説明

物体検出装置および情報取得装置

【課題】簡素な構成にて目標領域の情報を精度よく取得できる情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供する。
【解決手段】情報取得装置1は、波長800nm程度の光を出射するレーザ光源11と、レーザ光源11の温度を調節する温調素子12と、レーザ光源11の温度を検出する温度センサ13と、目標領域から反射された反射光を透過させるためのフィルタ211と、フィルタ211を透過した反射光を受光して信号を出力するCMOSイメージセンサ23と、反射光に対するフィルタ211の傾き角を変化させるフィルタ駆動部200とを備える。CPU31は、温調素子12により設定可能な前記レーザ光源11の温度範囲内で、CMOSイメージセンサ23の受光量が最大となるよう温調素子12およびフィルタ駆動部200を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域に光を投写したときの反射光の状態に基づいて目標領域内の物体を検出する物体検出装置およびこれに用い好適な情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いた物体検出装置が種々の分野で開発されている。たとえば、車載用のレーザレーダでは、車両前方からレーザ光が投射され、そのときの反射光の有無に基づいて車両前方に物体が存在するかが判別される。また、レーザ光の投射タイミングと反射光の受光タイミングに基づいて、物体までの距離が検出される。この他、業務用ゲーム機やセキュリティシステム等においても、赤外光を用いた物体検出装置が搭載され、人またはそのジェスチャ等の検出が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−70157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる物体検出装置では、半導体レーザやLED(Light Emitting Device)などの光源から、予め決められた波長帯域の光が目標領域に投射される。この場合、当該波長帯域の光のみをPSD(Position Sensitive Detector)やCMOSイメージセンサ等の受光素子に導くために、当該帯域を透過帯域とする狭帯域フィルタが用いられる。光源から出射される光の波長が変化した場合に、かかるフィルタの傾き角を変化させると、光源から出射された光のうち受光素子に照射される光の光量が減少することを抑制することができる。また、光源から出射される光の波長は、光源の温度変化に応じて変化するため、光源の温度変化を抑制するために、ペルチェ素子等からなる温度調節素子が用いられる。
【0005】
しかしながら、上記のような温度調節素子によって調節可能な光源の温度範囲は限られている。このため、温度調節素子によって光源の温度が調節されても、光源から出射される光の波長を予め決められた波長帯域とすることができなくなる惧れがある。また、フィルタの傾き角を変化させる場合、フィルタの回動スペースが装置内に必要となるため、装置が大型になるとの問題を生じる。
【0006】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、簡素な構成にて目標領域の情報を精度よく取得できる情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置に関する。本態様に係る情報取得装置は、所定波長帯域の光を出射する光源と、前記光源の温度を調節する温調素子と、前記光源の温度を検出する温度センサと、前記光源から出射された前記光を前記目標領域に向けて投射する投射光学系と、前記目標領域から反射された反射光を透過させるためのフィルタと、前記フィルタを透過した前記反射光を受光して信号を出力する受光素子と、前記反射光に対する前記フィルタの傾き角を変化させるアクチュエータと、前記温調素子により設定可能な前記光源の温度範囲内で、前記受光素子の受光量が最大となるよう前記温調素子および前記アクチュエータを制御する制御部とを備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、物体検出装置に関する。この態様に係る物体検出装置は、上記第1の態様に係る情報取得装置を有する。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり本発明によれば、簡素な構成にて目標領域の情報を精度よく取得できる情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することができる。
【0010】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係る物体検出装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係る情報取得装置と情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】実施形態1に係る3次元距離演算部の処理を説明する図である。
【図4】実施形態1に係る受光モジュールの要部の構成を示すである。
【図5】実施形態1に係る光源モジュールおよび受光モジュールの構成を示す図である。
【図6】実施形態1に係る光源モジュールの構成を詳細に示す図である。
【図7】実施形態1に係るフィルタ駆動部の構成を詳細に示す図である。
【図8】実施形態1に係る温度センサの検出温度とレーザ光の波長の関係を示す図およびフィルタの傾き角と透過率の関係を示す図である。
【図9】実施形態1に係る参照テーブルを示す図およびレーザ光源の雰囲気温度と温度センサの検出温度との関係を示す図である。
【図10】実施形態1に係るレーザ光源の温度制御とフィルタの傾き角制御を示すフローチャートである。
【図11】実施形態1に係るレーザ光源の温度制御とフィルタの傾き角制御を示すフローチャートである。
【図12】実施形態2に係る情報取得装置の構成を示す図である。
【図13】実施形態2に係るフィルタ駆動部の構成を詳細に示す図である。
【図14】実施形態3に係る光源モジュールの構成を詳細に示す図である。
【図15】実施形態3に係る目標温度と目標傾き角の更新制御を示すフローチャートである。
【図16】実施形態3に係るレーザ光源の温度制御とフィルタの傾き角制御を示すフローチャートの変更例である。
【図17】実施形態4に係る目標温度と目標傾き角の更新制御を示すフローチャートおよび参照可能範囲のシフトを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0013】
<実施形態1>
まず、図1に本実施の形態に係る物体検出装置の概略構成を示す。図示の如く、物体検出装置は、情報取得装置1と、情報処理装置2とを備えている。テレビ3は、情報処理装置2からの信号によって制御される。
【0014】
情報取得装置1は、目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離(以下、「3次元距離情報」という)を取得する。取得された3次元距離情報は、ケーブル4を介して情報処理装置2に送られる。
【0015】
