説明

物体支持装置及びその物体支持装置を用いた物体運搬方法

【課題】簡易な構成及び手法によって作業負担及び作業コストを抑制した上で、物体を運搬者が単独で運搬装置に積載することのできる物体支持装置及びこの物体支持装置を用いて物体を安定して運搬することのできる物体運搬方法を提供する。
【解決手段】物体80が設置された設置面と物体80との間に介装されて物体80を下方から支持する物体支持装置10が、内部に流体が注入される複数の流体収容体を含み、流体収容体のうち少なくとも1基が流体の注入により所望の高さを有する立体形状を呈して物体を支持する物体支持流体収容体12−1(12−2)を有する流体収容部12、流体収容部12の複数の流体収容体を相互に連通させる連通管20、連通管を開閉する開閉機構22、を備え、流体収容体に注入される流体は物体支持流体収容体12−1(12−2)を充満させる量となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体支持装置及びその物体支持装置を用いた物体運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫や家具等の物体が、これらの物体の製造メーカの倉庫や工場内等で、製品を出荷するために運搬される場合がある。例えば、製造メーカから卸売業者に物体である製品を納入するために、運搬業者に引き渡す必要がある。その際、製品が保管されている倉庫から、運搬業者の車両まで製品が運搬される。そこで、物体を運搬するための運搬装置が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、平板状のフレームの底部に車輪が取り付けられ、このフレームの上部に袋状の流体圧バッグが設けられた運搬装置が開示されている。この特許文献1の運搬装置によると、コンプレッサ等によって流体圧バッグの内部に圧縮空気が加圧されると、流体圧バッグがフレームに対して上方に突出するように膨張して、物体を下方からその底部において支持する。
【0004】
この特許文献1の運搬装置を上記の物体、例えば冷蔵庫や家具等を運搬するために適用する場合は、冷蔵庫や家具等を運搬装置の流体圧バッグの上に載置して、コンプレッサ等によって流体圧バッグの内部に圧縮空気を加圧して流体圧バッグを膨張させて、冷蔵庫や家具等を支持する。あるいは、予め流体圧バッグの内部に圧縮空気を加圧して膨張させておき、その上に冷蔵庫や家具等を載置する。この状態で、運搬装置によって冷蔵庫や家具等を所望の場所まで運搬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−291913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された運搬装置によると、作業者が流体圧バッグの上に物体を積載する必要がある。そのため、上記のような冷蔵庫や家具等の比較的大きくかつ重量のある物体を運搬する場合は、複数の作業者が協働してこれらの物体を流体圧バッグの上に積載しなければならない。従って、物体の運搬作業の際の作業員の増加によって作業効率の悪化及び作業コストが増大することが懸念される。
【0007】
また、物体を流体圧バッグの上に積載する際の作業負担を軽減すべく、物体を個々運搬する都度、圧縮空気の加圧及び減圧を行うこととすると、この加圧及び減圧の作業負担が増大し、更に作業効率が悪化することが懸念される。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成及び手法によって作業負担及び作業コストを抑制した上で、物体を運搬者が単独で運搬装置に積載することのできる物体支持装置及びこの物体支持装置を用いて物体を安定して運搬することのできる物体運搬方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による物体支持装置は、物体が設置される設置面と前記物体との間に介装されて該物体を下方から支持する物体支持装置において、非伸縮性でかつ可撓性を有する部材で形成されるとともに内部に流体が注入される複数の流体収容体を含み、該流体収容体のうち少なくとも1基が前記流体の注入により所望の高さを有する立体形状を呈して前記物体を支持する物体支持流体収容体を有する流体収容部と、該流体収容部の前記複数の流体収容体を相互に連通させる連通管と、該連通管を開閉する開閉機構と、を備え、前記流体収容部に注入される前記流体が少なくとも前記物体支持流体収容体を充満させて所望の高さを有する立体形状を呈する量であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、複数の流体収容体のうち物体支持流体収容体に流体を注入して、物体支持流体収容体を物体の支持位置に合わせた所望の高さを有する立体形状に展開させることができる。そして、物体支持流体収容体を含む複数の流体収容体が連通管によって相互に連通されており、物体支持流体収容体とそれ以外の流体収容体との間で流体を相互に移動させることができることから、物体を支持する都度ごとに流体を外部から注入する必要がなくなり、物体を支持する際に、物体支持流体収容体にそれ以外の流体収容体から流体を移動させて注入すればよい。従って、物体を支持する際の作業を簡略化することができるので、物体の支持を作業者が単独で行うことができ、作業負担を削減して作業効率を向上させることができる。
