説明

物品処理機

【課題】食品などの物品の入った容器を用意するだけで、物品の入った容器に自動的に洗浄などの処理液による処理を容易に行うことができ、かつ、用いることのできる容器の制限が少なく、容器のバランスが変化しても作業が困難になりにくい物品処理機を提供する。
【解決手段】固定部材1に対して上下移動可能に取り付けた移動部材2の容器受け部22に、処理対象物品を入れた容器3を載せて、上記移動部材2を下げることで、処理液を満たした処理液槽5に浸して、処理対象物品を処理液で処理することができる物品処理機を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、物品の液体による処理機に関し、特にカット野菜などの食品の洗浄等を行う洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場などの現場において、カット野菜や冷凍食材などの食品を大規模に洗浄したり解凍したりする場合、連続的な流水に曝して洗うと水の使用量が多すぎるため、食品を籠に入れた上で水槽に浸して洗浄することで水の使用量を抑える方法がある。ただし、この作業を手作業で行うと、食品の入った籠を持ち上げ、水槽中へ降ろし、また持ち上げるという作業が必要で、腕や腰に大変負担がかかるため、これらを自動で行う様々な食品洗浄・解凍・処理装置が検討されている。
【0003】
その例として、食品を入れた籠に取っ手の付いた固定蓋を取り付け、次いで所定位置に置き、所定位置に来た籠の取っ手を装置のアームに引っ掛けることで籠を持ち上げて移動させ、水槽に満たした水の中に降ろして洗浄し、また持ち上げて水槽から引き上げて、次の工程へと籠を運ぶことのできる装置が知られている。この装置は、食品を入れた籠に固定蓋を取り付けて所定位置に置けば、自動的に籠の中の食品を洗浄するものである。また、この装置は、水槽の中身を水ではなく湯や油に変えることで、洗浄以外の処理も可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この装置では、作業の前に籠に専用の取っ手がついた固定蓋を取り付ける必要があり、なお作業を自動化して便利にする余地があった。また、上から掴むために、籠のバランスをとるのが難しく、籠の中身のバランスが崩れることで容易に引っ張り上げることができなくなる場合があった。さらに、固定蓋を取り付けられる籠でなければならないので、使用できる容器の大きさや形状が限定されてしまった。
【0005】
そこでこの発明は、食品などの物品の入った容器を用意するだけで、物品の入った容器に自動的に蓋をして洗浄などの処理液による処理を容易に行うことができ、かつ、容器の制限が少なく、容器のバランスが変化しても作業が困難になりにくい物品処理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、固定部材1に対して上下移動可能に取り付けた移動部材2の容器受け部22に、処理対象物品を入れた容器3を載せて、上記移動部材2を下げることで、処理液を満たした処理液槽5に浸して、処理対象物品を処理液で処理することができることを特徴とする物品処理機により、上記の課題を解決したのである。
【0007】
すなわち、容器3を上記容器受け部22に載せるだけで自動的に処理液槽5による処理を行うことができる。また、容器受け部22に載せることができる容器3であれば、大きさや形状が限定されずに使用することができる。さらに、容器3を載せて上下に動かすため、バランスが影響することは少なく、上記容器受け部22上に載っていられるものであればよい。
【0008】
また、物品処理機が蓋4を有するものとし、移動部材2が上方にあるとき、蓋連結部材41の後端部42が上記当たり部材12に下方から当たることで、蓋4が上方に回動して容器3から離れ、移動部材2が下方に行くに従って、下方へ回動した蓋4が容器3の開口部を閉じ、蓋連結部材41の後端部42が当たり部材12との接触から解放されて、さらに下方で、蓋4で閉じた容器3に対して物品の処理を行い、処理後に移動部材2を上げて蓋4を容器3から離すことを特徴とする物品処理機とすると、
物品が軽かったりして処理液中に拡散しかねない場合など、処理にあたって蓋4が必要な場合でも、自動的に蓋4を閉めて処理を行うことができる。さらに、蓋4が覆う面積を大きくすることによって、蓋4と容器3との大きさを細かく合わせる必要なく使用することが出来る。
【0009】