情報処理装置2は、たとえば、テレビ制御用のコントローラやゲーム機、パーソナルコンピュータ等である。情報処理装置2は、情報取得装置1から受信した3次元距離情報に基づき、目標領域における物体を検出し、検出結果に基づきテレビ3を制御する。
【0016】
たとえば、情報処理装置2は、受信した3次元距離情報に基づき人を検出するとともに、3次元距離情報の変化から、その人の動きを検出する。たとえば、情報処理装置2がテレビ制御用のコントローラである場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人のジャスチャーを検出するとともに、ジェスチャに応じてテレビ3に制御信号を出力するアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定のジェスチャをすることにより、チャンネル切り替えやボリュームのUp/Down等、所定の機能をテレビ3に実行させることができる。
【0017】
また、たとえば、情報処理装置2がゲーム機である場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人の動きを検出するとともに、検出した動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させ、ゲームの対戦状況を変化させるアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定の動きをすることにより、自身がテレビ画面上のキャラクタとしてゲームの対戦を行う臨場感を味わうことができる。
【0018】
図2は、情報取得装置1と情報処理装置2の構成を示す図である。
【0019】
情報取得装置1は、光学部の構成として、光源モジュール10と受光モジュール20を備えている。また、回路部の構成として、CPU(Central Processing Unit)31と、レーザ駆動回路32と、温調素子駆動回路33と、撮像信号処理回路34と、モータ駆動回路35と、メモリ36と、入出力回路37を備えている。
【0020】
光源モジュール10は、レーザ光源11と、温調素子12と、温度センサ13と、投射レンズ14を含んでいる。レーザ光源11は、たとえば半導体レーザからなり、波長800nm程度の狭波長帯域のレーザ光を出力する。温調素子12は、ペルチェ素子等の熱電素子からなっている。温調素子12は、レーザ光源11を加熱または冷却する。温度センサ13は、レーザ光源11の温度を間接的に検出して、検出信号をCPU21に出力する。投射レンズ14は、レーザ光源11から出射されたレーザ光を目標領域全体に広げて投射する。
【0021】
なお、光源モジュール10の詳細な構成については、追って図5、6を参照して説明する。
【0022】
受光モジュール20は、アパーチャ21と、撮像レンズ22と、CMOSイメージセンサ23と、フィルタ駆動部200を備えている。目標領域から反射されたレーザ光は、アパーチャ21を介して撮像レンズ22に入射する。アパーチャ21は、撮像レンズ22のFナンバーに合うように、外部からの光に絞りを掛ける。撮像レンズ22は、アパーチャ21を介して入射された光をCMOSイメージセンサ23上に集光する。
【0023】
CMOSイメージセンサ23は、撮像レンズ22にて集光された光を受光して、画素毎に、受光光量に応じた信号(電荷)を撮像信号処理回路34に出力する。ここで、CMOSイメージセンサ23は、各画素における受光から高レスポンスでその画素の信号(電荷)を撮像信号処理回路34に出力できるよう、信号の出力速度が高速化されている。
【0024】
フィルタ駆動部200は、フィルタ211を含んでいる。フィルタ駆動部200は、モータ駆動回路35から出力される駆動信号に従って、フィルタ211を、同図X−Y平面に平行な状態からY−Z平面に平行な方向に傾ける。フィルタ211は、レーザ光源11の出射波長帯域に略整合する波長帯域の光を透過しその他の波長帯域をカットするバンドパスフィルタである。フィルタ211は、ファブリペローフィルタ等の誘電体膜干渉型フィルタからなっており、フィルタ211の形状は、所定の厚みを有する平行平板形状となっている。
【0025】
なお、受光モジュール20の詳細な構成については、追って図4、5、7を参照して説明する。
【0026】
CPU31は、メモリ36に格納された制御プログラムに従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU31には、3次元距離情報を生成するための3次元距離演算部31aの機能が付与される。
【0027】
レーザ駆動回路32は、CPU31からの制御信号に応じてレーザ光源11を駆動する。ここで、レーザ駆動回路32は、所定の変調方式に従ってレーザ光源11を駆動する。これにより、レーザ光源11からは、固有の変調パターンを持つレーザ光が出射される。温調素子駆動回路33は、CPU31からの制御信号に応じて温調素子12を駆動する。
【0028】
撮像信号処理回路34は、CMOSイメージセンサ23を制御して、CMOSイメージセンサ23で生成された各画素の信号(電荷)をライン毎に順次取り込む。そして、取り込んだ電荷を順次信号としてCPU31に出力する。CPU31は、撮像信号処理回路34から供給される信号をもとに、情報取得装置1から各画素位置までの距離を、3次元距離演算部31aによる処理によって算出する。このとき、CPU31は、各画素位置の信号が、レーザ駆動回路32におけるレーザ光の変調方式と同様に変調されているかを判定し、同様に変調されている場合にのみ、この信号を、3次元距離の算出に用いる。
【0029】
モータ駆動回路35は、CPU31からの制御信号に応じて、フィルタ駆動部200を制御する。メモリ36は、CPU31が各部を制御するためのプログラムに加えて、温度センサ13の検出温度とフィルタ211の傾き角を設定するためのテーブルを保持している。かかるテーブルについては、追って図9を参照して説明する。
【0030】
入出力回路37は、情報処理装置2とのデータ通信を制御する。
【0031】
情報処理装置2は、CPU41と、メモリ42と、入出力回路43を備えている。なお、情報処理装置2には、同図に示す構成の他、テレビ3との通信を行うための構成や、CD−ROM等の外部メモリに格納された情報を読み取ってメモリ42にインストールするためのドライブ装置等が配されるが、便宜上、これら周辺回路の構成は図示省略されている。
【0032】
CPU41は、メモリ42に格納された制御プログラム(アプリケーションプログラム)に従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU41には、画像中の物体を検出するための物体検出部41aの機能が付与される。かかる制御プログラムは、たとえば、図示しないドライブ装置によってCD−ROMから読み取られ、メモリ42にインストールされる。
【0033】
たとえば、制御プログラムがゲームプログラムである場合、物体検出部41aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動きを検出する。そして、検出された動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させるための処理が制御プログラムにより実行される。
