説明

物品識別装置、物品識別システム、物品識別プログラム及び物品識別方法

【課題】物品どうしが近接配置された状態であっても、リーダに最も近接した物品の識別を的確に行う。
【解決手段】本発明の物品識別装置21は、物品31毎に固有のID番号を各々記憶しこのID番号の対応した各物品に複数個ずつ規則的に配置された複数の無線ICタグ32側から、任意の位置にあるリーダにて読み取ることのできた全てのID番号を取得するID取得部22と、ID取得部22によるID番号の取得結果に基づいて、複数の物品31のうちで、当該ID番号が取得された無線ICタグ32を最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品をリーダ28に最も近接する物品として特定する演算部23及び判別部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグを利用して物品の識別を行う物品識別装置、物品識別システム、物品識別プログラム及び物品識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバーコードなどに代わる自動認識技術として、リーダとの間の情報のやり取りを無線交信により行う無線ICタグが利用されている。無線ICタグは、データの書き換えが可能、リーダとの間に他の部材が介在されている場合でも情報の交信が可能、複数のタグの一括読み取りが可能であるなど、多数の利点を有する。
【0003】
ここで、このような無線ICタグの用途の一例として、例えば無線ICタグに故障や異常が生じた場合でもこの不具合に左右されることなく物体の識別を行えるようにした物体認識システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
すなわち、この文献の物体認識システムは、例えば同一の物体識別情報を記憶した無線ICタグを識別対象の物体毎に複数個ずつ取り付けると共に、リーダを通じて複数の物体に対し複数の無線ICタグの一括読み取りを行うことで、複数の無線ICタグのうちのすべてまたはいずれかより得られた物体識別情報を基に物体を識別するものである。
【特許文献1】特開2005−157869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記文献のシステムの場合、物体どうしが近接配置された状態では、すべての物体に取り付けられた無線ICタグの物体識別情報をリーダが読み込むことになる。しかしながら、物体識別の目的によっては全ての物体を識別するのではなく、リーダに最も近い物品のみを識別したいケースがある。例えば、ベルトコンベア上を流れる荷物に無線ICタグを取り付け、それらをゲート型のリーダで読取り、行き先別に仕分けを行う場合である。このケースにおいて荷物同士が近接している場合、リーダから離れた荷物の無線ICタグも読取る可能性があり、適切な荷物選別が困難になるという問題がある。したがって、リーダに最も近接した物品のみの識別を目的とする場合、上記文献のシステムでは対応できない。ここで、この課題の対応案の一つとして、リーダの読取範囲を機器的に調整する方法が例示されるが、リーダや無線ICタグの置かれる環境によって、リーダの読取範囲が大きく変動してしまい、この読取範囲を適切に調整することが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、複数の物品どうしが例えば近接配置されている場合でも、リーダに最も近接した物品の識別を的確に行うことができる物品識別装置、物品識別システム、物品識別プログラム及び物品識別方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、所定の読取範囲内にある複数の無線ICタグの読み取りを行うリーダと接続される物品識別装置であって、物品毎に固有の識別情報を各々記憶しこの識別情報の対応した各物品に複数配置された前記無線ICタグから、任意の位置にある前記リーダにて読み取り得る全ての識別情報を取得する識別情報取得部と、前記識別情報取得部による前記識別情報の取得結果に基づいて、前記複数の物品のうちで、当該識別情報が取得された無線ICタグを最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品を前記リーダに最も近接する物品として特定する物品特定部と、を具備することを特徴とする物品識別装置である。
【0008】
