説明

片面2層光記録媒体

【課題】 奥側記録層からも良好な記録再生特性を得られる片面2層光記録媒体の提供。
【解決手段】 案内溝を有する第1基板と第2基板の間に、第1情報層、中間層、第2情報層が順次設けられ、各情報層は、有機色素からなる記録層を有しており、第1基板からレーザー光を入射して、光強度の2値以上の変調により情報の記録・再生を行なう光記録媒体であって、第2情報層は、光入射側から、第1保護層、第2保護層、有機色素記録層、反射層が順に積層され、第1保護層の熱膨張係数が0.1×10E−6K−1〜2×10E−6K−1であることを特徴とする片面2層光記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ビームを照射することにより、記録材料の透過率、反射率等の光学的な変化を生じさせ、情報の記録、再生を行ない、かつ追記が可能な片面2層光記録媒体及びその記録再生方法と記録再生装置に関し、特に大容量、高密度記録可能な片面2層光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にコンパクトディスク(CD)やDVDは、凹ピットの底部及び鏡面部からの光の干渉により生じる反射率変化を利用して2値信号の記録及びトラッキング信号を検出を行っている。近年、CDと再生互換性(互換性)のある媒体として、有機色素膜を記録層とした追記型のコンパクトディスク(CD−R)が広く使用されつつあるほか、DVDについても追記可能なDVDが各種提案されている。
従来、有機色素薄膜を記録層とする光記録媒体において、該有機色素薄膜にフタロシアニン化合物を使用したもの、シアニン系色素を使用したもの、或いはフェナレン系色素、ナフトキノン系色素などを使用したものが知られている。
基板上に有機色素、金属反射層、UV樹脂保護層を順次積層した追記コンパクトディスク型(CD−R)記録媒体は、そのCD規格を満足するには高い反射率を必要とし、そのため再生波長域(770〜830nm)に高い屈折率を有し、且つ安定性の高い有機色素の開発が必要であった(DVDの追記型ディスクのDVD±Rは再生波長が630〜680nm)。これまでCD−R及びDVD±Rは、記録媒体として、シアニン色素/金属反射層、フタロシアニン色素/金属反射層又はアゾ金属キレート色素/金属反射層などを記録材料として用いた数多くの提案がなされている(例えば、シアニン色素/金属反射層を記録材料として用いたものには、特許文献1等が、フタロシアニン色素を記録材料として用いたものには、特許文献2等が、またアゾ金属キレート色素を記録材料として用いたものには、特許文献3等がある)。
【0003】
これらは全て有機色素層が1層で、片面1層記録の記録媒体として開発されていた。
光ディスクには信号記録用のグルーブ・ランドと呼ばれる凹凸形状からなる案内溝が形成されており、記録再生を行うためのレーザ光を照射する側(基板側)から見て、遠くなる方向に凹形状に窪んでいる側をランドと呼び、近くなる方向に凸形状に出っ張っている側をグルーブと呼ぶ。記録再生可能な案内溝のピッチ(トラックピッチ)によって、記録できる容量が決定される。例えばDVD+Rでは、グルーブにのみ情報を記録するグルーブ記録方式をとり、記録容量が4.7GBではトラックピッチが0.74μmである。最近では、1枚の光ディスクの記憶容量を増加させるため、複数データ層システムが提案されている。例えば、基板の片面側に記録層を有する情報層を2つ重ね、これら情報層間を紫外線硬化樹脂等で接着した構造の2層光記録媒体が、特許文献4で提案されている。
この情報層間の接着部分である透明接着層(本発明でいう中間層にあたる)は、2つの情報層を光学的に分離する機能を有するもので、記録再生用レーザー光がなるべくロスされずに奥側の情報層に到達する必要があるため、レーザー光をなるべく吸収しないような材料から構成されている。また、特許文献4では、透明接着層と奥側の色素記録層との混和を防止する目的で、無機物からなるバッファー層を設けることが提示されており、その厚さは、2〜2000nmが好ましいとされている。
【0004】
このバッファー層(本発明では保護層という)の屈折率は、通常、接着層や色素記録層の屈折率とは異なるので、保護層の膜厚によって干渉作用により反射率が変動する。したがって、この保護層は奥側記録層の反射率を調整する役目も持つ。奥側の記録層を再生する際、手前側の記録層によってレーザー光の一部が吸収、散乱されてしまうため、奥側の記録層の反射率は予め高めに設定する必要があるが、特許文献4では、このことに関しては考慮されていない。
また、保護層の物性(熱伝導率、熱膨張率など)によって、片面2層光記録媒体の記録特性が左右される。良好な記録特性を示す片面2層光記録媒体を実現するために、本出願人の先願(特願2004−81173号)として、ZnSを主体とした保護層を用いたものが提案されているが、保護層膜厚が100nm以上でないと良好に記録できなかった。しかしながら、保護層膜厚が100nmを超えると製膜に時間を要し、生産性が低下したり膜厚むらによる反射率変動が顕著になる恐れがある。一方、保護層膜厚を100nm以下にすると、奥側記録層記録時に中間層を変形し特性が悪化するという問題がある。したがって、保護層が100nm以下でも特性が悪化しない片面2層光記録媒体が望まれる。