【0034】
また、制御プログラムがテレビ3の機能を制御するためのプログラムである場合、物体検出部41aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動き(ジェスチャ)を検出する。そして、検出された動き(ジェスチャ)に応じて、テレビ1の機能(チャンネル切り替えやボリューム調整、等)を制御するための処理が制御プログラムにより実行される。
【0035】
入出力回路43は、情報取得装置1とのデータ通信を制御する。
【0036】
図3は、3次元距離演算部31aにおける処理を説明する図である。
【0037】
情報処理装置2からの指令に応じて情報取得装置1における情報取得処理が起動されると、レーザ光源11から目標領域に向かって固有の変調パターンでレーザ光が投射される。このとき、同図のように目標領域に人(M)がいると、レーザ光は人(M)により反射され、撮像レンズ22を介してCMOSイメージセンサ23に入射される。こうして、人(M)の像がCMOSイメージセンサ23に投影される。
【0038】
このとき、レーザ光源11からのレーザ光のうち、人(M)の位置Poに当たった光は、CMOSイメージセンサ23上の画素Ppの位置に入射する。したがって、レーザ光源11における変調レーザ光の出射タイミングと、画素Ppにおける当該変調レーザ光の受光タイミングの時間差をΔtとすると、情報取得装置1から人(M)の位置Poまでの距離Dpは、
Dp=C×Δt(C:光速) …(1)
で求められる。人(M)のその他の位置の距離も同様に求められる。
【0039】
3次元距離演算部31aは、レーザ駆動回路32に変調レーザ光の発光指令を行ってから、各画素における変調レーザ光の受光信号が撮像信号処理回路34から入力されるまでの時間差ΔTをもとに、各回路部におけるタイムラグおよびレーザ光源11とCMOSイメージセンサ23のレスポンスを考慮して、上記式(1)における時間差Δtを画素毎に求め、求めたΔtをもとに式(1)の演算を行って、情報取得装置1から人(M)の各位置までの距離を求める。このとき、目標領域内に人(M)以外に物や壁等があれば、これらについても同様に距離が求められる。
【0040】
3次元距離演算部31aは、こうして求めた、目標領域内の各位置の距離を3次元距離情報として情報処理装置2に出力する。この場合、たとえば、人(M)が前後にまっすぐ手を動かすと、手の位置の距離が変化する3次元距離情報が順次情報処理装置2に出力される。情報処理装置2の物体検出部41aは、このように変化する3次元距離情報をもとに、人(M)の検出と、この人(M)が手を前後に動かす動作を行っていることの検出を行う。そして、CPU41は、この検出結果に基づいて、制御プログラムに規定された制御動作を行う。
【0041】
図4は、受光モジュール20の要部の構成を示す図である。
【0042】
同図(a)において、24は、アパーチャ21と撮像レンズ22を保持する保持筒である。保持筒24は、底部が開放された中空の箱形状を有しており、内部に複数枚のレンズ群からなる撮像レンズ22を収容している。保持筒24の上部には、円形状の開口が形成され、この開口から外部に臨むようにアパーチャ21が保持筒24の上部に装着されている。
【0043】
210は、フィルタ211の傾き角を変化させるアクチュエータである。アクチュエータ210には中央に光を通過させるための開口が形成され、この開口を覆うようにして、アクチュエータ210の上面にフィルタ211が装着される。なお、アクチュエータ210は、図2に示したフィルタ駆動部200の一部である。アクチュエータ210の詳細については、追って図7(a)を参照して説明する。
【0044】
302は、CMOSイメージセンサ23が装着された回路基板である。回路基板302には、CMOSイメージセンサ23の他、CMOSイメージセンサ23に関連する回路が配されている。303は、フレキシブルケーブルであり、304は、接続端子である。フレキシブルケーブル303は、回路基板302と接続端子304との信号伝達を仲介する。接続端子304は、後述する回路基板301と接続される。接続端子304は、CMOSイメージセンサ23側から出力される信号を回路基板301に出力すると共に、回路基板301から出力される制御信号をCMOSイメージセンサ23側に出力する。
【0045】
25は、アクチュエータ210を回路基板302上に保持するための保持枠である。保持枠25には、中央に光を通過させるための開口が形成されている。
【0046】
組み立て時には、同図(a)に示す如く、保持枠25の開口がCMOSイメージセンサ23の真上に位置付けられるようにして、保持枠25が回路基板302上に設置される。続いて、フィルタ211がCMOSイメージセンサ23の真上に位置付けられるようにして、アクチュエータ210が、保持枠25上に設置される。さらに、アクチュエータ210の上に保持筒24が設置される。同図(b)は、保持筒24と、アクチュエータ210と、保持枠25と、回路基板302が組み立てられた状態を示している。
【0047】
図5は、情報取得装置1の光源モジュール10と受光モジュール20の構成を示す図である。
【0048】
図示の如く、光源モジュール10と受光モジュール20は、それぞれ、X軸方向に横長のシャーシ310と回路基板301上に配置されている。シャーシ310は、熱伝導性の高い金属からなる板状部材である。また、シャーシ310は、シャーシ310上に配置された部品の熱を放熱する機能を有する。
【0049】
光源モジュール10は、図示の如く、温調素子12を介してシャーシ310上に設置されている。光源モジュール10は、図示の如くカバー15を有し、カバー15は、温調素子12上に設置されている。カバー15は、図2のレーザ光源11と、温調素子12と、温度センサ13と、投射レンズ14を収容している。また、カバー15のZ軸正方向の面には、出射窓15aが形成されており、レーザ光源11から出射されるレーザ光は、出射窓15aを通って目標領域に出射される。
【0050】
図4で示した受光モジュール20の要部は、図示の如く、回路基板301上に設置されている。すなわち、回路基板302は、回路基板301上に固定されており、接続端子304(図4参照)は、回路基板301上のコネクタ(図示せず)に接続されている。
【0051】
ギア部220は、図示の如く、シャーシ310の鍔部310aに設置されており、ウォームギア221と、ギア222、223を含んでいる。230は、モータ制御回路35によって駆動されるステッピングモータである。なお、図2のフィルタ駆動部200は、アクチュエータ210と、ギア部220と、ステッピングモータ230から構成されている。なお、ギア部220とステッピングモータ230の詳細な構成およびギア部220とアクチュエータ210の関係については、追って図7を参照して説明する。
【0052】
図6は、光源モジュール10の構成を詳細に示す図である。
【0053】
光源モジュール10は、図2で示したレーザ光源11と、温調素子12と、温度センサ13、投射レンズ14と、図5で示したカバー15の他に、レーザホルダ16を備えている。
【0054】