すなわち、本発明では、リーダにより識別情報が読み取られた無線ICタグを最も多く備える物品を、リーダから最も近い物品として識別できるので、例えばリーダの読取範囲の調整などを必要とせず、しかも各物品が近接した状態にあっても物品の識別を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、複数の物品どうしが例えば近接配置されている場合でも、リーダに最も近接した物品の識別を的確に行うことが可能な物品識別装置、物品識別システム、物品識別プログラム及び物品識別方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る物品識別システム20の構成を概略的に示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る物品識別システム20は、複数の物品31に取り付けられた複数の無線ICタグ32(RFID[Radio Frequency Identification]タグ又は非接触データキャリアなどとも称する)と、リーダ(又はリーダライタ)28と、物品識別装置21とから構成される。無線ICタグ32は、例えば13.56MHz帯の周波数で交信を行う電磁誘導方式のタグであって、ICチップやアンテナコイルなどを備える。
【0012】
上記のICチップは、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ロジック回路、中央演算処理装置(CPU)などを備える。CPUでは、ROMやRAMに格納されたプログラムやデータなどを用いてリーダ28との通信制御や応答処理など各種の演算処理を実行する。また、ROMには、無線ICタグ32の製造時に、個々の無線ICタグ32に固有に付与されたタグ識別コード(タグ識別情報)が記憶されている。さらに、ICチップには、無線交信のためのRF回路の他、コンデンサなども搭載されている。
【0013】
また、本実施形態の無線ICタグ32及びリーダ28は、いわゆるアンチコリジョン機能に対応している。つまり、リーダ28は、所定の読取範囲(通信エリア)内にある複数の無線ICタグ32の一括読み取りが可能となっている。また、リーダ28は、ハンディタイプの読取装置であり、ユーザがハンドリングしつつ無線ICタグ32側に近接させる(かざす)ことで、読取範囲内の無線ICタグ32との間での交信が可能となる。
【0014】
次に、物品識別装置21の構成を、図1に加え図2及び図3に基づき詳述する。前記図2は、図1の物品識別システム20の具体的な適用例を示す図であり、また、図3は、物品識別装置21が備えたマッピング情報定義部27の内容を示す図である。
【0015】
ここで、本実施形態では、図2及び図3に示すように、識別対象の物品A、B、C(図1の物品31)としては、例えば棚に規則的に並べられたバインダが適用されている。また、複数の無線ICタグ1a〜4a、5b〜8b、9c〜12c(図1の無線ICタグ32)は、近接配置される各物品A、B、Cの配列方向(バインダの厚さ方向)に沿って物品毎に複数個ずつ規則的に配列されている。また、本実施形態では、各物品A、B、Cは、同一のサイズ及び同一の形状で構成されており、各々の離間距離が等しくなるように配置されている。さらに、物品A、B、Cに四つずつ設けられた無線ICタグ1a〜4a、5b〜8b、9c〜12cは、サイズ及び形状の等しい当該各物品上における同一の位置(本実施形態では、バインダの下方の所定位置)に配置されている。しかし、実務的観点からすれば、等間隔に配置されることが好ましいが、完全に等間隔に配置されていなくとも構わない。例えば、数ミリメートルや数センチメートルのずれが生じていても構わないものとする。
【0016】
また、無線ICタグ1a〜4a、5b〜8b、9c〜12cは、物品A、B、C毎に固有の識別情報としてID番号『1〜12』を各々記憶しこのID番号の対応した各物品に複数個ずつ規則的に配置されている。このID番号『1〜12』は、無線ICタグ毎に固有のタグ識別コードに関連付けて個々の無線ICタグのRAM内に記憶されている。詳述すると、ID番号『1〜12』は、物品A、B、Cの配列方向に沿って値が連続的に増加する数値を示している。物品Aには、ID番号『1〜4』を各々記憶する無線ICタグ1a〜4aが配置され、物品Bには、ID番号『5〜8』を各々記憶する無線ICタグ5b〜8bが配置されている。さらに、物品Cには、ID番号『9〜12』を各々記憶する無線ICタグ9c〜12cが配置されている。又、ID番号『1〜12』について、物品A、B、Cの配列方向に沿って値が連続的に減少するような場合でもあってもよい。
【0017】
また、図1に示すように、リーダ28と接続される物品識別装置21は、識別情報取得部としてのID取得部22、演算部23、判別部24、演算方法定義部26、マッピング情報定義部27及び識別結果出力部25を備える。上記した演算部23、判別部24、演算方法定義部26及びマッピング情報定義部27は、互いに協働しつつ物品特定部として機能する。なお、物品識別装置21が備えるこれらの構成部分は、物品識別装置21自体のRAM(メインメモリ)上で実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現されてもよいし、電子部品を組み合わせて構成したハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0018】
