説明

燃費低減支援システム

【課題】燃費低減の運転操作の実行を適切に促す。
【解決手段】燃費低減支援システム10は、運転者の運転操作に応じた車両状態量を検出して検出結果の信号を出力する回転数センサ11およびトルクセンサ12と、運転操作に応じた現在の境界(つまり、回転数とトルクとによる2次元座標上における燃費低減状態と燃費低減状態以外の状態との境界)を、過去に回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力された検出結果に基づき推定して推定結果を出力する境界推定部23と、回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力された現在の車両状態量の検出結果と、境界推定部23から出力された推定結果とに基づき、燃費低減状態であるか否かを予測判定して判定結果を出力するする予測判定部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃費低減支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば燃費を向上させる変速モードの選択時に、運転者による運転操作が燃費向上に適した操作であるか否かを判定し、燃費向上に適した操作である場合にはランプを点灯制御することによって、燃費向上に適した操作の実行を促す表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−220851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る表示装置においては、単に、各時刻毎での運転者の瞬時の運転操作が燃費向上に適した操作であるか否かを判定するだけであり、継続的に燃費を向上させる運転操作の実行を促すことができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、燃費低減の運転操作の実行を適切に促すことが可能な燃費低減支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る燃費低減支援システムは、車両の運転者の運転操作による燃費低減を支援する燃費低減支援システムであって、前記運転操作に応じた車両状態量を検出して検出結果の信号を出力する車両状態量検出手段(例えば、実施の形態での回転数センサ11およびトルクセンサ12)と、前記運転操作に応じた現在の燃費状態量を、過去に前記車両状態量検出手段から出力された前記検出結果に基づき推定して推定結果を出力する推定手段(例えば、実施の形態での境界推定部23)と、前記車両状態量検出手段から出力された現在の前記車両状態量の前記検出結果と、前記推定手段から出力された前記推定結果とに基づき、燃費低減状態であるか否かを予測判定して判定結果を出力する判定手段(例えば、実施の形態での予測判定部24)とを備える。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る燃費低減支援システムでは、前記推定手段は境界関数により現在の前記燃費状態量を推定する。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る燃費低減支援システムは、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定された場合に前記燃費状態量を修正する修正手段(例えば、実施の形態での境界推定部23が兼ねる)を備える。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係る燃費低減支援システムは、前記判定手段から出力された前記判定結果に応じた報知を行なう報知手段(例えば、実施の形態での報知制御部26および視覚的伝達装置14および聴覚的伝達装置15および触覚的伝達装置16)を備える。
【0010】
さらに、本発明の第5態様に係る燃費低減支援システムでは、前記報知手段は、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定された場合に第1点灯手段(例えば、実施の形態での第1点灯部31)を点灯し、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態ではないと予測判定された場合に第2点灯手段(例えば、実施の形態での第2点灯部32)を点灯する。
【0011】
さらに、本発明の第6態様に係る燃費低減支援システムでは、前記報知手段は、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定された頻度と、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態ではないと予測判定された頻度との比率に応じた報知を行なう。
【0012】
さらに、本発明の第7態様に係る燃費低減支援システムでは、前記報知手段は、前記比率に応じて、前記判定手段から出力される前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定される頻度を増大させる運転操作の実行を促す報知を行なう。