図示の如く、温調素子12は、シャーシ310上に設置されている。レーザホルダ16は、熱伝導性を有する部材からなり、レーザ光源11を保持している。また、レーザホルダ16は、温調素子12と接するように配置されている。温度センサ13は、レーザホルダ16の側面に設置されている。これにより、温調素子12は、レーザホルダ16を介して、レーザ光源11を加熱または冷却することができ、温度センサ13は、レーザホルダ16を介して、間接的にレーザ光源11の(CAN)温度を検出することができる。
【0055】
レーザ光源11の端子には、レーザ光源11に電源を供給するための配線17が接続されている。配線17の他方の端部は、回路基板301に接続されている。このため、カバー15とレーザホルダ16には、配線17が通る開口が形成されている。レーザ光源11には、回路基板301を介して駆動電流が印加される。
【0056】
図7(a)は、アクチュエータ210の構成を詳細に示す図である。
【0057】
アクチュエータ210は、フィルタ211と、ベース212と、ホルダ213と、軸214、215を備えている。
【0058】
ベース212には、左右に壁部212a、212bが形成されている。また、壁部212a、212bには、それぞれ、軸孔212c、212dが形成され、これら軸孔212c、212dに軸214、215が回動可能に挿入される。軸214は端部に抜け止めを有している。ベース212の底部には、光を通すための開口212eが形成されている。
【0059】
ホルダ213は、中央に光を通すための開口213aが形成された枠部材からなっており、左右の壁に、軸214、215と嵌合する孔が形成されている。ホルダ213の上面には、段部213bが形成され、この段部213bにフィルタ211が嵌め込まれて装着される。
【0060】
組み立て時には、まず、ホルダ213をベース212の壁部212a、212bの間に収容する。そして、軸214、215を軸孔212c、212dに挿入しつつ、ホルダ213の孔に嵌合させる。これにより、アクチュエータ210の組み立てが完了する。
【0061】
図7(b)は、ギア部220とステッピングモータ230の詳細な構成について示す図である。
【0062】
ステッピングモータ230が、モータ駆動回路35によって駆動されると、ステッピングモータ230の駆動軸に装着されたウォームギア221がY軸周りに回動する。これにより、ウォームギア221に嵌合するギア222がX軸周りに回動される。ギア222の内周部には、外周よりも径の小さいギア222aが形成されている。ギア222が回動すると、ギア222aに篏合するギア223が回動される。ギア223の中心には軸孔223aが設けられている。かかる軸孔223aに、アクチュエータ210の軸215が通されて固定される。
【0063】
図7(c)は、アクチュエータ210とギア部220が接続された状態を示す図である。なお、ギア部220については、便宜上、ギア223のみが図示されている。
【0064】
このように、アクチュエータ210の軸215が、ギア223の軸孔223aに固定されると、ギア223が回動されることにより、ホルダ213が軸214、215を中心として回動される。これにより、ステッピングモータ230が駆動されると、ギア223が回動され、フィルタ211が、X−Y平面に平行な状態からY−Z平面に平行な方向に傾けられる。
【0065】
図8(a)は、温度センサ13の検出温度とレーザ光の波長の関係を示す図(シミュレーション結果)である。横軸は温度センサ13の検出温度を表し、縦軸はレーザ光源11から出射されるレーザ光の波長を表している。
【0066】
同図(a)により、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長は、温度センサ13の検出温度の変化に伴って変化することが分かる。すなわち、レーザ光源11の温度が変化することにより、温度センサ13の検出温度が変化すると、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長が変化することが分かる。
【0067】
図8(b)は、フィルタ211の傾き角と透過率との関係を示す図(シミュレーション結果)である。横軸は、フィルタ211が図2のZ軸に垂直な状態からY−Z平面に平行な方向に傾けられたときの傾き角(Tilt方向の傾き角)を表し、縦軸は、フィルタ211に対して図2のZ軸方向に進む光の透過率を表している。なお、図8(b)では、5つの波長(795nm、800nm、805nm、810nm、815nm)の光の透過率が示されている。また、この場合のフィルタ211は、波長810nm付近(以下、「最適波長」という)の光がフィルタ211に対して垂直に入射するときに透過率が最大となる。
【0068】
図8(b)から、フィルタ211に対して図2のZ軸方向に入射する光の波長が、最適波長である810nmから変化すると、最大透過率は減少し、且つ、最大透過率となるときのフィルタ211の傾き角が変化することが分かる。すなわち、フィルタ211に対して図2のZ軸方向に入射する光の波長が最適波長から変化すると、透過率を最大とするためにフィルタ211の傾き角を変化させる必要がある。また、フィルタ211の傾き角を変化させて透過率が最大となるようにしても、その時の最大透過率は、最適波長(810nm)のときの最大透過率よりも減少してしまう。
【0069】
このため、上記情報取得装置1では、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長が、最適波長に維持されるよう、温調素子12によってレーザ光源11の温度を調節するのが望ましい。
【0070】
しかしながら、温調素子12によって調節可能な温度範囲は限られている。このため、レーザ光源11が駆動される直前、または駆動中のレーザ光源11周辺の雰囲気温度によっては、レーザ光源11の温度を最適波長のレーザ光を出射する温度に調節できない場合がある。
【0071】
よって、このような場合には、調節可能な温度範囲、すなわち、調節可能な波長の範囲において、最大の透過率を与える温度(波長)と傾き角となるように、レーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角を調節する必要がある。これを実現するために、本実施の形態では、予め参照テーブルを準備し、参照テーブルに基づいてレーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角が調節される。
【0072】
図9(a)は、参照テーブルを示す図である。
【0073】
図示の如く、参照テーブルには、レーザ光源11が点灯状態にあるときの温度センサ13の検出温度(横方向)と、フィルタ211のTilt方向の傾き角(縦方向)とに対応づけてCMOSイメージセンサ23による検出信号のS/N比が記載されている。このテーブルは、図2に示すレーザ光源11、フィルタ211、CMOSイメージセンサ23、温調素子12および温度センサ13に基づいて、実際に、温度センサ13により検出される温度とフィルタ211の傾き角とを変えながら、CMOSイメージセンサ23からの検出信号を測定することによって作成される。
【0074】
図9(a)に示す参照テーブルにおいて、温度センサ13の検出温度毎に、検出信号のS/N比が最大となる傾き角が異なるのは、温度センサ13の検出温度、すなわちレーザ光の波長と、フィルタ211の傾き角と透過率との間に図8(b)に示すような関係があるからである。
