説明

物体検知センサ

【課題】発光素子を発光させたときの受光量と、発光素子を発光させないときの受光量とを対比して物体の有無を検知する物体検知センサにおいて、蛍光灯等の周期的に変化する外乱光による誤検知を防止する。
【解決手段】発光素子1、受光素子2、及び発光素子を発光させたときの受光量Aと発光素子を発光させないときの受光量Bとを比較して物体の検知を判定する判定手段3を有する物体検知センサにおいて、受光量Aを計測する時間の長さTと受光量Bを計測する時間の長さTを等しくすると共に、該時間の長さTを商用電源の半周期の整数倍とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や各種物品などの物体を検知するためのセンサに係り、特に発光素子と、人体等の物体からの反射光を受光する受光素子とを有する物体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
洗面器の自動水栓や自動洗浄式トイレなどにおいては、発光素子から光を前方に投射し、人体からの反射光を受光素子で受光すると共に、発光素子を発光させないで受光素子で受光し、両者の受光強度差が所定値以上であれば人体が存在するものと判定する人体検知センサが広く用いられている。
【0003】
このような発光素子及び受光素子を有する物体検知センサにおいては、検知対象エリアを照明する照明器具として蛍光灯が用いられていると、蛍光灯の発光強度が商用電源の周期に応じて変化するため、誤検知が生じるおそれがある。特許文献1(特開平6−51061)には、発光素子及び測距用受光素子を備えた物体検知センサにおいて、周期的な外乱光の周期でない周期を有する測距開始信号を発することによって、蛍光灯等の外乱光の影響を受けない時期に測距することが記載されているが、1回の人体検知作動に際して多数回測距を行うので、制御が複雑である。また、この特許文献1では、多数回測距を行っても蛍光灯などの外乱光が影響し、測定精度が低くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−51061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発光素子を発光させたときの受光量と、発光素子を発光させないときの受光量とを対比して物体の有無を検知する物体検知センサにおいて、蛍光灯等の周期的に変化する外乱光による誤検知を比較的簡易な手段によって確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明(請求項1)の物体検知センサは、発光素子、受光素子、及び発光素子を発光させたときの受光量Aと発光素子を発光させないときの受光量Bとを比較して物体の検知を判定する判定手段を有する物体検知センサにおいて、受光量Aを計測する時間の長さと受光量Bを計測する時間の長さを等しくすると共に、該時間の長さを商用電源の半周期の整数倍(1倍以上)としたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の物体検知センサは、請求項1において、前記時間の長さを商用電源の半周期の1〜5倍としたことを特徴とするものである。
【0008】
第2発明(請求項3)の物体検知センサは、発光素子、受光素子、及び発光素子を発光させたときの受光量Aと発光素子を発光させないときの受光量Bとを比較して物体の検知を判定する判定手段を有する物体検知センサにおいて、受光量Aを計測する時間の長さと受光量Bを計測する時間の長さを等しくすると共に、受光量Aの計測開始時点と受光量Bの計測開始時点との時間差を商用電源の半周期の整数倍(1倍以上)としたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の物体検知センサは、請求項3において、前記時間差を商用電源の半周期の40〜70倍としたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の物体検知センサは、請求項1ないし4のいずれか1項において、商用電源の周期の判断手段又は入力手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、本明細書において、整数は1以上とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明及び第2発明の物体検知センサにあっては、発光素子を発光させたときの受光量Aと発光させないときの受光量Bとを比較するに際し、受光量A,Bを検知する時間の長さを等しくする。
【0013】
第1発明では、この時間の長さを商用電源の半周期の整数倍とする。これにより、受光量Aの計測時間帯における蛍光灯の受光量と受光量Bの計測時間帯における蛍光灯の受光量とが同一となるので、受光量Aと受光量Bとの差は、物体からの反射光にのみ依存したものとなる。このため、物体の有無を高精度にて判定することができる。
【0014】
第2発明では、受光量Aの計測開始時点と受光量Bの計測開始時点との時間差を商用電源の半周期の整数倍とする。これによっても、受光量Aの計測時間帯における蛍光灯の受光量と受光量Bの計測時間帯における蛍光灯の受光量とが同一となるので、受光量Aと受光量Bとの差は、物体からの反射光にのみ依存したものとなる。このため、物体の有無を高精度にて判定することができる。
【0015】
本発明の物体検知センサの電源を商用電源とする場合には、この商用電源の周期が50Hz、60Hzのいずれであるかを判断する判断手段を設けるのが好ましい。商用電源が電池(乾電池、太陽電池等)を電源とする場合には、商用電源が50Hz、60Hzのいずれであるかを入力して設定するための入力手段を設けるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る物体検知センサを備えたトイレルームの模式図である。
【図2】第1発明の実施例を示す説明図である。
【図3】第2発明の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0018】
第1図は本発明の物体検知センサを備えたトイレルームの模式図である。この物体検知センサは、発光素子1と、受光素子2と、発光素子1を駆動すると共に、受光素子2からの信号を処理して人体の有無を判定する信号処理回路3を備えている。トイレルームの天井又は壁には蛍光灯4が設置されている。この実施の形態では、周期50Hzの商用電源によって蛍光灯4が発光動作する。この実施の形態では、トイレルームには窓がなく、外乱光は蛍光灯の光のみである。
