説明

爆発性物品用ウォータージェット切断装置及び切断方法

【課題】対象物の外形がいびつであっても、その長軸周りに回転可能に確実に保持し、容易な切断を可能とする爆発性物品用のウォータージェット切断装置及び切断方法の提供。
【解決手段】爆発性物品用のウォータージェット切断装置において、切断対象物を加工台上に保持する保持手段が、同一周上に等角度間隔で形成された雌ネジ貫通孔に螺合状態で、それぞれ半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされる複数本のボルト部材が装着された円筒状部材を一つ以上備え、これらボルト部材の先端部間に挟持されることによって切断対象物が前記円筒状部材内に保持されるものであり、回転駆動機構に連通するクランプ部が嵌合する前記円筒状部材と共に切断対象物がその中心軸周りに回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要となった爆弾等の火工品を含む爆発性物品を処理する際に用いるウォータージェット切断装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前は危険が伴うために海洋投棄されていた不要爆弾は、現在、法律改正に伴って海洋投棄が禁止されているため、廃棄処理するには解体して爆薬等の内容物を取り出し、回収する必要がある。このような解体処理では、爆弾自体を長軸上の横断方向に切断して内容物を抜き出す方法が最も簡便である。しかし、鋸刃による切断では、切断処理対象が大量である場合、刃の交換が頻繁になり、作業効率が悪い。そこで、爆弾切断に研磨材を含むウォータージェットが利用されている。
【0003】
このようなウォータージェットを用いた方法では、保持具で爆弾を外周側から固定し、ウォータージェットを噴射して切断を行うが、外径100〜600mm程度の爆弾は、ウォータージェットでは爆弾を長軸上の周方向に回転させながらでなければ完全な切断は困難である。従って、爆弾を固定している保持具を長手方向軸回りに回転させることによって爆弾周りにウォータージェットを噴射して切断を行っている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2003−75100号公報
【特許文献2】特願2003−314998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、処理対象の不要爆弾は、通常、輪郭が流線形で平行な部分が少ないことや、懸吊搬送のための吊り穴部が上方に溶接されていたり、局所的に変形していびつであることも多く、上記のように爆弾を保持した状態で軸回りに回転させる切断方式においては、確実な保持状態の維持が困難で、回転切断処理に対応できない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、外形がどのようないびつなものであっても対象物を確実に保持し、その保持状態を良好に維持しながら長手方向の中心軸周りに回転させて容易に切断を行える爆発性物品用のウォータージェット切断装置および切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る爆発性物品用ウォータージェット切断装置は、爆発性物品である切断対象物を加工台上に保持する保持手段と、該保持手段と共に切断対象物をその長手方向中心軸周りに回転させる回転装置と、該回転装置によって回転する前記切断対象物に対して噴射ノズルからウォータージェットを噴射するウォータージェット装置と、前記噴射ノズルと前記切断対象物とを相対移動させてウォータージェットの噴射切断位置を決定する位置決め装置とを備えた爆発性物品用ウォータージェット切断装置において、
前記保持手段は、内部に前記切断対象物が挿通される一つ以上の円筒状部材と、該円筒状部材の同一周上に等角度間隔で形成された雌ネジ貫通孔と、各雌ネジ貫通孔に螺合状態で装着されてそれぞれ該円筒状部材の半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされる複数本のボルト部材とを備え、これらボルト部材の先端部間に挟持されることによって前記切断対象物が前記円筒状部材内に保持されるものであり、