上述したID取得部22は、各物品A、B、Cに四つずつ配置された無線ICタグ1a〜4a、5b〜8b、9c〜12c側から、任意の位置にあるリーダ28にて一括で読み取ることのできた全てのID番号を取得する。
【0019】
演算部23は、ID取得部22により取得された全てのID番号を判別して物品A、B、C毎に分けたID番号の取得状況に対応する演算結果を算出する。つまり、演算部23は、演算方法定義部26を参照しつつ、ID取得部22により取得された全てのID番号の平均値を演算結果として算出する。詳述すると、演算方法定義部26には、取得したID番号(数値)を加算したものをID番号の総取得数で除算するための演算式が記憶されている。すなわち、ID取得部22により取得されたID番号が、例えば『1〜6』である場合、演算部23は、演算『(1+2+3+4+5+6)/6』を行い、演算結果として『3.5』を出力する。
【0020】
マッピングテーブルとして機能するマッピング情報定義部27は、図3に示すように、演算部23が算出し得る演算結果と複数の物品A、B、Cのうちでリーダ28から最も近い特定すべき物品との対応関係を定義する。詳述すると、マッピング情報定義部27は、演算部が算出し得る上記平均値に対応させた数値範囲であって且つ物品毎の個々の無線ICタグが各々記憶するID番号の極小値から極大値までを範囲に定めた数値範囲と、物品A、B、Cのうちでリーダ28から最も近い特定すべき物品と、の対応関係を定義する。
【0021】
すなわち、マッピング情報定義部27は、物品A上の無線ICタグ1a〜4aが記憶するID番号の極小値『1』(タグ1aが記憶する番号)から極大値『4』(タグ4aが記憶する番号)までを範囲に定めた数値範囲『1〜4』と、物品Aとを対応付けて記憶する。また、マッピング情報定義部27は、物品B上の無線ICタグ5b〜8bが記憶するID番号の極小値『5』(タグ5bが記憶する番号)から極大値『8』(タグ8bが記憶する番号)までを範囲に定めた数値範囲『5〜8』と、物品Bとを対応付けて記憶する。さらに、マッピング情報定義部27は、物品C上の無線ICタグ9c〜12cが記憶するID番号の極小値『9』(タグ9cが記憶する番号)から極大値『12』(タグ12cが記憶する番号)までを範囲に定めた数値範囲『9〜12』と、物品Cとを対応付けて記憶する。
【0022】
判別部24は、マッピング情報定義部27を参照して、演算部23により算出された演算結果(平均値)に対応する物品を判別(判定)する。また、識別結果出力部25は、判別部24により判別された物品の名称や、またその物品に対応するコード名などを、所定の表示装置などに向けてデータ出力する機能を有する。
【0023】
ここで、本実施形態に係る物品識別装置21において、互いに協働しつつ物品特定部として機能する上述した演算部23、判別部24、演算方法定義部26及びマッピング情報定義部27は、実質的に、ID取得部22によるID番号の取得結果に基づいて、複数の物品A、B、Cのうちで、当該ID番号が取得された無線ICタグを最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品をリーダ28に最も近接する物品として特定する。すなわち、上述したマッピング情報定義部27及び演算方法定義部26は、リーダ28と交信できた無線ICタグを最も多く備える物品を、リーダから最も近い物品として識別できるように、数値範囲や演算式が予め定められている。
【0024】
次に、このように構成される物品識別システム20(物品識別装置21)を用いた物品識別方法について、図4及び図5に基づき説明を行う。ここで、図4は、図1の物品識別装置21が備えたID取得部22(リーダ28)によるID番号の取得結果の一例を示す図である。また、図5は、物品識別システム20による物品識別方法を示すシーケンス図である。
【0025】
まず、図5に示すように、各物品A、B、Cに複数個ずつ配置された複数の無線ICタグ1a〜4a、5b〜8b、9c〜12c側から、任意の位置にあるリーダ28にて一括で読み取ることのできた全てのID番号が、リーダ28からID取得部22へ送信される(S[Step]1)。ここで、本実施形態では、図4に示すように、物品Cが備える無線ICタグ9c〜12cのID番号『9〜12』と、物品Bが備える無線ICタグ7b、8bのID番号『7、8』と、がID取得部22によって取得された態様を例示する。すなわち、図4に示すこの例では、物品Bよりも物品Cに、より近接する位置から、リーダ28による無線ICタグの一括読み取りが行われた態様を示している。