すなわち、上記容器3を上げ下げする上記移動部材2の動きに連動して、蓋4が開閉する。まず上記容器3を処理液槽5に漬ける際には、上記移動部材2が下がるとともに上記蓋連結部材の後端部42が上記当たり部材12から離れることで、自動的に上記容器3の開口部を蓋4で閉じて、蓋4を閉じた状態で中身の物品が流出しないようにして物品の処理を行うことができる。処理が終わった後、上記移動部材2が上がるとともに上記蓋連結部材の後端部42が上記当たり部材12に当たることで、自動的に上記容器3の開口部から蓋4が離れ、上記容器3を次の工程へ移行させることができ、入れ替えて新たな上記容器3に蓋4をセットして、次なる処理ができる。
【0010】
さらに、上記の物品処理機が、上記容器3を運ぶコンベヤなどの移送機構26を有し、この移送機構26による上記容器3の移動を、上記容器3に上記処理を行う最適な位置で停止させ、かつ処理後に上記移送機構26の停止を解除可能であるストッパーなどの停止手段を有すると、上記容器3に入った物品を順次処理していくことができる。
【0011】
さらにまた、上記容器受け部22に水平方向にクランク軸71を配し、位置決め棒72を上記クランク軸71から上方向に伸ばして配し、この位置決め棒72は上記容器3の搬出方向にのみ倒れるものとし、上記クランク軸71の上記移動部材2側の一端部に、クランク軸71の一端部と回動自在な伝達部材74を配し、この伝達部材74の上端76を押さえる押止部品77を配すると、上記容器3の移送方向へ位置決め棒72を倒すのとは逆の力を加え、上記移送機構26により付勢される上記容器3を、位置決め棒72によって上記蓋4で開口部を閉める位置に留めることができるとともに、上記処理後に上記位置決め棒72の力を一時的に解放することで、上記容器3を通り過ぎさせることができる。
【0012】
また、この物品処理機は、上記処理液槽5の内容を変えることで種々の処理を行うことができる。上記処理液槽5の中身が水であると、物品の洗浄や解凍を行うことができ、また、物品が食品である場合には、煮立った湯であると食品のボイルや解凍ができ、加熱した油であると食品を揚げることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかる物品処理機によると、容器受け部に載せることが出来る容器に物品を入れれば、容器の大きさや形状にかかわらず、また、容器に枠などを取り付けたりする必要なく、容器受け部に載せることで、自動的に物品を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明にかかる物品処理機を図1乃至10を用いて詳細に説明する。
この発明は、固定部材1、この固定部材1に対して上下移動可能に取り付けた移動部材2、この移動部材2に載せられる容器3、及び処理液を溜め、そこに上記容器3を入れることの出来る処理液槽5からなる、処理対象物品の処理を行う物品処理機である。また、上記容器3が上面に開口部を備えていて、この処理対象物品が処理液中に拡散しやすい場合などに、拡散を防ぐために、上記容器3の開口部を開閉するための蓋4を備えていると好ましい。
【0015】
上記固定部材1は、上記移動部材2の上下動を行う上下動手段11を有し、上記蓋4を有する場合には上記蓋4の開閉を制御する当たり部材12を有する。また、図2に記載のように、上記固定部材1の下部の上記移動部材2側には上記処理液槽5を配している。この上記処理液槽5は、上記固定部材1に隣接していてもよいし、上記固定部材1の下部と一体化していてもよい。上記上下動手段11としては、例えば図1乃至3に記載のようにシリンダー11を用いるものや、ワイヤーやチェーンなどによって巻き上げ及び巻き下げを行うものの他、上下動させることが出来る適当な装置によって行ってよい。
【0016】
上記移動部材2は、上記上下動手段11が連結される連結部21と、この連結部21に繋がり、上記容器3を載せるための容器受け部22とからなる。このうち上記連結部21は、シリンダーやワイヤーなどである上記上下動手段11が接続される接続部24を有し、上下動の動きを反映されるものである。上記移動部材2を構成する上記連結部21と上記容器受け部22とは一体のものであり、接続部24から受ける上下動の動きによって、上記移動部材2は上記容器受け部22に載った上記容器3ごと全体が上下する。この接続部24は、図2のように、上記連結部21の上端部にある板部21bに設けられているとよい。
【0017】
ここで、上記固定部材1と上記移動部材2との関係について説明する。
