説明

物品検査装置

【課題】個々の被検査物Wについて最初の測定と2回目の測定によるチェックを1台の装置で確実に行なえる物品検査装置を提供する。
【解決手段】 物品検査装置1は、被検査物Wを所定の間隔で搬送する回転搬送部10と、搬送中の被検査物を計量する計量部15と、計量値に対応して被検査物に印字するIJP16と、その印字を読み取るカメラ17を有する。測定モードでは、計量部で被検査物を計量し、IJPで被検査物にその結果を印字し、これをカメラで読み取って測定値と照合する。チェックモードでは、測定モードで処理済みの被検査物の質量を計量し、印字をカメラで読み取って測定値と照合する。製品個々の重量変化を確実に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物を搬送しながら重量等の物理量を測定し、測定結果に対応して被検査物に印字を行い、さらに被検査物の印字を読み取って測定結果と比較する機能を備えており、被検査物の重量等の測定だけでなく測定結果のチェックも単独で行うことができる物品検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用を含む各種用途のスプレー缶やエアゾール缶のような円筒形のワークを搬送しながら計量する装置として、下記特許文献1に記載の装置が知られている。この装置は、搬送コンベア上を連続的に搬送されてくる多数の物品を受け入れて互いに所定間隔を置いた状態でさらに先へ搬送し、これを計量コンベアに移送して搬送しながら計量する計量装置であり、計量コンベアに対する物品の搬入を揺れや倒れの極めて少ない状態で円滑に行うことができるため、従来に比べて高精度でしかも高速な計量を可能にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2972967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば医療用のエアゾール缶は、品質管理の徹底化を目的として、薬剤注入直後と一定期間保管後にそれぞれ質量を測定し、両測定値を比較している。すなわち、個別の製品ごとにこのような比較を行うことにより、エア漏れによる内容量の変化の有無を確認している。
【0005】
このような個別の比較を確実に行うためには、当該製品の一つ一つに例えばシリアル番号等を印字して各製品を個別に管理・識別できるようにし、また各製品ごとに測定した質量値を各製品のシリアル番号に対応して管理する必要がある。そして、チェック時には、各製品の質量を再度測定し、当該製品について読み取ったシリアル番号に対応する前回測定の質量値を読み出し、これと今回の質量値を比較すればよい。
【0006】
又は、当該製品の一つ一つに測定した質量値を直接印字しておき、チェック時には、各製品の質量を再度測定し、当該製品について読み取った前回測定の質量値と、今回の質量値を比較してもよい。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の計量装置は被検査物を搬送しながら重量を測定する機能しかないため、上述したような検査を単独で実行することはできなかった。あえてこの計量装置を使用する場合には、最初の測定時については、計量装置の後段に測定結果に対応した印字を行なうために少なくとも印字装置を設ける必要があり、またチェック時については、計量装置の後段に印字を読み取るために少なくとも読取装置を設ける必要がある。
【0008】
しかし、このように計量装置とは別個に印字装置や読取装置を設置すると、計量装置から、その後段に設置した印字装置や読取装置に向けて製品を搬送する区間を設ける必要があることから、特にこの区間等において人為的要因を含む何らかの原因によって製品の数にずれが生じる可能性を否定できない。その結果、最初の測定値に係る製品と、2回目の測定値に係る製品とが一致しなくなる場合が考えられ、個々の製品について2回の測定値の比較を行なう検査が実施できない場合がありうるという問題があった。
【0009】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、個々の被検査物について最初の測定と2回目の測定によるチェックを1台の装置で確実に行なえるようにした物品検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された物品検査装置1は、
被検査物Wを所定の間隔をおいて搬送する搬送手段10と、
前記搬送手段10に搬送されている前記被検査物Wの物理量を測定する測定部15と、
前記搬送手段10の搬送方向について前記測定部15の次段に設けられ、前記測定部15が測定した前記被検査物Wの物理量に対応する特定情報を前記被検査物Wに印字する印字部16と、
