説明

物品および物品を形成する方法

【課題】延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートをプラスチック材料に結合することによって形成される物品を提供すること。
【解決手段】物品が提供される。この物品は、プラスチック材料と、そのプラスチック材料に結合された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネート(16)とを含み、ePTFEラミネートは、そのプラスチック材料にレーザ溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する実施形態は、一般に、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートをプラスチック材料に結合することによって形成される物品に関し、より詳細には、マイクロベント(microvent)を形成するためにePTFEラミネートをプラスチックハウジングまたはエンクロージャに封止状態で結合するレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信機器、照明エンクロージャ、制御ユニット、センサ、電気デバイスおよび電子デバイス(コンピュータ、携帯電話、PDA、および双方向無線機を含む)、および船舶用装置のための構成要素、ならびにゲージ、車軸、トランスミッション、モーター、および外部照明を含む自動車構成要素は、過酷な環境要素および条件にさらされる。これらの構成要素は、塵埃や汚物などの液体およびデブリを効果的に遮断するとともに保護ベントを通して熱放散および/またはガス透過を可能にするガス透過性保護ベントを含む。さらに、エンクロージャシールを損傷し、それにより水または潤滑剤などの流体ならびに汚物および塵埃を含むデブリに影響を受けやすい構成要素をさらすことがある圧力差を、保護ベントは防止または制限することができる。
【0003】
温度が変化すると、エンクロージャの内部容積と外的環境との間に圧力差が生じることがある。温度の変化は、環境温度変動、エレクトロニクスおよび照明によって引き起こされる変動、エンジン熱、噛み合い歯車によって引き起こされる摩擦、風、および/または散水を含む様々な要因によって引き起こされることがある。これらの圧力が均一化または軽減されない場合、この圧力がハウジングおよびシールに応力を与え、それが亀裂、漏洩、およびハウジングまたはシールの故障を引き起こすことがあり、それが結局はエンクロージャへの水および汚染物質の侵入をもたらし、最終的にデバイス故障をもたらすことがある。
【0004】
凝縮は、多くの用途で、例えば自動車エンジン構成要素や外部照明の中などでさらに悪影響をもたらすことがある。例えば、照明エンクロージャに入った凝縮は光出力を低下させ、安全および/または品質の問題を引き起こすことがある。凝縮はさらに回路基板を腐食し、普通よりも早く構成要素故障を引き起こすことがある。水および水蒸気が、不完全なシール、亀裂、ならびにコネクタおよび/またはハウジングで使用されるプラスチック材料を通してエンクロージャに入ることがある。
【0005】
従来の構成要素は、長いチューブ、ガタつくキャップ、蛇行した経路、発泡体、一方向弁もしくはハーメチックシール、または1つもしくは複数のベントを含むことがある。少なくともいくつかのベントはガス透過性で疎油性のメンブランを含み、メンブランは、液体、汚物、および塵埃がハウジングに入らないようにしながら、ハウジングの内部と周囲との間で空気およびガスを連続的に交換できるようにする。1つの好適なメンブランにはePTFEが含まれる。ePTFEメンブランの微孔質構造体は、ガスが自由に通過できるようにしながら液体浸入を防止して、液体に接触した後でさえ漏洩を防止または制限し、高レベルの空気流をもたらし、汚染を防止する。
【0006】
そのようなベントを製造する従来の方法は、感圧接着剤あるいは超音波またはホットバー接合プロセスを使用して、ePTFEメンブランをプラスチックハウジングに取り付けることを含む。これらの両手法では特有な問題および/または欠点が生じる。接着剤は汚染問題をもたらし、超音波またはホットバー接合プロセスは、望ましくない比較的大きい不連続および/または一貫しない接合線を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7306729号公報
【特許文献2】米国特許第6582113号公報
【特許文献3】米国特許第6274043号公報
【特許文献4】米国特許第6196708号公報
【特許文献5】米国特許第6130175号公報
【特許文献6】米国特許第6030694号公報
【特許文献7】米国特許第5879789号公報
【特許文献8】米国特許第5426128号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、物品が提供される。この物品は、プラスチック材料と、そのプラスチック材料に結合された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートとを含む。
