説明

物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法および集品品目数決定システム

【課題】物流倉庫において、作業者毎の集品作業実績を正確に収集するとともに、次工程開始までの待ち時間を短縮可能な集品品目数決定方法および集品品目数決定システムを提供する。
【解決手段】ホストコンピュータ2と複数の携帯端末(11〜13)とからなる集品品目数決定システム1を用い、各作業者が所定の作業を行ったときの時刻を記憶する時刻記憶段階と、各作業者が一つの品目に関して行った作業に要した時間である品目毎作業時間を算出する品目毎作業時間算出段階と、品目毎作業時間の平均値である品目単位平均作業時間を算出する平均作業時間算出段階と、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数を算出する集品品目数算出段階と、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する集品品目数決定段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流倉庫におけるピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流の現場では、出荷対象の品目全てを集品した後で、集品した品目を出荷先毎に仕分ける所謂バッチピッキング方式により作業を行うことが知られている。この方式では、品目別に複数の場所に保管されている品目を複数の作業者がそれぞれ所定の品目毎に所定の数だけ集品するピッキング工程が完了した後、当該ピッキング工程で各作業者により集品された品目を出荷先毎に仕分ける仕分け工程に移行する。
【0003】
ところで、従来、ピッキング工程における各作業者の作業時間を管理することを目的として、監督者が作業者に随行し、ストップウォッチなどにより作業者の各作業に要した時間を計測することがあった。しかしながら、この場合、作業者によって作業が行われる度に監督者が作業者に随行することは困難である。そのため、日々変化する作業者の熟練度の向上等を正確に把握することは難しかった。また、作業者自らが自身の作業時間をストップウォッチなどにより計測する場合、作業をしながら作業時間を計測しなければならず、計測した時間に誤差が生じるおそれがあった。
【0004】
特許文献1に開示された作業実績収集システムおよび作業実績収集方法では、作業者特定用IDタグおよび作業対象物品特定用IDタグ等を用いて作業者毎の作業実績を収集している。このシステムおよび方法では、作業者が操作する作業設備の稼働時間に基づいて各作業者の作業時間を推定している。そのため、上述のピッキング工程での集品作業のように、作業設備等を操作することなく行う作業に対しては、当該システムおよび方法をそのまま適用することはできない。
【0005】
一方、ピッキング工程で各作業者が集品を担当する品目数は監督者の経験的な勘によって作業者に指示されている。そのため、各作業者の作業能力によっては不適切な品目数が割り当てられることとなり、最初に担当分の全ての品目の集品作業を完了した者と最後に集品作業を完了した者との間で、作業完了の時刻に差が生じることがあった。ピッキング工程の次工程である仕分け工程は、ピッキング工程での集品作業が全て完了しないと開始できない。そのため、各作業者の集品作業完了時刻に差が生じると、最後に集品作業を完了する者がその作業を完了するまで仕分け工程を開始することができず、物流工程全体における作業効率の低下をまねいていた。
【0006】
特許文献2に開示された積荷出庫指示システムおよび積荷出庫指示方法では、複数の昇降機により積荷を出庫する物流倉庫において、昇降機の能力データに基づいて出庫の指示を行うことが示されている。これにより、複数の昇降機を効率的に利用し、出庫待ち時間の低減を図っている。しかしながら、このシステムおよび方法も、作業設備として操作する昇降機の能力データに基づいて最終的な出庫の指示を行うものであるため、上述のピッキング工程での集品作業のように、作業設備等を操作することなく行う作業に対しては、当該システムおよび方法をそのまま適用することはできない。
【特許文献1】特開2005−182656号公報
【特許文献2】特開2002−179222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、物流倉庫において、作業者毎の集品作業実績を正確に収集するとともに、次工程開始までの待ち時間を短縮可能な集品品目数決定方法および集品品目数決定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る集品品目数決定方法の発明は、ホストコンピュータと当該ホストコンピュータに通信可能に接続される複数の端末とからなるシステムを用い、ピッキング工程における各作業者の複数の所定の作業の結果を示すイベント情報が前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻を前記ホストコンピュータが記憶する時刻記憶段階と、前記ホストコンピュータによって、前記時刻記憶段階で記憶した時刻に基づいて、各作業者が一つの品目に関して行った前記複数の所定の作業に要した時間である品目毎作業時間を、集品を担当した全ての品目毎に算出する品目毎作業時間算出段階と、前記ホストコンピュータによって、前記品目毎作業時間算出段階で算出した各作業者の前記品目毎作業時間、および各作業者が集品を担当した品目数に基づいて、前記品目毎作業時間の平均値である品目単位平均作業時間を作業者毎に算出する平均作業時間算出段階と、前記ホストコンピュータによって、前記平均作業時間算出段階で算出した前記品目単位平均作業時間に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数を作業者毎に算出する集品品目数算出段階と、前記ホストコンピュータによって、前記集品品目数算出段階で算出した作業者毎の前記品目数に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する集品品目数決定段階と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、作業者の所定の作業の結果を示すイベント情報がホストコンピュータに送信されたときの時刻に基づいて各作業者の作業時間を算出するため、物流倉庫における各作業者の作業実績を自動かつ正確に収集することができる。