また、本出願人の先願(特願2004−261735号及び特願2004−80007号)では、保護層を2層にする発明が提案されているが、前者は、変調度を調整するといった光学的な課題を考慮したものであり、後者は、反射層側の変形を抑制するのを目的としたものであって、本発明とは目的が異なる。
【0005】
【特許文献1】特開平2−168446号公報
【特許文献2】特開平5−139044号公報
【特許文献3】特開平5−279580号公報
【特許文献4】特開2003−331473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、奥側記録層からも良好な記録再生特性を得られる片面2層光記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、次のような解決手段を見出した。即ち、上記課題は、次の1)〜7)の発明(以下、本発明1〜7という)によって解決される。
1) 案内溝を有する第1基板と第2基板の間に、第1情報層、中間層、第2情報層が順次設けられ、各情報層は、有機色素からなる記録層を有しており、第1基板からレーザー光を入射して、光強度の2値以上の変調により情報の記録・再生を行なう光記録媒体であって、第2情報層は、光入射側から、第1保護層、第2保護層、有機色素記録層、反射層が順に積層され、第1保護層の熱膨張係数が0.1×10E−6K−1〜2×10E−6K−1であることを特徴とする片面2層光記録媒体。
2) 第1保護層の膜厚が5〜100nmであることを特徴とする1)記載の片面2層光記録媒体。
3) 第1保護層と第2保護層の膜厚の合計が8〜103nmであることを特徴とする1)及び2)の何れかに記載の片面2層光記録媒体。
4) 第1保護層がSiO、Al、TiOの何れかを主成分とする材料からなることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の片面2層光記録媒体。
5) 第2保護層がZnSを主成分とする材料からなることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の片面2層光記録媒体。
6) 案内溝を有する第1基板と第2基板の間に、第1情報層、中間層、第2情報層が順次設けられ、各情報層は、有機色素からなる記録層を有しており、第1基板からレーザー光を入射して、光強度の2値以上の変調により情報の記録・再生を行なう光記録媒体であって、第2情報層は、光入射側から、第1保護層、第2保護層、有機色素記録層、反射層が順に積層され、第1保護層は紫外線硬化性樹脂からなり、その熱膨張係数が中間層の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする片面2層光記録媒体。
7) 第1保護層と中間層の膜厚の合計が20〜70μmであることを特徴とする6)記載の片面2層光記録媒体。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る片面2層光記録媒体の概略断面図である。
図1に示す光記録媒体(光ディスク)は2つの情報層を有する。各情報層は有機色素材料を用いて形成される。各情報層への情報の記録は、第1基板からレーザー光を入射させ、マークと呼ばれるパターンの記録により行われる。より具体的には、案内溝を有する第1基板101上に第1情報層100を形成する。第1情報層100は、第1有機色素記録層102単層でもよく、その上に第1金属反射層103が積層された構成でもよい。第1金属反射層103の上に更に透明な第1熱拡散層を設けてもよい。また、第1有機色素記録層102と第1基板101の間には下引き層又は保護層を設けてもよく、機能向上のためそれらを積層化した構成でもよい。
一方、第2情報層200は、案内溝を有する第2基板201上に形成される。第2情報層200は、第2基板側から、第2金属反射層202、第2有機色素記録層203、第2保護層204、第1保護層205の順に積層されている。
第1情報層100と第2情報層200とは、略透明な接着層を中間層300として所定の距離で隔てられ、貼り合わされて対向している。
【0009】
第1基板101は、記録再生のために照射する光を十分透過するものであることが必要であり、当該技術分野において従来知られているものが適用される。その材料としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどの透明樹脂、或いは透明ガラスを用いることができる。中でもポリカーボネート樹脂はCDにおいて最も広く用いられているなど実績もあり、また安価でもあるため最も好ましい材料である。第1基板101には、記録再生光を案内する溝が設けられている。また、第1基板の厚さは、10〜600μm程度が好ましい。
第2基板201の材料としては、第1基板101と同様の材料を用いても良いが、記録再生光に対して不透明な材料を用いても良く、第1基板101とは、材質、溝形状が異なっても良い。第2基板201の厚さは特に限定されないが、第1基板1の厚さとの合計が1.2mmになるように厚さを選択することが好ましい。また、情報層200を形成する側に溝が設けられている。
【0010】