【0013】
さらに、本発明の第8態様に係る燃費低減支援システムは、前記比率に応じて、前記燃費低減状態に係る判定レベルを設定する判定レベル設定手段(例えば、実施の形態での境界推定部23が兼ねる)を備え、前記推定手段は前記判定レベル設定手段により設定された前記判定レベルに応じて現在の前記燃費状態量を推定する。
【0014】
さらに、本発明の第9態様に係る燃費低減支援システムでは、前記報知手段は、前記判定レベル設定手段により設定された前記判定レベルを報知する。
【0015】
さらに、本発明の第10態様に係る燃費低減支援システムでは、前記報知手段は、前記推定手段から出力された前記推定結果での前記燃費状態量の変動が所定範囲内である場合に、触覚的報知手段(例えば、実施の形態での触覚的伝達装置16)を作動させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1態様に係る燃費低減支援システムによれば、運転者の運転操作に応じた現在の燃費状態量を過去の運転操作に応じた車両状態量に基づき推定し、この燃費状態量と現在の車両状態量とから燃費低減状態であるか否かを予測判定することにより、運転者の継続的な運転操作に基づいた予測判定を行なうことができる。しかも、運転者毎の運転操作に応じて燃費状態量が推定されることから、燃費低減状態であると予測判定されることで、運転者毎の燃費低減技量に応じて燃費低減の達成感を増大させ、燃費低減の意欲を高揚させることができる。
【0017】
本発明の第2態様に係る燃費低減支援システムによれば、例えば車両状態量による座標空間において燃費低減状態に対応する領域と燃費低減状態以外の状態に対応する領域とを区分する界面を境界関数により算出して現在の燃費状態量として推定する。これにより、現在の燃費状態量の推定精度および判定手段による判定精度を向上させることができる。
本発明の第3態様に係る燃費低減支援システムによれば、判定手段による判定結果において燃費低減状態であると予測判定された場合に燃費状態量を修正することにより、燃費状態量の推定精度および判定手段による判定精度を、より一層、向上させることができる。
【0018】
本発明の第4態様に係る燃費低減支援システムによれば、判定手段による判定結果に応じた報知を行なうことで、この判定結果を運転者に直感的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
本発明の第5態様に係る燃費低減支援システムによれば、判定手段による判定結果を運転者に視覚的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【0019】
本発明の第6態様に係る燃費低減支援システムによれば、判定手段による判定結果の履歴を運転者に直感的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
本発明の第7態様に係る燃費低減支援システムによれば、燃費低減に寄与する運転操作をリアルタイムで運転者に把握させることができ、燃費低減技量が低い運転者に対しても燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【0020】
本発明の第8態様に係る燃費低減支援システムによれば、燃費低減状態の履歴に応じて変化する判定レベルに応じて燃費状態量が変化することから、運転者の燃費低減技量の上達に応じた適切な燃費状態量を推定することができ、運転者の燃費低減技量を、より一層、上達させることができる。
本発明の第9態様に係る燃費低減支援システムによれば、判定レベルが上位になることで燃費低減側に変化することに伴い、現在の前記燃費状態量として境界関数により推定する境界(例えば、車両状態量による座標空間において燃費低減状態に対応する領域と燃費低減状態以外の状態に対応する領域とを区分する界面)を収縮傾向に変更する。これにより、運転者の燃費低減技量の上達に応じて、燃費低減の難度を適切に増大させ、燃費低減の意欲を適切に高揚させつつ、運転者の燃費低減技量を、より一層、上達させることができる。
【0021】
本発明の第10態様に係る燃費低減支援システムによれば、判定レベルを運転者に視覚的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【0022】
本発明の第11態様に係る燃費低減支援システムによれば、運転操作に応じた現在の燃費状態量の変動は車両状態量の変動に対応し、例えば車両のクルーズ走行時などのように車両状態量の変動が小さい状態は、例えば車両の加速時あるいは減速時などのように車両状態量の変動が大きい状態に比べて、燃費低減状態となる。