説明

爪成長の増進用シクロスポリン組成物

本発明は、ヒトを含む哺乳類における爪および爪上皮の成長を刺激するためのシクロスポリン組成物および方法に関する。上記組成物は、爪床、爪母および爪上皮に、爪成長を増進させ、爪を肥厚させ、強化し、平滑化させる有効量で局所投与し得る。また、上記組成物は、手指爪および足指爪のような爪を強化し成長させるのにも有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2009年1月8日に出願された米国仮出願第61/143,317号、2009年5月27日に出願された米国仮出願第61/181,353号、2009年3月17日に出願された米国仮出願第61/160,946号および2009年5月26日に出願された米国仮出願第61/181,165号の権利を主張する;これらの出願の各々は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【0002】
本出願は、爪および爪上皮の成長を増進させるためのシクロスポリン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
足指爪および手指爪のような爪は、タンパク質ケラチンから主としてなっている。手指爪および足指爪は、生きている組織である。爪は、内側に向けて成長し且つ爪母と称する皮膚のくぼみ内に形成される。この領域は、爪を発生させ、爪根とも称せられる。爪母の外側層は、爪甲として伸びるケラチンを発生させる特異性細胞を含有している。
【0004】
爪甲は、手指爪または足指爪と一般に称せられる。
爪床は、爪を支持する手指組織または足指組織である。爪は、人の生涯に亘って連続して成長し、およそ月に3ミリメートルの平均速度で成長する。手指爪は完全に再生するのに3〜6ヶ月を要し、足指爪は、およそ12〜18ヶ月を要する。実際の成長速度は、年齢、性別、季節、運動量、食事および遺伝の各要因に依存する。
【0005】
貧血症、ビタミンまたはミネラル欠乏症、爪甲縦裂症、腎臓および肝臓障害、乾癬、血管疾患(例えば、レイノー病)および心臓疾患のような種々の症状による手指爪および足指爪問題の処置は貧弱な爪成長をもたらしており、垂直溝、穴開き、亀裂、横線、厚さおよび強度の不足、平滑性不足および引裂き傾向は、依然として有意の問題である。爪の増強および硬化用研磨剤、ウシコラーゲンエマルジョンのようなタンパク質エリキシル剤、各種タイプの着装可能な保護手指爪カバーおよび他の同様な製品の使用のような多くの治療法の開発にもかかわらず、実際に爪および爪上皮の成長を促進し且つ爪および爪上皮の健康を再生する治療法が依然として大いに求められている。爪の健康を改善する現在の治療法による問題は、これらの治療法が本来的に主として美容のためであり、大して有効ではなく、さらに、時間浪費性であることである。爪および爪上皮の成長を実際に増進または促進させ且つ爪および爪上皮をその自然な健康に再生させて爪を肥厚させ、強化し、平滑化する組成物が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ヒトを含む哺乳類における爪(足指爪と手指爪の双方を含む)および爪上皮(甘皮)の成長を刺激するためのシクロスポリン製剤および方法に関する。上記組成物は、爪床、爪母、爪および爪上皮の末端または先端に、爪成長を増進させ且つ爪および爪上皮を肥厚させ、強化し、平滑化し、さらに、爪の障害を治療する有効量で局所投与し得る。上記組成物は、製薬組成物または化粧使用のための組成物であり得る。
【0007】
本発明の組成物は、シクロスポリン局所組成物からなり、シクロスポリン、特に、シクロスポリンA、シクロスポリンA誘導体および成分を含有する溶液、エマルジョン、逆またはマイクロエマルジョン、コロイド、懸濁液、分散液、ゲル、ペーストおよび研磨剤の形であり得、また、シクロスポリンB〜Zも含み得、これらのシクロスポリンの構造は当該技術において周知である。本発明の組成物は、経口投与抗真菌剤のような他の治療薬と同時に投与し得る。
【0008】
また、本発明の組成物は、爪乾癬、乾癬爪ジストロフィー、爪炎、爪異常湾曲症(onychiagryposis)、爪甲萎縮症(onychia trophia)、爪嵌入症(onychocryptosis)、爪ジストロフィー、爪鉤湾症、爪甲離床症、爪甲脱落症、巨爪症、爪甲真菌症、爪甲縦裂症、爪白鮮(tinea unguium)、爪床部角質上皮増殖症、爪甲脱落症、爪周囲炎、緑膿菌感染症、翼状片爪および翼状片逆位爪、匙状爪、爪下血腫および他の爪に対する外傷、葉酸欠乏症、爪甲白斑症、爪・膝蓋骨症候群、黒爪症、タンパク質欠乏症、もろくて剥離性の爪、メチルメタクリレート損傷爪、ビタミンC欠乏症、ビタミン欠乏症、白鮮爪(tinea unguis)、扁平苔癬に関連する薄化爪、レイノー病、関節リウマチに関連するビーディング、ボー線(beau's lines)およびミー線(Mee's lines)のような爪の症状および疾患の治療において有用である。
【0009】
本発明の実施態様としては、限定するものではないが、下記がある:
1.シクロスポリンを含むエマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液からなる群から選ばれる組成物を含む、ヒトまたは動物における足指爪と手指爪の成長の促進、もろい足指爪と手指爪の治療および足指爪と手指爪の強化において使用する組成物。
2.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAである、項1の製剤。
3.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAの誘導体またはセグメントである、項1および2の製剤。
【0010】
4.上記組成物が、エマルジョンである、項1〜3の製剤。
5.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、エマルジョン中に0.05% (質量/容量)の量で存在する、項1〜4の製剤。
6.上記エマルジョンが、グリセリン、ヒマシ油、ポリソルベート 80およびカルボマー1342も含有する、項1〜5の製剤。
【0011】