【0075】
なお、図9(a)に示す参照テーブルでは、たとえば、温度センサ13の検出温度が30℃である場合、レーザ光源11から出射されるレーザ光のフィルタ211の透過率が最大となるのは、フィルタ211の傾き角が5°のときである。参照テーブルに記載される温度センサ103の検出温度は、実動作時に、温度センサ103によって検出されることが想定される範囲に設定される。
【0076】
図9(b)は、点灯時のレーザ光源11周辺の雰囲気温度と、レーザ光源11の点灯時の温度センサ13の検出温度との関係を示す図である。縦軸のS1、S2、S3は、それぞれ、雰囲気温度がt1、t2、t3であるときに、温調素子12による温度調節が行われない場合の温度センサ13の検出温度を表している。図中の矢印は、温調素子12が駆動されることによって、温度センサ13により検出される温度が変化し得る範囲を模式的に示している。
【0077】
図示の如く、温調素子12によって温度調節が行われたときに、温度センサ13によって検出され得る温度の範囲(以下、「検出可能範囲」という)は、そのときの雰囲気温度によって異なる。例えば、雰囲気温度がt1のとき、レーザ光源11点灯時の温度センサ13の検出範囲は、S1を中心とする同図(b)の矢印範囲であり、また、雰囲気温度がt2になると、温度センサ13の検出範囲は、S2を中心とする矢印範囲にシフトする。
【0078】
点灯状態におけるレーザ光源11の温度は、雰囲気温度の変化に伴って変化する。他方、温調素子12によって温度調節可能な範囲は限られている。したがって、雰囲気温度が変化すれば、点灯状態におけるレーザ光源11の温度調節可能な範囲も変化する。このように、レーザ光源11の温度調節可能範囲が変化すると、これに応じて温度センサ13により検出され得る温度の範囲(検出可能範囲)も変化する。
【0079】
CPU21は、レーザ光源11の駆動開始時に、温度センサ13によって検出された温度(雰囲気温度)に基づいて、実動作時に温度センサ13によって検出され得る温度範囲(検出可能範囲)を求める。そして、CPU21は、求めた検出可能範囲を、参照可能範囲として、参照テーブルに適用する(図9(a)参照)。なお、参照可能範囲は、温調素子24の性能や設置環境温度の他、情報取得装置1の回路設定などによって決定される。
【0080】
CPU21は、こうして設定された参照可能範囲から、S/N比が最大となる温度センサ13の検出温度とフィルタ211の傾き角、すなわち、フィルタ211の透過率が最大となる温度センサ13の検出温度とフィルタ211の傾き角を取得する。たとえば、図示の如く参照可能範囲が指定されるとき、参照可能範囲内で最も高いS/N比は“80”である。したがって、この場合、CPU21は、S/N比が80に対応づけられている温度センサ13の検出温度(30℃)と、フィルタ211の傾き角(5°)とを参照テーブルから取得する。CPU21は、温度センサ13の検出温度が取得したセンサ温度となるように温調素子12を駆動し、また、フィルタ駆動部200を駆動してフィルタ211を取得した傾き角に合わせる。
【0081】
このように温度センサ13の検出温度とフィルタ211の傾き角を設定することにより、そのときの雰囲気温度において、目標領域に投射された光を最も効率よく受光できるように、情報取得装置1を調節することができる。
【0082】
図10は、レーザ光源11の温度制御とフィルタ211の傾き角制御を示すフローチャートである。同図の処理フローは、情報取得装置1の電源がONされたときに開始される。
【0083】
CPU21は、まず、温度センサ13から出力される検出信号により、温度センサ13の検出温度(雰囲気温度)を得る(S1)。次に、CPU21は、メモリ36に保持されている参照テーブルを参照し、S1で得られた温度センサ13の検出温度が、参照テーブルに記述されたセンサ温度の範囲内にあるかを判定する(S2)。検出温度が参照テーブルのセンサ温度の範囲内にあるとき(S2:YES)、CPU21は、温度センサ13の検出温度に基づいて、参照テーブル内の参照可能範囲を決定する(S3)。検出温度が参照テーブルのセンサ温度の範囲内にないとき(S2:NO)、異常として、情報取得装置における動作が終了する。
【0084】
次に、CPU21は、参照テーブルの参照可能範囲において、S/N比が最大となるときの温度センサ13の目標温度とフィルタ211の目標傾き角を得る(S4)。続いて、CPU21は、得られた目標温度と目標傾き角に基づいて、“レーザ光源の温度制御”と“フィルタの傾き角制御”を開始する(S5)。なお、“レーザ光源の温度制御”と“フィルタの傾き角制御”は、図10の処理フローと並行して行われる。
【0085】
図11(a)は、“レーザ光源の温度制御”を示すフローチャートである。
【0086】
CPU21は、温度センサ13の検出温度が、図10のS4で得られた目標温度に一致しているかを判定する(S11)。温度センサ13の検出温度が目標温度に一致していると判定されると(S11:YES)、処理がS11に戻される。温度センサ13の検出温度が目標温度に一致していないと判定されると(S11:NO)、温度センサ13の検出温度が目標温度となるよう、温調素子12が駆動され、処理がS11に戻される。
【0087】
このように、温度センサ13の検出温度がいったん目標温度に到達した後も、検出温度が目標温度に維持されるよう温度センサ13が制御され続ける。
【0088】
図11(b)は、“フィルタの傾き角制御”を示すフローチャートである。
【0089】
CPU21は、モータ駆動回路35を介してフィルタ駆動部200を駆動させ、フィルタ211の傾き角を、図10のS4で得られた目標傾き角に一致させる(S21)。なお、フィルタ211の傾き角は、基準位置からのステッピングモータ230のステップ数により検出される。基準位置は、フィルタ211がZ軸に垂直となる位置に設定されている。ステッピングモータ230を基準位置から目標傾き角に対応するステップ数だけ駆動することにより、目標傾き角に一致される。
【0090】
次に、CPU21は、温度センサ13の検出温度が、図10のS4で得られた目標温度に到達しているかを判定する(S22)。すなわち、図11(a)のS11の判定処理においてYESと判定されたかが判定される。温度センサ13の検出温度が目標温度に到達していると判定されると(S22:YES)、処理がS23に進められる。温度センサ13の検出温度が目標温度に到達していないと判定されると(S22:NO)、処理が待機される。これにより、温度センサ13の検出温度とフィルタ211の傾き角が、目標値となったときにのみ、後段の処理が進められることになる。
【0091】
次に、CPU21は、フィルタ211の目標傾き角において、CMOSイメージセンサ23の出力値を取得し、さらに、フィルタ211を前後に1段階だけ傾けさせ、それぞれの傾き角においてCMOSイメージセンサ23の出力値を取得する(S23)。なお、フィルタ211を前後に1段階だけ傾けるには、ステッピングモータ230が異なる回転方向に1パルス分だけ駆動されれば良い。
【0092】