【0009】
別の態様では、物品を形成するために延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートをプラスチック材料に結合する方法が提供される。この方法は、プラスチック材料を供給することを含む。ePTFEラミネートはプラスチック材料上に位置決めされ、ePTFEラミネートはプラスチック材料に結合される。
【0010】
別の態様では、マイクロベントが提供される。このマイクロベントは、開口を画定するプラスチックハウジングを含む。延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートは、開口を封止するためにプラスチックハウジングに結合される。ePTFEラミネートは、熱可塑性重合体織物基材に積層されたePTFEメンブランを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プラスチックハウジングと、好適なレーザ溶接方法を使用してプラスチックハウジングに結合された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートとを含む例示的なマイクロベントの概略断面図である。
【図2】レーザ溶接装置、および好適なレーザ溶接方法を使用して製造された例示的なマイクロベントの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で説明する実施形態は、物品と、物品を形成するために延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネートをプラスチック材料に結合する方法とを提供する。本明細書で説明する実施形態は、マイクロベントと、マイクロベントを製作する方法とをさらに提供する。マイクロベントは、ガス透過性で水の浸透を防ぐベントを必要とすることがあるいかなる用途の使用にも好適である。例えば、本明細書で説明するようなマイクロベントは、照明エンクロージャ、家庭電化製品、携帯用および据置き用電子デバイスもしくは電気デバイス、船舶用途、センサ、自動車構成要素、コンピュータ、および通信機器での使用に好適となり得る。マイクロベントは、さらに、工業用および民生用の化学薬品および清浄剤、製薬およびバイオテクノロジーの製品、ならびに冷凍乾燥した製品をパッケージ化するために使用することができる。
【0013】
図1および図2を参照すると、例示的なマイクロベント10は、好適なプラスチック材料から製作された、ハウジング12などのエンクロージャを含む。一実施形態では、ハウジング12は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル材料を含む熱可塑性重合体材料などの好適なプラスチック材料で製作される。さらなる実施形態では、プラスチック材料は十分に強固であり、マイクロベント10に十分な強度を与える。代替実施形態では、ハウジング12は、限定はしないが、ナイロン、ポリウレタン、ガラス繊維入りプラスチック、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、および好適な材料の組合せを含む好適なプラスチック材料から製作される。ハウジング12は、本明細書で説明するようなレーザ溶接方法を使用してマイクロベント10を製造しやすくする任意の好適なプラスチック材料で製作できることが、当業者には明らかであり、提供した本明細書の教示によって導かれるであろう。一実施形態では、ハウジング12は、容積と、アパーチャ、孔、穴、通路および/またはスロットなどの1つまたは複数の開口14とを画定し、開口14は画定された容積と連通する。
【0014】
ePTFEラミネート16がハウジング12に結合される。一実施形態では、ePTFEラミネート16をハウジング12にレーザ溶接するためのレーザ溶接方法を使用してePTFEラミネート16がハウジング12に結合される。従来の結合方法または接合方法と比較してレーザ溶接方法の利点には、高い処理能力速度と、特に複雑な溶接線または高度な溶接線が必要である場合に材料の精密で正確な溶接線をもたらす比較的薄く精密な溶接線と、清潔さと、容易さとが含まれる。代替実施形態では、ePTFEラミネート16は、限定はしないが、超音波、高周波、またはホットバー溶接方法を含む任意の好適な結合方法を使用してハウジング12に結合される。一実施形態では、ePTFEラミネート16は1つまたは複数の熱可塑性重合体布地基層などの好適な織物基材18を含み、熱可塑性重合体布地基層には、限定はしないが、複合不織布地、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、または好適な熱可塑性材料の組合せなどを含む好適な織布および/または不織布の織物布地が含まれる。例示的実施形態では、織物基材18は、各々がハウジング12のプラスチック材料の融点よりも高い重合体融点を有する1つまたは複数の重合体を含む。特定の実施形態では、重合体融点とプラスチック材料融点との間の差は、約60℃よりも大きくなく、より具体的には約45℃よりも大きくなく、さらにより具体的には30℃よりも大きくない。一実施形態では、重合体の融点はプラスチック材料の融点に等しい。