前記搬送手段10の搬送方向について前記印字部16の次段に設けられ、前記印字部16が前記被検査物Wに印字した特定情報を読み取る読取部17とを有し、
前記測定部15で前記被検査物Wの物理量を測定し、次に前記物理量に対応した特定情報を前記印字部16で前記被検査物Wに印字し、次に前記印字部16で前記被検査物Wに印字された前記特定情報を前記読取部17で読み取った後、前記測定部15において測定した物理量と前記読取部17で読み取った特定情報に対応する物理量とを照合する測定モードと、
すでに前記測定モードで処理されている前記被検査物Wの物理量を前記測定部15で測定し、次に前記被測定物Wに印字されている特定情報を前記読取部17で読み取った後、前記測定部15において測定した物理量と前記読取部17で読み取った前記特定情報に対応する物理量とを照合するチェックモードから、
任意のモードを選択して機能させることができることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された物品検査装置1は、請求項1記載の物品検査装置1において、
前記被検査物Wは、軸線を鉛直方向に略一致させて円形の一端面を底面とした態様で搬送される実質的に円筒形のワークであり、
前記搬送手段10は、周方向に所定間隔で前記被検査物Wを保持する保持部13が配置されて回動することにより前記被検査物Wを周方向に沿って搬送する搬送部10と、前記搬送部10の前記保持部13に沿って周状に形成されて前記搬送部10が送る前記被検査物Wを案内するガイド部材11、12とを有しており、
前記印字部16と前記読取部17は、それぞれ前記被検査物Wの底面に前記特定情報を印字し又は前記被検査物Wの底面に印字された前記特定情報を読み取るように、前記搬送手段10の前記搬送部10の下方にそれぞれ配置されており、
前記搬送手段10の前記ガイド部材11、12は、前記印字部16と前記読取部17の少なくともいずれか一方に対応する部分において、前記搬送手段10の前記搬送部10によって送られる前記被検査物Wと接触しないように形成された非接触部32を有していることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載された物品検査装置1は、請求項1又は2に記載の物品検査装置1において、
前記物理量が重量であり、前記測定部15が重量測定手段であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された物品検査装置によれば、搬送手段の搬送方向に沿って、測定部と印字部と読取部が順に並んでおり、測定モードでは測定部が被検査物の物理量を測定し、これに対応した特定情報を印字部が被検査物に印字し、この特定情報を読取部が読み取って、測定した物理量と特定情報に対応する物理量を照合することができ、また測定後のチェックモードでは、被検査物の物理量を再度測定部が測定し、被測定物の特定情報を読取部が読み取り、測定した物理量と特定情報に対応する物理量を照合することができる。このように本発明によれば、1台の物品検査装置において測定モードとチェックモードを使い分けることができるので、個々の被検査物について測定モードで最初の測定を行い、チェックモードで2回目の測定を含むチェックを行なうことにより、被検査物の測定結果の変化を確実に検出することができる。
【0014】
請求項2に記載された物品検査装置によれば、請求項1記載の物品検査装置による効果において、さらに次のような具体的な作用効果が得られる。すなわち、実質的に円筒形のワークは軸線を立てた状態で搬送部の保持部に安定的に保持され、ガイド部に接触して案内されながら搬送部の回動によって周方向に搬送される。その間、印字部と読取部は、ワークの底面に特定情報を印字し又はワークの底面に印字された特定情報を読み取る。ここで、ガイド部材は印字部と読取部の少なくともいずれか一方に対応する部分では被検査物と接触しない構造となっているので、搬送部による送りを受けた被検査物は、印字又は読み取りの間は回転することなく周方向に沿って搬送される。従って、印字部による印字は形が崩れず、印字品位が保持される。また、読取部による印字の読み取りは正規の状態で行なわれ、測定された物理量の取得が適正に行なわれる。
【0015】
請求項3に記載された物品検査装置によれば、請求項1又は2に記載の物品検査装置による効果において、被検査物の最初の重量測定と、測定後に時間をおいて再度行なわれる2回目の重量測定に基づくチェックを1台の装置で確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る物品検査装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る物品検査装置の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る物品検査装置の要部拡大平面図である。