また、本発明では、収集した作業実績のうち品目毎の作業時間、および作業者が集品を担当した品目数に基づいて、各作業者の品目単位の平均作業時間を算出する。このようにして算出した各作業者の品目単位の平均作業時間に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数を作業者毎に算出する。そして、算出した作業者毎の品目数に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する。このようにして決定した品目数の割り当てに基づいて、各作業者に対して集品作業の指示を行えば、次回のピッキング工程における各作業者の作業時間がほぼ同一となり、各作業者はほぼ同時に集品作業を終えることができる。これにより、最初に集品作業を終えた作業者と最後に集品作業を終えた作業者との間の時間的な差を極力少なくすることができる。したがって、ピッキング工程の後に控える工程の開始までの待ち時間を短縮することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記品目毎作業時間算出段階で算出される前記品目毎作業時間は、作業者が所定の場所に到着してから前記所定の場所に保管されている品目の取り出しが完了するまでの時間であるピックアップ時間と、前記品目の取り出しが完了してから前記所定の場所における前記品目の取り出し後の残量をカウントし終わるまでの時間である残量カウント時間と、前記品目の残量をカウントし終わってから次の所定の場所に到着するまでの時間である移動時間と、を含む。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明では、前記ピックアップ時間は、作業者が前記所定の場所に到着したことを示す情報が到着イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻と、作業者が前記所定の場所に保管されている品目の取り出しを完了したことを示す情報がピックアップ完了イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻との時間的な間隔であり、前記残量カウント時間は、前記ピックアップ完了イベント情報が前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻と、作業者が前記所定の場所における前記品目の取り出し後の残量をカウントし終わったことを示す情報が残量カウント完了イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻との時間的な間隔であり、前記移動時間は、前記残量カウント完了イベント情報が前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻と、作業者が次の所定の場所に到着したことを示す情報が到着イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻との時間的な間隔である。
【0012】
このように、ピッキング工程における作業を作業の内容毎に細分化して各作業時間を計測することにより、各作業者の作業実績をより正確に収集することができる。これにより、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数をより適切に決定することができる。その結果、ピッキング工程の後に控える工程の開始までの待ち時間をより短縮することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記集品品目数算出段階では、前記平均作業時間算出段階で算出した特定の作業者の品目単位平均作業時間を他の作業者の品目単位平均作業時間で除した値を、前記他の作業者の前記特定の作業者に対する能力比を示す対特定者能力値とし、特定の作業者が次回のピッキング工程において集品を担当すべき品目数である基準品目数は、次回のピッキング工程で集品が行われる品目数の総数を、「1」に他の作業者毎の前記対特定者能力値の総和「α」を加えた値(1+α)で除することにより算出し、他の作業者が次回のピッキング工程において集品を担当すべき品目数は、前記基準品目数に、当該他の作業者についての前記対特定能力値を乗ずることにより算出する。これにより、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を効率的に算出することができる。
【0014】
請求項5に係る発明では、前記ホストコンピュータと前記端末とは、無線LANによって通信可能に接続されている。これにより、各作業者は端末を携帯して集品作業を行うことができるため、前記イベント情報を端末からホストコンピュータに送信するのが容易になる。また、例えば端末が、有線によりホストコンピュータに接続され、かつ、品目が保管された場所毎に備え付けられているような場合に比べ、必要な端末数を削減できるとともにホストコンピュータと端末との接続環境を簡単なものとすることができる。
【0015】
請求項6に係る集品品目数決定システムの発明は、上記請求項1に係る発明に対応するシステムの発明である。したがって、本発明によれば、請求項1に係る発明と同様、物流倉庫における各作業者の作業実績を自動かつ正確に収集することができるとともに、ピッキング工程の後に控える工程の開始までの待ち時間を短縮することができる。なお、本発明が備える複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源とソフトウェアにより機能が特定されるハードウェア資源との任意の組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態である集品品目数決定システムを示す図である。集品品目数決定システム1は、ホストコンピュータ2と複数の携帯端末とにより構成されている。携帯端末11〜13は、それぞれ無線LANによりホストコンピュータ2に通信可能に接続している。
【0017】
ホストコンピュータ2は、図示しない演算装置としてのCPUおよび記憶手段等を備えている。記憶手段は、例えばROMやRAMなどのメモリ、および外部記憶装置等からなる。また、ホストコンピュータ2には、図示しない入力装置、表示装置、印刷装置などの周辺機器が接続されている。ホストコンピュータ2の記憶手段には、プログラムとしてのソフトウェアが格納されている。
【0018】
携帯端末11〜13は、図示しない演算装置としてのCPU、記憶手段、無線接続手段、入力手段等を備えている。携帯端末11〜13の記憶手段には、プログラムとしてのソフトウェアが格納されている。また、携帯端末11〜13は、表示部、読取部および発音部等を有している。携帯端末11〜13は、記憶手段に記憶された情報を表示部によって表示可能である。また、携帯端末11〜13は、例えばバーコードなどに表示されている情報またはICタグに格納されている情報を読取部によって読み取り可能である。さらに、携帯端末11〜13は、無線接続手段によって、ホストコンピュータ2が備えるアンテナ3を介し、ホストコンピュータ2との間で無線により情報を送受信することが可能である。このとき、携帯端末11〜13は、当該それぞれの端末に固有の識別IDを付加した情報をホストコンピュータ2に送信可能である。これにより、ホストコンピュータ2は、受信した情報について、送信元の携帯端末を特定することができる。