中間層300は、記録再生のために照射する光の波長における光吸収が小さいことが好ましく、材料としては、成形性、コストの点で樹脂が好適であり、紫外線硬化性樹脂、遅効性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。また、光ディスク貼り合わせ用の両面テープ(例えば日東電工(株)の粘着シートDA−8320)なども用いることができる。中間層300は、記録再生を行なう際に、ピックアップが第1情報層100と第2情報層200とを識別して光学的に分離可能とするものであり、その厚さは10〜70μmが好ましい。10μmより薄いと、層間クロストークが生じ、また70μmより厚いと、第2情報層を記録再生する際に、球面収差が発生し、記録再生が困難になる傾向がある。20〜70μmの範囲がより好ましい。
後述するが、第1保護層に紫外線硬化性樹脂を用いた場合、第1保護層と中間層の合計膜厚は20〜70μmが好ましく、中間層の厚さは第1保護層の厚さに対応して適宜調整することができる。
【0011】
次に、第1有機色素記録層102及び第2有機色素記録層203について説明する。
光記録媒体の記録層を構成するのに必要な項目として光学特性が挙げられる。光学特性に必要な条件は、記録再生波長に対して短波長側に大きな吸収帯を有し、かつ記録再生波長が該吸収帯の長波長端近傍にあることである。これは記録再生波長で大きな屈折率と消衰係数を有することを意味するものである。具体的には記録層単層の屈折率nが1.5〜3.0であり、消衰係数kが0.02〜0.2の範囲にあることが好ましい。nが1.5未満の場合には、十分な光学的変化を得難く、記録変調度が低くなるため好ましくないし、nが3.0を超えると、波長依存性が高くなり過ぎて、記録再生波長領域であってもエラーとなってしまうため好ましくない。また、kが0.02未満の場合には、記録感度が悪くなるため好ましくなく、kが0.2を超える場合には、18%以上の反射率を得ることが困難となり、特に第1情報層では、透過率が低くなり過ぎて第2情報層の記録感度が悪くなるため好ましくない。
【0012】
次に本発明に使用可能な有機色素材料の具体例としては、アゾ金属キレート色素、ホルマザン金属キレート色素、ジピロメテン金属キレート色素、ポリメチン色素、スクアリリウム色素、アザアヌレン色素等が挙げられ、特に好ましいのは、金属キレート色素、トリメチンシアニン色素、スクアリリウム色素、テトラアザポルフィリン色素である。
アゾ金属キレート色素としては、アゾ結合を挟む両側のアゾ化合物形成ユニットが、置換・未置換の芳香環、ピリジン残基、ピリミジン残基、ピラジン残基、ピリダジン残基、トリアジン残基、イミダゾール残基、トリアゾール残基、ピラゾール残基、チアゾール残基、イソチアゾール残基、ベンズチアゾール残基等の組み合わせからなるアゾ化合物の金属キレート化合物が特に好ましい。
【0013】
ホルマザン金属キレート色素としては、次の一般式で示されるホルマザン化合物と2価の金属原子とのキレート化合物が挙げられる。
【化1】

式中、Zは、それが結合している炭素原子及び窒素原子と一緒になって複素環を形成する残基であり、具体的にはピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、又はトリアジン環である。また、これらの複素環はアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換アミノ基、アリル基、アリルオキシ基、アニリノ基、ケト基等の置換基を有していてもよい。Aは、アルキル基、アラルキル基、アリル基、又はシクロヘキシル基を表し、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ケト基、カルボキシル基又はそのエステル、ニトリル基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。Bは、アリル基を表し、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基又はそのエステル、ニトリル基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。
【0014】
ジピロメテン金属キレート色素としては、次の一般式で示されるジピロメテン化合物と2価の金属原子とのキレート化合物が挙げられる。
【化2】

式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換・未置換のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
上記アゾ化合物、ホルマザン化合物、又はジピロメテン化合物とキレート化合物を形成する金属としては、例えば、Ni、Co、Cu、Mn、V、Zn、Fe、Cr、Al等が挙げられ、製造上及びディスク特性上から、特にNi、Co、Cu、Mn、Vが好ましい。
【0015】
ポリメチン色素としては、530〜600nmに吸収帯を有するものならば使用可能であるが、中でもトリメチンシアニン色素が好ましく、トリメチン鎖の両端が置換・未置換のインドレニン、ベンズインドレニンのものが特に好ましく、カウンターアニオンとしては、ハロゲンアニオン、ClO4−、BF4−、PF6−、SbF6−等の他にニッケルジチオレート錯体に代表される各種金属キレートアニオンでもよい。