S23で得られた3つの出力値のうち、フィルタ211の目標傾き角におけるCMOSイメージセンサ23の出力値が最大であるとき(S24:YES)、フィルタ211の傾き角を目標傾き角に設定して(S25)、処理が終了する。フィルタ211の目標傾き角における出力値が最大でないとき(S24:NO)、処理がS25に進められる。続いて、S23で得られたフィルタ211の目標傾き角の前後におけるCMOSイメージセンサ23の出力値のうち、フィルタ211が前に1段階だけ傾けられたときの出力値が最大であるとき(S25:YES)、処理がS27に進められる。フィルタ211が後ろに1段階だけ傾けられたときの出力値が最大であるとき(S25:NO)、処理がS30に進められる。
【0093】
S27では、フィルタ211が、ステッピングモータ230により、S23にて目標傾き角から1段階前に傾けられた傾き角からさらに前に1段階だけ傾けられる。続いて、CPU21により、フィルタ211を傾けた後のCMOSイメージセンサ23の出力値が、目標傾き角から1段階前に傾けられた傾き角のときの出力値から増加しているかが判定される(S28)。出力値が増加していると判定されると(S28:YES)、S27に戻り、フィルタ211がさらに前に1段階だけ傾けられ、フィルタ211を傾ける前後でCMOSイメージセンサ23の出力が増加したかが判別される。S27とS28の処理は、S28における判別がNOとなるまで繰り返される。そして、S28にて出力値が増加していないと判定されると(S28:NO)、フィルタ211が1段階だけ後ろに傾けられ(S29)、この傾き角が、実動作時のフィルタ211の傾き角に設定される。こうして、傾き角制御の処理が終了する。
【0094】
S30〜S32では、S27〜S29と同様に、CMOSイメージセンサ23の出力値が増加する間、フィルタ211が後ろに傾けられ続ける。すなわち、フィルタ211を後ろに1ステップ傾けることによりCMOSイメージセンサ23の出力が減少すると判定されるまで(S31:NO)、フィルタ211を1ステップずつ後ろに傾ける。そして、S31にて出力値が増加していないと判定されると(S31:NO)、フィルタ211が1段階だけ前に傾けられ(S32)、この傾き角が、実動作時のフィルタ211の傾き角に設定される。こうして、傾き角制御の処理が終了する。
【0095】
このようにして、フィルタ211の傾き角は、目標傾き角の近傍で、さらに最適な出力値が得られる傾き角に合わせられる。これにより、情報取得装置1の精度が高く維持され得る。
【0096】
以上、本実施の形態によれば、上記参照テーブルの参照可能範囲内において、透過率が最大となるよう、レーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角が設定される。これにより、CMOSイメージセンサ23にて受光される光量が高められるため、情報取得装置1による検出精度が高められ得る。
【0097】
また、本実施の形態によれば、点灯中のレーザ光源11の温度が変化する場合でも、温調素子12により、レーザ光源11の温度の変化が抑制される。これにより、レーザ光源11から出射されるレーザ光の波長の変化が抑制されるため、フィルタ211の傾き角を大きく変化させる必要がなくなる。よって、フィルタ211を傾かせるために必要なバックフォーカスを短くすることができ、情報取得装置1の小型化が可能となり得る。なお、この場合、参照可能範囲内においてフィルタ211の傾き角が一定とされるため、フィルタ211の制御が簡素とされ得る。
【0098】
<実施形態2>
上記実施形態1の構成では、フィルタ211の傾きの変化によって、透過光に対するフィルタ211の屈折作用が変化する。このため、フィルタ211の傾きの変化に応じて、フィルタ211を透過した後の光の光路が図2のY軸に平行な方向に変化することとなり、CMOSイメージセンサ23上における光の照射領域がY軸方向に変化する。このように、光の照射領域が変化すると、3次元距離情報の精度が劣化し、結果、物体検出部31aにおける検出精度が低下する。本実施の形態は、かかる問題を解消するものである。
【0099】
図12は、本実施の形態に係る情報取得装置1の構成の要部を示す図である。ここでは、図2に比べ、調整板241が追加されている。調整板241は、フィルタ211と同じ形状で同じ屈折作用を持つ透明な板からなっている。
【0100】
図13(a)は、アクチュエータ210、240の構成を示す図である。アクチュエータ240は、アクチュエータ210と略同様の構成である。以下、アクチュエータ210と240の相違点、上記実施形態1のアクチュエータとの相違点について説明する。
【0101】
アクチュエータ210の軸215には、図示の如く、壁部212bの外側付近にギア216が設置されている。ギア216の中心に形成された軸孔は、軸215に通されて固定されている。これにより、軸215がX軸方向を中心として回動されると、ギア216はX軸方向を中心として回動することとなる。
【0102】
アクチュエータ240の軸245は、図示の如く、アクチュエータ210の軸215に比べて短く形成されている。アクチュエータ240の軸245には、図示の如く、壁部242bの外側付近にギア216と同じギア246が設置されている。ギア246の中心に形成された軸孔は、軸245に通されて固定されている。これにより、ギア246がX軸方向を中心として回動されると、軸245はX軸方向を中心として回動することとなる。
【0103】
組み立て時には、調整板241が、アクチュエータ240のホルダ243の上面に形成された段部243bに嵌め込まれて装着される。調整板241とフィルタ211が装着されたアクチュエータ240、210は、図示の如くZ軸方向に重ね合わされる。このとき、ギア216とギア246は互いに嵌合している。
【0104】
図13(b)は、アクチュエータ210と240が重ね合わされた状態を示す図である。この状態において、フィルタ211と調整板241は、共にX−Y平面に平行になっている。
【0105】
このようにアクチュエータ210と240が重ね合わされると、軸215が回動されるとき、アクチュエータ210のホルダ213とギア245は、互いに異なる方向に回動される。また、ギア216と246は同じギアであるため、ギア246はギア216と同じ回転数で回動されることになる。ギア246が回動されると、軸245が回動され、アクチュエータ240のホルダ243が回動される。よって、軸215がX軸方向を中心として回動されると、フィルタ211と調整板241は、Y−Z平面に平行な方向であって、互いに異なる方向に同じ角度だけ傾けられることとなる。 図13(c)は、情報取得装置1の受光モジュール20の構成を詳細に示す図である。上記実施形態1と比べ、アクチュエータ210とCMOSイメージセンサ23上に配された保持枠(図示せず)の間に、図示の如く、アクチュエータ240が配されている。
【0106】
アクチュエータ210の軸215は、上記実施形態1と同様、ギア223の軸孔に通されて固定されている。これにより、ステッピングモータ230が駆動されると、軸215がX軸周りに回動され、フィルタ211と調整板241がY−Z平面に平行な方向であって、互いに異なる方向に同じ角度だけ傾けられることとなる。
【0107】
以上、本実施の形態によれば、フィルタ211の傾きによるY軸方向の光束の変化は、調整板241を通ることにより打ち消される。これにより、CMOSイメージセンサ23には、常に同じ領域に光が導かれ得る。