【0019】
ホストコンピュータ2および携帯端末11〜13に格納されたソフトウェアは、ハードウェア資源と協働することにより、物流倉庫内の複数の場所に品目別に保管されている品目を複数の作業者がそれぞれ所定の品目毎に所定の数だけ集品するピッキング工程を含む物流工程において、次回のピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する。
【0020】
<集品品目数決定方法>
以下、集品品目数決定システム1を用いて、次回のピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する具体的な方法について説明する。
【0021】
まず、例えば図2に示すように3人の作業者(甲、乙、丙)がピッキング工程において品目A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3を集品する場合の集品品目数決定システム1の作動を説明する。上記「品目」との語句は、例えば商品または部品など物流の対象となり得る物品の種目を意味する。以下、同様の意味で当該語句を用いる。また、各品目は、物流倉庫内の複数の場所に設置された保管棚において所定の位置(以下、当該「位置」をロケーションという)に保管されているものとする。
なお、ここで、品目A1、B1、C1は顧客Cus1向けの品目とし、品目A2、B2、C2は顧客Cus2向けの品目とし、品目A3、B3、C3は顧客Cus3向けの品目とする。また、品目A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3は、それぞれロケーション(ア〜ケ)に保管されているものとする。
【0022】
ホストコンピュータ2は、ピッキング工程が開始される前、各作業者が集品を担当すべき品目数および担当品目を決定し、その結果をピッキングリストとして表示装置に表示するとともに印刷装置により紙に印刷する。すなわち、ピッキングリストは、集品作業に関する指示書としての役割を果たす。ホストコンピュータ2は、作業者の中に、過去の集品作業に関する能力データをもたない者がいる場合は、所定の規則に従って当該作業者に割り当てる品目数を決定する。図2に示す例では、甲、乙、丙のいずれも過去の集品作業に関する能力データをもっていないため、ホストコンピュータ2は、品目数(9)を3人の作業者で等分して作業者毎の品目数(3)を決定し、各作業者に品目を割り当てたピッキングリストを作成する。
【0023】
具体的には、図3(A)に示すようなピッキングリストがホストコンピュータ2により作成される。ピッキングリストpLには、作業者毎に集品を担当すべき品目がリストされている。このピッキングリストpLでは、甲が品目A1〜A3を担当し、乙が品目B1〜B3を担当し、丙が品目C1〜C3を担当することがわかる。つまり、この場合、甲、乙、丙の3人は、それぞれが3種類(品目数)の品目を担当することを示している。また、ピッキングリストpLでは、それぞれの品目について、保管されているロケーション、出庫数量、および出荷先に関する情報等が紐付けられている。ピッキングリストpLは、ホストコンピュータ2の記憶手段に記憶されるとともに、表示装置に表示され、印刷装置により紙に印刷される。また、ホストコンピュータ2は、図3(B)に示すような品目の在庫を示すアイテム在庫リストを記憶手段に記憶している。アイテム在庫リストiLには、集品の対象となる品目がリストされており、それぞれの品目について、保管されているロケーション、および在庫量に関する情報等が紐付けられている。
ピッキング工程の開始時、甲、乙、丙は、それぞれ携帯端末11〜13を携帯する。また、各作業者は、ホストコンピュータ2の表示装置に表示されたピッキングリストpLを確認し、印刷されたピッキングリストpLを所持する。
【0024】
<作業者の作業およびホストコンピュータの処理の流れ>
次に、ピッキング工程における各作業者(甲、乙、丙)の作業、およびそれに伴うホストコンピュータ2の処理の流れについて、図4を用いて説明する。図4は、ピッキング工程における各作業者の作業と、それに対応するホストコンピュータ2の処理の流れとを表形式で示したものである。
【0025】
甲がピッキングリストpLに従って品目(A1)が保管されているロケーション(ア)に移動し、当該ロケーションに付されているバーコードを携帯端末11で読み取ると、携帯端末11は当該バーコードに記録されているロケーションの情報(ア)を無線でホストコンピュータ2に送信する(ステップ101:以下、S101とする)。
このとき、ホストコンピュータ2は、甲の携帯端末11から到着イベント情報としてのロケーションの情報(ア)を受信すると、その時点の時刻をTi11として記憶手段に記憶する。
また、このとき、ホストコンピュータ2は、受信したロケーションの情報とピッキングリストpL内の甲が最初に移動すべきロケーションの情報(ア)とを比較してそれぞれの情報が異なる場合、甲の移動先が誤っていると判断し、移動先の誤りを甲に通知する。具体的には、例えば携帯端末11の発音部からビープ音あるいは音声を発すること等により、この通知を行う。
【0026】
S101の後、甲は、品目(A1)をピッキングリストpLに示された出庫数量分だけ保管棚から取り出し、当該品目に付されているバーコードを携帯端末11で読み取った後、取り出した当該品目の数をカウントし、その数を携帯端末11に入力する。すると、携帯端末11は、当該品目に付されているバーコードの情報(A1)、および入力された情報(数量)を無線でホストコンピュータ2に送信する(S102)。
このとき、ホストコンピュータ2は、甲の携帯端末11から、品目の取り出し作業が完了したことを示すピックアップ完了イベント情報としての、品目およびその取り出された数の情報(A1、数量)を受信すると、その時点の時刻をTi12として記憶手段に記憶する。
また、このとき、ホストコンピュータ2は、受信した甲により取り出された品目およびその数量の情報とピッキングリストpL内の情報(A1、数量)とを比較してそれぞれの情報が異なる場合、取り出した品目が誤っている、または取り出した品目の数量が誤っていると判断し、これらの誤りをビープ音あるいは音声等によって甲に通知する。
【0027】