上記固定部材1には、上記移動部材2を上下方向のみ動かすように、上下方向に図1乃至3に記載したようなロッド13やレールなどのガイドを配していると好ましい。このうち、ロッド13は円柱又は角柱状の柱であり、その周囲を上記連結部21のガイド部25によって囲まれて滑ることによって上下動が支持される。このガイド部25は、上記連結部21の上端部にある板部21bに設けられているとよい。また、このロッド13は上下の運動を安定させるために、所定の間隔を空けて2本以上設けてあるとより好ましい。また、ロッド13ではなく、上記固定部材1にレールを取り付け、かつ上記移動部材2に車輪を取り付けて、その車輪がレール表面を滑るようにして、上記移動部材2の上下動を支持してもよい。
【0018】
上記移動部材2の下方部分にある上記容器受け部22に、上記容器3を載せることによって、上記容器3を上記移動部材2の上下動運動で上下させることで、容易に上記容器3内の物品について上記の処理を行うことができる。
【0019】
上記容器受け部22に載せる上記容器3は、この発明にかかる物品処理機によって処理を行う物品を入れるものであり、上記容器受け部22に載せることが可能なものである。この上記容器3は、処理を行うために、上記処理液槽5の処理液が上記容器3内外に移動自在であるように、流通部分を有することが必要である。このような上記容器3としては、例えば、図4に記載のような籠状の容器や、穴を開けて処理液を出入り可能にした釜などであってもよい。
【0020】
上記容器3の材質は特に限定されるものではなく、例えばステンレスなどの金属製や、ポリプロピレン樹脂などの樹脂製であってよいが、上記処理に耐えられるものである必要があり、特に上記処理が熱をかけるものである場合、その温度に耐えうる耐熱性が必要となる。
【0021】
上記容器3が上記容器受け部22上の適切な位置に設置されると、上記移動部材2が上記上下動手段11によって降下することにより、上記容器3は上記容器受け部22に載ったまま、上記処理液槽5で上記処理を行うことができる。上記処理の終了後は、上記移動部材2が上昇することで、元の位置に上記容器3を戻すことができる。
【0022】
また、上記蓋4が存在する場合は、上記容器3が上記容器受け部22上の適切な位置に設置されると、上記移動部材2が上記上下動手段11によって降下することに伴い上記蓋4が回動して降りて来ることにより上記容器3の開口部が塞がれて、上記容器3と上記蓋4とを一時的に一体のものとして上記処理液槽5で上記処理を行うことができる。また上記処理後は逆に、上記移動部材2が上記上下動手段11によって上昇することに伴い上記蓋4が回動して上がっていくことにより、上記容器3の開口部を解放して、元の位置に上記容器3を戻す。
【0023】
また、上記容器3は、上方に開口部を有し、かつこの開口部が蓋4によって塞がれるものであることが好ましい。上記物品を上記容器3に入れる際には、上面に開口部があると投入しやすいが、上記物品が処理液中で拡散し易いには、そのままでは開口部から上記物品が拡散してしまうおそれがあり、上記蓋4によってそれを防ぐことができる。ただし、この蓋4の大きさは必ずしも上記容器3の開口部の大きさと一致する必要はなく、上記開口部よりも大きく、上記容器3の上面全体を覆うものでもよい。そうすることによって、この発明にかかる物品処理機で使用可能な容器の種類は、大きさや形状によって制限されにくくなり、上記容器3の選択の幅が広がる。また、上記蓋4は、上記処理をより効率よく行うために、上記処理液が移動自在であるように、図4に記載のように、網状のものであると好ましい。
【0024】
また、上記蓋4は、上記容器3と同様に、上記処理液が内外に移動自在であるように、孔、網目等の流通部分を有するものであると、上記処理液が流入しやすく、上記の処理がしやすいので好ましい。
【0025】
上記容器3の開口部を閉める上記蓋4は、図2に記載のように、上記移動部材2の連結部21に回動自在に取り付けられた蓋連結部材41の先端部に設けられる。
【0026】
また、図2及び図5に記載のように、この蓋連結部材41の後端部42は、上記移動部材2に取り付ける箇所である軸受部43よりも上記固定部材1側に突き出ていることが必要である。また、軸受部43による上記蓋連結部材41の移動部材2への取り付け方としては、例えば図5に記載のように、上記移動部材2と一体のものである軸28に、回転自在に取り付けられる。こうして、上記後端部42が、上記固定部材1に設けた上記当たり部材12に下方から当たることにより、軸28を中心に上記蓋連結部材41が回転することで、上記容器3の開口部の上記蓋4が開閉する。
【0027】
なお、上記固定部材1に取り付ける上記当たり部材12は、図1に記載のように、上記移動部材2が上がった際の上記容器3の開口部の高さよりも上で、かつ上記の蓋連結部材41の後端部42が接触出来る高さの範囲に設けると、上記容器3に合わせやすく好ましい。
