説明

爪に適用することができる抗真菌溶液の調製のためのカチオン性、有利には両性界面活性剤の使用

本発明は、爪に適用することを目的とした酸性塩の形態で抗真菌剤を含む組成物を調製するための、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテルビナフィン塩酸塩などの酸性塩の形態である抗真菌剤の爪を経由した浸入を改善する組成物に関する。より正確には、本発明は、ココベタインなどのカチオン性界面活性剤、有利には両性界面活性剤の存在下で抗真菌剤を配合することが提案される。
【0002】
かかる医薬組成物又は皮膚用組成物は、ヒト及び動物における、具体的には皮膚糸状菌又はカンジダ(Candida)による爪真菌症の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
爪は、しばしば爪真菌症、特に皮膚糸状菌による(dermatophytic)又はカンジダ性の爪真菌症の部位である。
【0004】
抗真菌剤を用いたこれらの疾患の治療が、経爪的に(transungually)好都合である方式で行われるが、爪の非常に強固な構造によって、治療が困難になり、そのため、可能な限り深く爪に含浸させることができるように生成物の組成を最適化させることに対して関心がある。
【0005】
爪甲の形成中、顆粒層を構成する、高度に個別化されたより大型の及び角化した細胞を形成するために、マトリックスの基底細胞は成長し、細胞の核は分裂し、細胞質は融合する。
【0006】
爪甲は、核はないが厚い膜を有する、死細胞、角化細胞及び接着細胞からなる。爪甲は、α-ケラチンを本質的に含み、3つの層、すなわち、マトリックスから生じる背側及び中間の層、及び爪床から生じる腹側の層から構成される(図1)。
【0007】
背側の部分は、顆粒層を構成する硬ケラチンに富む細胞のいくつかの層から形成される。中間の部分は、顆粒層が消失しより軟質であるケラチンに富む細胞からなり、爪の合計の厚さの4分の3を構成する。腹側の部分は、軟質及び爪床のケラチンに富む細胞の1つ又は2つの層から形成され;やはり顆粒層がない。
【0008】
爪は、硫黄含有アミノ酸に富む硬タンパク質である、ケラチンから本質的に構成される。形態学的な観点から、ケラチン繊維は、大部分が、爪の表面と平行な平面の状態で爪の成長に対して垂直方向に向いている。
【0009】
ケラチン鎖は、様々なタイプの結合、すなわち、水素結合、ペプチド結合、極性結合及びジスルフィド結合(図2)により連結されている。これらの結合は、様々なストレス、すなわち、化学薬品、アルカリ化剤、酸化剤、ジスルフィド架橋用のチオグリコラートによって;酸-塩基結合のための強酸又は強塩基による崩壊によって;又は水分子による水素架橋の破壊によって攻撃され得る。
【0010】
爪の化学組成は、皮膚の化学組成よりも毛髪の化学組成に近い。爪の脂肪親油性化合物は、爪の構成物のわずか0.1〜1%である。これは、本来、可塑化する役割を有するコレステロールである。
【0011】
水は、15〜18%の間で存在し、さらには25%に達し得る。爪の含水量は、とりわけ、湿度測定の程度に依存している。飽和時に、これは、爪の乾燥重量の3分の1に達し得る。したがって、親水性分子が親油性分子よりも容易に爪甲に浸入することが理解されやすい。
【0012】
爪中の微量元素、すなわち、亜鉛、鉄、マンガン、銅などもある。
【0013】
硫黄は、特に硫黄含有アミノ酸、主にシスチン及びアルギニンに富んでいる爪甲の重量の5%を占める。
【0014】
爪真菌症のための治療は、様々な手法を含む。すなわち、
-健康な爪に至るまで病変を切除することである手術、
-局所抗真菌治療;及び
-全身的抗真菌治療である。
【0015】
全身作用を有するほとんどの経口治療は、長期であり、重大な副作用を伴わないものはない。
【0016】
局所治療のオプションは、それほど有毒でないことが証明されているが、有効であるために、爪の硬ケラチンを経由して浸入することができ、十分な濃度で爪床に達して病原体、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)を破壊し根絶することができる抗真菌剤を必要とする。
【0017】
しかし、現在利用可能な抗真菌分子の配合物は、いくらかの問題をもたらす。すなわち、
-一般に、これらの溶解性は、水において非常に低く、したがって、有効成分の有効濃度での配合処方を困難にし;
-添加剤の組成は、爪床に達することができるために爪の化学組成に系統的に適合せず;
-爪床に達するために爪を経由して浸入することは、しばしば困難である。
【0018】
したがって、爪真菌症のために存在する局所治療は、爪のケラチンを経由した有効成分の浸入に関してあまり有効でない皮膜形成ワニスの形態である。
【0019】
さらに、ヒトの爪を経由した有効成分の浸入は、文献に広く記載されていない現象である。皮膚を経由した浸入を促進することが知られている多数の分子があるが、これらの分子は、爪の適用にあまり適していない。
【0020】
例として、抗真菌剤テルビナフィンは、以下の式(A)のテルビナフィン塩酸塩(テルビナフィンHCl)の形態で利用可能である。
【0021】
【化1】

