説明

牛床番号識別方法

【課題】 ソフトウェアの一部変更のみで対応可能にして実施の容易化及び低コスト化を図るとともに、全体の耐久性及び信頼性、更には省エネルギ性を高める。
【解決手段】 ガイドレール2に沿って乳牛C…が繋留される複数の配列した各ストール部A…へ移動して搾乳を行う搾乳機Ma…により、各ストール部A…の牛床番号N…を識別するに際し、搾乳機Ma…をガイドレール2のホームポジションPo側から移動させ、ガイドレール2に沿って所定間隔おきに付設した移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を、搾乳機Ma…に設けたドグ検出器3…により、少なくとも連続して二回検出することを条件に、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1間…の移動時間Td…と、予め設定した単位基準時間Ts…と、直前に識別した牛床番号Nr…と、を用いて演算処理し、各ストール部A…の牛床番号Nを順次識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレールに沿って移動する搾乳機により各ストール部の牛床番号を識別する際に用いて好適な牛床番号識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイドレールに沿って乳牛が繋留される複数の配列した各ストール部へ移動して搾乳を行う搾乳機により各ストール部の牛床番号を識別する牛床番号識別方法としては、特許文献1で開示される繋留牛舎の乳牛飼養管理システムにおいて用いられる牛床番号識別方法が知られている。
【0003】
同文献1に開示される牛床番号識別方法は、ストールの配列方向に沿って配した主レール部と、この主レール部に設けた分岐部から略直角方向に分岐し、相隣る二つのストールの間に配した複数の分岐レール部を備えるガイドレールに沿って、乳牛が繋留される複数の配列した各ストールへ移動することにより搾乳を行う搾乳機を備える搾乳システムにおいて、各分岐レール部の先端部に、各牛床のID(牛床番号)を設定したIDタグを取付けるとともに、搾乳機に牛床番号リーダを取付け、搾乳機が任意の分岐レール部に進入し、IDタグに牛床番号リーダが接近したなら、この牛床番号リーダによりIDタグの牛床番号を読取り、任意の分岐レール部の牛床番号を識別するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に開示される牛床番号識別方法は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、各分岐レール部毎にIDタグを取付け、かつ搾乳機に取付けた牛床番号リーダにより牛床番号(ID)を読取るRFID方式を用いるため、各分岐レール部毎に取付ける多数のIDタグ及びこのIDタグから牛床番号を読取る牛床番号リーダが搾乳機毎に必要になるとともに、牛床番号リーダからの検出信号を処理して牛床番号を得る信号処理部が必要になるなど、牛床番号を識別するための識別系の独立した回路が必要になる。したがって、部品点数の増加を招くとともに、それに伴うコストアップが無視できない。
【0007】
第二に、電波を用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によってIDを読み取る方法のため、使用部品には精密部品に属する電子部品が必要となる。したがって、湿気や塵埃等の多い牛舎内の使用環境下では、室内等の一般的な使用環境下よりも故障や早期劣化が生じやすくなり、耐久性及び信頼性に難があるとともに、相応の電力消費を伴うことから省エネルギ性の観点からも不利になる。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した牛床番号識別方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る牛床番号識別方法は、上述した課題を解決するため、ガイドレール2に沿って乳牛C…が繋留される複数の配列した各ストール部A…へ移動して搾乳を行う搾乳機Ma,Mbにより、各ストール部A…の牛床番号N…を識別するに際し、搾乳機Ma,Mb…をガイドレール2のホームポジションPo側から移動させ、ガイドレール2に沿って所定間隔おきに付設した移動制御用ドグDS,DC1,DC2…,DM1,DM2…を、搾乳機Ma…に設けたドグ検出器3…により、少なくとも連続して二回検出することを条件に、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1間…の移動時間Td…と、予め設定した単位基準時間Ts…と、直前に識別した牛床番号Nr…と、を用いてコントローラ5…により演算処理し、各ストール部A…の牛床番号N…を順次識別するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、ガイドレール2は、ストール部A…の配列方向に沿って配した主レール部2mと、この主レール部2mに設けた分岐部2j…から略直角方向に分岐し、ストール部A…を構成する両側に位置する一対のストールAx,Ay…の間に配した複数の分岐レール部2s…と、各分岐レール部2s…と主レール部2m間に設け、搾乳機Ma…が各分岐レール部2s…の分岐部2j…を前進移動により通過した後、後退移動により各分岐レール部2s…に進入可能なディバータ部2d…とを設けて構成できる。また、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…には、少なくとも、始点ドグDSと、各分岐レール部2s…の分岐部2j…付近に配した固定ドグDC1,DC2…と、主レール部2mの各分岐部2j…付近に設けることにより一回の検出のみを許容する可動ドグDM1…と、を含ませることができる。