スクアリリウム色素としては、スクアレン環の両端が置換・未置換のインドレニン、ベンズインドレニン、ピラゾール、カルバゾール、キノキサリン、イソインドール、芳香環、置換アミノ基残基のうちの組み合わせからなるものが好ましい。
アザアヌレン色素としては、各々特定の置換基を有したフタロシアニン、ナフタロシアニン、テトラピラジノポルフィラジン、テトラピリジノポルフィラジン、テトラアザポルフィリン等が挙げられるが、このうち特に好ましいのはテトラアザポルフィリンであり、次いでテトラピリジノポルフィラジン、テトラピラジノポルフィラジン、フタロシアニンの順で好ましい。
【0016】
上記した色素の熱分解特性であるが、色素単独で用いる場合も混合して用いる場合もその記録材料の分解開始温度が360℃以下であることが好ましい。特に100〜350℃が好ましい。分解温度が360℃を超えると記録時のピット形成がうまく行われず、ジッタ特性が悪い。また100℃未満であると今度はディスクの保存安定性が悪化する。
また、上記色素は光学特性、記録感度、信号特性などの向上の目的で他の有機色素及び金属、金属化合物と混合又は積層化して用いてもよい。
他の有機色素の例としては、(ポリ)メチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン系(インダンスレン系)、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、及び、金属錯体化合物などが挙げられる。
金属、金属化合物の例としては、In、Te、Bi、Se、Sb、Ge、Sn、Al、Be、TeO、SnO、As、Cdなどが挙げられ、それぞれを分散混合あるいは積層の形態で用いることができる。
【0017】
更に、上記染料中に高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の材料又はシランカップリング剤などを分散混合してもよいし、特性改良の目的で安定剤(例えば遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを一緒に用いることができる。
有機色素記録層の形成方法としては、蒸着、スパッタリング、CVD又は溶剤塗布などの通常の手段を用いることができる。塗布法を用いる場合には、上記染料などを有機溶剤に溶解して、スプレー、ローラーコーティグ、ディピング及びスピンコーティングなどの慣用のコーティング法によって行うことができる。用いられる有機溶媒としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
記録層の膜厚は10nm〜10μm、好ましくは20nm〜200nmが適当である。
【0018】
金属反射層材料としては単体で高反射率の得られる腐食され難い金属、半金属等が挙げられ、具体例としてAu、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Cu、Snなどが挙げられるが、反射率、生産性の点からAu、Ag、Alが最も好ましい。これらの金属、半金属は単独で使用してもよく、2種の合金としてもよい。特に第1情報層100は高い透過率が必要とされるため、第1金属反射層103には、屈折率が低く、熱伝導率の高いAg又はAg合金を用いることが好ましい。
膜形成法としては蒸着、スッパタリングなどが挙げられる。
膜厚は3〜500nm、好ましくは3〜300nmである。第1金属反射層103に関しては、高透過率を確保するために、3〜20nmが好ましい。3nm未満にすると厚さが均一で緻密な膜を作ることが困難になる。
【0019】
次に、本発明の特徴部である第1保護層、第2保護層について説明する。
本発明の第2情報層は、光入射側から、第1保護層、第2保護層、第2有機色素層、第2金属反射層の順で構成される。
第2保護層の材料としては、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。熱伝導率は低い方が望ましいが、その目安は1×10E−3pJ/(μm・N・nsec)である。なお、このような低熱伝導率材料の薄膜状態の熱伝導率を直接測定するのは困難であり、直接測定に代るものとして熱シミュレーションと実際の記録感度の測定結果から目安を得ることができる。
好ましい結果をもたらす低熱伝導率の上記保護層用材料としては、ZnS、ZnO、SiC、TaS、及び希土類硫化物のうちの少なくとも一種を50〜90モル%含み、透明性が高く、かつ融点又は分解点が1000℃以上の耐熱性化合物を含む複合誘電体が望ましい。より具体的にはLa、Ce、Nd、Y等の希土類の硫化物を60〜90モル%含む複合誘電体、或いは、ZnS、ZnOの割合が70〜90モル%のものが望ましい。中でもZnSを主成分とする材料が最も適している。
融点又は分解点が1000℃以上の耐熱化合物としては、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、Ge、Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができる。