つまり、燃費状態量の変動が所定範囲内である場合に触覚的報知手段を作動させることにより、燃費低減状態を運転者に直感的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る燃費低減支援システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る燃費低減支援システムの表示画面の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る燃費低減支援システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る車両の速度と境界関数の時間変化との対応関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る燃費低減支援システムについて添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による燃費低減支援システム10は、例えば図1に示すように、車両の内燃機関(図示略)の回転数を検出する回転数センサ11およびトルクを検出するトルクセンサ12と、処理装置13と、表示装置などの視覚的伝達装置14と、スピーカなどの聴覚的伝達装置15と、触覚的伝達装置16とを備えて構成されている。
【0025】
処理装置13は、例えば、入力データ設定部21と、境界関数演算部22と、境界推定部23と、予測判定部24と、データ記憶部25と、報知制御部26とを備えて構成されている。
【0026】
入力データ設定部21は、所定のタイミングで回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力される現在の各検出結果の信号と、過去に回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力されてデータ記憶部25に記憶されているデータとに基づき、境界関数の演算に必要とされる関数入力データを設定して、この関数入力データを出力する。
この関数入力データは、例えば車両の内燃機関(図示略)の回転数とトルクとによる2次元座標上に予め設定された所定間隔の格子点のうちから選択された回転数とトルクとの組み合わせのデータである。つまり、関数入力データは、回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力される現在の各検出結果の信号による回転数とトルクとの組み合わせに対応した格子点と、データ記憶部25に記憶されているデータにおいて同時刻で検出されたとされる回転数とトルクとの組み合わせに対応した格子点とにより構成されている。
さらに、入力データ設定部21は、境界関数の演算に必要とされる各種の演算パラメータを出力する。
【0027】
境界関数演算部22は、例えば、アーレンカーン(AC)型方程式などを用いて境界関数の演算を行ない、関数入力データの各格子点を「+1」と「−1」との状態に分離し、演算結果を出力する。
【0028】
例えば、境界関数演算部22は、回転数およびトルクに対応する正規化2次元空間の変数(x,y)と時間とに関する未知関数uを記述する偏微分方程式として、パラメータεにより下記数式(1)に示すように記述される偏微分方程式を、アーレンカーン(AC)型方程式として用いる。
【0029】
【数1】

【0030】
上記数式(1)において、関数ω(u)は2個の最小値が2個の異なった位相に対応する二重井戸型ポテンシャルである。パラメータεがゼロに近づくと、未知関数uは、境界によって分離された2個の領域において、2個の最小値に対応する値、すなわち「+1」または「−1」の一方に近づく。境界は未知関数u=0の界面によって記述される。
境界関数演算部22は、時間の経過に応じて入力データ設定部21から出力される関数入力データに基づき、正規化2次元空間における未知関数uの値を演算し、この演算結果を出力する。
【0031】
境界推定部23は、境界関数演算部22から出力された演算結果に基づき、「+1」の状態を燃費低減状態であるとし、「−1」の状態を燃費低減状態以外の状態であるとし、回転数とトルクとによる2次元座標上における燃費低減状態と燃費低減状態以外の状態との現在の境界を推定し、この推定結果を出力する。
また、境界推定部23は、予測判定部24から出力される判定結果に応じて、境界を修正あるいは設定する。この処理については、後述する。
【0032】
予測判定部24は、境界推定部23から出力された推定結果に基づき、各センサ11,12から出力される現在の各検出結果の信号による回転数とトルクとの組み合わせに対応した格子点が、燃費低減状態であるか否かを判定する。そして、この判定結果を瞬時燃費運転予測のデータとして出力する。
例えば、予測判定部24は、境界推定部23により推定される境界の幅に係る不確定性の領域に応じて、各センサ11,12の現在の各検出結果による回転数とトルクとの組み合わせに対応した格子点が所定の確率(例えば、90%など)で「+1」側の値となる場合に、燃費低減状態であると予測判定する。
【0033】
また、予測判定部24は、関数入力データを構成する各格子点に対して、境界推定部23により推定される境界の幅に係る不確定性の領域に応じて、所定の確率(例えば、90%など)で「+1」側または「−1」側の値となる場合を予測成功とし、この予測成功以外の場合を予測失敗として、各格子点を区分し、この判定データを出力する。
【0034】
また、予測判定部24は、現在から過去の所定期間に亘る瞬時燃費運転予測のデータの履歴に基づき、燃費低減状態であると予測判定された頻度と、燃費低減状態ではないと予測判定された頻度との比率を、燃費運転予測履歴のデータとして出力する。