一方、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を連続して二回検出したなら、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1…間の移動時間Td…を、単位基準時間Ts…により除算し、この除算結果に、直前に識別した牛床番号Nr…を加算することにより、牛床番号N…を算出することができる。なお、搾乳機Ma…には、一又は二以上の搾乳機Ma,Mb…を含ませることができる。他方、ガイドレール2の終端側には、搾乳機Ma…の第二ドグ検出器4により検出されたなら、当該搾乳機Ma…の前進移動を停止させる終端ドグDEを設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係る牛床番号識別方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 搾乳機Ma…をガイドレール2のホームポジションPo側から移動させ、ガイドレール2に沿って所定間隔おきに付設した移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を、搾乳機Ma…に設けたドグ検出器3…により、少なくとも連続して二回検出することを条件に、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1間…の移動時間Td…と、予め設定した単位基準時間Ts…と、直前に識別した牛床番号Nr…と、を用いてコントローラ5…により演算処理し、各ストール部A…の牛床番号N…を順次識別するようにしたため、基本的には、既存の設備を利用すれば足り、追加する部品(ハードウェア要素)類は不要となる。したがって、ソフトウェアの一部変更のみで対応でき、極めて容易かつ低コストに実施できる。
【0013】
(2) 既設の移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を、牛床番号N…の識別に兼用するとともに、精密な部品に属する電子部品が不要になるため、湿気や塵埃等の多い牛舎内で使用する場合であっても故障や劣化はほとんど生じない。特に、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…に対応した搾乳機Ma…の移動制御が正常に行われる限り、基本的には、牛床番号N…の識別も正常に行われるなど、耐久性及び信頼性、更には省エネルギ性を高めることができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、ガイドレール2を、ストール部A…の配列方向に沿って配した主レール部2mと、この主レール部2mに設けた分岐部2j…から略直角方向に分岐し、ストール部A…を構成する両側に位置する一対のストールAx,Ay…の間に配した複数の分岐レール部2s…と、各分岐レール部2s…と主レール部2m間に設け、搾乳機Ma…が各分岐レール部2s…の分岐部2j…を前進移動により通過した後、後退移動により各分岐レール部2s…に進入可能なディバータ部2d…とを設けて構成すれば、ガイドレール2の最良形態と組合わせることにより、本発明に係る牛床番号識別方法を容易かつ確実に実施できる。
【0015】
(4) 好適な態様により、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…に、少なくとも、始点ドグDSと、各分岐レール部2s…の分岐部2j…付近に配した固定ドグDC1,DC2…と、主レール部2mの各分岐部2j…付近に設けることにより一回の検出のみを許容する可動ドグDM1…と、を含ませれば、特に、ガイドレール2と組合わせることにより、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…は必要最小限の数量(二つ)で済むため、制御系の簡略化を図れるとともに、更なる低コスト化に寄与できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を連続して二回検出したなら、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1…間の移動時間Td…を、単位基準時間Ts…により除算し、この除算結果に、直前に識別した牛床番号Nr…を加算することにより、牛床番号N…を算出するようにすれば、シンプルな演算処理により識別できるため、例えば、コンピュータ処理のみならず簡単なロジック回路でもよいなど、実施の容易化に寄与できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、搾乳機Ma…に、一又は二以上の搾乳機Ma,Mb…を含める場合であっても、搾乳機Ma,Mb…の数量に関係なく実施できるなど、汎用性に優れる。
【0018】
(7) 好適な態様により、ガイドレール2の終端側に、搾乳機Ma…の第二ドグ検出器4により検出されたなら、当該搾乳機Ma…の前進移動を停止させる終端ドグDEを設ければ、全ての搾乳処理を終了した搾乳機Ma…をガイドレール2の終端において確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適実施形態に係る牛床番号識別方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
【図2】同牛床番号識別方法を実施できる搾乳システムの全体のレイアウト構成を示す模式図、
【図3】同搾乳システムにおける搾乳機の正面図、
【図4】同搾乳システムにおける搾乳機のキャリア部を示す一部断面正面図、
【図5】同搾乳システムにおけるガイドレールに備えるディバータ切換機構部の原理構成図、
【図6】同搾乳システムにおけるガイドレールの移動経路の説明図、