なお、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を変えたり、混合して用いることも有効である。
【0020】
第1保護層は、中間層300と相溶せず、かつ高透過率性を持つ必要があり、熱膨張係数が2×10E−6K−1以下の材料を用いる。熱膨張係数がこれよりも大きいと、記録時の熱によって変形してしまい特性が悪化する恐れがある。好ましい熱膨張係数は1×10E−6K−1以下である。また、熱膨張係数の下限は0.1×10E−6K−1である。熱膨張係数がこれよりも小さいと、隣接する膜との熱膨張係数の差が大きくなり、記録時に剥離などの破壊が生じる可能性がある。また、保存特性が劣化する。第1保護層に適した無機物材料の具体例としては、SiO、Al、TiOなどの酸化物或いはそれらの混合物が挙げられる。また、必要に応じて不純物を含んでもよい。保護層の融点は記録層よりも高いことが必要である。
【0021】
第1保護層に無機物を用いた場合、第1保護層の膜厚は、5〜100nmの範囲が好ましい。5nmより薄いと効果が得られなくなる。また、100nmより厚いと、生産性が悪くなるばかりでなく、第2情報層の反射率が低下したり、膜応力が大きくなるため基板の変形と光透過性保護層の剥離が生じ易くなる。より好ましい範囲は5〜60nmであり、5〜40nmが更に好ましい範囲である。
第1保護層と第2保護層の総膜厚は8〜103nmの範囲が好ましい。第2情報層の感度、反射率、第1保護層の効果を考慮して、第1保護層、第2保護層の膜厚を設計する。より好ましい範囲は8〜63nmであり、8〜43nmが更に好ましい範囲である。
また、中間層よりも小さい熱膨張係数をもつ紫外線硬化性樹脂を第1保護層に用いることも出来る。第1保護層の熱膨張係数が中間層よりも小さければ、本発明の効果が得られるが、1/2以下であれば、その効果がより大きく現れる。具体的には、0.1×10E−6K−1〜1×10E−6K−1程度の低熱膨張係数を持つ紫外線硬化性樹脂が好ましい。熱膨張係数がこれより大きいと効果が得られず、これより小さいと、隣接する膜との熱膨張係数の差が大きくなり、記録時に剥離などの破壊が生じる可能性がある。
第1保護層に紫外線硬化性樹脂用いた場合、その膜厚は、1〜55μmが好ましい。1nmより薄いか又は55nmより厚いと、スピンコート法で形成するのが困難となる。
第1保護層に紫外線硬化性樹脂を用いた場合、その光学特性は、中間層と類似しているため、第1保護層と中間層の膜厚の合計は、20〜70μmの範囲が好ましく、中間層の厚さは第1保護層の厚さに対応して適宜調整することができる。
【0022】
本発明の片面2層光記録媒体は、必要に応じて任意の他の層を設けてもよい。或いは、媒体の最外面に任意の他の層を設けても良い。
例えば、第1基板面側にハードコート層を設けてもよく、これは記録層(反射吸収層)の傷、ホコリ、汚れ等からの保護、記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、無機材料として、SiO、SiOなども用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。特に好ましいのは、生産性に優れた紫外線硬化性樹脂である。
基板面ハードコート層の膜厚は0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。基板面ハードコート層には、記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0023】
本発明の片面2層光記録媒体は、第1金属反射層103の上に第1熱拡散層を設けても構わない。第1金属反射層103は、透過率の観点から非常に薄くなければならないが、第1金属反射層103が薄いと熱容量が不足して、熱が有機色素記録層102にこもり、微小マークの形成が難しくなることがある。そのような場合には、第1金属反射層103の熱容量を補うために第1熱拡散層を設けるとよい。また、第1熱拡散層は、第1金属反射層が中間層と反応するのを防止する役目も持つ。第1熱拡散層としては、レーザー照射された有機色素記録層を急冷させるために熱伝導率が大きいことが望まれる。また、奥側の情報層を記録再生できるようにレーザー波長での吸収率が小さいことも望まれる。更に情報の記録再生に用いるレーザー光の波長において、消衰係数が0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。0.5より大きいと第1情報層での吸収率が増大し、第2情報層の記録再生が困難になる。また、情報の記録再生に用いるレーザー光の波長において、屈折率は1.6以上であることが好ましい。これより小さいと、第1情報層の透過率を大きくするのが困難になる。
【0024】
以上のことから、第1熱拡散層の材料としては、窒化物、酸化物、硫化物、窒酸化物、炭化物、弗化物の少なくとも1種を含むことが好ましい。例えば、AlN、Al、SiC、SiN、SnO、In、ZnO、ITO(酸化インジウム−酸化スズ)、IZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)、ATO(酸化スズ−アンチモン)、DLC(ダイアモンドライクカーボン)、BNなどが挙げられる。