【0035】
データ記憶部25は、回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力される現在の各検出結果の信号を記憶すると共に、過去に回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力されたデータのうち、予測判定部24から出力される各格子点に対する予測成功または予測失敗の判定データに応じて、予測成功とされた格子点に対応するデータを記憶する。
これにより、入力データ設定部21から出力される関数入力データは、各センサ11,12の現在の各検出結果に対応した新たな格子点と、予測判定部24により予測成功とされた格子点とにより構成され、この関数入力データに応じた境界関数の演算結果に基づき境界推定部23により境界が推定されることで、境界が逐次修正される。
【0036】
また、境界推定部23は、境界関数演算部22から出力された演算結果に基づく境界の推定とは独立に、予測判定部24から出力される燃費運転予測履歴のデータに基づき、燃費低減状態に係る判定レベル(例えば、判定レベルL0〜L4など)を設定し、この判定レベルに応じて現在の境界を推定する。
例えば、境界推定部23は、予測判定部24から出力される燃費運転予測履歴のデータに基づき、燃費低減状態であると予測判定された頻度の全体に対する割合を予測率とし、この予測率が所定の判定閾値(例えば、90%など)よりも大きくなる毎に、判定レベルを上位の判定レベルへと更新する。そして、回転数とトルクとによる2次元座標上において各判定レベル毎に予め設定される所定領域内に収まるようにして、現在の境界を変更する。この各判定レベル毎に設定される所定領域は、例えば、判定レベルが所定の上限判定レベル(例えば、判定レベルL4など)に向って上位になることに伴い、燃費低減の度合いが増大するようにして収縮傾向に変化する。
【0037】
報知制御部26は、境界推定部23から出力される境界の推定結果および判定レベルと、予測判定部24から出力される瞬時燃費運転予測のデータおよび燃費運転予測履歴のデータとなどに基づき、各種の報知を行なう。
【0038】
例えば図2に示すように、報知制御部26は、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、瞬時燃費運転予測のデータにおいて燃費低減状態であると予測判定された場合に第1点灯部31を緑色などにより点灯し、瞬時燃費運転予測のデータにおいて燃費低減状態ではないと予測判定された場合に第2点灯部32を赤色などにより点灯する。
また、報知制御部26は、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、燃費運転予測履歴のデータに基づき、燃費低減状態であると予測判定された頻度の全体に対する割合と、燃費低減状態ではない予測判定された頻度の全体に対する割合とを、それぞれ各点灯部31,32と同じ点灯色である緑色と赤色とのバーグラフ33などにより表示する。
さらに、報知制御部26は、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、例えばバーグラフ33の表示位置の下方に、燃費低減状態であると予測判定された頻度の全体に対する割合(つまり、予測率)の数値表示34を表示する。
さらに、報知制御部26は、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、例えば数値表示34の下方に設けられた複数のレベル点灯部35のうち、境界推定部23により設定された判定レベルに対応するレベル点灯部35を点灯表示する。
【0039】
また、報知制御部26は、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、回転数とトルクとによる2次元座標上に予め設定された所定間隔の格子点36aと共に境界推定部23により推定された境界36bを示すグラフ36を表示する。
【0040】
また、報知制御部26は、予測判定部24から出力される燃費運転予測履歴のデータに基づき、燃費低減状態であると予測判定された頻度の全体に対する割合(つまり、予測率)が上昇しているか否かを判定する。そして、予測判定部24による予測判定の処理の実行回数に対する所定の上限回数に亘って予測率の上昇がないと判定した場合に、運転支援の実行が許可されていれば、予測判定部24により燃費低減状態であると予測判定される頻度を増大させる運転操作の実行を促すようして、聴覚的伝達装置15のスピーカから所定の音声ガイダンスを出力する。
所定の音声ガイダンスは、例えば境界推定部23により推定される境界が拡大傾向に変化している状態における「アクセルを戻してください」などである。
なお、運転支援の実行可否は、例えばスイッチなどの入力装置(図示略)に対する運転者の入力によって設定される。そして、報知制御部26は、運転支援の実行が許可されていれば、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、運転支援の実行許可を示す許可点灯部37を点灯する。
【0041】
