説明

燻蒸用生分解性シート

【課題】 脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、又は脂肪族ポリエステル樹脂の単独又は混合物等を含む生分解性燻蒸用シートは、木の枝等に引っかかっても破れ難いが、充分なガスバリア性を有したものではない。
【解決手段】脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、又は脂肪族ポリエステル樹脂の単独又は混合物等を含む生分解シートに、ポリビニルアルコール系皮膜を形成することにより、高ガスバリア性を有することを特徴とする燻蒸用生分解性シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材等の害虫燻蒸用のシートに関するものである。更に詳しくは、生分解性を有し、対象木を燻蒸する際の殺虫効果を所要期間維持する上で充分なガスバリア性と、水による劣化速度の抑制に優れたことを特徴とし、軽量であり山中で運搬する際等の取り扱い性に優れた燻蒸用生分解性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、松くい虫と総称で呼ばれるマツノマダラカミキリ等の穿孔性甲虫類による松枯れの被害が全国的に拡大し、松の生育を脅かす問題にまで発展している。松くい虫による松枯れの被害を防止する有効な手段の1つとして、松くい虫により枯れた松を伐倒し、集めた松材をシートで包んで殺虫剤を用いて燻蒸する方法がある。
【0003】
燻蒸用被覆シートとして、ポリエチレンシート、ポリ塩化ビニルシートが使用されている。また、燻蒸作業は伐倒した松材に対して行うため、その作業場所は山中である。自動車では途中までしか入れない場所が多く、燻蒸用シートは、たいていは機材とともに人の手により運搬されている。しかも燻蒸後のシートは、回収ならびに焼却処分する必要があり、多大な労力と時間、ならびに費用が必要となっている。そこで近年においては、燻蒸後土中等で微生物によって分解される燻蒸用の生分解性シートが提案され、実用化されている。
【0004】
そのような燻蒸用の生分解性シートとして、基紙に生分解性樹脂を積層させたシートが提案されている(特許文献1)。しかしながら、この基紙に生分解性樹脂を積層させたシートは、ガスバリア性が高いものの、木の枝等に引っかかると破れ易いという問題がある。
【0005】
そこで、かかる点を改良するものとして、基紙を用いず、生分解性樹脂のみから成るシートが提案されている。その生分解性樹脂としては、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、又は脂肪族ポリエステル樹脂の単独又は混合物等から構成されているシートである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−25347
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、又は脂肪族ポリエステル樹脂の単独又は混合物等から構成されているシートは、木の枝等に引っかかっても破れ難いが、充分なガスバリア性を有したものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は鋭意検討を行った結果、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、又は脂肪族ポリエステル樹脂の単独又は混合物等から構成されているシートに、ポリビニルアルコール系皮膜を形成することにより、高ガスバリア性を有することを特徴とする燻蒸用生分解性シートであることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
生分解性樹脂として、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンの単独又は混合物、共重合物が好ましい。その他の生分解性樹脂として、澱粉脂肪酸エステル、澱粉ポリエステル、酢酸セルロース、キトサン、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンセバケート等の単独又は混合物、共重合物が挙げられる。
【0010】
ポリビニルアルコール系皮膜を形成する方法として、スプレーコート又は、ディッピングコートが好ましい。その他の方法として、グラビアコート、ロールコート等により形成することもできる。
【0011】
生分解性樹脂シートの厚みが35μmに満たない場合は、突刺し強度、引張り強度等、シートとしての全体的な強度が確保できなくなる傾向がある。
また、生分解性樹脂シートの厚みが135μmを超える場合は、人の手で運搬する際等に、重く取り扱いがしにくく、作業者に大きな負担がかかる傾向がある。
【0012】
ポリビニルアルコール系皮膜の厚みが0.1μmに満たない場合は、ガスバリア性能が得られない。
また、ポリビニルアルコール系皮膜の厚みが30μmを超える場合は、ガスバリア性能が飽和する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燻蒸用生分解性シートは、上記の構成を採用することにより、殺虫剤で燻蒸する際の殺虫効果に必要な期間(二週間)に、高ガスバリア性を維持し、殺虫剤の殺虫効果を最大限に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の具体的実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0015】
(実験1)
本発明の燻蒸用生分解性シートを使用して、ポリビニルアルコール系皮膜の厚みと、ガスバリア性能に関して、性能試験を実施した。生分解性シートの厚みは80μm一定で、ポリブチレンアジペートテレフタレートを使用し、同じ条件下で性能試験を実施した。
【表1】

【0016】
(ガスバリア性能試験方法)
メチルイソチオシアネート(MITC)0.1gをテフロン製の皿に入れ、試験容器の投入層に設置後、試料(本願シート、シートA、シートB)を試験容器にセット(グリースでシール)し、セットした試験容器は排気ダクトを備えた実験室に室温で静置した。一定時間経過後、投入層のMITC濃度を水素炎イオン化検出器付ガスクロマトグラフで測定した。
【0017】
(考察)
本発明に係わる燻蒸用生分解性シートは、表1からも分かるとおり、ポリビニルアルコール系皮膜の厚みが0.1μmに満たない場合は、ガスバリア性能が得られなくなる傾向がある。ポリビニルアルコール系皮膜の厚みが30μmを超える場合には、ガスバリア性能が飽和することがわかった。
【0018】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、技術思考の範囲内において種々の変形が可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂と、ポリビニルアルコール系皮膜から構成されたことを特徴とする燻蒸用生分解性シート。
【請求項2】
生分解性樹脂として、脂肪族芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンの単独又は混合物、共重合物であることを特徴とする請求項1記載の燻蒸用生分解性シート。
【請求項3】
生分解性樹脂の厚みが35〜135μm、同じくポリビニルアルコール系皮膜の厚みが、0.1〜30μmに構成されている請求項1及び請求項2記載の燻蒸用生分解性シート。


【公開番号】特開2008−265231(P2008−265231A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114233(P2007−114233)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(304021325)CROSSEED株式会社 (6)
【Fターム(参考)】