説明

物理量検出モジュール

【課題】短絡、および断線を防止して生産の歩留を高め、かつ低背化を実現した物理量検出モジュールを提供する。
【解決手段】物理量を検出する感圧部34A、34Bと、前記感圧部を支持する枠部28と、を有する圧電振動基板26と、力を前記感圧部に伝達するダイアフラム56と、前記圧電振動基板を覆う基板48、14とを備え、前記圧電振動基板には、スリット30により一対の接続部32A、32Bが分離して配置され、一部が前記何れかの基板よりも外側へ露出しており、前記圧電振動基板は、前記一対の接続部の一方の主面側にそれぞれ設けられた互いに信号の異なるパッド電極42A、42Bと、何れか一方の接続部の前記スリット30側の側面に配置され、他方の主面に設けられた引出電極44Bと信号が同じ前記パッド電極42Bとを電気的に接続する導電膜44Baとを有し、前記パッド電極を前記実装基板に配置された接続電極94に電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出モジュールに関し、互いに異なる面に配置された配線間の短絡を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイアフラムに圧電振動片を接続し、圧電振動片がダイアフラムの撓み変形による応力を検知するタイプの圧力検出素子等の物理量検出素子が知られている。
図21に、特許文献1に記載の圧力検出素子の模式図を示し、図21(a)は分解斜視図、図21(b)は断面図を示す。特許文献1には、第1基板302と、圧電振動片310(振動部314、基部312)を有する圧電振動基板308と、ダイアフラム324及びダイアフラム324に接続された一対の力伝達部326を有する第2基板318と、の3層構造からなる圧力検出素子300が開示されている。ここで、圧電振動片310は振動部314と、振動部314の両端に配置された一対の基部312と、から構成される。そして、力伝達部326は、基部312にそれぞれ接続される。また圧電振動片310を構成する振動部314は所定の共振周波数で振動可能なものである。
【0003】
上記構成において、ダイアフラム324が外部から圧力を受けることにより、ダイアフラム324が圧力検出素子300の内側に撓み変形する。そして、この撓み変形により力伝達部326同士の間隔が広がるため、基部312同士の間隔も広がることになる。よって、振動部314に対して引張応力が印加され、これにより振動部314の共振周波数が変化する。したがって、この共振周波数の変化をモニターすることにより圧力を検知することができる。
【0004】
図22に、特許文献2に記載の圧力検出素子の模式図を示し、図22(a)は分解斜視図、図22(b)は上面図を示す。特許文献2の圧力検出素子400は、特許文献1の圧力検出素子300と同様に第1基板401、圧電振動基板402、第2基板412の3層構造を有し、全体的に平面矩形状に形成されている。圧電振動基板402の枠部404の一方の短辺には、その両端部に振動部408に電気的に接続する一対のパッド電極410が配置されている。また、第2基板412のパッド電極410に対向する部分にはパッド電極410を露出させる切欠き部414が形成されている。これにより、第1基板401、圧電振動基板402、第2基板412を積層することにより、切欠き部414に挟まれた領域に凸部416が露出されたパッド電極410を互いに隔離させた構造となる。
【0005】
ところで、このような3層構造の圧力検出素子(物理量検出素子)を製造する場合、各層を低融点ガラス(特許文献3参照)や共晶合金等(特許文献4参照)の接着剤を用いて基板同士を接合する場合がある。
【0006】
一方、圧電振動片(振動部)には一対の励振電極が配置され、圧電振動基板には励振電極から引き出された一対の引出電極が配置されている。しかし、引出電極を同一面に配置すると上述の接着剤は抵抗率が低く導電性を有するので引出電極同士が短絡する問題がある。この問題を解決するため、特許文献5、6では、一方の引出電極を圧電振動基板の一方の面に配置し、他方の引出電極を圧電振動基板の他方の面に配置し、引出電極同士の短絡を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−230401号公報