【0026】
次に、ID取得部22は、リーダ28側から受信した全てのID番号を演算部23に送信する(S2)。ここで、演算部23は、演算方法定義部26を参照して(S3)、ID取得部22側から通知されたID番号の平均値を算出する(S4)。詳細には、演算部23は、『7』、『8』、『9』、『10』、『11』、『12』を加算した値をID番号の総取得数『6』で除算する演算『(7+8+9+10+11+12)/6』を行い、演算結果として『9.5』を判別部24へ送る(S5)。
【0027】
これを受信した判別部24は、マッピング情報定義部27を参照して(S6)、演算部から送られてきた演算結果『9.5』に対応する物品の判別(識別)を行い(S7)、識別結果として得られた物品『C』を識別結果出力部25に送信する(S8)。
【0028】
既述したように、本実施形態に係る物品識別システム20(物品識別装置21)によれば、リーダ28によりID番号の読み取られた無線ICタグを最も多く備える物品を、リーダ28から最も近い物品として識別できるので、例えばリーダ28の読取範囲の調整などを必要とせず、しかも物品どうしが近接配置された状態にあっても個々の物品の識別を的確に行うことができる。
【0029】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施形態を図6〜図8に基づき説明する。
ここで、図6は、第2の実施形態に係る物品識別システムの具体的な適用例を示す図であり、図7は、この実施形態の物品識別システムの物品識別装置が備えたマッピング情報定義部37の内容を示す図である。また、図8は、上記物品識別装置が備えたID取得部によるID番号の取得結果の一例を示す図である。
【0030】
すなわち、この実施形態に係る物品識別装置は、第1の実施形態の物品識別装置21が備えていたマッピング情報定義部27に代えて、図7に示すように、マッピング情報定義部37を備えて構成されている。また、図6に示すように、本実施形態の複数の無線ICタグ1a、2b、3cが各々記憶するID番号は、物品A、B、C毎に固有であると共に、個々の物品と一対一で対応する共通のID番号である。詳述すると、物品Aには、物品A共通のID番号『1』を各々記憶する例えば四つの無線ICタグ1aが配置され、物品Bには、物品B共通のID番号『2』を各々記憶する四つの無線ICタグ2bが配置されている。さらに、物品Cには、物品C共通のID番号『3』を各々記憶する四つの無線ICタグ3cが配置されている。
【0031】
一方、この実施形態に係る物品識別装置が備える演算部は、ID取得部による取得数の最も多いID番号を演算結果として算出する。また、マッピング情報定義部37は、図7に示すように、ID取得部による取得数の最も多い、上記演算部が算出し得るID番号と、複数の物品A、B、Cのうちでリーダから最も近い特定すべき物品と、を対応付けて記憶する。
【0032】
つまり例えば、図8に示すように、物品Aが備える無線ICタグ1aのID番号『1』と、物品Bが備える無線ICタグ2bのID番号『2』、『2』、『2』、『2』と、物品Cが備える無線ICタグ9cのID番号『3』と、がリーダによって読み取られ、これを物品識別装置のID取得部が取得した場合には、演算部は、ID取得部による取得数の最も多い、ID番号『2』を識別結果として算出する。これを受信した判別部は、マッピング情報定義部37を参照して、演算部から送られてきた演算結果『2』に対応する物品『B』を識別結果出力部に通知する。なお、図8に示すこの例では、物品A、Cよりも物品Bに、より近接する位置から、リーダによる無線ICタグ1a、2b、3cの一括読み取りが行われた態様を示している。
【0033】
したがって、本実施形態に係る物品識別システムにおいても、近接配置された物品A、B、Cの識別を的確に行うことができる。
【0034】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施形態を図9〜図11に基づき説明する。
ここで、図9は、本実施形態に係る物品識別システムの具体的な適用例を示す図であり、図10は、この実施形態の物品識別システムの物品識別装置が備えたマッピング情報定義部47の内容を示す図である。また、図11は、上記物品識別装置が備えたID取得部によるID番号の取得結果の一例を示す図である。
【0035】
すなわち、この実施形態に係る物品識別装置は、第1の実施形態の物品識別装置21が備えていたマッピング情報定義部27に代えて、図10に示すように、マッピング情報定義部47を備えて構成されている。また、この実施形態では、同一のサイズ及び同一の形状で構成された物品D〜Iが縦横に規則的に配列されている。さらに、物品D〜Iには、ID番号『1』、『2』、『3』、『4』、『5』、『6』を各々記憶する(物品毎に九個ずつある)無線ICタグ1d、2e、3f、4g、5h、6iが、各物品上において均一に分散された状態で各々配置されている。
