説明

物品搬出モニタ

【課題】物品の上下面および側面を含むすべての表面の放射能汚染を良好な感度で測定することのできる物品搬出モニタを提供すること。
【解決手段】放射能管理区域から搬出される物品3の縦横寸法および高さを計測する計測装置1,2と、物品3の上部、下部および側部に設けられ物品3の放射能汚染測定を行う上面検出器5a,5b、下面検出器6、左面検出器(5a)および右面検出器(5b)と、検出器5a,5bの少なくとも1つを移動または回転させる駆動装置8,9と、計測装置1,2による計測値に基づいて駆動装置8,9を制御して各検出器5a,5bと物品3の間の距離を調整する制御部22と、汚染測定の条件を入力するとともに測定値を表示する操作・表示部23とを備えている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能管理区域内で使用された比較的小さい物品を放射能管理区域外に搬出する際に物品の放射能汚染測定を行う物品搬出モニタに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質を取扱う施設においては、放射能管理区域内で使われた各種物品を管理区域外へ搬出する際に放射性物質が搬出物品の表面に付着していないことを確認するために物品搬出モニタが設けられている(特許文献1,2参照)。2005年8月に経済産業省より放射能管理区域からの持ち出し物品に係る搬出ガイドライン(非特許文献1)が発行された以降、放射能管理区域からの持ち出し物品の汚染管理が強化され、物品搬出モニタには従来以上の検出感度の確保が求められている。しかるに、従来の物品搬出モニタでは、物品の高さを検知して上部検出器または下部検出器の高さを変え、物品上面と検出器間の測定距離を一定に制御し、物品上表面の放射能密度の検出感度を確保しているが、物品の側面は、側面検出器が固定のため小さい物品では検出距離が大きくなり感度低下を招いている。
【0003】
特許文献1,2に開示されている発明においても、物品の高さ方向を検知し物品に検出器を近付け、所定の検出感度を得ているが、側面の検出感度を確保するために必要な構成、処理手法を有していない。
【特許文献1】特開平4−309886号公報
【特許文献2】特開平7−053015号公報
【非特許文献1】原子力発電所から発生する非放射性廃棄物の判別方法に関するガイドライン(平成17年7月19日 経済産業省発行 原院第3号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、物品の上下面および側面を含むすべての表面の放射能汚染を良好な感度で測定することのできる物品搬出モニタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、放射能管理区域から搬出される物品の縦横寸法および高さを計測する計測装置と、前記物品の上部、下部および側部に設けられ前記物品の放射能汚染測定を行う上面検出器、下面検出器、左面検出器および右面検出器と、前記検出器の少なくとも1つを移動または回転させる駆動装置と、前記計測装置による計測値に基づいて前記駆動装置を制御して前記各検出器と前記物品の間の距離を調整する制御部と、汚染測定の条件を入力するとともに測定値を表示する操作・表示部とを備えている構成とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、物品の上下面および側面を含むすべての表面の放射能汚染を良好な感度で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の第1および第2の実施の形態の物品搬出モニタを図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1〜図4を用いて第1の実施の形態を説明する。
本実施の形態の物品搬出モニタは、図1、2、3に示すように、筐体30に設けられ放射能管理区域から搬出される物品3をトレイ7に載せて搬送するコンベア4と、物品3の水平面内の縦横の長さを計測する寸法計測装置1と、物品3の高さを計測する高さ計測装置2と、物品3の上面と側面の放射能を検出する上面・側面検出器5a,5bと、物品3の下面の放射能を検出する下面検出器6と、上面・側面検出器5a,5bを上下方向に移動させる上面・側面検出器上下駆動モータ8と、上面・側面検出器5a,5bを回転させる上面・側面検出器回転駆動モータ9と、寸法計測装置1と高さ計測装置2の計測値を用いてコンベア4と上面・側面検出器上下駆動モータ8と上面・側面検出器回転駆動モータ9を制御する制御部22と、上面・側面検出器5a,5bおよび下面検出器6による放射能検出値を入力して物品3の搬出の可否を演算するデータ処理部24と、制御部22にコンベア4等の駆動指令を入力するとともに上面・側面検出器5a,5bおよび下面検出器6による放射能検出値および物品搬出の可否を表示する操作・表示部23とから構成されている。