【0011】
また、複数の流体収容体との間を、連通管を介して連結する簡易な構成によって、流体の移動を実現することができるので、部材点数を削減して製造コストを削減するとともに、故障の可能性を低減させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明による物体支持装置は、請求項1に記載の物体支持装置において、前記流体収容部は、前記流体の注入によって略同形状となる2基の前記物体支持流体収容体を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、複数の流体収容体が、流体が注入されると所望の高さを有する立体形状を呈して物体を支持する略同一形状の2個の物体支持流体収容体によって構成されているので、2個の物体支持流体収容体の間で相互に流体を移動させることで、物体を支持する際の状況に応じて、2個のうちいずれかの物体支持流体収容体を適宜用いて物体を支持することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明による物体支持装置は、請求項1または2に記載の物体支持装置において、前記流体収容部の物体支持流体収容体は、該物体支持流体収容部の上面に前記物体を支持する板状部を備え、該板状部に回転自在に支持されるローラが形成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、物体支持流体収容体によって物体を支持した状態において、物体に当接するローラを、物体を介して回転させることで、物体を変位させることができる。従って、物体の支持位置を、ローラを支点として容易に変えることができるので、状況に応じた物体の支持作業を行うことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明による物体支持装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体支持装置において、前記流体を前記物体支持流体収容体に注入可能な容積が前記流体を前記複数の流体収容体に注入可能な容積に対して小に形成されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、支持流体収容体が他の流体収容体あるいは他の物体支持流体収容体に対して気体の注入を許容する容積が減少されて形成されているので、他の流体収容体あるいは他の物体支持流体収容体から物体支持流体収容体へ流体を注入させると、物体支持流体収容体に流体が迅速に注入されて、物体支持流体収容体が立体形状を呈して物体を支持することが可能となる。従って、作業効率の向上を図ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明による物体支持装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の物体支持装置において、前記物体支持流体収容体は、側壁を有して略方形に形成され、前記側壁が前記物体の下方に近接する方向に伸張する蛇腹状に形成されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、物体支持流体収容体の側壁が蛇腹状に形成されているので、物体支持流体収容体に流体が注入されると、物体支持流体収容体の展開が下方から上方に規制された上で物体支持流体収容体が立体形状を呈して物体を支持することが可能となる。