説明

爪の真菌感染を治療するための組成物及び方法

【課題】爪への抗真菌性組成物の浸透を増加させ、また、安定性を増加させること、望ましく、これにより抗真菌性組成物の貯蔵寿命を増加させること。
【解決手段】爪の局所的な投与のための安定な抗真菌性構成物は、ジオール成分、有機酸成分、ある揮発性の溶媒、抗真菌薬および表皮剥離剤を含む。
活性化合物とこの表皮剥離剤は、前記揮発性の溶媒がない場合、この組成物において可溶性であり、そして、この抗真菌薬と表皮剥離剤から選択されるグループの少なくとも1つは、前記揮発性の溶媒がある場合には、この組成物において固体の状態で存在する。
好適な成分は、プロピレングリコール、乳酸、酢酸エチル、尿素およびテルビナフィンまたはナフチフィンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、爪の真菌感染を治療するための組成物及び方法に関し、特に、爪真菌症に関するものである、
【背景技術】
【0002】
爪の真菌感染、特に、爪真菌症は、爪の最もありふれた病気であって、成人の6−8%が罹る。この病気は、菌類の侵入によって生じ、それ自体、不透明で、白くて、脆くて、厚くて、砕け易い爪となって、現れる。
【0003】
爪等のケラチン構造の真菌感染の効果的な治療法の研究は、多くの成果を出してきたが、満足な解決法はまだ得られない。よく効く抗真菌性化合物の充分な量が爪の全体にわたり、かつ、爪床(爪ベッド)に分配することができるならば、この感染症は解決され、そして、爪の破壊は終わるという予測がある。
【0004】
多くの将来性がある試みが爪浸透抗真菌薬に関してなされてきたが、これらの成果物の多くは、臨床テストにおいて殆ど効果を示さなかった。理由の1つは、厳密な角質ダイエットに供給される菌類についての抗真菌薬の最小限の抑制濃度(MIC)値は、試験管の中の状態で算出されるMIC値より何倍も高い値を有することにある。従って、必要だった薬剤浸透の限界に関する以前の評価は、この治療法が効果を有するというのにはあまりにも低かった。この爪の真菌感染(例えば爪真菌症)の治療の結果は、依然として抗真菌性化合物の十分に高い浸透を実現することにおける成功に依存している。
【0005】
更に、既存の療法を使用する治療時間は、長く、複数年までにもなり、悪い結果になった。
【0006】
この分野での別の課題は、活性成分(コンポーネント)の安定性である。この抗真菌薬のいくつかは安定でなく、この活性化合物は時間とともに壊れていく結果となる。これは、成果物の貯蔵寿命を制限する。
【0007】
爪への抗真菌剤の局所的な施薬と関連した主要な課題は、このケラチン層のバリア機能である。1つの仕方は、爪の構造形成成分(角質)を分解することである。これは、アセチルシステイン、チオグリコール酸(別名; メルカプト酢酸)及び尿素によって例証される表皮剥離化合物によって行うことができる。しかしながら、これらの化合物は、この活性物質の分解の一因となる。この種の成分の一例は、尿素であって、テルビナフィンの安定性を減少させる。
[定義]
【0008】
本発明を説明する前に、理解すべきことは、本願で使用される専門用語は、ただ特定の実施例を説明するためにのみに使われ、限定を意図したものではなく、本発明の範囲は請求の範囲及びその等価物によって限定されるということである。
【0009】
留意しなければならないのは、本願の詳細な説明及び特許請求の範囲において用いられているように、コンテキスト(前後関係、文脈)で特に明らかに指図しない限り、「ある」とか「その」等の単数形は複数の指示物を含むということである。
【0010】
また、用語「約」は、当て嵌まる場合、明示値の±10%の偏差を示すために使用する。
【0011】
用語「膜形成剤」は、薬学的に受け入れ可能で、かつ、局所的に投与されることを意図されるある医薬品組成物の粘性を上昇させる化合物又は化合物の混合を指す。
【0012】
上記に加えて、「この固体の状態において」という表現は、化合物が、この組成物において、溶解と対照的に、凝結した形において存在するということを指すのに使用する。ある化合物が固体の状態で存在するということは、肉眼によって認めることができ、この場合、可視粒子又は集合体(混合材)の存在は、この固体の状態と認める。
【0013】
ここで使用しているように、特に明示されていなければ、パーセントで示す(成分の)量は、重量パーセントを指し、組成物の総重量に基づいている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、上で概説した少なくともいくつかの問題に対処することにある。抗真菌性組成物の浸透を増加させることは、望ましい。また、安定性を増加させることも、望ましく、これにより抗真菌性組成物の貯蔵寿命を増加させる。これらの、そしてまた他の目的は、特許請求の範囲による組成物、方法及び使用によって対処され、ここに参照により組み込まれる。
【0015】
