガスを予熱する伝熱壁が設けられている、熱交換部と、を有し、前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、それぞれ前記燃焼室を中心として放射状に複数設けられ、さらに前記流入流路と前記排気流路とが、並行して、交互に設けられて、前記流入流路及び前記排気流路の流路断面積が、前記中心の側から前記外周側に向かって漸次減少している、燃焼装置。
【0011】
[2] 前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、渦巻き状に形成されている、前記[1]に記載の燃焼装置。
【0012】
[3] 前記熱交換部において、前記伝熱壁が、前記外周側から前記中心の側にかけて捩れるように形成されて前記流入流路と前記排気流路とを隔てている、前記[1]又は[2]に記載の燃焼装置。
【0013】
[4] 前記熱交換部において、前記流入流路の上流端である流入流路入口と、前記排気流路の下流端である排気流路出口とが、上下方向にずらされて設けられている、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の燃焼装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃焼装置は、予混合ガスと燃焼ガスとの間の熱交換の効率が高く、内部を流れるガスの圧力損失が低減されている効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の燃焼装置の一実施形態の平面図であり、燃焼室の上壁及び側壁が除かれて燃焼室の内部が表されている。
【図2】図1中のA−A’断面における、本発明の燃焼装置の縦断面図である。
【図3】図1中の燃焼装置に設けられている熱交換部の平面図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図4】図3に表す熱交換部の一部の斜視図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図5A】図4中に示す流路方向に垂直なA−A’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図5B】図4中に示す流路方向に垂直なB−B’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図6】図4中に示す伝熱壁を1つ表している斜視図である。
【図7】本発明の燃焼装置に備えられる熱交換部の一形態を表す平面図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図8】図7中に示す伝熱壁を1つ表している斜視図である。
【図9】熱交換部の一部の斜視図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図10A】図9中に示す流路方向に垂直なA−A’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図10B】図9中に示す流路方向に垂直なB−B’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図11】図9中に示す伝熱壁を1つ表している斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
1.本発明の燃焼装置の基本的な形態:
本発明の燃焼装置では、予混合ガスの燃焼によって燃焼ガスが発生し、その内部に予混合ガス及び燃焼ガスが流れる際に、燃焼ガスの熱によって、予混合ガスが予熱される。本発明の燃焼装置は、内部を両ガスが流れるときに、予混合ガスの予熱が効率よくなされる形態を備えている。
【0018】
1−1.予混合ガス及び燃焼ガスの流れ、並びに各部の位置関係:
まず、本発明の燃焼装置における、予混合ガス及び燃焼ガスの流れを説明しつつ、燃焼装置を構成する各部の位置関係について述べる。
【0019】
図1は、本発明の燃焼装置の一実施形態の平面図である。なお、図1は、燃焼室2の上壁60及び側壁59が取り除かれた状態で表す(上壁60と側壁59は図2参照)。図2は、図1中のA−A’断面における、燃焼装置1の縦断面図であり、予混合ガスG1と燃焼ガスG2の流れも示す。本発明の燃焼装置1には、燃焼室2、ガス供給部3、排気部4、及び熱交換部5がある。本発明の燃焼装置1において、各部内には、予混合ガスG1及び/又は燃焼ガスG2の流れる流路がある。なお、「流路」は、予混合ガスG1又は燃焼ガスG2が所定の方向に流れている閉鎖空間のある構造である。具体例を挙げると、流路は、気密性の高い部材からなる壁に囲まれる中空部を有するものであり、筒形状あるいは管形状などである。
【0020】
図2に示すように、燃焼室2は、燃焼装置1の中心又はほぼ中心にあり、着火手段が設けられている。図2では、着火装置51が、着火手段の一実施形態として表されている。この着火装置51(着火手段)によって、予混合ガスG1が燃焼し、燃焼ガスG2が発生する。
【0021】
予混合ガスG1は、外周側から中心側に向かい、ガス供給部3から、熱交換部5を経由して、燃焼室2へと流れる(図2参照)。予混合ガスG1の流路としては、ガス供給部3には供給流路31があり、熱交換部5には流入流路11がある。熱交換部5の流入流路11は、外周側にある流入流路入口21にて供給流路31と連通し、中心側にある流入流路出口22にて燃焼室2と連通している。このような連通の位置関係が保たれる限り、燃焼室2、熱交換部5、ガス供給部3の配置は特に制限されない。
