説明

物理量検出システムおよびそれに用いる物理量センサ

【課題】調整モード時のシリアル通信の通信精度を向上することができる物理量検出システムおよびそれに用いる物理量センサを提供することにある。
【解決手段】物理量検出システムは、物理量センサ1及び管理装置2を備える。物理量センサ1は、電源端子10aと、出力端子10bと、管理装置2とのシリアル通信用の通信部14を有する。管理装置2は、電源端子10aを接続する給電端子20aと、出力端子10bを接続する入力端子20bと、センサ1とのシリアル通信用の通信部22と、調整モード時に通信部22及び入力端子20bにクロック信号を出力するクロック信号出力部24を有する。通信部14は、入力端子20bを通じて出力端子10bに入力されるクロック信号に同期して電源端子10bを通じたシリアル信号の送受信を行い、通信部22は、クロック信号出力部24より得たクロック信号に同期して給電端子20aを通じたシリアル信号の送受信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出システムおよびそれに用いる物理量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から物理量検出システムが提案されている。このものは、種々の物理量を検出する物理量センサと、物理量センサを監視・制御する管理装置(監視・制御装置)とを備えている。
【0003】
ここで、上記の物理量センサとしては、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ、荷重センサ、磁気センサなどがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、物理量センサの一例として発熱抵抗式空気流量測定装置が開示されている。特許文献1に示すものは、電源ターミナル(電源端子)、出力ターミナル(出力端子)、およびグランドターミナル(接地端子)の3本のターミナルに加えて、調整端子を備えている。このものでは、調整端子を用いて、出力特性などの種々の調整を行うことができる。そのため、製品毎に出力特性が異なってしまう等のばらつきをなくして安定した性能の製品を供給することができる。
【0005】
しかしながら、調整端子を設けることは、物理量センサの価格の上昇や、大型化の原因になる。また、物理量センサを接続する外部装置においても調整端子を接続するための特別な端子を設ける必要が生じ、これによって、外部装置の構成が複雑化するという問題を引き起こしていた。さらに、物理量センサの輸送中や組み込み中などに調整端子に電流が流れて、予期せずに出力特性が変更されてしまうといった問題が生じることもあった。
【0006】
以上のようなデメリットが存在するために、調整端子を設けることについては、必ずしも顧客の理解が得られるとは限らない。
【0007】
そこで、出力特性等の調整は可能にしつつも、調整端子をなくした物理量センサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2に示すものは、センサ素子における感度調整、オフセット調整、オフセット温度特性調整等の電気トリミングを行うトリミング回路を備えたセンサ回路を有している。このセンサ回路は、一方が接地に使用される2つの電源端子と、1つの出力端子との合計3つの端子のみを有している。このような特許文献2に示すものでは、出力端子をトリミングデータ等の入力端子として使用することができるようになっており、これによって、トリミング用の専用端子を不要としている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に示すものでは、出力端子を通信用の端子として利用するので、外部装置に、物理量センサと一対一対応で通信装置を設ける必要があり、これによって、外部装置の構成を簡素化することが難しいという問題が生じることとなった。
【0010】
このような点に鑑みて、図5に示すような物理量センサ(以下、単に「センサ」と略称する)1が提案されている。
【0011】
センサ1は、図6に示すような物理量検出システムに利用される。図6に示す物理量検出システムは、例えば、電子制御装置(Electronic Control Unit;ECU)による自動車のエンジン運転における電気的な制御に用いられる。この物理量検出システムは、2つのセンサ1と、ECUよりなる管理装置2とで構成されている。このものでは、センサ1がスレーブと、管理装置2がマスタとして使用される。なお、この物理量検出システムでは、2つセンサ1は同一の物理量を検出するものであって、同一の筐体に収納されている。そして、管理装置2は、2つのセンサ1の検出出力を比較して、2つのセンサ1の一方の異常が発生しているか否かを判定し、これによって、信頼性の高い検出結果が得られるようになっている。
【0012】
センサ1は、図5に示すように、端子部(以下、第1の端子部と称する)10と、検出部11と、記憶部12と、出力補正部(出力部)13と、通信部(以下、第1の通信部と称する)14と、判別部15と、制御部(以下、第1の制御部と称する)16と、電源部17とを備えている。また、センサ1は、各部10〜17を構成する電気機器等を収納する筐体(図示せず)を備えている。
【0013】
第1の端子部10は、管理装置2との接続に使用されるものであり、電源端子10aと、出力端子10bと、接地端子10cとを備えている。電源端子10aは、センサ1に電力を供給するための端子であり、出力端子10bはセンサ1の検出出力を管理装置2に出力するための端子であり、接地端子10cは基準電位点を与えるための端子である。このセンサ1では、電源端子10aと出力端子10bの2つの端子が管理装置2に有線接続されるようになっている。また、電源端子10aと接地端子10cとの間には、電源ノイズや輻射ノイズなどの高周波ノイズ対策として、図示しないバイパスコンデンサ(パスコン)が挿入されている。
【0014】
検出部11は、所定の物理量を検出するためのものであり、例えば、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ、荷重センサ、磁気センサなどの検出素子が挙げられる。このような検出部11は、例えば、物理量の検出値に応じた電位を有する信号(検出信号)を検出出力として出力する。
【0015】
記憶部12は、例えば、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリや、EEPROM、ヒューズ、OTPROMその他の電気的に書き込みが可能な記憶媒体)を備えている。この記憶部12には、特性情報が書き込まれる。ここで、特性情報は、検出部11の検出出力の補正、すなわち検出値の補正に使用する補正値である。なお、このような特性情報は、センサ1の規格や、製品ID、クランプ電圧、その他種々のセンサ1に関する情報が採用される。
【0016】