【0036】
また、この実施形態に係る物品識別装置が備える演算部は、第2の実施形態と同様にID取得部による取得数の最も多いID番号を演算結果として算出する。また、マッピング情報定義部47は、図10に示すように、ID取得部による取得数の最も多い、上記演算部が算出し得るID番号と、複数の物品D〜Iのうちでリーダから最も近い特定すべき物品と、を対応付けて記憶する。
【0037】
したがって例えば、図11に示すように、物品Dが備える無線ICタグ1dのID番号『1』一つ、物品Eが備える無線ICタグ2eのID番号『2』が六つ、物品Fが備える無線ICタグ3fのID番号『3』が一つ、物品Gが備える無線ICタグ4gのID番号『4』が三つ、物品Hが備える無線ICタグ5hのID番号『5』が九つ、物品Iが備える無線ICタグ6iのID番号『6』が三つ、リーダによって読み取られたと仮定する。リーダによるID番号のこの読取結果を、物品識別装置のID取得部が取得した場合には、演算部は、ID取得部による取得数の最も多い、ID番号『5』を識別結果として算出する。これを受信した判別部は、マッピング情報定義部47を参照して、演算部から送られてきた演算結果『5』に対応する物品『H』を識別結果出力部に通知する。なお、図11に示すこの例では、物品D、E、F、G、Iよりも物品Hに、より近接する位置から、リーダによる無線ICタグ1d、2e、3f、4g、5h、6iの一括読み取りが行われた態様を示している。
【0038】
このように、本実施形態に係る物品識別システムによれば、縦横に規則的に配置され、しかも互いに近接した状態の物品D〜Iの識別を的確に行うことができる。
【0039】
以上、本発明を各実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施形態では、13.56MHz帯の周波数で交信を行う無線ICタグを適用していたが、これに代えて、例えば135kHz以下の周波数帯を使用する電磁誘導方式の無線ICタグを本発明に適用してもよい。さらに、これに代えて、2.45GHzや5.8GHzといった周波数帯の電波方式(マイクロ波方式)の無線ICタグを本発明に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る物品識別システムの構成を示す図。
【図2】図1の物品識別システムの具体的な適用例を示す図。
【図3】図1の物品識別システムを構成する物品識別装置が備えたマッピング情報定義部の内容を示す図。
【図4】図1の物品識別装置が備えたID取得部によるID番号の取得結果の一例を示す図。
【図5】図1の物品識別システムによる物品識別方法を示すシーケンス図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る物品識別システムの具体的な適用例を示す図。
【図7】第2の実施形態の物品識別装置が備えるマッピング情報定義部の内容を示す図。
【図8】第2の実施形態の物品識別装置が備えたID取得部によるID番号の取得結果の一例を示す図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る物品識別システムの具体的な適用例を示す図。
【図10】第3の実施形態の物品識別装置が備えるマッピング情報定義部の内容を示す図。
【図11】第3の実施形態の物品識別装置が備えたID取得部によるID番号の取得結果の一例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
20…物品識別システム、21…物品識別装置、22…ID取得部、24…判別部、25…識別結果出力部、26…演算方法定義部、27,37,47…マッピング情報定義部、28…リーダ、31,A〜I…物品、32,1a〜4a,5b〜8b,9c〜12c,2b,3c,1d,2e,3f,4g,5h,6i…無線ICタグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の読取範囲内にある複数の無線ICタグの読み取りを行うリーダと接続される物品識別装置であって、
物品毎に固有の識別情報を各々記憶しこの識別情報の対応した各物品に複数配置された前記無線ICタグから、任意の位置にある前記リーダにて読み取り得る全ての識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記識別情報取得部による前記識別情報の取得結果に基づいて、前記複数の物品のうちで、当該識別情報が取得された無線ICタグを最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品を前記リーダに最も近接する物品として特定する物品特定部と、