【0008】
本実施の形態の物品搬出モニタは、図3に示すように、1個の検出器に側面、上面の2検出器を内蔵した1組のL字形の検出器5a,5bを物品3の高さと横幅に応じて上下、左右に移動して物品3との距離を調整し放射能を検出する。
【0009】
物品3がトレイ7の上に置かれると、縦横寸法を寸法計測装置1にて計測し高さ寸法を高さ計測装置2にて計測後、コンベア4が駆動されて測定位置へ搬送される。物品3が測定位置にセットされると、上面・側面検出器上下駆動モータ8の作用で上面・側面検出器5aが降下し所定の位置にて停止する。同時に上面・側面検出器5a,5bは寸法データを元に物品3の左右側面へ近接移動し所定の位置にて停止する。この状態にて、物品3の上下、左右表面の放射能汚染測定を実施する。その後、上面・側面検出器5a,5bを側面方向に元の位置へ戻し、上面・側面検出器回転駆動モータ9の作用にて90度回転し、物品3の前後面へ近接移動させ所定の位置にて停止し、前後面の汚染測定を行う。
【0010】
図4は本実施の形態の変形例を示し、L字形の検出器を2個設けず、1個のL字形の上面・側面検出器5cと、1個の側面検出器5dを設けた構成である。この変形例では、物品3は予め、測定者により上面・側面検出器5c寄りにセットし、搬入される。その後、測定位置に達した時点で上面・側面検出器5cを降下し、同時に側面検出器5dを左方向に移動し所定の位置にて停止する。この状態にて、物品3の上下、左右表面の放射能汚染測定を実施する。その後、90度回転し前後面の測定を行う。
【0011】
本実施の形態によれば、検出器5a,5b,5c,5dを物品3から理想的な距離に位置させて物品3の上下面および側面を含むすべての表面の放射能汚染を良好な感度で測定することができる。なお、トレイ7の横幅を伸縮自在に構成すると、上面・側面検出器5a,5b,5cおよび側面検出器の移動を行いやすいという利点がある。
【0012】
(第2の実施の形態)
次に、図5〜図9を用いて第2の実施の形態を説明する。
本実施の形態の物品搬出モニタは図5、図6に示すように、筐体30に設けられ放射能管理区域から搬出される物品3をトレイ7に載せて搬送するコンベア4と、物品3の水平面内の縦横寸法を計測する寸法計測装置1と、物品3の高さを計測する高さ計測装置2と、筐体30の中に画成された測定箱15と、物品3の上面および下面の放射能を測定する上面検出器5および下面検出器6と、物品3の左側面、右側面、前面および後面の放射能を検出する左面検出器11、右面検出器12、前面検出器13および後面検出器14と、寸法計測装置1と高さ計測装置2の計測値に従って上面検出器5、下面検出器6、左面検出器11、右面検出器12、前面検出器13および後面検出器14を移動させ位置を調整する制御部22と、上面検出器5、下面検出器6、左面検出器11、右面検出器12、前面検出器13および後面検出器14の測定データを処理して物品3の表面汚染密度と搬出の可否を算出するデータ処理部24と、制御部22とデータ処理部24に測定条件等を入力するとともに物品3の表面汚染密度と搬出の可否を表示する操作・表示部23とから構成されている。
【0013】
図7は、本実施の形態の第1の実施例における物品測定前の各検出器11,12,13,14の初期位置および測定時の動きを表すもので、物品3は下面検出器6上にてトレイ7に載せられている。
【0014】
まず、左面検出器11および右面検出器12が移動し、物品3に近接し所定の距離にて停止し、物品の左右表面の放射能汚染測定が実施される。次に、左面検出器11および右面検出器12を元の位置に戻した後、上面検出器5が降下して所定の距離にて停止し、上面検出器5および下面検出器6によって物品3の上下表面の放射能汚染測定を実施する。最後に、上面検出器5を元の位置に戻した後、前面検出器13および後面検出器14が移動し、物品3に近接し所定の距離にて停止し、物品3の前後表面の放射能汚染測定を実施する。その後、汚染がないと判定された場合は搬入口へ物品3は戻される。
【0015】
本実施例の効果は、個々の検出器5,11〜14を独立に物品3に近接移動させる自由度がありシンプルになることである。一方、検出器5,11〜14の配置に広いスペースを必要とする。
【0016】
次に、図8を用いて本実施の形態の第2の実施例を説明する。物品3はトレイ7に載せられて筐体30内にコンベア4で搬入されると、所定の位置に停止し、測定箱15にトレイ7、下面検出器6とともに下降し底面に停止し、中心位置にセットされる(図8では上面検出器5は図示を省略されている。)。図示したように四角形状の物品3の場合は、物品3について予め計測された寸法に基づき、水平方向に縦横任意に移動可能な検出器13,14,11,12は所定の距離まで直線的に物品3に近接し、測定位置としてセットされる。この位置で前後左右の検出器11,12,13,14および下面検出器6で物品3の側面および下面の放射能汚染測定が実施される。次に、水平方向の4面の検出器11,12,13,14を元の位置に戻した後、上面検出器5が降下し所定の距離にて停止して、物品3の上面の放射能汚染測定を実施する。
