説明

物品の緩衝支持構造

【課題】緩衝部材として優れた、弾性変形が可能な球体を採用することを前提とし、安価でかつ汎用性に富み、しかも製造コストの低減化に貢献することができるようにする。
【解決手段】輸送時や取り扱い時に物品Gを緩衝的に梱包して支持するための物品Gの緩衝梱包箱(緩衝支持構造)10であって、物品Gを収納する、底板21および収納空間V1を備えた段ボール箱20と、底板21に敷設される緩衝部材としてのエラストマーまたは軟質の合成樹脂からなる弾性変形が可能な内部が空洞の複数の球体40とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に輸送に供される各種の物品を緩衝的に支持することが可能な物品の緩衝支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような物品の緩衝支持構造(特許文献1では衝撃吸収クッション)が知られている。この衝撃吸収クッションは、特に物品(被梱包物)を梱包して搬送するときに梱包材として使用されるものであり、輸送途中での被梱包物の損傷を防止することを主な目的とするものである。
【0003】
この衝撃吸収クッションは、軟質で通気性を有し、かつ、立体形状とされた状態で被梱包物を被覆し得る凹部が形成される袋体と、この袋体の内部に収容される複数個の弾性変形が可能な球状体とを備えて構成されている。
【0004】
このような衝撃吸収クッションによれば、被梱包材の両端部にそれぞれ袋体の凹部を外嵌することにより、当該被梱包材は、一対の衝撃吸収クッションに挟持されて支持された状態になるため、この状態の被梱包材を例えば段ボール箱に詰め込むことにより、輸送途中で当該被梱包材が振動したり衝撃を受けたりしても、この振動は、袋体内の球状体の弾性変形によって吸収され、これによって被梱包材は損傷しないように保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−178797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような衝撃吸収クッションにあっては、軟質で通気性を有し、かつ、立体形状にされた状態で凹部が形成される特殊な形状の高価な袋体を採用しなければならず、製造コストが嵩むという問題点を有している。
【0007】
また、衝撃吸収クッションは、被梱包材が袋体に形成された凹部に対応し得る立体形状を備えていない場合、その被梱包材を対象として採用することができず、汎用性が劣るという問題点を有している。
【0008】
かかる不都合を解消するべく、各種の被梱包材に対応させ得るように多種類の衝撃吸収クッションを予め製造しておけばよいが、こうすると、いわゆる他品種少量生産の状態になり、製造工程が複雑になって製造設備の設備コストや工程コストが嵩むという新たな問題点が提起される。
【0009】
本発明は、従来のかかる問題点を解消するためになされたものであり、緩衝部材として優れた、弾性変形が可能な球体を採用することを前提とし、安価でかつ汎用性に富み、しかも製造コストの低減化に貢献することができる物品の緩衝支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、物品を緩衝的に支持する物品の緩衝支持構造であって、物品を収納する、底板および収納空間を備えた収納箱と、前記底板に敷設される緩衝部材とを備え、前記緩衝部材は、エラストマーまたは軟質の合成樹脂からなる弾性変形が可能な内部が空洞の複数の球体を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成によれば、底板上に緩衝部材としての球体の複数個を敷設した状態の収納箱に物品を収納すれば、当該物品は、複数の球体の上に載置された状態になる。そして、球体は、エラストマーまたは軟質の合成樹脂からなる弾性変形が可能なものであるため、収納箱内の物品は、当該物品の重量により弾性変形した所定数の球体に支持される。従って、物品の収納された収納箱の輸送や取り扱い過程で物品が振動したり衝撃を受けたりしても、この振動や衝撃は、物品を支持している球体のさらなる弾性変形およびそれからの復元、並びにときには球体の転動によって吸収され、これによる緩衝作用で物品が衝撃や振動から保護される。
【0012】
そして、緩衝支持構造は、収納箱の底板上に複数の球体を単に敷設することで構成されているため、その構造が極めて簡単であり、従来の凹部を備えた袋体内に球体を密封するものと比べて極めて安価で製造コストが嵩むようなことはなく、しかもいかなる形状の物品であっても対応することが可能であって汎用性に富んだものになる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記緩衝部材は、前記複数の球体を保持する上下一対の保持シートを備え、前記上下一対の保持シート間には、球体を保持するための互いに平行に形成された複数列の球体保持筒が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、複数の球体が保持シートに形成された複数列の球体保持筒にそれぞれ収容されることにより、球体の配列状態が確定されて安定し列間で均一に分布した状態になるため、物品の支持が特定の球体に集中するような不都合が回避される。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の物発明において、前記緩衝部材は、前記複数の球体を保持する保持トレイを備え、前記保持トレイには、球体を保持するための複数の球体装着凹部が凹設されていることを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、複数の球体が保持トレイに複数の球体装着凹部にそれぞれ装着されることにより、球体の配列状態が確定されて安定し底板上で全体的に均一に分布した状態になるため、物品の支持が特定の球体に集中するような不都合がさらに有効に回避される。