第1熱拡散層は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている。
第1熱拡散層の膜厚は、10〜200nmが好ましい。10nmより薄いと、放熱効果が得られなくなる。200nmより厚いと、応力が大きくなり、繰り返し記録特性が低下するばかりでなく、量産性にも問題が生じる。
また第1情報層は、記録再生用レーザー光波長350〜700nmでの光透過率が40〜70%であることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。
【0025】
次に、本発明の片面2層光記録媒体の製造方法について説明する。
まず、第1基板のグルーブが設けられた面に第1情報層を形成したものと、第2基板のグルーブが設けられた面に第2情報層を形成したものを別途作成する。第1情報層は、第1基板のグルーブが設けられた面に、溶媒に溶解させた有機色素をスピンコートなどにより塗布し、その上に第1金属反射層を成膜して作成する。第2情報層は、第2基板のグルーブが設けられた面に第2金属反射層を成膜し、その上に有機色素をスピンコートなどにより塗布し、更にその上に、第2保護層、第1保護層を順次製膜して作成する。
第1情報層、第2情報層のそれぞれを構成する金属反射層、保護層は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成される。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。スパッタリング法は、一般にアルゴンなどの不活性ガスを流しながら成膜を行なうが、その際、酸素、窒素などを混入させながら、反応スパッタリングさせてもよい。
次に、第1基板面上に第1情報層を形成したものと、第2基板面上に第2情報層を形成したものとを、第1情報層と第2情報層を向かい合わせながら、中間層を介して貼り合わせる。例えば、何れか一方の基板の情報面に、スピンコートなどにより中間層となる紫外線硬化性樹脂を塗布してから、その上に他方の基板を、膜面同士を向かい合わせて乗せ、加圧、密着させて樹脂を全面に広げ、次いで、紫外線照射により樹脂を硬化させて光記録媒体を製造する。
【0026】
図2は、本発明に係る片面2層光記録媒体の記録・再生を行なう装置の概略図である。光記録媒体をスピンドルモーターからなる駆動手段により回転駆動し、光源駆動手段であるレーザー駆動回路により半導体レーザーからなる光源を駆動し、記録再生用ピックアップにより、光学系(図示せず)を介して、該半導体レーザー光源から光記録媒体に電磁波としてレーザー光を照射し、光記録媒体の記録層に変化を生じさせ、更に光記録媒体からの反射光を記録再生用ピックアップで受光することにより、光記録媒体に対する情報の記録や再生を行う。波形処理回路では再生されたHF信号の信号レベルが測定され、Pwoを求める演算が行われる。記録再生用ピックアップの最適記録パワーは、記録パワー設定手段としての記録パワー設定回路により設定される。
光記録媒体の記録再生装置は、記録再生用ピックアップにより電磁波としてレーザー光を光記録媒体に照射して記録層に変化を生じさせ、情報の記録、再生を行うものであり、記録すべき信号を変調部で変調し記録再生用ピックアップで光記録媒体に記録を行う記録手段を備えている。また、第1情報層、第2情報層を識別するための層認識手段、及び、第1情報層から第2情報層へ、或いは第2情報層から第1情報層へとレーザー照射を切り替えるための層切り替え手段を備えている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1情報層、第2情報層共に、良好に記録再生を行なうことが可能な片面2層光記録媒体を提供できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
直径12cm、厚さ0.58mmで表面に溝ピッチ0.74μm、溝幅0.28μm、溝深さ150nmの案内溝を持つポリカーボネート樹脂からなる第1基板上に、下記構造式〔化3〕で表されるスクアリリウム色素と、下記構造式〔化4〕で表されるホルマザンキレート色素を7:3の割合で混ぜて、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール中に濃度1.0質量%で溶解した溶液をスピンコートし、第1色素含有記録層を形成した。この記録層の最大吸収波長は609nm、最大吸収波長での吸光度(Abs)は0.65であった。このときのグルーブでの記録層膜厚は60nmであった。
更にその上にマグネトロンスパッタ法によりAg98PdCuからなる膜厚12nmの第1金属反射層を設けて第1情報層を得た。
また、直径12cm、厚さ0.58mmで表面に溝ピッチ0.74μm、溝幅0.28μm、溝深さ35nmの案内溝を持つポリカーボネート樹脂からなる第2基板上に、Agからなる膜厚160nmの第2金属反射層を成膜し、その上に、下記構造式〔化3〕で表されるスクアリリウム色素を、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール中に濃度1.5質量%で溶解した溶液を、吸光度が1.6の膜厚になるようにスピンコートして、第2色素含有記録層を形成し、その上に第2保護層、第1保護層を順次成膜した。