従って、物体を下方から支持する方向に物体支持流体収容体を効率的に展開させることができるので、作業効率を更に向上させることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明による物体運搬方法は、請求項3〜5に記載の物体支持装置を用いた物体運搬方法であって、前記物体を一方側へ変位させて前記設置面に対して傾斜させて前記物体の他方側の底部と前記設置面との間に隙間を形成し、前記流体が未充満状態の前記物体支持流体収容体を前記隙間に挿入する物体支持流体収容体挿入工程と、前記開閉機構を開弁する開弁工程と、前記物体支持流体収容体以外の流体収容体を押圧収縮させて前記隙間に挿入された前記物体支持流体収容体に前記流体を充満させて立体形状とし、前記隙間に挿入された前記物体支持流体収容体の上部を前記物体の底部に当接させて前記物体を上方に押し上げる物体支持流体収容体展開工程と、該物体支持流体収容体展開工程の後に前記開閉機構を閉弁する閉弁工程と、前記設地面から離間した前記物体の他方側の底部に車輪を取り付け、前記ローラを用いて前記物体の重心を移動させて前記車輪を前記設置面に接地させ、前記物体の一方側の底部に車輪を取り付ける車輪取付工程と、前記開閉機構を開弁して前記支持流体収容体を収縮させて前記物体を前記車輪によって支持させるとともに前記物体を所望の箇所まで運搬する物体運搬工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、物体の他方側と物体の設置面との間の隙間に物体支持流体収容体を挿入した上で物体支持流体収容体に流体を注入して、物体支持流体収容体を物体の支持位置に合わせた所望の高さを有する立体形状に展開させることで物体を支持することができ、物体を支持した状態で物体の他方側に車輪を取り付けることができる。そして、物体支持流体収容体によって物体を支持した状態において、物体をローラに当接させて物体を容易に変位させることができるので、物体の一方側と物体の設置面との間に隙間を形成して物体の一方側に車輪を取り付けることができる。従って、物体支持装置を用いて作業者が単独で物体に車輪を取り付けることができ、所望の箇所まで物体を運搬することができるので、作業負担及び作業コストを抑制した上で物体を運搬することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、複数の流体収容体のうち物体支持流体収容体に流体を注入して、物体支持流体収容体を物体の支持位置に合わせた所望の高さを有する立体形状に展開させることができる。そして、物体支持流体収容体を含む複数の流体収容体が連通管によって相互に連通されており、物体支持流体収容体とそれ以外の流体収容体との間で流体を相互に移動させることができることから、物体を支持する都度ごとに流体を外部から注入する必要がなくなり、物体を支持する際に、物体支持流体収容体にそれ以外の流体収容体から流体を移動させて注入すればよい。従って、物体を支持する際の作業を簡略化することができるので、物体の支持を作業者が単独で行うことができ、作業負担を削減して作業効率を向上させることができる。
【0023】
従って、かかる物体支持装置を用いることによって、作業者が単独で物体に車輪を取り付けることができ、かつ車輪が取り付けられた物体を作業者が単独で所望の箇所まで安定した状態で運搬することができるので、物体の運搬作業の負担を削減することができ、作業効率を向上させることができる。
【0024】
また、上記物体支持装置によれば、複数の流体収容体との間を、連通管を介して連結する簡易な構成によって、流体の移動を実現することができるので、部材点数を削減して製造コストを削減するとともに、故障の可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る物体支持装置及び車輪の概略を説明する図である。
【図2】本実施の形態に係る物体支持装置の側面視図である。
【図3】本実施の形態に係る物体支持装置における板状部の概略を説明する図である。
【図4】物体運搬方法を用いて変成器を運搬する場合の手順を説明する図である。
【図5】同じく、物体運搬方法を用いて変成器を運搬する場合の手順を説明する図である。
【図6】同じく、物体運搬方法を用いて変成器を運搬する場合の手順を説明する図である。
【図7】同じく、物体運搬方法を用いて変成器を運搬する場合の手順を説明する図である。
【図8】本発明の第2実施の形態に係る物体支持装置の側面視図である。
【図9】本発明の第3実施の形態に係る物体支持装置の概略を説明する図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る物体支持装置の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施の形態)