本発明の発明者は、爪の局所的な投与のための抗真菌性組成物を入手できるようにし、前記組成物は、ジオール成分、有機酸成分、ある揮発性の溶媒、抗真菌薬、そして、1つ以上の表皮剥離剤を含み、活性化合物と前記表皮剥離剤の有効量は、前記揮発性の溶媒がない場合、この組成物において可溶性であり、そして、この抗真菌薬と表皮剥離剤から選択されるグループの少なくとも1つは、前記揮発性の溶媒がある場合には、この組成物において固体の状態で存在する。
【0016】
発明者は、驚いたことには、この組成物が、爪に有効に抗真菌性の成分を供給することができて、同時に改良された安定性と、これにより長い貯蔵寿命を表すことを発見した。
[詳細な説明]
【0017】
本発明によるこの組成物は、爪の真菌感染、例えば爪真菌症に悩む患者の爪に局所的に投与されることを意図している。
【0018】
この揮発性の溶媒が、選択され、その結果、抗真菌薬と表皮剥離剤の少なくとも一方は、揮発性の溶媒がある場合には、この組成物において凝結するが、かくして凝結した剤は、例えば、揮発性の溶媒が蒸発したときのように揮発性の溶媒がない場合、溶解する。従って、貯蔵の間、抗真菌薬と表皮剥離剤の少なくとも一方は、少なくとも部分的に固体の状態にある。この固体の状態においては、これらの成分は、溶解状態にあるときより化学反応及び性能低下を受け易くなくて、従って、より安定である。これは、この例において提示される安定性試験によって認められる。
【0019】
投与の直後に、この揮発性の溶媒は、蒸発し、爪にはこの組成物の他の化合物が残る。この活性化合物と表皮剥離剤は、この揮発性の溶媒がない場合に、この組成物に溶け込んでいるので、この活性化合物と表皮剥離剤は、この揮発性物質の溶媒の蒸発により溶解する。この活性化合物と表皮剥離剤が放出されるので、それらは好ましくは数分以内に、例えば、5分以内に、この組成物の他の成分において再融解される。
【0020】
溶媒は、室温(18℃〜25℃)で投与後、5分以内に、より好ましくは、3分以内に、蒸発するように選択される。20℃で少なくとも2kPaの蒸気圧を有する揮発性の溶媒を用いることができる。
【0021】
適切な揮発性の溶媒は、高い蒸気圧(20℃で約2kPaを超える)を有するエステル類、アルコール類、ケトン類及び飽和炭化水素等のイオン化した流体から生成される。この種の揮発性の溶媒の蒸気圧は、例えば、Chemistry and PhysicsのCRC Handbook第75版(有機化合物の蒸気圧))に見出せる。そして、ここに参照により組み込まれる。適切な揮発性の溶媒の例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)エタノール、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンである。この揮発性の溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル及びこれらの混合物から好ましくは選択される。
【0022】
一実施例において、酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物は、組成物の総重量に基づいて、組成物が約30%〜約90%の酢酸エチルと約5%〜約60%の酢酸ブチルを含むようなものである。好ましい実施例において、酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物は、組成物の総重量に基づいて、組成物が約50%〜約70%の酢酸エチルと約20%〜約35%の酢酸ブチルを含むようなものである。最も好ましい実施例において、酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物は、組成物の総重量に基づいて、組成物が約55%〜約65%の酢酸エチルと約22%〜約28%の酢酸ブチルを含むようなものである。
【0023】
他の適切な揮発性の溶媒は、この上述した化合物の1つ以上と比較して、20℃で、等しいかより大きい蒸気圧を有し、アリルアミン又は他の抗真菌性化合物及び尿素又は別の表皮剥離剤を溶解する等しいか低い能力を示す。
【0024】
テルビナフィン及び/又はナフチフィン及び、オプションとして、尿素を含む組成物のための適切な揮発性の溶媒の非限定的な例は、酢酸エチル又は酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物を含む揮発性の溶媒で、20℃で5分以内に蒸発する溶媒となる。
【0025】
揮発性の溶媒の好適な量は、組成物の総重量に基づいて、約70から約99%であり、より好ましくは、約75%から約96%、最も好ましくは約78%から約95%である。
【0026】
このジオール成分と有機酸成分は、ある薬学的に見て効果的な量において爪への抗真菌性の成分の浸透を提供するために、ある量存在する。
【0027】
このジオール成分は、少なくとも1つのジオールを含む。このジオール成分の非限定的な例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール(例えば1.5−ペンタンジオール)ヘキサンジオール及びそれらの混合物である。必要に応じて、このジオール成分は、プロピレングリコールと別のジオール(例えば1.5−ペンタンジオール)の混合物のようなジオールの混合物でもよい。好適なジオールは、プロピレングリコールである。