7.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、溶液中に0.01%〜0.0125% (質量/容量)の量で存在する、項2および4〜5の製剤。
8.上記シクロスポリンが、上記組成物の0.001%〜50% (質量/容量)の量で存在する、項1の製剤。
【0012】
9.下記の処置を含むことを特徴とする、ヒトまたは動物における爪成長の促進、もろい爪の治療または爪成長の強化方法:
シクロスポリンを含むエマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液からなる群から選ばれる組成物を投与する処置であって、
シクロスポリンを含む上記エマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液を、ヒトまたは動物の爪、爪上皮または爪母に少なくとも1日1回局所投与する処置。
【0013】
10.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAである、項9の方法。
11.上記シクロスポリンが、シクロスポリンA誘導体またはセグメントである、項9の方法。
12.上記組成物が、エマルジョンである、項10の方法。
13.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、エマルジョン中に0.05質量/容量%の量で存在する、項12の方法。
【0014】
14.上記エマルジョンが、グリセリン、ヒマシ油、ポリソルベート 80およびカルボマー1342も含有する、項9〜13の方法。
15.上記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、溶液中に0.01%〜0.0125% (質量/容量)の量で存在する、項9〜13記載の方法。
16.上記シクロスポリンが、上記組成物の0.001%〜50% (質量/容量)の量で存在する、項9の方法。
【0015】
17.爪乾癬、乾癬爪ジストロフィー、爪炎、爪異常湾曲症、爪甲萎縮症、爪嵌入症、爪ジストロフィー、爪鉤湾症、爪甲離床症、爪甲脱落症、巨爪症、爪甲真菌症、爪甲縦裂症、爪白鮮、爪床部角質上皮増殖症、爪甲脱落症、爪周囲炎、緑膿菌感染症、翼状片爪および翼状片逆位爪、匙状爪、爪下血腫および他の爪に対する外傷、葉酸欠乏症、爪甲白斑症、爪・膝蓋骨症候群、黒爪症、タンパク質欠乏症、もろくて剥離性の爪、メチルメタクリレート損傷爪、ビタミンC欠乏症、ビタミン欠乏症、白鮮爪、扁平苔癬に関連する薄化爪、レイノー病、関節リウマチに関連するビーディング、ボー線およびミー線からなる群から選ばれる疾患の治療において使用し、シクロスポリンを含むエマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液からなる群から選ばれる組成物。
【0016】
18.上記組成物を、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回または1週間に6回からなる群から選ばれる1つの回数により投与する、項17の組成物。
19.上記組成物を、アプリケーターによって投与する、項17および18の組成物。
20.上記組成物を、上記組成物を収容するバイアルまたはディスペンサーとアプリケーターブラシとを含むキットに含ませる、項17および18の組成物。
【0017】
21.シクロスポリンが、0.1〜20% (質量/容量)、0.1〜10% (質量/容量)、0.1〜5% (質量/容量)、0.1〜1.0% (質量/容量)、0.09%〜0.1% (質量/容量)、0.08%〜0.1% (質量/容量)、0.07%〜0.1% (質量/容量)、0.06%〜0.1% (質量/容量)、0.05%〜0.1% (質量/容量)、0.04%〜0.1% (質量/容量)、0.03%〜0.1% (質量/容量)、0.02%〜0.1% (質量/容量)、0.01%〜0.1% (質量/容量)、0.01〜0.09%、0.01〜0.08%、0.01〜0.07% (質量/容量)、0.01〜0.06 % (質量/容量)、0.01〜0.05% (質量/容量)、0.01〜0.04% (質量/容量)、0.01〜0.03% (質量/容量)、0.01〜0.02% (質量/容量)および0.01〜0.0125% (質量/容量)、最も好ましくは、0.01〜0.05%または0.01% (質量/容量)、0.0125% (質量/容量)、0.02% (質量/容量)、0.03% (質量/容量)、0.04% (質量/容量)、0.05% (質量/容量)、0.06% (質量/容量)、0.07% (質量/容量)、0.08 % (質量/容量)、0.09 % (質量/容量)、0.1 % (質量/容量)、0.005 % (質量/容量)および0.0015 % (質量/容量)からなる群から選ばれる濃度で存在する、項17〜20の組成物。
【0018】
22.上記シクロスポリンが、シクロスポリンA、シクロスポリンA誘導体、並びにシクロスポリンA〜Zおよびその塩からなる群から選ばれる、項17〜21の組成物。
23.爪上皮への投与において使用する、項17〜22の組成物。
24.爪上皮への投与が、爪上皮成長の増進をもたらす、項23の組成物。
【0019】
25.シクロスポリンを含有する製薬または化粧用組成物の、爪乾癬、乾癬爪ジストロフィー、爪炎、爪異常湾曲症、爪甲萎縮症、爪嵌入症、爪ジストロフィー、爪鉤湾症、爪甲離床症、爪甲脱落症、巨爪症、爪甲真菌症、爪甲縦裂症、爪白鮮、爪床部角質上皮増殖症、爪甲脱落症、爪周囲炎、緑膿菌感染症、翼状片爪および翼状片逆位爪、匙状爪、爪下血腫および他の爪に対する外傷、葉酸欠乏症、爪甲白斑症、爪・膝蓋骨症候群、黒爪症、タンパク質欠乏症、もろくて剥離性の爪、メチルメタクリレート損傷爪、ビタミンC欠乏症、ビタミン欠乏症、白鮮爪、扁平苔癬に関連する薄化爪、レイノー病、関節リウマチに関連するビーディング、ボー線およびミー線からなる群から選ばれる疾患の治療用の医薬品の製造における使用;上記組成物は、シクロスポリンを含むエマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液からなる群から選ばれる。
【0020】