本実施の形態による燃費低減支援システム10は上記構成を備えており、次に、この燃費低減支援システム10の動作について説明する。
【0042】
先ず、例えば図3に示すステップS01においては、境界関数の演算に対する各種の初期設定の処理を行なう。このとき、回転数とトルクとによる2次元座標上における燃費低減状態と燃費低減状態以外の状態との境界が未だ推定されていない場合には、所定の初期境界を設定する。
次に、ステップS02においては、回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力される現在の各検出結果の信号を取得する。
そして、ステップS03においては、回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力される現在の各検出結果の信号と、過去に回転数センサ11およびトルクセンサ12から出力されてデータ記憶部25に記憶されているデータとに基づき、境界関数の演算に必要とされる関数入力データを設定する。
【0043】
そして、ステップS04においては、例えば、アーレンカーン(AC)型方程式などを用いて境界関数の演算を行ない、関数入力データの各格子点を「+1」と「−1」との状態に分離する。そして、「+1」の状態を燃費低減状態であるとし、「−1」の状態を燃費低減状態以外の状態であるとし、回転数とトルクとによる2次元座標上における燃費低減状態と燃費低減状態以外の状態との現在の境界を推定する。
【0044】
そして、ステップS05においては、現在の境界に基づき、各センサ11,12から出力される現在の各検出結果の信号による回転数とトルクとの組み合わせに対応した格子点が、燃費低減状態であるか否かを判定し、この判定結果を瞬時燃費運転予測のデータとする。さらに、現在から過去の所定期間に亘る瞬時燃費運転予測のデータの履歴に基づき、燃費低減状態であると予測判定された頻度と、燃費低減状態ではないと予測判定された頻度との比率を、燃費運転予測履歴のデータとする。そして、燃費運転予測履歴のデータに基づき、燃費低減状態であると予測判定された頻度の全体に対する割合を予測率とする。
【0045】
そして、ステップS06においては、予測率が所定の判定閾値(例えば、90%など)よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS09に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
そして、ステップS07においては、現在の判定レベルが所定の上限判定レベルよりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS09に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
そして、ステップS08においては、判定レベルを上位の判定レベルへと更新する。そして、この判定レベルの更新に応じて現在の境界を変更する。
【0046】
そして、ステップS09においては、マップウィンドウ更新の処理として、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、回転数とトルクとによる2次元座標上に予め設定された所定間隔の格子点と共に現在の境界を示すグラフ36を表示する。
そして、ステップS10においては、燃費表示更新の処理として、瞬時燃費運転予測のデータに基づく各点灯部31,32の点灯と、燃費運転予測履歴のデータに基づくバーグラフ33の表示と、予測率の数値表示34と、判定レベルに対応するレベル点灯部35の点灯表示とを行なう。
【0047】
そして、ステップS11においては、予測率が前回の処理での予測率の前回値よりも上昇したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS13に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、一連の処理の実行終了が指示されているか否かを判定し、実行終了が指示されている場合には、エンドに進み、処理を終了する。一方、実行終了が指示されていない場合には、上記ステップS02に戻る。
【0048】
ステップS13においては、停滞回数を加算する。
そして、ステップS14においては、停滞回数が所定の上限回数よりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS12に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
【0049】
そして、ステップS15においては、運転者により運転支援の実行許可が指示されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS12に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS16に進む。
そして、ステップS16においては、運転支援実行の処理として、燃費低減状態であると予測判定される頻度を増大させる運転操作の実行を促すようして、聴覚的伝達装置15のスピーカから所定の音声ガイダンスを出力する。