【特許文献2】特開2010−243207号公報
【特許文献3】特開2004−215039号公報
【特許文献4】特開2010−246001号公報
【特許文献5】特開2001−119264号公報
【特許文献6】特開2010−124448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、物理量検出素子を実装基板上に容易に接続するためには圧電振動基板のいずれか一方の面において、実装基板上のパッド電極と接続する2つのパッド電極を配置する必要がある。よって、圧電振動基板のパッド電極が配置された面の反対側に配置された引出電極は、裏面に引き回す必要がある。この場合、引出電極は圧電振動基板の側面を経由して裏面に引き回すことが考えられる。しかし、引出電極の側面に配置された部分は、物理量検出素子の製造工程等においてその部分を包含する圧電振動基板の縁辺が他の部材等に当接した場合には剥離して引出電極が断線する虞があるという問題があった。
【0009】
また、物理量検出素子を実装基板に実装して物理量検出モジュールを形成する場合は、実装基板の接続電極とパッド電極とが同一方向を向くように配置され、物理量検出素子は固定部材により実装基板に支持され、パッド電極と接続電極とがワイヤーにより接続される。このようにワイヤーにより電気的接続を行なう場合は、ワイヤーが実装基板から大きく離れるように湾曲してパッド電極に接続するためモジュール全体の低背化が困難であるという問題があった。
そこで本発明は、上記問題点に着目し、低背化を実現し、かつ側面に露出した配線の断線を防止する物理量検出モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]物理量を検出する感圧部と、前記感圧部の周囲を囲み、前記感圧部を梁を介して支持する枠部と、を有する圧電振動基板と、前記感圧部が接続され、外部からの力を受けて変位し、前記力を前記感圧部に伝達する変位部を有し、前記圧電振動基板の一方の主面を覆うダイアフラム基板と、前記圧電振動基板の他方の主面を覆うベース基板と、を有する物理量検出素子と、前記物理量検出素子を実装するための実装基板と、を備え、前記圧電振動基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられ、前記スリットにより一対の接続部が分離して配置され、前記一対の接続部は、少なくとも一部が前記ベース基板と前記ダイアフラム基板の少なくとも何れかの基板よりも外側へ露出しており、前記圧電振動基板は、前記一対の接続部の一方の主面側にそれぞれ設けられた互いに信号の異なるパッド電極と、前記一対の接続部のうちの何れか一方の接続部の前記スリット側の側面に配置され、他方の主面に設けられた引出電極と信号が同じ前記パッド電極とを電気的に接続する導電膜と、を有し、前記パッド電極を前記実装基板に配置された接続電極に導電性を有する固定部材を介して電気的に接続したことを特徴とする物理量検出モジュール。
【0011】
上記構成により、圧電振動基板の引出電極に接続する導電膜は、接続部のスリットにより形成された側面に配置されるので、導電膜はスリットにより保護されることになる。よって導電膜が他の部材に当接することを回避して導電膜の断線を防止することができる。さらに、導電膜の導通先にはパッド電極が配置されているが、このパッド電極は、ダイアフラムが互いに反対方向を向いて配置することができる。よって、パッド電極を実装基板に対向させて、ワイヤーを用いずにパッド電極と実装基板上の接続電極とを機械的・電気的に接続することができる。したがって、低背化が可能な物理量検出モジュールとなる。さらに、引出電極からパッド電極に至る経路は導電膜により裏面に引き回されているため、枠部の引出電極が配置された面の反対面に配置された引出電極との短絡を防止することができる。
【0012】
[適用例2]前記ダイアフラム基板、又は前記ベース基板の何れかの基板に前記接続部に係合する張出部が設けられたことを特徴とする適用例1に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、接続部が張出部により厚み方向に補強されることになる。したがって、接続部の実装基板側との接続を安定的に行うことができる。
【0013】