26.シクロスポリンが、0.1〜20% (質量/容量)、0.1〜10% (質量/容量)、0.1〜5% (質量/容量)、0.1〜1.0% (質量/容量)、0.09%〜0.1% (質量/容量)、0.08%〜0.1% (質量/容量)、0.07%〜0.1% (質量/容量)、0.06%〜0.1% (質量/容量)、0.05%〜0.1% (質量/容量)、0.04%〜0.1% (質量/容量)、0.03%〜0.1% (質量/容量)、0.02%〜0.1% (質量/容量)、0.01%〜0.1% (質量/容量)、0.01〜0.09%、0.01〜0.08%、0.01〜0.07% (質量/容量)、0.01〜0.06 % (質量/容量)、0.01〜0.05% (質量/容量)、0.01〜0.04% (質量/容量)、0.01〜0.03% (質量/容量)、0.01〜0.02% (質量/容量)および0.01〜0.0125% (質量/容量)、最も好ましくは、0.01〜0.05%または0.01% (質量/容量)、0.0125% (質量/容量)、0.02% (質量/容量)、0.03% (質量/容量)、0.04% (質量/容量)、0.05% (質量/容量)、0.06% (質量/容量)、0.07% (質量/容量)、0.08 % (質量/容量)、0.09 % (質量/容量)、0.1 % (質量/容量)、0.005 % (質量/容量)および0.0015 % (質量/容量)からなる群から選ばれる濃度で存在する、項25の使用。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明のシクロスポリン組成物は、アプリケーターによって、爪に局所適用し、また、1日に複数回投与し得る。
0.01%〜50% (質量/容量)の濃度のシクロスポリン、特に、0.1〜20% (質量/容量)、0.1〜10% (質量/容量)、0.1〜5% (質量/容量)、0.1〜1.0% (質量/容量)、0.09%〜0.1% (質量/容量)、0.08%〜0.1% (質量/容量)、0.07%〜0.1% (質量/容量)、0.06%〜0.1% (質量/容量)、0.05%〜0.1% (質量/容量)、0.04%〜0.1% (質量/容量)、0.03%〜0.1% (質量/容量)、0.02%〜0.1% (質量/容量)、0.01%〜0.1% (質量/容量)、0.01〜0.09%、0.01〜0.08%、0.01〜0.07% (質量/容量)、0.01〜0.06 % (質量/容量)、0.01〜0.05% (質量/容量)、0.01〜0.04% (質量/容量)、0.01〜0.03% (質量/容量)、0.01〜0.02% (質量/容量)、0.01〜0.0125% (質量/容量)、0.001%〜0.009% (質量/容量)、0.001%〜0.008% (質量/容量)、0.001%〜0.007% (質量/容量)、0.001〜0.006%、0.001〜0.005%、0.001〜0.004% (質量/容量)、0.001%〜0.003% (質量/容量)、0.001〜0.002%および0.0001〜0.001%、最も好ましくは、0.01〜0.05%または0.01% (質量/容量)、0.0125% (質量/容量)、0.02% (質量/容量)、0.03% (質量/容量)、0.04% (質量/容量)、0.05% (質量/容量)、0.06% (質量/容量)、0.07% (質量/容量)、0.08 % (質量/容量)、0.09 % (質量/容量)、0.1 % (質量/容量)、0.005 % (質量/容量)および0.0015 % (質量/容量)の天然シクロスポリンA、シクロスポリンAおよびシクロスポリンB〜Zのような誘導体のようなシクロスポリンAを含むことを本発明においては意図する。
【0022】
本発明によれば、シクロスポリンAまたはシクロスポリンA誘導体は、製薬上許容し得る賦形剤中の任意の有効濃度、例えば、0.01質量%〜飽和状態(例えば、20質量%よりも多い)において投与し得る。
製薬上許容し得る賦形剤の特定の例は、オリーブ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、鉱油、ワセリン、ジメチルスルホキシド、クレモホール(chremophor)、Miglyol 182 (ニュージャージー州モントベールのDynamit Nobel Kay‐Fries Chemical Company社から商業的に入手し得る)、アルコール (例えば、エタノール、n‐プロピルアルコールまたはイソ‐プロピルアルコール)、リポソームまたはリポソーム様産生物、或いはシリコーン液であり得る。好ましい賦形剤は、ジメチルスルホキシドおよびオリーブ油である。少なくとも2種の任意の適切な賦形剤の混合物も使用し得る。
【0023】
シクロスポリンA誘導体は、有利には、有効量の当該誘導体を含有する点滴形(溶液、エマルジョンまたは懸濁液)または軟膏において局所投与する。0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜20質量%の濃度のシクロスポリンA誘導体を、本発明の実施において使用する。
【0024】
シクロスポリン類は、既知の免疫抑制剤活性を有する1群の非極性環状オリゴペプチドである。数種の他の小量の代謝物と一緒のシクロスポリンA、並びにシクロスポリン B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、U、V、W、X、YおよびZが同定されている。さらに、そのようなシクロスポリンの誘導体、塩類等および多くの合成アナログ類も製造されており、本発明において有用であり得る。眼疾患を治療するためのシクロスポリン‐Aおよびシクロスポリン A誘導体の使用は、各種特許、例えば、Ding等の米国特許第5,474,979号;Garstの米国特許第6,254,860号、第6,350,442号および第7,368,436号の主題である;これらの特許の各々は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【0025】
一般に、商業的に入手可能なシクロスポリンは、複数の個々のシクロスポリンの混合物を含有し得、それらシクロスポリンの全てが、約1,200の総分子量を有するが種々の置換基または数種のアミノ酸の構造を有する11個のアミノ酸残基からなる環状ペプチド構造を共有している。従って、本発明は、種々のタイプのシクロスポリンまたはシクロスポリン成分の混合物を意図する。