そして、ステップS17においては、停滞回数をゼロとして初期化し、ステップS12に進む。
【0050】
上述したように、本発明の実施形態による燃費低減支援システム10によれば、運転者の運転操作に応じた現在の境界(つまり、回転数とトルクとによる2次元座標上における燃費低減状態と燃費低減状態以外の状態との境界)を過去の運転操作に応じた車両状態量(例えば、内燃機関の回転数とトルク)に基づき推定し、この境界と現在の車両状態量とから燃費低減状態であるか否かを予測判定することにより、運転者の継続的な運転操作に基づいた予測判定を行なうことができる。しかも、運転者毎の運転操作に応じて境界が推定されることから、燃費低減状態であると予測判定されることで、運転者毎の燃費低減技量に応じて燃費低減の達成感を増大させ、燃費低減の意欲を高揚させることができる。
【0051】
さらに、回転数とトルクとによる2次元座標上における燃費低減状態と燃費低減状態以外の状態との境界を境界関数によって推定することにより、現在の境界の推定精度および予測判定部24による判定精度を向上させることができる。
さらに、境界関数に対する関数入力データが予測判定部24により予測成功とされた格子点により構成されることで、境界推定部23により推定される境界が逐次修正され、燃費状態量の推定精度および予測判定部24による判定精度を、より一層、向上させることができる。
【0052】
さらに、予測判定部24よる判定結果に応じた報知を行なうことで、判定結果を運転者に直感的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
さらに、瞬時燃費運転予測のデータに基づく各点灯部31,32の点灯によれば、予測判定部24による判定結果を運転者に視覚的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【0053】
さらに、燃費運転予測履歴のデータに基づくバーグラフ33の表示によれば、予測判定部24による判定結果の履歴を運転者に直感的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
さらに、予測判定部24により燃費低減状態であると予測判定される頻度を増大させる運転操作の実行を促すようして、聴覚的伝達装置15のスピーカから所定の音声ガイダンスを出力することにより、燃費低減に寄与する運転操作をリアルタイムで運転者に把握させることができる。そして、燃費低減技量が低い運転者に対しても燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【0054】
さらに、燃費低減状態の履歴に応じて変化する判定レベルに応じて境界が変化することから、運転者の燃費低減技量の上達に応じた適切な境界を推定することができ、運転者の燃費低減技量を、より一層、上達させることができる。
例えば、判定レベルが上位になることで燃費低減側に変化することに伴い、現在の境界を収縮傾向に変更することにより、運転者の燃費低減技量の上達に応じて、燃費低減の難度を適切に増大させ、燃費低減の意欲を適切に高揚させつつ、運転者の燃費低減技量を、より一層、上達させることができる。
さらに、判定レベルを運転者に視覚的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態において、報知制御部26は、視覚的伝達装置14の表示装置の表示画面30上などにおいて、回転数とトルクとによる2次元座標上に予め設定された所定間隔の格子点と共に現在の境界を示すグラフ36を表示するとしたが、これに限定されず、グラフ36を表示する代わりに、境界の変動が所定範囲内である場合に触覚的伝達装置16を作動させてもよい。
例えば図4に示すように、運転者の運転操作に応じた境界関数の時間変化の変動は、車両の速度や内燃機関の回転数およびトルクなどの車両状態量の変動に対応する。例えば車両のクルーズ走行時などのように車両状態量の変動が小さい状態は、例えば車両の加速時あるいは減速時などのように車両状態量の変動が大きい状態に比べて、燃費低減状態となる。つまり、境界の変動が所定範囲内である場合に触覚的伝達装置16などにより報知を行なうことにより、燃費低減状態であることを運転者に直感的に把握させることができ、運転者が燃費低減に寄与する運転操作を予測する際の予測精度を向上させることができ、燃費低減に寄与する運転操作の運転者による学習および実行を適切に促すことができる。
触覚的伝達装置16は、例えばアクセルペダル制御装置やシートベルト装置や操舵制御装置などであって、報知制御部26から出力される制御信号に応じて、例えばアクセルペダルに運転者が触覚的に知覚可能な振動を発生させたり、例えばシートベルトに所定の張力を発生させて運転者が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、例えばステアリングホイールに運転者が触覚的に知覚可能な振動(ステアリング振動)を発生させる。
なお、報知のタイミングは、境界(あるいは境界関数)の変動が所定範囲内である状態に到達した時点(例えば、図4に示す時刻t2、t5など)から、この状態が所定期間に亘って維持された時点(例えば、図4に示す時刻t3、t6など)とされる。