[適用例3]前記実装基板は、凸部を有し、前記接続部は、前記凸部の上面に支持されていることを特徴とする適用例1または2に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、固定部材の高さを小さくすることができるので物理量検出素子の実装基板への接合の安定性を高めることができるとともに、固定部材の使用量も少なくすることができるので、コストを抑制することができる。
【0014】
[適用例4]前記実装基板の前記物理量検出素子の前記接続部とは反対側の周縁と対向する位置には、枕部が配置されていることを特徴とする適用例1乃至3のうちのいずれか1例に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、物理量検出モジュールの耐衝撃性を高めることができる。
【0015】
[適用例5]前記物理量検出素子と前記実装基板との間に充填材が配置されたことを特徴とする適用例1乃至4のうちのいずれか1例に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、物理量検出モジュールの耐衝撃性を高めることができる。
【0016】
[適用例6]前記実装基板上には、前記物理量検出素子を覆うように蓋体が配置され、前記蓋体には圧力導入口が配置されたことを特徴とする適用例1乃至5のうちのいずれか1例に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、圧力導入口を被測定環境に開放することにより、被測定環境の圧力を安定的に測定することができる。
【0017】
[適用例7]前記感圧部を駆動する回路を搭載したことを特徴とする適用例1乃至6のうちのいずれか1例に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、自ら発振する発振器としての機能、または自ら圧力等の物理量を測定する機能を有する物理量検出素子を備えた物理量検出モジュールを構築することができる。
【0018】
[適用例8]前記感圧部は、少なくとも一以上の柱状ビームからなる振動素子、又は、ATカット水晶振動子であることを特徴とする適用例1乃至7のうちのいずれか1例に記載の物理量検出モジュール。
上記構成により、振動素子またはATカット水晶振動子の共振周波数の変化から感圧部が受けた力を検出することができるので物理量を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の物理量検出モジュールの模式図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は断面図(充填材あり)、図1(c)は平面図である。
【図2】第1実施形態の物理量検出素子の分解斜視図である。
【図3】第1実施形態の物理量検出素子の圧電振動基板の下面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】物理量検出素子を構成する励振電極の詳細図であり、図5(a)は上面図(図2の部分拡大図)、図5(b)は下面図(図3の部分拡大図)である。
【図6】第1実施形態のウェーハの積層構造の分解斜視図と、これを積層したのちに個片化して得られる第1実施形態の物理量検出素子(図中右下)、および圧電振動基板(裏面図、図中左上)の斜視図である。
【図7】本実施形態のウェーハの積層構造においてダイシングを行なう場合の断面図(図2のA−A線断面図に倣った図)であり、図7(a)はダイシング前、図7(b)はダイシング後である。
【図8】第2実施形態の物理量検出モジュールの模式図であり、図8(a)は断面図、図8(b)は平面図である。
【図9】第2実施形態の物理量検出素子の分解斜視図である。
【図10】第3実施形態の物理量検出モジュールの模式図であり、図10(a)は断面図、図10(b)は図10(a)に示された物理量検出モジュールの変形例である。
【図11】第3実施形態の物理量検出素子の分解斜視図である。
【図12】第3実施形態の物理量検出素子の圧電振動基板の下面図である。
【図13】第4実施形態の物理量検出素子の分解斜視図である。