S102の後、甲は、品目(A1)を取り出した後にロケーション(ア)の保管棚に残った品目(A1)の数すなわち残量をカウントし、その数を携帯端末11に入力する。すると、携帯端末11は、入力された情報(残量)を無線でホストコンピュータ2に送信する(S103)。
このとき、ホストコンピュータ2は、甲の携帯端末11から、品目の残量をカウントし終わったことを示す残量カウント完了イベント情報としての品目の残量の情報(残量)を受信すると、その時点の時刻をTi13として記憶手段に記憶する。
また、このとき、ホストコンピュータ2は、受信した品目の残量の情報とアイテム在庫リストiLおよびピッキングリストpLの情報(在庫量から出庫数量を引いた値)とを比較してそれぞれの情報が異なる場合、カウントした品目の残量が誤っていると判断し、この誤りをビープ音あるいは音声等によって甲に通知する。
【0028】
S103の後、甲は、取り出した品目(A1)を台車に載せ、ピッキングリストpLに従って次の品目(A2)が保管されているロケーション(イ)に移動し、当該ロケーションに付されているバーコードを携帯端末11で読み取る。すると、携帯端末11は当該バーコードに記録されているロケーションの情報(イ)を無線でホストコンピュータ2に送信する。このように、甲は、S101での作業と同様の作業を行う。これにより、ホストコンピュータ2は、甲の携帯端末11から到着イベント情報としてのロケーションの情報(イ)を受信し、その時点の時刻をTi21として記憶手段に記憶する。
【0029】
その後、甲が品目(A2)に対してS102およびS103と同様の作業を行うことにより、ホストコンピュータ2は、ピックアップ完了イベント情報を受信したときの時刻をTi22として、残量カウント完了イベント情報を受信したときの時刻をTi23として記憶手段に記憶する。
さらにその後、甲が品目(A3)に対してS101〜S103と同様の作業を行うことにより、ホストコンピュータ2は、到着イベント情報を受信したときの時刻をTi31として、ピックアップ完了イベント情報を受信したときの時刻をTi32として、残量カウント完了イベント情報を受信したときの時刻をTi33として記憶手段に記憶する。
【0030】
一方、乙および丙は、それぞれ、甲がS101の作業を開始するのと同時に、S101と同様の作業を含むS201、S301を開始する。すなわち、乙および丙は、甲と同時に集品作業を開始し、並列的に同様の作業(S201〜S203での作業、S301〜S303での作業)を行う。これにより、ホストコンピュータ2は、乙が品目(B1、B2、B3)に対してS101〜S103と同様の作業を行ったとき、乙の作業の結果を示す各イベント情報を受信したときの時刻をそれぞれ記憶手段に記憶する。また、同様に、ホストコンピュータ2は、丙が品目(C1、C2、C3)に対してS101〜S103と同様の作業を行ったとき、丙の作業の結果を示す各イベント情報を受信したときの時刻をそれぞれ記憶手段に記憶する。なお、このとき、乙または丙の移動先のロケーション、取り出した品目およびその数量、品目の残量に誤りがあった場合は、S101〜S103と同様、これらの誤りを乙または丙に通知する。
このように、ホストコンピュータ2は、時刻記憶手段として機能し、各作業者の各作業の結果を示すイベント情報を受信したときの時刻を記憶手段に記憶することによって各作業者の作業実績を収集する。
【0031】
<集品品目数決定システムによる作業実績収集処理>
上述した「ピッキング工程における各作業者(甲、乙、丙)の作業およびそれに伴うホストコンピュータ2の処理の流れ」に関し、各作業者の作業実績を収集する集品品目数決定システム1としての処理の流れは図5に示すとおりである。
S501では、ホストコンピュータ2は、無線による甲(携帯端末11)からのイベント情報を受信したかどうかを判断する。甲からのイベント情報を受信した場合(S501:YES)、処理はS502へ移行する。一方、甲からのイベント情報を受信していない場合(S501:NO)、処理はS511へ移行する。
【0032】
S502では、ホストコンピュータ2は、甲によるロケーション情報の読み取り、品目情報の読み取り、または残量の入力を示すイベント情報を受信したら、そのときの時刻を記憶手段に記憶する。その後、処理はS503へ移行する。なお、S502でのホストコンピュータ2の処理は、上述のS101〜S103におけるホストコンピュータ2の処理に該当する。
【0033】
S503では、ホストコンピュータ2は、S502で受信したイベント情報とピッキングリストpLとから、甲の最後のロケーションでの作業が完了したか否かを判断する。甲の最後のロケーションでの作業が完了したと判断した場合(S503:YES)、処理はS550へ移行する。一方、甲の最後のロケーションでの作業は完了していないと判断した場合(S503:NO)、処理はS501へ戻る。
【0034】
S511では、ホストコンピュータ2は、無線による乙(携帯端末12)からのイベント情報を受信したかどうかを判断する。乙からのイベント情報を受信した場合(S511:YES)、処理はS512へ移行する。一方、乙からのイベント情報を受信していない場合(S511:NO)、処理はS521へ移行する。
【0035】
S512では、乙によるロケーション情報の読み取り、品目情報の読み取り、または残量の入力を示すイベント情報を受信したら、そのときの時刻を記憶手段に記憶する。その後、処理はS513へ移行する。なお、S512でのホストコンピュータ2の処理は、上述のS201〜S203におけるホストコンピュータ2の処理に該当する。
【0036】
S513では、ホストコンピュータ2は、S512で受信したイベント情報とピッキングリストpLとから、乙の最後のロケーションでの作業が完了したか否かを判断する。乙の最後のロケーションでの作業が完了したと判断した場合(S513:YES)、処理はS550へ移行する。一方、乙の最後のロケーションでの作業は完了していないと判断した場合(S513:NO)、処理はS501へ戻る。
【0037】
S521では、ホストコンピュータ2は、無線による丙(携帯端末13)からのイベント情報を受信したかどうかを判断する。丙からのイベント情報を受信した場合(S521:YES)、処理はS522へ移行する。一方、丙からのイベント情報を受信していない場合(S521:NO)、処理はS501へ戻る。
【0038】
S522では、丙によるロケーション情報の読み取り、品目情報の読み取り、または残量の入力を示すイベント情報を受信したら、そのときの時刻を記憶手段に記憶する。その後、処理はS523へ移行する。なお、S522でのホストコンピュータ2の処理は、上述のS301〜S303におけるホストコンピュータ2の処理に該当する。
【0039】