【図7】同牛床番号識別方法を実施できる搾乳システムに備える搾乳機の制御系(電気系)のブロック系統図、
【図8】同牛床番号識別方法の原理を説明するためのデータ表、
【図9】同牛床番号識別方法の原理を説明するためのタイミングチャート、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る牛床番号識別方法を実施できる繋留牛舎Hにおける搾乳システム1の全体構成について、図2〜図5を参照して説明する。
【0022】
図2は繋留牛舎H内に設置された搾乳システム1全体のレイアウト構成を示す。繋留牛舎Hは多数のストールAx,Ay…が設けられた搾乳エリアHsとこの搾乳エリアHsに隣接したメンテナンスエリアHcを有する。搾乳エリアHsにおいて、Wは作業者が通行可能な通路であり、この通路Wの両側にそれぞれ一列(計二列)のストール群が設けられる。各ストール群には、通路Wに沿って順次配列した複数のストールAx,Ay…を有し、各ストールAx,Ay…には乳牛C…が繋留される。メンテナンスエリアHcには洗浄装置や充電装置等が設置され、このメンテナンスエリアHcが後述する搾乳機Ma,Mb,Mc,Mdを待機させるホームポジションPoとなる。なお、一対のストールAx,Ayが一つのストール部Aを構成する。
【0023】
一方、搾乳システム1には、各ストールAx,Ay…の上方に配設したガイドレール2を備える(図3参照)。ガイドレール2は、断面矩形の内部中空に形成するとともに、底面の中央位置には、図4及び図5に示すように、長手方向に沿ったスリットSrを形成する。ガイドレール2の全体(レイアウト)は、図2に示すように、ストールAx,Ay…の配列方向に沿って配し、かつ通路Wの両側に配した一対の主レール部2m,2mと、各主レール部2m,2mから直角方向に分岐し、かつストールAx,Ay…間に配した複数の分岐レール部2s…,2s…と、主レール部2m,2mの一端部に接続してホームポジションPoに至る移送レール部2iとを備えて構成する。この場合、一方の主レール部2mにおける各分岐レール部2s…は、両側に位置する一対のストールAx,Ay…に対応するように配するとともに、各分岐レール部2s…と主レール部2mは、それぞれ分岐部2j…を介して接続する。他方の主レール部2m側も当該一方の主レール部2m側に対して左右対称となる点を除いて同一に構成する。
【0024】
また、分岐部2jは、図5に示すように、湾曲レール部2rを有し、分岐レール部2sは、この湾曲レール部2rを介して主レール部2mの下流側に合流させる。さらに、分岐部2jの内部には、ディバータ部(切換レール部)2dを配し、このディバータ部2dの一端側を支軸11を介して湾曲レール部2rと主レール部2m間に回動自在に取付ける。一方、図2に示すように、主レール部2mの側面であって、分岐部2j付近には、図4及び図5に示すディバータ切換機構部13を配設する。ディバータ切換機構部13は、主レール部2mの側面に、中間位置が回動自在に取付けられたフォローレバー13fと、このフォローレバー13fの上端とディバータ部2dの一端側を連結するリンク13rを備える。この際、フォローレバー13fの上端は一対のスプリングを介在させることにより、リンク13rに対して弾性変位可能に接続するとともに、フォローレバー13fの下端には回動ローラを付設する。このフォローレバー13fの下端は後述する搾乳機Ma…に設けたカムプレート14に係合する。
【0025】
これにより、ディバータ切換機構部13は、フォローレバー13fの下端にカムプレート14が係合しないときは、フォローレバー13fは中立位置となり、リンク13rを介したディバータ部2d側への押引操作はない。したがって、ディバータ部2dは図5に示す実線位置にあり、主レール部2mの下流側と分岐レール部2s側が接続される。これに対して、カムプレート14が下流側へ移動してフォローレバー13fの下端を下流側へ変位させた際には、フォローレバー13fの上端が上流側へ変位するも、ディバータ部2dの位置は規制されているため、この変位はリンク13rとフォローレバー13f間の弾性により吸収される。また、カムプレート14が上流側へ移動してフォローレバー13fの下端を上流側へ変位させた際には、フォローレバー13fの上端が下流側へ変位し、この変位はリンク13rを介してディバータ部2dに作用するため、ディバータ部2dは図5に示す仮想線の位置に切換えられる。即ち、主レール部2mの下流側と上流側が接続される。
【0026】
このように、ガイドレール2を、ストールAx,Ay…の配列方向に沿って配した主レール部2mと、この主レール部2mに設けた分岐部2j…から略直角方向に分岐し、両側に位置する一対のストールAx,Ay…の間に配した複数の分岐レール部2s…と、各分岐レール部2s…と主レール部2m間に設け、搾乳機Ma…が各分岐レール部2s…の分岐部2j…を前進移動により通過した後、後退移動により各分岐レール部2s…に進入可能なディバータ部2d…とを設けて構成すれば、ガイドレール2の最良形態と組合わせることにより、後述する本実施形態に係る牛床番号識別方法を容易かつ確実に実施できる利点がある。
【0027】
なお、一方の主レール部2mを移送レール部2iに接続する分岐部2icも基本的には分岐部2jと同様に構成するが、内蔵するディバータ部はスプリングにより主レール部2mと移送レール部2iが接続される側に付勢されるとともに、移送レール部2iにはディバータ切換機構部13と同様に構成するディバータ切換機構部13sを設けている。
【0028】