前記回転装置は、内部に切断対象物を保持する前記円筒状部材の一つに着脱可能に嵌合するクランプ部と、該クランプ部に連通して該クランプ部を介して前記円筒状部材を切断対象物と共にその中心軸周りに回転させる回転駆動機構とを備えているものである。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る爆発性物品用ウォータージェット切断装置は、請求項1に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置において、前記保持手段は、各円筒状部材を回転可能に且つ交換可能に支持する支持部を有し、
該支持部は、対応する円筒状部材が載置され、該円筒状部材の回転に追従軸回転する一対の支持ローラを備えているものである。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る爆発性物品用ウォータージェット切断装置は、請求項1又は請求項2に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置において、前記ボルト部材は、それぞれ先端部に、切断対象物表面に当接する皿状部材が円筒状部材の内周方向に揺動可能に取り付けられているものである。
【0010】
請求項4に記載の発明に係る爆発性物品用ウォータージェット切断装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置において、前記保持手段は、切断対象物に対して切断位置を挟む長軸方向に沿った前後二箇所で保持する二つの円筒状部材を有し、
前記クランプ部は、前方の円筒状部材に嵌合するものである。
【0011】
請求項5に記載の発明に係る爆発性物品用ウォータージェット切断装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置において、前記加工台を少なくとも保持手段と共に水中に浸漬・露出可能に載置する水槽装置をさらに備えたものである。
【0012】
請求項6に記載の発明に係る爆発性物品のウォータージェット切断方法は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のウォータージェット切断装置による爆発性物品の切断方法であって、
前記加工台上で、切断対象物を前記保持手段によって保持し、前記回転装置により回転可能状態とする保持工程と、前記位置決め装置によって切断対象物の切断位置と前記噴射ノズルとの相対位置調整を行う工程と、相対位置調整後に、前記回転装置によって前記保持手段と共に切断対象物をその長手方向中心軸周りに回転させながら前記噴射ノズルから研磨材を含むウォータージェットを噴射する切断工程とを備え、
前記保持工程は、前記切断対象物をその切断位置を露呈させて前記円筒状部材内に挿通し、各ボルト部材を円筒状部材の中心に向かって前進させ、各支持ボルト部材の先端部によって切断対象物を外周方向から挟持する工程と、
各ボルト部材のネジ止め位置を調整することによって切断対象物の長手方向中心軸を前記円筒状部材の中心軸に合致させる芯合わせ工程と、
芯合わせの後に、前記クランプ部を前記円筒状部材の一つに嵌合させて回転装置と接続する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の爆発性物品用ウォータージェット切断装置は、加工台上に切断対象物を保持するための保持手段が、内部に切断対象物を挿通する一つ以上の円筒状部材を備え、該円筒状部材の同一周上に等角度間隔で形成された雌ネジ貫通孔に螺合状態で装着された複数本のボルト部材が、それぞれ該円筒状部材の半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされたものである。このため、円筒状部材の内部に挿通された切断対象物の外形状がいびつであったり突起物があるなど、断面外形状が円形でなくても、各ボルト部材をそれぞれ円筒状部材の中心に向けて前進させて全ボルト部材の先端を切断対象物の外表面に当接させ、その各ボルト部材の前進量をそれぞれ調整することによって、切断対象物の長手方向中心軸を円筒状部材の中心軸に合致させた状態で切断対象物を全外周方向からボルト部材の先端部間で挟持し、円筒状部材内に良好に保持することができる。