次に、本発明の第1実施の形態について、図1〜図7に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る物体支持装置によって支持され、かつ本実施の形態に係る物体運搬方法によって運搬される物体が、送配電設備に設置される計器用変成器である場合を例として説明する。この計器用変成器は、通常は電力供給事業者の所有する倉庫に保管されているが、これを送配電設備に取り付ける際には電気工事事業者に引き渡す必要がある。その際、倉庫から、変成器を引き取りに来た電気工事事業者の車両まで、本実施の形態に係る物体支持装置及びこれを用いた物体運搬方法によって、計器用変成器が運搬される。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る物体支持装置10及び車輪30の概略を説明する図であり、図2は物体支持装置10の側面視図である。まず、前提として、本実施の形態で適用される計器用変成器の概略について、図1に基づいて説明する。
【0028】
図示のように、計器用変成器(以下、単に「変成器」という)80は、本体部82及び本体部82の底部82aの各側縁から下方に突出して本体部82から連続して延在するフランジ部84を備える。かかる構成を有する変成器80は、送配電設備等に取り付けられる前は電力供給事業者の倉庫等に保管されている。
【0029】
次に、物体支持装置10について説明する。
【0030】
図示のように、物体支持装置10は、流体収容部12、連通管20及び連通管20に形成された開閉機構となる制御部22を主要構成として備える。流体収容部12は、物体支持流体第1収容体12−1及び物体支持流体第2収容体12−2を備え、これら物体支持流体第1収容体12−1及び物体支持流体第2収容体12−2が、複数の流体収容体を構成する。
【0031】
そして、連通管20を介して物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2とが密封状態で結合される。この流体収容部12には、物体支持流体第2収容体12−2が押圧圧縮されて変形すると物体支持流体第1収容体12−1が所望の高さを有する立体形状を呈するように、すなわち、少なくとも物体支持流体第1収容体12−1内を充満させる量の流体、本実施の形態では気体が注入される。なお、物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2とは同様の構成を有するので、物体支持流体第1収容体12−1と同様の要素には同一の符号を付して、物体支持流体第2収容体12−2の説明を省略する。
【0032】
物体支持流体第1収容体12−1は、収容部16及び収容部16の上面に結合された平板状で矩形に形成された板状部14を備える。収容部16は、長尺方向に対向する第1側壁16a及び16b、短尺方向に対向する第2側壁16c及び16dを有する有底の断面視略矩形の袋状に形成される。この収容部16は、例えば、非伸縮性でかつ可撓性を有するポリエステル織布製のターポリンで形成される。そして、収容部16の内部に気体を導入する流体導入部16eが形成され、この流体導入部16eからエアコンプレッサ等によって気体が注入されると、収容部16が所望の高さを有する立体形状を呈する。
【0033】
図3は、板状部14の概略を説明する図である。図示のように、板状部14には、その上面の略中央部分において長尺方向に沿って断面半円弧状の円弧面が凹設された凹部14aが形成され、この凹部14aの円弧面に沿って複数の球体の半球分が回転自在に嵌め込まれて形成されたベアリング14bが凹部14aの長尺方向に亘って複数、本実施の形態では2個が形成される。そして、円柱状のローラ14cが、凹部14aに回転自在に嵌合される。
【0034】
再び図1及び図2で示すように、かかる構成を有する物体支持流体第1収容体12−1の第2側壁16cと物体支持流体第2収容体12−2の第2側壁16dとが、互いに対向して配置される。そして、中空円筒状に形成された連通管20の一端が第2側壁16cに貫通してこの第2側壁16cに結合され、他端が第2側壁16dに貫通してこの第2側壁16dに結合され、物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2とが連結され、この物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2とが互いに連通するように形成される。
【0035】
連通管20には、制御部22が形成されている。制御部22は、図示しない弁機構を収容する機構部22a及び弁機構を開弁及び閉弁する簡易なネジ機構で構成された制御バルブ22bを有して形成される。この制御バルブ22bを締結方向に回すと物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2との間の気体の移動が規制され、弛緩方向に回すと物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2との間の気体の移動が許容される。
【0036】