【0017】
また、球体は、球体装着凹部内でその内壁面に摺接しながら回動することが可能であるため、この回動によっても物品に加わる衝撃や振動が吸収される。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、物品は、所定の板体を介して前記複数の球体に支持されることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、物品の荷重は、板対を介して均一に分散された状態で球体に伝えられるため、一部の球体に過大な負荷が加わるような不都合が回避される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、物品を緩衝的に支持する緩衝支持構造は、収納箱の底板上に複数の球体が敷設されることで構成されているため、その構造が極めて簡単であり、従来の凹部を備えた袋体内に球体を密封するものと比べて極めて安価に製造することができるとともに、いかなる形状の物品であっても対応することができ、緩衝支持構造を極めて汎用性に富んだものにすることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、複数の球体が保持シートに形成された複数列の球体保持筒にそれぞれ収容されているため、球体の配列状態が確定されて安定し列間で均一に分布した状態になり、これによって物品の支持が特定の球体に集中するような不都合を回避することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、複数の球体が保持トレイに形成された複数の球体装着凹部にそれぞれ装着されているため、球体の配列状態が確定されて安定し底板上で全体的に均一に分布した状態になり、これによって物品の支持が特定の球体に集中するような不都合をさらに有効に回避することができる。
【0023】
また、球体は、球体装着凹部内でその内壁面に摺接しながら回動することが可能であるため、この回動によっても物品に加わる衝撃や振動を吸収することができ、これによっても物品をより効果的に保護することができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、物品は、板体を介して複数の球体に支持されため、物品の荷重は、板対を介して均一に分散された状態で球体に伝えられ、これによって一部の球体に過大な負荷が加わるような不都合の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る緩衝梱包箱の第1実施形態を示す一部切欠き分解斜視図である。
【図2】本発明に係る緩衝梱包箱の第1実施形態を示す一部切欠き斜視図である。
【図3】本発明に係る緩衝梱包箱の第1実施形態を示す一部切欠き組み立て斜視図である。
【図4】緩衝梱包箱によって物品が梱包された状態を示す一部切欠き斜視図である。
【図5】図4に示す緩衝梱包箱のV−V線断面図である。
【図6】本発明に係る緩衝梱包箱の第2実施形態を示す一部切欠き分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明に係る緩衝梱包箱10の第1実施形態を示す一部切欠き分解斜視図であり、図2は、緩衝梱包箱10に装着される、複数の球体が保持シート30に保持されることによって形成された緩衝部材31を示す一部切欠き斜視図である。また、図3は、緩衝梱包箱10の一部切欠き組み立て斜視図であり、図4は、物品Gが緩衝梱包箱10によって梱包された状態を示す一部切欠き斜視図である。さらに、図5は、図4のV−V線断面図である。なお、図1〜図5において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0027】
まず、図1に示すように、緩衝梱包箱(緩衝支持構造)10は、物品Gを収納する段ボール箱(収納箱)20と、この段ボール箱20に収納される上下一対の保持シート30と、これら上下一対の保持シート30間に保持される複数の球体40と、前記保持シート30の上に積層される積層板(板体)39とを備えて構成されている。かかる緩衝梱包箱10内の積層板39より上方の空間に物品Gを収納する収納空間V1が形成されている。
【0028】
前記段ボール箱20は、所定の展開形状に切断処理された段ボール紙が折り起こされることによって形成した直方体状を呈する通常のものである。かかる段ボール箱20は、平面視で前後寸法が左右寸法より長めに設定された底板21と、この底板21の左右方向へ延びる短辺側の各縁部から立設された前後方向一対の短尺側壁22と、前記底板21の前後方向へ延びる長辺側の各縁部から立設された左右方向一対の長尺側壁23と、前記各短尺側壁22の上縁部からそれぞれ折り曲げ可能に延設された前後方向一対の内蓋24と、前記各長尺側壁23の上縁部からそれぞれ折り曲げ可能に延設された左右方向一対の外蓋25とを備えている。