さらに、ガイドレール2の側面には、図2に示すように、このガイドレール2に沿って所定間隔おきに移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…,DE,DR…を付設する。例示の場合、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…,DE,DR…には、主レール部2mの最初の分岐部2jの手前に配設した始点ドグ(固定ドグ)DSと、各分岐レール部2s…の分岐部2j…付近に配設した固定ドグDC1,DC2…DCnと、主レール部2mの各分岐部2j…付近に設けることにより一回の検出のみを許容する可動ドグDM1,DM2…DMnと、主レール部2mの終端側に配設した終端ドグ(固定ドグ)DEを含み、これらの各ドグDS,DC1…,DM1…,DE,DR…は、本実施形態に係る牛床番号識別方法に用いられる。なお、各分岐レール部2s…の先端付近には減速ドグ(固定ドグ)DR…を配設する。この減速ドグ(固定ドグ)DR…は、本実施形態に係る牛床番号識別方法には使用しない。
【0029】
この場合、可動ドグDM1…は、後述する搾乳機Ma…の通過により位置が変位するように構成され、搾乳機Ma…が前進移動により下流側へ通過すれば、搾乳機Ma…のドグ検出部3に備えるドグ操作部3cにより跳ね上げられ、これにより、ドグ検出部3(検出スイッチ部3s)によっては検出されない非検出位置Xrへ変位する。他方、搾乳機Ma…が後退移動(帰還移動)により上流側へ通過すれば、ドグ検出部3により検出可能な検出位置Xsに復帰する。したがって、可動ドグDM1…は搾乳時において一回の検出のみが許容される。このように、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…に、少なくとも、始点ドグDSと、各分岐レール部2s…の分岐部2j…付近に配した固定ドグDC1,DC2…と、主レール部2mの各分岐部2j…付近に設けることにより一回の検出のみを許容する可動ドグDM1…と、を含ませれば、特に、ガイドレール2と組合わせることにより、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…は必要最小限の数量(二つ)で済むため、制御系の簡略化を図れるとともに、更なる低コスト化に寄与できる。なお、このような可動ドグDM1…及びドグ検出部3に関する具体的な構成及び機能等は特許第4128113号公報に開示されている。
【0030】
また、始点ドグDSの位置は、この始点ドグDSと最初の可動ドグDM1間の距離が、可動ドグDM1と次の可動ドグDM2間の距離とほぼ同じになるように選定する。これにより、搾乳機Maの移動速度は既知のため、搾乳機Maが始点ドグDSを通過して可動ドグDM1に到達する時間Tfと、搾乳機Ma…が任意の可動ドグDM1…を通過して次の可動ドグDM2…に到達する時間Tm…と、搾乳機Ma…が任意の固定ドグDC1…を通過して次の可動部DM2…に到達する時間Tc…とは、ほぼ同一となる。即ち、Tf≒Tm≒Tcとなるため、このTf≒Tm≒Tcに基づいて、単位基準時間Tsを設定する。具体的には、単位基準時間Tsは、Ts≒Tf≒Tm≒Tcにより設定することができ、例示は、Ts=8〔秒〕である。
【0031】
他方、搾乳システム1には、ガイドレール2に沿って移動(走行)する四台の搾乳機Ma,Mb,Mc,Mdを備える。一台の搾乳機Maは、図3〜図5に示すように、ガイドレール2に吊り下げられるキャリア部21を備える。キャリア部21は前進方向を前方(正面)とした場合、前後に長いベース部22を有し、このベース部22の後部に走行モータ23を搭載するとともに、ガイドレール2の内部に収容する左右一対の前車輪(空転車輪)24,24と左右一対の後車輪25,25を備え、この後車輪25,25と走行モータ23は、減速機構を含む回転伝達機構部26により接続する。
【0032】
さらに、ベース部22の後部には、図4に示すように、上述したガイドレール2側に付設した各種の移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を検出するドグ検出部3を配設する。ドグ検出部3は、始点ドグDSと、固定ドグDC1…と、可動ドグDM1…とに当接することによりONに切換わる、例えばリミットスイッチを用いた検出スイッチ部3sと、特に、可動ドグDM1…を非検出位置Xr又は検出位置Xsに変位させるドグ操作部3cが含まれる。また、減速ドグDR…と終端ドグDEを検出する第二ドグ検出部4を配設する。この第二ドグ検出部4は、減速ドグDR…と、終端ドグDEとに当接することによりONに切換わる、例えばリミットスイッチを用いた検出スイッチ部4sを備える。
【0033】
一方、ベース部22の前寄り位置には、図4及び図6に示すように、上述したフォローレバー13fの下端に係合して当該フォローレバー13fを操作可能なカムプレート14を取付けるとともに、図3及び図4に示すように、後述する搾乳ユニットUx,Uyを左右両側にそれぞれ吊下可能なアームステー28を取付ける。
【0034】
他方、ベース部22の下面にはキャリアコントローラ5(図7)を内蔵するコントローラボックス29を取付ける。コントローラボックス29の前面には、図3に示す操作パネル30を配設する。この操作パネル30には、操作部31及び表示部32(図7)を備え、操作部31には、電源スイッチ,前進移動スイッチ,後退移動スイッチ及び停止スイッチ等が含まれる。また、キャリアコントローラ5は、図7にブロック系統図で示すように、CPU等を含むキャリアコントローラ本体33及びこのキャリアコントローラ本体33に付属するメモリ34及びタイマ部35を内蔵する。キャリアコントローラ本体33は、主に、キャリア部21の移動に係わる一連の制御(シーケンス制御)を行うとともに、本実施形態に係る牛床番号識別方法に係わる一連の処理(データ処理)を実行するコンピューティング処理機能部、即ち、搾乳機Ma…をガイドレール2のホームポジションPo側から移動させ、ガイドレール2に沿って所定間隔おきに付設した移動制御用ドグDS,DC1,DC2…,DM1,DM2…を、搾乳機Ma…に設けたドグ検出器3…により、少なくとも連続して二回検出することを条件に、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1間…の移動時間Td…と、予め設定した単位基準時間Ts…と、直前に識別した牛床番号Nr…と、を用いてキャリアコントローラ5…により演算処理し、各ストール部A…の牛床番号N…を順次識別する識別処理機能部36を備える。