出力補正部13は、検出部11より検出出力を得ると、記憶部12に記憶されている補正値を用いて検出値を補正し、その補正後の検出値に応じた電位を有する信号を補正後の検出出力として出力端子10bに出力する。例えば、出力補正部13は、検出部11の検出出力より得られる検出値に所定の加算値(オフセット値)を加算するオフセット処理と、オフセット処理後の値に所定の乗算値(ゲイン値)を乗算するゲイン処理とを行うことで、検出出力の補正を行う。すなわち、センサ1では、上述のオフセット値とゲイン値が記憶部12の補正値に含まれている。上述したオフセット値は、正または負の値であり、ゲイン値は、0を除く数である。また、出力補正部13は、後述する通常モード時のみ動作する。
【0017】
このような出力補正部13によるオフセット処理やゲイン処理は、例えば、検出部11が出力する検出信号の電位を所望の範囲内の値に設定することを目的として行われる。例えば、センサ1の使用場所や使用状況によっては、検知信号の電位の大きさが、管理装置2で検出可能な大きさより大きく、正しい検出結果が得られなくなってしまうおそれがある。このような場合には、出力補正部13により検出出力を補正して検知信号の大きさを管理装置2で検出可能な範囲内に収まるようにすることで、適切な検出結果を得ることが可能になる。また、部品等の特性にばらつきによって製品毎に検知信号の値の範囲が異なってしまうことを防止でき、いずれの製品においても検知信号の値を所望の範囲内の値とすることが可能となる。
【0018】
第1の通信部14は、記憶部12に記憶させる補正値を管理装置2から受け取るためのものである。この第1の通信部14は、電源端子10aを利用して、管理装置2と有線による通信(シリアル通信)を行う。このような第1の通信部14は、通信処理部14aと、クロック回路14bと、判定回路14cと、スイッチQ10と、抵抗R10とを備えている。判定回路14cは、コンパレータなどを備え、電源端子10aの電位を信号受信用の閾値と比較することで、電源端子10aの電位がハイレベルであるかロウレベルであるかを判定する。例えば、このものでは、信号受信用の閾値を3.5Vに設定してあり、判定回路14cは、電源端子10aの電位が3.5V超過であればハイレベルと判定し、3.5V以下であればロウレベルと判定する。
【0019】
一方、スイッチQ10は、電源端子10aとグラウンド(基準電位点)との間に挿入されている。このようなスイッチQ10としては、MOSFETなどの半導体スイッチング素子や継電器等のオン・オフ制御が可能なスイッチを用いることができる。抵抗R10は、スイッチQ10がオンであるときに電源端子10aの電位を、スイッチQ10がオフであるときよりも低い所定電位に設定するためのものである。
【0020】
通信処理部14aは、シリアル信号の送受信を行うためのものである。通信処理部14aは、判定回路14cの判定結果とクロック回路14bとを利用して、シリアル信号の受信処理を行う。また、通信処理部14aは、スイッチQ10とクロック回路14bとを利用してシリアル信号の送信処理を行う。通信処理部14aは、例えば、論理回路や、マイクロコンピュータ(マイクロコントローラ、略称としてマイコン、広義にはCPUとも称される)などを利用して構成される。このような通信処理部14aと判定回路14cによって、電源端子10aに入力されるシリアル信号を受信する受信部が構成される。また、通信処理部14aとスイッチQ10によって、シリアル信号を電源端子10aに出力する送信部が構成される。
【0021】
また、通信処理部14aは、管理装置2とシリアル通信を行うにあたっては、図7に示すように、クロック回路14bのクロックのタイミングで、シリアル信号1ビットの周期を示す同期ビット(同期信号)SYNCを送信する。
【0022】
第1の制御部16は、センサ1の全体的な制御を行う管理装置である。このような第1の制御部16は、例えば、マイクロコンピュータを備え、メモリに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより種々の機能を実現する。なお、第1の制御部16は、第1の通信部14の通信処理部14aと一体に構成されていてもよい。
【0023】
この第1の制御部16は、通常モードと調整モードとの2種類の動作モードを有している(すなわち、センサ1は通常モードと調整モードのいずれか一方の動作モードで動作する)。
【0024】
ここで、調整モードでは、第1の制御部16は、検出部11および出力補正部13の駆動を停止し、第1の通信部14を駆動する。これによって、検出出力の出力を行わないようにし、また管理装置2とのシリアル通信を可能とする。そして、管理装置2とのシリアル通信によって補正値を取得すると、第1の制御部16は、記憶部12の補正値を管理装置2より取得した補正値に書き換えさせる。書き換えが終了すると、第1の制御部16は、第1の通信部14を制御して、書き換え後の記憶部12の補正値を管理装置2に送信させる。すなわち、調整モードは、検出出力の出力を行わないが、記憶部12の補正値の書き換えは可能とするモードである。
【0025】
一方、通常モードでは、第1の制御部16は、検出部11および出力補正部13を駆動し、第1の通信部14の駆動を停止する。これによって、検出出力(出力補正部13で補正された検出出力)の出力を可能とし、また管理装置2とシリアル通信を行わないようにする。すなわち、通常モードは、検出出力の出力を行うが、記憶部12の補正値の書き換えは禁止するモードである。
【0026】
第1の制御部16が調整モードと通常モードのいずれの動作モードで動作するかは、管理装置2の要求に応じて決定される。
【0027】
判別部15は、管理装置2がいずれの動作モードを要求しているかを判別するためのものであり、その判別結果を第1の制御部16に通知する。よって、第1の制御部16は、判別部15の判別結果に応じた動作モードで各部の制御を実行する。
【0028】
判別部15は、電源端子10aの電位変化に基づいて、管理装置2が要求している動作モードを判別する。例えば、判別部15は、電源端子10aの電位が4.5Vを越えれば、管理装置2が通常モードを要求していると判別し、電源端子10aの電位が4.5V以下であれば、管理装置2が調整モードを要求していると判別する。このような判別部15は、電源端子10aの電位と動作モード判別用の閾値とを比較する比較回路を利用することで得ることができる。
【0029】
電源部17は、電源端子10aより得た電力を元にしてセンサ1の動作電圧を生成するものである。この給電が必要な電気機器には、この電源部17より給電される。このような電源部17には、例えば、電源端子10aと接地端子10cとの間の電位差(電源電圧)に基づいて所定の電圧を生成する三端子レギュレータなどが必要に応じて用いられている。
【0030】
管理装置2は、図6に示すように、センサ1を接続するための端子部(以下、第2の端子部と称する)20と、センサ1用の電源である供給電源部21と、センサ1とシリアル通信するための通信部(以下、第2の通信部と称する)22と、管理装置2の全体的な制御を行う制御部(以下、第2の制御部と称する)23とを備えている。また、管理装置2は、各部20〜23を構成する電気機器等を収納する筐体(図示せず)を備えている。
【0031】
