説明

燃焼装置

【課題】いわゆる1ファン・複数バーナ方式を採用した燃焼装置であって、一部のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合であっても、このバーナにおいて不完全燃焼が生じることを適切に防止または抑制することが可能な燃焼装置を提供する。
【解決手段】燃焼装置Cは、第1および第2の空気供給路12a,12bを仕切る仕切部4bを備え、この仕切部4bの一部40は、ファン2の吐出口20またはその近傍領域を第1および第2の領域13a,13bに仕切っており、圧力調整弁Vのシグナル圧として、第1および第2の領域13a,13bのいずれか一方の圧力が用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばガス給湯装置の構成要素などとして好適に用いることが可能な燃焼装置、さらに詳しくは、いわゆる1ファン・複数バーナ方式の燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1ファン・複数バーナ方式の燃焼装置は、燃料を燃焼させるバーナが複数設けられているのに対し、ファンの数は1つとされており、このファンから吐出される燃焼用空気は複数のバーナに向けて供給されるように構成されている(たとえば、特許文献1,2を参照)。一般的に、ファンは、サイズが比較的大きく、かつ高価である。したがって、前記した構成の燃焼装置は、ファンを複数用いるタイプの燃焼装置と比較すると、装置全体の小型化や製造コストの低減化を促進するのに好ましい。
【0003】
一方、1ファン・複数バーナ方式の燃焼装置においても、他の一般的な燃焼装置と同様に、空燃比を一定に維持し、燃焼性を良好にすることが望まれる。そこで、従来においては、圧力調整弁を利用し、各バーナに対する燃料供給圧を制御する手段がある(たとえば、特許文献2を参照)。前記圧力調整弁は、ファンの空気吐出圧をシグナル圧とし、燃料の圧力をファンの空気吐出圧に対応した圧力に制御する。このような構成によれば、たとえばファンから各バーナへの燃焼用空気の供給量が多く、ファンの空気吐出圧が高いときには、これに対応して各バーナへの燃料の供給量も多くなり、空燃比の一定化を図ることが可能となる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
理解の容易のため、燃焼装置が第1および第2のバーナを備えている場合を例として説明する。
すなわち、第1および第2のバーナのうち、たとえば第2のバーナの下流域のみが排気閉塞または閉塞気味となる場合がある。このような事態は、第2のバーナの下流側にたとえばフィンチューブタイプの熱交換器が設けられ、かつこの熱交換器のフィンどうしの隙間に詰まりを生じた場合などに発生する。一方、第2のバーナに対する燃料供給量は、第2のバーナへの燃料供給圧Psと、燃料噴出領域圧P2との差圧に対応する。燃料噴出領域圧Psは、たとえば圧力調整弁へのシグナル圧と同圧である。このため、以降は、シグナル圧もPsで示す。燃料噴出領域圧P2は、第2のバーナの上流域のうち、燃料噴出ノズルから燃料噴出がなされる領域の圧力である。Ps>P2の関係にあって、これらの差が大きいほど燃料噴出量は多くなる。第2のバーナの下流域が排気閉塞となった場合、ファンから吐出される空気は、排気閉塞を生じていない第1のバーナに向けて多く流れる。このため、シグナル圧Psと燃料噴出領域圧P2との対応関係にずれを生じ、それらの差圧が大きくなる。より具体的には、排気閉塞に起因するシグナル圧Psの上昇幅と比較して、燃料噴出領域圧P2の上昇幅がやや小さくなる結果、これらの差圧が大きくなる。したがって、燃料リッチとなり、不完全燃焼を生じる虞がある。従来技術においては、このような点において、未だ改善すべき余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−35626号公報
【特許文献2】特開2003−35415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、いわゆる1ファン・複数バーナ方式を採用した燃焼装置であって、一部のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合であっても、そのバーナにおいて不完全燃焼が生じることを適切に防止または抑制することが可能な燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される燃焼装置は、第1および第2のバーナと、これら第1および第2のバーナに向けて空気供給路を介して燃焼用空気を供給するファンと、このファンの空気吐出圧をシグナル圧とし、かつ前記第1および第2のバーナに向けて供給される燃料の圧力を前記シグナル圧に対応した圧力に制御する圧力調整弁と、を備えている、燃焼装置であって、前記空気供給路を、第1および第2の空気供給路に仕切る仕切部を備えており、この仕切部の一部は、前記ファンの吐出口またはその近傍領域を第1および第2の領域に仕切るように設けられ、前記第1の空気供給路は、前記第1の領域から前記第1のバーナに向けて燃焼用空気を進行させることが可能であるとともに、前記第2の空気供給路は、前記第2の領域から前記第2のバーナに向けて燃焼用空気を進行させることが可能であり、前記圧力調整弁のシグナル圧として、前記第1および第2の領域のいずれか一方の圧力が用いられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、第1および第2のバーナに対する燃料供給圧は、第1および第2の領域のそれぞれの圧力のうち、圧力調整弁のシグナル圧として利用されている一方の圧力に対応したものとなり、次のような効果が得られる。