次に、車輪30の構成について説明する。図1で示すように、車輪30は、取付部32、支持アーム34、車輪36を主要構成として備える。取付部32は、一対の壁部32aが所定間隔をおいて形成された溝部32bを介して互いに対向する断面略コ字状であって、この一対の壁部32aが対向しつつ屈曲して平面略L字状に形成される。取付部32の溝部32bを形成する壁部32aの内壁には、磁性体が埋設されている。
【0037】
この取付部32の下部に、車輪36を車輪36の軸方向で挟持して支持する断面視略コ字状に形成された一対の支持アーム34が、取付部32に対して回転自在に軸支される。そして、車輪36が、車輪支持部34に回転自在に軸支される。
【0038】
次に、物体支持装置10及び車輪30を用いた変成器80の運搬方法について、図4〜7に基づいて説明する。
【0039】
図4〜7は、変成器80の運搬手順を説明する図である。まず、物体支持装置10の制御部22の制御バルブ22bを締結方向に回して弁機構を閉弁した状態において、物体支持流体第1収容体12−2に、エアコンプレッサ等によって気体を注入しておく。
【0040】
次に、図4(a)で示す、設置面となる床面F1に載置された変成器80を、図4(b)で示すように、その上部を手で押して、矢線Rで示す変成器80の一方側に変位させる。このとき、矢線Lで示す変成器80の他方側のフランジ部84と床面F1との間に隙間が形成される(隙間形成工程)。この隙間に、図4(c)で示すように、気体が注入されていない収縮した状態の物体支持流体第1収容体12−1を挿入する(物体支持流体収容体挿入工程)。そして、制御部22の制御バルブ22bを弛緩方向に回して弁機構を開弁した状態にして(開弁工程)、物体支持流体第2収容体12−2に充満されている気体を物体支持流体第1収容体12−1に移動させる。
【0041】
このとき、作業者が物体支持流体第2収容体12−2の上に乗ったり、足で踏んだりして、物体支持流体第2収容体12−2を押圧収縮させることで、物体支持流体第2収容体12−2に充満されている気体を物体支持流体第1収容体12−1に効率的に移動させることができる。物体支持流体第1収容体12−1に気体が注入されると、収縮した状態の物体支持流体第1収容体12−1の展開が開始され、図4(d)で示すように、物体支持流体第1収容体12−1の板状部14におけるローラ14cが変成器80の底部82aに当接して、変成器80が物体支持流体第1収容体12−1によって押し上げられる(物体支持流体収容展開工程)。
【0042】
その後、物体支持装置10の制御部22の制御バルブ22bを締結方向に回して弁機構を閉弁する(閉弁工程)ことにより、物体支持流体第1収容体12−1が、所望の高さである変成器80の底部82aに当接する高さを有する立体形状を呈する。そして、作業者が変成器80から手を離すと、変成器80を支持する荷重が作業者から物体支持流体第1収容体12−1に移行して(荷重移行工程)、変成器80が物体支持流体第1収容体12−1によって支持される。
【0043】
その後、図5(a)で示すように、変成器80の他方側Lにおける前後方向及び幅方向のフランジ部84によって形成される角部に、車輪30を取り付ける。この車輪30は、取付部32に形成された溝部32bをフランジ部84に差し込んで取り付ける。溝部32bを形成する壁部32aの内壁には磁性体が埋設されているので、鉄製のフランジ部84に容易に吸着して、車輪30のフランジ部84への保持力が高められる。
【0044】
次に、図5(b)で示すように、物体支持流体第1収容体12−1のローラ14aを支点として、変成器80の他方側Lの上部を押し下げて変成器80を他方側L方向に変位させ、他方側Lに取り付けられた車輪30を床面F1に接地させる。このとき、変成器80はその他方側L側のフランジ部84に取り付けられた車輪30と物体支持流体第1収容体12−1とによって支持されおり物体支持流体第1収容体12−1が変成器80を他方側L側へ若干傾斜させる所望の高さを有して変成器80の底部82aを支持していることから、変成器80が他方側L側に若干傾斜しつつ変成器80の一方側Rのフランジ部84が床面Fから離間して、床面Fとの間に隙間が形成される。そして、図5(c)で示すように、変成器70の一方側Rにおける前後方向及び幅方向のフランジ部84によって形成される角部に、車輪30を取り付ける(車輪取付工程)。
【0045】
車輪30をフランジ部84に取り付けた後、図6(a)で示すように、制御部22の制御バルブ22bを弛緩方向に回して、物体支持流体第1収容体12−1に充満されている気体を物体支持流体第2収容体12−2に移動させて、物体支持流体第1収容体12−1を収縮させる。そして、変成器80の底部82aと床面F1との間の隙間から、物体支持流体第1収容体12−1を引き抜く。物体支持流体第1収容体12−1が引き抜かれると、変成器70が車輪30によって支持されて運搬可能となるので、作業者が変成器80を所望の箇所まで運搬する(物体運搬工程)。