を具備することを特徴とする物品識別装置。
【請求項2】
前記物品特定部は、
前記識別情報取得部により取得された前記全ての識別情報を判別して前記物品毎に分けた識別情報の取得状況に応じて所定の演算を実行する演算部と、
前記演算部による演算結果と前記複数の物品のうちで前記リーダから最も近い特定すべき物品との対応関係を定義するマッピングテーブルと、
を備えることを特徴とする請求項1記載の物品識別装置。
【請求項3】
前記各物品が所定の方向に沿って規則的に配列されていると共に、前記複数の無線ICタグが前記物品の配列方向に沿って前記物品毎に複数個ずつ規則的に配列され、かつ前記複数の無線ICタグに各々記憶される識別情報が、前記物品の配列方向に沿って値が連続的に増加又は減少する数値からなる識別番号であり、
さらに前記演算部は、前記識別情報取得部により取得された全ての識別番号の平均値を演算結果として算出し、
前記マッピングテーブルは、前記演算部が算出し得る平均値に対応させた数値範囲であり且つ前記物品毎の個々の無線ICタグが各々記憶する識別番号の極小値から極大値までを範囲に定めた数値範囲と、前記複数の物品のうちで前記リーダから最も近い特定すべき物品と、の対応関係を定義することを特徴とする請求項2記載の物品識別装置。
【請求項4】
前記複数の無線ICタグが各々記憶する識別情報は、前記物品毎に固有であると共に個々の物品と一対一で対応する共通の識別番号であり、
さらに、前記演算部は、前記識別情報取得部による取得数の最も多い識別番号を演算結果として算出し、
前記マッピングテーブルは、前記識別情報取得部による取得数の最も多い前記演算部が算出し得る識別番号と、前記複数の物品のうちで前記リーダから最も近い特定すべき物品と、の対応関係を定義することを特徴とする請求項2記載の物品識別装置。
【請求項5】
物品毎に固有の識別情報を各々記憶しこの識別情報の対応した各物品に複数配置された無線ICタグと、これら複数の無線ICタグのうちで所定の読取範囲内にある全ての無線ICタグの読み取りを行うリーダと、このリーダに接続された物品識別装置と、を備え、
前記物品識別装置が、
前記各物品に複数個ずつ配置された前記複数の無線ICタグから、任意の位置にある前記リーダにて読み取り得る全ての識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記識別情報取得部による前記識別情報の取得結果に基づいて、前記複数の物品のうちで、当該識別情報が取得された無線ICタグを最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品を前記リーダに最も近接する物品として特定する物品特定部と、
を具備することを特徴とする物品識別システム。
【請求項6】
所定の読取範囲内にある複数の無線ICタグの読み取りを行うリーダと接続されるコンピュータを、
物品毎に固有の識別情報を各々記憶しこの識別情報の対応した各物品に複数配置された前記無線ICタグから、任意の位置にある前記リーダにて読み取り得る全ての識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記識別情報取得部による前記識別情報の取得結果に基づいて、前記複数の物品のうちで、当該識別情報が取得された無線ICタグを最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品を前記リーダに最も近接する物品として特定する物品特定部、
として機能させることを特徴とする物品識別プログラム。
【請求項7】
所定の読取範囲内にある複数の無線ICタグの読み取りを行うリーダと接続される物品識別装置を用いた物品識別方法であって、
物品毎に固有の識別情報を各々記憶しこの識別情報の対応した各物品に複数配置された前記無線ICタグから、任意の位置にある前記リーダにて読み取り得る全ての識別情報を取得するステップと、
前記識別情報の取得結果に基づいて、前記複数の物品のうちで、当該識別情報が取得された無線ICタグを最も多く備える物品を判別し、判別したこの物品を前記リーダに最も近接する物品として特定するステップと、
を有することを特徴とする物品識別方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−326674(P2007−326674A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158879(P2006−158879)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】