【0108】
なお、本実施の形態では、調整板241とフィルタ211とを1つのステッピングモータ230で駆動させるようにしたが、別のステッピングモータにより、それぞれ個別に駆動するようにしても良い。
【0109】
また、本実施の形態では、調整板241によりCMOSイメージセンサ23に常に同じ領域に光が導かれるようにしたが、調整板241を配する替わりに、撮像レンズ22やCMOSイメージセンサ23をフィルタ211の傾き角に応じてY軸方向に変位させることにより、CMOSイメージセンサ23に常に同じ領域に光が導かれるようにしても良い。
【0110】
<実施形態3>
上記実施形態1では、図10のフローチャートに示すように、情報取得装置1の電源がONされたときに参照テーブルから目標温度と目標傾き角が取得された。本実施の形態は、上記実施形態1の取得タイミングに加えて、情報取得装置1の電源がONされた後に、雰囲気温度を検出する温度センサに基づいて目標温度と目標傾き角が更新されるようにする。
【0111】
図14は、光源モジュール10の構成を詳細に示す図である。
【0112】
本実施の形態の光源モジュール10は、上記実施形態1で示した光源モジュール10(図6参照)と、光源モジュール10内に設置された温度センサ18から構成されている。温度センサ18は、カバー15の内壁に設置されており、レーザ光源11の周辺温度(雰囲気温度)を検出して、検出信号をCPU21に出力する。
【0113】
図15(a)は、目標温度と目標傾き角の更新制御を示すフローチャートである。なお、同図(a)の処理フローは、図10(a)の動作開始時の処理フローが開始された後に、図10(a)の処理と並行して行われる。
【0114】
まず、CPU21は、経過時間のカウントを開始する(S41)。続いて、CPU21は、経過時間が、所定時間Tを超えたかを判定する(S42)。なお、所定時間Tは、たとえば、1時間と設定される。また、これに限らず、情報取得装置1の精度が低下しない程度に、適宜、所定時間Tが設定されても良い。
【0115】
経過時間が所定時間Tを超えたと判定されると(S42:YES)、CPU21は、温度センサ18から出力される検出信号により、レーザ光源11の雰囲気温度を得る(S43)。続いて、CPU21は、メモリ36に保持されている参照テーブルを参照し、S43で得られた温度センサ18の検出温度が、参照テーブルに記述されたセンサ温度の範囲内にあるかを判定する(S44)。検出温度が参照テーブルのセンサ温度の範囲内にあるとき(S44:YES)、CPU21は、温度センサ18の検出温度に基づいて、参照テーブル内の参照可能範囲を再設定する(S45)。検出温度が参照テーブルのセンサ温度の範囲内にないとき(S44:NO)、異常として、情報取得装置における動作が終了する。
【0116】
次に、CPU21は、再設定された参照可能範囲において、S/N比が最大となるときの温度センサ13の目標温度とフィルタ211の目標傾き角を得る(S46)。続いて、CPU21は、取得した目標温度と目標傾き角を用いて、温調素子12とアクチュエータ210の制御を更新する(S47)。すなわち、図11(a)で用いられる目標温度をS46で得られた目標温度とし、図11(a)の処理フローが継続される。また、S46で得られた目標傾き角に基づいて、図11(b)の処理フローが開始される。
【0117】
このように本実施の形態では、所定時間Tが経過する毎に、その時の雰囲気温度に基づいて、参照可能範囲が再設定される。そして、再設定された参照可能範囲内で最もS/N比が大きいセンサ温度と傾き角にレーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角が調節される。これにより、時間の経過に伴って雰囲気温度が変化しても、その時々の雰囲気温度に最も適したセンサ温度と傾き角に、レーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角を設定できる。
【0118】
なお、図15(a)のフローチャートに替えて、または、図15(a)のフローチャートとともに、図15(b)のフローチャートによる処理を実行しても良い。
【0119】
図15(b)を参照して、S51において、CPU21は、温調素子12によって検出温度を目標温度に調節可能かを判定する。なお、温調素子12による温度調節が不可能となる場合として、温調素子12の駆動電流が最大値を超える直前にある場合や、温調素子12を駆動しても検出温度が目標温度に到達しない場合などが含まれる。
【0120】
温調素子12による温度調節が不可能と判定されると(S51:NO)、処理がS52に進められる。S52以下の処理は、図15(a)のS43以下の処理と同様に行われる。
【0121】
こうすると、参照可能範囲が取得されてから所定時間Tが経過する前であっても、雰囲気温度が変化し温度調節が不可能となると、迅速に参照可能範囲が再設定されるため、より適切にレーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角を調節できる。
【0122】
なお、本実施形態のように、温度センサ13に加えて、雰囲気温度を検出する温度センサ18が設置される場合、動作開始時に行われる図10の処理フローにおいて、温度センサ18の検出温度に基づいて、動作開始時の参照可能範囲が決定されるようにしても良い。すなわち、図10のS1において、温度センサ13の替わりに温度センサ18の検出温度を得るようにしても良い。
【0123】
また、本実施形態では、図15(a)のS47と図15(b)のS56において、温調素子12およびアクチュエータ210の制御を更新する際に、それぞれ、図11(a)および(b)の処理フローが実行されたが、これに替えて、図16(a)および(b)に示す処理フローが実行されても良い。図16(a)は、図11(a)と同じ処理フローであり、図16(b)は、図11(b)のS21のみからなる処理フローである。こうすると、フィルタ211の傾き角が、目標傾き角の近傍で微調整されなくなるものの、CPU21の制御が簡素化され得る。
【0124】
<実施形態4>
上記図15(b)では、温調素子12によって検出温度を目標温度に調節できない場合に、再度雰囲気温度を取得し、かかる参照温度に基づいて参照可能範囲が再設定された。本実施の形態では、再度雰囲気温度を取得することなく、参照可能範囲を再設定する。
【0125】
図17(a)は、目標温度と目標傾き角の更新制御を示すフローチャートである。なお、同図(a)の処理フローは、図10(a)の動作開始時の処理フローが開始された後に、図10(a)の処理フローと並行して行われる。
【0126】
まず、CPU21は、温調素子12によって検出温度を目標温度に調節可能かを判定する(S61)。S61において、温調素子12による温度調節が不可能であると判定されると(S61:NO)、参照テーブル上において、参照可能範囲を温度調節可能な方向にシフト可能かが判別される(S62)。ここで、参照可能範囲のシフトを行うことが不可能と判定されると(S62:NO)、異常として、情報取得装置における動作が終了する。
【0127】
参照可能範囲のシフトを行うことが可能と判定されると(S62:YES)、CPU21は、参照可能範囲を温度調整可能な方向に1つシフトさせる(S63)。これにより、新たな参照可能範囲が再設定される。
