説明

燃焼設備構造

【課題】バーナノズルを比較的安価なセラミックスで形成するのもかかわらず、バーナノズル自体の損傷を効果的に防止することのできる燃焼設備構造。
【解決手段】バーナノズル6が、炉壁1に穿たれたノズル用孔3に内嵌されて炉内2に開口し、酸素供給ライン4が、炉壁1を通って炉内2に開口し、バーナノズル6から噴出される燃料ガスと酸素供給ライン4から供給される燃焼用酸素含有ガスが、炉内2で混合されて燃焼される燃焼設備構造で、炉壁1が、セラミックスタイルで形成され、バーナノズル6が、セラミックスで形成され、バーナノズル6の長手方向の全外周と炉内側の先端面を耐熱金属製の保護カバー9により一体的に覆ってノズル用孔3に内嵌されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを供給する燃料供給ラインの先端に接続されるバーナノズルが、炉壁に穿たれたノズル用孔に内嵌されて炉内に開口するように設けられ、燃焼用酸素含有ガスを供給する酸素供給ラインが、前記炉壁を通って炉内に開口するように設けられ、前記バーナノズルから噴出される燃料ガスと前記酸素供給ラインから供給される燃焼用酸素含有ガスが、前記炉内で混合されて燃焼される、いわゆる、先混合方式の燃焼設備構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような燃焼設備構造では、通常、炉壁がセラミックスタイルで形成される場合が多い。しかしながら、セラミックスタイルは、耐熱性に優れている反面、比較的靱性が低くて脆く、例えば、酸素供給ラインからノズル用孔に至る割れが生じると、酸素供給ラインからの燃焼用酸素含有ガスが、その割れを通ってバーナノズルの燃料噴出孔の近くに漏れ出し、適切な燃焼が阻害されるおそれがある。
このような不都合を解消するため、従来、バーナノズルが、その長手方向の全外周を耐熱金属製の保護カバーにより覆われた状態で、炉壁に穿たれたノズル孔に内嵌されたものが提案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7449号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載の燃焼設備構造は、炉壁の割れに起因する不都合を解消するもので、バーナノズル自体の損傷を防止するものではなかった。
すなわち、バーナノズルは、通常、耐熱ステンレスで形成されることが多いが、バーナノズル自体が600℃近くにまで加熱される過酷な条件下では、耐熱ステンレスの耐久性に起因する早期の損傷が問題となる。そこで、NiやCoを基材とする耐熱合金によりバーナノズルを形成することも提案されているが、セラミックスに比べて非常に高価なものとなる。
ところで、バーナノズルを比較的安価で耐熱性に優れたセラミックスで形成する場合、上記特許文献に記載のように、バーナノズルの長手方向全外周のみを耐熱金属製の保護カバーで覆うだけでは、バーナノズルの炉内側の先端面が、炉内に向けて完全に露出した状態で高温に晒されるため、靱性が低くて脆いセラミックスの特性に起因して、バーナノズルの炉内側先端面の外側角部から亀裂が生じて損傷する可能性が高くなる。
【0005】
本発明の目的は、バーナノズルを比較的安価なセラミックスで形成するのもかかわらず、バーナノズル自体の損傷を効果的に防止することのできる燃焼設備構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的を達成するため、本発明において、燃料ガスを供給する燃料供給ラインの先端に接続されるバーナノズルが、炉壁に穿たれたノズル用孔に内嵌されて炉内に開口するように設けられ、燃焼用酸素含有ガスを供給する酸素供給ラインが、前記炉壁を通って炉内に開口するように設けられ、前記バーナノズルから噴出される燃料ガスと前記酸素供給ラインから供給される燃焼用酸素含有ガスが、前記炉内で混合されて燃焼される燃焼設備構造の特徴構成は、
前記炉壁が、セラミックスタイルで形成され、前記バーナノズルが、セラミックスで形成されるとともに、そのバーナノズルの長手方向の全外周と炉内側の先端面を耐熱金属製の保護カバーにより一体的に覆った状態で、前記ノズル用孔に内嵌されているところにある。
【0007】
上記構成によれば、バーナノズルが、その長手方向の全外周のみならず、その炉内側の先端面も耐熱金属製の保護カバーにより一体的に覆われているので、換言すると、バーナノズルの炉内側先端面の外側角部が、耐熱金属製の保護カバーにより完全に覆われてノズル用孔に内嵌されているので、たとえバーナノズルの炉内側の先端面が高温に晒されても、バーナノズルの炉内側先端面の外側角部から亀裂が生じて損傷することが抑制される。
したがって、バーナノズルを比較的安価なセラミックスで形成しても、バーナノズル自体の損傷を効果的に防止することができる。
【0008】
上記構成を備えた燃焼設備構造において、前記保護カバーを形成する耐熱金属の熱膨張係数λmの前記バーナノズルを形成するセラミックスの熱膨張係数λsに対する比(λm/λs)が、600℃で1〜1.22であることが好ましい。