そして、回転装置によって円筒状部材をその中心軸周りに回転させれば切断対象物もその長手方向中心軸周りに回転させることができるため、噴射ノズルからウォータージェットを噴射衝突させながら切断対象物を必要回数回転させるだけで、正確にこれを切断することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例による爆発性物品用ウォータージェット切断装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の切断装置を水中切断に用いる際の状態を示す概略横断面図である。
【図3】本発明の第2実施例による爆発性物品用ウォータージェット切断装置の構成を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による爆発性物品用ウォータージェット切断装置においては、加工台上に切断対象物を保持する保持手段が、内部に切断対象物を挿通する一つ以上の円筒状部材を備え、該円筒状部材の同一周上に等角度間隔で形成された雌ネジ貫通孔に螺合状態で装着された複数本のボルト部材が、それぞれ該円筒状部材の半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされたものであるため、円筒状部材の内部に挿通された切断対象物に対して、各ボルト部材をそれぞれ円筒状部材の中心に向けて前進させて全ボルト部材の先端を切断対象物の外表面に当接させることによって、切断対象物は全外周方向から複数本のボルト部材の先端部間で挟持され、円筒状部材内に保持される。しかも、切断対象物の外形状がいびつであったり、突起物があったとしても、各ボルト部材の前進量をそれぞれ調整してネジ止め位置を決定することによって、切断対象物の長手方向中心軸を円筒状部材の中心軸に合致させることができる。
【0016】
従って、回転装置の回転駆動機構に連通するクランプ部を円筒状部材に嵌合・固定させ、クランプ部を介して円筒状部材をその中心軸周りに回転させれば、これに伴って切断対象物もその長手方向の中心軸周りに回転するため、位置決め装置によって切断位置との相対位置調整を行ったウォータージェット装置の噴射ノズルから研磨材と共にウォータージェットを切断対象物に対して噴射させながら切断対象物を回転させるだけで、切断の進行は同一周上に沿って終点が始点に重なる正確なものとなり、その回転を切断対象物の堅さや厚み等に応じた必要回数分繰り返せば、該切断対象物を中心軸横断方向にきれいに分断することができる。
【0017】
また、各ボルト部材の前進量を調整することによってボルト部材先端部間に形成される任意の径空間内に対象物を挟持できるため、切断対象物は、円筒状部材内に挿入できるものであれば種々の外径のものが保持できる。また、円筒状部材自体を異なる径のものを各種用意すれば、保持できる切断対象物の外径範囲も大幅に拡がる。
【0018】
なお、本発明の保持手段においては、少なくとも一つの円筒状部材で切断対象物を保持できるが、もちろん、一つの切断対象物に対して一つの円筒状部材での保持に限らず、複数個の円筒状部材で保持する構成としても良い。通常、流線形を持つ爆弾など、細長い形状のものは、例えば前後二箇所で保持する方が、特に水平方向の軸芯合わせされた状態をより確実に確保でき、その状態を切断工程中に亘ってより安定に維持できるため、好ましい。
【0019】
この場合、切断位置を挟む長軸方向に沿った前後二箇所で保持する二つの円筒状部材を備えた構成とする。また、クランプ部は、全円筒状部材に対して嵌合させる必要はなく、前方の円筒状部材にのみ嵌合するものとすれば、簡便にウォータージェット噴射に支障の生じない良好な切断対象物の保持、回転状態が設定できる。
【0020】
また、爆弾等では、相対的に長細い形状のものもある。これに対応して安定な保持状態を得るために、さらに多くの円筒状部材で複数箇所を保持する構成としても良いが、円筒状部材自体を幅の大きなものを用意すれば、個数を増やすことなく、円筒状部材二つのみで細長い爆弾でも良好に保持できる。この場合、一つの円筒状部材について、同一周上に等角度間隔で設けられる雌ネジ貫通孔とこれに装着される複数のボルト部材を、中心軸方向に離れた二箇所以上の周上にそれぞれ設ける構成とする。即ち、幅広の円筒状部材一つにつき、二箇所以上の挟持部で爆弾を保持できる。