【0028】
上記固定部材1が図1のように枠状である場合には、張り出し部材14を設けて固定部材1の中央よりに上記当たり部材12を設ける。上記固定部材1が一面の壁状である場合には、壁の適切な箇所に上記当たり部材12を設ける。
【0029】
上記後端部42が上記当たり部材12に当たって、上記蓋連結部材41が上記軸受部43を中心に回動することで上記蓋4が上下する場合の具体的な動きは次の通りである。
【0030】
まず、図2のように上記移動部材2が上方にあるとき、上記蓋連結部材41の後端部42が上記当たり部材12に下方から当たることで、上記蓋4は上方に持ち上げられている。それが、図6のように上記移動部材2が下方に行くに従って、上記蓋4が下方に回動し、上記容器3の開口部を閉じることができる。ここで、上記蓋4を降ろす力は、上記蓋4自身の自重によるものである。さらに上記移動部材2が下方に行くと、図7のように、上記蓋連結部材41の後端部42が上記当たり部材12との接触から解放されて、上記蓋4が上記容器3ごと下降して上記処理液槽5に漬けられる。
【0031】
逆に、上記容器3の開口部を開く動きは、図7の状態から上記移動部材2が上方へ行き、上記後端部42が上記当たり部材12に下方から当たることで、図6中の矢印とは逆の方向に移動体2が動いて、蓋4が上方に回動することで、上記容器3の蓋4が開きはじめる。
【0032】
なお、上記当たり部材12は、図6及び7に記載のローラー型である以外に、図8に記載のような、当て板状のものでもよい。ローラー型の上記当たり部材12を用いると、上記蓋4を上記容器3の上に降ろす際に、上記移動部材2の下降にともなって急激に支えを失って、勢いを付けて上記容器3と上記蓋4とが激突するおそれがあった。そこで図8に記載のような形状の当たり部材12aを用いると、上記移動部材2が下降する際に、上記後端部42の先端部分が上記当たり部材12をこすって摩擦を生じながらゆっくりと動くので、上記蓋連結部材41と蓋4が、重力によって急激に回動することを防ぐことができる。
【0033】
また、上記容器3が無い状態で上記移動部材2が下降すると、上記蓋4の支えとなる上記容器3が無いために、上記蓋4と上記蓋連結部材41とが下へ回動して、下を向いた状態で停止することになってしまう。このように下を向くと、上記移動部材2を上昇させても、上記当たり部材12と上記後端部42とが適切に当たらなくなり、元に戻らなくなる場合がある。そこで、上記移動部材2の上部に、図2に記載のような、当て板29を設けると好ましい。この当て板29は、上記容器3が無い状態で上記移動部材2が下降した際に、上記蓋連結部材41の後端部42側が、水平よりも上に上がらないように押さえることができ、上記蓋連結部材41の蓋4側が回動自由に下へ向いて停止するのを防ぐことができる。
【0034】
さらに、上記処理液槽5は、上記処理液を供給する供給手段を有し、側壁や底部に上記処理液やゴミなどを排出する排出手段を有するものであると、手作業で処理液を供給、交換する必要がなくなるので好ましい。また、この供給手段は、一つだけではなく、例えば冷水と湯のように異なる処理液の供給装置を複数備えて、一つの装置で処理液を変えて異なった処理を行えるようにしてもよい。
【0035】
さらにまた、上記処理液槽5の縁の周囲に樋を設けて、上記処理液槽5から溢れた処理液を回収することができるようにするとより好ましい。上記容器3及び上記移動部材2を浸漬させることにより、処理液が溢れることがあるので、これを回収することにより、処理液が無駄になるのを防ぐことができる。
【0036】
上記のような機構により、上記移動部材2を上方に上げて、上記容器受け部22に処理対象物品を入れた容器3を載せると、上記移動部材2を下方に下げて、上記容器3を上記処理液槽5の処理液に漬け、上記容器3が上記処理液に接触する範囲内で、上記移動部材2の上下動を行って、処理対象物品の処理を行うことができる。また、蓋4がある場合には、上記蓋4で上記容器3の開口部を閉じて上記の処理を行うことで、処理対象物品が処理液槽5中に拡散してしまうのを防ぎつつ、上記の処理を行うことができる。
【0037】
ここで処理対象物品としては、例えばカット野菜や個体野菜、豆類、穀類、果物や、鶏肉、豚肉、牛肉などの肉類、貝やイカ、魚などの魚介類などの、工業規模で扱う食品が挙げられる他、熱によって消毒すべき医療用品などの食品以外の物品も挙げられる。また、上記処理としては、例えば上記の処理液として常温程度以下の水を用いて行う、異物を取り除くための洗浄や冷却、解凍、上記の処理液として高温の湯を用いて行う煮沸や解凍、消毒、上記の処理液として高温の油を用いて行う揚げなどの処理が挙げられる。