【0022】
そのカチオン性の性質により、水における溶解性が非常に低いこと(5.32μg/ml;Narendra Kumar & al. Asian J Pharmaceutics、2巻(3号)、154〜158頁、(2008年))に加えてこの分子は、ケラチンに対して優れた親和性を有する。したがって、テルビナフィンHClは、爪の上層からケラチンに非常に容易に結合し、この事実によって、実際に爪床に至るまで浸入するのはごく一部にすぎない。
【0023】
従来技術(「Drug delivery to the nail following topical application」、S Murdan、Int J Pharm 236巻(2002年)1〜26頁)に関して、多数の溶液が、爪を経由した浸入の問題、すなわち、
-添加剤の性質、特に、水の存在;
-DMSOなどの有機溶媒の重要性;
-抗真菌剤有効成分のイオン化に対する添加剤のpH及びイオン電荷の影響;
-作用の様々なモードを有する吸収プロモーターの爪マトリックスに対する影響を改善するために検討されてきた。
【0024】
したがって、有効成分の有効量により爪を経由してより優れた浸入を可能にする抗真菌剤のための新規な配合物を見出す必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Narendra Kumar & al . Asian J Pharmaceutics、2巻(3号)、154〜158頁、(2008年)
【非特許文献2】「Drug delivery to the nail following topical application」、S Murdan、Int J Pharm 236巻(2002年)1〜26頁
【非特許文献3】Novartis Pharmaceuticals Canada Inc.、Prescribing Information、PrLamisil(terbinafine hydrochloride)、2008年、18頁
【非特許文献4】Tatsumiら(Therapeutic efficacy of topically applied KP-103 against experimental tinea unguium in guinea pigs in comparison with Amorolfine and terbinafine、Antimicrobial agents and chemotherapy、(2002年)、46巻、3797〜3801頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、カチオン性界面活性剤、有利には両性界面活性剤の存在によって、テルビナフィンHClなどの酸性塩の形態である抗真菌剤の浸入を高めることが可能であるという本出願人による実証に基づいている。
【0027】
言い換えれば、本発明は、ケラチンに対して抗真菌剤の競合物(competitor)として働く分子を用いて抗真菌剤のケラチンへの結合部位を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
したがって、本出願と関連する範囲内で、このような界面活性剤の存在によって、
-水溶液中の抗真菌剤の高濃度(例えば10%)での可溶化に全く影響を与えず;
-組成物に爪の生物学的組成との相溶性の特性を与え;
-爪を経由する有効な薬剤の浸入及び拡散を高めることが可能であったということが示されている。
【0029】
「有効な薬剤の浸入」という表現は、この薬剤が爪マトリックスに入る能力を意味するものと理解される。
【0030】
「有効な薬剤の拡散」という表現は、この薬剤のマトリックスから開始し、マトリックス下で爪床に達する能力を意味するものと理解される。
【0031】
いずれか1つの理論に縛られることを望まずに、その両性の性質、特にそのカチオン形態によって、界面活性剤が、ケラチンに結合し、したがって、組成物のpHが酸性(テルビナフィンのpKa7.10を下回るpH(Novartis Pharmaceuticals Canada Inc.、Prescribing Information、PrLamisil(terbinafine hydrochloride)、2008年、18頁))で、有利にはpH3から6の間で、好ましくは3から5の間で、テルビナフィンHClを、爪マトリックスを経由して拡散させその作用点である爪床に到達させることを可能にすることが想定される。
【0032】
したがって、及び第1の態様によれば、本発明は、初めに本出願人の知識、爪に適用することを目的とした、酸性塩の形態で抗真菌剤を含む溶液の形態の組成物を調製するためのカチオン性界面活性剤、有利には両性界面活性剤の使用を記載する。
【0033】
他の態様によれば、本発明は、
-酸性塩、有利には塩酸塩の形態である抗真菌剤;
-溶媒系;及び
-カチオン性界面活性剤、有利には両性界面活性剤
を含む爪に適用することを目的とした医薬組成物を目標としており、
この組成物は溶液の形態である。
【0034】
したがって、この組成物の第1の成分は、酸性塩、有利には塩酸塩の形態である抗真菌剤である。
【0035】
一般に、組成物内でカチオン形態で存在する任意の抗真菌剤は、本発明の条件下で用いることができる。
【0036】
より具体的には、本発明によって目標とされる、目的とする抗真菌剤は、アリルアミン又はモルホリンのクラスによるものであり、アリルアミンが好ましい。実際、アリルアミンのクラスによる抗真菌剤、具体的にはテルビナフィン又はナフチフィン、また、モルホリンのクラスによる抗真菌剤、具体的にはアモロルフィンは、抗真菌の戦いにおいて有望な化合物である。これらの推定された若しくは実証された作用機序は、真菌細胞の壁の特異的な構成物であるエルゴステロールの阻害によって、具体的には、スクアレンエポキシダーゼの阻害により起こるはずである。
【0037】
アリルアミンのクラスの中で、具体的には、テルビナフィン塩酸塩及びナフチフィン塩酸塩を挙げることができるが、これらの式(A)及び(B)はそれぞれ、以下の通りである。
【0038】
【化2】