第2の端子部20は、給電端子20aと、入力端子20bとを備えている。給電端子20aは、供給電源部21からセンサ1に給電するための端子であり、入力端子20bは、センサ1より検出出力を得るための端子である。入力端子20bは接続するセンサ1の数に応じた数だけ設けられる(図6に示す例では、センサ1を2つ接続するために2つの入力端子20bが設けられている)。したがって、センサ1は、電源端子10aを給電端子20aに、出力端子10bを入力端子20bに、それぞれ電線(給電線)L1および電線(出力線)L2を用いて接続することによって、管理装置2に接続される。なお、センサ1の接地端子10cは、電線(接地線)L3によって基準電位点(例えば車のボディ)に接続されている。
【0032】
供給電源部21は、出力電圧を変更することができる可変型の電源であり、例えば、自動車に搭載されたバッテリと、バッテリの直流電圧を所定電圧に降圧可能な降圧チョッパ回路とで構成されている。例えば、供給電源部21は、出力電圧として5Vと4Vとを択一的に選択することができるように構成されている。このような供給電源部21は従来周知のものを採用することができるから詳細な説明は省略する。
【0033】
第2の通信部22は、センサ1(センサ1の第1の通信部14)と有線による通信(シリアル通信)を行うためのものである。この第2の通信部22は、給電端子20aを利用してセンサ1とシリアル通信を行うように構成されている。より詳細には、第2の通信部22は、第1の通信部14と同様の構成のものであり、通信処理部22aと、クロック回路22bと、判定回路22cと、スイッチQ20と、抵抗R20とを備えている。判定回路22cは、判定回路14cと同様のものであり、給電端子20aの電位(電源端子10aの電位に等しい)が3.5V超過であればハイレベルと判定し、3.5V以下であればロウレベルと判定する。また、スイッチQ20および抵抗R20も、スイッチQ10および抵抗R10と同様のものである。通信処理部22aは、第1の通信部14からの同期ビットSYNCが得られるまでシリアル信号の送信を行わない。通信処理部22aは、同期ビットSYNCを計測することで、センサ1の通信クロックの情報(位相、周期)を取得する。そして、通信処理部22aは、この通信クロックに基づいて、シリアル信号の送受信のタイミングを設定し、シリアル通信を行う。この他の通信処理部22aの動作は通信処理部14aと同様であるから説明を省略する。
【0034】
第2の制御部23は、図示しない入出力部からの指示に応じて、センサ1に動作モードの切り替えを要求する機能を有している。
【0035】
ここで、上記入出力部は、ユーザが情報を入力するための操作ボタンなどの入力部と、ユーザに情報を提示するための画像表示装置などの出力部とを備えたユーザインタフェースであり、管理装置2と一体に、あるいは別体に設けられる。
【0036】
第2の制御部23は、上記入出力部より動作モードを通常モードに設定する旨の指示を受けた場合には、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定する一方、動作モードを調整モードに設定する旨の指示を受けた場合には、供給電源部21の出力電圧を4Vに設定する。
【0037】
ここで、管理装置2では、供給電源部21と給電端子20aとの間に、抵抗R21およびスイッチQ21よりなる並列回路が挿入されている。第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定する際にはスイッチQ21をオンにし、供給電源部21の出力電圧を4Vに設定する際にはスイッチQ21をオフにする。これによって、調整モード時には、供給電源部21と給電端子20aとの間に抵抗R21が挿入される。この抵抗R21は、スイッチQ10,Q20のオン時に、電源端子10aの電位を、信号受信用の閾値以下に低下させるためのものである。したがって、供給電源部21の電圧が4Vである場合には、供給電源部21の電圧を抵抗R10と抵抗R21とで分圧した電圧、および抵抗R20と抵抗R21とで分圧した電圧が、信号受信用の閾値(例えば3.5V)以下となるように、抵抗R10,20,21の抵抗値が設定されている。
【0038】
さらに、第2の制御部23は、第2の通信部22を制御して、上記入出力部を用いてユーザが入力した補正値をセンサ1に送信する機能を有する。ここで、第2の制御部23は、第2の通信部22に補正値を送信させた後に、所定時間以内に、センサ1からの応答(センサ1における更新後の補正値)が得られれば、補正値の更新が成功したと判断し、その旨を上記入出力部により使用者に通知する。また、第2の制御部23は、上記所定時間以内に、センサ1からの応答(センサ1における更新後の補正値)が得られなかったとき、あるいは、得られたがその補正値がセンサ1に送信した補正値と一致しなかったときに、補正値の更新が失敗したと判断し、その旨を上記入出力部により使用者に通知する。
【0039】
加えて、第2の制御部23は、入力端子20bに入力された検出出力を上記入出力部に出力して、上記入出力部にセンサ1の検出出力を表示させる機能を有する。ただし、この機能による動作(上記入出力部にセンサ1の検出出力を表示させる動作)は、通常モード時のみに行われ、調整モード時には行われない。この他、第2の制御部23は、入力端子20bに入力された検出出力に応じて種々の制御を実行する機能を有する。
【0040】
以下、このセンサ1と管理装置2により構築された物理量検出システムの動作について図7を参照して説明する。なお、図7(a)は、電源端子10aの電位変化(電位の時間変化)を示し、図7(b)は、管理装置2が同期ビットより算出したシリアル信号の検出タイミングを示している。
【0041】
まず、初期状態(図7における時刻T1前)では、センサ1が通常モードであるとする。この初期状態では、管理装置2の第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定する。この場合、センサ1の電源端子10aには、5Vの電位が与えられる。より正確には、電源端子10aからセンサ1の消費電流による抵抗R21の電圧降下を差し引いた電位となる。しかしながら、以下の説明では、簡略化のために消費電流を無視して説明する。
【0042】
そのため、判別部15は、管理装置2が通常モードを要求していると判断する。その結果、第1の制御部16は動作モードを通常モードに設定する。よって、センサ1は、記憶部12に記憶されている補正値で検出部11の検出出力を補正して得られた検出出力(補正後の検出出力)を出力端子10bに出力する。出力端子10bに出力された補正後の検出出力は、入力端子20bに入力され、第2の制御部23によって上記入出力部に送られ、ユーザに提示される。
【0043】
一方、上記入出力部によって調整モードが選択されると、第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を4Vに設定する(時刻T1)。この場合、センサ1の電源端子10aには、4Vの電位が与えられる。そのため、判別部15は、管理装置2が調整モードを要求していると判断する。その結果、第1の制御部16は動作モードを調整モードに設定する。よって、第1の通信部14が駆動されて、管理装置2とのシリアル通信が可能になる。このとき、第1の通信部14は、所定時間の間(時刻t11〜t12)、電源端子10aの電位を3Vに設定することで同期ビットSYNCを送信する。