S523では、ホストコンピュータ2は、S522で受信したイベント情報とピッキングリストpLとから、丙の最後のロケーションでの作業が完了したか否かを判断する。丙の最後のロケーションでの作業が完了したと判断した場合(S523:YES)、処理はS550へ移行する。一方、丙の最後のロケーションでの作業は完了していないと判断した場合(S523:NO)、処理はS501へ戻る。
【0040】
S550では、ホストコンピュータ2は、全ての作業者の作業実績の収集が終了したか否かを判断する。全ての作業者の作業実績の収集が終了したと判断した場合(S550:YES)、集品品目数決定システム1は、図5に示す各作業者の作業実績を収集する処理を終了する。一方、全ての作業者の作業実績の収集は終了していないと判断した場合(S550:NO)、処理はS501へ戻る。
上述のように、S501〜S550の処理によってピッキング工程における各作業者の作業実績が収集される。
【0041】
図2では、甲はa点で集品作業を完了し、乙はb点で集品作業を完了し、丙はc点で集品作業を完了したことを示している。ここで、M点は甲、乙および丙が同時に集品作業を開始した時点を示し、N点は最後の作業者(丙)の集品作業が完了した時点、すなわち3人の作業者による全ての集品作業が完了した時点を示している。そして、M点からN点までがピッキング工程を示し、N点以降が顧客毎の出荷先に品目を仕分ける仕分け工程を示している。この例では、甲および乙の作業完了時刻と丙の作業完了時刻との間に差があるため、ピッキング工程の次の工程である仕分け工程の開始までに待ち時間が生じていることがわかる。
【0042】
<集品品目数決定システムによる集品品目数決定処理>
次に、各作業者の作業実績収集後(S501〜S550の後)に、集品品目数決定システム1により行われる処理の流れを図6に基づいて説明する。集品品目数決定システム1は、図6に示す処理によって、次回のピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定し、次回の集品作業のためのピッキングリストを作成する。そして、作成したピッキングリストを表示および印刷することにより、各作業者に対して次回のピッキング工程における集品作業の指示を行う。
【0043】
まず、S601で、次回のピッキング工程における集品作業者をホストコンピュータ2に登録する。例えば、次回のピッキング工程における集品作業者が甲、乙、丙の3人であった場合、甲、乙、丙をホストコンピュータ2に入力して登録する。その後、処理はS602へ移行する。
【0044】
S602では、ホストコンピュータ2は、直前のピッキング工程において各作業者が一つの品目に関して行った所定の作業に要した時間である品目毎作業時間を、集品を担当した全ての品目毎に算出する。このとき、ホストコンピュータ2は、品目毎作業時間算出手段として機能する。
【0045】
具体的には、まず、ホストコンピュータ2は、甲が品目(A1)の取り出しに要した時間であるピックアップ時間Tpi1、甲が品目(A1)の残量のカウントに要した時間である残量カウント時間Tci1、甲が次のロケーション(イ)まで移動するのに要した時間である移動時間Tmi12を算出する。Tpi1、Tci1およびTmi12は、以下の式により算出する。
Tpi1=Ti12−Ti11 ・・・(式1)
Tci1=Ti13−Ti12 ・・・(式2)
Tmi12=Ti21−Ti13 ・・・(式3)
【0046】
なお、上記各式におけるTi11、Ti12、Ti13およびTi21は、上述のS502、すなわちS101〜S103のステップでホストコンピュータ2が記憶した時刻であり、それぞれ、甲がロケーション(ア)に到着したときの時刻、甲が品目(A1)の取り出しを完了したときの時刻、甲が品目(A1)の残量のカウントを完了したときの時刻および甲が次のロケーション(イ)に到着したときの時刻である。
【0047】
続いて、ホストコンピュータ2は、上記式1〜式3と同様の式により、甲が品目(A2)に関する各作業を行ったときの時間として、品目(A2)の取り出しに要した時間であるピックアップ時間Tpi2、品目(A2)の残量のカウントに要した時間である残量カウント時間Tci2、次のロケーション(ウ)まで移動するのに要した時間である移動時間Tmi23を算出する。
【0048】
さらに、ホストコンピュータ2は、甲が品目(A3)に関する各作業を行ったときの時間として、品目(A3)の取り出しに要した時間であるピックアップ時間Tpi3、品目(A3)の残量のカウントに要した時間である残量カウント時間Tci3を算出する。このように、最後のロケーションの後には次に移動すべきロケーションがないので、最後のロケーションでの品目毎作業時間には、「残量カウント後の次のロケーションへの移動に要した時間」というような時間は含まない。
【0049】
同様に、ホストコンピュータ2は、乙が品目B1〜B3に関する各作業を行ったときのピックアップ時間、残量カウント時間および移動時間をそれぞれ算出する。さらに、ホストコンピュータ2は、丙が品目C1〜C3に関する各作業を行ったときのピックアップ時間、残量カウント時間および移動時間をそれぞれ算出する。
S602の後、処理はS603へ移行する。
【0050】
S603では、ホストコンピュータ2は、S602で算出した各作業者の品目毎の作業時間、および各作業者が集品を担当した品目数に基づいて、1品目あたりの各作業(取り出し、残量カウント、移動)の平均作業時間を作業者毎に算出する。このとき、ホストコンピュータ2は、平均作業時間算出手段として機能する。
【0051】
具体的には、まず、ホストコンピュータ2は、甲の1品目あたりの平均ピックアップ時間Tap、平均残量カウント時間Tac、平均移動時間Tamを算出する。Tap、Tac、Tamは、以下の式により算出する。
Tap=(Tpi1+Tpi2+Tpi3)/3 ・・・(式4)
Tac=(Tci1+Tci2+Tci3)/3 ・・・(式5)
Tam=(Tmi12+Tmi23)/2 ・・・(式6)
【0052】
なお、ここで、作業者が集品を担当した品目数がnの場合は、Tap、Tac、Tamは、以下の式により算出する。
Tap=(Tpi1+Tpi2+・・・+Tpin)/n ・・・(式7)
Tac=(Tci1+Tci2+・・・+Tcin)/n ・・・(式8)
Tam=(Tmi12+Tmi23+・・・+Tmi(n−1)n)/n ・・・(式9)
【0053】
続いて、ホストコンピュータ2は、上記式4〜6と同様の式により、乙の1品目あたりの平均ピックアップ時間、平均残量カウント時間および平均移動時間を算出する。さらに、ホストコンピュータ2は、丙の平均ピックアップ時間、平均残量カウント時間および平均移動時間を算出する。
S603の後、処理はS604へ移行する。
【0054】