【図4】図1の矢印Aにおける矢視拡大図である。
【図5】図1の矢印Bにおける矢視拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係る物品検査装置において、搬送手段によって搬送される被検査物の状態を拡大して示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態において、インクジェットプリンタ(IJP)が配設されている部分の真上で搬送手段によって搬送される被検査物の状態を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図1〜図7を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る物品検査装置1は上面に開閉可能な蓋体2が設けられた筐体3を本体としている。この筐体3の上面側には被検査物Wを搬送する搬送手段が設けられており、後に説明するように被検査物Wは搬送手段で搬送されながら物理量としての重量が測定され、その結果に基づく特定情報を被検査物Wの底面に印字され、さらに被検査物Wの底面に印字された特定情報を読み取られるようになっている。
【0018】
なお、本装置1が対象とする被検査物Wは実質的に円筒形のワークであり、具体的な一例を挙げれば医療用のエアゾール缶等であって、本装置1では、その円形の一端面を底面とし、軸線を鉛直方向に略一致させて立てた状態で搬送されつつ、上述した重量測定、底面に対する印字、印字の読み取りといった各操作を装置の作動モードに応じて受けるようになっている。
【0019】
図2に示すように、本装置1の筐体3の上面側には、被検査物Wを筐体3内で連続的に搬送するために、各々図2中の各矢印の方向に被検査物Wを搬送する数種類の搬送手段が設けられている。
まず、搬送手段としてのラインコンベア4が本装置1の筐体3の前部を貫通して水平に設けられている。このラインコンベア4はベルトとプーリからなる直線状の搬送経路のベルトコンベアであって、図2において左方の前工程から被検査物Wを搬入し、図2において右方の次工程へ向けて処理済みの被検査物Wを搬出する。
【0020】
次に、本装置1の筐体3の上面前方部分において、ラインコンベア4の搬入側(図2において左側)には、搬送手段としての間隔設定搬送部5が設置されている。図2中には構造の詳細は示していないが、この間隔設定搬送部5は、ラインコンベア4の上方の所定位置にラインコンベア4に平行となるように水平に配置されて回動する回転棒を本体としており、この回転棒の周面には被検査物Wを保持しうる幅を備えた螺旋溝が形成されている。ラインコンベア4が搬送してくる被検査物Wは、ワークとして個々に識別された状態で搬入されてくるものではなく、間隔設定搬送部5の入り口の部分で複数個が互いに隙間なく並んだ状態となるように送られてくるが、間隔設定搬送部5は回転棒を回転さながらラインコンベア4上にある被検査物Wを螺旋溝内に1個ずつ取り込んで一列に並べながら軸方向に送り、ラインコンベア4上を滑らせて搬送していくので、各被検査物Wは、前後の間隔を所定の寸法に設定された状態となって次の搬送手段まで運ばれ、受け渡されることとなる。
【0021】
次に、間隔設定搬送部5の搬送方向の終端部には、搬送手段として、第1誘導搬送部6と第1誘導ガイド部材7が設けられている。第1誘導搬送部6は円板状の部材であり、図示しない駆動源により図2において反時計回り方向に回動する。そして、この第1誘導搬送部6の外周縁部には被検査物Wを保持するための保持部として複数の切欠き部8が周方向に所定間隔で形成されている。一方、第1誘導ガイド部材7は、間隔設定搬送部5の終端と第1誘導搬送部6の間を始点としており、第1誘導搬送部6の外周縁部に沿い、かつ第1誘導搬送部6の外側に所定の間隔をおいて周状に配設されている。なお、第1誘導搬送部6の下方には、図4及び図5に示すように、被検査物Wが搬送される際の摺動面となる板状のステージ9が筐体3に対して水平に固定されており、前述した間隔設定搬送部5が搬送してきた被検査物Wが載置されるようになっている。第1誘導搬送部6によれば、間隔設定搬送部5が所定間隔で次々に搬送してくる被検査物Wを順に切欠き部8に受け入れて回転することにより、被検査物Wをこのステージ9上で滑らせ、第1誘導ガイド部材7に沿って周方向に搬送することができる。
【0022】