【0044】
そして、使用者が上記入出力部を用いて補正値の入力を行うと、第2の制御部23は、入力された補正値を第2の通信部22に送信させる。
【0045】
第2の通信部22は、上述したように、スイッチQ20を制御することで、電源端子10aの電位を4Vあるいは3Vに設定し、これによって、シリアル信号の送信を行う。例えば、シリアル信号により送信する補正値データは3バイトのデータであり、そのうちの2バイトが補正値(各々1バイトのオフセット値およびゲイン値)、残りの1バイトがセンサ1の製品IDを示している。第2の通信部22は、シリアル信号を送信するにあたっては、所定時間の間(時刻t13〜t14)、電源端子10aの電位を3Vに設定することでスタートビットSTB1を送信し、その後に補正値データを示すビット列DB1の送信を行う。なお、通信処理部22aは、ビット列DB1の送信後には、ストップビット(図示せず)を送信してセンサ1に送信を終えたことを通知する。
【0046】
第1の制御部16は、第1の通信部14でシリアル信号を受信すると、その補正値データの製品IDが自己のIDと同じかを確認する。IDが同じであれば、第1の制御部16は、記憶部12の補正値を、補正値データが示す補正値(オフセット値およびゲイン値)に書き換えさせる。なお、IDが同じでなければ、補正値データを破棄する。
【0047】
書き換えが終了すると、第1の制御部16は、第1の通信部14を制御して、書き換え後の記憶部12の補正値を示す応答データを管理装置2に送信させる。この応答データは補正値データと同様に3バイトのデータであり、そのうちの2バイトが補正値(各々1バイトのオフセット値およびゲイン値)、残りの1バイトがセンサ1の製品IDである。第1の通信部14は、シリアル信号を送信するにあたっては、所定時間の間(時刻t15〜t16)、電源端子10aの電位を3Vに設定することでスタートビットSTB2を送信し、その後に応答データを示すビット列DB2の送信を行う。なお、通信処理部14aは、ビット列DB2の送信後には、ストップビット(図示せず)を送信して管理装置2に送信を終えたことを通知する。
【0048】
第2の制御部23は、第2の通信部22でシリアル信号を受信すると、その応答データに含まれる補正値および製品IDが、補正値データに含まれる補正値および製品IDに等しいかどうかを確認し、等しければ、補正値の更新が成功したと判断し、等しくなければ、補正値の更新が失敗したと判断する。この判断結果は、上記入出力部によって使用者に通知される。
【0049】
この後に、上記入出力部によって通常モードが選択されると、第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定するとともに、スイッチQ23をオンとする(時刻T2)。この場合、センサ1の電源端子10aには、5Vの電位が与えられ、その結果、センサ1の第1の制御部16の動作モードが通常モードに設定される。
【0050】
以上述べた物理量検出システムによれば、電源端子10aの電位変化に基づいて、管理装置2が要求している動作モードを判別するので、端子部10の端子数を増やすことなく調整モードへの移行が行える。
【0051】
特に、調整モードでは、電源端子10aを管理装置2との通信に使用するから、センサ1への給電線L1を通信線に兼用することができる。そのため、管理装置2には、センサ1と一対一対応で第2の通信部(通信装置)22を設ける必要がなく、一つの第2の通信部22で多数のセンサ1と通信することが可能になる。よって、管理装置2の構成を簡素化することができる。
【特許文献1】特開2002−148077号公報
【特許文献2】特開2006−71336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0052】
上述した物理量検出システムでは、センサ1が管理装置2に同期ビットSYNCを送信し、これによって、シリアル通信の同期を取っている。
【0053】
しかしながら、管理装置2は、同期ビットSYNCの時間を測定して、通信クロックを得ている。そのため、通信クロックの一周期には、測定誤差が含まれる可能性が高い。よって、図7(b)に示すように、センサ1の通信クロックと管理装置2の通信クロックの位相のずれが時間によって変化することになり、安定した通信を行うことが難しい。
【0054】
すなわち、上述の物理量検出システムでは、調整モード時に高精度なシリアル通信を行うことが難しいという問題があった。
【0055】
また、このような同期のずれに起因する通信精度の悪化は、通信時間が長くなったときだけではなく、周囲温度、周囲湿度、電圧変動、外部の電界・磁界などの通常存在する外乱(ノイズ)によっても発生する。そして、同期ビットを利用して同期を取る場合、このような外乱を無くすこと、または外乱を防ぐことは実質的に不可能であった。
【0056】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、調整モード時のシリアル通信の通信精度を向上することができる物理量検出システムおよびそれに用いる物理量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0057】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、物理量センサと、物理量センサを監視・制御する管理装置とを備え、物理量センサは、電源端子、出力端子、および接地端子を有する第1の端子部と、所定の物理量を検出する検出部と、特性情報が書き込まれる書き換え可能な記憶領域を有する記憶部と、検出部の検出出力を出力端子より出力する出力部と、管理装置とシリアル通信する第1の通信部と、電源端子と出力端子の少なくとも一方の電位変化に基づいて管理装置が要求している動作モードを判別する判別部と、判別部の判別結果に応じた動作モードで各部の制御を行う第1の制御部と、電源端子より得た電力を元にして動作電圧を生成する電源部とを有し、動作モードには、記憶部の特性情報を第1の通信部が管理装置より受け取った特性情報に書き換える調整モードと、記憶部の特性情報の書き換えを許可しない通常モードとが含まれ、管理装置は、電源端子を接続する給電端子および出力端子を接続する入力端子を有する第2の端子部と、給電端子より物理量センサに給電する供給電源部と、第1の通信部とシリアル通信する第2の通信部と、物理量センサに動作モードの切り替えを要求する第2の制御部と、物理量センサの動作モードが調整モードであるときに第2の通信部および出力端子にクロック信号を出力するクロック信号出力部とを有し、第1の通信部は、出力端子に入力されるクロック信号に同期して、電源端子に入力されるシリアル信号の受信、および電源端子へのシリアル信号の出力を行い、第2の通信部は、クロック信号出力部より得たクロック信号に同期して、給電端子に入力されるシリアル信号の受信、および給電端子へのシリアル信号の出力を行うことを特徴とする。