【0029】
前記底板21は、前記短尺側壁22および長尺側壁23の各下縁部から延設された前記内蓋24および外蓋25と同様の延設片が内側に向かって折り曲げられた上で、粘着テープTの貼着で開き止めされることにより形成されている。
【0030】
かかる底板21には、その内面(上面)側を面一にするための所定形状(本実施形態では矩形状)の中敷き板(板体)26が敷設されている。この中敷き板26により底板21の内面に形成された段差が解消され、これによって後述する緩衝部材31が底板21に均等に支持されるようになっている。
【0031】
前記各保持シート30は、平面形状が前記底板21のそれと略同一の矩形状に設定されている。かかる保持シート30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロライド、ポリアミド、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、AS(スチレンアクリルニトリル共重合体)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性合成樹脂を原料として形成されている。
【0032】
そして、このような一対の保持シート30の内の下位のものの上に、図1に示すように、マトリックス状に前後左右へ向けて複数の球体40を配列した上で、これら複数の球体40の上にもう一方の保持シート30を被せ、引き続き上下一対の保持シート30に対し溶着処理を施すことにより、図2に示すような、一対の保持シート30と、これら一対の保持シート30により形成された球体保持筒33に保持される複数の球体40とからなる緩衝部材31が形成される。
【0033】
因みに、本実施形態においては、下位の保持シート30上で左右方向に並んだ球体40の列間および保持シート30の前後の縁部において、上下の保持シート30が互いに溶着処理されて複数の溶着条32(図2に点描で表示)が形成された状態で緩衝部材31が仕上がっている。かかる緩衝部材31が、図4および図5に示すように、段ボール箱20の底板21上に載置される。
【0034】
前記球体40は、天然ゴムや合成ゴム等のエラストマーあるいは軟質PVC(Poly vinyl chloride)などの軟質の合成樹脂を原料として製造されている。因みに軟質の合成樹脂とは、例えばASTM(American Society for Testing and Materials:アメリカ材料試験協会)の規格では、ASTM・D747、ASTM・D638、ASTM・D882に基づく引っ張り試験あるいは曲げ試験を行った結果の測定値である弾性率が700kgf/cmより小さい合成樹脂のことである。このことは、ASTM・D883に定義されている。
【0035】
このような球体40は、本実施形態においては、テニスボールのように真球状に形成され、外径(直径)寸法が20mm〜100mmに設定されているとともに、肉厚が0.1mm〜2.0mmに設定され、内部の空洞には1気圧〜2気圧に圧力設定された空気が密封されている。
【0036】
球体40の外径寸法が20mm〜100mmに設定されるのは、20mm未満であると弾性変形量が小さくなり、これによって適正な緩衝作用を得難くなる虞があるからであり、100mmを超えると複数個の球体40を段ボール箱20内に装填した状態でその容量が大きくなり過ぎ、段ボール箱20の物品Gの収納容量が低下するからである。
【0037】
また、球体40の肉厚が0.1mm〜2.0mmに設定されるのは、0.1mm未満であると破損し易くなるからであり、2.0mmを超えると材料コストが嵩む他、球体40が硬くなり過ぎて適正な弾性力が得難くなるからである。
【0038】
前記積層板39は、その上に載置される物品Gの荷重を均等に緩衝部材31に伝えるためのものである。かかる積層板39として、本実施形態においては、通常よりも構造的に丈夫に形成された(例えば2枚重ねにされた)段ボール紙が採用されている。
【0039】
そして、前記球体40の所定個数が2枚の保持シート30間に保持されることによって形成された緩衝部材31(図2)を上面開口から段ボール箱20(図1)内に挿入し、引き続き段ボール箱20内の緩衝部材31の上に積層板39を積層することによって当該積層板39より上方の空間に物品Gを収納する収納空間V1を備えた緩衝梱包箱10が完成する。
【0040】
かかる緩衝梱包箱10に上面開口から所定の物品Gを挿入した後、内蓋24および外蓋25で上面開口を閉止し、一対の外蓋25の各先端縁部が互いに対向した部分に粘着テープTを貼着することにより、図4および図5に示すように、物品Gが緩衝梱包箱10に梱包された状態になる。
【0041】
そして、物品Gが緩衝梱包箱10により梱包された状態では、当該物品Gは、図5に示すように、積層板39を介しその荷重が均等に分散されて複数の球体40を保持した緩衝部材31に支持されている。従って、荷役作業の途中や輸送の途中等で振動や衝撃が緩衝梱包箱10を介して物品Gに加わっても、その振動や衝撃は、複数の球体40の弾性変形によって吸収されるため、物品Gが損傷することが有効に防止される。
【0042】