【0039】
このクラスの分子のうち、テルビナフィンが好ましい。
【0040】
或いは、抗真菌剤は、モルホリンのクラス、具体的には、アモロルフィンに属し得、そのため、類似の問題に直面する。
【0041】
実際には、上記に定義しているような抗真菌剤は、全組成物の5%を超えるもの、好ましくは少なくとも8%、さらには、少なくとも10%(w/w)を表す。したがって、組成物中のこの薬剤の15%まで、さらには20%までを想定することが可能である。明らかに、効果を高めるために抗真菌剤の混合物、場合によっては異なるクラスの混合物を想定することが可能である。
【0042】
すでに記載した通り、これらの分子は、おそらく、ケラチンとのこれらの相互作用により水にほとんど解けない及び爪にほとんど拡散しないという欠点を有する。
【0043】
本発明による組成物の第2の成分は、有利には三成分系である溶媒系である。有利には、これは、以下の成分からなる。すなわち、
-水;
-直鎖又は分枝鎖を有する少なくとも1つのC2〜C8アルカノール、有利にはエタノール;及び
-少なくとも1つの(遊離のヒドロキシ官能基を有する)グリコール、有利にはプロピレングリコールである。
【0044】
さらに有利には、全水分量は、組成物の30重量%を超える量を表し、有利には、33%を超える量、さらには35%を超える量、さらには、40%を超える量を表す。式中のこの大量の水は、生成物にかなりの親水性の性質を与える。実際、爪が吸湿性親水性マトリックスであるため、爪は、有効成分の拡散を容易にする水の存在下で膨潤する。
【0045】
「全水分」という表現は、組成物の様々な溶媒及び/又は添加剤が水の一部を含む場合にそれらから生じる水の量に加えた、組成物にそのまま導入される水の量を意味するものと理解される。
【0046】
このように高い含水量は、目標とされる経爪適用のためにきわめて有利である。さらに、問題となる抗真菌分子の水における溶解性の低さに関わらず、提案される溶媒系によって、本発明によるカチオン性又は両性界面活性剤の存在下を含めて、目的とする分子の高濃度での可溶化が可能になることが本発明と関連する範囲内で示されている。
【0047】
高い含水量に加えて、三成分溶媒系は、有利には、短鎖アルコール、より正確には直鎖又は分枝鎖を有する少なくとも1つのC2〜C8アルカノール、好ましくはエタノール、イソプロパノール及びn-ブタノールを含む。エタノールは特に好ましい。様々なアルコールの混合物を想定することもできる。
【0048】
最後に、この三成分溶媒系は、少なくとも1つのグリコールを含む。「グリコール」という用語は、本明細書では少なくとも2つのヒドロキシ官能基を有する化合物を意味するものと理解される。2つのヒドロキシ官能基が遊離であるグリコール、すなわち、これらがエーテル若しくはエステル結合に関与しないグリコールが、より正確には本発明によって目標とされている。例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコール及びポリエチレングリコールを挙げることができる。プロピレングリコールは好ましい。様々なグリコールの混合物を想定することもできる。
【0049】
有利には、三成分溶媒系は、全組成物の少なくとも60%、又は70%、80%、さらには90%(w/w)を表す。
【0050】
さらに、有利には、アルコールの割合は、グリコールの割合以上である。さらにより有利には、全水分の割合は、グリコールの割合を超える。
【0051】
したがって、本発明による組成物の第3の成分は、ケラチンへの結合のために酸性塩の形態で抗真菌剤との競合を始めることのできる、カチオン性、さらには両性の性質の界面活性剤である。後者は、繊維の形態で爪の様々な層の構造に存在し、負の電荷をもつ。
【0052】
したがって、本発明によれば、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤は、爪における有効成分のバイオアベイラビリティ、特に角質化した爪の爪甲、皮膚付属物及び皮膚を経由してのテルビナフィンHClのバイオアベイラビリティについてin situでもたらす効果のために投入される。
【0053】
定義により、カチオン性界面活性剤は、親水性部分が正電荷をもつ界面活性剤である。カチオン性界面活性剤は、水溶液中で正電荷(カチオン)を放出する。これは、静菌性及び乳化性を有し、合わせる負の電荷のあるケラチンとの親和性を示す。
【0054】
両性界面活性剤は、親水性部分が正電荷及び負電荷を含む界面活性剤であり、全体的な電荷は、等電点でゼロである。中にある媒質のpHに応じて、陽イオン及び陰イオンを放出する。アルカリ性pHでは、アニオン性界面活性剤として作用し、酸性pHでは、カチオン性界面活性剤として作用する。
【0055】
本発明と関連する範囲内で、抗真菌剤が酸性塩の形態である限り、したがって、組成物は、抗真菌剤のpKaを下回る酸性pH、好ましくはpH3から6の間で、優先的にはpH3から5の間であり、その場合は、正の電荷をもつ両性界面活性剤は、カチオン性界面活性剤として働く。
【0056】
本発明に従って使用することができるカチオン性界面活性剤として、制限せずに、
-第四級アンモニウム
[対イオンは、
・塩化物、臭化物、リン酸、水酸化物、メト硫酸、硫酸又はカルボン酸アニオンとなり得;
窒素の置換基は、
・飽和又は不飽和の、場合によってはヒドロキシル化された、1〜20個の炭素を有するアルキル鎖(ヒドロキシル官能基は、場合によりエステル化され、これらの鎖を場合によっては置換することも、定義された化合物から生じることも、或いは天然物から生じる混合物となることも可能である);
・場合によっては、置換された芳香族基、環、特に芳香環、例えば、場合によっては置換されるピリジン;
・これらの様々なカテゴリーの混合物;
・四級化若しくは非四級化アミン官能基によって置換されたそれ自体
となり得る];
-pHに応じてプロトン化することができるアミン及びアミン塩[窒素は、前もって挙げた置換基及び/又は水素を有し、これらの生成物は、これらがカチオン性であるという条件下で用いられる];
-カチオン性にするpH条件下で、前もって挙げた基によって場合によっては置換されたベタイン若しくはアミノ酸の誘導体
が挙げられる。
【0057】
有利には、用いられる両性界面活性剤は、以下の一般式(I)に対応するベタイン誘導体の構造を有する。
【0058】
【化3】