【0038】
また、上記処理にあたっては、上記移動部材2を上記処理液槽5の処理液中に漬けっぱなしにしておくだけではなく、上記上下動手段11によって、図7に記載のように上記容器3を上記処理液槽5中で上下させることで、上記処理液を攪拌させて、より効率的に処理を行ってもよい。
【0039】
この発明にかかる物品処理機は、上記容器3を移送させる移送手段と、上記蓋4を取り付ける位置に停止させ、処理後にその停止を解除することが可能である停止手段とを有する移送機構26を有すると好ましい。特に蓋4を用いる場合、上記容器3を、上記蓋4を正確に取り付けられる位置に人手で運ぶとすると、正確な位置からずれたりして調製に手間がかかり、作業効率が悪い。また、蓋4を用いない場合でも、上記容器3の大きさや形状に応じて、上記容器受け部22上に、上記処理を行うのに適切である位置が存在する。したがって、上記容器3を次々に上記物品処理機に供給して、機械的に適切な位置で止め、自動的に順次処理を進めていくものであると作業効率がよい。
【0040】
上記移送手段としては、例えば、ベルトコンベヤやチェーンコンベヤ、スラットコンベヤ、ネットコンベヤなどのコンベヤを用いることができる。また、上記停止手段としては、コンベヤによって上記容器3が上記蓋4を取り付ける最適な位置に到達したことをセンサーで感知すると、コンベヤの回転を停止させて上記容器3を最適な位置に停止させ、上記処理後にコンベヤの回転を再開させる手段や、コンベヤによって移送される上記容器3の動きを、上記処理を行うのに最適な位置、又は上記蓋4を取り付けるのに最適な位置で遮るようにストッパーが立ち、上記処理後にこのストッパーが回動して上記容器3を遮らないようにする手段などが挙げられる。なお、スラットコンベヤとしては、チェーンコンベヤのチェーンに嵌め込んで、蛇腹状の細いプレートが連続して平面を形成するコンベヤも含む。
【0041】
上記停止手段が、上記のストッパーを用いるものである場合は、上記移送手段は、上に載せた上記容器3がコンベヤに対してある程度滑ることができるものであることが好ましい。コンベヤの回転に関わらず、上記ストッパーが遮って上記容器3の移送を停止させる場合、上記容器3はコンベヤが作動しつづける上を滑ることで、コンベヤの回転に対して無理に静止させる力を加えなくて済むからである。例えば、上記容器3とコンベヤがどちらもゴム製ではなく、接触部分が互いに滑りやすい樹脂製又は金属製である場合、上記容器3がコンベヤ上を滑ることができる。また、ストッパーを用いる場合でも、上記容器3が適切に処理を行える位置に到達したことを赤外線センサー等のセンサーで感知して、上記移送手段を止めておくと、上記容器3が揺れ動きにくく、より好ましい。特に上記蓋4を取り付ける場合には、コンベヤが停止して、上記容器3が揺れ動かない方が取り付けやすく、好ましい。
【0042】
なお、これらの移送機構26は、上記処理液槽5に上記容器3を沈める際に、処理液の移動を妨げにくいものであると、上記移動部材2を処理液中で動かす際に余分な抵抗が加わらないで済むので好ましい。処理液の移動を妨げにくいものとしては、例えばチェーンコンベヤが挙げられる。
【0043】
以下、上記移送手段としてチェーンコンベヤである移送用チェーン63を用いた場合、すなわち、図1乃至3、図5乃至7に記載の物品処理機を用いる場合において、その構造と機構について説明する。
【0044】
まず、図1乃至3に記載のように、上記容器3の移送方向に対して垂直でかつ水平に、互いに平行する2本の回転軸61aと61bとを設ける。それぞれの回転軸には、お互いに対応する位置にスプロケット62を設けて、それぞれの対応する位置にある上記スプロケット62の間に、移送用チェーン63を設ける。上記移送用チェーン63は、上記回転軸61a、61bの回転に連動して動くものである。
【0045】
この回転軸61a及び61bを動かす機構としては、図3に記載のように、この回転軸のうちの1本(ここでは回転軸61a)の一端に、下部スプロケット64を設けて、この下部スプロケット64をモータ65と連動させる機構が挙げられる。連動させるには、このモータ65に設けた上部スプロケット66と、上記下部スプロケット64とを、チェン67で繋ぐ。これにより、上記モータ65による回転力が、上記の上部スプロケット66、チェン67、下部スプロケット64、回転軸61a、スプロケット62の順で伝わり、上記スプロケット62が上記移送用チェーン63を回転させ、その上に載った上記容器3を移送することができる。なお、上記チェン67は回転力を伝達できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばゴム製のベルトでもよい。その場合、上記上部スプロケット66と上記下部スプロケット64との代わりにベルト用の回転子を用いることとなる。