すなわち、理解を容易にするために、第2の領域が圧力調整弁のシグナル圧として利用されている場合を例に挙げて説明する。この場合において、第2のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味になると、その上流域である第2の空気供給路の圧力は上昇するが、この圧力上昇は、第2の空気供給路の各所において略同様に生じさせることができる。第2の空気供給路は、第1の空気供給路とは仕切部を介して所定の状態に仕切られているからである。このような作用により、第2のバーナの燃料噴出領域圧と第2の領域の圧力とを、適切な一定の関係に維持し、それらの差圧を小さくすることができる。第2のバーナの下流域が全閉状態となった際には、第2のバーナの燃料噴出領域圧と燃料供給圧との差をゼロにして、燃料供給を停止することが可能である。このようなことから、第2のバーナにおける空燃比を一定に維持して燃料リッチになることを回避し、不完全燃焼を生じることを適切に防止することができる。
一方、前記とは異なり、第1のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味になった場合、その上流域である第1の空気供給路の圧力の上昇とともに、第2の領域の圧力も上昇し、第1のバーナの燃料噴出領域圧と燃料供給圧(たとえば第2の領域の圧力と同一)とを適切な略一定の関係に維持し、これらの差圧を小さくし得る効果も期待できる。このような効果は、後述するように、第1のバーナが第2のバーナよりも最大燃焼能力が高くされている場合に顕著となる。第1のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味になった場合においても、空燃比を略一定に維持し、第1のバーナにおける不完全燃焼を抑制する効果が期待できる。
このようなことから理解されるように、本発明によれば、第1および第2のバーナのうち、いずれか一方(第1の領域の圧力が圧力調整弁のシグナル圧とされている場合には第1のバーナであり、第2の領域の圧力がシグナル圧とされている場合には第2のバーナである)の下流域が、排気閉塞または閉塞気味となった場合には、従来技術とは異なり、そのバーナにおける不完全燃焼を略確実に防止することが可能である。また、他方のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合においても、不完全燃焼をある程度抑制
し得る効果が期待できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2のバーナのうち、最大燃焼能力の大きい側のバーナを第1のバーナとした場合において、前記第1の領域は、前記第2の領域よりも流路断面積が大きくされている。
【0012】
このような構成によれば、最大燃焼能力が大きい第1のバーナに対しては燃焼用空気の供給量を多くし、かつ最大燃焼能力が小さい第2のバーナに対しては第1のバーナよりも燃焼用空気の供給量を少なくすることが容易に実現できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記圧力調整弁のシグナル圧として、前記第2の領域の圧力が用いられている。
【0014】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、燃焼装置の正常運転時においては、最大燃焼能力が大きい第1のバーナに向けて多くの燃焼用空気が供給されている。このため、第1のバーナの上流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合には、この現象が空気供給路全体に及ぼす影響は大きく、第1のバーナの下流域としての第1の空気供給路の圧力上昇とともに、第2の領域の圧力もそれに対応して上昇し、これらの圧力の対応関係を適切な関係に維持することが可能となる。第1のバーナの上流域が全閉塞状態となったときには、燃料供給圧に対応する第2の領域の圧力を、燃料噴出領域圧と殆ど同一に近付けて、燃料供給を停止することも可能である。前記構成においては、第1の領域の圧力が圧力調整弁のシグナル圧として利用されていないものの、第1のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合には、この第1のバーナにおいて不完全燃焼が生じることをより適切に防止または抑制することが可能となる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の領域の流路断面積の比率は、前記第1および第2のバーナの最大燃焼能力の比率と略同一とされている。