【0059】
[式中、Rは、アルキル基又はR'CO-NH(CH2)3-基(R'はアルキル基を表す)を表す]
【0060】
「アルキル基」という表現は、飽和の直鎖若しくは分枝状の炭化水素系鎖を意味するものと理解される。アルキル基のうち、1〜20個の炭素原子を含む基が好ましい。
【0061】
ベタイン誘導体のうち、より具体的には、Dehyton(登録商標)AB30という商品名で公知の両性界面活性剤或いはRがラウリル基を表す一般式(I)に対応するラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを優先する。この分子は、ココベタインとして一般に知られている。
【0062】
この分子は、例えば、Dehyton(登録商標)AB30という名で30%水溶液としてCognisによって販売されている。
【0063】
追加の例として、セチルベタイン或いはコカミドプロピルベタインなどの他のベタインを挙げることができる。
【0064】
カチオン性若しくは両性界面活性剤は、組成物の少なくとも0.1重量%を表す。これは、高濃度で抗真菌剤の可溶化を妨げずに組成物の最大10重量%、さらには15重量%まで表すことができる。
【0065】
具体的な一実施形態によれば、カチオン性及び/又は両性界面活性剤は、本発明による組成物中の唯一の界面活性剤である。これにより、非イオン界面活性剤、またアニオン性界面活性剤を同時に存在させない。
【0066】
有利には、本発明による組成物はまた、セルロースのクラス、例えばアルキルセルロース誘導体、具体的にはメチルセルロース、エチルセルロース、KLUCELという名で販売されているものなどのプロピルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース、有利にはヒドロキシエチルセルロース(Natrosol HHX250)又はヒドロキシプロピルセルロースから得られたテクスチャー付与剤(texturing agent)を含む。組成物の粘度を調整するこのテクスチャー付与剤は、特に爪へのその心地良い適用を可能にする。さらに、粘度を制御することによって、溶媒のあまりに急速な蒸発を回避することができ、したがって、有効成分の再結晶を制御することが可能である。
【0067】
さらに、本発明による組成物はまた、
-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、パラベン及びそれらの誘導体などの保存剤;
-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸パルミチル(palmityl ascorbate)、α-トコフェロール及び/又はそれらのエステルなどの酸化防止剤;
-ネイルエナメルを生成するために化粧品分野において一般に用いられるチタン雲母などの染料、充填剤又は顔料;
-エデト酸二ナトリウム(EDTA)などのキレート化剤;
-シクロメチコーンなどの皮膚軟化剤;及び
-防腐剤、特に酢酸などの他の有効成分
によって形成された群から選択された少なくとも1種の添加物を含むこともできる。
【0068】
これらの添加物のそれぞれの量は、当業者によって容易に決定される。
【0069】
一般に、本発明による組成物は、ゲル剤、スプレー剤、溶液又は気泡体となり得る。
【0070】
本発明による組成物は、ワニスでない。したがって、本発明による組成物は、いずれの皮膜形成剤を含まない。
【0071】
有利には、本発明による組成物は、溶液タイプの水性組成物である。「溶液」という用語は、溶媒又は互いに混和性である溶媒の混合物に溶解した1種若しくはそれ以上の物質を含む透明且つ均質な液体製剤を意味するものと理解される。「液体製剤」という表現は、室温で流動する及びニュートン性又は擬塑性流動を有する生成物を意味するものと理解される。
【0072】
通常、例証として、本発明による組成物は、
-可溶化した形態のテルビナフィンHCl1重量%〜20重量%;
-テクスチャー付与剤0重量%〜10重量%;
-両性界面活性剤0.1重量%〜20重量%;
-水を主に含む溶媒相20重量%〜80重量%;
-キレート化剤0%〜1%;
-酸化防止剤0%〜2%;及び
-添加物0%〜20%を含む。
【0073】
好ましくは、組成物は、
-可溶化した形態のテルビナフィンHCl1重量%〜15重量%;
-テクスチャー付与剤0重量%〜5重量%;
-両性界面活性剤0.1重量%〜15重量%;