【0028】
このジオールの適切な濃度範囲は、約1%から約20%、より好ましくは、約3%から約10%、更により好ましくは、約6%から約8%である。
【0029】
この有機酸成分は、あるC1-10カルボン酸又はその溶液を含む、又はそれらから主として成る、又は、それらから成る。C1-10カルボン酸の例は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有している、飽和又は不飽和、ストレートな又は分岐した脂肪族のモノカルボン酸、ジカルボン酸及びポリカルボン酸、脂肪族又は芳香族のジカルボン酸、1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有している酸素でヒドロキシ基を含むカルボン酸(例えば、α−ヒドロキシ酸)の1つ以上を含む。好適な有機酸成分の例は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オクタン酸(カプリル酸)、カプリン酸、ソルビン酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸(apidic acid)、ピメリン酸、オキサル酢酸、フタール酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸、ハイドロ酪酸、ヒドロキシ・プロピオン酸の酸及びピルビン酸の1つ以上を含む。好適な有機酸は、乳酸である。
【0030】
有機酸成分の適切な濃度範囲は、約0.1%から約4%、より好ましくは、約0.3%から約1.25%、更により好ましくは、約0.8%から約1.2%である。
【0031】
有機酸成分とジオールの適切な濃度比率は、1:20から1:2、1:20から1:2である。
【0032】
調合物におけるジオールと有機酸の総組合せ濃度は、この組成物の総重量に基づいて、好ましくは約1%から約50%、より好ましくは、約2%から約25%、そして、最も好ましくは約4%から約15%である。
【0033】
有機酸とジオールの関係(式)は、この組成物の総重量に基づいて、好ましくは、約1:20から、約1:1、好ましくは、約1:15から、約1:2、より好ましくは、約1:12 から1:5である。
【0034】
このジオール成分と有機酸成分は、両方とも、低い蒸気圧によって特徴づけられ、脱水調合物において相対的な内容の増加となる、すなわち。爪への投与後、この揮発性の溶媒が蒸発したとき、相対的な内容の増加となる。このジオール成分と有機酸成分は、抗真菌薬と表皮剥離剤が、この揮発性の溶媒がない場合、これらに容易に溶解するように、選択される。好ましくは、この抗真菌薬と表皮剥離剤が、5分以内にこのジオール成分と有機酸成分に溶解するように、選択される。
【0035】
この抗真菌薬は、薬学的に効果的な量(この量は選択された特有の抗真菌性の成分に依って変わる)で存在する。本願の開示に基づいて、当業者は、抗真菌性の成分の適切な量を選択することが容易に可能である。
【0036】
この抗真菌薬の好適な濃度は、この組成物の総重量に基づいて、約0.01%〜約10%、より好ましくは、約0.2%から約5%、より好ましくは、約0.75%から約2.5%、より好ましくは、約0.8%から約1.2%である。
【0037】
好適な抗真菌薬の例は、イミダゾール(例えばミコナゾール、ケトコナゾール、エコナゾール、ビフォナゾール、ブト共アゾール、フェンチコナゾール(fenticonazole)、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール(sertaconazole)、スルコナゾール及びチオコナゾール)、トリアゾール(例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール(isavuconazole)、ラブコナゾール(ravuconazole)、ポサコナゾール(posaconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)及びテル共アゾール);チアゾール(例えばアバファンジン(abafungin));アリルアミン(例えばテルビナフィン、アモロルフィン(amorolfine)、ナフチフィン及びブテナフィン(butenafine));そして、エキノカンジン(例えばアニデュラファンギン(anidulafungin)、カスポファンギン及びミカファンギン(micafungin))又はこれらの混合物を含む。
【0038】