【0046】
ただし、上記移動部材2の下部は上記処理液中に沈むため、上記処理液に沈まない箇所にモータ65を設ける必要がある。従って図1のように上記移動部材2の上部に設けると好ましい。また、図3に記載のように、上記の連結部21が高さ方向に所定の長さを有する縦部21aを有するなら、上記回転軸61aの一端を、上記縦部21a中まで貫入させて、上記下部スプロケット64を上記縦部21aの内部に設け、上記チェン67を上記連結部21の中に通すと、上記チェン67をカバーできるので好ましい。なお、この場合、上記連結部21のうち、少なくとも上記下部スプロケット64と上記チェンを設ける上記縦部21aは、内部が空洞である必要がある。
【0047】
次に、上記停止手段としてストッパーを用いた場合の具体的な構造例について説明する。この停止手段は、上記容器3の移動を停止するためのストッパーである位置決め棒72、この位置決め棒72を取り付けられたクランク軸71、及びこのクランク軸の回転を制御する制御部から構成される。
【0048】
まず、図5のように、上記移送機構26の間を貫いて、上記容器受け部22に、水平方向となるように回動可能なクランク軸71を配する。上記位置決め棒72の軸方向と、上記クランク軸71の方向とは、異なる方向となるように、上記位置決め棒72がクランク軸71に取り付けられるので、このクランク軸71の軸を中心に回動することにより、上記位置決め棒72は、その先端が上記クランク軸71から離れた位置で回動自在となる。その位置決め棒72は、上記容器3を、適切な位置に停止させるため、上記容器受け部22から上方向に突き出して、固定させる。上記制御部が固定を解除すると、上記位置決め棒72は上記移送手段により上記位置決め棒72が押されて、クランク軸71が回動することにより、上記位置決め棒72が上記容器3の進行方向に倒される。上記容器3が上記位置決め棒72上を通り過ぎると、上記制御部は、上記位置決め棒72を上方向に突き出して固定させる。
【0049】
この制御部の機構の例は次の通りである。上記クランク軸71の上記連結部21側の一端部に、クランク軸71の回転に連動するクランク73を取り付け、この上記クランク73にリンクした上記伝達部材74を上方へ配する。この伝達部材74は、上方で、上記移動部材2の上記連結部21と回動可能に取り付けてある回動部品75とリンクすることで、上記クランク73と上記回動部品75とにより、二点で支えられる。さらにそれより上方の上端76には、上記連結部21に取り付けた押止部品77が当たる。この押止部品77は、シリンダー78で持ち上げることが可能となっている。上記容器3が上記位置決め棒72に接触した時点では、上記シリンダー78で持ち上げられてはいない上記押止部品77が上記伝達部材74の上端76を押さえておくことにより、上記クランク軸71が回動できないように、上記容器3の進行方向とは逆方向となる力を上記クランク軸71に与える。従って上記容器3を、上記位置決め棒72によって止まる箇所に留めておくことができ、上記蓋4を用いる場合には上記蓋4を適切に上記容器3に取り付けることができる。なお、このとき上記移送用チェーン63は、赤外線センサーなどのセンサーで上記容器3の到着を確認した後、さらに上記移送用チェーン63を動かして、上記位置決め棒72に上記容器3が密着するようにした後、到着からタイマーによりセットした数秒後に、上記モータ65ごと回転を一旦停止させておくと、上記蓋4を上記容器3に取り付ける際に上記容器3が揺れ動かないで済む。ここで、数秒間回転を持続させるのは、到達した上記容器3を確実に上記位置決め棒72に密着させて位置の精度を上げるためである。なお、このセンサーとしては、例えば、上記固定部材1に設けて、上記容器受け部22の上方の空間に赤外線を遮るものがあるかを検知できるようにしたものが挙げられる。
【0050】