【0016】
このような構成によれば、ファンから吐出される燃焼用空気を、第1および第2のバーナに対して、それらの最大燃焼能力に見合った比率に配分して供給することができ、燃焼性を良くするのにより好ましい。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記仕切部の一部は、前記ファンの吐出口の内部に進入し、前記第1および第2の領域は、前記吐出口の内部に設けられている。
【0018】
このような構成によれば、仕切り部の一部がファンの吐出口内に進入しておらず、第1および第2の領域が吐出口の外部に設けられている場合と比較すると、第1および第2の領域の圧力を、第1および第2のバーナへの燃焼用空気の供給量に対してより正確に対応するものとすることができる。したがって、空燃比の一定化を図るのに、より好ましいものとなる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の領域は、前記仕切部の一部を挟んで前記ファンの回転羽根の幅方向に並んでいる。
【0020】
シロッコファンやターボファンなどのファンにおいては、一般的に、吐出口の各所における空気吐出量は一様ではなく、バラツキを生じる場合が多い。このバラツキの度合いなどは、ファンの回転数に起因して変動するといった特性もある。ただし、この空気吐出量のバラツキは、回転羽根の幅方向においては生じ難く、これと交差する方向において大きい場合が多い。前記構成によれば、第1および第2の領域の空気流量が、ファン自体にみ
られる空気吐出量のバラツキの影響を大きく受けないようにし、第1および第2のバーナのそれぞれに対して燃焼用空気を所望量だけ適切に供給することが容易となる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る燃焼装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の他の例を示す要部概略断面図である。
【図3】本発明の他の例を示す概略説明図である。
【図4】本発明の他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1に示す燃焼装置Cは、湯水加熱用の熱交換器8A,8Bとの組み合わせによりガス給湯装置を構成しており、缶体1、この缶体1内に配された第1および第2のバーナB1,B2、缶体1の底部に取り付けられたファン2、燃料ガス供給路3に設けられた圧力調整弁V、および缶体1内に設けられた上側ならびに下側の2つの仕切部4a,4bを具備している。2つの仕切部4a,4bのうち、下側の仕切部4bは、本発明でいう仕切部の一例に相当する。ただし、2つの仕切部4a,4bを一体的に繋げた構成とすることも可能である。
【0025】
第1および第2のバーナB1,B2は、ともにガスバーナであり、これらの下流域(燃焼ガスまたは燃焼用空気の流れ方向の下流域であり、図面ではガスバーナの上側)は、上側の仕切部4aによって仕切られ、第1および第2の燃焼ガス流路10a,10bとして区分されている。熱交換器8A,8Bは、第1および第2のバーナB1,B2によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なう。このことにより、入水口83a,83bに供給された湯水が加熱されて出水口84a,84bから出湯する。熱回収を終えた燃焼ガスは、缶体1の上部の排気口11から排出される。熱交換器8A,8Bは、たとえばフィン付チューブを用いて構成されており、顕熱回収用の1次熱交換部81a,81b、および潜熱回収用の2次熱交換部82a,82bを有している。熱交換器8Aおよび第1のバーナB1は、たとえば一般給湯用であるのに対し、熱交換器8Bおよび第2のバーナB2は、たとえば床暖房用である。このため、第1のバーナB1は、第2のバーナB2よりも最大燃焼能力が大きく、熱交換器8A,8Bどうし、ならびに第1および第2の燃焼ガス流路10a,10bどうしもそれに対応してサイズが相違している。
【0026】
第1および第2のバーナB1,B2の下方には、燃料分配用のケーシング5が設けられている。圧力調整弁Vを通過した燃料ガスは、ケーシング5内に流入してから第1および第2のバーナB1,B2に向けて進行し、その過程においてファン2から供給されてきた燃焼用空気と混合される。この混合気が第1および第2のバーナB1,B2に供給される。第1のバーナB1についての燃料ガス噴出量は、燃料噴出領域圧P1と燃料ガス供給圧Psとの差圧に対応する。燃料ガス供給圧Psは、たとえば後述する第2の領域13aの圧力Ps、シグナル圧Psと同一とされる。第2のバーナB2についての燃料ガス噴出量は、燃料噴出領域圧P2と燃料ガス供給圧Psとの差圧に対応する。ケーシング5には、複数の電磁弁52が設けられており(図面では、第1のバーナB1に対応する電磁弁52は開状態、第2のバーナB2に対応する電磁弁52は閉状態に示している)、これらの開閉動作によって、ケーシング5内から第1および第2のバーナB2の所定領域に対する燃料ガス供給のオン・オフを切り替え可能である。