タイマ部35は、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1間…の移動時間Td…を求める機能を備える。したがって、メモリ34には、処理プログラム及び制御プログラム等の各種プログラムを格納したプログラムメモリ及び各種データ(データベースを含む)を書込むことができるデータメモリが含まれる。さらに、前述したドグ検出器3及び第二ドグ検出器4は、キャリアコントローラ本体33の入力ポートに接続するとともに、キャリアコントローラ本体33の出力ポートは、モータドライバ37を介して前述した走行モータ23に接続する。なお、38はバッテリであり、このバッテリ38はホームポジションPoで充電される。
【0035】
また、アームステー28の両側には、左右一対の搾乳ユニットUx,Uyを吊下げる。一方の搾乳機ユニットUxは、図3に示すように、ユニットケース41cに内蔵する自動離脱機構41、ミルククロー42,ティートカップ43…,ミルクチューブ44,真空チューブ45を備え、ユニットケース41cの底面から下方に突出したガイド筒41pからは離脱ワイヤ46が繰出される。これにより、搾乳時には、作業者がティートカップ43…を乳牛Cの乳頭に装着すれば、以後は、自動搾乳処理が行われるとともに、搾乳終了は自動で検出され、離脱ワイヤ46が巻上げられる自動離脱処理により、ティートカップ43…は図3に示す非使用位置Phまで引き戻される。
【0036】
ユニットケース41cの内部には、さらに、図7に示すユニットコントローラ51を内蔵する。ユニットコントローラ51は、CPU,メモリ等を含むユニットコントローラ本体52を備え、このユニットコントローラ本体52には、入力部及び表示部等を含む操作パネル部53を接続するとともに、搾乳時の乳量を検出する乳量計54,乳汁の品質(特性)が正常か否かを検出する乳汁センサ55,及び不図示の管理コンピュータに対してデータの送受信を行う無線通信部56を接続する。ユニットコントローラ本体52は、メモリに格納した処理プログラムに基づく一連の制御(シーケンス制御)をはじめ、演算処理,記憶処理,通信処理及び入出力処理等の各種データ処理(コンピューティング処理)を実行する。なお、一方の搾乳機ユニットUxについて説明したが、他方の搾乳機ユニットUyについても一方の搾乳機ユニットUxと同様に構成する。したがって、他方の搾乳機ユニットUyにおいて、一方の搾乳機ユニットUxと同一の部分には同一符号を付して、その構成を明確にした。
【0037】
次に、本実施形態に係る牛床番号識別方法の具体的な処理手順を含む搾乳システム1の全体の動作について、図2〜図9を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0038】
図2は、ホームポジションPoに四台の搾乳機Ma,Mb,Mc,Mdが待機している状態を示している。この状態から1番目の搾乳機Maを運転させる。作業者は、まず、搾乳機Maの電源スイッチをONにし、さらに、前進移動スイッチをONにする。これにより、搾乳機Maは前進移動(走行)を開始する(ステップS1)。この場合、走行モータ23が作動し、キャリア部21の後車輪25,25が回転することにより、搾乳機Maは移送レール部2iを高速モードで前進移動した後、分岐部2icを通って一方の主レール部2mに進入する(ステップS2)。2番目の搾乳機Mbに対しても適度の時間間隔をおいて同様に運転させる。これにより、2番目の搾乳機Mbも1番目の搾乳機Maと同様に一方の主レール部2mに進入する。
【0039】
一方、主レール部2mに進入した搾乳機Maは、最初に始点ドグDSを通過する(ステップS3)。これにより、始点ドグDSは、ドグ検出部3により検出され、キャリアコントローラ本体33における識別処理機能部36により、一回目のドグ検出としてカウントされる。即ち、カウント値「1」となり、同時に、タイマ部35により計時が開始される(ステップSX1)。搾乳機Maが、更に前進移動することにより、主レール部2mの可動ドグDM1を通過する(ステップS4,S5,S6)。これにより、可動ドグDM1は、ドグ検出部3により検出される。この際、搾乳機Maは分岐部2jをそのまま通過できるとともに、搾乳機Maの通過により可動ドグDM1は非検出位置Xrに変位する。また、識別処理機能部36により、二回目のドグ検出としてカウントされる。即ち、カウント値「2」となり、同時に、タイマ部35による計時が終了する(ステップSX2)。カウント値「2」となることを条件として搾乳機Maは前進移動を停止する(ステップS7)。この場合、カウント値「2」となることを条件として、搾乳を行うストール部Aを確定するとともに、牛床番号Nの識別を行うため、カウント値「2」になると同時にリセットする。即ち、処理上は、カウント値「1」の状態に対してカウントダウンを行い、「0」にリセットする。以上の移動経路を図6に点線矢印F1で示す。
【0040】
そして、停止した搾乳機Maは後退移動に移行する(ステップS8)。この際、カムプレート14はフォローレバー13fを通過し終わっていないため、分岐部2jのディバータ部2dはディバータ切換機構部13により、図5に示す実線位置に切換わっている。したがって、後退移動する搾乳機Maはディバータ部2dにより、牛床番号「1」の分岐レール部2sに進入する。分岐レール部2sに進入する際は、分岐レール部2sの固定ドグDC1を通過するが、後退移動時の検出は信号処理によりキャンセルされる。この後、搾乳機Maが減速ドグ(退出ドグ)DRを通過すれば、この減速ドグDRは第二ドグ検出部4により検出されるとともに、搾乳機Maは減速し、搾乳機Ma側のディストリビュータ61がミルクラインに設けたミルクタップ62に自動接続される。また、ディストリビュータ61の接続終了により搾乳機Maは停止し、その状態で待機する(ステップS9,S10)。以上の移動経路を図6に点線矢印F2で示す。