【0021】
以上のように、円筒状部材の径や幅等の寸法および挟持部位の数が異なる各種円筒状部材を用意し、これらを用いる個数も適宜設定することにより、本発明の切断装置により処理できる爆弾等の火工品を含む爆発性物品についても様々な大きさ形状のものなど対応範囲は格段に広くなる。
【0022】
また、上記のように、切断対象物に応じて径や幅の異なる円筒状部材に変更する場合、その変更がある程度の範囲内のものであれば、保持手段に円筒状部材を回転可能に且つ交換可能に支持する支持部を備えておけば、保持手段全体を円筒状部材と共に取り替えることなく、実質的に円筒状部材の交換だけで済む。
【0023】
支持部としては、軸回転可能に並設された一対の支持ローラから構成されるものが簡便である。この一対の支持ローラは、それらの間上に載置された円筒状部材の回転に追従して軸回転するものとする。即ち、一対の支持ローラは円筒状部材を回転可能に支持するものであり、各種外径の異なる円筒状部材に対応することができる。
【0024】
なお、本発明では、保持手段において、切断対象物は複数本のボルト部材の先端部で外周から挟持されることにより円筒状部材の内部に保持され、各ボルト部材先端部の切断対象物表面に対する当接部には、適度な締め付け圧が生じるが、その当接部は、点接触よりも面接触である方がより安定した保持状態が得られるため好ましい。
【0025】
例えば、各ボルト部材の先端部に、円筒状部材の内周方向に揺動可能に取り付けられた皿状部材を備えれば、各皿状部材は、切断対象物の当接部領域の傾斜曲面に対応して適宜揺動し、皿状下面を切断対象物表面に沿わせ、切断対象物を全ボルト部材の先端部の間でほぼ面接触で教示し、安定な保持状態が得られる。
【0026】
また、クランプ部は、円筒状部材に対する嵌合・固定状態において、円筒状部材の中心軸を回転駆動機構の回転中心と同軸上に一致させ得るものであれば良い。さらに、クランプ部は、異なる外径の円筒状部材に対応して交換可能に回転駆動機構に連動される複数種のものを用意する構成としてもよいが、同一のもので各種外径の円筒状部材に対して嵌合できる構成のものとしても良い。
【0027】
また、爆弾等の爆発性物品の切断工程においては、火花の発生を極力抑えることが望まれる。その点、ウォータージェットによる切断では、鋸刃を用いた切断に比べて火花の発生は格段に少ない。しかし、より確実に火花発生を抑制するには、水中環境下での切断が好適である。そこで、本発明の切断装置においては、加工台を少なくとも保持手段と共に水中に浸漬・露出可能に載置する水槽装置をさらに備えたものであれば、水槽内で露出状態で切断対象物の保持作業、位置決め調整を行い、その後、水中浸漬状態で切断対象物の回転及びウォータージェットの噴射による切断工程を行える。
【0028】
水中への浸漬状態と露出状態の切換は、水槽内での加工台の昇降によっても行えるが、水槽内で切断対象物の保持高さを固定とし、水槽内への水の供給・排出による水面の上昇下降による切換によっても可能である。前者の昇降機構を水槽装置に備える場合よりも、後者の場合は水供給、排出機構を備えるだけで済むので設計が簡便である。
【実施例1】
【0029】
本発明の第1の実施例として、それぞれ同一周上の実質的な挟持部を一つずつ持つ円筒状部材を二つ備えた場合のウォータージェット切断装置を図1の概略斜視図に示す。本実施例においては、噴射後のウォータージェットや爆弾の切断に伴ってウォータージェットと共に排出された爆弾内容物を受け入れて回収するためのキャッチャタンク1の上部開口を塞ぐ格子台2が、本装置の加工台として保持部3や回転装置が設置されるものである。なお、図2は、本装置のキャッチャタンク1が保持部3と回転装置と共に水槽30内に設置された状態を示す概略横断面図である。
【0030】
格子台2の上には、保持部3と回転装置とが設置されている。保持部3は、格子台2上面の、爆弾20等の切断対象物の長手方向の中心軸に沿った前後二箇所に固定された2組の支持部(4a,4b)と二つの円筒状部材(6a,6b)とで主に構成され、回転装置はエアモーター12と、その回転軸10に連通されたクランプ部11とを備えている。支持部(4a,4b)は、それぞれ、軸回転可能に軸支された一対の支持ローラ5が並設されて成るものである。