【0019】
第2図を参照して、第1発明に係る物体検知センサによる物体としての人体Pの検知作動について説明する。50Hz商用電源の周期Tは20msecであるので、蛍光灯4はその半周期の10msecにて発光強度が変化する。この実施の形態では、時刻t〜tの間で発光素子1を発光させ、かつこのt〜t間で受光量を計測し、このときの受光量をAとする。また、時刻t〜tの間で、発光素子1を発光させることなく受光量を計測し、このときの受光量をBとする。この時刻t,tの時間差T及び時刻t,tの時間差Tは同一であり、T=T(20msec)とされている。受光量Aの計測時間帯と受光量Bの計測時間帯との時間差Lは、商用電源周波数に関わりなく設定される。
【0020】
この実施の形態では、受光量A,Bの計測時間の長さTを商用電源の1周期Tと同一としているため、人体Pが存在しないときの受光量Bは、計測開始時刻tがいかなる時刻であっても同一であり、第2図のt〜t間の斜線部の面積に相当する。
【0021】
人体Pが発光素子1及び受光素子2の前方所定距離以内に存在するときには、受光量Aは、蛍光灯からの受光量Bと反射による受光量との和となる。従って、A−Bが所定値を超えるときには人体Pが存在するものと判定され、そうでないときには人体Pが不存在であると判定される。この人体検知信号に基いて、水栓からの吐水や、便器の自動洗浄などが行われる。
【0022】
この説明では、T=T(20msec)としているが、TはT/2でもよく、T/2の整数倍であってもよい。なお、検知時間を短くするためにTは商用電源の半周期の1〜10倍特に1〜5倍であることが好ましい。また、Lは1μsec〜1msec、特に1msec〜10msec程度が好ましい。
【0023】
第3図を参照して第2発明の実施の形態について説明する。この実施の形態においても、50Hz商用電源の周期は20msecであるので、蛍光灯4はその半周期の10msecにて発光強度が変化する。この実施の形態では、時刻t〜tの間で発光素子1を発光させ、かつこのt〜t間で受光量を計測し、このときの受光量をAとする。また、時刻t〜tの間で、発光素子1を発光させることなく受光量を計測し、このときの受光量をBとする。この時刻t,tの時間差T及び時刻t,tの時間差Tは同一であり、第3図ではT=7msecとされている。受光量Aの計測開始時刻tと受光量Bの計測開始時刻tとの時間差は商用電源周期Tの半周期10msecの整数倍n・T/2である。nは1以上の整数である。第3図ではtとtの時間差は40msecである。
【0024】
受光量A,Bの計測時間の長さTを同一とし、かつ計測開始時刻t,tの時間差をTの半周期10msecの整数倍としているので、人体Pが存在しないときの受光量A,Bは同一である。即ち、tとtの位相が等しく、かつ(t−t)=(t−t)であるので、人体Pが存在しないときの受光量A,Bは等しい。
【0025】
人体Pが発光素子1及び受光素子2の前方所定距離以内に存在するときには、受光量Aは、受光量Bと反射による受光量との和となる。従って、A−Bが所定値を超えるときには人体Pが存在するものと判定され、そうでないときには人体Pが不存在であると判定される。この人体検知信号に基いて、水栓からの吐水や、便器の自動洗浄などが行われる。
【0026】
なお、検知時間を短くするために、tとtの時間差は商用電源の半周期の1〜20倍であることが好ましい。また、Tは10μsec〜1msec、特に10μsec〜100μsec程度が好ましい。
【0027】
上記実施の形態では商用電源周期を50Hzとしているが、60Hzであってもよい。物体検知センサの電源が商用電源であれば、物体検知センサに商用電源周期を判定する回路を設置するのが好ましい。物体検知センサの電源が電池であるときには、商用電源周期が50Hz、60Hzのいずれであるかを入力するための手段、例えば切替スイッチなどを設けるのが好ましい。なお、受光素子の受光量の変化周期に基いて商用電源周波数を判断するよう構成してもよい。
【0028】
上記実施の形態では、蛍光灯が50Hz又は60Hzの2倍周期で点滅するものとして説明を行っているが、蛍光灯がインバータ式のものであっても本発明を適用できる。即ち、インバータ式蛍光灯では、周波数を50Hz又は60Hzの整数倍としているので、第1及び第2発明のいずれも適用できる。
【0029】
上記実施の形態では外乱光は蛍光灯の光のみとなっているが、窓から差し込む太陽光などの外光が重畳してもよい。
【0030】
本発明では、t〜tまで又はt〜tまでの人体検知作動を1秒間に1〜10回、特に2〜4回程度行うのが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
1 発光素子
2 受光素子
3 信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子、
受光素子、及び
発光素子を発光させたときの受光量Aと発光素子を発光させないときの受光量Bとを比較して物体の検知を判定する判定手段
を有する物体検知センサにおいて、
受光量Aを計測する時間の長さと受光量Bを計測する時間の長さを等しくすると共に、該時間の長さを商用電源の半周期の整数倍(1倍以上)としたことを特徴とする物体検知センサ。
【請求項2】
請求項1において、前記時間の長さを商用電源の半周期の1〜5倍としたことを特徴とする物体検知センサ。
【請求項3】
発光素子、
受光素子、及び
発光素子を発光させたときの受光量Aと発光素子を発光させないときの受光量Bとを比較して物体の検知を判定する判定手段
を有する物体検知センサにおいて、
受光量Aを計測する時間の長さと受光量Bを計測する時間の長さを等しくすると共に、受光量Aの計測開始時点と受光量Bの計測開始時点との時間差を商用電源の半周期の整数倍(1倍以上)としたことを特徴とする物体検知センサ。
【請求項4】
請求項3において、前記時間差を商用電源の半周期の40〜70倍としたことを特徴とする物体検知センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、商用電源の周期の判断手段又は入力手段を設けたことを特徴とする物体検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117893(P2012−117893A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267012(P2010−267012)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】