【0041】
この状態において、作業者は、両側に位置する一対のストールAx,Ayに繋留される各乳牛C,Cの乳頭に、各搾乳ユニットUx,Uyのティートカップ52…をそれぞれ装着し、自動で搾乳処理を行うことができる(ステップS11)。そして、搾乳が終了すれば、この搾乳終了は自動で検出され、自動離脱機構41により離脱ワイヤ46が巻上げられることによりティートカップ52…の自動離脱が行われる(ステップS12)。
【0042】
他方、カウント値「2」(連続二回のドグ検出)により、識別処理機能部36はタイマ部35の計時時間、即ち、移動時間Tdを取り込む。例示の場合、前述したように、概ね8〔秒〕となる。そして、識別処理機能部36は、次の演算式(100)により、牛床番号Nを求める。
牛床番号N=Nr+(Td/Ts) … (100)
【0043】
ただし、Nrは直前に識別した牛床番号、Tsは前述した単位基準時間(8〔秒〕)である。この場合、Nrは0であり、また、Tdは概ね8〔秒〕となることから、牛床番号Nは、N=0+(8/8)=1となる。よって、得られる牛床番号Nは、「1」となり、正規の牛床番号と一致する。このように、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を連続して二回検出したなら、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1…間の移動時間Td…を、単位基準時間Ts…により除算し、この除算結果に、直前に識別した牛床番号Nr…を加算することにより、牛床番号N…を算出するようにすれば、シンプルな演算処理により識別できるため、例えば、コンピュータ処理のみならず簡単なロジック回路でもよいなど、実施の容易化に寄与できる利点がある。
【0044】
また、得られた牛床番号Nは、各ユニットコントローラ51,51に転送される(ステップSX4)。各ユニットコントローラ51,51では、それぞれ乳量計54…から得られる乳量データ及び乳汁センサ55から得られる乳質データ等を含む搾乳データが収集されるため、この搾乳データに対して、転送された牛床番号N、更には、牛床番号Nと各ユニットコントローラ51,51から決定される牛番データが関連付処理(紐付け処理)される(ステップSX5)。そして、関連付処理された搾乳データは通信部56…により、不図示の管理コンピュータ(管理室)に送信される(ステップSX5)。
【0045】
他方、搾乳機Maの次に移動する搾乳機Mbも、搾乳機Maと同様に、最初に始点ドグDSを通過した後、可動ドグDM1を通過するが、この際、可動ドグDM1は搾乳機Maの通過により非検出位置Xrに変位しているため、搾乳機Mbは、可動ドグDM1を検出することなく素通りする。そして、次の可動ドグDM2を通過する際に当該可動ドグDM2を検出し、この後、搾乳機Mbは、後退移動により牛床番号「2」の分岐レール部2sに進入する。また、このときに得られる移動時間Tdは概ね16〔秒〕となるため、前述した演算式(100)により、牛床番号N=0+(16/8)=2が求められる。よって、得られる牛床番号Nは「2」となり、正規の牛床番号と一致する。
【0046】
一方、作業者は、牛床番号「1」のストール部Aにおける搾乳の終了した搾乳機Maに対しては、前進移動スイッチをONにする(ステップS1)。これにより、搾乳機Maは前進移動を開始し、減速ドグ(退出ドグ)DRの通過により退出を確認する(ステップS2)。この後、搾乳機Maは分岐レール部2sを退出方向に前進移動するとともに、分岐部2pに至る直前に固定ドグDC1を検出し、カウントアップする(ステップS3,SX1)。更に前進移動することにより主レール部2mに進入する。この際、可動ドグDM2は、搾乳機Mbの通過により非検出位置Xrに変位しているため、搾乳機Maは、可動ドグDM2を検出することなく素通りする。以上の走行経路を図6に点線矢印F3で示す。そして、搾乳機Maは、次の可動ドグDM3を検出し、カウントダウンする(ステップS4,S5,S6,SX2)。この後、搾乳機Maは、後退移動により牛床番号「3」の分岐レール部2sに進入する(ステップS7,S8)。また、この際に得られる移動時間Tdは概ね16〔秒〕となる。したがって、Nrは「1」となることから、前述した演算式(100)により、牛床番号N=1+(16/8)=3が求められる(ステップSX3)。よって、得られる牛床番号Nは「3」となり、正規の牛床番号と一致する。
【0047】
以下、搾乳機Ma,Mbは、それぞれ同様の処理が繰り返して行われる。この場合の牛床番号Nを識別する処理を図8(a)に表形式で示すとともに、図9(a)にタイミングチャートにより示す。なお、搾乳機Ma(又はMb)により最終のストール部Aの搾乳が終了した場合には、固定ドグDCnを検出した後、第二ドグ検出部4により終端ドグDEを検出するため、主レール部2mの終端位置で停止する(ステップS5,S13)。また、他方の搾乳機Mb(又はMa)は、既に停止している搾乳機Ma(又はMb)を不図示の障害物センサにより検出して停止する。このように、ガイドレール2の終端側に、搾乳機Ma…の第二ドグ検出器4により検出されたなら、当該搾乳機Ma…の前進移動を停止させる終端ドグDEを設ければ、全ての搾乳処理を終了した搾乳機Ma…をガイドレール2の終端において確実に停止させることができる。
【0048】