【0031】
各支持部(4a,4b)上には、同一形状の二つの円筒状部材(6a,6b)がそれぞれ一対のローラ5の間上に回転可能に、且つ互いに同軸状に載置されており、これによって、それぞれ一対のローラ5は、後述のような内部に爆弾20を保持した円筒状部材(6a,6b)がその中心軸周りに回転するとき、該回転に追従回転しながら対応する円筒状部材(6a,6b)をその互いに同軸上にある中心軸位置をずらすことなく良好に支持するものである。
【0032】
各円筒状部材(6a,6b)には、それぞれ同一周上に等角度間隔で複数個の雌ネジ貫通孔7が形成されており、各雌ネジ貫通孔7には、ボルト部材8が螺合状態で装着されており、それぞれ該円筒状部材の半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされる。これら複数本のボルト部材8の先端部間に挟持されることによって切断対象物が円筒状部材内に良好に保持されるものである。即ち、本実施例では一つの円筒状部材につき、一つの周上に配置された複数本のボルト部材8によって実質的に一つの挟持部が円筒状部材内部に構成されている。
【0033】
また、本実施例では、二つの円筒状部材(6a,6b)によって、切断対象物をその長手方向中心軸に沿って切断位置を挟む前後二箇所で保持するものとする。なお、各ボルト部材8の先端部には、略皿状部材9が円筒状部材の内周方向に揺動可能に取り付けられており、切断対象物の表面に沿って面接触で当接保持できるものとした。
【0034】
回転装置側においては、エアモーター12の回転軸10の先端部にクランプ部11が連通されており、このクランプ部11が前側の円筒状部材6aに着脱可能に嵌合固定される。また、クランプ部11の円筒状部材6aに対する嵌合固定状態において、回転軸10と円筒状部材6aの中心軸との芯合わせが成されるものとする。
【0035】
従って、エアモーター12の駆動によって、回転軸10を介してクランプ部11によって回転される円筒状部材6aはその中心軸周りに回転することになる。このとき、円筒状部材(6a,6b)内に切断対象物が軸合わせされた状態で保持固定されていれば、切断対象物もその中心軸周りに回転することになる。
【0036】
一方、ウォータージェット装置は、超高圧水を研磨材と共にアブレシブウォータージェットとして切断対象物に向けて噴射するための噴射ノズル13を備え、該噴射ノズル13には、外部の超高圧水供給源(不図示)から配管を介して供給される超高圧水を噴射ノズル13内に導入する超高圧水導入口14と、研磨材供給源(不図示)から配管を介して供給される研磨材をノズル内を噴射口に向かって流れる超高圧水に合流させる研磨材導入口15とが設けられている。
【0037】
噴射ノズル13は、切断対象物の回転中心軸に直交する水平方向(矢印X方向)に延びるノズルアーム16の先端側に、該ノズルアーム16に沿って前記水平方向Xに摺動可能に取り付けられている。ノズルアーム16は、ノズル他端側が、垂直方向(矢印Z方向)に延びるガイドポスト17に、該ガイドポスト17に沿って上下方向Zに移動可能に装着されている。また、ガイドポスト17は、ノズルアーム16ごと切断対象物の長手中心軸と平行な方向(矢印Y方向)に沿って移動される駆動機構(不図示)に装着されている。
【0038】
従って、これら駆動機構とガイドポスト17とノズルアーム16と噴射ノズル摺動機構とによって噴射ノズル13の位置決めを行う位置決め装置が構成され、それぞれX方向、Y方向、Z方向での各部の調整により、ウォータージェットによる切断位置が設定位置に調整される。
【0039】
以上の構成を備えた本ウォータージェット切断装置における切断対象物としての爆弾20の処理工程は以下の通りである。まず、二つの円筒状部材(6a,6b)について、それぞれボルト部材8を外周側へ後退させて、全ボルト部材8の先端部間に形成される空間を拡げておく。この二つの円筒状部材(6a,6b)内に爆弾20を挿通し、爆弾20に対して予め定めた切断位置を挟んだその長手方向に沿った前後二箇所に各円筒状部材(6a,6b)を位置付ける。
【0040】