【0022】
燃焼ガスG2は、中心側から外周側に向かい、燃焼室2から、熱交換部5を経由して、排気部4へと流れる(図2参照)。燃焼ガスG2の流路としては、熱交換部5には排気流路12があり、排気部4には燃焼ガス流路41がある。熱交換部5の排気流路12は、中心側にある排気流路入口23にて燃焼室2と連通し、外周側にある排気流路出口24にて燃焼ガス流路41と連通している。このような連通の位置関係が保たれる限り、燃焼室2、熱交換部5、ガス供給部3の配置は特に制限されない。
【0023】
1−2.熱交換部における予混合ガスの予熱の仕組み:
図3は、図1中の熱交換部5を抽出し、予混合ガスG1と燃焼ガスG2の流れを示す平面図である。熱交換部5では、流入流路11及び排気流路12が複数あり、両流路は燃焼室2を中心として放射状に形成されている。さらに、熱交換部5では、流入流路11と排気流路12とが、並行して交互に設けられている。よって、熱交換部5では、予混合ガスG1が外周側から中心の燃焼室2に向かって1つに収束されるように放射方向に流れ、燃焼ガスG2が中心側から外周側へ複数に分配されて放射方向に流れる。
【0024】
図4は、図3に表されている熱交換部5の一部の斜視図である。図5Aは、図4中のA−A’断面における断面図であり、図5Bは、図4中のB−B’断面における断面図である。なお、図5A及び5Bの断面は、流入流路11及び排気流路12の流路方向に垂直な断面(以下、「流路断面」)を表している。図4からわかるように、A−A’断面の位置では、流路方向はほぼ上下方向であるため、図5Aは熱交換部5の横断面にあたり、B−B’断面の位置では、流路方向が放射方向であるため、図5Bは熱交換部5の縦断面にあたる。
【0025】
図5Aに示すように、熱交換部5では、伝熱壁13が、流入流路11と排気流路12とを隔てている。図5A中の符号Hの矢印で表すように、排気流路12内を流れる燃焼ガスG2の熱が伝熱壁13に伝わり、続いて伝熱壁13の熱が予混合ガスG1へと伝わる。このようにして、熱交換部5では、伝熱壁13を介して、予混合ガスG1が、燃焼ガスG2の熱によって予熱される。図6は図4中に表す伝熱壁13bの斜視図であり、伝熱壁13bが平面になっていることがわかる。
【0026】
熱交換部5では、流入流路11及び排気流路12が放射状に設けられているため、燃焼室2及び燃焼室2内にある燃焼装置51(燃焼手段)は1つあればよく、予混合ガスG1の燃焼が簡単に調節できる。
【0027】
「放射状」とは、燃焼装置1の中心側から外周側の方向にて、流入流路11及び排気流路12が形成されていることを意味する。なお、流入流路11及び排気流路12の延長が、燃焼装置1の中心側の1点に収束するほど厳密なものでなくても放射状にあたる。また、流入流路11及び排気流路12が、燃焼室2を中心として全方向へ均等に配置されていなくても放射状にあたる。
【0028】
熱交換部5では、流入流路11と排気流路12とが並行して設けられているため、伝熱壁13は、中心側から外周側の方向に長さがある。そのため、伝熱壁13の面積が大きくなり、熱交換の効率が良くなる。
【0029】
「並行」とは、流体流路11と排気流路12とが、隣接して、中心側から外周側の方向で並んでいることを意味する。二重螺旋形状などのように、流体流路11と排気流路12とがねじれながら並んでいることも並行にあたる。
【0030】
熱交換部5では、流入流路11と排気流路12とが交互に設けられているため、流路方向に垂直な断面から流入流路11をみたとき、1つの流入流路11が伝熱壁13を挟んで2箇所で排気流路12に隣接するかたちとなり、流入流路11を構成する壁のうち伝熱壁13が占める比率が高くなることよって予熱の効率も良くなる。また、1つの流入流路11に並行する2つの排気流路12のうち、1つの排気流路12に閉塞などの不具合が生じても、他の正常な排気流路12によって補完される利点もある。
【0031】
「交互」とは、流入流路11が2以上の排気流路12と並行する、又は、排気流路12が2以上の流入流路11と並行する、ことをいう。本発明の燃焼装置1では、全ての流入流路11が、それぞれ2以上の排気流路12と並行していることが好ましい。また、全ての排気流路12が、2以上の流入流路11と並行することが好ましい。さらに、流入流路11と排気流路12が、全て交互に並行していることも好ましい。ただし、本発明の燃焼装置1では、流入流路11及び排気流路12の全てが、ここにいう交互の状態にあることまでは要求されない。
【0032】
熱交換部5では、流入流路11及び排気流路12がそれぞれ複数あるため、伝熱壁13の数が増えて、伝熱壁13の総面積も大きくできる。また、流入流路11及び排気流路12は、伝熱壁13の総面積の大きさを維持したまま、1つあたりの流路長を短くできる。そのため、予混合ガスG1及び燃焼ガスG2は、同一流路内での温度差が小さくなり、温度に依存した体積の変化も小さくなるため、これらガスの圧力損失を小さくできる。
【0033】
1−3.熱交換部にける流入流路及び排気流路の流路断面積:
図4の斜視図、並びに図5A及び5Bの流路断面の図に表すように、熱交換部5では、流入流路11の流路断面積、及び排気流路12の流路断面積が、燃焼装置1の中心側から外周側に向かって漸次減少している。燃焼ガスG2は燃焼室2に近い中心側では温度が高いため、これにより予熱される予混合ガスG2も、流入流路11の中心側では温度が高く体積も大きい。中心側から外周側に向かって漸次減少している流路断面積にすると、流入流路11内での予混合ガスG1の圧力損失が小さくなり、予混合ガスG1の体積の増加に逆らって無理に予混合ガスG1を押し込む必要がないため、ガスの流れをスムーズにできる。また、このような流路断面積の形態では、燃焼室2側の伝熱壁13の面積が大きいため(図4、及び図5Aと5Bとの比較参照)、燃焼ガスG2が中心側にあって高い温度のときに、予混合ガスG1を効果的に予熱できる。
【0034】
本発明の燃焼装置1では、各部及び各流路が、上述の基本的な形態を備えて形成されているものあればよい。本発明の燃焼装置1は、1つの容体の内部が壁に仕切られた構造であっても、あるいは複数の部材を組み合わせて一体化させた構造であってもよい。上述の基本的な形態が具備されている限りは、製造・使用する者等の事情に応じて燃焼装置1を設計できる。
【0035】
2.本発明の燃焼装置を構成する各部の説明:
以下、本発明の燃焼装置1を構成する、「熱交換部」、「ガス供給部」、「排気部」、及び「燃焼室」ついて順次詳しく説明する。
【0036】
2−1.熱交換部:
熱交換部5は、先に述べた基本的な形態が備えられた上で、さらに以下に述べる実施形態にできる。
【0037】
2−1−1.流入流路及び排気流路の方向:
図7は、熱交換部5の平面図を表す。図7に表される熱交換部5は、図3に表される熱交換部5について、流入流路11及び排気流路12の流路方向に変更が加えられたものである。図7に示すように、熱交換部5は、流入流路11及び排気流路12が、渦巻き状に形成されていることが好ましい。
【0038】
図8は、図7中に表す伝熱壁13の斜視図であり、図6の伝熱壁13bの斜視図と対比できる。図8に表す伝熱壁13は、湾曲しているが、捩れていない。この形態の伝熱壁13では、図6に示す形態の伝熱壁13と比較して、放射方向、言い換えれば流路方向において長くなり、伝熱壁13の面積が大きくなるため、予混合ガスG1の予熱の効率が上がる。
【0039】
2−1−2.伝熱壁が捩れるように形成されている実施形態:
図9は、熱交換部5の一部の斜視図を表しており、この図に表す熱交換部5は、図4に表す熱交換部5に対して伝熱壁13の形状において対照となる。図10Aは、図9中のA−A’断面における断面図であり、図10Bは、図9中のB−B’断面の断面図であって、ともに流路断面を表している。図11は、図9中に表す伝熱壁13bの斜視図である。これらの図から理解できるように、熱交換部5では、伝熱壁13が、外周側から中心側にかけて捩れるように形成されていることが好ましい。
【0040】
図9に示す、捩れている伝熱壁13を有する熱交換部5と、図4に示す、捩れていない伝熱壁13を有する熱交換部5とを比較する。図10A及び図5Aに表されるA−A’断面上において比較すると、流入流路11a、11b及び排気流路12の流路断面の面積は同じであるが、図10Aの断面に表される伝熱壁13、13a、13bの長さは、図5Aの断面に表される伝熱壁13、13a、13bよりも長い。流入流路11aを一例として伝熱壁13以外の壁をみると、流入流路11aを構成する外周壁14については、図10A及び5Aの間でその長さが同じであり、流入流路11aを構成する内周壁15についても同様である。以上から理解されるように、伝熱壁13が捩れている形態では、流入流路11及び排気流路12を構成する壁の全面積において、伝熱壁13の面積が占める割合が著しく増加する。すなわち、伝熱壁13が捩れている形態では、伝熱壁13が捩れていない形態と比較して、排気流路12について述べれば、そこに流れる燃焼ガスG2の熱が伝熱壁13にもれなく吸収され、また、流入流路11について述べれば、そこに流れる予混合ガスG1が伝熱壁13によって効率よく予熱される。
【0041】
2−1−3.流入流路入口及び排気流路出口の位置:
図4の斜視図及び図5Bの断面図に表すように、熱交換部5は、流入流路入口21と排気流路出口24とが、上下方向にずらされて設けられていることが好ましい。この形態では、流入流路11と供給流路31との連通、及び排気流路12と燃焼ガス流路41との連通が、容易にできる。
【0042】
図1〜4、並びに5A及び5Bに示す燃焼装置1では、流入流路入口21が下方に、排気流路出口24が上方に設けられている。この形態では、ガス供給部3が下層にあり、排気部4が上層にある、環状の2層構造が適用できる。
【0043】
2−1−4.熱交換部の材料:
熱交換部5は、流入流路11及び排気流路12が、気密性の保たれる材料から形成されることが好ましい。伝熱壁13は、熱伝導の効率が高い材料から形成されることが好ましい。このような条件を満たす熱交換部5の材料としては、金属やセラミックスが挙げられる。
【0044】
セラミックスは、熱伝導率が高く、複雑な形状にも成形されやすいため、熱交換部5の材料として好適である。具体的に述べると、熱交換部5は、窒化珪素、炭化珪素、コーディエライト、アルミナよりなる群から選ばれる少なくも1種以上を主成分するセラミックスからなることが好ましい。セラミックスからなる熱交換部5の作製は、熱交換部5の大きさ、形状、及び熱伝導などの性状に応じて、セラミックスに関連する技術分野の当業者が通常使う製法によりできる。
【0045】
2−2.燃焼室:
図1及び2に表すように、燃焼室2での着火装置51の配置は、着火点52が燃焼室2の放射方向の中央付近にあるとよい。予混合ガスG1が、燃焼室2の中心付近に収束するように流れるためである。また、燃焼ガスG2が予混合ガスG1よりも燃焼室2内を上昇する傾向のあるときには、着火点52が燃焼室2の下部にあると、予混合ガスG1が効率よく燃焼できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、予混合ガスとこれを燃焼させて生じる燃焼ガスとの間の熱交換がなされることにより、エネルギー効率が向上されている燃焼装置として利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1:燃焼装置、2:燃焼室、3:ガス供給部、4:排気部、5:熱交換部、11:流入流路、12:排気流路、13:伝熱壁、13a:伝熱壁、13b:伝熱壁、14:外周壁、15:内周壁、21:流入流路入口、22:流入流路出口、23:排気流路入口、24:排気流路出口、31:供給流路、41:燃焼ガス流路、51:着火装置、52:着火点、58:底壁、59:側壁、60:上壁、61:隔壁。
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合ガスとこれを燃焼させて生じる燃焼ガスとの間で熱が交換されることにより、エネルギー効率が向上されている燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への負荷を小さくするために、省エネ化が進められている。熱エネルギーを使う際、エネルギー効率良く熱を発生させることができれば、化石燃料等の資源の節約、二酸化炭素(CO2)の排出の低減にも貢献できる。
【0003】
省エネ化の技術としては、熱交換器、あるいはマイクロコンバスタと呼ばれる燃焼装置がある。この燃焼装置では、燃焼後に排出される燃焼ガスの熱を活用して、予混合ガスの燃焼効率が向上している。
【0004】
一般に、従来公知の燃焼装置では、燃焼ガスの流れる流路と予混合ガスの流れる流路とが伝熱壁を隔てて配置されて、燃焼ガスの熱が予混合ガスを予熱する。近年の技術としては、例えば、次の4つの特許文献に開示されている。特許文献1には、予混合ガスの流れる流路と燃焼ガスの流れる流路とが1つずつ設けられ、両流路が並行しながらスイスロール型に巻回している、マイクロコンバスタが開示されている。特許文献2には、予混合ガスの流れる流路が1つ巻回している層と、燃焼ガスの流れる流路が1つ巻回している層とが積層している、2層式燃焼器が開示されている。特許文献3には、予混合ガスの流れる流路と燃焼ガスの流れる流路とがそれぞれ複数設けられ、両流路が交互に配置されている、燃焼加熱器が開示されている。また、特許文献4には、熱交換の効率を向上させるために、セラミックス製の部材が用いられている、熱交換器の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4041984号公報
【特許文献2】特開2008−224197号公報
【特許文献3】特開2007−212081号公報
【特許文献4】特開平9−253945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている装置では、燃焼ガスの流れる流路が長いため、この流路の上流側と下流側での燃焼ガスの温度差が大きい。燃焼ガスに予熱される予混合ガスについてみると、予混合ガスは、燃焼場所から近く温度の高い燃焼ガスによって予熱されると体積の増加の割合が大きくなり、燃焼場所から遠く温度の低い燃焼ガスによって予熱されると体積の増加の割合が小さくなる。ガスの体積が流路内で大きく異なるとき、ガスの体積が小さい側から大きい側へ予混合ガスを流すためには、ガスの体積の増加に逆らって、ガスを押し込む圧力が必要になる。すなわち、ガスの圧力損失が生じてしまう。この問題への対策として、特許文献2では、温度によるガスの体積の変化を考慮し、流路の断面積が漸次変化されている。しかしながら、この特許文献2に開示される装置でも、熱交換器内でのガスの滞在時間である伝熱時間を長くするために、流路を巻回することにより伝熱時間を長くしている点では、特許文献1に開示されるスイスロール型の装置と同じであり、特許文献1の装置にて問題とされた圧力損失の増大は、本質的には解決されていない。
【0007】
特許文献3に開示されている装置では、複数の流路が、放射状に形成されている。この装置では、予混合ガスが中心部から外周部へ放射状に流れ、外周部で予混合ガスが燃焼して燃焼ガスが発生し、燃焼ガスが中心部へ収束されように流れる。しかしながら、特許文献3では、予混合ガスを燃焼する燃焼室の体積を増大させて、燃焼負荷率を低くすることに焦点が向けられ、熱交換の効率を向上させる観点からの実施形態は開示されず、流路を流れるガスの圧力損失への対策が考慮されていない。
【0008】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、予混合ガスと燃焼ガスとの間の熱交換の効率が高く、内部を流れるガスの圧力損失が低減されている、燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者は、鋭意検討して本発明を完成するに至った。具体的に述べると、本発明として、以下に示す燃焼装置が提供される。
【0010】