次に、第1誘導搬送部6に隣接して他の搬送手段が設けられている。この搬送手段は、第1誘導搬送部6よりも大径である円板状の回転搬送部10と、ガイド部材11、12から構成されている。回転搬送部10は円板状の部材であり、図示しない駆動源により図2及び図3において時計回り方向に回動する。図2に示すように平面的にはその外周縁部が第1誘導搬送部6と一部分において接するように配置されているが、高さ方向については第1誘導搬送部6よりも低い位置に配置されており、両者が接触することはない。そして図2及び図3に示すように、回転搬送部10の外周縁部には、被検査物Wを保持するための保持部として切欠き部13が周方向について所定間隔で形成されている。この切欠き部13の形状は略U字形であり、その大きさは被検査物Wを接触しないで収納できる程度とされている。なお、図4及び図5に示すように、回転搬送部10は高さ方向に所定間隔をおいて互い平行に同軸で配置された一対の円板から構成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、ガイド部材は、内側の第1ガイド部材11と外側の第2ガイド部材12を有している。内側の第1ガイド部材11は、前記第1誘導ガイド部材7の終端を始点として回転搬送部10の切欠き部13の最奥部と対応する位置に沿って概ね周状に配設されている。外側の第2ガイド部材12は、第1誘導搬送部6の近傍を始点としており、回転搬送部10の外周縁部に沿い、かつ回転搬送部10の外周縁部の外側に所定の間隔をおいて概ね周状に配設されている。両ガイド部材11、12の隙間、換言すれば回転搬送部10の回転半径方向に関する両ガイド部材11、12の間隔、又は被検査物Wの移動方向と直交する方向に関する両ガイド部材11、12の間隔は、円筒体である被検査物Wの直径よりもやや大きい程度に設定されており、回転する回転搬送部10の切欠き部13に収納された被検査物Wは、両ガイド部材11、12の間である程度自由に移動できるが、切欠き部13からは脱することができないようになっている。このため、回転搬送部10の複数の切欠き部13に順次取り込まれた複数の被検査物Wの順序が搬送途中で変わってしまうことはない。
【0024】
図4及び図5に示すように、上述した第1及び第2ガイド部材11、12は、一対の円板から構成された回転搬送部10の上下にそれぞれ設けられている。従って、切欠き部13に保持された被検査物Wが回転搬送部10の回動により押されてステージ9上を摺動する場合、被検査物Wは第1及び第2ガイド部材11、12によって上下の2箇所でそれぞれ案内されているので、転倒することなく安定して移動することとができる。
【0025】
図2に及び図3に示すように、回転搬送部10とガイド部材11、12からなる搬送手段の下方には、搬送方向に沿って上流側から、測定部としての重量測定手段である計量部15と、印字部としてのインクジェットプリンタ16(略してIJP16とも呼ぶ)と、読取部としてのカメラ17が順に設けられている。
【0026】
図2及び図3に示すように、計量部15は、回転搬送部10による周状の回転搬送経路のほぼ中間位置に配置されている。図4乃至図5に示すように、この中間位置のステージ9には搬送方向を長手方向とする矩形の貫通孔18が形成されており、この貫通孔18の部分に計量部15が配置されている。また図3に示すように、計量部15が配設された部分の前後では、第1及び第2ガイド部材12は直線状になっており、計量中は被検査物Wが直進できるようになっている。
【0027】
図2乃至図4に示す計量部15は、ステージ9の前記貫通孔18と略同一高さで貫通孔18内に配置された計量コンベア19と、計量コンベアを搭載して筐体3内に固定された秤量手段20を有している。回転搬送部10とガイド部材11、12によってステージ9上を搬送されてきた被検査物Wは、貫通孔18の部分で計量コンベア19に乗り移り、計量コンベア19で搬送される間に秤量手段20で質量が計量される。計量中には、被検査物はガイド部材11,12及び回転搬送部10には接触しない。そして、秤量後には計量コンベア19から再びステージ9に乗り移り、回転搬送部10でさらに下流に搬送されていく。計量部15は図示しない制御手段によって制御されており、計量部15が計量した被検査物Wの質量は制御手段によって処理される。
【0028】
図2及び図3に示すように、計量部15の下流側には、計量部15と、回転搬送部10の搬送経路の終端部との間の略中間位置に、IJP16が配置されている。図3に示すように、この中間位置のステージ9には被検査物Wの底面よりも小さい略円形の貫通孔21が形成されており、この貫通孔の部分にIJP16がインク吐出口を上に向けて配置されている。貫通孔21の大きさは被検査物Wが通り抜けて落下しない程度の大きさである。このIJP16は、図示しない制御手段の制御により、計量部15が計量した被検査物Wの質量に対応する特定情報を被検査物Wの底面に印字する。特定情報としては、質量値そのものでもよいし、その被検査物Wを特定するシリアル番号でもよい。シリアル番号を印字する場合には、当該被検査物Wの質量値を当該シリアル番号と関連付けて制御手段等の記憶部のデータベースに自由に読み出し可能に記憶させておき、後にこのシリアル番号を読み取った場合に、対応する質量値を読み出して新たに測定した質量値と比較できるようにしておく必要がある。なお、特定情報の印字の態様は特に限定しない。質量値やシリアル番号を表す数字でもよいし、これを表した2Dコードでもよい。