【0128】
ここで、S63における参照可能範囲のシフト方向は、温調素子12の制御状態に基づいて決定される。たとえば、温調素子12の加熱制御中に、駆動電流が最大値に到達したことにより、検出温度を目標温度に調節できなくなったと判定された場合には、参照可能範囲は、図9(a)に示す参照テーブル上において、右方向へ1つシフトされる。また、温調素子12の冷却中に、駆動電流が最大値に到達したことにより検出温度を目標温度に調節できなくなったと判定された場合、参照可能範囲は、参照テーブル上において、左方向へ1つシフトされる。以下、S64、S65では、図15(a)のS46、S47と同様の処理が行われる。
【0129】
図17(b)は、図17(a)の処理により、参照可能範囲が、図9(a)の状態から右方向に1つシフトされた状態を示す図である。
【0130】
図示の如く、参照可能範囲は、図9(a)の30℃〜50℃の範囲から、右方向に1つシフトして40℃〜60℃となっている。これに伴い、図9(a)の参照可能範囲においてS/N比が最大となるセンサ温度と傾き角も変化する。すなわち、図9(a)の参照可能範囲では、センサ温度が30℃、傾き角が5°のときにS/N比が最大の80となったが、図16(b)の参照可能範囲では、センサ温度が40℃、傾き角が10°のときにS/N比が最大の75となる。
【0131】
このように参照可能範囲が再設定されると、上記実施形態3と同様、より適切にレーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角を調節できる。
【0132】
また、図16(a)に示したように参照可能範囲を再設定する際に、雰囲気温度を取得する温度センサ18を使用することなく、参照可能範囲を再設定できる。このため、上記実施形態1、2においても図16(a)のように参照可能範囲が再設定されれば、より適切にレーザ光源11の温度とフィルタ211の傾き角を調節することができる。
【0133】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0134】
たとえば、上記実施の形態では、目標領域にレーザ光を広げて投写するようにしたが、目標領域をレーザ光が走査するように構成しても良い。この場合、レーザ光の走査手段として、ミラーを用いたスキャン機構(たとえば、特開2008−102026号公報)やレンズを用いたスキャン機構(たとえば、特開2006−308558号公報)を用いることができる。また、レーザ光の走査位置が検出可能であれば、CMOSイメージセンサに替えて、受光光量を検出可能な光検出器を用いることができる。
【0135】
また、上記図11の構成例では、調整板15とフィルタ211が反対方向に傾けられることにより光路補正を行うようにしたが、制御信号により回折作用が変化する回折素子等、他の光路補正素子を用いることもできる。
【0136】
また、上記実施の形態では、光源としてレーザ光源を用いたが、これに替えて狭帯域LEDを用いることもでき、また、CMOSイメージセンサ14に替えて、高速応答性のCCDイメージセンサを用いることもできる。さらに、情報取得装置1と情報処理装置2は一体化されても良い。
【0137】
また、上記実施の形態の参照テーブル(図9(a)、図17(b)参照)には、温度センサ13の検出温度に対応して、複数のフィルタ211の傾き角におけるS/N比が記憶されたが、各センサ温度においてS/N比が最大となる傾き角のみが記憶されるようにしても良い。
【0138】
また、上記実施形態1で示した“フィルタの傾き角制御”(図11(b)参照)は、情報取得装置1の電源がONされた後に1度だけ実行されたが、“レーザ光源の温度制御”と同様、いったんフィルタ211の傾き角が最適な傾き角に合わせられた後も、最適な傾き角が維持されるよう、フィルタ211の傾き角が繰り返し制御されるようにしても良い。
【0139】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 情報取得装置
10 光源モジュール(投射光学系)
11 レーザ光源(光源)
12 温調素子
13、18 温度センサ
23 CMOSイメージセンサ(受光素子)
31 CPU(制御部)
200 フィルタ駆動部(アクチュエータ)
210 アクチュエータ
211 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置において、
所定波長帯域の光を出射する光源と、
前記光源の温度を調節する温調素子と、
前記光源の温度を検出する温度センサと、
前記光源から出射された前記光を前記目標領域に向けて投射する投射光学系と、
前記目標領域から反射された反射光を透過させるためのフィルタと、
前記フィルタを透過した前記反射光を受光して信号を出力する受光素子と、
前記反射光に対する前記フィルタの傾き角を変化させるアクチュエータと、
前記温調素子により設定可能な前記光源の温度範囲内で、前記受光素子の受光量が最大となるよう前記温調素子および前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報取得装置において、
前記制御部は、前記温度センサによって検出される前記温度と当該温度において最大透過率を与える前記フィルタの前記傾き角とに対応づけて前記最大透過率に関する情報が記載されたテーブルを備え、当該テーブルに基づいて前記温調素子および前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報取得装置において、
前記制御部は、雰囲気温度に基づいて前記テーブルの参照範囲を決定し、当該参照範囲内で前記最大透過率が最大となる前記温度と前記傾き角を前記テーブルから取得し、前記温度センサによって検出される前記温度および前記フィルタの傾き角が、前記テーブルから取得した前記温度と前記傾き角となるよう前記温調素子および前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報取得装置において、
前記制御部は、前記フィルタの前記傾き角が前記テーブルから取得した前記傾き角となるよう制御した後、前記フィルタの透過率が最も大きくなるよう前記フィルタの前記傾き角を微調整する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の情報取得装置において、
前記制御部は、前記温調素子によって、前記温度センサによって検出される前記温度を前記テーブルから取得した前記温度とすることができないとき、前記テーブルの参照範囲を再決定し、再決定後の参照範囲に基づいて前記温調素子および前記アクチュエータを制御する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の情報取得装置を有する物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−117849(P2011−117849A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275921(P2009−275921)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】