各実施例、比較例の第1保護層、第2保護層の材料、膜厚は表1に示すとおりである。
続いて、スピンコーターにより1−メトキシ−2−プロパノールを半径59.2mmの位置に吐出して保護層の外縁部よりも外周部の色素を除去し、第2情報層を得た。
次に、第1情報層の膜面上に、日本化薬製紫外線硬化型接着剤DVD−576Mを塗布し、第2基板の第2情報層面側を貼り合わせたのち、第1基板側から紫外線光を照射してDVD−576Mを硬化させて中間層とし、2つの情報層を有する2層追記型光記録媒体を作成した。中間層の厚さは50μmとした。
次に、それぞれの光記録媒体に対し、レーザー波長657nm、NA0.65の光学系を有する記録装置を用いて、線速度9.2m/s、線密度0.293μm/bit、記録パワー18〜20mWの条件で第2情報層に記録を行い、線速度3.8m/s、再生パワー0.7mWの条件でタイムインターバルアナライザによりジッタを測定した。
測定結果を表1に示す。表中の熱膨張係数は、予め熱膨張測定装置(TMA)によりバルクサンプルを測定した値である。
実施例1〜5の光記録媒体のジッターは9%以下であり、第1情報層、第2情報層ともに良好な記録再生が可能であった。
【0030】
【化3】

【化4】

【0031】
【表1】

【0032】
[実施例6、比較例4]
直径12cm、厚さ0.58mmで表面に溝ピッチ0.74μm、溝幅0.28μm、溝深さ150nmの案内溝を持つポリカーボネート樹脂からなる第1基板上に、上記構造式〔化3〕で表されるスクアリリウム色素と、上記構造式〔化4〕で表されるホルマザンキレート色素を7:3の割合で混ぜて、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール中に濃度1.0質量%で溶解した溶液をスピンコートし、第1色素含有記録層を形成した。この記録層の最大吸収波長は609nm、最大吸収波長での吸光度(Abs)は0.65であった。このときのグルーブでの記録層膜厚は60nmであった。
更にその上にマグネトロンスパッタ法によりAg98PdCuからなる膜厚12nmの第1金属反射層を設けて第1情報層を得た。
また、直径12cm、厚さ0.58mmで表面に溝ピッチ0.74μm、溝幅0.28μm、溝深さ35nmの案内溝を持つポリカーボネート樹脂からなる第2基板上に、Agからなる膜厚160nmの第2金属反射層を成膜し、その上に、下記構造式〔化3〕で表されるスクアリリウム色素を、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール中に濃度1.5質量%で溶解した溶液を、吸光度が1.6の膜厚になるようにスピンコートして、第2有機色素記録層を形成し、続いて、第1保護層材料をスピンコートし、3kWのメタルハライドランプで3秒間照射して硬化させた。第1保護層材料は、アクリル酸エステルモノマー混合物94重量%(エチレンオキサイド4モル付加ビスフェノールAジアクリレート25重量%、テトラエチレングリゴールジアクリレート10重量%、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート34重量%、2−ヒドロキシプロピルアクリレート5重量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート10重量%)に、界面活性剤としてパーフルオロオクチルスルホン酸リチウム1重量%、光重合開始剤としてメチルフェニルグリオキシレート5重量%を配合し、均一に混合して得た光重合性組成物である。第1保護層の熱膨張係数は、1×10E−6K−1であった。
続いて、スピンコーターにより1−メトキシ2−プロパノールを半径59.2mmの位置に吐出し保護層の外縁部よりも外周部の色素を除去し、第2情報層を得た。
次に、第1情報層の膜面上に日本化薬製紫外線硬化型接着剤DVD−576Mを塗布し、第2基板の第2情報層面側を貼り合わせたのち、第1基板側から紫外線光を照射しDVD−576Mを硬化させて中間層とし、実施例6の2層追記型光記録媒体を作成した。中間層の厚さは50μmとした。中間層の熱膨張係数を測定したところ、60×10E−6K−1であった。
別に、第1保護層を設けない点以外は、実施例6と同様にして、比較例4の2層追記型光記録媒体を作成した。
次に、それぞれの光記録媒体に対し、レーザー波長657nm、NA0.65の光学系を有する記録装置を用いて、線速度9.2m/s、線密度0.293μm/bit、記録パワー18〜20mWの条件で第2情報層に記録を行い、線速度3.8m/s、再生パワー0.7mWの条件でタイムインターバルアナライザによりジッタを測定したところ、実施例6のジッタは8.2%と良好な値であったが、比較例4のジッタは14.3%であった。
【0033】
[実施例7〜9、比較例5]
SiOターゲットとC(カーボン)ターゲットを同時にスパッタすることにより、膜厚10nmの第1保護層を形成した点以外は、実施例1と同様にして、実施例7〜9及び比較例5の2層追記型光記録媒体を作成した。
第1保護層の組成と熱膨張係数は次のとおりである。
組成 熱膨張係数
実施例7 (SiO97 0.8×10E−6K−1