【0026】
本明細書において使用するときの用語“シクロスポリン成分”は、シクロスポリン群の任意の個々のメンバー、その塩、その誘導体、そのアナログおよびその混合物、並びに、2種以上の個々のシクロスポリン、それらの塩、それらの誘導体、それらのアナログおよびそれらの混合物の混合物を包含するものとする。
特に好ましいシクロスポリン成分としては、限定することなしに、シクロスポリンA、シクロスポリンAの誘導体、シクロスポリンAの塩等、およびこれらの混合物がある。シクロスポリンAは、特に有用なシクロスポリン成分である。
【0027】
シクロスポリンAの化学構造は、下記の式Iによって示される:

式 I
【化1】

【0028】
本明細書において使用するとき、シクロスポリンの“誘導体”なる用語は、本発明方法において、そのシクロスポリンと実質的に同様な構造を有して、そのシクロスポリン、例えば、シクロスポリン Aと実質的に同様なまたは実質的に同一の形で機能する化合物を称する。限定することなしに、有用なシクロスポリンA誘導体のうちには、以下で説明する((R)‐メチルチオ‐Sar)3‐(4'‐ヒドロキシ‐MeLeu)シクロスポリンA、((R)‐(シクロ)アルキルチオ‐Sar)3‐(4'‐ヒドロキシ‐MeLeu)4‐シクロスポリンAおよび((R)‐(シクロ)アルキルチオ‐Sar)3‐シクロスポリンA誘導体から選ばれる誘導体がある。
【0029】
これらのシクロスポリン誘導体は、それぞれ、下記の一般式(II)、(III)および(IV)によって示される:
式II
【化2】

【0030】
式III
【化3】

【0031】
式IV
【化4】

【0032】
上記各式中、Meは、メチルであり;Alkは、2〜6個のCのアルキレンまたは3〜6個のCのシクロアルキレンであり;Rは、OH、COOH、アルコキシカルボニル、‐NR1R2またはN(R3)‐(CH2)‐NR1R2であり;R1、R2は、H、アルキル、3〜6個のCのシクロアルキル、フェニル(必要に応じて、ハロ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノまたはジアルキルアミノで置換した)、ベンジルまたは飽和もしくは不飽和の5員または6員と1〜3個のヘテロ原子とを有するヘテロサイクリルであり;或いは、NR1R2は、さらなるN、OまたはSヘテロ原子を含有し得、且つアルキル化し得る5員または6員複素環であり;R3は、Hまたはアルキルであり;nは、2〜4であり;上記アルキル成分は、1〜4個のCを含有する。
【0033】
本発明の組成物および方法は、爪、爪上皮および爪母の先端または末端を含む爪に投与するのに有用な治療上有効量のシクロスポリン成分を含む任意の適切な組成物または組成物の組合せを使用して実施し得る。上記シクロスポリン成分は、上記シクロスポリン含有成分を本発明に従ってヒトまたは動物に投与するときに、所望の治療効果をもたらす有効な量で存在する。シクロスポリン成分の混合物を意図する。本発明の1つの実施態様においては、上記シクロスポリン成分は、有利には、上記組成物中に、上記組成物の約0.01質量%から約0.05質量%または15質量%または約20質量%以上までの範囲の量で存在する。もう1つの実施態様においては、上記シクロスポリン成分は、上記組成物の約0.01質量%から約5質量%または約10質量%または約15質量%までの量で存在する。意図するシクロスポリン成分の他の濃度は、0.1〜20% (質量/容量)、0.1〜10% (質量/容量)、0.1〜5% (質量/容量)、0.1〜1.0% (質量/容量)、0.09%〜0.1% (質量/容量)、0.08%〜0.1% (質量/容量)、0.07%〜0.1% (質量/容量)、0.06%〜0.1% (質量/容量)、0.05%〜0.1% (質量/容量)、0.04%〜0.1% (質量/容量)、0.03%〜0.1% (質量/容量)、0.02%〜0.1% (質量/容量)、0.01%〜0.1% (質量/容量)、0.01〜0.09%、0.01〜0.08%、0.01〜0.07% (質量/容量)、0.01〜0.06 % (質量/容量)、0.01〜0.05% (質量/容量)、0.01〜0.04% (質量/容量)、0.01〜0.03% (質量/容量)、0.01〜0.02% (質量/容量)、0.01〜0.0125% (質量/容量)、最も好ましくは、0.01〜0.05%または0.01% (質量/容量)、0.0125% (質量/容量)、0.02% (質量/容量)、0.03% (質量/容量)、0.04% (質量/容量)、0.05% (質量/容量)、0.06% (質量/容量)、0.07% (質量/容量)、0.08 % (質量/容量)、0.09 % (質量/容量)または0.1 % (質量/容量)のシクロスポリンAおよびその誘導体である。しかしながら、シクロスポリン成分の特定量の選択は、投与方式、ヒトまたは動物のサイズおよび症状並びに治療すべき症状のタイプおよび重篤度のような医療技術において周知の要因に従ってなすべきものとする。
【0034】
本発明を実践するのに有用な組成物は、液体、懸濁液、エマルジョン、逆エマルジョン、マイクロエマルジョン、半固体、溶液、分散液、カプセル剤、ゲル、ローション、クリーム、ペースト、研磨剤等であり得る。医薬製剤技術における熟練者であれば、シクロスポリン成分を含む適切な組成物を、例えば、同様な組成物において通常使用する賦形剤のような1種以上の製薬上許容し得る賦形剤を含む本明細書において説明しているような剤形のような適切な剤形で製剤化することは可能である。勿論、使用するシクロスポリン成分と適合性があり且つ上記組成物を使用する投与過程または治療するヒトまたは動物を過度にまたは有意に干渉しない組成物成分を使用するように注意を払うべきである。本発明の1つの有用な特定の製剤は、0.05% (質量/容量)のシクロスポリン、1.0% (質量/容量)のポリソルベート 80、2.2% (質量/容量)のグリセリン、1.25% (質量/容量)のヒマシ油、0.05% (質量/容量)のpemulinおよび精製水を含み、7.4のpHのエマルジョンである。
【0035】