このように構成すれば、たとえバーナノズルや保護カバーが600℃近くにまで加熱される過酷な条件下でも、保護カバーがバーナノズルから乖離する可能性は少なく、バーナノズルの損傷を確実に防止することができる。λm/λsが1より小さい場合は、バーナノズルに割れを発生する可能性がある。λm/λsが1.22より大きい場合は、ガタが発生しやすく問題である。
【0009】
上記構成を備えた燃焼設備構造において、前記バーナノズルの炉内側の先端面を覆う保護カバーが、前記炉壁の内面と面一になるように構成されていることが好ましい。
このように構成すれば、例えば、バーナノズルの先端面を覆う保護カバーを炉壁の内面からノズル用孔内へ引退させて配置する場合に比べて、ノズル用孔内が高温になるのを抑制することができ、その結果、靱性が低くて脆いセラミックスタイルで形成される炉壁の損傷防止をも図ることができる。
【0010】
上記構成を備えた燃焼設備構造において、前記バーナノズルが、その長手方向に沿って分割された2個の半割り部材からなり、その2個の半割り部材を耐熱接着剤により接合して構成されていることが好ましい。
このように構成すれば、例えば、円柱体に燃料噴出孔を穿孔してバーナノズルを形成する場合に比べて、燃料噴出孔の形成が容易となり、バーナノズル自体を容易かつ確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】燃焼設備構造を示し、(a)は縦断面図、(b)は正面図
【図2】バーナノズルの形成過程を示す分解斜視図
【図3】バーナノズルと保護カバーを示し、(a)は分解した状態の縦断面図、(b)は組み立てた状態の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による燃焼設備構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の燃焼設備としては、加熱炉、熱処理炉、保持炉、焼き戻し炉、浸炭炉などの各種の炉があり、図1の(a)、(b)に示すように、炉壁1が、耐熱性のセラミックスタイルで形成され、その炉壁1には、ノズル用孔3が炉壁1を貫通して炉内2に開口するように穿たれ、燃焼用酸素含有ガスを供給する酸素供給ラインとしての酸素供給孔4も、炉壁1を貫通して炉内2に開口するように複数(この実施形態では2個)穿たれている。
ノズル用孔3は、断面形状が円形で、その内部には、燃料ガスを供給する燃料供給ラインとしての燃料供給管5が挿入配置され、その燃料供給管5の先端に接続されるバーナノズル6が、ノズル用孔3に内嵌されて炉内2に開口するように設けられている。
【0013】
バーナノズル6は、全体が円筒形状で、耐熱性の高いセラミックス、例えば、純度99.9%以上のAl23を用いたアルミナセラミックスで形成されている。そして、バーナノズル6は、図2に示すように、その長手方向に沿って分割された2個の半割り部材6aからなり、その2個の半割り部材6aを図外の耐熱接着剤(例えば、Al23のペーストなど)により接合して構成され、図3の(a)、(b)に示すように、長手方向の一端部に雌ねじ7が刻設され、他端部に燃料噴出孔8が開口している。
バーナノズル6の雌ねじ7は、燃料供給管5先端の雄ねじと螺合して、燃料供給管5の先端にバーナノズル6を接続するためのもので、そのねじ部は、ねじ部からの損傷を抑制するため、通常のねじ部に比べてねじ山を緩くした設計とされている。
【0014】
一例を挙げると、外径D1が50mm程度の円筒体に対して、内径D2が30mm程度の雌ねじ7を刻設する場合、一般的には、JISB−0202のPF3/4に基づいて、1インチ当たりの山数が14で、ピッチが1.8mm、山頂と谷底の曲率半径が0.25mm程度のねじが採用される。
しかしながら、本発明では、例えば、旧JISB−0101のPF1−1/2に基づいて、1インチ当たりの山数が6で、ピッチが4.23mm、山頂と谷底の曲率半径が2mm程度の非常に緩いねじが採用され、それによって、ねじ部からの損傷を回避するように構成されている。
【0015】
バーナノズル6は、半割り状の燃料噴出孔8を備えた2個の半割り部材6aを接合し、その後、雌ねじ7を刻設して形成され、さらに、図3の(a)、(b)に示すように、その長手方向の全外周が、耐熱金属からなる保護カバー9の円筒部9aにより覆われ、かつ、その炉内2側の端面が、保護カバー9のフランジ部9bにより覆われている。つまり、バーナノズル6には、耐熱金属製の保護カバー9が被せられ、その長手方向の全外周と炉内2側の端面が保護カバー9により一体的に覆われて、その保護カバー9が、耐熱接着剤(例えば、Al23のペーストなど)によりバーナノズル6に接着されている。
そして、その保護カバー9により覆われたバーナノズル6が、図1の(a)に示すように、バーナノズル6の炉内2側の先端面を覆う保護カバー9のフランジ部9bが炉壁1の内面と面一になる状態でノズル用孔3に内嵌されている。
【0016】
保護カバー9を形成する耐熱金属は、バーナノズル6を形成するセラミックの熱膨張係数λsにできるだけ近い熱膨張係数λmを有することが重要で、本発明では、耐熱金属の熱膨張係数λmのセラミックスの熱膨張係数λsに対する比(λm/λs)が、600℃で1〜1.22となるように設定されている。