上記の食品に対する処理を終了して上記移動部材2が上昇し終えたことを、センサーなどの手段で感知したら、図9及び図10のように、上記シリンダー78で上記押止部品77を上方に持ち上げる。これにより、上記位置決め棒72が回動出来ないように押し留めていた力が消えて、上記位置決め棒72を押し留める方向の力は上記伝達部材74の自重による力のみとなる。また同時に、上記移送用チェーン63の回転を再開させることで、上記移送用チェーン63により上記容器3が移送される力が、上記位置決め棒72を押しとどめる力を上回ることとなる。これにより上記位置決め棒72は、上記移送用チェーン63によって動く上記容器3の動きに押されて下がることができ、上記容器3は図9のように、次の工程(図9に記載される図中左側)へ移送される。
【0051】
上記容器3が上記位置決め棒72の上を通り過ぎると、上記位置決め棒72を倒していた力が無くなる。すると、上記伝達部材74の自重による、押止部品77によるよりも比較的弱い力でクランク軸71が回転され、上記位置決め棒72が上方向に向くように戻る。その後、次の上記容器3が上記位置決め棒72に送られてくる前に、シリンダー78が押止部品77を下げて固定することで、上記位置決め棒72が上記容器3によって倒れないようになり、上記容器3を留めることができるようになる。
【0052】
なお、上記容器3を、上記容器受け部22上の、適切に上記処理を行うことができる箇所に置く移送機構26としては、このような移送手段と停止手段とを有する機構だけではなく、何らかの方法で上記容器3を適切な位置に設置する設置手段と、上記処理が終わった後に、上記容器3を次の工程に搬送する搬送手段とを有する機構でもよい。例えば、移送用チェーン63などを設けず、運ばれてきた上記容器3を、ロボットアームで直接に上記容器受け部22上に設置し、処理終了後に次の工程へ運ぶものでもよい。
【0053】
この発明にかかる物品処理機の前後の工程は、例えば図1及び図9に記載のような仕組みが挙げられる。上記容器受け部22の移送用チェーン63とほぼ同じ高さとなる、ころ81のついた移送台82を、上記容器受け部22の前後に設け、図1中右のコンベヤ90から送られてきた上記容器3を、スムーズに上記容器受け部22に導入し、処理後は次の図中左のコンベヤ90へ図9のように移送する。
【0054】
ただし、上記容器3は通過するのではなく、食品に対する処理を順次行うため、上記容器受け部22上に上記容器3が無い場合のみ、新たな上記容器3を上記物品処理機に送る機構であると好ましい。この機構としては、例えば、センサー91が上記容器3の到着を感知した場合(図1右側の上記容器3に相当する。)、上記容器受け部22に上記容器3が載っており、かつ上記移動部材2が下降中であれば、コンベヤ90を止めたり、又はストッパーを立てたりして、上記容器3が移送台82上に移行しないようにする。ここで、上記容器受け部22に上記容器3が載っているか否かは、例えば、上記固定部材1に赤外線センサーを設けて上記容器受け部22付近を感知させたり、上記移送用チェーン63に重量センサーを設けたりすることによって検知する方法が挙げられる。上記容器3が上記容器受け部22上に載っておらず、かつ、上記移動部材2が下降していなければ、コンベヤ90をそのまま進めたり、ストッパーを下げたりして、上記容器3を移送台82に送り、そのまま上記容器受け部22の移送用チェーン63に載せ、上記の物品の処理を行う。
【0055】
上記の物品の処理を終えて、上記位置決め棒72を倒しつつ上記容器3が図9中左へ動くと、移送台82を経て、図9中左のコンベヤ90に載って、次の工程へと移送される。
【0056】
この発明にかかる物品処理機により、上記容器3に入れた物品を、手で作業を行う必要なく、処理液により処理をすることができる。また、上記容器3に蓋4を自動的に取り付けて処理することもできる。さらに、移送機構26を設けることで、複数の上記容器3に入れた物品を、上記処理液槽5の中身によって順次処理していくことができる。この物品の処理としては、例えば、上記処理液槽5に水を入れておくと、物品の洗浄や冷却、解凍を行うことができ、上記処理液槽5に加熱装置を設けて湯を入れておくと、物品のボイルや高温での洗浄、解凍、消毒などを行うことができ、上記処理液槽5に加熱装置を設けて油を入れておくと、食品である物品を揚げることができ、その他、処理液槽5に必要な装置を設けて行うものでもよい。また、この物品処理機を連続して複数設けておくことで、複数の物品の処理を連続して行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明にかかる物品処理機の正面図
【図2】図1の物品処理機のA−A断面図
【図3】図1の物品処理機のB−B断面図
【図4】a)蓋4を閉めた容器3の側面図、(b)蓋4を閉めた容器3の上面図
【図5】図1の物品処理機の斜視図