例えば、シクロスポリン成分は、水との混合時にエマルジョンを形成する担体と混合し得る。そのようなエマルジョンは、例えば、限定することなしに、Cavanakの米国特許第4,388,307号に記載されている;この米国特許の開示は、その全体を本明細書に参考として合体させる。担体、例えば、限定することなしに、グリセリド担体は、シクロスポリン成分の溶液からの沈降のような物理的不安定性問題を緩和する助けとなり得、また、必要に応じて、血漿濃度をより高めることも可能にし得る。
【0036】
有用な実施態様においては、現在有用な組成物は、疎水性成分を含む。任意の適切な疎水性成分を、本発明において使用し得る。有利なことに、シクロスポリン成分は、疎水性成分中で可溶化される。1つの実施態様においては、疎水性成分は、現在有用なシクロスポリン成分含有組成物、例えば、水注油型エマルジョン中で不連続相を構成するものとみなし得る。
【0037】
疎水性成分は、有効量、例えば、上記組成物の約1.0質量%または約1.5質量%以上までの量で存在し得る。
好ましくは、疎水性成分は、1種以上の油性物質を含む。有用な油物質の例としては、限定することなしに、植物油、動物油、鉱油、合成油等、およびこれらの混合物がある。極めて有用な実施態様においては、疎水性成分は、1種以上の脂肪酸グリセリドを含む。優れた結果は、疎水性成分がヒマシ油を含む場合に得られている。
【0038】
他の有用なシクロスポリン成分含有組成物は、乳化量のヒマシ油等のような脂肪酸グリセリドおよびポリソルベート 80のような界面活性剤との混合物中にシクロスポリン成分を含む。そのような組成物は、Ding等の米国特許第5,474,979号に記載されている;該米国特許の開示は、その全体を参考として本明細書に合体させる。また、Kaswanの米国特許第4,649,047号およびKaswanの米国特許第5,411,952号も参照されたい;これらの米国特許の各々の開示は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【0039】
1つの実施態様においては、現在有用な組成物は、自己乳化性であり、この性質は、水性媒質に暴露させたときに、殆どまたは全く撹拌することなく、微細な水中油型エマルジョンを形成させる。自己乳化特性は、そのような製剤を、例えば、軟質ゼラチンまたは粘稠ペーストにおけるような濃厚形で投与するのを可能にする。さらに、エマルジョンは、自己乳化性予備濃縮物を水性媒質と混合することによっても調製し得る。
【0040】
以前に開示された自己乳化性の系としては、シクロスポリン成分を、(i) 中鎖トリグリセリドとノニオン系界面活性剤、(ii) 植物油と、ポリグリコール化グリセリドまたは中鎖モノ‐およびジ‐グリセリドのような部分グリセリド、または(iii) 植物油とポリソルベート 80またはPEG‐25グリセリルトリオレアートのようなノニオン系界面活性剤の各混合物と混合している系がある。
【0041】
ある種の自己乳化性製剤においては、シクロスポリン成分の“マイクロエマルジョン予備濃縮物”を、シクロスポリン成分を(I) 親水性相、(II) 親油性相および(III) 界面活性剤、並びに任意成分としての増粘剤、酸化防止剤または他の賦形剤と混合することによって調製している。そのような組成物の例は、Hauer等の米国特許第5,342,625号に開示されている;該米国特許の開示は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【0042】
さらに、適切な組成物は、シクロスポリン成分を親水性溶媒相および1種以上の界面活性剤と組合せて含み得るが、親油性溶媒は含まない。そのようなシクロスポリン成分含有製剤は、安定であり、製造するのが簡単であり、良好な薬物動態特性を有し得る。
【0043】
本明細書において使用するときの用語“二成分系”、“二成分組成物”および“賦形剤の二成分系”とは、シクロスポリン成分以外に、少なくとも1種の親水溶媒と少なくとも1種の界面活性剤を含むが、親油性溶媒を含まないシクロスポリン成分含有製剤および組成物を示す。そのような組成物は、さらなるアジュバントを追加し得、それらの組成物が親油性溶媒相を含まない限り、依然として“二成分”とみなし得る。
【0044】
そのような製薬組成物を調製するには、二成分系をシクロスポリン成分と混合する。親水性相は、シクロスポリン成分を可溶化することができる1種以上の既知の製薬上許容し得る親水性溶媒または賦形剤を含み得る。適切な群の親水性化合物としては、例えば、限定なしに、ポリエチレングリコールのような製薬上許容し得るアルコールがある。
【0045】
現在有用な組成物において有用な親水性相成分の例としては、限定するものではないが、水、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、約1,000までの分子量を有する低分子量ポリエチレングリコール、グリコール、ジメチルイソソルビド等、およびこれらの混合物がある。
【0046】
1種以上の親水性溶媒を含む親水性相は、典型的には、上記製薬組成物の約10質量%〜約90質量%を構成する。使用する正確な量は、使用する単数または複数の親水性化合物の性質、存在するシクロスポリン成分量、投与剤形、治療すべき症状および当該技術において既知の他の要因に応じて変動する。好ましくは、上記親水性相は、上記組成物の約20質量%〜約80質量%、より好ましくは約30質量%〜約60質量%を構成する。非水性の親水性成分を使用する場合、水を、上記組成物中に、上記組成物の総質量基準で約0.5%〜約10%、好ましくは約1%〜約5%で変動する量で含ませ得る。
【0047】
ノニオン系、アニオン系、カチオン系およびこれらの混合物のような任意の既知の製薬上許容し得る界面活性剤を使用し得、また、界面活性剤の混合物を使用し得る。ノニオン系界面活性剤、特に、10以上の親水性/親油性バランス(HLB)を有する界面活性剤が好ましい。また、高‐および低‐HLB界面活性剤のある種の組合せも使用し得る;好ましくは、そのような混合界面活性剤は、凝集体界面活性剤HLB (使用する割合に応じて秤量したときの)が10を越えたままであるような比率で使用する。
【0048】