具体的には、バーナノズル6が、常温〜200℃で6.5×10-6/℃、600℃で7.5×10-6/℃の熱膨張係数λsを有する純度99.9%以上のAl23を用いたアルミナセラミックスで形成され、保護カバー9が、常温〜200℃で7.5×10-6/℃、600℃で9.1×10-6/℃の熱膨張係数λmを有するインコロイ903(スペシャルメタルズ社の商品名)で形成されて、(λm/λs)が、600℃でほぼ1〜1.22となるように設定されている。
【0017】
このような構成の燃焼設備構造によれば、バーナノズル6の燃料噴出孔8から燃料ガス(例えば、13Aなどの都市ガス)が炉内2へ噴出され、複数の酸素供給孔4から燃焼用酸素含有ガス(例えば、燃焼用空気)が炉内2へ供給されて、その燃料ガスと燃焼用酸素含有ガスが炉内2で混合されて燃焼される。
その際、たとえバーナノズル6や保護カバー9が600℃近くにまで加熱される過酷な条件下でも、保護カバー9を形成する耐熱金属の熱膨張係数λmのバーナノズル6を形成するセラミックスの熱膨張係数λsに対する比(λm/λs)が、600℃で1〜1.22に設定されているので、保護カバー9がバーナノズル6から乖離する可能性は少なく、バーナノズル6の損傷が確実に防止される。
【0018】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、バーナノズル6を純度99.9%以上のAl23を用いたアルミナセラミックスにより形成した例を示したが、それ以外にも、例えば、炭化珪素系や窒化珪素系などの耐熱性の高いセラミックスを採用することができ、同様に、保護カバー9についても、特にインコロイ903に限るものではなく、その他のインコロイやインコネル(いずれもスペシャルメタルズ社の商品名)などを採用することができる。
その場合、バーナノズル6のセラミックスと保護カバー9の耐熱金属に関し、熱膨張係数の比(λm/λs)が、必ずしも600℃で1〜1.22になるように設定する必要はなく、熱膨張係数の比(λm/λs)は、バーナノズル6や保護カバー9の加熱温度条件などに応じて適宜設定可能である。
【0019】
(2)先の実施形態では、バーナノズル6の炉内2側の先端面を覆う保護カバー9のフランジ部9bが、炉壁1の内面と面一になるように構成した例を示したが、保護カバー9のフランジ部9bが、炉壁1の内面からノズル用孔3内へ引退するようにバーナノズル6を配置することもできる。
さらに、バーナノズル6を2個の半割り部材6aから構成した例を示したが、単一の円柱体に燃料噴出孔8を穿孔するとともに、雌ねじ7を刻設してバーナノズル6を形成することもでき、また、そのバーナノズル6と燃料供給管5との接続手段に関しても、特にねじによる螺合に限るものではなく、接着剤により接着して接続することもできる。
【0020】
(3)先の実施形態では、単一のバーナノズル6に対して、その右側の上下に2個の酸素供給孔4を配置した例を示したが、バーナノズル6に対する酸素供給孔4の配置数は任意であり、例えば、単一のバーナノズル6に対して、酸素供給孔4を1個だけ配置することも、3個以上配置することも可能であり、さらに、酸素供給孔4を配置する位置についても任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 炉壁
2 炉内
3 ノズル用孔
4 酸素供給ライン
5 燃料供給ライン
6 バーナノズル
6a 半割り部材
9 保護カバー
λs セラミックスの熱膨張係数
λm 耐熱金属の熱膨張係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを供給する燃料供給ラインの先端に接続されるバーナノズルが、炉壁に穿たれたノズル用孔に内嵌されて炉内に開口するように設けられ、燃焼用酸素含有ガスを供給する酸素供給ラインが、前記炉壁を通って炉内に開口するように設けられ、前記バーナノズルから噴出される燃料ガスと前記酸素供給ラインから供給される燃焼用酸素含有ガスが、前記炉内で混合されて燃焼される燃焼設備構造であって、
前記炉壁が、セラミックスタイルで形成され、前記バーナノズルが、セラミックスで形成されるとともに、そのバーナノズルの長手方向の全外周と炉内側の先端面を耐熱金属製の保護カバーにより一体的に覆った状態で、前記ノズル用孔に内嵌されている燃焼設備構造。
【請求項2】
前記保護カバーを形成する耐熱金属の熱膨張係数λmの前記バーナノズルを形成するセラミックスの熱膨張係数λsに対する比(λm/λs)が、600℃で1〜1.22である請求項1に記載の燃焼設備構造。
【請求項3】
前記バーナノズルの炉内側の先端面を覆う保護カバーが、前記炉壁の内面と面一になるように構成されている請求項1または2に記載の燃焼設備構造。
【請求項4】
前記バーナノズルが、その長手方向に沿って分割された2個の半割り部材からなり、その2個の半割り部材を耐熱接着剤により接合して構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼設備構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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