実施例8 (SiO9010 1.8×10E−6K−1
実施例9 (SiO8020 2.0×10E−6K−1
比較例5 (SiO7030 2.3×10E−6K−1
上記各媒体について、実施例1と同様の条件でジッタを評価したところ、実施例7〜9ではジッタが9%以下であったが、比較例5では9%を超えてしまった。
上記の他に、第1保護層のSiOとCの組成を調整した点以外は、実施例1と同様にして、熱膨張係数が1.8〜3.0×10E−6K−1の第1保護層を有する2層追記型情報記録媒体を作成し、実施例1と同様の条件でジッターを評価したところ、熱膨張係数が2.0×10E−6K−1以下の場合に良好な特性を示した。
【0034】
[実施例10〜11、比較例6]
SiO:68重量%、Al:23重量%、LiO:5重量%、TiO:4重量%からなる組成の無機誘電体材料を用いて、スパッタリング法により膜厚10nmの第1保護層を形成した点以外は、実施例1と同様にして、実施例10の2層追記型光記録媒体を作成した。
同じく、SiO:65重量%、Al:27重量%、LiO:3重量%、ZrO:5重量%からなる組成の無機誘電体材料を用いて、スパッタリング法により膜厚10nmの第1保護層を形成した点以外は、実施例1と同様にして、実施例11の2層追記型光記録媒体を作成した。
同じく、SiO:64重量%、Al:25重量%、LiO:5重量%、ZrO:4.2重量%、P:1.8重量%からなる組成の無機誘電体材料を用いて、イオンプレーティング法により膜厚10nmの第1保護層を形成した点以外は、実施例1と同様にして、比較例6の2層追記型光記録媒体を作成した。
第1保護層の熱膨張係数は、実施例10が、0.2×10E−6K−1、実施例11が、0.14×10E−6K−1、比較例6が、0.05×10E−6K−1であった。
上記各媒体について、実施例1と同様の条件でジッタを測定したところ、実施例10〜11、比較例6の何れも9%以下と良好な値を示した。
しかし、上記各媒体について、80℃85%RH、300時間の条件下で加速試験を行い、試験前と同様の条件でジッタを測定したところ、実施例10と11では9%以下と良好な値を示したが、比較例6では9%を超えてしまい、劣化していることが分った。
上記の他に、第1保護層の無機誘電体材料組成を調整して、熱膨張係数が0.05〜2×10E−6K−1の第1保護層を有する2層追記型光記録媒体を作成し、実施例1と同様の条件でジッタを評価したところ、0.1×10E−6K−1以上の熱膨張係数を有する2層追記型光記録媒体は、加速試験後も良好な特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る片面2層光記録媒体の概略断面図。
【図2】本発明に係る片面2層光記録媒体の記録再生を行なう装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内溝を有する第1基板と第2基板の間に、第1情報層、中間層、第2情報層が順次設けられ、各情報層は、有機色素からなる記録層を有しており、第1基板からレーザー光を入射して、光強度の2値以上の変調により情報の記録・再生を行なう光記録媒体であって、第2情報層は、光入射側から、第1保護層、第2保護層、有機色素記録層、反射層が順に積層され、第1保護層の熱膨張係数が0.1×10E−6K−1〜2×10E−6K−1であることを特徴とする片面2層光記録媒体。
【請求項2】
第1保護層の膜厚が5〜100nmであることを特徴とする請求項1記載の片面2層光記録媒体。
【請求項3】
第1保護層と第2保護層の膜厚の合計が8〜103nmであることを特徴とする請求項1及び2の何れかに記載の片面2層光記録媒体。
【請求項4】
第1保護層がSiO、Al、TiOの何れかを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の片面2層光記録媒体。
【請求項5】
第2保護層がZnSを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の片面2層光記録媒体。
【請求項6】
案内溝を有する第1基板と第2基板の間に、第1情報層、中間層、第2情報層が順次設けられ、各情報層は、有機色素からなる記録層を有しており、第1基板からレーザー光を入射して、光強度の2値以上の変調により情報の記録・再生を行なう光記録媒体であって、第2情報層は、光入射側から、第1保護層、第2保護層、有機色素記録層、反射層が順に積層され、第1保護層は紫外線硬化性樹脂からなり、その熱膨張係数が中間層の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする片面2層光記録媒体。
【請求項7】
第1保護層と中間層の膜厚の合計が20〜70μmであることを特徴とする請求項6記載の片面2層光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−260667(P2006−260667A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75859(P2005−75859)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】