適切な界面活性剤の例としては、限定するものではないが、ヒマシ油のような天然または水素化植物油のポリオキシエチレン誘導体;モノ‐、ジ‐およびトリ‐ラウリル、パルミチル、ステアリルおよびオレイルエステルのような、ポリオキシエチレン‐ソルビタン脂肪酸エステル;ラウリル硫酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのような、アルキル/ジアルキル硫酸塩、スルホン酸塩またはスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;レシチンのようなリン脂質;天然植物油トリグリセリドとポリアルキレンポリオールのエステル交換生成物;ソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリスリトール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテルおよびエステル等がある。界面活性剤は、単独でまたは組合せて使用し得る。
【0049】
使用し得る界面活性剤の他の例としては、限定することなしに、ポリオキシエチレングリセリントリリシノレアートポリオキシル 35 ヒマシ油((CREMOPHOR(登録商標) EL;BASF Corporation社から入手し得る)およびポリオキシル 40 水素化ヒマシ油(CREMOPHOR(登録商標) RH40;BASF Corporation社から入手し得る)のような、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノオレアート(TWEEN(登録商標) 80)、ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノステアレート(TWEEN(登録商標) 60)、ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノパルミテート (TWEEN(登録商標) 40)およびポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノラウレート (TWEEN(登録商標) 20 (いずれもデラウェア州ウィルミントンのICI Surfactants社から入手し得る)のような、ポリオキシエチレン (20) ソルビタンのモノ‐脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリコール 200 モノステアレート(MYRJ(登録商標) 52;イリノイ州スコーキーのCalgene Chemicals社から入手し得る);デカブリセリルモノ‐およびジ‐オレアートのような、10以上のHLBを有するポリグリセリンエステル等、およびこれらの混合物がある。
【0050】
ある場合(上記組成物を半固体として調製する場合のような)には、少なくとも1種の追加の低HLB界面活性剤を1種以上の上記の高HLB界面活性剤と一緒に使用することが有利である。使用し得る低HLB補助界面活性剤の例としては、限定するものではないが、ポリグリセリンオレアート(CAPROL(登録商標) 10G40のような);レシチン類;グリセリルモノオレアートまたはモノリノレアート混合物(MYVEROL(登録商標) 18‐99または18‐92のような);プロピレングリコールラウレート;および、ソルビタンモノオレアート(SPAN(登録商標) 80)、ソルビタントリオレアート(SPAN(登録商標) 85)およびソルビタンセスキオレアート(SPAN(登録商標) 20) (いずれもデラウェア州ウィルミントンのICI Surfactants社から入手し得る)のようなソルビタンオレアート類がある。界面活性剤相は、上記組成物の約10質量%〜90質量%を構成し得る。好ましくは、界面活性剤は、上記組成物の約20質量%〜約70質量%、より好ましくは約40質量%〜約60質量%を構成する。
【0051】
必要に応じて、現在有用な組成物を、等張化成分、緩衝剤成分、高分子電解質成分、増粘剤、充填剤、希釈剤、香味剤、着色剤、酸化防止剤、抗菌剤または抗真菌剤のような防腐剤、pHを調節するための酸および/または塩基類等、およびこれらの混合物のような他の製薬上許容し得る賦形剤をさらに含み得る。そのような添加剤は、存在する場合、上記組成物の約0.01質量%〜約10質量%を典型的に構成し得る。そのような添加剤としては、同様な製薬組成物において使用するのに一般的なおよび/または周知の添加剤がある。例えば、適切な増粘剤としては、当該技術において、例えば、製薬上許容し得るポリマーおよび/または無機増粘剤として知られている任意の増粘剤がある。そのような薬剤としては、限定するものではないが、ポリアクリレートホモ‐およびコ‐ポリマー;セルロースおよびセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;ポリビニル樹脂;ケイ酸塩等、およびこれらの混合物がある。
【0052】
必要に応じて、上記シクロスポリン含有組成物は、液体製剤よりはむしろ半固体として、大割合の適切な増粘剤または凝固剤を添加することによって調製し得る。上述したように、そのような調製物は、硬質ゼラチン(軟質ゼラチンとは逆に)カプセル用の充填剤として特に有用である。半固体組成物を調製するのに適切な凝固剤としては、限定するものではないが、PEG 1450およびPEG 3350のような約1,000よりも多い分子量を有するポリエチレングリコール;ステアリルアルコール;およびコロイド状二酸化ケイ素(イリノイ州タスコラのCabot社から入手可能なCAB-O‐SIL (商標登録) M‐5)がある。半固体状態は、多くの場合、約8質量%または約10質量%と約15質量%または約25質量%の間の量の凝固剤を添加することによって得ることができる。必要な凝固剤の実際の量は、存在する他の賦形剤の物理的特性に依存するであろう。
【0053】
本明細書の他の箇所で特に注記されない限り、上記クロスポリン成分含有組成物は、局所投与する。しかしながら、全身投与、例えば、カプセルまたは懸濁液の経口投与;筋肉内、腹腔内、皮下および関節内注射;またはシクロスポリン成分含有組成物の輸注のような他の投与方式も可能性がある。局所投与としては、軟膏、点滴剤、溶液剤、ラッカー剤(別個の抗真菌剤を含む着色爪研磨剤またはラッカー)、当該技術において周知のアプリケーター装置を使用して投与し得るシクロスポリン成分含有懸濁液またはエマルジョンがある。単数または複数の患部組織領域への局所投与を意図する局所製剤は、直接、またはシクロスポリン成分含有濃縮物を希釈剤、例えば、水性希釈剤と混合することによって調製し得る。そのような局所製剤は、さらなる賦形剤も、必要に応じて、例えば、シクロスポリン成分の吸収速度のコンシステンシーを改変するために含み得る。