【0058】
この発明によれば、管理装置に、調整モード時に第2の通信部および入力端子にクロック信号を出力するクロック信号出力部を設けてあり、第1の通信部は、入力端子を通じて出力端子に入力されるクロック信号に同期して電源端子を通じたシリアル信号の送受信を行い、第2の通信部は、クロック信号出力部より得たクロック信号に同期して給電端子を通じたシリアル信号の送受信を行う。そのため、従来例のように同期ビットを用いるものとは異なり、測定誤差や、種々の外乱の影響を無くすことができ、調整モード時のシリアル通信の通信精度を向上することができる。
【0059】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記特性情報は、上記検出部の検出出力の補正値を含み、上記出力部は、上記検出部の検出出力を上記記憶部に記憶された補正値を用いて補正して上記出力端子より出力することを特徴とする。
【0060】
この発明によれば、所望の出力特性を有する検出出力を得ることができる。
【0061】
請求項3の発明では、請求項1または2記載の物理量検出システムに用いられることを特徴とする。
【0062】
この発明によれば、シリアル通信の通信精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明は、調整モード時のシリアル通信の通信精度を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明の一実施形態の物理量検出システムは、上述した従来例と同様に、例えば、エンジンコントロールユニット(ECU)による自動車のエンジン運転における電気的な制御に用いられる。本実施形態の物理量検出システムも、従来例と同様に、のセンサ1と、ECUよりなる管理装置2とで構成されている。
【0065】
本実施形態における管理装置2は、図1に示すように、第2の端子部20と、供給電源部21と、第2の通信部22と、第2の制御部23と、クロック信号出力部24とを備えている。また、管理装置2は、各部20〜24を構成する電気機器等を収納する筐体(図示せず)を備えている。なお、供給電源部21は、従来例と同様のものであるから説明を省略する。
【0066】
本実施形態における第2の端子部20は、従来例と同様に給電端子20aと、入力端子20bとを有している。また、第2の端子部20は、給電端子20aと入力端子20bに加えて、接地端子20cを有している。この接地端子20cは、基準電位点(例えば車のボディ)に接続されている。
【0067】
本実施形態における第2の制御部23は、従来例と同様に、センサ1に動作モードの切り替えを要求する機能を有している。本実施形態では、第2の制御部23は、上記入出力部より動作モードを通常モードに設定する旨の指示を受けた場合には、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定し、かつその旨(通常モードに設定する旨)を後述する波形発生部24bに通知する。また、第2の制御部23は、動作モードを調整モードに設定する旨の指示を受けた場合には、供給電源部21の出力電圧を4Vに設定し、かつその旨(調整モードに設定する旨)を波形発生部24bに通知する。なお、本実施形態における第2の制御部23のその他の動作については、従来例で述べたとおりであるから説明は省略する。
【0068】
クロック信号出力部24は、クロック回路24aと、前述の波形発生部24bと、一対のスイッチQ21,Q22とを備えている。スイッチQ21は、スイッチQ22とともに直列回路を構成し、当該直列回路は、供給電源部21に並列に接続されている。また、スイッチQ21とスイッチQ22との接続点は、入力端子20bに接続されている。なお、スイッチQ21,Q22は、例えば、MOSFETなどの半導体スイッチング素子や継電器等のオン・オフ制御が可能なスイッチである。
【0069】
波形発生部24bは、第2の制御部23より調整モードに設定する旨の通知を受けたときは(センサ1の動作モードが調整モードであるときは)、入力端子20bにクロック信号(第1のクロック信号)を出力する。このクロック信号は、波形発生部24bが、クロック回路24aを利用して、所定周期でスイッチQ21,Q22のオン・オフを交互に切り替えることで得られる。すなわち、波形発生部24bは、クロック回路24aを利用して一定周期で、スイッチQ21がオン、スイッチQ22がオフである状態(入力端子20bの電位がハイレベルである状態)と、スイッチQ21がオフ、スイッチQ22がオンである状態(入力端子20bの電位がロウレベルである状態)とを切り替えることで、図2(b)に示すようなクロック信号を入力端子20bに出力する。なお、図2(b)に示すものでは、ハイレベルの電位は4Vであり、ロウレベルの電位は0Vである。
【0070】
また、波形発生部24bは、第1のクロック信号と位相が等しいクロック信号(第2のクロック信号)を第2の通信部22の通信処理部22aに出力する。
【0071】
一方、波形発生部24bは、第2の制御部23より通常モードに設定する旨の通知を受けたときは(センサ1の動作モードが通常モードであるときは)、クロック信号の出力を行わない。このとき、両スイッチQ21,Q22はオフに設定され、これによって、センサ1の検出出力が第2の制御部23に入力される。
【0072】
本実施形態における第2の通信部22は、センサ1(センサ1の第1の通信部14)と有線による通信(シリアル通信)を行うためのものである。この第2の通信部22は、通信処理部22aと、判定回路22cと、スイッチQ20と、抵抗R20とを従来例と共通に有しているが、クロック回路22bは有していない。
【0073】
本実施形態における通信処理部22aでは、クロック回路22bの代わりに、クロック信号出力部24より得られる第2のクロック信号を利用する。
【0074】
この点について図2(a),(b)を参照して説明する。図2(a)は、電源端子10a(給電端子20a)の電位を示し、STB1およびDB1は管理装置2が送信するスタートビットおよびビット列であり、STB2およびDB2はセンサ1が送信するスタートビットおよびビット列である。なお、図2(b)は、第1のクロック信号を示しているが、第2のクロック信号は、第1のクロック信号と同位相の信号であるから、図2(b)を第2のクロック信号の説明にも使用する。
【0075】
通信処理部22aは、図2(a),(b)に示すように、シリアル信号を送信する際には、第2のクロック信号の立ち下がり時(ハイレベルからロウレベルに切り替わるとき)t1から、次の立ち下り時t3までの期間を、シリアル信号の1ビットの期間とする。そして、通信処理部22aは、当該期間において第2のクロック信号がハイレベルである期間(立ち上がり時t2から立ち下り時t3までの期間)に、シリアル信号がハイレベルもしくはロウレベルとなるように、スイッチQ20を制御する。また、通信処理部22aは、シリアル信号を受信する際においても、第2のクロック信号の立ち下がり時(ハイレベルからロウレベルに切り替わるとき)t4から、次の立ち下り時t6までの期間を、シリアル信号の1ビットの期間とする。そして、通信処理部22aは、当該期間において第2のクロック信号がハイレベルである期間(立ち上がり時t5から立ち下り時t6までの期間)における判定回路22cの判定結果によって、シリアル信号のビット値を得る。