アリルアミン抗真菌薬、特に、テルビナフィンとナフチフィンは、本発明の好適な抗真菌薬である。これらは、この酵素スクアレンエポキシダーゼ(菌類のエルゴステロール生合成においてある鍵となる酵素)を防ぐことによって、菌類のこの成長を阻害する。好適なアリルアミン抗真菌薬の例は、アモロルフィン(amorolfine)、ブテナフィン(butenafine)、テルビナフィン及びナフチフィン、及びこれらのあらゆる2以上の混合物からなる群から選択されるアリルアミン抗真菌薬を含む。これらは、アリルアミン抗真菌薬の例を限定するものではない。
【0039】
加えて、この組成物は薬学的に受け入れ可能な表皮剥離剤を構成すし、爪への抗真菌薬の浸透を強化する。この表皮剥離剤の例は、尿素、1つ以上の硫黄を含むアミノ酸及びそれらの混合物を含み、尿素が本発明の好適な表皮剥離剤である。
【0040】
好適な硫黄を含むアミノ酸の例は、システイン、メチオニン、N−アセチルシステイン、ホモシステイン、メチル・システイン、エチル・システイン、N−カルバモイル(N−carbomyl)システイン、グルタチオン、システアミン又はその派生物を含む。
【0041】
この表皮剥離剤の適切な濃度は、この組成物の総重量に基づいて、約0.3%から約20%、より好ましくは、約0.75%から約2.5%、最も好ましくは、約1.8%から約2.2%である。
【0042】
一実施例において、この組成物は、ジオールの約1%から約20%と、有機酸の約0.1%から約4%と、抗真菌薬の約0.2%から約5%と、表皮剥離剤の約0.3%から約20%と、揮発性の溶媒の約70%から約99%とを含む。
【0043】
一実施例において、この組成物は、ジオールの約3%から約10%と、有機酸の約0.3%から約1.25%と、抗真菌薬の約0.75%から約1.5%と、表皮剥離剤の約0.75%から約2.5%と、揮発性の溶媒の約75%から約96%とを含む。
【0044】
一実施例において、この組成物は、ジオールの約6%から約8%と、有機酸の約0.8%から約1.2%と、抗真菌薬の約0.8%から約1.2%と、表皮剥離剤の約1.8%から約2.2%と、揮発性の溶媒の約78%から約95%とを含む。
【0045】
更にまた、膜形成剤などの施薬の間及び治療の間爪にテクスチャを改善する化合物を、本発明の実施例に従って、この組成物に加えることができる。適切な膜形成特性は、爪への施薬と膜の形成を容易にする供与時の粘性の増加となる。これにより、成果物は爪の表面にとどまり、その効果を果たすことができる。好ましくは、本発明の一実施例によれば、この組成物は、適切な膜形成特性を有するポリマーを含む。この種の化合物の例は、セルロース派生物(例えばエチルセルロース)、セルロースアセテートブチレート及びポリ・メタクリル酸塩(例えばEudragit))を含むが、これに限定するものではない。膜形成剤の適切な濃度は、当業者が決定することができる。
【0046】
必要に応じて、この組成物は、更に、隔離剤を含むことができる。隔離剤は、アリルアミン抗真菌性の成分の爪組織への浸透を更に強化すると考えられている。この種の隔離剤の例は、1つ以上のアミノ酢酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸及びこれらの混合物を含むが、これに制限するものではない。隔離剤は、金属錯化剤でもよく、したがって、金属(例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属)との複合体を形成することができる。好適なアミノ酢酸は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。この組成物に含まれるとき、この隔離剤の適切な量の例は、約0.01から約5重量%を、好ましくは、約0.03%から約0.5%を含む。
【0047】
一実施例において、この組成物は、洗剤を更に含む。適切な洗剤の例は、ツウィーン80(Tween 80)であるが、これに限定するものではない。洗剤の適切な濃度は、約0.1%から約5%、より好ましくは、約0.5%から約3%、更により好ましくは、約0.7%から約1.5%である。
【0048】
本発明の好ましい実施例は、主として、ジオールの約6%から約8%と、有機酸の約0.8%から約1.2%と、表皮剥離剤の約1.8%から約2.2%と、抗真菌薬の約0.8%から約1.2%と、膜形成剤の約6%から約10%と、酢酸エチルの約54%から約60%と、酢酸ブチル約22%から約26%と、洗剤及び隔離剤とを含む。
【0049】
別の本発明の好ましい実施例、主として、ジオールの約7%と、有機酸の約1%と、表皮剥離剤の約2%と、抗真菌薬の約1%と、膜形成剤の約8%と、酢酸エチルの約56%と、酢酸ブチル約24%と、洗剤及び隔離剤とを含む。
【0050】
実施例は高い爪浸透を示すことが好ましい。これは、爪浸透のための試験管中での方法によって評価することができる。例えば、下記の例で説明するように、フランツ細胞を、ウシ属の蹄から膜を通しての浸透を研究するために使用することができる。
【0051】
加えて、この組成物は、この調合物においてあらゆる酸性化合物を安定させるために、バッファリング化合物を含むことができる。
【0052】
他の薬学的に受け入れ可能なキャリア及び賦形剤及び剤(例えばスタビライザ、浸透エンハンサ)そして、色彩を、要求に応じて、熟練した人の知識に基づいて、この発明の組成物に加えることができる。