この後、作業者は、後退移動スイッチをONにすれば、搾乳機Ma,Mbは後退移動し、ホームポジションPoに戻される。搾乳機Ma,Mbの後退移動時には、ディバータ切換機構部13を通過する際に分岐部2jのディバータ部2dが切換わり、主レール部2mの下流側と上流側が接続されるため、分岐レール部2s…には進入しないとともに、同時に、可動ドグDM1…DMnは、最初に帰還する搾乳機Mb(又はMa)に備えるドグ操作部3cにより検出位置Xsに戻される(ステップS13)。
【0049】
以上の例示ケースは、いずれの搾乳時間も標準的に行われ、配列したストール部A…に対して、搾乳機Maと搾乳機Mbが交互に搾乳処理が行われる場合となるが、搾乳時間は乳牛Cによってバラつき、特に搾乳処理が長引くことも発生する。図8(b)及び図9(b)は、搾乳機Maが牛床番号「1」のストール部Aに進入した際に、搾乳処理が長引いた場合の例であり、この場合、各ストール部A…対しては、図8(b)に示すように、牛床番号「1」のストール部Aに搾乳機Maが、牛床番号「2」のストール部Aに搾乳機Mbが、牛床番号「3」のストール部Aに搾乳機Mbが、牛床番号「4」のストール部Aに搾乳機Maが、牛床番号「5」のストール部Aに搾乳機Mbが、牛床番号「6」のストール部Aに搾乳機Maが、それぞれ進入する。
【0050】
即ち、この場合、搾乳機Maが最初に牛床番号「1」のストール部Aに進入し、次に搾乳機Mbが牛床番号「2」のストール部Aに進入するが、搾乳機Maよりも搾乳機Mbの方が先に搾乳処理を終了することになるため、搾乳機Mbは牛床番号「2」のストール部Aを退出した後、隣の牛床番号「3」のストール部Aに進入するとともに、他方、牛床番号「1」のストール部Aを退出した搾乳機Maは、牛床番号「2」,「3」の二つのストール部A…を飛び越えて、牛床番号「4」のストール部Aに進入することになる。
【0051】
したがって、この例の場合、搾乳機Mbが牛床番号「2」のストール部Aを退出した後、牛床番号「3」のストール部Aに進入するため、このときに得られる移動時間Tdは概ね8〔秒〕となり、また、Nrは「2」となる。したがって、前述した演算式(100)により、牛床番号N=2+(8/8)=3が求められる。よって、得られる牛床番号Nは「3」となり、正規の牛床番号と一致する。一方、搾乳機Maが牛床番号「1」のストール部Aを退出した後、牛床番号「4」のストール部Aに進入するため、このときに得られる移動時間Tdは概ね24〔秒〕となり、また、Nrは「1」となる。したがって、前述した演算式(100)により、牛床番号N=1+(24/8)=4が求められる。よって、得られる牛床番号Nは「4」となり、正規の牛床番号と一致する。
【0052】
以上、一方の主レール部2mに対応する一方のストール群における二台の搾乳機Ma,Mbによる搾乳処理について説明したが、他の搾乳機Mc,Mdにおいても、同様の搾乳処理が行われる。この場合、搾乳機Mc,Mdは、ホームポジションPoから移送レール部2iを走行した後、他方の主レール部2mに進入し、一方の搾乳機Mcは前述した搾乳機Maと同様に動作し、他方の搾乳機Mdは前述した搾乳機Mbと同様に動作する。また、一つの主レール部2mにおいて、二台の搾乳機Ma,Mb(又はMa,Mb)を用いて搾乳する場合を示したが、一台の搾乳機Maであってもよいし、三台以上の搾乳機Ma…であってもよい。このように、搾乳機Ma,Mb…の数量に関係なく実施できるなど、汎用性に優れる。
【0053】
よって、このような本実施形態に係る牛床番号識別方法によれば、搾乳機Ma…をガイドレール2のホームポジションPo側から移動させ、ガイドレール2に沿って所定間隔おきに付設した移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を、搾乳機Ma…に設けたドグ検出器3…により、少なくとも連続して二回検出することを条件に、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1間…の移動時間Td…と、予め設定した単位基準時間Ts…と、直前に識別した牛床番号Nr…と、を用いてコンピュータ機能を備えるコントローラ5…により演算処理し、各ストール部A…の牛床番号N…を順次識別するようにしたため、基本的には、既存の設備を利用すれば足り、追加する部品(ハードウェア要素)類は不要となる。したがって、ソフトウェアの一部変更のみで対応でき、極めて容易かつ低コストに実施できる。また、既設の移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を、牛床番号N…の識別に兼用するとともに、精密な部品に属する電子部品が不要になるため、湿気や塵埃等の多い牛舎内で使用する場合であっても故障や劣化はほとんど生じない。特に、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…に対応した搾乳機Ma…の移動制御が正常に行われる限り、基本的には、牛床番号N…の識別も正常に行われるなど、耐久性及び信頼性、更には省エネルギ性を高めることができる。
【0054】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値,手法等において本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。
【0055】