この前後位置において、各円筒状部材では、全ボルト部材8を円筒状部材の半径方向に沿って前進させ、全ボルト部材8の先端部を爆弾20の外表面に当接させる。このボルト部材8の先端部が全て爆弾20の外表面に当接した状態において、爆弾20は、複数本のボルト部材8の先端部間に挟持されることになり、これによって爆弾20が前後二箇所で各円筒状部材(6a,6b)内部に保持される。各ボルト部材8の先端部では、円筒状部材の円周方向に揺動可能に取り付けられた皿状部材9が爆弾20の外表面に沿って面接触で当接するため、安定した保持状態が得られる。
【0041】
この、ボルト部材8による挟持部位である爆弾20の外周形状が、きれいな円形である場合、各ボルト部材8の円筒状部材の半径方向に沿って中心に向かう前進量を同一に揃えれば、円筒状部材の内周面から爆弾20表面の変形方向の距離が全周にわたって均一となり、爆弾20の長手方向中心軸は円筒状部材の中心軸と合致する。一方、爆弾20の挟持部分における外形状がいびつであったり、何らかの突起部が存在することもあるが、その部位に対応するボルト部材8の前進・後退量を微調整することによって、爆弾20の中心軸を円筒状部材の中心軸に合わせることができる。
【0042】
このような前後二つの円筒状部材(6a,6b)内における爆弾20の保持と軸心合わせが完了した後、二つの円筒状部材(6a,6b)をそれぞれ対応する二組の支持部4のローラ5上に載置する。クランプ部11を前側の円筒状部材6aに嵌合させて固定することによって、エアモーター12の回転軸10に円筒状部材6aを接続させる。
【0043】
また、前記位置合わせ装置において、噴射ノズル13のX,Y,Z方向の位置合わせを行って爆弾20の予め設定された切断位置上にウォータージェットが衝突する噴射位置となるよう位置決めを行う。
【0044】
以上の設定が終了したら、エアモーター12を駆動させて回転軸10,クランプ部11を介して前側円筒状部材6aをその中心軸周りに回転させる。この前側円筒状部材6aの回転に伴って爆弾20もその中心軸周りに回転する。このとき、後側円筒状部材6bも回転するが、爆弾20の中心軸は後側円筒状部材6bの中心軸とも同軸関係にあり、その位置関係は、二つの円筒状部材(6a,6b)に追従軸回転するローラ5を備えた二組の支持部4によって維持される。
【0045】
このような爆弾20の中心軸周りの回転状態を維持しつつ、噴射ノズル13から研磨材と共にウォータージェットを噴射すれば、ウォータージェットの衝突位置は,終点が始点に重なるような爆弾20の同一円周上に沿った正確なものである。従って、爆弾20は、中心軸周りに一回転した時点で全周に亘ってウォータージェットによる切断がなされるため、その回転を一回転数以上、爆弾20の堅さや厚さ等に応じた必要回数分繰り返せば、爆弾20は一垂直面を境に分断され、内容物を抜き出せる状態となる。
【0046】
以上のように、本実施例のウォータージェット切断装置によれば、外形が流線形で平行な部分の少ないものや、部分的に変形していびつな部分があったり、突起物があるなど、保持部の断面外周形状が円形でないものであっても、その長手方向中心軸を円筒状部材の中心軸に軸合わせしてその中心軸周りに回転させることができるため、様々な形状の爆発性物品に対して常に良好な切断処理を行うことができる。
【0047】
なお、爆発性物品の切断において、火花の発生を極力抑えるために、水中での切断を行う場合は、図2に示すように、水の供給、排出によって容易に液面の昇降が行える水槽30内に、キャッチャタンク1を支持部4と回転装置と共に設置する構成とすればよい。なお、図2に示すように、水槽30の所定高さに格子台2を設置すれば、それより下方の水槽底部分がキャッチャタンク1として機能する。
【0048】
この場合、予め水の排出によって液面を下降させて二組の支持部4を水上に露呈させておく。この各支持部4の一対のローラ5間上に、上記の如く爆弾20を内部に同軸状に挟持、保持させた二つの円筒状部材(6a,6b)を載置し、前側円筒状部材6aにクランプ部11を嵌合固定してモーター12の回転軸に接続する。その後噴射ノズル13の所定切断位置への位置決め調整を行う。
【0049】