【0029】
なお、上述した通り、IJP16が設けられたステージ9の貫通孔21は円形としたが、特定情報はできるだけ被検査物Wの底面の中央に印字したいので、印字動作と被検査物Wの移動とのタイミングをより調整しやすくするため、搬送方向を長手方向とする長円状としてもよい。
【0030】
図2及び図3に示すように、IJP16の下流側には、IJP16と、回転搬送部10の搬送経路の終端部との間の略中間位置に、カメラ17が配置されている。図3に示すように、この中間位置のステージ9には、搬送方向を長手方向とする長円形の貫通孔22が形成されている。貫通孔22の大きさは被検査物Wが通り抜けて落下しない程度の大きさである。この貫通孔22の部分にはカメラ17が上向きに配置されている。このカメラ17は、図示しない制御手段の制御により、IJP16が被検査物Wの底面に印字した特定情報を読み取る。
【0031】
なお、上述した通り、カメラ17が設けられたステージ9の貫通孔22は長円形とし、カメラ17によって被検査物Wの底面に印字された特定情報を正確に読み取るための時間的余裕が得られるようにしたが、カメラ17の性能等によっては別に単なる円形でもかまわない。
【0032】
次に、図2に示すように、回転搬送部10の搬送方向の終端部には、搬送手段として、第2誘導搬送部23と第2誘導ガイド部材24が設けられている。第2誘導搬送部23及び第2誘導ガイド部材24は、前述した第1誘導搬送部6及び第1誘導ガイド部材7と略同一の構成である。第2誘導搬送部23によれば、回転搬送部10で搬送されながら計量部15とIJP16とカメラ17で必要な処理を受けた被検査物Wを、処理された順序で切欠き部25に受け入れて回転することにより、当該被検査物Wを誘導して前記順序でステージ9からラインコンベア4上に送りだすことができる。ラインコンベア4上に移された被検査物Wはラインコンベア4の作動によって筐体3の外に搬出されていく。
【0033】
図1に示すように、さらに本装置1には、装置の現況や測定結果等を表示する表示部26と、装置の操作を行なうための操作部27が設けられている。
【0034】
前述した図示しない制御手段は、以上説明した構成の物品検査装置1を統括的に制御する手段であって、被検査物Wの質量の測定を行なう測定モードと、以前に質量を測定された被検査物Wの質量を再度測定して前回の測定値と比較するチェックモードの両モードを任意に選択して機能させることができる。
【0035】
すなわち測定モードにおいては、被検査物Wを搬送手段で搬送しながら、計量部15で被検査物Wの質量を測定し、次に測定された質量の値に対応した特定情報をIJP16で被検査物Wの底面に印字し、次にIJP16で被検査物Wに印字された特定情報をカメラ17で読み取る。そして、計量部15で計量した質量値とカメラ17で読み取った特定情報に対応する質量値とを照合する。照合の結果、両値が合致すれば正規の質量測定が行われたことが確認され、合致しなければ当該被検査物Wをラインから排除して再検査に回す等の適当な処置をとる。
【0036】
またチェックモードにおいては、すでに前記測定モードで処理されている前記被検査物Wを搬送手段で搬送しながら、この被検査物Wの質量を計量部15で再度測定し、次に被検査物Wに印字されている特定情報をカメラ17で読み取った後、計量部15で計量した質量値とカメラ17で読み取った特定情報に対応する質量値とを照合する。すなわち、チェックモードにおいてはIJP16は使用しない。照合の結果、両値が合致すれば、前回の計量結果と今回の計量結果が一致したこととなり、前回検査時と今回検査時の間に、当該被検査物Wの質量が変化しなかったことが確認される。合致しなければ、前回検査時と今回検査時の間に当該被検査物Wの質量が変化した可能性があるので、当該被検査物Wをラインから排除して再検査に回す等の適当な処置をとる。
【0037】
次に本実施形態の他の特徴を説明する。この特徴は、前述したIJP16による印字動作の適正さをより一層確実にするためのものであり、搬送手段の第2ガイド部材12の構造に関するものである。
【0038】