【図14】本実施形態のウェーハの積層構造において、折り取り部を形成した場合の模式図であり、図14(a)は、第1ウェーハ、圧電振動ウェーハ、第2ウェーハのそれぞれの折り取り部の平面図、14(b)は14(a)に示す第1ウェーハ、圧電振動ウェーハ、第2ウェーハを積層した場合のA−A線断面図(折り取り前)、図14(c)は図14(b)の折り取り後の断面図、図14(d)は第4実施形態の物理量検出素子を折り取って個片化する場合の断面図である。
【図15】本実施形態の物理量検出素子において、振動部として音叉型振動片(その1)を用いた場合の分解斜視図と、圧電振動基板の下面の模式図である。
【図16】本実施形態の物理量検出素子において、振動部として音叉型振動片(その2)を用いた場合の分解斜視図と、圧電振動基板の下面の模式図である。
【図17】本実施形態の物理量検出素子において、振動部としてATカット振動片を用いた場合の分解斜視図である。
【図18】本実施形態の物理量検出素子を燃料電池システムに搭載した場合の系統図である。
【図19】本実施形態の物理量検出素子を車両用情報記録装置に搭載した場合のブロック図である。
【図20】本実施形態の物理量検出素子を側面衝突検出装置に搭載した場合の模式図である。
【図21】特許文献1に記載の圧力検出素子の模式図であり、図21(a)は分解斜視図、図21(b)は断面図である。
【図22】特許文献2に記載の圧力検出素子の模式図であり、図22(a)は分解斜視図、図22(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1に、第1実施形態の物理量検出モジュールの模式図を示し、図1(a)は断面図、図1(b)は断面図(充填材あり)、図1(c)は平面図(蓋体不図示)である。図1に示すように、第1実施形態の物理量検出モジュール90は、実装基板92と、圧力導入口93aを有する蓋体93と、により形成された容器内に物理量検出素子10が収容された構成を有している。本実施形態では、この物理量検出モジュール90を構成する物理量検出素子10について説明したのちに、物理量検出モジュール90について説明する。図2に、第1実施形態の物理量検出素子の分解斜視図を示し、図3に、第1実施形態の物理量検出素子の圧電振動基板の下面図を示す。また図4に図2のA−A線断面図を示す。
【0022】
第1実施形態の物理量検出素子10は、ベース基板14と、感圧部(振動部34A、振動部34B、第1基部36、第2基部38)を有する圧電振動基板26と、ダイアフラム56(変位部)を有しダイアフラム56に印加された圧力に伴う力を振動部34A、振動部34Bに伝達するダイアフラム基板48と、の順に積層された構造を有している。そして、積層された後に壁面の一部がダイアフラム56となり内部空間13(図4)を有するパッケージ12(図4)が形成されたものである。また、内部空間13(図4)には、上述の感圧部がダイアフラム56に接続した状態で配置されている。
【0023】
上記構成において、ダイアフラム56が外部の圧力により撓み変形し、この撓み変形に伴う力を振動部34A、振動部34Bが受けることにより、振動部34A、振動部34Bの共振周波数が変化する。よって、振動部34A、振動部34Bの共振周波数の変化をモニターすることにより外部の圧力を測定可能なものとなっている。またベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48は、それぞれ短辺と長辺を有する矩形の水晶基板により形成されている。
【0024】
ベース基板14は、水晶等で形成され、圧電振動基板26を構成する感圧部を封止するパッケージ12(図4)の一部となるものである。ベース基板14の圧電振動基板26に対向する面には第1の凹部16が配置されている。第1の凹部16は圧電振動基板26を構成する後述の振動部34A、振動部34B、第1基部36、第2基部38、梁40A、40Bに対向する位置に配置され、これらの構成要素とベース基板14との干渉を防止している。またベース基板14において、この第1の凹部16の周囲を囲むように第1の周縁部18が配置される。この第1の周縁部18には圧電振動基板26を構成する後述の枠部28が接合される。
【0025】