【0053】
第2の主たる本発明の態様により、患者の爪に本発明による組成物を施薬することを含む、爪疾患を治療する方法得られる。この爪疾患は爪の真菌感染から選択され、爪真菌症(これに限定されない)によって代表される。
【0054】
本発明の実施例によるこの組成物は、好ましくは、直接爪に施薬される。例えば、この組成物は、菌類の疾患(例えば爪真菌症)によって冒された人間の足指爪又は指爪の上と周辺に施薬される。これは、約1日2回から約週に一回、この組成物の層で各冒された爪をおおうことによって果たすことができる。この組成物は、爪の端に投与することもできる。この組成物の施薬は、適切なデバイス(例えば、ドロップティップ、小さなブラシ又はへら)によって為される。これは、好ましくは、適切な時間(例えば、数秒又は分)内にこの揮発性の溶媒が蒸発する温度で遂行される。この組成物が膜形成剤からなる場合は、患者はこの膜を形成することができる。
【0055】
第3の本発明の態様により、爪疾患(好ましくは爪真菌症)を治療するのに使用される、新規で改良された組成物が得られる。
【0056】
第4の本発明の態様により、爪疾患(好ましくは爪真菌症)を治療するための薬剤の製造のための前記組成物が得られる。
【0057】
請求発明を詳細に、本発明の特定の実施例に関して説明したが、さまざまな改変と変更態様をこの請求発明に、趣旨及び範囲から逸脱することなくなし得ることは当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0058】
本発明は例によって例示される。これらの例は本発明の実施例を示すが、詳細な説明及び特許請求の範囲に記載の発明の概念の範囲を制限することを意図するものではない。
【0059】
組成物における沈殿及び溶解は、肉眼で観察される粒子の有無として決定された。
【0060】
この発明された組成物と調合物の効果を評価するために、試験管の中での浸透方法におけるフランツ細胞が、爪の代わりとして、ウシ属の起源の蹄膜に使われた。この蹄は、人間の爪の完全に充分な代替と考えられる。試験管の中での浸透実験において全ては、三通りにおいて果たされた。
【0061】
この調合物の浸透特性は、2.01cm2の細胞オリフィス面積で9つの細胞についてクラウンGlass社のFDC−400フランツ細胞装置でテストされた。特に明言されていない限り、この実験は三通においてされる。
【0062】
この蹄材料は、ウシ属の起源であって、ミクロトームで厚さ100μmの膜にスライスされた。この蹄膜は、拡散細胞にマウントする前に、15分間水和した。ただ唯一の蹄からの膜だけが、使われた。使用した膜は、膜の類似している浸透振る舞いを保証するために、蹄の同じ部分からとられた。
【0063】
使用したレセプタ流体は、使用の前にヘリウムで10分間ガスを除去されたpH 3.7のクエン酸バッファであった。この細胞ボリュームは、7mlであった。サンプリングは、6時間後に為された。
【0064】
束(flux)は、蒸発している組成物の結果が蒸発していない組成物のそれと比較することができるように、1%のテルビナフィン組成物の束(flux)に正規化された。
従って、この束は、ここでは、テルビナフィンのμg/%tbf**cm2として説明され、浸透実験からの結果は、下記の方程式に従って算出された:
正規化されたflux=Δm/(Δt**%tbf)
ここで、
Δm =μgのレセプタ流体におけるテルビナフィンの質量増加
Δt =観察と観察間の時間
A=膜表面積(cm2
%tbf =この組成物におけるテルビナフィンの重量パーセンテージ。
【0065】
テルビナフィンが、テルビナフィン塩酸塩の形で使われた。ナフチフィンが、その塩酸塩の形で用いられた。
【実施例1】
【0066】
テルビナフィンを含む組成物が、表1に示す量で以下の成分を混合し、溶解して、用意された。
【表1】

【0067】
この結果物である組成物は、尿素とテルビナフィンからなる粒子の懸濁液として現れた。20℃において2分間の蒸発の後、透明溶液が形成され、この粒子が溶解したことを示す。
【実施例2】
【0068】
テルビナフィンを含む組成物は、表2に示す量で以下の成分を混合し、溶解して、用意された。
【表2】

【0069】
この組成物は、尿素とテルビナフィンからなる粒子のある懸濁液である。実施例1のように蒸発の後、透明溶液が、形成された。
【実施例3】
【0070】
以下の組成物は、製造され、そして、投与、蒸発、膜の感触の容易さ及びこの膜が如何に容易に洗い落とせるかを見つけるため検査された。3Aにおいては、セルロースアセテートブチレート(CAB)が、含まれた。3Bにおいては、メタクリル酸塩オイドラギット(Eudragit)が、含まれた。
【表3】

【0071】
両方の組成物は、この揮発性の溶媒が蒸発するや否やクリアになった粒子の懸濁液を含んだ。この2つの組成物は、投与の容易さ、乾燥、出現及び感触のための時間において等しいことが発見された。
【実施例4】