図6は、本実施形態の物品検査装置1において、計量部15、IJP16、カメラ17が設けられた部分以外の位置で、第1及び第2ガイド部材11、12と回転搬送部10によって搬送される被検査物Wの状態を拡大して示す平面図である。被検査物Wは、回転搬送部10の切欠き部13に入り込み、回転搬送部10の回転に伴って第1及び第2ガイド部材11、12の間でステージ9上を周方向に移動していく。この時、被検査物Wは外側にある第2ガイド部材12に接触した状態で回転搬送部10によって周方向に送られるために、搬送に伴って回転してしまう場合がある。被検査物WがIJP16による印字領域の真上を搬送されている印字の最中に回転すると、印字に不都合が生じる場合がある。すなわち、IJP16の性能、搬送手段の搬送速度、被検査物Wの回転状態等の諸条件にもよるが、IJP16から所定のパターンとなるようにインクを吐出しても、印字対象である被検査物Wの底面が回転しているため、インクが所定のパターンで底面に付着せず、形成しようとする印字のパターンに変形等が発生し、正規の読み取りが可能な状態で特定情報を印字することができない場合がありうる。
【0039】
図7は、本実施形態の物品検査装置1において、IJP16の上方にあるステージ9の貫通孔21及び搬送手段と、被検査物Wの搬送状態を重ねて示した拡大図であり、図2乃至3等に示して説明した実施形態の構造とは異なり、この図ではIJP16に対応するステージ9の貫通孔21を長円形として表している。
【0040】
この図から分かるように、IJP16による印字領域の上方において、外側の第2ガイド部材12は、外側に向けて段差をもって略直角に突出した角部30を有しており、この角部30から搬送方向の下流に向けて徐々に内方に戻って合流部31で元の位置に滑らかに連続するような略三角形状となっている。このように第2ガイド部12は、搬送方向乃至周方向について角部30から合流部31の間で外方に変形し、非検査物Wとの接触が起こらない非接触部としての逃げ部32を有しているので、搬送中には被検査物Wは第2ガイド部12に接触せず、回転搬送部10に送られても回転することがない。すなわち、被検査物WはIJP16によって印字を受ける貫通孔21の上方を通過している間は回転せずに周方向だけの動きで移動していく。従って、IJP16から所定のパターンとなるように吐出されたインクは、印字対象である被検査物Wの底面にそのまま付着し、所望の正規のパターンを形成することができる。よって正規の読み取りが可能であり、制御手段はエラーなく確実に特定情報を取得することができる。
【0041】
本実施形態では、第2ガイド部材12の外方への逃げ部32は、IJP16の上方のみで形成したが、カメラ17の上方の第2ガイド部12にも同様の構造を設けてもよい。このようにすれば、被検査物Wの底面に印字された特定情報をカメラ17が読み取る際、被検査物Wが回転しないので読み取りが一層確実に行なわれる。
【0042】
IJP16やカメラ17の上方において第2ガイド部材12に外方への逃げ部32を形成して被検査物Wを回転しないようにすることは印字や読み取りのために必須とまではいえず、回転していても印字や読み取りが可能であれば設けなくともよいのはもちろんである。被検査物Wが回転するか否か、又は回転する場合の回転状況等は、搬送手段による搬送速度、搬送手段や被検査物Wのサイズ等に応じて変動しうる条件であり、また回転していても正規の印字や読み取りが可能か否かはIJP16やカメラ17の性能に依存する。従って、これらの諸条件等に応じて、被検査物Wの不要な回転を止めるために、IJP16やカメラ17の部分の第2ガイド部材12に逃げ部32を形成するか否かを決定すればよい。もっとも、一般的にはIJP16による印字に比べてカメラ17による読み取りの方が早いので、上述したようにIJP16については第2ガイド部材12に逃げ部32を設け、カメラ17については設けないこととする場合が多い。
【0043】
本実施形態の物品検査装置1が対象とするエアゾール缶では、品質管理の徹底化を目的として、薬剤注入直後と一定期間保管後にそれぞれ質量を測定し、両測定値を比較して内容量の変化の有無を確認している。このようなエアゾール缶の品質検査を、測定装置と、印字装置乃至読取装置とを別々に用意し、両者を搬送装置で接続して行なうこととすれば、各装置ごとに製造・維持コストが必要になるために総合的なコストが増大するだけでなく、両装置を接続する中間の搬送装置等において製品の紛失や抜き取り等により被検査物の数量にずれが生じる可能性があり、データと個々の製品との対応がつかなくなり、個別の製品ごとに品質を保障することができなくなるという問題がある。
【0044】
本装置1は、このような検査目的のために有用であり、1台の物品検査装置1において測定モードとチェックモードを使い分けることができるので、測定用の装置と、チェック用の装置を別々に設置する必要がなく、個々の被検査物Wについて最初の測定と2回目の測定によるチェックを1台の装置で確実に行なうことができる。また、製品の1個1個を特定して搬送しながら個々に計量、印字、読み取りを行ない、個々の製品ごとにデータを管理している。従って、上述したような検査において個々の被検査物Wに質量の変化があれば、これを確実に検出することができるという効果がある。