【0017】
この第2の実施例によれば、トレイ7に比して比較的大きい測定箱15が必要なため設置スペースは大きくなるが、2回の測定で任意の形状の物品3に検出器5,11〜14を近接させて各表面の放射能を感度良く測定することができる。
【0018】
本実施の形態の第3の実施例を図9に示す。この実施例は物品3をトレイ7の隅にセットするケースである。(a),(b)は各検出器の初期位置を示す。次に、まず前面検出器13が移動し(c),(d)の位置にセットされ、この状態で前後面、左面、下面の各検出器13,14,11,6で物品3の放射能汚染測定を実施する。次に(e),(f)にて、右面検出器12が移動し右側面の放射能汚染測定を実施する。最後に(g),(h)にて、上面検出器5が下降し物品3上面の放射能汚染測定を実施する。
【0019】
本実施例によれば、3回測定と測定回数は増加するが、トレイ7の近辺に前後左右面の検出器13,14,11,12を配置でき、省面積化が実現でき、モニタの小形化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の物品搬出モニタの構成を示す立断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の物品搬出モニタの構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の物品搬出モニタの動作を説明する斜視図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の変形例の物品搬出モニタの動作を説明する斜視図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の物品搬出モニタの構成を示す立断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の物品搬出モニタの構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の物品搬出モニタの動作の第1の実施例を説明する平面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の物品搬出モニタの動作の第2の実施例を説明する平面図。
【図9】本発明の第2の実施の形態の物品搬出モニタの動作の第3の実施例を説明する平面図(a)、(c)、(e)、(g)、および側面図(b)、(d)、(f)、(h)。
【符号の説明】
【0021】
1…寸法計測装置、2…高さ計測装置、3…物品、4…コンベア、5…上面検出器、5a,5b,5c…上面・側面検出器、5d…側面検出器、6…下面検出器、7…トレイ、8…上面・側面検出器上下駆動モータ、9…上面・側面検出器回転駆動モータ、11…左面検出器、12…右面検出器、13…前面検出器、14…後面検出器、15…測定箱、20…放射線検出器、21…検出器駆動装置、22…制御部、23…操作・表示部、24…データ処理部、30…筐体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能管理区域から搬出される物品の縦横寸法および高さを計測する計測装置と、前記物品の上部、下部および側部に設けられ前記物品の放射能汚染測定を行う上面検出器、下面検出器、左面検出器および右面検出器と、前記検出器の少なくとも1つを移動または回転させる駆動装置と、前記計測装置による計測値に基づいて前記駆動装置を制御して前記各検出器と前記物品の間の距離を調整する制御部と、汚染測定の条件を入力するとともに測定値を表示する操作・表示部とを備えていることを特徴とする物品搬出モニタ。
【請求項2】
前記上面検出器と前記左面検出器または前記右面検出器は連続してL字形に一体に構成されていることを特徴とする請求項1記載の物品搬出モニタ。
【請求項3】
前記物品を載せるトレイを備え、前記トレイの横幅は伸縮自在であることを特徴とする請求項1記載の物品搬出モニタ。
【請求項4】
前記物品の前部および後部に設けられる前面検出器および後面検出器を備え、前記各検出器を順次移動させ前記物品から所定の距離に近接設定して放射能汚染測定を行うことを特徴とする請求項1記載の物品搬出モニタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−271502(P2007−271502A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98705(P2006−98705)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】