S604では、ホストコンピュータ2は、S603で算出した各作業者の1品目あたりの各作業の平均作業時間に基づいて、予測ピッキング作業時間を作業者毎に算出する。ここで、予測ピッキング作業時間とは、ある作業者が次回のピッキング工程において集品作業を行ったときの1品目あたりの集品作業(取り出し、残量カウント、移動)に要する時間の予測値を意味する。
【0055】
具体的には、ホストコンピュータ2は、S603で算出した甲の平均ピックアップ時間Tap、平均残量カウント時間Tacおよび平均移動時間Tamを合計することにより、甲の予測ピッキング作業時間をT1として算出する。また、ホストコンピュータ2は、S603で算出した乙の平均ピックアップ時間、平均残量カウント時間および平均移動時間から、乙の予測ピッキング作業時間をT2として算出する。さらに、ホストコンピュータ2は、S603で算出した丙の平均ピックアップ時間、平均残量カウント時間および平均移動時間から、丙の予測ピッキング作業時間をT3として算出する。
S604の後、処理はS605へ移行する。
【0056】
S605では、ホストコンピュータ2は、S604で算出した各作業者の予測ピッキング作業時間に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数をS601で登録した作業者毎に算出する。このとき、ホストコンピュータ2は、集品品目数数算出手段として機能する。
【0057】
具体的には、次回のピッキング工程で集品が行われる品目数の総数をS0とすると、甲が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数S1、乙が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数S2、丙が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数S3は、ホストコンピュータ2によって、以下の式により算出される。
S1=S0/(1+T1/T2+T1/T3) ・・・(式10)
S2=S1・T1/T2 ・・・(式11)
S3=S1・T1/T3 ・・・(式12)
【0058】
ここで、甲の予測ピッキング作業時間T1を他の作業者(乙、丙)の予測ピッキング作業時間T2、T3で除した値を、それぞれ、乙の対甲能力値(T1/T2)、丙の対甲能力値(T1/T3)とすると、式10で示すように、甲が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数(S1)は、次回のピッキング工程で集品が行われる品目数の総数(S0)を、「1」に乙の対甲能力値(T1/T2)と丙の対甲能力値(T1/T3)との和を加えた値で除することにより算出される。
【0059】
また、式11で示すように、乙が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数(S2)は、甲が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数(S1)に、乙の対甲能力値(T1/T2)を乗ずることにより算出される。
さらに、式12で示すように、丙が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数(S3)は、甲が次回のピッキング工程で集品を担当すべき品目数(S1)に、丙の対甲能力値(T1/T3)を乗ずることにより算出される。
なお、式10〜12で算出された品目数(S1、S2、S3)が小数となった場合は、小数点以下を四捨五入することで整数にする。
【0060】
例えば、S601で登録した集品作業者(甲、乙、丙)それぞれの予測ピッキング作業時間がT1=1、T2=1、T3=2と算出され、次回のピッキング工程で集品が行われる品目がA1〜A10、B1〜B10、C1〜C10(品目数の総数S0=30)であった場合、S1、S2、S3は、それぞれ以下のとおりとなる。
S1=30/(1+1/1+1/2)=12
S2=12・1/1=12
S3=12・1/2=6
【0061】
なお、S601で登録した作業者、すなわち次回のピッキング工程で集品作業を行う作業者がm人の場合は、以下に示す式によりS1〜Smを算出する。
S1=S0/(1+T1/T2+・・・+T1/Tm) ・・・(式13)
S2=S1・T1/T2 ・・・(式14)

Sm=S1・T1/Tm ・・・(式15)
S605の後、処理はS606へ移行する。
【0062】
S606では、ホストコンピュータ2は、S605で算出した作業者毎の品目数に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する。このとき、ホストコンピュータ2は、集品品目数決定手段として機能する。
具体的には、ホストコンピュータ2は、S605で算出した作業者毎の品目数(S1、S2、S3)に基づいて、次回のピッキング工程で集品が行われる品目数(S0)を各作業者に割り当てる。
【0063】
例えば、上述のようにS605でS1、S2、S3がそれぞれS1=12、S2=12、S3=6と算出され、S0=30のとき、ホストコンピュータ2は、甲に品目数12を、乙に品目数12を、丙に品目数6を割り当てる。
S606の後、処理はS607へ移行する。
【0064】
S607では、ホストコンピュータ2は、S606で各作業者に割り当てた品目数に基づき、ピッキングリストを作成する。
例えば、上述のようにS606で甲に品目数12、乙に品目数12、丙に品目数6が割り当てられた場合、甲に品目A1〜A10、B1、B2(計12品目)を割り当て、乙に品目B3〜B10、C1〜C4(計12品目)を割り当て、丙に品目C5〜C10(計6品目)を割り当て、この割り当てに基づくピッキングリストを作成する。
そして、ホストコンピュータ2は、作成したピッキングリストを記憶手段に記憶するとともに、表示装置に表示し、印刷装置により紙に印刷する。
S607の処理が完了すると、ホストコンピュータ2は、図6に示す処理を終了する。
【0065】
上記S607で表示および印刷されたピッキングリストは、次回のピッキング工程における集品作業の指示書としての役割を果たす。このピッキングリストに従って各作業者が集品作業を行えば、ピッキング工程における各作業者の作業時間がほぼ同一となり、各作業者はほぼ同時に集品作業を終えることができる。
【0066】
以上説明したように、本発明の一実施形態による集品品目数決定システム1は、時刻記憶手段、品目毎作業時間算出手段、平均作業時間算出手段、集品品目数算出手段、集品品目数決定手段として機能する。
集品品目数決定システム1は、時刻記憶手段および品目毎作業時間算出手段によって、作業者の所定の作業の結果を示すイベント情報がホストコンピュータに送信されたときの時刻に基づいて各作業者の作業時間を算出するため、物流倉庫における各作業者の作業実績を自動かつ正確に収集することができる。