【0046】
変成器80を所望の箇所まで運搬した後、図6(b)で示すように、収縮した状態の物体支持流体第1収容体12−1を変成器80の底部82aと設置面となる地面F2との間の隙間に挿入して、上記と同様に、作業者が物体支持流体第2収容体12−2の上に乗って、物体支持流体第2収容体12−2内の気体を物体8支持流体第1収容体12−1に移動させる。物体支持流体第1収容体12−1の板状部14におけるローラ14cを変成器80の底部82aに当接させて変成器80を押し上げて、変成器80を他方側L側へ若干傾斜させる。
【0047】
この状態で、図6(c)で示すように、一方側Rに取り付けられた車輪30を地面F2から離間させて、一方側Rのフランジ部84から車輪30を取り外す。これにより、変成器80は他方側Lに取り付けられた車輪30と支持流体第1収容体12−1によって支持される。
【0048】
しかる後、図7(a)で示すように、変成器80を一方側Rに変位させてフランジ部84を地面F2に接地させ、他方側Lに取り付けられた車輪30を地面F2から離間させた上で、車輪30をフランジ部84から取り外す。これにより、変成器80が他方側Lの底部82aにおいて物体支持流体第1収容体12−1によって支持される
【0049】
その後、図7(b)で示すように、変成器80が他方側Lの底部82aにおいて物体支持流体第1収容体12−1によって支持された状態において、変成器80の上部を一方側R側に押して物体支持流体第1収容体12−1と変成器80とを離間させて、物体支持流体第1収容体12−1を地面F2と変成器80との間から外す。物体支持流体第1収容体12−1を外した後、図7(c)で示すように、変成器80の他方側Lのフランジ部84を地面F2に接地させて変成器80の運搬が終了する。このとき、物体支持装置10の流体収容部12には流体が充満されているので、流体収容部12にエアコンプレッサ等によって再度、気体を注入することなく、次の変成器80の運搬のために即座に用いることができる。
【0050】
上記構成を有する物体支持装置10によると、変成器80の他方側Lあるいは一方側Rを持ち上げて変成器80と設置面との間に隙間を形成し、この隙間に物体支持装置10の物体支持流体第1収容体12−1を挿入することで、物体支持流体第1収容体12−1によって変成器80を支持させる簡易な手法によって、変成器80に車輪30を取り付けることができる。従って、運搬者が単独で、車輪30を変成器80に確実に取り付けることができる。
【0051】
また、最初に流体収容部12に気体を注入しておくことにより、変成器80を運搬する都度、気体を注入する必要がなく、物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2との間で気体を適宜移動させることによって、物体支持流体第1収容体12−1で変成器80を支持することができる。新たに変成器80を運搬する際に、繰り返しの使用や経時変化によって気体が流体収容部12から抜け出ている場合に限り、再度注入すればよい。従って、変成器80を運搬する際の変成器80の支持作業を簡略化することによって、作業負担を削減して作業効率を向上させることができる。
【0052】
物体支持流体第1収容体12−1によって変成器80が支持された状態において他方側Lに車輪30を取り付けた後に、一方側Rに車輪40を取り付ける場合は、物体支持流体第1収容体12−1に形成されたローラ14cを支点として変成器80を変位させることができる。従って、変成器80を変位させる際に過大な力を要することなく、車輪30を取り付けることができる。
【0053】
物体支持流体第1収容体12−1と物体支持流体第2収容体12−2とを、制御バルブ22bが設けられた連通管20を介して連結する簡易な構成によって気体の移動を実現することができるので、部材点数を削減して製造コストを削減するとともに、故障の可能性を低減させることができる。
【0054】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態について、図8に基づいて説明する。なお、図8において、図1〜図7と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図8は、第2実施の形態に係る物体支持装置40の側面視図である。図示のように、物体支持装置40は、流体収容部42を備える。流体収容部42は、物体支持流体第1収容体42−1及び物体支持流体第2収容体42−2を備える。物体支持流体第1収容体42−1は、物体支持流体第2収容体42−2に対して気体の注入を許容する容積が減少されて形成されている。