【0027】
ファン2の吐出口20から第1および第2のバーナB1,B2に到る空間は、空気供給路12である。下側の仕切部4bは、この空気供給路12を、第1および第2の空気供給路12a,12bに仕切るためのものであり、たとえば金属板を用いて構成されている。仕切部4bの下端部40は、ファン2の吐出口20の内部まで進入している。このことにより、吐出口20の内部は、第1および第2の領域13a,13bとして仕切られている。第1の空気供給路12aは、第1の領域13aを通過した燃焼用空気を第1のバーナB1に向けて進行させる。同様に、第2の空気供給路12bは、第2の領域13bを通過した燃焼用空気を第2のバーナB2に向けて進行させる。仕切部4bの下端部40は、ファン2の吐出口20の中心よりも図面左側に偏っており、第1および第2の領域13a,13bの流路断面積a1,a2の比率は、第1および第2のバーナB1,B2の最大燃焼能力(最大火力)の比率と略同一とされている。このため、本実施形態では、a1>a2 の関係にある。
【0028】
ファン2は、たとえばシロッコファンあるいはターボファンなどであり、吸気口21を有するケーシング22内に、モータMにより駆動される回転羽根23が収容された構造を有している。このファン2は、第1および第2の領域13a,13bの並ぶ向きが、回転羽根23の幅方向となるように設定されている。もちろん、ファン2の向きは、たとえば図2に示すような向きにしてもかまわない。同図において、ファン2は、いわゆる顎部24寄りの位置と、その反対側の位置とでは、空気吐出量に比較的大きなバラツキが生じ易い。このため、図2の構成においては、第1および第2の領域13a,13bのそれぞれの空気通過量が、流路断面積a1,a2の比率に正確に対応したものになり難い場合がある。これに対し、図1に示したファン2の向きであれば、そのような不具合を適切に回避し、第1および第2の領域13a,13bのそれぞれの空気通過量が、流路断面積a1,a2の比率に正確に対応したものとなる。
【0029】
圧力調整弁Vは、燃料ガス供給路3の上流側の1次圧の変動の影響を受けることなく、下流側の2次圧(ケーシング5内の燃料ガス圧Ps)を、ポート60に入力するシグナル圧Psに対応した値(本実施形態では同一)とする機能を有している。すなわち、シグナル圧Psが高いほど、弁体62の開度が大きくなる。圧力調整弁Vの構造自体は、たとえば特許文献2に記載されたものと同様にすることが可能であり、その詳細な説明は省略する。ポート60は、管体61を介して、第2の領域13bに接続されている。このことにより、第2の領域13bの圧力Psが圧力調整弁Vのシグナル圧Psとされる。
【0030】
次に、前記した構成の燃焼装置Cの作用について説明する。
【0031】
まず、ファン2が駆動され、かつ第1および第2のバーナB1,B2が燃料ガスの供給を受けて駆動燃焼する場合、圧力調整弁Vは、燃料ガス供給圧Psを第2の領域13bの圧力Psに制御する。したがって、通常運転時においては、第1および第2のバーナB1,B2のそれぞれにおいて空燃比を一定に維持することができる。
【0032】
次いで、熱交換器8Bのフィンどうしの隙間に詰まりを生じ、第2のバーナB2の下流域が排気閉塞または閉塞気味になった場合、第2の空気供給路12bの圧力は上昇する。第2の空気供給路12bは、仕切部4bを介して第1の空気供給路12aとは仕切られているために、第2の空気供給路12bの圧力上昇は、この第2の空気供給路12bの各所において略同様に生じさせることができる。このため、燃料噴出領域圧P2と第2の領域12bの圧力Psとを、適切な関係に維持し、それらの差圧を小さくすることが可能である。第2の燃焼ガス流路10bが全閉塞状態となった際には、燃料噴出領域圧P2と圧力燃料供給圧Psとの差をゼロにし、燃料ガス供給を停止することが可能である。このように、この燃焼装置Cにおいては、熱交換器8Bに詰まりを生じて、第2のバーナB2への燃焼用空気供給量が減少したとしても、この第2のバーナB2への燃料ガス供給が過多に
はならず、第2のバーナB2において不完全燃焼を生じることが適切に防止される。
【0033】
一方、前記とは異なり、熱交換器8Aのフィンに詰まりが生じて、第1のバーナB1の下流域が排気閉塞または閉塞気味になった場合には、第1の空気供給路12aの圧力が上昇する。一方、この燃焼装置Cの正常運転時においては、最大燃焼能力が大きい第1のバーナB1に向けて多くの燃焼用空気が供給され、第1の空気供給路12aの空気流通量は、第2の空気供給路12bと比較して相当に多い。このため、第1のバーナの上流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合には、第1の空気供給路12aの圧力上昇とともに、第2の領域13bの圧力Psもそれに対応して上昇し、これらの圧力の対応関係を適切な関係に維持し、空燃比の一定化が可能となる。第1のバーナB1の上流域が全閉塞状態となったときには、燃料供給圧Psを燃料噴出領域圧P1と殆ど同一に近付けることが可能である。したがって、この燃焼装置Cにおいては、第1の領域13aの圧力が圧力調整弁Vのシグナル圧として利用されていないものの、第1のバーナB1の下流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合には、この第1のバーナB1において不完全燃焼が生じることを適切に防止することができる。