【図6】図1のA−A断面図における、移動部材2と蓋4の下降の動きを示す図
【図7】図1のA−A断面図における、移動部材2が下降した食品処理中の動きを示す図
【図8】板状の当たり部材を用いた場合の拡大図
【図9】図1の物品処理機の、処理終了後の容器3の移送中の状態を示す正面図
【図10】図9のC−C断面図
【符号の説明】
【0058】
1 固定部材
2 移動部材
3 容器
4 蓋
5 処理液槽
11 上下動手段(シリンダー)
12 当たり部材
12a (板状の)当たり部材
13 ロッド
14 張り出し部材
21 連結部
21a 縦部
21b 板部
22 容器受け部
24 接続部
25 ガイド部
26 移送機構
28 軸
29 当て板
41 蓋連結部材
42 後端部
43 軸受部
61a、61b 回転軸
62 スプロケット
63 移送用チェーン
64 下部スプロケット
65 モータ
66 上部スプロケット
67 チェン
71 クランク軸
72 位置決め棒
73 クランク
74 伝達部材
75 回動部品
76 (伝達部材の)上端
77 押止部品
78 シリンダー
81 ころ
82 移送台
90 コンベヤ
91 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材1、この固定部材1に対して上下移動可能に取り付けた移動部材2、この移動部材2に載せられる、処理対象物品を入れる容器3、及び処理液を溜め、そこに上記容器3を入れることの出来る処理液槽5からなる処理機であって、
上記固定部材1は、上記移動部材2の上下動を行う上下動手段11を有し、その下部の上記移動部材2側に上記処理液槽5を配し、
上記移動部材2は、上記上下動手段11が連結される連結部21と、この連結部21に繋がり、上記容器3を載せるための容器受け部22とからなり、
上記容器3は、上記処理液槽5の処理液が内外に移動自在であり、
上記移動部材2を上げて、上記容器受け部22に処理対象物品を入れた上記容器3を載せ、上記移動部材2を降ろすことにより、上記容器3を上記処理液槽5の処理液に漬け、上記容器3が上記処理液に接触する範囲内で、上下動手段11により上記移動部材2の上下動を行って、処理対象物品の処理を行う物品処理機。
【請求項2】
上記容器3が上面に開口部を有し、
上記処理機が、容器3の開口部を開閉するための蓋4を有し、
上記固定部材1が、上記蓋4の開閉を制御する当たり部材12を有し、
上記蓋4は、上記移動部材2の連結部21に回動自在に取り付けられた蓋連結部材41の先端部に設けられるとともに、この蓋連結部材41の後端部42は上記移動部材2に回動自在に取り付ける箇所である軸受部43よりも上記固定部材1側に突き出ており、
かつ、上記蓋4は、上記移動部材2が上方にあるとき、上記蓋連結部材41の後端部42が上記当たり部材12に下方から当たることで、回動して上方にあり、上記移動部材2が下方に行くに従って、蓋4が下方に回動して、上記容器3の開口部を閉じるものであり、
上記移動部材2を降ろすことにより、上記蓋4で上記容器3の開口部を閉じて、上記容器3を上記処理液槽5の処理液に漬けて上記処理を行う、請求項1に記載の物品処理機。
【請求項3】
上記容器3を、上記容器受け部22上の上記処理を行うのに適切な位置に移送する移送機構26を上記容器受け部22に設け、この移送機構26は、上記容器3の移送手段、及び上記容器3を上記の適切な位置で停止させ、かつ処理後にその停止を解除することが可能である停止手段を有する、請求項1又は2に記載の物品処理機。
【請求項4】
上記停止手段が、上記容器3の移動を停止するための位置決め棒72、この位置決め棒を取り付けられたクランク軸71、及びこのクランク軸71の回転を制御する制御部から構成され、
上記停止手段は、上記クランク軸71の軸を中心に回動することにより、上記位置決め棒72は回動自在となり、上記容器3を上記の適切な位置に停止させるため、上記位置決め棒72を、上記容器受け部22より上方に突き出させ、かつその状態を固定させ、次いで上記の処理後に、上記位置決め棒72の固定を解除する手段である、請求項3に記載の物品処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−334232(P2006−334232A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164534(P2005−164534)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(591043787)株式会社アルス (16)
【Fターム(参考)】