例えば、ストールAx,Ay…の配列方向に沿って配した主レール部2mと、この主レール部2mに設けた分岐部2j…から略直角方向に分岐し、両側に位置する一対のストールAxとAy…の間に配した複数の分岐レール部2s…と、各分岐レール部2s…と主レール部2m間に設け、搾乳機Ma…が各分岐レール部2s…の分岐部2j…を前進により通過した後、後退により各分岐レール部2s…に進入可能な複数のディバータ部2d…とを設けて構成したガイドレール2を例示したが、ガイドレール2は、例示のような形態のガイドレール2に限定されるものではなく、他の任意の形態によるガイドレール2であってもよい。また、本発明は牛床番号Nを識別するに当たり、搾乳機Ma…の移動制御に用いる既設の移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を兼用することが重要な要旨となる。したがって、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…として、少なくとも、始点ドグDSと、各分岐レール部2s…の分岐部2j…付近に配した固定ドグDC1,DC2…と、主レール部2mの各分岐部2j…付近に設けることにより一回の検出のみを許容する可動ドグDM1…と、を含ませる場合を例示したが、例えば、固定ドグDC1,DC2…のみにより構成するなど、移動制御用ドグの形態には例示の形態に限定されるものではない。さらに、第二ドグ検出部4を設けることにより、減速ドグDR…及び終端ドグDEを検出する場合を示したが、一カ所に複数本のドグを並べて配し、特定の情報を持たせることにより、ドグ検出部3により検出するようにしてもよい。
【0056】
他方、ガイドレール2の終端側に終端ドグDEを設けた場合を例示したが、必ずしも設けることを要せず、例えば、終端板等を設け、不図示の障害物センサの検出により停止するようにしてもよい。また、搾乳機Ma…の移動時、タイマ部35で計時を行っている際にトラブル等により搾乳機Ma…が停止したり後退させる場合には、計時中のタイマ部35を停止したり逆方向に減算するなどの必要な補正処理を行ってもよい。さらに、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…を連続して二回検出したなら、検出した二回の移動制御用ドグDS,DC1…間の移動時間Td…を、単位基準時間Ts…により除算し、この除算結果に、直前に識別した牛床番号Nr…を加算することにより、牛床番号N…を算出する例を挙げたが、移動制御用ドグDS,DC1…,DM1…の位置や数量等に対応した各種演算方法を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る牛床番号識別方法は、ガイドレールに沿って乳牛が繋留される各ストール部へ搾乳機を移動させて搾乳を行う各種搾乳システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
2:ガイドレール,2m…:主レール部,2s…:分岐レール部,2j…:分岐部,2d…:ディバータ部,3…:ドグ検出器,4:第二ドグ検出器,5:コントローラ,C…:乳牛,A…:ストール部,Ax:ストール,Ay:ストール,Ma:搾乳機,Mb…:搾乳機,Po:ホームポジション,DS:移動制御用ドグ(始点ドグ),DC1,DC2…:移動制御用ドグ(固定ドグ),DM1,DM2…:移動制御用ドグ(可動ドグ),DE:終端ドグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールに沿って乳牛が繋留される複数の配列した各ストール部へ移動して搾乳を行う搾乳機により、前記各ストール部の牛床番号を識別する牛床番号識別方法において、前記搾乳機を前記ガイドレールのホームポジション側から移動させ、前記ガイドレールに沿って所定間隔おきに付設した移動制御用ドグを、前記搾乳機に設けたドグ検出器により、少なくとも連続して二回検出することを条件に、検出した二回の移動制御用ドグ間の移動時間と、予め設定した単位基準時間と、直前に識別した牛床番号と、を用いてコントローラにより演算処理し、各ストール部の牛床番号を順次識別することを特徴とする牛床番号識別方法。
【請求項2】
前記ガイドレールは、ストール部の配列方向に沿って配した主レール部と、この主レール部に設けた分岐部から略直角方向に分岐し、前記ストール部を構成する両側に位置する一対のストールの間に配した複数の分岐レール部と、各分岐レール部と主レール部間に設け、前記搾乳機が前記各分岐レール部の分岐部を前進移動により通過した後、後退移動により各分岐レール部に進入可能なディバータ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の牛床番号識別方法。
【請求項3】
前記移動制御用ドグには、少なくとも、始点ドグと、前記各分岐レール部の分岐部付近に配した固定ドグと、前記主レール部の各分岐部付近に設けることにより一回の検出のみを許容する可動ドグと、を含むことを特徴とする請求項2記載の牛床番号識別方法。
【請求項4】
前記移動制御用ドグを連続して二回検出したなら、検出した二回の移動制御用ドグ間の移動時間を、前記単位基準時間により除算し、この除算結果に、直前に識別した牛床番号を加算することにより、牛床番号を算出することを特徴とする請求項3記載の牛床番号識別方法。
【請求項5】
前記搾乳機は、一又は二以上の搾乳機を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の牛床番号識別方法。
【請求項6】
前記ガイドレールの終端側には、前記搾乳機の第二ドグ検出器により検出されたなら、当該搾乳機の前進移動を停止させる終端ドグを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の牛床番号識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−22005(P2013−22005A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163069(P2011−163069)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】