【0034】
第1および第2の領域13a,13bは、既述したように、その流路断面積a1,a2の比率が、第1および第2のバーナB1,B2の最大燃焼能力の比率と略同一である。このため、ファン2から吐出される燃焼用空気を、第1および第2のバーナB1,B2に対してこれらの最大燃焼能力に見合った比率に配分して適切に供給することができる。その結果、第1および第2のバーナB1,B2において燃焼用空気が不足するようなことも適切に回避し、燃焼性能をより優れたものとすることが可能である。加えて、図2との比較において説明したように、第1および第2の領域13a,13bがファン2の回転羽根23の幅方向に並んだ状態に形成されているために、ファン2から第1および第2のバーナB1,B2に向けて供給される燃焼用空気の量を、流路断面積a1,a2の比率に正確に対応させることもできる。
【0035】
図3および図4は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0036】
図3に示す実施形態においては、ファン2が上側の仕切部4aの直下または直下近傍に配置されておらず、第1および第2のバーナB1,B2が並ぶ方向に比較的大きな寸法L1でオフセットされている。このため、下側の仕切部4bは、上側の仕切部4aからファン2に向けて接近する傾斜部41を有している。なお、既に述べたように、上側および下側の仕切部4a,4bは、一体または別体のいずれでもよい。本実施形態によれば、図1に示した構成と比較すると、下側の仕切部4bに傾斜部41を設けたり、あるいは仕切部4bのサイズが大きくなるなどの不利はあるものの、本発明が意図する作用を得ることができる。前記の不利を解消する観点からすると、図1の実施形態のように、ファン2を第1および第2のバーナB1,B2どうしの境界部分(上側の仕切部4a)の直下または直下近傍に設けることが好ましい。
【0037】
図4に示す実施形態においては、第1および第2のバーナB1,B2や、熱交換器8A,8Bに加え、第3のバーナB3、およびこれに対応する熱交換器8Cがさらに設けられている。第1および第3のバーナB1,B3の下流域どうし、および上流域どうしは、一体または別体の仕切部4c,4dによって仕切られており、第3の燃焼ガス流路10c、および第3の空気供給路12cが形成されている。下側の仕切部4b,4dの下端部40,42は、ファン2の吐出口20の内部を第1ないし第3の領域13a〜13cに区分している。
【0038】
本実施形態によれば、第1および第2のバーナB1,B2に加えて、第3のバーナB3
に対してもファン2から燃焼用空気を適切に供給することができる。第3のバーナB3に対する燃料ガス供給圧Psは、第1のバーナB1に対する燃料ガス供給Psと同様な原理で制御されるために、第3のバーナB3においても空燃比を一定に維持することが可能である。本実施形態から理解されるように、本発明は、第1および第2のバーナに加えて、これらとは別に1または複数のバーナをさらに設けた構成とすることも可能である。要は、バーナが2以上設けられていれば、本発明を好適に適用することができる。もちろん、バーナが3以上設けられている場合において、2つのバーナ(第1および第2のバーナ)が本発明の意図する構成に該当する限りは、仮に、これらとは別の他のバーナが本発明の意図する構成に該当しない場合であっても、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0039】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る燃焼装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0040】
たとえば、仕切部の一部は、ファンの吐出口の内部に進入し、この吐出口の内部が第1および第2の領域として仕切られていることが好ましいものの、これに限定されない。仕切部の一部が、吐出口の内部に進入することなく、吐出口の外部の近傍領域を第1および第2の領域に仕切る構成でも本発明が意図する作用を得ることかできる。したがって、第1および第2の圧力調整弁のシグナル圧の取り出し箇所についても、ファンの吐出口の内部に限らず、吐出口の外部とすることができる。
【0041】