【0045】
以上説明した実施形態では、検査対象をエアゾール缶とし、その測定対象である物理量をエアゾール缶の質量としたが、検査対象や物理量はこれに限定されない。例えば、検査対象として液体が充填されたビン等の容器とし、測定対象たる物理量が当該ビン内の液体の液面高さであってもよい。また、被検査物が実質的に円筒形のワークの場合について回転搬送部上で測定、印字、読取りを行うような構成で説明したが、被検査物が箱物等で搬送中に回転が起こりにくいものであれば、直線的に搬送する搬送部上で測定、印字、読取りを行うようにしてもよい。そして、印字、読取りに関しても被検査物の底面からでなく、側面、上面で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…物品検査装置
4…搬送手段としてのラインコンベア
6…搬送手段としての第1誘導搬送部
7…搬送手段としての第1誘導ガイド部材
8…保持部としての切欠き部
9…ステージ
10…搬送手段としての回転搬送部
11…搬送手段としての第1ガイド部材
12…搬送手段としての第2ガイド部材
13…保持部としての切欠き部
15…測定部としての重量測定手段である計量部
16…印字部としてのインクジェットプリンタ(IJP)
17…読取部としてのカメラ
18…計量部のための貫通孔
19…計量部を構成する計量コンベア
20…計量部を構成する秤量手段
21…IJPのための貫通孔
22…カメラのための貫通孔
23…搬送手段としての第2誘導搬送部
24…搬送手段としての第2誘導ガイド部材
25…保持部としての切欠き部
32…非接触部としての逃げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)を所定の間隔をおいて搬送する搬送手段(10)と、
前記搬送手段に搬送されている前記被検査物の物理量を測定する測定部(15)と、
前記搬送手段の搬送方向について前記測定部の次段に設けられ、前記測定部が測定した前記被検査物の物理量に対応する特定情報を前記被検査物に印字する印字部(16)と、
前記搬送手段の搬送方向について前記印字部の次段に設けられ、前記印字部が前記被検査物に印字した特定情報を読み取る読取部(17)とを有し、
前記測定部で前記被検査物の物理量を測定し、次に前記物理量に対応した特定情報を前記印字部で前記被検査物に印字し、次に前記印字部で前記被検査物に印字された前記特定情報を前記読取部で読み取った後、前記測定部において測定した物理量と前記読取部で読み取った特定情報に対応する物理量とを照合する測定モードと、
すでに前記測定モードで処理されている前記被検査物の物理量を前記測定部で測定し、次に前記被測定物に印字されている特定情報を前記読取部で読み取った後、前記測定部において測定した物理量と前記読取部で読み取った前記特定情報に対応する物理量とを照合するチェックモードから、
任意のモードを選択して機能させることができることを特徴とする物品検査装置(1)。
【請求項2】
前記被検査物(W)は、軸線を鉛直方向に略一致させて円形の一端面を底面とした態様で搬送される実質的に円筒形のワークであり、
前記搬送手段(10)は、周方向に所定間隔で前記被検査物(W)を保持する保持部(13)が配置されて回動することにより前記被検査物(W)を周方向に沿って搬送する搬送部(10)と、前記搬送部の前記保持部に沿って周状に形成されて前記搬送部が送る前記被検査物(W)を案内するガイド部材(11、12)とを有しており、
前記印字部(16)と前記読取部(17)は、それぞれ前記被検査物(W)の底面に前記特定情報を印字し又は前記被検査物(W)の底面に印字された前記特定情報を読み取るように、前記搬送手段の前記搬送部の下方にそれぞれ配置されており、
前記搬送手段の前記ガイド部材は、前記印字部と前記読取部の少なくともいずれか一方に対応する部分において、前記搬送手段の前記搬送部によって送られる前記被検査物と接触しないように形成された非接触部(32)を有していることを特徴とする請求項1記載の物品検査装置(1)。
【請求項3】
前記物理量が重量であり、前記測定部(15)が重量測定手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の物品検査装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−202992(P2011−202992A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68144(P2010−68144)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】