-水を主に含む溶媒相20重量%〜60重量%;
-キレート化剤0%〜0.5%;
-酸化防止剤0%〜1%;及び
-添加物0%〜10%からなる。
【0074】
さらにより好ましくは、組成物は、
-可溶化した形態のテルビナフィンHCl1重量%〜10重量%;
-テクスチャー付与剤0重量%〜2重量%;
-両性界面活性剤0.1重量%〜10重量%;
-水を主に含む溶媒相20重量%〜55重量%;
-キレート化剤0%〜0.05%;
-酸化防止剤0%〜0.5%;及び
-添加物0%〜5%からなる。
【0075】
好ましくは、組成物は、
-可溶化した形態のテルビナフィンHCl1重量%〜10重量%;
-テクスチャー付与剤0.1重量%〜2重量%;
-両性界面活性剤0.1重量%〜10重量%;
-水を主に含む溶媒相20重量%〜55重量%;
-キレート化剤0%〜0.05%;
-酸化防止剤0%〜0.5%;及び
-添加物0%〜5%からなる。
【0076】
したがって、本発明は、爪真菌症の治療を目的とした医薬組成物又は皮膚用組成物に関する。
【0077】
すでに記載した通り、本発明による組成物は、経爪的に爪真菌症の治療に特に適している。したがって、爪の表面に適用するものとする。
【0078】
例示的な実施形態
本発明及びそれに付随する利点は、添付した図の裏付けにおいて以下の例示的な実施形態からより明瞭に浮かび上がるであろう。しかし、これらは、いかなる場合においても制限されるものではない。
【0079】
以下の実施例は、患者に心地良いその適用を保証しながら、テルビナフィンHCl少なくとも5%w/wを可溶化することが可能である溶液タイプの本発明による配合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】爪の構造の横断面図である。
【図2】爪の中のケラチン鎖に存在する様々な結合の略図である。
【図3】時間の関数としての、対照式1(0%ココベタイン)に対する式2(1.8%ココベタイン)におけるテルビナフィン塩酸塩(%遊離テルビナフィン)の含有量での変動を表す図である。
【図4】時間の関数として、可変量のテクスチャー付与剤(ヒドロキシエチルセルロース)を含む組成物の固体百分率(%)を表す図である。
【図5】可変量のテクスチャー付与剤(ヒドロキシエチルセルロース)を含む組成物の蒸発速度を図示する。
【図6】爪を経由して拡散されているテルビナフィンHClの蓄積された量を図示する。
【図7】拡散の5日後の爪におけるテルビナフィンHClの量を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0081】
(実施例)
(実施例1)
製造方法及び安定性試験
1/製造方法:
この製造方法は、加工ビーカー中で水にテクスチャー付与剤を膨潤させることにより簡単に行われる。次に、溶液中でテルビナフィン塩酸塩を含む活性相(以下の調製を参照のこと)を加える。次いで、適度に撹拌しながら、カチオン性若しくは両性界面活性剤を加える。
【0082】
a-水相の調製:
水及びテクスチャー付与剤を、ビーカーに投入し、透明で滑らかで均質な混合物を得るために撹拌しながら放置する。
【0083】
b-活性相の調製:
別のビーカー中で、有効成分を、有機のグリコール及びアルコール溶媒に可溶化する。
【0084】
c.最終混合物:
活性相(b)を、水相(a)に取り込み、ホモジナイズし、次いで、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を加え、ホモジナイズを続ける。
【0085】
粘度制御法:
Brookfield LVDVII+粘度計
SC4-18+小容量スピンドル
速度:12rpm
時間:1分
温度:25℃
【0086】
2/組成物の安定性の測定:
a-物理的安定性:
配合物の物理的安定性を、生成物の物理的完全性を保証し、可溶化したテルビナフィンHClの再結晶が存在しないことを検証するために、1ヵ月後、2ヵ月後及び3ヵ月後に室温(RT)、4℃及び40℃で配合物の肉眼的観察によって測定する。
【0087】
顕微鏡分析を、可溶化したテルビナフィンHClの再結晶が存在しないことを検証するために4℃及び室温(RT)で行う。
【0088】
b-化学的安定性:
化学的安定性を、HPLCを用いて有効成分をアッセイすることにより測定し、結果を初回含有量%として表す。
【0089】
(実施例2)
テルビナフィンHCl5%を含む溶液
【0090】
【表1】