そして、球体40は、内部に空気が封入されたいわゆるエアークッションの機能を果たす、エラストマーや軟質の合成樹脂からなる真球のものであるため、衝撃や振動がいずれの方向から加わっても対応することが可能である。従って、かかる球体40は、緩衝部材がウレタンフォームなどの発泡性合成樹脂やスポンジ等からなるものに比べて衝撃吸収性能は格段に向上したものになっており、結果として緩衝梱包箱10内の物品Gを、従来に比べて格段に向上した効果で衝撃や振動から保護することができる。
【0043】
図6は、本発明に係る緩衝梱包箱10′の第2実施形態を示す一部切欠き分解斜視図である。なお、図6におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
【0044】
第2実施形態においては、段ボール箱20内で球体40を保持するために、先の保持シート30に代えて保持トレイ35が採用されている。その他の構成については第1実施形態のものと同様である。
【0045】
かかる保持トレイ35は、前記段ボール箱20の底板21と略同一平面形状を有するトレイ本体36と、このトレイ本体36にマトリックス状で形成された、球体40を保持するための複数の球体装着凹部37とからなっている。
【0046】
前記トレイ本体36は、硬質のウレタンフォームなどの発泡性合成樹脂からなる所定厚み(本実施形態では略2mm)の板体によって形成されている。かかる板体にプレス成形処理を施すことによって前記球体装着凹部37が形成されている。球体装着凹部37は、上下が反転した四角錐台状に形成され、球体40の略上半分を上方へ突出させ得るように寸法設定されている。
【0047】
第2実施形態の緩衝梱包箱10′によれば、積層板39が球体40に直接支持されるため、積層板39に支持されている物品Gに衝撃や振動が加わった場合、球体40の弾性変形に加えて積層板39の移動による球体40の回動によっても衝撃が吸収され、これらによって物品Gがより確実に保護される。
【0048】
以上詳述したように、本発明に係る物品Gの緩衝梱包箱(緩衝支持構造)10,10′は、輸送時や取り扱い時に物品Gを緩衝的に梱包して支持するためのものであり、物品Gを収納する、底板21および収納空間V1を備えた段ボール箱20と、底板21に敷設される緩衝部材としてのエラストマーまたは軟質の合成樹脂からなる弾性変形が可能な内部が空洞の複数の球体40とを備えている。
【0049】
かかる構成によれば、段ボール箱20の底板21上に緩衝部材としての球体40の複数個を敷設し、これら複数の球体40の上に物品Gを載置した状態で当該物品Gを段ボール箱20に収納すれば、球体40がエラストマーまたは軟質の合成樹脂製からなる弾性変形が可能なものであるため、段ボール箱20内の物品Gは、弾性変形した所定数の球体40に支持された状態になる。従って、物品Gの収納された段ボール箱20の輸送過程で物品Gが振動しても、この振動は、物品Gを支持している球体40のさらなる弾性変形およびそれからの復元、並びにときには球体40の転動によって吸収され、これによる緩衝作用で物品Gが衝撃や振動から保護される。
【0050】
そして、緩衝梱包箱10,10′は、段ボール箱20の底板21上に複数の球体40が敷設されることで構成されているため、その構造が極めて簡単であり、従来の凹部を備えた袋体内に球体40を密封するものと比べて極めて安価に製造することができるとともに、いかなる形状の物品Gであっても対応することができ、緩衝支持構造を極めて汎用性に富んだものにすることができる。
【0051】
そして、第1実施形態の緩衝梱包箱10においては、複数の球体40が上下一対の保持シート30が重ね合わされた状態で上下の保持シート30間に互いに平行に形成された複数列の球体保持筒33内にそれぞれ収容された状態で底板21上に敷設されているため、球体40の配列状態が確定されて安定し列間で均一に分布した状態になり、これによって物品Gの支持が特定の球体40に集中するような不都合を回避することができる。
【0052】
また、第2実施形態の緩衝梱包箱10′においては、複数の球体40を保持した状態で底板21上に敷設される保持トレイ35が設けられ、保持トレイ35のトレイ本体36には、球体40を保持するためのマトリックス状に形成された複数の球体装着凹部37が凹設されている。
【0053】
従って、複数の球体40は、保持トレイ35にマトリックス状に形成された複数の球体装着凹部37にそれぞれ装着されるため、球体40の配列状態が確定されて安定し底板21上で全体的に均一に分布した状態になり、これによって物品Gの支持が特定の球体40に集中するような不都合をさらに有効に回避することができる。
【0054】
また、球体40は、球体装着凹部37内でその内壁面に摺接しながら回動することが可能であるため、この回動によっても物品Gに加わる衝撃や振動を吸収することができ、これによって物品Gをより効果的に保護することができる。
【0055】
さらに、物品Gは、積層板39を介して複数の球体40に支持されるため、物品Gの荷重は、板対を介して均一に分散された状態で球体40に伝えられ、これによって一部の球体40に過大な負荷が加わるような不都合の発生を回避することができる。
【0056】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0057】