【0076】
このように第2の通信部22は、クロック信号出力部24より得たクロック信号(第2のクロック信号)に同期して、給電端子20aに入力されるシリアル信号の受信、および給電端子20aへのシリアル信号の出力を行う。なお、判定回路22c、スイッチQ20、および抵抗R20については従来例と同様のものであるから説明は省略する。
【0077】
本実施形態におけるセンサ1は、図1に示すように、第1の端子部10と、検出部11と、記憶部12と、出力補正部13と、第1の通信部14と、判別部15と、第1の制御部16と、電源部17と、クロック信号検出部18とを備えている。また、センサ1は、各部10〜18を構成する電気機器等を収納する筐体(図示せず)を備えている。なお、第1の端子部10、検出部11、記憶部12、出力補正部13、第1の制御部16、および電源部17については上述の従来例と同様のものであるから説明を省略する。
【0078】
このようなセンサ1は、電源端子10aを給電端子20aに、出力端子10bを入力端子20bに、接地端子10cを接地端子20cに、それぞれ給電線L1、出力線L2、接地線L3を用いて接続することによって、管理装置2に接続される。
【0079】
本実施形態における判別部15は、電源端子10aおよび出力端子10bそれぞれの電位変化に基づいて、管理装置2が要求している動作モードを判別する。例えば、判別部15は、電源端子10aの電位が4.5Vを越えているか否かと、出力端子10bに第1のクロック信号が入力されているか否かによって、動作モードの判別を行う。本実施形態の場合、判別部15は、電源端子10aの電位が4.5V以下で、かつ、出力端子10bに第1のクロック信号が入力されていれば、管理装置2が調整モードを要求していると判断する。そして、判別部15は、上記以外の場合は、管理装置2が通常モードを要求していると判断する。本実施形態における判別部15は、判別結果を、第1の制御部16と、クロック検出部18の後述する波形認識部18bに与える。このような判別部15の具体的な回路構成については従来周知の回路を応用して容易に構成することができるから、詳細な説明は省略する。
【0080】
クロック信号検出部18は、判定回路18aと、前述の波形認識部18bとを備えている。判定回路18aは、出力端子10aの電位と所定のクロック判定用の閾値とを比較することで、出力端子10aに入力される第1のクロック信号がハイレベルかロウレベルかを判定する。本実施形態では、クロック判定用の閾値は、例えば3Vに設定されている。波形認識部18bは、判別部15によって調整モードと判別された際に、判定回路18aの判定結果に基づいて、第1のクロック信号と同期した信号を通信処理部14aに出力する。
【0081】
本実施形態における第1の通信部14は、記憶部12に記憶させる補正値を管理装置2から受け取るためのものである。この第1の通信部14は、通信処理部14aと、判定回路14cと、スイッチQ10と、抵抗R10とを従来例と共通に有しているが、クロック回路14bは有していない。
【0082】
本実施形態における通信処理部14aでは、クロック回路14bの代わりに、波形認識部18bが出力する信号、すなわち、クロック信号出力部24より入力端子20b、出力線L2、出力端子10bを通じて得られる第1のクロック信号を利用する。
【0083】
この点について図2(a),(b)を参照して説明する。通信処理部14aは、図2(a),(b)に示すように、シリアル信号を送信する際には、第1のクロック信号の立ち下がり時(ハイレベルからロウレベルに切り替わるとき)t4から、次の立ち下り時t6までの期間を、シリアル信号の1ビットの期間とする。そして、通信処理部14aは、当該期間において第1のクロック信号がハイレベルである期間(立ち上がり時t5から立ち下り時t6までの期間)に、シリアル信号がハイレベルもしくはロウレベルとなるように、スイッチQ10を制御する。また、通信処理部14aは、シリアル信号を受信する際においても、第1のクロック信号の立ち下がり時(ハイレベルからロウレベルに切り替わるとき)t1から、次の立ち下り時t3までの期間を、シリアル信号の1ビットの期間とする。そして、通信処理部14aは、当該期間において第1のクロック信号がハイレベルである期間(立ち上がり時t2から立ち下り時t3までの期間)における判定回路14cの判定結果によって、シリアル信号のビット値を得る。
【0084】
このように第1の通信部14は、クロック信号出力部24より得たクロック信号(第1のクロック信号)に同期して、電源端子10aに入力されるシリアル信号の受信、および電源端子10aへのシリアル信号の出力を行う。なお、判定回路14c、スイッチQ10、および抵抗R10については従来例と同様のものであるから説明は省略する。
【0085】
以下、本実施形態の物理量検出システムの動作について図2(a),(b)を参照して説明する。
【0086】
まず、初期状態(図2における時刻T1前)では、センサ1が通常モードであるとする。この初期状態では、管理装置2の第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定する。また、クロック信号出力部24は、スイッチQ21,Q22を両方ともオフに設定するため、クロック信号(第1のクロック信号および第2のクロック信号)は出力されない。
【0087】
この場合、センサ1の電源端子10aには5Vの電位が与えられ、また、出力端子10bには第1のクロック信号が入力されていない。そのため、判別部15は、管理装置2が通常モードを要求していると判断する。その結果、第1の制御部16は動作モードを通常モードに設定する。よって、センサ1は、記憶部12に記憶されている補正値で検出部11の検出出力を補正して得られた検出出力(補正後の検出出力)を出力端子10bに出力する。出力端子10bに出力された補正後の検出出力は、入力端子20bに入力され、第2の制御部23によって上記入出力部に送られ、ユーザに提示される。
【0088】
一方、上記入出力部によって調整モードが選択されると、第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を4Vに設定し、クロック信号出力部24は、クロック信号の出力を開始する(時刻T1)。
【0089】
この場合、センサ1の電源端子10aには4Vの電位が与えられ、また、出力端子10bには第1のクロック信号が入力される。そのため、判別部15は、管理装置2が調整モードを要求していると判断する。その結果、第1の制御部16は動作モードを調整モードに設定する。よって、第1の通信部14が駆動されて、管理装置2とのシリアル通信が可能になる。
【0090】