本発明においては、図1に示した実施形態と同様に、第1のバーナの方が第2のバーナよりも最大燃焼能力が大きい場合、第2のバーナに対応する第2の領域の圧力を圧力調整弁のシグナル圧として利用することが好ましい。このような構成によれば、第1および第2のバーナのいずれの下流域が排気閉塞または閉塞気味となっても、燃料リッチ状態となることを適切に回避し、不完全燃焼を防止または抑制することができるからである。ただし、本発明はこれに限定されない。たとえば、第1の領域の圧力を圧力調整弁のシグナル圧として利用した場合には、第1のバーナの下流域が排気閉塞または閉塞気味となった場合に、この第1のバーナにおいて不完全燃焼が生じることを防止する効果が非常に高いものとなる。このため、たとえば第2のバーナ側よりも第1のバーナ側の方が排気閉塞を生じ易いといった事情があるような場合などは、このような事情を考慮し、あえて第1の領域の圧力を圧力調整弁のシグナル圧として利用することもできる。
【0042】
第1および第2のバーナや、ファンの具体的な種類や構造も限定されない。本発明でいう第1および第2のバーナは、それぞれが単体のバーナでなくてもよく、それぞれが複数のバーナの集合体(第1のバーナ群、第2のバーナ群)とされている構成でもよいことは勿論である。圧力調整弁としては、第1および第2のバーナに向けて供給される燃料の圧力を所定のシグナル圧に対応した圧力に制御可能な機能を有するものが用いられていればよく、やはりその具体的な構造は限定されない。燃焼ガスの排気口について、仕切部(たとえば、先の実施形態の仕切部4aに相当する部分)を利用し、第1および第2のバーナのそれぞれの下流域の燃焼ガス流路に対応させて、2つの領域に仕切るようにしてもよい。また、排気口を複数設けることにより、これら複数の排気口を第1および第2のバーナのそれぞれの下流域の燃焼ガス流路に個々に対応させて配置させた構成とすることもできる。
【0043】
本発明に係る燃焼装置は、たとえば逆燃焼式(バーナで発生された燃焼ガスを下向きに進行させる方式)に構成することも可能であり、燃焼用空気や燃焼ガスが進行する方向は上向きに限定されない。また、本発明に係る燃焼装置は、給湯装置用である必要もなく、たとえば温風装置用、あるいは焼却用などの燃焼装置として構成することも可能であり、具体的な用途なども限定されない。
【符号の説明】
【0044】
C 燃焼装置
B1,B2 第1および第2のバーナ
V 圧力調整弁
a1,a2 流路断面積(第1および第2の領域の)
2 ファン
4b 仕切部
12 空気供給路
12a,12b 第1および第2の空気供給路
13a,13b 第1および第2の領域
20 吐出口(ファンの)
23 回転羽根(ファンの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2のバーナと、
これら第1および第2のバーナに向けて空気供給路を介して燃焼用空気を供給するファンと、
このファンの空気吐出圧をシグナル圧とし、かつ前記第1および第2のバーナに向けて供給される燃料の圧力を前記シグナル圧に対応した圧力に制御する圧力調整弁と、
を備えている、燃焼装置であって、
前記空気供給路を、第1および第2の空気供給路に仕切る仕切部を備えており、
この仕切部の一部は、前記ファンの吐出口またはその近傍領域を第1および第2の領域に仕切るように設けられ、前記第1の空気供給路は、前記第1の領域から前記第1のバーナに向けて燃焼用空気を進行させることが可能であるとともに、前記第2の空気供給路は、前記第2の領域から前記第2のバーナに向けて燃焼用空気を進行させることが可能であり、
前記圧力調整弁のシグナル圧として、前記第1および第2の領域のいずれか一方の圧力が用いられていることを特徴とする、燃焼装置。
【請求項2】
前記第1および第2のバーナのうち、最大燃焼能力の大きい側のバーナを第1のバーナとした場合において、前記第1の領域は、前記第2の領域よりも流路断面積が大きくされている、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記圧力調整弁のシグナル圧として、前記第2の領域の圧力が用いられている、請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記第1および第2の領域の流路断面積の比率は、前記第1および第2のバーナの最大燃焼能力の比率と略同一とされている、請求項1ないし3のいずれかに記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記仕切部の一部は、前記ファンの吐出口の内部に進入し、前記第1および第2の領域は、前記吐出口の内部に設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記第1および第2の領域は、前記仕切部の一部を挟んで前記ファンの回転羽根の幅方向に並んでいる、請求項1ないし5のいずれかに記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13320(P2012−13320A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150657(P2010−150657)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】