【0072】
テルビナフィンを含む組成物は、表4に示す量で以下の成分を混合し、溶解して、用意された。
【表4】

【0073】
この組成物は、尿素とテルビナフィンからなる粒子の懸濁液として現れた。実施例1のように蒸発の後、透明膜が、形成された。
【実施例5】
【0074】
調合物5A、5Bは、製造されて、安定性と浸透を見つけるため検査された。
【表5】

【0075】
この組成物5Aは、尿素とテルビナフィンからなる粒子のる懸濁液であったが、5Bは透明溶液であった。実施例1のように蒸発の後、透明膜が、形成された。
蹄浸透研究において、77.9μg/%tbf**cm2の束は、この5A組成物ついて記録された。これは、1%の蒸発していない制御組成物5Bの束より6.8倍高い(11.43μg/%tbf**cm2)。
【実施例6】
【0076】
実施例5においてこの調合物は、安定性研究にさらされた。
この成果物は、数カ月間25℃で、ガラス容器に格納された。
テルビナフィンとテルビナフィン関連物質の内容は、表6に示す時間に、HPLCで決定された。
テルビナフィン関連物質の断片は制御調合物(調合物5B)において大いに増加した。そして、テルビナフィンの性能低下成果物の形成を示した。
テルビナフィンの量は、調合物5Bにおいて時間とともに減少した。
テルビナフィン関連物質の断片とテルビナフィンの濃度は、主として調合物5Aにおいて時間に対して同じであった。そして、この調合物が安定であることを示した。
【表6】

【実施例7】
【0077】
テルビナフィンを含む組成物は、表7に示す量で以下の成分を混合し、溶解して、用意された。
【表7】

【0078】
この組成物7Aは、尿素とテルビナフィンからなる粒子のある懸濁液として現れた。実施例1のように蒸発の後、透明膜が、形成された。この組成物7Bは、透明溶液であった。蹄浸透研究において、54.3μg/%tbf**cm2の束は、組成物7Aについて記録された。これは、1%のテルビナフィン制御調合物(組成物7B)(11.43μg/%tbf**cm2)の束より約5倍高い。
【実施例8】
【0079】
ナフチフィンを含む組成物は、表8に示す量で以下の成分を混合し、溶解して、用意された。
【表8】

【0080】
この組成物は、尿素、EDTAとナフチフィンからなる粒子の懸濁液として現れた。実施例1のように蒸発の後、透明膜が、形成された。
【実施例9】
【0081】
3つの調合物は、製造されて、人間の爪への浸透を見つけるため検査された。この実験は、両方ともPermeGear社(米国)の専用の爪アダプタを使用してフランツ細胞において為された。爪は、Sciencecare米国とBiopredフランスから得られた。この調合物は1日1回投与された、そして、この爪への浸透は20日間に日程通りにモニタされた。使用したレセプタ流体は、テルビナフィンの可溶性を向上させる界面活性剤Brij 20を有するpH 7.4のリン酸塩バッファであった。
【表9】

【0082】
表9(9Aと9B)における2つの蒸発している調合物は、正規化された束で測定された蒸発していない制御調合物より7〜9倍急速に浸透した。これは、発明された調合物の優位性を示し、また、ポリマー、界面活性剤及びEDTAの追加は、この発明された調合物から爪へのテルビナフィンの浸透を妨げなかったことを示した。両方の調合物は、爪抽出で測定された、20日間の治療後に200μg/g以上の爪濃度を生成した。
【実施例10】
【0083】
表10の組成物は、浸透を見つけるため検査された。
【表10】

【0084】
表10の組成物は、浸透を見つけるため検査された。前述したモデルにおいて蹄を通る束は、10Aについて揮発性の溶媒を欠いた制御組成物より3.8倍高かった。
【0085】
本発明は、現在本願発明者に知られる最良の形態を構成する、好ましい実施例に関して記載したが、当業者に明白にある、多様な改変と変更態様は、特許請求の範囲の請求項に記載の本発明の範囲内においてなし得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪への局所的な投与のための抗真菌性組成物であって、
ジオール成分と、
有機酸成分と、
揮発性の溶媒と、
抗真菌薬と、
表皮剥離剤と、を含み、
前記抗真菌薬および前記表皮剥離剤は、前記揮発性の溶媒がない場合、前記構成物において可溶性であり、前記抗真菌薬および前記表皮剥離剤から選択されるグループ内の少なくとも1つは、前記揮発性の溶媒がある場合には、この構成物において固体の状態にあることを特徴とする、前記抗真菌性組成物。
【請求項2】