そして、使用者が上記入出力部を用いて補正値の入力を行うと、第2の制御部23は、入力された補正値を第2の通信部22に送信させる。
【0091】
第2の通信部22は、上述したように第2のクロック信号に同期してスイッチQ20をオン・オフ制御することで、電源端子10aの電位を4Vあるいは3Vに設定し、これによって、シリアル信号の送信を行う。第2の通信部22は、シリアル信号を送信するにあたっては、所定時間の間、電源端子10aの電位を3Vに設定することでスタートビットSTB1を送信し、その後に従来例と同様の補正値データを示すビット列DB1の送信を行う。第2の通信部22は、ビット列DB1の送信後には、ストップビット(図示せず)を送信してセンサ1に送信を終えたことを通知する。
【0092】
第1の通信部14は、上述したように第1のクロック信号を利用して、シリアル信号の受信を行う。第1の制御部16は、第1の通信部14でシリアル信号を受信すると、その補正値データの製品IDが自己のIDと同じかを確認する。IDが同じであれば、第1の制御部16は、記憶部12の補正値を、補正値データが示す補正値(オフセット値およびゲイン値)に書き換えさせる。なお、IDが同じでなければ、補正値データを破棄する。
【0093】
書き換えが終了すると、第1の制御部16は、第1の通信部14を制御して、従来例と同様の応答データを管理装置2に送信させる。第1の通信部14は、上述したように第1のクロック信号に同期してスイッチQ10をオン・オフ制御することで、電源端子10aの電位を4Vあるいは3Vに設定し、これによって、シリアル信号の送信を行う。また、第1の通信部14は、シリアル信号を送信するにあたっては、所定時間の間、電源端子10aの電位を3Vに設定することでスタートビットSTB2を送信し、その後に応答データDB2の送信を行う。第1の通信部14は、ビット列DB2の送信後には、ストップビット(図示せず)を送信して管理装置2に送信を終えたことを通知する。
【0094】
第2の通信部22は、上述したように第2のクロック信号を利用して、シリアル信号の受信を行う。第2の制御部23は、第2の通信部22でシリアル信号を受信すると、その応答データに含まれる補正値および製品IDが、補正値データに含まれる補正値および製品IDに等しいかどうかを確認し、等しければ、補正値の更新が成功したと判断し、等しくなければ、補正値の更新が失敗したと判断する。この判断結果は、上記入出力部によって使用者に通知される。
【0095】
この後に、上記入出力部によって通常モードが選択されると、第2の制御部23は、供給電源部21の出力電圧を5Vに設定し、クロック信号出力部24は、クロック信号の出力を停止する(時刻T2)。
【0096】
この場合、センサ1の電源端子10aには5Vの電位が与えられ、また、出力端子10bには第1のクロック信号が入力されていない。その結果、第1の制御部16の動作モードは、通常モードに設定される。
【0097】
以上述べたように、本実施形態の物理量検出システムによれば、第1の通信部14は、入力端子20bを通じて出力端子10bに入力されるクロック信号出力部24のクロック信号に同期して電源端子10aを通じたシリアル信号の送受信を行い、第2の通信部22は、クロック信号出力部24より得たクロック信号に同期して給電端子20aを通じたシリアル信号の送受信を行う。そのため、従来例のように同期ビットSYNC(図7参照)を用いるものとは異なり、測定誤差や、種々の外乱の影響を無くすことができ、調整モード時のシリアル通信の通信精度を向上することができる。
【0098】
また、同期ビットSYNCを用いた同期処理を行う必要がなくなるから、このような処理に要していた時間を節約することができる。そのため、シリアル通信の効率を向上することができる(単位時間に送信できるデータ量を増やすことができる)。また、通信対象のセンサ1には管理装置2からクロック信号が送信される。そのため、シリアル信号にIDなどを付加して通信対象のセンサ1を識別する必要がなくなり、ID等のためのビット列が不要になる。よって、シリアル通信の効率を向上することができる。
【0099】
ところで、クロック信号出力部24が出力するクロック信号は、図2(b)に示すように、ハイレベルが4V、ロウレベルが0Vである信号に限定されない。
【0100】
例えば、クロック信号出力部24が出力するクロック信号は、図3(b)に示すように、ハイレベルが0V、ロウレベルが−5Vである信号であってもよいし、図4(b)に示すように、ハイレベルが5V、ロウレベルが−5Vである信号であってもよい。
【0101】
いずれの場合においても、通信処理部14aは、図3,4に示すように、シリアル信号を送信する際には、第1のクロック信号の立ち下がり時t4から、次の立ち下り時t6までの期間を、シリアル信号の1ビットの期間とする。そして、通信処理部14aは、当該期間において第1のクロック信号がハイレベルである期間(立ち上がり時t5から立ち下り時t6までの期間)に、シリアル信号がハイレベルもしくはロウレベルとなるように、スイッチQ10を制御する。また、通信処理部14aは、シリアル信号を受信する際においても、第1のクロック信号の立ち下がり時t1から、次の立ち下り時t3までの期間を、シリアル信号の1ビットの期間とする。そして、通信処理部14aは、当該期間において第1のクロック信号がハイレベルである期間(立ち上がり時t2から立ち下り時t3までの期間)における判定回路14cの判定結果によって、シリアル信号のビット値を得る。このようにして、第1の通信部14は、クロック信号出力部24より得たクロック信号(第1のクロック信号)に同期して、電源端子10aに入力されるシリアル信号の受信、および電源端子10aへのシリアル信号の出力を行う。なお、このような点は、第2の通信部22においても同様である。
【0102】
なお、クロック信号出力部24が出力するクロック信号は、図2〜図4に示すもの以外の信号であってもよく、要は、第1の通信部14と第2の通信部22とが十分に同期を取ることができるような信号であればよい。
【0103】
また、本実施形態の物理量検出システムによれば、下記の効果が得られる。すなわち、本実施形態の物理量検出システムによれば、電源端子10aの電位変化に基づいて、管理装置2が要求している動作モードを判別するので、端子部10の端子数を増やすことなく調整モードへの移行が行える。さらに、調整モードでは、電源端子10aを管理装置2との通信に使用するから、センサ1への給電線L1を通信線に兼用することができる。そのため、管理装置2には、センサ1と一対一対応で第2の通信部(通信装置)22を設ける必要がなく、一つの第2の通信部22で多数のセンサ1と通信することが可能になる。よって、管理装置2の構成を簡素化することができる。その上、電源端子10aは一般的にバイパスコンデンサ(図示せず)により接地されることが多いから、出力端子10bにより通信する場合に比べれば、高周波ノイズの影響を低減することができる。
【0104】