このように爆弾20の保持、設置、噴射ノズル13の位置決めが完了した後、排水口を塞いで水槽30内に水を供給し、爆弾20を含む保持部3が水没し、噴射ノズル13の先端が水中に位置して水中ウォータージェット切断が行われる設置水面高さまで液面を上昇させる。
【0050】
以上の設定が終了したら、モーター12を回転駆動させて円筒状部材と共に爆弾20を中心軸周りに回転させながら、噴射ノズル13から研磨材と共にウォータージェットを噴射させ、爆弾20の水中切断を行う。噴射後の水等は、水槽30からのオーバーフロー回収路から回収する構成、あるいは、切断工程中に、キャッチャタンク1内からの排水量を調整して前記液面を維持しながら排水を回収する構成としても良い。
【実施例2】
【0051】
以上の実施例では、一つの円筒状部材につき一つの挟持部が形成されている保持部を備えた装置に関して説明したが、本発明の第2の実施例として、非常に細長い外形状の爆弾用に、保持部を構成する二つの円筒状部材が、それぞれ幅広で、一つにつき二つの挟持部が形成されている場合を以下に示す。図3は、本実施例によるウォータージェット切断装置の概略側面図である。
【0052】
本実施例における切断装置は、円筒状部材の詳細な構成以外は前記実施例1で示した切断装置と共通する基本構成を有するものである。即ち、キャッチャタンク1の上部開口に嵌められた格子台2の上面に、保持部3を構成する2組の支持部(4a,4b)および二つの円筒状部材(18a,18b)と、回転装置を構成するエアモーター12とその回転軸10に連通するクランプ部11が設置されている。また爆弾20の長手方向の中心軸に沿って前後の2箇所に固定された支持部(4a,4b)は、それぞれ、軸回転可能に軸支された一対の支持ローラ5が並設されて成るものであり、これら各支持部(4a,4b)の一対の支持ローラ間上に、同一形状の二つの円筒状部材(18a,18b)がそれぞれ回転可能に且つ互いに同軸状に載置されている。
【0053】
本実施例においては、各円筒状部材(18a,18b)には、それぞれ前後二つの周上に等角度間隔で複数個の雌ネジ貫通孔7が形成されており、ボルト部材8が各貫通孔7に螺合装着されて、それぞれ該円筒状部材の半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされる。従って爆弾20が複数本のボルト部材8の先端部間に挟持されてなる挟持部が、実質的に一つの円筒状部材につき二つ形成されていることになる。即ち、本実施例では各円筒状部材(18a,18b)において、それぞれ前後の二箇所の挟持部、全四箇所の挟持部で挟持されることによって円筒状部材内部に爆弾20が保持される。
【0054】
爆弾20の切断位置は、実施例1と同様に、前後の円筒状部材(18a,18b)の間の表面が外部に露呈した領域とする。爆弾20を内部に同軸状に保持した二つの円筒状部材は、その後は、前側円筒状部材18aが前側の支持部4aの一対の支持ローラ5間上に、後側円筒状部材18bが後側支持部4bの一対の支持ローラ5間上にそれぞれ載置され、前側円筒状部材18aにクランプ部11が、モーター12の回転軸10と同軸状となる位置関係で嵌合固定される。
【0055】
このような爆弾20の切断装置に対する保持、設定が完了した後は、実施例1と同様に、噴射ノズル13の位置決めの後、モーター12の回転駆動によってクランプ部11および円筒状部材18aを介して爆弾20をその長手方向中心軸周りに回転させながら噴射ノズル13から研磨材と共にウォータージェットを噴射させ、爆弾20の外周回りの切断を必要回転数分繰り返して進めれば、良好に爆弾20は前後に分断される。
【0056】
以上のように、切断対象物の外径、長さ寸法に応じて適宜保持部を構成する円筒状部材を選択すれば、様々な寸法形状の爆発性物品に対して長手方向中心軸周りに回転可能に保持し、正確な切断を簡便に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1:キャッチャタンク
2:格子台
3:保持部
4:支持部
5:支持ローラ
6a,6b,18a,18b:円筒状部材
7:雌ネジ貫通孔
8:ボルト部材
9:皿状部材
10:回転軸
11:クランプ部
12:エアモーター
13:噴射ノズル
14:超高圧水導入口
15:研磨材導入口
16:ノズルアーム
17:ガイドポスト
20:爆弾
30:水槽