【0056】
この物体支持流体第1収容体42−1は、収容部46A及び収容部46Aの上面に結合された平板状で矩形に形成された板状部44Aを備える。物体支持流体第1収容体42−1の収容部46Aが、物体支持流体第2収容体42−2の収容部46Bに対して気体の注入を許容する容積が減少されて形成されていることから、板状部44Aも収容部46Aの大きさに合わせて形成されている。従って、板状部44Aに凹設された凹部、及び凹部に回転自在に嵌合されるローラ44Acも、板状部44Aに合わせた大きさに形成されている。
【0057】
物体支持流体第2収容体42−2の板状部44Bには、第1実施の形態における板状部14と異なり、その略中央部分に凹部が凹設されておらず、ローラも嵌合されていない。従って、物体支持流体第1収容体42−1に気体を移動させる際に、運搬者が物体支持流体第2収容体42−2の上に容易に乗ることができる。
【0058】
かかる構成を有する物体支持装置40によれば、物体支持流体第1収容体42−1が物体支持流体第2収容体42−2に対して気体の注入を許容する容積が減少されて形成されているので、物体支持流体第2収容体42−2から物体支持流体第1収容体42−1へ気体を注入させると、物体支持流体第1収容体42−1に気体が迅速に注入されて、物体支持流体第1収容体42−1が立体形状を呈して変成器80を支持することが可能となる。従って、第1実施の形態の物体支持装置10に対して、物体支持流体第1収容体42−1を迅速に展開させることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0059】
(第3実施の形態)
次に、本発明の第3実施の形態について、図9に基づいて説明する。なお、図9において、図1〜図8と同様の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図9(a)及び(b)は、第3実施の形態に係る物体支持装置50の概略を説明する図である。図示のように、物体支持装置50は、流体収容部52を備える。流体収容部52は、物体支持流体第1収容体52−1及び物体支持流体第2収容体52−2を備える。
【0061】
物体支持流体第1収容体52−1の収容部56は、長尺方向に対向する第1側壁56a及び56b、短尺方向に対向する第2側壁56c及び56dを有する。ターポリンで形成されたこの収容部56は、第1側壁56aから第2側壁56cに連続するとともに第1側壁56cに連続して更に第2側壁56dに亘る周回方向において収容部56の上下方向に折り畳まれた襞部58が形成され、この襞部58が収容部56の上下方向において多段的に複数形成されて、収容部56が蛇腹状に形成される。
【0062】
図9(a)で示すように、物体支持流体第1収容体56−1に気体が未充満状態であって収縮している場合において、制御バルブ22bが弛緩方向に回転されて開弁された状態で物体支持流体第2収容体52−2が押圧圧縮されて変形すると、物体支持流体第2収容体52−2内に収容されている気体が物体支持流体第1収容体56−1に移動する。気体が物体支持流体第1収容体56−1に移動すると、図9(b)で示すように、複数の襞部58を有する蛇腹状に形成された収容部56が下方から上方に向かって展開される。
【0063】
かかる構成を有する物体支持装置50によれば、物体支持流体第1収容体52−1の収容部56が複数の襞部58を有する蛇腹状に形成されているので、物体支持流体第2収容体52−2から物体支持流体第1収容体52−1へ気体を注入させると、物体支持流体第1収容体52−1の展開が支持流体第1収容体52−1の下方から上方に規制された上で物体支持流体第1収容体52−1が立体形状を呈して変成器80を支持することが可能となる。従って、第1実施の形態の物体支持装置10及び第2実施の形態の物体支持装置40に対して物体支持流体第1収容体52−1を、変成器80を支持する方向である物体支持流体第1収容体52−1の上方に向かって効率的に展開させることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記第1実施の形態では、ローラ14cが平板状の板状部14に形成された凹部14aに回転自在に嵌合されている場合を例として説明したが、連通管がローラ14cを回転自在に支持する回転軸を兼ね備えるように形成してもよい。
【0065】
例えば、図10(a)における他の実施の形態に係る物体支持装置60の流体収容体62(本図では物体支持流体第2収容体62−2のみを示す)の側面視図、及び図10(b)における図10(a)のI−I線断面図で示すように、収容部66に連通管70を挿通させて、収容部66に挿通した部分の連通管70にローラ64cを外嵌することで、連通管70がローラ64cの回転軸として機能する。更にこの場合、図10(c)で示すように、変成器80がフランジ部84を有する場合は、連通管70を屈曲させて側面視略L字状に形成して、フランジ部84の内壁に沿わせることで、連通管70とフランジ部84との当接が回避される。