【0015】
ePTFEラミネート16には、当業者には周知であり、限定はしないが熱積層プロセスまたは接着積層プロセスを含む提供した本明細書の教示によって導かれる任意の好適な積層プロセスを使用して織物基材18に積層された少なくとも1つのePTFEメンブラン20が含まれる。一実施形態では、ePTFEメンブラン20はレーザビームに対して透明である。
【0016】
図2をさらに参照すると、ePTFEラミネート16はハウジング12などのプラスチック材料に結合される。ハウジング12は1つまたは複数の開口14を画定する。一実施形態では、ePTFEラミネート16がプラスチック材料に結合されるとき形成される図1の断面に示されるような溶接線22にエネルギーを集中させやすくするために、プラスチック材料はカーボンブラックを含む。織物基材18に積層されたePTFEメンブラン20を含むePTFEラミネート16は、織物基層18が開口14の周囲を画定するハウジング12の表面に接触するように開口14上に位置決めされる。
【0017】
図2に示されるように、レーザ溶接装置30は焦点レンズ34を有するレーザヘッド32を含み、レーザヘッド32がePTFEラミネート16を端から端まで横断または移動するとき焦点レンズ34はePTFEラミネート16に接触し、ePTFEラミネート16に好適な圧力を印加する。レーザ溶接装置30はエネルギーを発生し、溶接線22を形成する。レーザヘッド32はレーザビーム(図示せず)を発生し、それは、ePTFEラミネート16をハウジング12およびシール開口14に結合させるために不織布基材18に積層されたePTFEメンブラン20を通る好適なエネルギーを発生する。より具体的には、一実施形態では、ePTFEラミネート16の織物基材18はハウジング12にレーザ溶接され、ePTFEラミネート16はハウジング12に結合される。
【0018】
一実施形態では、本明細書で説明するレーザ溶接方法がマイクロベント10を製造するために利用される。マイクロベント10は、1つまたは複数の開口14を画定するプラスチックハウジング12を含む。ePTFEラミネート16は開口14上に位置決めされ、ePTFEラミネート16はハウジング12にレーザ溶接され、ePTFEラミネート16はハウジング12およびシール開口14に結合される。一実施形態では、少なくとも織物基材18はハウジング12にレーザ溶接される。特定の実施形態では、焦点レンズ34がePTFEメンブラン20に接触して圧力を印加し、ePTFEラミネート16をハウジング12に押し付けるとき、レーザビームは織物基材18に積層されたePTFEメンブラン20を通過する。レーザヘッド32はレーザビームの形態でエネルギーを発生し、溶接線22を形成する。代替実施形態では、ePTFEラミレート16は、限定はしないが、超音波、高周波、またはホットバー溶接方法を含む任意の好適な結合方法を使用してハウジング12に結合される。
【実施例】
【0019】
実施形態を以下の実施例でより詳細に説明するが、実施例は単なる例示としてのものであり、それは、本明細書の多数の変形および変更が当業者には明らかであり、提供した本明細書の教示よって導かれるからである。
【0020】
方法
レーザ溶接装置および方法を利用して、220℃の融点(m.p.)を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)から製作されたハウジングへの以下の材料(表1)の溶接性を判定した。レーザ溶接装置は、ePTFEラミレートをハウジングに溶接するためにレーザビームの形態でエネルギーを発生する、焦点レンズを有するレーザ溶接ヘッドを含んでいた。80ミリメートル(mm)の焦点レンズが小さいクランプ固定具と共に使用された。2mmから50mmの円柱直径に対して4±0.5バールの試験圧力がさらに使用された。ePTFEラミネートは、ポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、ポリエチレン、または熱可塑性重合体材料の組合せなどの熱可塑性重合体を含む織物基材に積層されたePTFEメンブランを含んでいた。レーザ溶接方法の変数は、電力(ワット)、速度(ミリメートル/分(mm/分))、クランプ圧力(バール)、および焦点レンズの底部からePTFEラミレートの表面までの測定されたz軸高さ(ミリメートル(mm))を含んでいた。以下の表2は試験観測結果を含む。
【0021】
材料
【0022】
【表1】

試験観測結果
【0023】
【表2】

実施例は、試験材料の溶接性について以下の観測結果を提供している。(a)ePTFEメンブランは、布地に積層されない限り硬質プラスチックに溶接することができなかったし、ePTFEメンブラン上の疎水性コーティングも疎油性コーティングも硬質プラスチックへの溶接を可能にしなかった。(b)ポリプロピレン布地をもつePTFEメンブランを含むラミレートは硬質プラスチックに溶接することができなかった、(c)ポリエステル布地またはナイロン布地をもつePTFEメンブランを含むラミレートは硬質プラスチックに首尾よく溶接することができた。