前記抗真菌薬と表皮剥離剤は、揮発性の溶媒がある場合、前記組成物において固体の状態にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗真菌薬は、揮発性の溶媒がある場合、前記組成物において固体の状態においてあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記表皮剥離剤は、揮発性の溶媒がある場合、前記組成物において固体の状態においてあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ジオール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール(例えば1.5−ペンタンジオール)、ヘキサンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのジオールを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジオール成分は、プロピレングリコールを含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記有機酸成分は、少なくとも1つのC100カルボン酸を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記CL10カルボン酸は、αヒドロキシ・カルボン酸を含むことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記αヒドロキシ・カルボン酸は、少なくとも1つの乳酸とクエン酸を含むことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記αヒドロキシ有機酸は、クエン酸を含むことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記αヒドロキシ有機酸は、乳酸を含むことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ジオール成分と有機酸成分の組合せ濃度は、この組成物の総重量に基づいて、約1%から約50%、より好ましくは、約2%から約25%、最も好ましくは約4%から約15%の範囲内にあることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機酸成分の濃度と前記ジオール成分の濃度間の比は、この組成物の総重量に基づいて、約1:20から約1:1、好ましくは、約1:15から約1:2、より好ましくは、約1:12から約1:5であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗真菌薬は、アリルアミン抗真菌薬を含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記アリルアミン抗真菌薬は、テルビナフィンとナフチフィンの中から選択されることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記アリルアミン抗真菌薬は、ナフチフィンであることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記アリルアミン抗真菌薬は、テルビナフィンであることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗真菌薬の濃度は、この組成物の総重量に基づいて、約0.01%から約10%、より好ましくは、約0.1%から約5%、最も好ましくは約0.5%から約2%の範囲内にあることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記表皮剥離剤は、尿素、アミノ酸を含む硫黄およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記表皮剥離剤は、尿素を含むことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記表皮剥離剤の濃度は、この組成物の総重量に基づいて、約0.5%から約25%、より好ましくは、約1%から約15%、最も好ましくは、約1.5%から約2.5%の範囲内にあることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記揮発性の溶媒は、20℃で、約2kPaを超える蒸気圧を有することを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記揮発性の溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン)エタノール、イソプロパノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含む請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記揮発性の溶媒は、酢酸メチルを含むことを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記揮発性の溶媒は、酢酸ブチルを含むことを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記揮発性の溶媒は、酢酸エチルまたは酢酸エチルと酢酸ブチルとの混合物を含むことを特徴とする請