[1] ほぼ中心に配置され、予混合ガスを燃焼させて燃焼ガスとするための着火手段が設けられている燃焼室と、外周側から前記燃焼室に向かって供給される前記予混合ガスを流す、供給流路が設けられているガス供給部と、前記燃焼室から前記外周側に向かって排出される前記燃焼ガスを流す、燃焼ガス流路が設けられている排気部と、前記外周側から前記中心の側に前記混合ガスを流すために、前記供給流路及び前記燃焼室に連通する流入流路と、前記中心の側から前記外周側に前記燃焼ガスを流すために、前記燃焼室及び前記燃焼ガス流路に連通する排気流路と、が設けられ、さらに、前記流入流路と前記排気流路とを隔てるとともに前記燃焼ガスからの熱により前記予混合ガスを予熱する伝熱壁が設けられている、熱交換部と、を有し、前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、それぞれ前記燃焼室を中心として放射状に複数設けられ、さらに前記流入流路と前記排気流路とが、並行して、交互に設けられて、前記流入流路及び前記排気流路の流路断面積が、前記中心の側から前記外周側に向かって漸次減少している、燃焼装置。
【0011】
[2] 前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、渦巻き状に形成されている、前記[1]に記載の燃焼装置。
【0012】
[3] 前記熱交換部において、前記伝熱壁が、前記外周側から前記中心の側にかけて捩れるように形成されて前記流入流路と前記排気流路とを隔てている、前記[1]又は[2]に記載の燃焼装置。
【0013】
[4] 前記熱交換部において、前記流入流路の上流端である流入流路入口と、前記排気流路の下流端である排気流路出口とが、上下方向にずらされて設けられている、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の燃焼装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃焼装置は、予混合ガスと燃焼ガスとの間の熱交換の効率が高く、内部を流れるガスの圧力損失が低減されている効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の燃焼装置の一実施形態の平面図であり、燃焼室の上壁及び側壁が除かれて燃焼室の内部が表されている。
【図2】図1中のA−A’断面における、本発明の燃焼装置の縦断面図である。
【図3】図1中の燃焼装置に設けられている熱交換部の平面図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図4】図3に表す熱交換部の一部の斜視図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図5A】図4中に示す流路方向に垂直なA−A’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図5B】図4中に示す流路方向に垂直なB−B’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図6】図4中に示す伝熱壁を1つ表している斜視図である。
【図7】本発明の燃焼装置に備えられる熱交換部の一形態を表す平面図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図8】図7中に示す伝熱壁を1つ表している斜視図である。
【図9】熱交換部の一部の斜視図であり、伝熱壁の輪郭が透視されて破線で表されている。
【図10A】図9中に示す流路方向に垂直なA−A’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図10B】図9中に示す流路方向に垂直なB−B’断面における、熱交換部の一部の断面図である。
【図11】図9中に示す伝熱壁を1つ表している斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
1.本発明の燃焼装置の基本的な形態:
本発明の燃焼装置では、予混合ガスの燃焼によって燃焼ガスが発生し、その内部に予混合ガス及び燃焼ガスが流れる際に、燃焼ガスの熱によって、予混合ガスが予熱される。本発明の燃焼装置は、内部を両ガスが流れるときに、予混合ガスの予熱が効率よくなされる形態を備えている。
【0018】
1−1.予混合ガス及び燃焼ガスの流れ、並びに各部の位置関係:
まず、本発明の燃焼装置における、予混合ガス及び燃焼ガスの流れを説明しつつ、燃焼装置を構成する各部の位置関係について述べる。
【0019】
図1は、本発明の燃焼装置の一実施形態の平面図である。なお、図1は、燃焼室2の上壁60及び側壁59が取り除かれた状態で表す(上壁60と側壁59は図2参照)。図2は、図1中のA−A’断面における、燃焼装置1の縦断面図であり、予混合ガスG1と燃焼ガスG2の流れも示す。本発明の燃焼装置1には、燃焼室2、ガス供給部3、排気部4、及び熱交換部5がある。本発明の燃焼装置1において、各部内には、予混合ガスG1及び/又は燃焼ガスG2の流れる流路がある。なお、「流路」は、予混合ガスG1又は燃焼ガスG2が所定の方向に流れている閉鎖空間のある構造である。具体例を挙げると、流路は、気密性の高い部材からなる壁に囲まれる中空部を有するものであり、筒形状あるいは管形状などである。
【0020】
図2に示すように、燃焼室2は、燃焼装置1の中心又はほぼ中心にあり、着火手段が設けられている。図2では、着火装置51が、着火手段の一実施形態として表されている。この着火装置51(着火手段)によって、予混合ガスG1が燃焼し、燃焼ガスG2が発生する。
【0021】
予混合ガスG1は、外周側から中心側に向かい、ガス供給部3から、熱交換部5を経由して、燃焼室2へと流れる(図2参照)。予混合ガスG1の流路としては、ガス供給部3には供給流路31があり、熱交換部5には流入流路11がある。熱交換部5の流入流路11は、外周側にある流入流路入口21にて供給流路31と連通し、中心側にある流入流路出口22にて燃焼室2と連通している。このような連通の位置関係が保たれる限り、燃焼室2、熱交換部5、ガス供給部3の配置は特に制限されない。