【0066】
上記各実施の形態では、流体収容部12、42、52が2基の物体支持流体収容体で構成される場合を例として説明したが、例えば3基の流体収容体と1基の物体支持流体収容体とを連通管によって相互に連通させて構成してもよい。
【0067】
更に、上記各実施の形態では、物体支持装置10、40、50、60で支持される物体が変成器80である場合を例として説明したが、冷蔵庫や洗濯機、家具等、変成器80と同様の重量物を支持することもできる。
【0068】
上記各実施の形態では、収容部16、46、56、66に充満される流体が気体である場合を例として説明したが、例えば水、オイル等の液体であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10、40、50 物体支持装置
12、42、52 流体収容部
12−1、42−1、52−1 物体支持流体第1収容体
12−2、42−2、52−2 物体支持流体第2収容体
14 板状部
14a 凹部
14c ローラ
16 収容部
20 連通管
22 制御部(開閉機構)
22b 制御バルブ
30 車輪
58 襞部
80 変成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体が設置される設置面と前記物体との間に介装されて該物体を下方から支持する物体支持装置において、
非伸縮性でかつ可撓性を有する部材で形成されるとともに内部に流体が注入される複数の流体収容体を含み、該流体収容体のうち少なくとも1基が前記流体の注入により所望の高さを有する立体形状を呈して前記物体を支持する物体支持流体収容体を有する流体収容部と、
該流体収容部の前記複数の流体収容体を相互に連通させる連通管と、
該連通管を開閉する開閉機構と、を備え、
前記流体収容部に注入される前記流体が少なくとも前記物体支持流体収容体を充満させて所望の高さを有する立体形状を呈する量であることを特徴とする物体支持装置。
【請求項2】
前記流体収容部は、
前記流体の注入によって略同形状となる2基の前記物体支持流体収容体を備えることを特徴とする請求項1に記載の物体支持装置。
【請求項3】
前記流体収容部の物体支持流体収容体は、
該物体支持流体収容部の上面に前記物体を支持する板状部を備え、
該板状部に回転自在に支持されるローラが形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の物体支持装置。
【請求項4】
前記流体を前記物体支持流体収容体に注入可能な容積が前記流体を前記複数の流体収容体に注入可能な容積に対して小に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の物体支持装置。
【請求項5】
前記物体支持流体収容体は、側壁を有して略方形に形成され、
前記側壁が前記物体の下方に近接する方向に伸張する蛇腹状に形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の物体支持装置。
【請求項6】
請求項3〜5に記載の物体支持装置を用いた物体運搬方法であって、
前記物体を一方側へ変位させて前記設置面に対して傾斜させて前記物体の他方側の底部と前記設置面との間に隙間を形成し、前記流体が未充満状態の前記物体支持流体収容体を前記隙間に挿入する物体支持流体収容体挿入工程と、
前記開閉機構を開弁する開弁工程と、
前記物体支持流体収容体以外の流体収容体を押圧収縮させて前記隙間に挿入された前記物体支持流体収容体に前記流体を充満させて立体形状とし、前記隙間に挿入された前記物体支持流体収容体の上部を前記物体の底部に当接させて前記物体を上方に押し上げる物体支持流体収容体展開工程と、
該物体支持流体収容体展開工程の後に前記開閉機構を閉弁する閉弁工程と、
前記設地面から離間した前記物体の他方側の底部に車輪を取り付け、前記ローラを用いて前記物体の重心を移動させて前記車輪を前記設置面に接地させ、前記物体の一方側の底部に車輪を取り付ける車輪取付工程と、
前記開閉機構を開弁して前記支持流体収容体を収縮させて前記物体を前記車輪によって支持させるとともに前記物体を所望の箇所まで運搬する物体運搬工程と、
を備えることを特徴とする物体運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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