【0091】
初期pHは、4.75である。
【0092】
物理的安定性
【0093】
【表2】

【0094】
化学的安定性
【0095】
【表3】

【0096】
したがって、実施例2から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的及び化学的に安定する。
【0097】
(実施例3)
テルビナフィンHCl10%を含む溶液
【0098】
【表4】

【0099】
初期pHは、4.50である。
【0100】
物理的安定性
【0101】
【表5】

【0102】
化学的安定性
【0103】
【表6】

【0104】
したがって、実施例3から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的及び化学的に安定する。
【0105】
(実施例4)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0106】
【表7】

【0107】
初期pHは、4.53である。
【0108】
物理的安定性
【0109】
【表8】

【0110】
したがって、実施例4から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的に安定する。
【0111】
(実施例5)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0112】
【表9】

【0113】
初期pHは、4.36である。
【0114】
物理的安定性
【0115】
【表10】

【0116】
化学的安定性
【0117】
【表11】

【0118】
したがって、実施例5から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的及び化学的に安定する。
【0119】
(実施例6)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0120】
【表12】

【0121】
初期pHは、4.69である。
【0122】
物理的安定性
【0123】
【表13】

【0124】
化学的安定性
【0125】
【表14】

【0126】
したがって、実施例6から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的及び化学的に安定する。
【0127】
(実施例7)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0128】
【表15】

【0129】
初期pHは、3.98である。
【0130】
物理的安定性
【0131】
【表16】

【0132】
化学的安定性
【0133】
【表17】

【0134】
したがって、実施例7から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的及び化学的に安定する。
【0135】
(実施例8)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0136】
【表18】

【0137】
物理的安定性
【0138】
【表19】

【0139】
したがって、実施例8から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的に安定する。
【0140】
(実施例9)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0141】
【表20】

【0142】
初期pHは、4.52である。
【0143】
物理的安定性
【0144】
【表21】

【0145】
化学的安定性
【0146】
【表22】

【0147】
したがって、実施例9から得られた組成物は、3ヵ月にわたって4℃、室温及び40℃で物理的及び化学的に安定する。
【0148】
すべての試験された配合物(実施例2から9)は、様々なパラメータのばらつき、すなわち、
-有効成分の濃度、この場合においては、テルビナフィンHCl;
-酢酸などの防腐剤の場合による添加;
-テクスチャー付与剤の性質又は濃度;及び
-特に、3つそれぞれの構成物の割合における三成分溶媒系の組成物のばらつきに関わらず物理的及び化学的観点から安定していると思われる。
【0149】
(実施例10A)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0150】
【表23】

【0151】
(実施例10B)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0152】
【表24】

【0153】
(実施例11)
テルビナフィン10%を含む溶液
【0154】
【表25】

【0155】
(実施例12)
ケラチン結合の試験
本目的は、テルビナフィン塩酸塩10%を含む配合物中のココベタインなどの両性薬剤の添加の、爪のケラチンへのテルビナフィン塩酸塩の親和性に対する効果を実証することである。
【0156】
2つの配合物を比較する。
-配合物1:両性薬剤を含まない対照配合物;及び
-配合物2:ココベタイン1.8%を含む配合物、すなわち、実施例9に対応するココベタインの30%水溶液6%を含む配合物。
【0157】
テルビナフィン塩酸塩の濃度は、2つ配合物中で同一である(10%w/w)。これらの厳密な組成を、以下に示す。
【0158】
【表26】

【0159】
試験された調製において、10%テルビナフィン塩酸塩の存在により、pHは酸性である。その場合、溶液中に存在する両性薬剤は、主としてカチオン形態である。爪のケラチンが負の電荷をもつため、カチオン形態の両性薬剤が優先的にケラチンに結合することを検証し、結合部位を飽和し、次いで、その作用点、すなわち、爪床に達するためにテルビナフィン塩酸塩を遊離にし利用可能にすることを可能にすることが問題である。
【0160】
テルビナフィン塩酸塩の粉末化したケラチンに対する吸着速度を、ケラチンに対するカチオン形態の両性薬剤及びテルビナフィン塩酸塩の競合を実証するために経時的にモニターした。これを行うために、手順を、Tatsumiら(Therapeutic efficacy of topically applied KP-103 against experimental tinea unguium in guinea pigs in comparison with Amorolfine and terbinafine、Antimicrobial agents and chemotherapy、(2002年)、46巻、3797〜3801頁)による研究から策定した。すなわち、配合物を、ケラチン粉末と接触させる。次いで、混合物を遠心し、次いで、配合物に残存する遊離のテルビナフィン塩酸塩の濃度を様々な時間で測定する。
【0161】
1/サンプルの調製
テルビナフィン塩酸塩によるケラチンの全飽和の条件下としないために、試験される調製を対応するプラセボ中で1/100に希釈する。次いで、調製の天然pH条件下にしておくために、pHを3.6に調整する。
【0162】
次いで、ケラチンを加え(10%w/w)、混合物全体を、磁力によって25℃で撹拌する。分析時に、調製1mlを取り出し、13000rpmで10分間遠心する。次いで、上澄みをHPLCによってアッセイする。
【0163】
2/HPLCアッセイ法
テルビナフィン塩酸塩を、アセトニトリル/メタノール/緩衝液混合物(700/200/100v/v/v)を用いてアイソクラティック法(1.5ml/分)においてSunfire C18カラム(150×4.6mm、3.5μm粒子)で283nmで分析する。緩衝液を水1000ml及びトリエチルアミン1mlで調製し、pH7.5に調整する。対照及びサンプルを、アセトニトリル/メタノール/Milli-Q水相(700/200/100v/v/v)中で希釈してテルビナフィン塩酸塩0.05mg/mlの濃度で調製する。
【0164】
3/結果
吸着速度の結果を以下の表に列挙するが、これは、試験配合物(1.8%ココベタイン、すなわち、水中のココベタインの30%溶液6%)及び対照配合物(0%ココベタイン)の時間の関数として初回含有量(表示量に対する%)に対するテルビナフィン塩酸塩含有量の変動を示す。
【0165】
【表27】