31:排水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆発性物品である切断対象物を加工台上に保持する保持手段と、該保持手段と共に切断対象物をその長手方向中心軸周りに回転させる回転装置と、該回転装置によって回転する前記切断対象物に対して噴射ノズルからウォータージェットを噴射するウォータージェット装置と、前記噴射ノズルと前記切断対象物とを相対移動させてウォータージェットの噴射切断位置を決定する位置決め装置とを備えた爆発性物品用ウォータージェット切断装置において、
前記保持手段は、内部に前記切断対象物が挿通される一つ以上の円筒状部材と、該円筒状部材の同一周上に等角度間隔で形成された雌ネジ貫通孔と、各雌ネジ貫通孔に螺合状態で装着されてそれぞれ該円筒状部材の半径方向に沿って前進・後退可能にネジ止めされる複数本のボルト部材とを備え、これらボルト部材の先端部間に挟持されることによって前記切断対象物が前記円筒状部材内に保持されるものであり、
前記回転装置は、内部に切断対象物を保持する前記円筒状部材の一つに着脱可能に嵌合するクランプ部と、該クランプ部に連通して該クランプ部を介して前記円筒状部材を切断対象物と共にその中心軸周りに回転させる回転駆動機構とを備えていることを特徴とする爆発性物品用ウォータージェット切断装置。
【請求項2】
前記保持手段は、各円筒状部材を回転可能に且つ交換可能に支持する支持部を有し、
該支持部は、対応する円筒状部材が載置され、該円筒状部材の回転に追従軸回転する一対の支持ローラを備えていることを特徴とする請求項1に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置。
【請求項3】
前記ボルト部材は、それぞれ先端部に、切断対象物表面に当接する皿状部材が円筒状部材の内周方向に揺動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置。
【請求項4】
前記保持手段は、切断対象物に対して切断位置を挟む長軸方向に沿った前後二箇所で保持する二つの円筒状部材を有し、
前記クランプ部は、前方の円筒状部材に嵌合するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置。
【請求項5】
前記加工台を少なくとも保持手段と共に水中に浸漬・露出可能に載置する水槽装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の爆発性物品用ウォータージェット切断装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のウォータージェット切断装置による爆発性物品の切断方法であって、
前記加工台上で、切断対象物を前記保持手段によって保持し、前記回転装置により回転可能状態とする保持工程と、前記位置決め装置によって切断対象物の切断位置と前記噴射ノズルとの相対位置調整を行う工程と、相対位置調整後に、前記回転装置によって前記保持手段と共に切断対象物をその長手方向中心軸周りに回転させながら前記噴射ノズルから研磨材を含むウォータージェットを噴射する切断工程とを備え、
前記保持工程は、前記切断対象物をその切断位置を露呈させて前記円筒状部材内に挿通し、各ボルト部材を円筒状部材の中心に向かって前進させ、各ボルト部材の先端部によって切断対象物を外周方向から挟持する工程と、
各ボルト部材のネジ止め位置を調整することによって切断対象物の長手方向中心軸を前記円筒状部材の中心軸に合致させる芯合わせ工程と、
芯合わせの後に、前記クランプ部を前記円筒状部材の一つに嵌合させて回転装置と接続する工程と、を有することを特徴する爆発性物品のウォータージェット切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−20228(P2011−20228A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168754(P2009−168754)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【出願人】(593029802)日興技化株式会社 (6)
【Fターム(参考)】