【0024】
上記の実施形態は、プラスチック材料に結合された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミレートを含む物品、およびその物品を形成する方法を提供する。上記の実施形態は、プラスチックハウジング内に画定されたまたはプラスチックハウジングによって画定された1つまたは複数の開口を封止するために、プラスチックハウジングに結合された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミレートを含むマイクロベントを製造するのに好適な高速レーザ溶接方法をさらに提供する。マイクロベントは、1つまたは複数の開口を画定するプラスチックハウジングを含む。ePTFEラミレートは、1つまたは複数の開口を封止するためにプラスチックハウジングにレーザ溶接される。ePTFEラミレートは、熱可塑性重合体の織布または不織布基材と、熱可塑性重合体織物基材に積層されたePTFEメンブランとを含む。
【0025】
物品、および物品を形成する方法、ならびにマイクロベント、およびマイクロベントを製造する方法の例示的な実施形態が詳細に上記されている。物品、方法、およびマイクロベントは、本明細書で説明した特定の実施形態に限定されず、むしろ、この方法のステップおよび/または物品またはマイクロベントの構成要素は、本明細書で説明した他のステップおよび/または構成要素から独立して単独で利用することができる。さらに、説明した方法のステップおよび/または物品もしくはマイクロベントの構成要素は、他の方法および/または装置において定義することもでき、あるいは他の方法および/または装置と組み合わせることもでき、本明細書で説明したような方法および物品もしくはマイクロベントだけで実施することに限定されない。
【0026】
この書面の説明は、最良の形態を含めて本発明を開示するために、さらに当業者が任意のデバイスまたはシステムを製作および使用することならびに任意の統合した方法を行うことを含めて本発明を実施できるために実施例を使用している。本発明の特許の範囲は特許請求の範囲によって定義されており、当業者が着想する他の例を含むことができる。そのような他の例が特許請求の範囲の文字どおりの意味と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字どおりの意味と実質的に差がない等価構造要素を含む場合、それらは特許請求の範囲内にあるものである。
【符号の説明】
【0027】
10 マイクロベント
12 ハウジング
14 シール開口
16 ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミネート
18 織物基材
20 ePTFEメンブラン
22 溶接線
30 レーザ溶接装置
32 レーザヘッド
34 焦点レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料と、
前記プラスチック材料に結合された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)ラミレート(16)であって、前記プラスチック材料にレーザ溶接されるePTFEラミレートと
を含む物品。
【請求項2】
前記プラスチック材料が開口(14)を画定し、前記ePTFEラミレート(16)が、前記開口を封止するために前記プラスチック材料に結合される、請求項1記載の物品。
【請求項3】
マイクロベント(10)を含む、請求項2記載の物品。
【請求項4】
前記プラスチック材料がポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至3のいずれか1項記載の物品。
【請求項5】
前記ePTFEラミレート(16)が、織物基材(18)に積層された少なくとも1つのePTFEメンブラン(20)を含む、請求項1乃至4のいずれか1項記載の物品。
【請求項6】
前記少なくとも1つのePTFEメンブラン(20)が、前記織物基材(18)に熱により積層されるか、または接着により積層される、請求項5記載の物品。
【請求項7】
前記織物基材(18)が、前記プラスチック材料の融点よりも高い融点を有する少なくとも1つの重合体を含む、請求項5記載の物品。
【請求項8】
前記少なくとも1つの重合体の融点と前記プラスチック材料の融点との間の差が60℃よりも大きくない、請求項7記載の物品。
【請求項9】
前記少なくとも1つの重合体の融点と前記プラスチック材料の融点との間の差が45℃よりも大きくない、請求項7記載の物品。
【請求項10】
前記少なくとも1つの重合体の融点と前記プラスチック材料の融点との間の差が30℃よりも大きくない、請求項7記載の物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−69876(P2010−69876A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209869(P2009−209869)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】