【0166】
対応するグラフを図3に示す。
【0167】
ココベタインの非存在下で(配合物1)、テルビナフィン塩酸塩のケラチンへの迅速な結合が観察される。この現象は、ケラチン及びケラチンに結合したテルビナフィン塩酸塩約30%の飽和に対応するプラトーに速やかに達するまで続く。
【0168】
ココベタイン1.8%、すなわち、水中のココベタインの30%溶液6%の存在下で(配合物2)、テルビナフィン塩酸塩のケラチンへの吸着を、大いに最小化する。実際、初期時間に、吸着は、配合物2(遊離テルビナフィン98.6%)では無視できる。プラトー時に、ココベタインの存在によって、20%を超えるまでテルビナフィン塩酸塩のバイオアベイラビリティを増加させることが可能である。
【0169】
したがって、ココベタインを配合物2に添加すると、ケラチンへの吸着に関してテルビナフィン塩酸塩と競合することが可能になる。したがって、配合物2中の遊離テルビナフィンの濃度が高くなると、テルビナフィンがさらに利用可能になる。
【0170】
結論として、両性薬剤の配合物への添加によって、調製の酸性pH条件下で、すなわち、テルビナフィン塩酸塩(7.10)のpKaを下回るpH値で、好ましくはpH値3から5の間で、テルビナフィン塩酸塩をさらに利用可能にすることができる。実際、後者の爪のケラチンへの結合は、カチオン形態の両性薬剤と競合する現象によって減少する。このようにして、その結果、有効成分は、爪床であるその作用点に達するためにさらに利用可能である。
【0171】
(実施例13)
テクスチャー付与剤含有量の影響
本試験は、テクスチャー付与剤の含有量の効果を試験するために蒸発速度をモニターすることにある。
【0172】
様々な組成物の蒸発速度を、皮膚及び爪の温度に対応する32℃で試験した。
【0173】
1/操作条件
装置:ザルトリウス型MA100水分計
赤外線によって、生成物中に含まれる揮発性成分の蒸発が可能になる。
【0174】
方法
【0175】
【表28】

【0176】
試験される配合物は、実施例5及び6による配合物に対応する。用いられる参照は、下記に記載する通り、テクスチャー付与剤を含まずココベタインを含まない配合物に対応する。
【0177】
【表29】