また、例えば車両が加速走行から定速走行に移行する走行状態の変化が繰り返される際に、加速走行から定速走行に移行するときの予測率の上昇に伴って判定レベルが上位の判定レベルへと更新される場合には、定速走行が終了して加速走行あるいは減速走行に移行した時点(例えば、図4に示す境界関数の時間変化が減少する時刻t4など)で、判定レベルは初期の判定レベルへと初期化される。
【符号の説明】
【0056】
10 燃費低減支援システム
11 回転数センサ(車両状態量検出手段)
12 トルクセンサ(車両状態量検出手段)
14 視覚的伝達装置(報知手段)
15 聴覚的伝達装置(報知手段)
16 触覚的伝達装置(報知手段、触覚的報知手段)
23 境界推定部(推定手段、修正手段、判定レベル設定手段)
24 予測判定部(判定手段)
26 報知制御部(報知手段)
31 第1点灯部(第1点灯手段)
32 第2点灯部(第2点灯手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の運転操作による燃費低減を支援する燃費低減支援システムであって、
前記運転操作に応じた車両状態量を検出して検出結果の信号を出力する車両状態量検出手段と、
前記運転操作に応じた現在の燃費状態量を、過去に前記車両状態量検出手段から出力された前記検出結果に基づき推定して推定結果を出力する推定手段と、
前記車両状態量検出手段から出力された現在の前記車両状態量の前記検出結果と、前記推定手段から出力された前記推定結果とに基づき、燃費低減状態であるか否かを予測判定して判定結果を出力する判定手段とを備えることを特徴とする燃費低減支援システム。
【請求項2】
前記推定手段は境界関数により現在の前記燃費状態量を推定することを特徴とする請求項1に記載の燃費低減支援システム。
【請求項3】
前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定された場合に前記燃費状態量を修正する修正手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃費低減支援システム。
【請求項4】
前記判定手段から出力された前記判定結果に応じた報知を行なう報知手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかひとつに記載の燃費低減支援システム。
【請求項5】
前記報知手段は、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定された場合に第1点灯手段を点灯し、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態ではないと予測判定された場合に第2点灯手段を点灯することを特徴とする請求項4に記載の燃費低減支援システム。
【請求項6】
前記報知手段は、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定された頻度と、前記判定手段から出力された前記判定結果において前記燃費低減状態ではないと予測判定された頻度との比率に応じた報知を行なうことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の燃費低減支援システム。
【請求項7】
前記報知手段は、前記比率に応じて、前記判定手段から出力される前記判定結果において前記燃費低減状態であると予測判定される頻度を増大させる運転操作の実行を促す報知を行なうことを特徴とする請求項6に記載の燃費低減支援システム。
【請求項8】
前記比率に応じて、前記燃費低減状態に係る判定レベルを設定する判定レベル設定手段を備え、
前記推定手段は前記判定レベル設定手段により設定された前記判定レベルに応じて現在の前記燃費状態量を推定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の燃費低減支援システム。
【請求項9】
前記推定手段は前記判定レベルが燃費低減側に変化することに伴い、現在の前記燃費状態量として境界関数により推定する境界を収縮傾向に変更することを特徴とする請求項8に記載の燃費低減支援システム。
【請求項10】
前記報知手段は、前記判定レベル設定手段により設定された前記判定レベルを報知することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の燃費低減支援システム。
【請求項11】
前記報知手段は、前記推定手段から出力された前記推定結果での前記燃費状態量の変動が所定範囲内である場合に、触覚的報知手段を作動させることを特徴とする請求項4から請求項10の何れか1つに記載の燃費低減支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196640(P2010−196640A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44312(P2009−44312)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】