またベース基板14の側面には第1の凸部24が複数配置されている。第1の凸部24は、ベース基板14の2つの長辺にそれぞれ配置されている。またベース基板14の後述の接続部に対向する短辺には剥離痕25が2つ形成されており、前記短辺に対向する短辺には第1の凸部24が2つ配置されている。そして、長辺に配置された第1の凸部24は、後述の第1の梁68A(図6参照)をダイシングで切断することにより形成され、短辺に配置された第1の凸部24は、後述の第1の梁68B(図6参照)をダイシングで切断することにより形成される。さらに剥離痕25は、後述の第1の梁68Bをダイシングで切断する際に第1の梁68Bとベース基板14との接続位置で剥離させる(図7参照)ことにより形成される。
【0026】
圧電振動基板26は、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系のX軸を回転軸として、Z軸を+Y軸の方向へ約2度回転させた軸をZ′軸とし、このZ′軸を法線とした主面を有する水晶基板を用いている。そして圧電振動基板26には、矩形の枠形状を有する枠部28が配置される。図2、図3に示すように、枠部28は、圧電振動基板26の一方の短辺側に偏って配置され、前述の第1の周縁部18及び後述の第2の周縁部52と接合する。一方、圧電振動基板26の他方の短辺には接続部(接続部32A、接続部32B)が配置される。枠部28と接続部は圧電振動基板26の長辺方向に横並びに配置される。接続部は、後述のパッド電極42A、42B、引出電極44A、44Bが配置されるものである。そして、接続部には、接続部の一辺(圧電振動基板26の短辺)を切り欠くスリット30が配置されている。このスリット30により、接続部は接続部32A、接続部32Bに分割される。
【0027】
図2、図3に示すように、圧電振動基板26の側面には第2の凸部46が複数形成されている。第2の凸部46は、圧電振動基板26の長辺(枠部28の長辺)を形成する2つの側面に1つずつ、短辺を形成する2つの側面に2つずつ配置されている。圧電振動基板26の短辺のうち、接続部が配置された短辺においては、接続部32A、接続部32Bにそれぞれ第2の凸部46が配置されている。なお、長辺に配置された第2の凸部46は、後述の第2の梁72A(図6参照)をダイシングで切断することにより形成され、短辺に配置された第2の凸部46は後述の第2の梁72B(図6参照)をダイシングで切断することにより形成される。そして第2の凸部46は第1の凸部24と接合する。
【0028】
一方、枠部28内には、感圧部(振動部34A、振動部34B、第1基部36、第2基部38)、梁40A、40Bが配置される。よって、枠部28は、感圧部の外周を囲むように配置される。振動部34A、振動部34Bは、圧電振動基板26の長辺方向に長手方向を有する2本の平行した柱状ビームにより形成され、振動部34A、振動部34Bにより双音叉型の振動片を構成している。そして振動部34A、振動部34Bの長手方向の両端のうちの一方には第1基部36が接続され、他方には第2基部38が接続される。また枠部28の長辺方向の内側側面の第1基部36に対向する位置からは、梁40Aが第1基部36を圧電振動基板26の短辺方向から挟むように延出し、第1基部36に接続される。
【0029】
同様に枠部28の長辺方向の内側側面の第2基部38に対向する位置からは、梁40Bが第2基部38を圧電振動基板26の短辺方向から挟むように延出し、第2基部38に接続される。よって振動部34A、振動部34Bは、第1基部36、第2基部38、梁40A、梁40Bを介して枠部28に支持される。
【0030】
第1基部36及び第2基部38は、振動部34A、振動部34Bを支持するものであるが、後述の力伝達部54A、54Bからの力を受けて、圧電振動基板26の長辺方向に相対位置が互いに変化するものである。よってこの相対位置の変化により振動部34A、振動部34Bに応力を印加することができる。梁40A、梁40Bは、それぞれ圧電振動基板26の短辺方向に長手方向を有する部材である。そして、梁40A、40Bはそれぞれ枠部28との接続位置を固定端とし、梁40Aは第1基部36との接続位置を自由端とし、梁40Bは第2基部38との接続位置を自由端として圧電振動基板26の長辺方向に屈曲することができる。よって、梁40A、40Bは、それぞれ第1基部36、第2基部38を支持するものの、第1基部36、第2基部38の変位に干渉しないようになっている。
【0031】