【0067】
また、集品品目数決定システム1は、平均作業時間算出手段によって、収集した作業実績のうち品目毎の作業時間、および作業者が集品を担当した品目数に基づいて、各作業者の品目単位の平均作業時間を算出する。このようにして算出した各作業者の品目単位の平均作業時間に基づき、集品品目数算出手段によって、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数を作業者毎に算出する。そして、算出した作業者毎の品目数に基づき、集品品目数決定手段によって、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する。このようにして決定した品目数の割り当てに基づいて、各作業者に対して集品作業の指示を行えば、次回のピッキング工程における各作業者の作業時間がほぼ同一となり、各作業者はほぼ同時に集品作業を終えることができる。これにより、最初に集品作業を終えた作業者と最後に集品作業を終えた作業者との間の時間的な差を極力少なくすることができる。したがって、ピッキング工程の後に控える工程の開始までの待ち時間を短縮することができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態による集品品目数決定システム1では、ピッキング工程における作業を作業の内容毎に細分化して各作業時間を計測することにより、各作業者の作業実績をより正確に収集することができる。これにより、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数をより適切に決定することができる。その結果、ピッキング工程の後に控える工程の開始までの待ち時間をより短縮することができる。
【0069】
また、本発明の一実施形態による集品品目数決定システム1は、集品品目数算出手段により、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を効率的に算出することができる。
【0070】
さらに、本発明の一実施形態による集品品目数決定システム1は、ホストコンピュータ2と携帯端末とが無線LANによって通信可能に接続されることにより構成されている。これにより、各作業者は携帯端末を携帯して集品作業を行うことができるため、作業の結果を示すイベント情報を端末からホストコンピュータに送信するのが容易になる。また、例えば端末が、有線によりホストコンピュータに接続され、かつ、品目が保管されたロケーションあるいは保管棚毎に備え付けられるような場合に比べ、必要な端末数を削減できるとともにホストコンピュータと端末との接続環境を簡単なものとすることができる。
【0071】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、3個の携帯端末とホストコンピュータとにより集品品目数決定システムを構成する例を示した。本発明の他の実施形態では、集品品目数決定システムを構成する携帯端末の数は、3個に限らず作業者の人数等に応じて増減してもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、ホストコンピュータと携帯端末とが無線LANによって接続されている例を示した。本発明の他の実施形態では、携帯端末を、有線接続の端末に代え、品目が保管されたロケーションあるいは保管棚毎に備え付けることとしてもよい。
【0073】
さらに、上述の実施形態では、各ロケーションおよび各品目にバーコードを付し、これを携帯端末で読み取る例を示した。本発明の他の実施形態では、バーコードの代わりに、固有の情報を保持可能なICタグなどを各ロケーションおよび各品目に付し、これを携帯端末で読み取ることとしてもよい。
【0074】
また、本発明の他の実施形態では、集品品目数決定手段による処理の後、品目を各作業者に割り当てるとき、次回のピッキング工程で集品が行われる品目の中からランダムに割り当ててもよい。もしくは、集品が行われる各品目の出庫数量の予定値に基づいて、各作業者の品目の総取り出し数(品目毎の出庫数量の総和)がほぼ同等となるように品目を割り当ててもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、1ロケーションに1品目が保管されている条件(ロケーション:品目=1:1)での作動例を示した。これに対し、本発明は、1ロケーションに複数(N)の品目が保管されている場合(ロケーション:品目=1:N)であっても、上述の実施形態と同様に作動し、同様の効果を奏することができる。
【0076】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態による集品品目数決定システムの構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態による集品品目数決定システムを用いて作業者の作業実績を収集するときの各作業者の作業の流れの一例を示す概念図。
【図3】本発明の一実施形態による集品品目数決定システムで利用されるピッキングリストおよびアイテム在庫リストの一例を示す図。
【図4】本発明の一実施形態による集品品目数決定システムを用いて作業者の作業実績を収集するときの作業者の作業およびホストコンピュータの処理の流れを示す図。
【図5】本発明の一実施形態による集品品目数決定システムが作業者の作業実績を収集するときの処理の流れを示すフローチャート。
【図6】本発明の一実施形態による集品品目数決定システムが、次回のピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定するときの処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0078】
1:集品品目数決定システム、2:ホストコンピュータ(時刻記憶手段、品目毎作業時間算出手段、平均作業時間算出手段、集品品目数算出手段、集品品目数決定手段)、11、12、13:携帯端末(端末)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータと当該ホストコンピュータに通信可能に接続される複数の端末とからなるシステムによって、物流倉庫内の複数の場所に品目別に保管されている品目を複数の作業者がそれぞれ所定の品目毎に所定の数だけ集品するピッキング工程を含む物流工程において、次回のピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する、物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法であって、