【0022】
燃焼ガスG2は、中心側から外周側に向かい、燃焼室2から、熱交換部5を経由して、排気部4へと流れる(図2参照)。燃焼ガスG2の流路としては、熱交換部5には排気流路12があり、排気部4には燃焼ガス流路41がある。熱交換部5の排気流路12は、中心側にある排気流路入口23にて燃焼室2と連通し、外周側にある排気流路出口24にて燃焼ガス流路41と連通している。このような連通の位置関係が保たれる限り、燃焼室2、熱交換部5、ガス供給部3の配置は特に制限されない。
【0023】
1−2.熱交換部における予混合ガスの予熱の仕組み:
図3は、図1中の熱交換部5を抽出し、予混合ガスG1と燃焼ガスG2の流れを示す平面図である。熱交換部5では、流入流路11及び排気流路12が複数あり、両流路は燃焼室2を中心として放射状に形成されている。さらに、熱交換部5では、流入流路11と排気流路12とが、並行して交互に設けられている。よって、熱交換部5では、予混合ガスG1が外周側から中心の燃焼室2に向かって1つに収束されるように放射方向に流れ、燃焼ガスG2が中心側から外周側へ複数に分配されて放射方向に流れる。
【0024】
図4は、図3に表されている熱交換部5の一部の斜視図である。図5Aは、図4中のA−A’断面における断面図であり、図5Bは、図4中のB−B’断面における断面図である。なお、図5A及び5Bの断面は、流入流路11及び排気流路12の流路方向に垂直な断面(以下、「流路断面」)を表している。図4からわかるように、A−A’断面の位置では、流路方向はほぼ上下方向であるため、図5Aは熱交換部5の横断面にあたり、B−B’断面の位置では、流路方向が放射方向であるため、図5Bは熱交換部5の縦断面にあたる。
【0025】
図5Aに示すように、熱交換部5では、伝熱壁13が、流入流路11と排気流路12とを隔てている。図5A中の符号Hの矢印で表すように、排気流路12内を流れる燃焼ガスG2の熱が伝熱壁13に伝わり、続いて伝熱壁13の熱が予混合ガスG1へと伝わる。このようにして、熱交換部5では、伝熱壁13を介して、予混合ガスG1が、燃焼ガスG2の熱によって予熱される。図6は図4中に表す伝熱壁13bの斜視図であり、伝熱壁13bが平面になっていることがわかる。
【0026】
熱交換部5では、流入流路11及び排気流路12が放射状に設けられているため、燃焼室2及び燃焼室2内にある燃焼装置51(燃焼手段)は1つあればよく、予混合ガスG1の燃焼が簡単に調節できる。
【0027】
「放射状」とは、燃焼装置1の中心側から外周側の方向にて、流入流路11及び排気流路12が形成されていることを意味する。なお、流入流路11及び排気流路12の延長が、燃焼装置1の中心側の1点に収束するほど厳密なものでなくても放射状にあたる。また、流入流路11及び排気流路12が、燃焼室2を中心として全方向へ均等に配置されていなくても放射状にあたる。
【0028】
熱交換部5では、流入流路11と排気流路12とが並行して設けられているため、伝熱壁13は、中心側から外周側の方向に長さがある。そのため、伝熱壁13の面積が大きくなり、熱交換の効率が良くなる。
【0029】
「並行」とは、流体流路11と排気流路12とが、隣接して、中心側から外周側の方向で並んでいることを意味する。二重螺旋形状などのように、流体流路11と排気流路12とがねじれながら並んでいることも並行にあたる。
【0030】
熱交換部5では、流入流路11と排気流路12とが交互に設けられているため、流路方向に垂直な断面から流入流路11をみたとき、1つの流入流路11が伝熱壁13を挟んで2箇所で排気流路12に隣接するかたちとなり、流入流路11を構成する壁のうち伝熱壁13が占める比率が高くなることよって予熱の効率も良くなる。また、1つの流入流路11に並行する2つの排気流路12のうち、1つの排気流路12に閉塞などの不具合が生じても、他の正常な排気流路12によって補完される利点もある。
【0031】
「交互」とは、流入流路11が2以上の排気流路12と並行する、又は、排気流路12が2以上の流入流路11と並行する、ことをいう。本発明の燃焼装置1では、全ての流入流路11が、それぞれ2以上の排気流路12と並行していることが好ましい。また、全ての排気流路12が、2以上の流入流路11と並行することが好ましい。さらに、流入流路11と排気流路12が、全て交互に並行していることも好ましい。ただし、本発明の燃焼装置1では、流入流路11及び排気流路12の全てが、ここにいう交互の状態にあることまでは要求されない。
【0032】
熱交換部5では、流入流路11及び排気流路12がそれぞれ複数あるため、伝熱壁13の数が増えて、伝熱壁13の総面積も大きくできる。また、流入流路11及び排気流路12は、伝熱壁13の総面積の大きさを維持したまま、1つあたりの流路長を短くできる。そのため、予混合ガスG1及び燃焼ガスG2は、同一流路内での温度差が小さくなり、温度に依存した体積の変化も小さくなるため、これらガスの圧力損失を小さくできる。
【0033】
1−3.熱交換部にける流入流路及び排気流路の流路断面積:
図4の斜視図、並びに図5A及び5Bの流路断面の図に表すように、熱交換部5では、流入流路11の流路断面積、及び排気流路12の流路断面積が、燃焼装置1の中心側から外周側に向かって漸次減少している。燃焼ガスG2は燃焼室2に近い中心側では温度が高いため、これにより予熱される予混合ガスG2も、流入流路11の中心側では温度が高く体積も大きい。中心側から外周側に向かって漸次減少している流路断面積にすると、流入流路11内での予混合ガスG1の圧力損失が小さくなり、予混合ガスG1の体積の増加に逆らって無理に予混合ガスG1を押し込む必要がないため、ガスの流れをスムーズにできる。また、このような流路断面積の形態では、燃焼室2側の伝熱壁13の面積が大きいため(図4、及び図5Aと5Bとの比較参照)、燃焼ガスG2が中心側にあって高い温度のときに、予混合ガスG1を効果的に予熱できる。
【0034】
本発明の燃焼装置1では、各部及び各流路が、上述の基本的な形態を備えて形成されているものあればよい。本発明の燃焼装置1は、1つの容体の内部が壁に仕切られた構造であっても、あるいは複数の部材を組み合わせて一体化させた構造であってもよい。上述の基本的な形態が具備されている限りは、製造・使用する者等の事情に応じて燃焼装置1を設計できる。
【0035】
2.本発明の燃焼装置を構成する各部の説明:
以下、本発明の燃焼装置1を構成する、「熱交換部」、「ガス供給部」、「排気部」、及び「燃焼室」ついて順次詳しく説明する。
【0036】
2−1.熱交換部:
熱交換部5は、先に述べた基本的な形態が備えられた上で、さらに以下に述べる実施形態にできる。
【0037】
2−1−1.流入流路及び排気流路の方向:
図7は、熱交換部5の平面図を表す。図7に表される熱交換部5は、図3に表される熱交換部5について、流入流路11及び排気流路12の流路方向に変更が加えられたものである。図7に示すように、熱交換部5は、流入流路11及び排気流路12が、渦巻き状に形成されていることが好ましい。
【0038】
図8は、図7中に表す伝熱壁13の斜視図であり、図6の伝熱壁13bの斜視図と対比できる。図8に表す伝熱壁13は、湾曲しているが、捩れていない。この形態の伝熱壁13では、図6に示す形態の伝熱壁13と比較して、放射方向、言い換えれば流路方向において長くなり、伝熱壁13の面積が大きくなるため、予混合ガスG1の予熱の効率が上がる。
【0039】
2−1−2.伝熱壁が捩れるように形成されている実施形態:
図9は、熱交換部5の一部の斜視図を表しており、この図に表す熱交換部5は、図4に表す熱交換部5に対して伝熱壁13の形状において対照となる。図10Aは、図9中のA−A’断面における断面図であり、図10Bは、図9中のB−B’断面の断面図であって、ともに流路断面を表している。図11は、図9中に表す伝熱壁13bの斜視図である。これらの図から理解できるように、熱交換部5では、伝熱壁13が、外周側から中心側にかけて捩れるように形成されていることが好ましい。
【0040】
図9に示す、捩れている伝熱壁13を有する熱交換部5と、図4に示す、捩れていない伝熱壁13を有する熱交換部5とを比較する。図10A及び図5Aに表されるA−A’断面上において比較すると、流入流路11a、11b及び排気流路12の流路断面の面積は同じであるが、図10Aの断面に表される伝熱壁13、13a、13bの長さは、図5Aの断面に表される伝熱壁13、13a、13bよりも長い。流入流路11aを一例として伝熱壁13以外の壁をみると、流入流路11aを構成する外周壁14については、図10A及び5Aの間でその長さが同じであり、流入流路11aを構成する内周壁15についても同様である。以上から理解されるように、伝熱壁13が捩れている形態では、流入流路11及び排気流路12を構成する壁の全面積において、伝熱壁13の面積が占める割合が著しく増加する。すなわち、伝熱壁13が捩れている形態では、伝熱壁13が捩れていない形態と比較して、排気流路12について述べれば、そこに流れる燃焼ガスG2の熱が伝熱壁13にもれなく吸収され、また、流入流路11について述べれば、そこに流れる予混合ガスG1が伝熱壁13によって効率よく予熱される。
【0041】
2−1−3.流入流路入口及び排気流路出口の位置:
図4の斜視図及び図5Bの断面図に表すように、熱交換部5は、流入流路入口21と排気流路出口24とが、上下方向にずらされて設けられていることが好ましい。この形態では、流入流路11と供給流路31との連通、及び排気流路12と燃焼ガス流路41との連通が、容易にできる。
【0042】
図1〜4、並びに5A及び5Bに示す燃焼装置1では、流入流路入口21が下方に、排気流路出口24が上方に設けられている。この形態では、ガス供給部3が下層にあり、排気部4が上層にある、環状の2層構造が適用できる。
【0043】
2−1−4.熱交換部の材料:
熱交換部5は、流入流路11及び排気流路12が、気密性の保たれる材料から形成されることが好ましい。伝熱壁13は、熱伝導の効率が高い材料から形成されることが好ましい。このような条件を満たす熱交換部5の材料としては、金属やセラミックスが挙げられる。
【0044】
セラミックスは、熱伝導率が高く、複雑な形状にも成形されやすいため、熱交換部5の材料として好適である。具体的に述べると、熱交換部5は、窒化珪素、炭化珪素、コーディエライト、アルミナよりなる群から選ばれる少なくも1種以上を主成分するセラミックスからなることが好ましい。セラミックスからなる熱交換部5の作製は、熱交換部5の大きさ、形状、及び熱伝導などの性状に応じて、セラミックスに関連する技術分野の当業者が通常使う製法によりできる。
【0045】
2−2.燃焼室:
図1及び2に表すように、燃焼室2での着火装置51の配置は、着火点52が燃焼室2の放射方向の中央付近にあるとよい。予混合ガスG1が、燃焼室2の中心付近に収束するように流れるためである。また、燃焼ガスG2が予混合ガスG1よりも燃焼室2内を上昇する傾向のあるときには、着火点52が燃焼室2の下部にあると、予混合ガスG1が効率よく燃焼できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、予混合ガスとこれを燃焼させて生じる燃焼ガスとの間の熱交換がなされることにより、エネルギー効率が向上されている燃焼装置として利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1:燃焼装置、2:燃焼室、3:ガス供給部、4:排気部、5:熱交換部、11:流入流路、12:排気流路、13:伝熱壁、13a:伝熱壁、13b:伝熱壁、14:外周壁、15:内周壁、21:流入流路入口、22:流入流路出口、23:排気流路入口、24:排気流路出口、31:供給流路、41:燃焼ガス流路、51:着火装置、52:着火点、58:底壁、59:側壁、60:上壁、61:隔壁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ中心に配置され、予混合ガスを燃焼させて燃焼ガスとするための着火手段が設けられている燃焼室と、
外周側から前記燃焼室に向かって供給される前記予混合ガスを流す、供給流路が設けられているガス供給部と、
前記燃焼室から前記外周側に向かって排出される前記燃焼ガスを流す、燃焼ガス流路が設けられている排気部と、
前記外周側から前記中心の側に前記混合ガスを流すために、前記供給流路及び前記燃焼室に連通する流入流路と、前記中心の側から前記外周側に前記燃焼ガスを流すために、前記燃焼室及び前記燃焼ガス流路に連通する排気流路と、が設けられ、さらに、前記流入流路と前記排気流路とを隔てるとともに前記燃焼ガスからの熱により前記予混合ガスを予熱する伝熱壁が設けられている、熱交換部と、を有し、
前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、それぞれ前記燃焼室を中心として放射状に複数設けられ、さらに前記流入流路と前記排気流路とが、並行して、交互に設けられて、前記流入流路及び前記排気流路の流路断面積が、前記中心の側から前記外周側に向かって漸次減少している、燃焼装置。
【請求項2】
前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、渦巻き状に形成されている、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記熱交換部において、前記伝熱壁が、前記外周側から前記中心の側にかけて捩れるように形成されて前記流入流路と前記排気流路とを隔てている、請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記熱交換部において、前記流入流路の上流端である流入流路入口と、前記排気流路の下流端である排気流路出口とが、上下方向にずらされて設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項1】
ほぼ中心に配置され、予混合ガスを燃焼させて燃焼ガスとするための着火手段が設けられている燃焼室と、
外周側から前記燃焼室に向かって供給される前記予混合ガスを流す、供給流路が設けられているガス供給部と、
前記燃焼室から前記外周側に向かって排出される前記燃焼ガスを流す、燃焼ガス流路が設けられている排気部と、
前記外周側から前記中心の側に前記混合ガスを流すために、前記供給流路及び前記燃焼室に連通する流入流路と、前記中心の側から前記外周側に前記燃焼ガスを流すために、前記燃焼室及び前記燃焼ガス流路に連通する排気流路と、が設けられ、さらに、前記流入流路と前記排気流路とを隔てるとともに前記燃焼ガスからの熱により前記予混合ガスを予熱する伝熱壁が設けられている、熱交換部と、を有し、
前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、それぞれ前記燃焼室を中心として放射状に複数設けられ、さらに前記流入流路と前記排気流路とが、並行して、交互に設けられて、前記流入流路及び前記排気流路の流路断面積が、前記中心の側から前記外周側に向かって漸次減少している、燃焼装置。
【請求項2】
前記熱交換部において、前記流入流路及び前記排気流路が、渦巻き状に形成されている、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記熱交換部において、前記伝熱壁が、前記外周側から前記中心の側にかけて捩れるように形成されて前記流入流路と前記排気流路とを隔てている、請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記熱交換部において、前記流入流路の上流端である流入流路入口と、前記排気流路の下流端である排気流路出口とが、上下方向にずらされて設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【公開番号】特開2010−196994(P2010−196994A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43343(P2009−43343)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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