一方、振動部34A、振動部34Bには互いに絶縁した励振電極45(図5)、励振電極47(図5)が配置される。そして接続部32Aにはパッド電極42Aが配置され、接続部32Bにはパッド電極42Bが配置される。そしてパッド電極42Aには、励振電極45(図5)から引き出された引き出し線となる引出電極44Aが接続され、パッド電極42Bには、励振電極47(図5)から引き出された引き出し線となる引出電極44Bが接続される。よってパッド電極42A(引出電極44A)と、パッド電極42B(引出電極44B)と、は互いに異なった信号が流れることになる。
【0032】
引出電極44Aは、圧電振動基板26のベース基板14に対向する面において、第1基部36、梁40A、枠部28、接続部32Aを経由してパッド電極42Aに接続される。引出電極44Bは、圧電振動基板26のダイアフラム基板48に対向する面において、第1基部36、梁40A、枠部28、接続部32Bを経由し、接続部32Bのスリット30側の側面33を経由(導電膜44Baとして配置される)して接続部32Bのベース基板14に対向する面に引き出されパッド電極42Bに接続される。そして、圧電振動基板26を構成する接続部32A(パッド電極42A)、接続部32B(パッド電極42B)は、ベース基板14との接合後も外部に露出することになる。
【0033】
図5に、物理量検出素子を構成する励振電極の詳細図を示し、図5(a)は上面図(図2の部分拡大図)、図5(b)は下面図(図3の部分拡大図)を示す。なお説明のため、図5(a)からみて表面となる方を上面と称し、図5(b)からみて表面となる方を下面と称することにする。励振電極45は、電極45a〜電極45pにより構成され、励振電極47は、電極47a〜電極47pにより構成されている。
【0034】
図5(a)に示すように、電極45aは、振動部34Aの第1基部36側の上面に配置されるとともに、引出電極44Aに接続されている。また、電極45aは、振動部34Aの中央部の外側の側面に配置された電極45b、及び振動部34Aの中央部の内側の側面に配置された電極45cに接続されている。
【0035】
図5(b)に示すように、電極45b、電極45cは、振動部34Aの第2基部38側の下面に配置された電極45dに接続され、電極45dは、第2基部38の下面であって後述の第2の接合領域63Bと重ならない位置に配置された電極45eに接続されている。第1基部36の下面に配置されるとともに引出電極44Aに接続されている。そして電極45eは、振動部34Bの第2基部38側の外側の側面に配置された電極45fに接続されている。
【0036】
図5(a)に示すように、電極45fは、振動部34Bの中央部の上面に配置された電極45g、及び振動部34Bの第2基部38側の内側の側面に配置された電極45hに接続されている。電極45hは、第2基部38の上面に配置された電極45iに接続され、電極45iは、振動部34Aの第2基部38側の上面に配置された電極45jに接続されている。
【0037】
図5(a)に示すように、電極45kは、第1基部36の上面に配置されるとともに引出電極44Aに接続されている。そして電極45kは、振動部34Bの第1基部36側の外側の側面に配置された電極45lに接続されている。
【0038】
図5(b)に示すように、電極45lは、振動部34Bの中央部の下面に配置された電極45m、及び振動部34Bの第1基部36側の内側の側面に配置された電極45nに接続されている。そして、電極45nは、第1基部36の下面に配置された電極45oに接続されている。電極45oは、振動部34Aの第1基部36側の下面に配置された電極45pに接続されている。したがって、電極45aから電極45pに至るまで電気的に接続され、励振電極45が形成される。
【0039】
図5(b)に示すように、電極47aは、振動部34Bの第1基部36側の下面に配置されるとともに引出電極44Bに接続されている。また電極47bは、第1基部36の下面に配置されるとともに引出電極44Bに接続されている。そして電極47bは、振動部34Aの第1基部36側の外側の側面に配置された電極47cに接続されている。また電極47cは、振動部34Aの中央部の下面に配置された電極47d、及び振動部34Aの第1基部36側の内側の側面に配置された電極47eに接続されている。