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記揮発性の溶媒は、酢酸エチルを含むことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記揮発性の溶媒は、酢酸エチルと酢酸ブチルとの混合物を含むことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記揮発性の溶媒の濃度は、この組成物の総重量に基づいて、約20%から約99%、より好ましくは、約50%から約96%、最も好ましくは約70%から約96%、の範囲内にあることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物は、ジオール成分の約1%から約20%と、有機酸成分の約0.1%から約4%と、抗真菌薬の約0.2%から約5%と、表皮剥離剤の約0.3%から約20%と、揮発性の溶媒の約70%から約99%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物は、ジオール成分の約3%から約10%と、有機酸成分の約0.3%から約1.25%と、抗真菌薬の約0.75%から約1.5%と、表皮剥離剤の約0.75%から約2.5%と、揮発性の溶媒の約75%から約96%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物は、ジオール成分の約6%から約8%と、有機酸成分の約0.8%から約1.2%と、抗真菌薬の約0.8%から約1.2%と、表皮剥離剤の約1.8%から約2.2%と、揮発性の溶媒の約78%から約95%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記揮発性の溶媒は、酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物である請求項30から32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物は、この組成物の総重量に基づいて、酢酸エチルの約30%から約90%と、酢酸ブチルの約5%から約60%とを含む請求項26、28または33に記載の組成物。
【請求項35】
酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物は、この組成物の総重量に基づいて、酢酸エチルの約50%から約70%と、酢酸ブチルの約20%から約35%とを含む請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
酢酸エチルと酢酸ブチルの混合物は、この組成物の総重量に基づいて、酢酸エチルの約55%から約65%と、酢酸ブチルの約22%から約28%とを含む請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物は、ジオール成分の約6%から約8%と、有機酸成分の約0.8%から約1.2%と、表皮剥離剤の約1.8%から約2.2%と、抗真菌薬の約0.8%から約1.2%と、膜形成剤の約6%から約10%と、酢酸エチルの約54%から約60%と、酢酸ブチルの約22%から約26%と、洗剤および隔離剤とからなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物は、ジオール成分の約7%と、有機酸成分の約1%と、表皮剥離剤の約2%と、抗真菌薬の約1%と、膜形成剤の約8%と、酢酸エチルの約56%と、酢酸ブチルの約24%と、洗剤および隔離剤とからなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
爪疾患を治療するのに使用される、請求項1から38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
爪の真菌感染を治療する方法であって、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物または調合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
爪の真菌感染を治療するための薬剤の製造における、請求項1から38のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項42】
前記爪の真菌感染は、爪真菌症である請求項41に記載の方法、組成物または使用。

【公表番号】特表2013−501780(P2013−501780A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524678(P2012−524678)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050886
【国際公開番号】WO2011/019317
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512036100)
【Fターム(参考)】