(1)上記の実施形態においては、球体40は、保持シート30(第1実施形態)または保持トレイ35(第2実施形態)に支持された状態で段ボール箱20の底板21上に敷設されているが、本発明は、球体40を保持シート30または保持トレイ35を介して底板21上に敷設することに限定されるものではなく、多数の球体40を底板21上に直接並べてもよい。この場合、球体40が特定の位置に偏ることを防止するべく、可能な限り密集状態で敷設するのが好ましい。
【0058】
(2)上記の実施形態においては、保持シート30として熱可塑性樹脂製のものを例に挙げて説明したが、本発明は、保持シート30が熱可塑性合成樹脂製であることに限定されるものではなく、熱硬化性合成樹脂製のものであってもよいし、布製品や紙製品、さらには不職布等を採用してもよい。
【0059】
(3)上記の実施形態においては、保持トレイ35としてウレタンフォームなどの発泡性合成樹脂製のものを例に挙げて説明したが、本発明は、保持トレイ35が発泡性合成樹脂製のものであることに限定されるものではなく、通常の合成樹脂製のものや、厚手の紙製のものであってもよい。
【0060】
(4)上記の実施形態においては、球体40として真球状のものが採用されているが、本発明は、球体40が真球状のものであることに限定されるものではなく、楕円状のものであってもよい。
【0061】
(5)上記の実施形態おいては、球体40内が1気圧〜2気圧に設定されているが、本発明は、球体40内を1気圧〜2気圧に設定することに限定されるものではなく、状況に応じて1気圧未満に設定してもよいし、2気圧を超えて設定してもよい。
【0062】
(6)上記の実施形態においては、積層板39を段ボール紙によって形成しているが、段ボール紙に代えて硬質の合成樹脂製のものや例えば合板などの木材製のものを採用してもよい。
【0063】
(7)上記の実施形態においては、物品Gを収納する収納箱として段ボール箱20が採用されているが、本発明は、収納箱が段ボール箱20であることに限定されるものではなく、厚手のボール紙性のものや、木製のもの、さらには硬質の合成樹脂製のものや、金属製のものを採用してもよい。
【0064】
(8)上記の第1実施形態の緩衝梱包箱10においては、所定個数の球体40が一対の保持シート30によって形成された球体保持筒33内に装着されているが、こうする代わりに、各球体40を一対の保持シート30により挟持した状態で、球体40周りの上下の保持シート30を環状に溶着処理し、球体40を保持シート30内に密封した状態としてもよい。こうすることで球体40の移動を完全に阻止することができる。従って、梱包対象となる物品Gの形状に応じて保持シート30上における球体40の配置を設定した場合、当該配置が狂うような不都合の発生が防止される。
【0065】
(9)上記の第2実施形態の緩衝梱包箱10′においては、保持トレイ35のトレイ本体36に設けられた複数の球体装着凹部37がマトリックス状に配置されているが、こうする代わりに梱包対象となる物品Gの形状に応じて球体装着凹部37の配置を設定してもよい。こうすることで、物品Gの緩衝支持がより効果的に行われる。
【符号の説明】
【0066】
10,10′ 緩衝梱包箱(緩衝支持構造)
20 段ボール箱(収納箱)
21 底板
22 短尺側壁
23 長尺側壁
24 内蓋
25 外蓋
26 中敷き板(板体)
30 保持シート
31 緩衝部材
32 溶着条
33 球体保持筒
35 保持トレイ
36 トレイ本体
37 球体装着凹部
39 積層板
40 球体
G 物品
V1 収納空間
T 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を緩衝的に支持する物品の緩衝支持構造であって、
物品を収納する、底板および収納空間を備えた収納箱と、
前記底板に敷設される緩衝部材とを備え、
前記緩衝部材は、エラストマーまたは軟質の合成樹脂からなる弾性変形が可能な内部が空洞の複数の球体を備えていることを特徴とする物品の緩衝支持構造。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記複数の球体を保持する上下一対の保持シートを備え、前記上下一対の保持シート間には、球体を保持するための互いに平行に形成された複数列の球体保持筒が形成されていることを特徴とする請求項1記載の物品の緩衝支持構造。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記複数の球体を保持する保持トレイを備え、前記保持トレイには、球体を保持するための複数の球体装着凹部が凹設されていることを特徴とする請求項1記載の物品の緩衝支持構造。
【請求項4】
物品は、所定の板体を介して前記複数の球体に支持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の物品の緩衝支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−16559(P2011−16559A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163092(P2009−163092)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(391041844)押谷産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】