【0054】
現在有用な組成物の製造においては、上記各成分を、任意の順序で、完全な調合を確保するためのミキシングまたは軽い撹拌によって混合し得る。
【0055】
上記シクロスポリン成分は、所望する治療効果をもたらすのに必要な十分な量で且つ十分な時間で投与し得る。特定の治療有効量は、治療する特定の症状、症状の重篤度、使用する特定のシクロスポリン成分の活量、使用する特定のシクロスポリン成分含有組成物、投与時間および方法、治療期間、並びに医療技術において周知である他の要因のような多くの要因に依存する。
【0056】
以下、非限定的な実施例により、本発明のある種の局面を説明する。
【実施例1】
【0057】
手指爪に明白な水平隆起(“ボー線”)と貧弱な爪成長を示す手指爪を有する51歳の女性患者は、カリフォルニア州アーヴィンのAllergan社により商品名RESTASIS (商標登録)で市販されている0.05%シクロスポリンAのエマルジョンをアプリケーターブラシによって1日に4回局所投与している。投与の7日後に、被験者の手指爪は、水平隆起の存在なしで促進された成長を示している。
【実施例2】
【0058】
おそらくはビタミンまたはミネラル欠乏による垂直割れと穴開きを示す手指爪を有する44歳の男性患者は、カリフォルニア州アーヴィンのAllergan社により商品名RESTASIS (商標登録)で市販されている0.05%シクロスポリンAのエマルジョンをアプリケーターによって1日に10回局所投与している。投与の10日後に、被験者の手指爪は、促進された成長と厚さの増大、また、指の甘皮および爪半月領域から上方に穴開きの存在なしで成長した爪部分における穴開きの消失を示している。
【実施例3】
【0059】
貧弱な成長によるもろくて(爪甲縦裂症)薄化性の爪を有する45歳の女性患者は、0.01%シクロスポリンAの水溶液を絞り出し可能なアプリケーターによって1日に12回局所投与している。投与の10日後に、被験者の手指爪は、爪母から出ている厚めでもろさの少ない爪による有意に促進された成長を示している。
【実施例4】
【0060】
貧弱な爪成長により手指爪に明白な水平隆起(“ボー線”)と穴開きを示す手指爪を有する55歳の女性患者は、カリフォルニア州アーヴィンのAllergan社により商品名RESTASIS (商標登録)で市販されている0.05%シクロスポリンAのエマルジョンをアプリケーターブラシによって爪と爪上皮に1日に2回局所投与している。0.05%シクロスポリンAエマルジョンは、爪および爪上皮への投与用のラッカー中で配合する。投与の7日後に、被験者の手指爪は、水平隆起の存在なしで促進された成長を示している。
【実施例5】
【0061】
貧弱な爪成長を伴う爪甲縦裂症を患っていてもろい手指爪を有する55歳の男性患者は、カリフォルニア州アーヴィンのAllergan社により商品名RESTASIS (商標登録)で市販されている0.05%シクロスポリンAのエマルジョンをアプリケーターブラシによって爪と爪上皮に1日に12回局所投与している。投与の5日後に、被験者の手指爪は、水平隆起の存在なしで促進された成長を示している。
【実施例6】
【0062】
爪乾癬を患っている65歳の男性患者は、手指爪、足指爪、各爪上皮に、さらに、爪床と手指爪または足指爪の間に、実施例3のエマルジョンを1日に2回局所投与している。投与の7日後に、被験者の手指爪と足指爪は、薄化と成長を正常に開始している。
【実施例7】
【0063】
多患者試験においての0.05% (質量/容量)シクロスポリンエマルジョン対ビヒクル
この試験の目的は、もろい爪の治療および正常な爪の成長と組織の増強の双方におけるシクロスポリンエマルジョン対エマルジョン単独の安全性と有効性を評価することであった。
【0064】
この試験は、もろい爪の治療および正常な爪の成長と組織の増強についての24名の患者における0.05%シクロスポリンエマルジョンのRestasis (登録商標)とそのビヒクル、即ち、Refresh (登録商標)ドライアイ治療薬(シクロスポリンを含有していない)の単独センター試験員盲検(試験員隠蔽)直接比較であった。
【0065】
3個の対象手指爪を各被験者において指定した。対象爪のうちの2個は、もろい爪症候群の最も重篤な症候を有する2個の爪であった。第3の対象爪は、正常な爪か、或いは、正常な爪が無い場合の、患者の二番目に健康そうな爪であった。患者の最も正常そうな爪は、治療した爪の成長を非治療正常爪における成長と比較できるように治療しなかった;この爪は、第4の対象爪であった。試験薬物を、対照爪に24週間投与した(被験者は、被験者の基準の手指爪成長速度を決定するために治療しなかった1個の爪を除いて、被験者が望む場合の全ての爪に投与し得た)。対象爪を診断毎に評価した。患者を、4週間毎に外来診療において評価した。治療の中止後は、12週間のフォローアップ期間が存在した。
前提は、Restasis (登録商標)および/またはエマルジョン単独のもろい爪を有する患者の爪および爪床への毎日の投与が、患部爪および非患部爪の双方において爪組織を改善し且つ爪成長を増進させるであろうということである。この36週間試験は、1つのセンターで実施した。試験対象患者基準および除外基準を満たす成人男性および女性を適格性についてスクリーニングした。治験責任者または彼/彼女の被指名人が、何らかのプロトコール仕様手順を実施する前に、全ての患者からインフォームドコンセントを得た。
【0066】
主たる評価項目は、2個の対象爪におけるもろい爪兆候および症状の重篤度の尺度である医師による評価[Physician's Global Assessment (PGA)]における改善を達成する患者の割合であった。対象爪は、最も重篤な粗造爪(粗さ)、層状爪甲縦裂症(剥離)または縦亀裂/分裂(デコボコ性)を有する2個の手指爪として選定した。さらに、1個の正常爪を、正常爪の成長および組織に対する治療効果を評価するための第3の対象爪として選定した。患者が正常爪を有していない場合は、第3の対象爪は、患者の二番目に健康そうな爪であった。爪成長は個々人間で著しく変動するので、対象正常爪の爪成長および組織を、対照正常爪と同じ手の1個の非治療爪と比較した。非治療爪は、対象正常爪と同じ手の最も正常そうな爪であり、第4の対象爪であった。