【0178】
2/結果
対応する結果を図4及び5に示す。
【0179】
実施例6(0.3%ヒドロキシエチルセルロース)から得られた配合物の蒸発速度、また蒸発率は、参照配合物のものと等しい。他方では、ヒドロキシエチルセルロース0.5%を組成物(実施例5)に添加すると、蒸発速度は減少する。
【0180】
0.3%ヒドロキシエチルセルロース(実施例6)の含有量は、最適化され、テクスチャー付与剤を含まない組成物の蒸発速度と同一の蒸発速度を得ることが可能である。
【0181】
(実施例14)
両性薬剤の存在下及び非存在下における爪を経由したテルビナフィンHClの拡散試験
【0182】
本試験の目的は、ココベタインを含む及び含まないテルビナフィン塩酸塩10%を含有する2つの配合物の爪を経由した浸入をin vitroにおいて比較することである。
【0183】
治療時間は、5日であり、それぞれの日にそれぞれの配合物を新たに適用する。爪の表面に毎日沈殿した配合物の濃度は、10μl/cm2である。
【0184】
試験される配合物は、
-実施例6、ココベタインを含む配合物;及び
-実施例11に記載の参照、ココベタインを含まない配合物に対応する。
【0185】
1/操作条件:
*爪:ヒトの死体の手からのもの(試験される配合物用にそれぞれ6枚の爪)。
*拡散設定:フランツ型拡散セル(直径:7mm)及び32℃でサーモスタットで制御された恒温槽から構成される。
*受け取り用液体(Receiving liquid):Volpo(Oleth-20)0.1%を含む1/10リン酸緩衝液(pH7.4±0.1)(1:10に希釈したPBS、それにVolpo0.1%を加える)。
【0186】
本試験に用いられる拡散セルは、直径7mmを有する。拡散セルの受け取り用コンパートメント側の腹面に爪を入れる。気密性(leaktightness)は、硬質シリコーンで密閉することによって確実になる。
【0187】
実験中、拡散セルを、爪の表面で温度32±1℃を得るためにサーモスタット制御の恒温槽に入れる。この温度を、それぞれ取り出す前に確認する。
【0188】
第1日目(D0)、爪がマウントされる拡散セルをサーモスタット制御の恒温槽に入れる。受け取り用コンパートメントを、受け取り用液体で充填し、爪の表面を外気中に放置する。翌日(D1)、すべての受け取り用液体をすべての拡散セルから取り出し、受け取り用液体の新たな溶液に置き換える。次に、各配合物10μl/cm2を、爪の表面に適用する。この適用を、D1と同じ手順(各配合物10μl/cm2を爪の表面に適用する)に従い、24時間毎に5日間繰り返す。それぞれの適用前に、すべての受け取り用液体を、すべての拡散セルから取り除き、受け取り用液体の新たな溶液に置き換える。受け取り用液体の新たな溶液を充填する前に、爪の表面を、1%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及び脱塩水の溶液で清浄にする。
【0189】
最終日(D6)、最後の受け取り用液体を取り除いてから、爪を拡散セルから除去し、その表面を1%SLSの溶液で清浄にし、次いで、脱塩水ですすぐ。次いで、爪を細かく切断し、アセトンに入れ24時間撹拌する。アセトンを取り除き、ヒュームフード下で蒸発乾固する。
【0190】
次いで、これらのサンプル、受け取り用液体及び爪抽出物を、MS/MSによって分析する。
【0191】
2/結果
受け取り用液体中のテルビナフィンHClの蓄積された量(ng.cm-2)
【0192】
【表30】

【0193】
拡散の5日後に、両性薬剤を含む配合物から爪を経由して拡散しているテルビナフィン塩酸塩の量は、そのいずれをも含まないものよりも2.7倍高い。
【0194】
爪中のテルビナフィン(ng.mg-2)
【0195】
【表31】

【0196】
爪中のテルビナフィン塩酸塩の量は、両性薬剤を含む式の場合に低い。これらの結果は、両性薬剤の存在下でのテルビナフィン塩酸塩が、爪中で結合しにくく、したがって、爪マトリックスを経由して拡散されるためにさらに利用可能であるということが示される。
【0197】
一方では、両性薬剤の非存在下でのテルビナフィン塩酸塩は、爪中でより大量に結合し、したがって、テルビナフィン塩酸塩の受け取り用液体への拡散を制限するリザーバー効果を創出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪に適用することを目的とした酸性塩の形態の抗真菌剤を含む溶液の形態の組成物を調製するための、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤の使用。
【請求項2】
前記組成物が、いずれの皮膜形成剤をも含まないことを特徴とする、請求項1に記載の溶液の形態の組成物を調製するための、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤の使用。
【請求項3】
-酸性塩、有利には塩酸塩の形態である抗真菌剤;
-溶媒系;及び
-カチオン性界面活性剤、有利には、正の電荷をもつ両性界面活性剤
を含む医薬組成物であって、溶液の形態である医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、いずれの皮膜形成剤をも含まない溶液の形態であることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物のpHが、3から6の間であり、有利には3から5の間であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記両性界面活性剤が、ベタインの誘導体、有利にはココベタインであることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、前記組成物の0.1重量%から20重量%、有利には0.1重量%から15重量%、さらにより有利には0.1重量%から10重量%を表すことを特徴とする、請求項3又は6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
テクスチャー付与剤、有利にはアルキルセルロースをも含むことを特徴とする、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗真菌剤が、アリルアミン又はモルホリンのクラスによるものであり、有利にはテルビナフィンであることを特徴とする、請求項3から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗真菌剤が、重量により組成物の少なくとも5%、有利には少なくとも8%、さらにより有利には少なくとも10%を表すことを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶媒系が、
-水;
-直鎖又は分枝鎖を有する少なくとも1つのC2〜C8アルカノール、有利にはエタノール;及び
-少なくとも1つのグリコール、有利にはプロピレングリコールからなることを特徴とする、請求項3から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
以下のリスト、すなわち、キレート化剤、酸化防止剤、防腐剤、皮膚軟化剤から選択される少なくとも1種の化合物をも含むことを特徴とする、請求項3から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
爪真菌症の治療のために爪に適用することを目的とした医薬品を調製するための、請求項3から12のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−514333(P2013−514333A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543789(P2012−543789)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070083
【国際公開番号】WO2011/073392
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158099)ガルデルマ・ファルマ・ソシエテ・アノニム (2)
【Fターム(参考)】