ピッキング工程における各作業者の複数の所定の作業の結果を示すイベント情報が前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻を前記ホストコンピュータが記憶する時刻記憶段階と、
前記ホストコンピュータによって、前記時刻記憶段階で記憶した時刻に基づいて、各作業者が一つの品目に関して行った前記複数の所定の作業に要した時間である品目毎作業時間を、集品を担当した全ての品目毎に算出する品目毎作業時間算出段階と、
前記ホストコンピュータによって、前記品目毎作業時間算出段階で算出した各作業者の前記品目毎作業時間、および各作業者が集品を担当した品目数に基づいて、前記品目毎作業時間の平均値である品目単位平均作業時間を作業者毎に算出する平均作業時間算出段階と、
前記ホストコンピュータによって、前記平均作業時間算出段階で算出した前記品目単位平均作業時間に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数を作業者毎に算出する集品品目数算出段階と、
前記ホストコンピュータによって、前記集品品目数算出段階で算出した作業者毎の前記品目数に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する集品品目数決定段階と、
を含むことを特徴とする、物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法。
【請求項2】
前記品目毎作業時間算出段階で算出される前記品目毎作業時間は、
作業者が所定の場所に到着してから前記所定の場所に保管されている品目の取り出しが完了するまでの時間であるピックアップ時間と、
前記品目の取り出しが完了してから前記所定の場所における前記品目の取り出し後の残量をカウントし終わるまでの時間である残量カウント時間と、
前記品目の残量をカウントし終わってから次の所定の場所に到着するまでの時間である移動時間と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法。
【請求項3】
前記ピックアップ時間は、作業者が前記所定の場所に到着したことを示す情報が到着イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻と、作業者が前記所定の場所に保管されている品目の取り出しを完了したことを示す情報がピックアップ完了イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻との時間的な間隔であり、
前記残量カウント時間は、前記ピックアップ完了イベント情報が前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻と、作業者が前記所定の場所における前記品目の取り出し後の残量をカウントし終わったことを示す情報が残量カウント完了イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻との時間的な間隔であり、
前記移動時間は、前記残量カウント完了イベント情報が前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻と、作業者が次の所定の場所に到着したことを示す情報が到着イベント情報として前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻との時間的な間隔であることを特徴とする請求項2に記載の物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法。
【請求項4】
前記集品品目数算出段階では、
前記平均作業時間算出段階で算出した特定の作業者の品目単位平均作業時間を他の作業者の品目単位平均作業時間で除した値を、前記他の作業者の前記特定の作業者に対する能力比を示す対特定者能力値とし、
特定の作業者が次回のピッキング工程において集品を担当すべき品目数である基準品目数は、次回のピッキング工程で集品が行われる品目数の総数を、「1」に他の作業者毎の前記対特定者能力値の総和「α」を加えた値(1+α)で除することにより算出し、
他の作業者が次回のピッキング工程において集品を担当すべき品目数は、前記基準品目数に、当該他の作業者についての前記対特定能力値を乗ずることにより算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法。
【請求項5】
前記ホストコンピュータと前記端末とは、無線LANによって通信可能に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定方法。
【請求項6】
ホストコンピュータと当該ホストコンピュータに通信可能に接続される複数の端末とにより構成され、物流倉庫内の複数の場所に品目別に保管されている品目を複数の作業者がそれぞれ所定の品目毎に所定の数だけ集品するピッキング工程を含む物流工程において、次回のピッキング工程で各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する、物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定システムであって、
ピッキング工程における各作業者の複数の所定の作業の結果を示すイベント情報が前記端末から前記ホストコンピュータに送信されたときの時刻を前記ホストコンピュータに記憶する時刻記憶手段と、
前記時刻記憶手段で記憶した時刻に基づいて、各作業者が一つの品目に関して行った前記複数の所定の作業に要した時間である品目毎作業時間を、集品を担当した全ての品目毎に算出する品目毎作業時間算出手段と、
前記品目毎作業時間算出手段で算出した各作業者の前記品目毎作業時間、および各作業者が集品を担当した品目数に基づいて、前記品目毎作業時間の平均値である品目単位平均作業時間を作業者毎に算出する平均作業時間算出手段と、
前記平均作業時間算出手段で算出した前記品目単位平均作業時間に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者の総作業時間が等しくなるように、集品を担当すべき品目数を作業者毎に算出する集品品目数算出手段と、
前記集品品目数算出手段で算出した作業者毎の前記品目数に基づいて、次回のピッキング工程において各作業者が集品を担当すべき品目数を決定する集品品目数決定手段と、
を備えることを特徴とする、物流倉庫における作業者毎の集品品目数決定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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