また、判別部15は、電源端子10aの電位が通常時の電位(本実施形態では5V)よりも所定値以上低いか否かによって、管理装置2が要求している動作モードを判別する。そのため、調整モード時に電源端子10aの電位を上昇させる(例えば5Vから12Vに上昇させる)場合とは異なり、通常時の電位(5V)よりも高い電位(12V)に耐え得る電気部品、すなわち高耐圧性を有する電気部品等を使用する必要がないから、小型化および低コスト化を図ることができる。この場合、電源がオンになって、電源端子10aの電位が0Vから5Vまで上昇する際に、判別部15によって調整モードと判断されるおそれがあるが、管理装置2から出力端子10bにクロック信号が送信されないので、意図せずに通信が行われてしまうおそれがない。
【0105】
ところで、本実施形態において、判別部15は、電源端子10aおよび出力端子10bそれぞれの電位変化が所定の条件を満たしているか否かによって、管理装置2が要求している動作モードを判別している。この点に関して、判別部15は、電源端子10aと出力端子10bの一方の電位変化が所定の条件を満たしているか否かによって、管理装置2が要求している動作モードを判別してもよい。ただし、電源端子10aおよび出力端子10bそれぞれの電位変化が所定の条件を満たしているか否かによって、管理装置2が要求している動作モードを判別するほうが、いずれか一方のみで動作モードの判別を行う場合に比べて、動作モードの判別誤りが発生する確率を低減できて、予期せずに動作モードが変更されてしまうことを抑制することができる。
【0106】
また、判別部15は、電源端子10aの電位変化が所定の条件を満たした際に、動作モードの判別を確定するのではなく、電源端子10aの電位変化が所定の条件を満たしている期間が所定時間継続された際に、動作モードの判別を確定するようにしてもよい。このようにすればノイズなどの影響によって予期せずに動作モードが変更されてしまうことを抑制することができ、より正確な動作モードの判別が可能になる。この他、判別部15は、電源端子10aの電位が所定のパターンで変化したか否か(例えば、電位が所定周波数で所定回数変化したか等)によって動作モードの判別を行ってもよい。
【0107】
また、第1の端子部10、検出部11、記憶部12、出力補正部13、第1の通信部14、判別部15、第1の制御部16、電源部17、およびクロック信号検出部18などの各部に使用される電気部品のうちの少なくとも2つはモノリシックICとして一体化されていてもよく、このようにすれば、センサ1の小型化を図ることができる。
【0108】
また、本実施形態における供給電源部21は、出力電圧を変えるための降圧チョッパ回路を備えているが、出力電圧が異なる2つの電源を有するものであってもよい。いずれの場合においても、出力電圧の切り替え時に、センサ1への給電が停止されることがないようにすることが好ましい。
【0109】
また、本実施形態では、製品IDを利用して通信先のセンサ1を特定している。ここで、管理装置2と通信するセンサ1を選択する方法としては、センサ1の出力端子10bを利用することが考えられる。すなわち、センサ1に出力端子10bの電位を検出する手段を設け、管理装置2が出力端子10bの電位を所定の閾値に設定する(例えば、出力端子10bを短絡させる)ことで、センサ1に通信相手として選択されていることを通知することができる。
【0110】
以上、本発明の物理量検出システムの実施形態について述べたが、上述のものは、あくまでも一実施形態に過ぎない。よって、本発明の技術的範囲は上記の例に限定されず、上述の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の一実施形態の物理量検出システムのブロック図である。
【図2】同上におけるシリアル通信の説明図である。
【図3】同上におけるシリアル通信の他例の説明図である。
【図4】同上におけるシリアル通信の他例の説明図である。
【図5】従来例の物理量センサのブロック図である。
【図6】同上の物理量センサを適用した物理量検出システムのブロック図である。
【図7】同上におけるシリアル通信の説明図である。
【符号の説明】
【0112】
1 物理量センサ
2 管理装置
10 端子部(第1の端子部)
10a 電源端子
10b 出力端子
10c 接地端子
11 検出部
12 記憶部
13 出力補正部
14 通信部(第1の通信部)
15 判別部
16 制御部(第1の制御部)
17 電源部
18 クロック信号検出部
20 端子部(第2の端子部)
20a 給電端子
20b 入力端子
21 供給電源部
22 通信部(第2の通信部)
23 制御部(第2の制御部)
24 クロック信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量センサと、物理量センサを監視・制御する管理装置とを備え、
物理量センサは、電源端子、出力端子、および接地端子を有する第1の端子部と、所定の物理量を検出する検出部と、特性情報が書き込まれる書き換え可能な記憶領域を有する記憶部と、検出部の検出出力を出力端子より出力する出力部と、管理装置とシリアル通信する第1の通信部と、電源端子と出力端子の少なくとも一方の電位変化に基づいて管理装置が要求している動作モードを判別する判別部と、判別部の判別結果に応じた動作モードで各部の制御を行う第1の制御部と、電源端子より得た電力を元にして動作電圧を生成する電源部とを有し、動作モードには、記憶部の特性情報を第1の通信部が管理装置より受け取った特性情報に書き換える調整モードと、記憶部の特性情報の書き換えを許可しない通常モードとが含まれ、
管理装置は、電源端子を接続する給電端子および出力端子を接続する入力端子を有する第2の端子部と、給電端子より物理量センサに給電する供給電源部と、第1の通信部とシリアル通信する第2の通信部と、物理量センサに動作モードの切り替えを要求する第2の制御部と、物理量センサの動作モードが調整モードであるときに第2の通信部および出力端子にクロック信号を出力するクロック信号出力部とを有し、
第1の通信部は、出力端子に入力されるクロック信号に同期して、電源端子に入力されるシリアル信号の受信、および電源端子へのシリアル信号の出力を行い、
第2の通信部は、クロック信号出力部より得たクロック信号に同期して、給電端子に入力されるシリアル信号の受信、および給電端子へのシリアル信号の出力を行うことを特徴とする物理量検出システム。
【請求項2】
上記特性情報は、上記検出部の検出出力の補正値であり、
上記出力部は、上記検出部の検出出力を上記記憶部に記憶された補正値を用いて補正して上記出力端子より出力することを特徴とする請求項1記載の物理量検出システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の物理量検出システムに用いられることを特徴とする物理量センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−123076(P2010−123076A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298581(P2008−298581)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】