【0067】
二次的な成果は、患者満足度質問による生活の質の改善、正常非治療爪と比較した対象正常爪の成長速度の差異、および基準時に撮った写真の治験中に撮った写真との比較を反映する4個の対象爪の医師による改善評価[Physician's Global Improvement Assessment (PGIA)]を含んでいた。
Allerganによる2009年12月22日付きのデータ分析は、以下の結果を示していた。シクロスポリン群における爪成長は、非治療爪における6.6mmと比較して7.2mmであり、0.64mmの上昇であった。エマルジョン群の爪成長は、非治療爪における5.7mmと比較して5.8mmであり、0.17mmの上昇であった。シクロスポリンは、エマルジョンよりも0.5mm爪成長を上昇させた。全ての他の評価尺度も、シクロスポリン群とエマルジョン群の双方において爪を基準点から改善していた。
【0068】
0 = 無、1 = 軽微、2 = 中度および3 = 重篤の4点尺度での主対象爪の爪破損について。シクロスポリン群における爪破損は、フォローアップ時での0.91と比較して、基準時において1.55であり、0.64の改善であった。エマルジョン群における爪破損は、エマルジョン爪のフォローアップ時での0.67と比較して、基準時において1.08であり、0.42の改善であった。シクロスポリンは、爪破損をエマルジョンよりも0.22ポイント改善していた。
【0069】
1 = はるかに良好、2 = 僅かに良好、3 = 変化なし、4 = 僅かに悪い、および5 = はるかに悪いの5点尺度での基準点からの組織、光沢、一般的外観変化に基く正常爪に対する医師による改善評価について。シクロスポリン群における医師による改善評価は、フォローアップ時において、2.36であり、エマルジョン群においては2.92であった。シクロスポリンは、正常爪をエマルジョンよりも0.55ポイント改善していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロスポリンを含むエマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液からなる群から選ばれる組成物を含むことを特徴とする、ヒトまたは動物における爪の成長の促進、もろい爪の治療および爪の強化において使用する組成物。
【請求項2】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンAである、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンA誘導体またはセグメントである、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
前記組成物が、エマルジョンである、請求項2記載の製剤。
【請求項5】
前記シクロスポリンおよびシクロスポリンAが、エマルジョン中に、0.05%質量/容量の量で存在する、請求項2記載の製剤。
【請求項6】
前記エマルジョンが、グリセリン、ヒマシ油、ポリソルベート 80およびカルボマー1342も含有する、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、溶液中に0.01%〜0.0125% (質量/容量)の量で存在する、請求項2記載の製剤。
【請求項8】
前記シクロスポリンが、前記組成物の0.001%〜50% (質量/容量)の量で存在する、請求項1記載の製剤。
【請求項9】
下記の処置を含むことを特徴とする、ヒトまたは動物における爪成長の促進、もろい爪の治療または爪成長の強化方法:
シクロスポリンを含むエマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液からなる群から選ばれる組成物を投与する処置であって、
シクロスポリンを含む前記エマルジョン、溶液、ゲル、ペースト、分散液または懸濁液を、ヒトまたは動物の爪、爪上皮または爪母に少なくとも1日1回局所投与する処置。
【請求項10】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンAである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンA誘導体またはセグメントである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、エマルジョンである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、エマルジョン中に0.05質量/容量%の量で存在する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記エマルジョンが、グリセリン、ヒマシ油、ポリソルベート 80およびカルボマー1342も含有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記シクロスポリンが、シクロスポリンAであり、溶液中に0.01%〜0.0125% (質量/容量)の量で存在する、請求項12記載の製剤。
【請求項16】
前記シクロスポリンが、前記組成物の0.001%〜50% (質量/容量)の量で存在する、請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2012−514644(P2012−514644A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545429(P2011−545429)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020376
【国際公開番号】WO2010/080913
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】