【0040】
図5(a)に示すように、電極47eは、第1基部36の上面に配置された電極47fに接続され、電極47fは、振動部34Bの第1基部側の上面に配置された電極47gに接続されている。また電極47gは、振動部34Bの中央部の外側の側面に配置された電極47h、及び振動部34Bの中央部の内側の側面に配置された電極47jに接続されている。
【0041】
図5(b)に示すように、電極47h及び電極47iは、振動部34Bの第2基部38側の下面に配置された電極47jに接続され、電極47jは、第2基部38の下面に配置された電極47kに接続されている。また電極47kは、振動部34Aの第2基部38側の内側の側面に配置された電極47lに接続されている。
【0042】
図5(a)に示すように、電極47lは、振動部34Aの中央部の上面に配置された電極47m、及び振動部34Aの第2基部38側の外側の側面に配置された電極47nに接続されている。また電極47nは、第2基部38の上面に配置された電極47oに接続され、電極47oは、振動部34Bの第2基部38側の上面に配置された電極47pに接続されている。したがって、電極47aから電極47pに至るまで電気的に接続され、励振電極47が形成される。
【0043】
よって振動部34Aの第1基部36側では、側面方向では電極47cと電極47eとが対向し、上面・下面方向では電極45aと電極45pとが対向する。振動部34Aの中央部では、側面方向では電極45bと電極45cとが対向し、上面・下面方向では電極47mと電極47dとが対向する。振動部34Aの第2基部38側では、側面方向では電極47lと電極47nとが対向し、上面・下面方向では電極45jと電極45dとが対向する。
【0044】
また振動部34Bの第1基部36側では、側面方向では電極45lと電極45nとが対向し、上面・下面方向では電極47gと電極47aとが対向する。振動部34Bの中央部では、側面方向では電極47hと電極47iとが対向し、上面・下面方向では電極45gと電極45mとが対向する。振動部34Bの第2基部38側では、側面方向では電極45fと電極45hとが対向し、上面・下面方向では電極47pと電極47jとが対向する。
【0045】
よって、励振電極45は、振動部34Aの第1基部36側及び第2基部38側では上面・下面方向に対向し、振動部34Aの中央部では側面方向に対向する。また励振電極45は、振動部34Bの第1基部36側及び第2基部38側では側面方向に対向し、振動部34Bの中央部では上面・下面方向に対向する。
【0046】
一方、励振電極47は、振動部34Aの第1基部36側及び第2基部38側では側面方向に対向し、振動部34Aの中央部では上面・下面方向に対向する。また励振電極47は、振動部34Bの第1基部36側及び第2基部38側では上面・下面方向に対向し、振動部34Bの中央部では側面方向に対向する。
【0047】
上述のように、励振電極45は、パッド電極42Aに引出電極44Aを介して電気的に接続され、励振電極47は、パッド電極42Bに引出電極44Bを介して電気的に接続される。したがって、励振電極45、励振電極47を上述のように振動部34A、振動部34Bに配置した状態で、パッド電極42A、42Bに交流電圧を印加することにより振動部34A、振動部34Bは、所定の共振周波数で振動する。なお、励振電極45、励振電極47の振動部34A、振動部34Bへの配置パターンは上述の方法に限らず様々なパターンを用いることができる。
【0048】
ここで、第1基部36、第2基部38が圧電振動基板26の長辺方向に互いに離れる方向に変位する力を受けた場合は、振動部34A、振動部34Bは引張応力を受けるので共振周波数は高くなり、逆に互いに近づく方向に変位する力を受けた場合は、振動部34A、振動部34Bは圧縮応力を受けるので共振周波数は低くなる。
【0049】
図2、図4に示すように、ダイアフラム基板48は、振動部34A、振動部34Bに力を伝達するダイアフラム56を有する基板である。ダイアフラム基板48は、圧電振動基板26に対向する面に第2の凹部50を有する。この第2の凹部50は振動部34A、振動部34B、第1基部36、第2基部38、梁40A、40Bに対向する位置に形成され、ダイアフラム基板48の一方の短辺側に偏って配置されている。この第2の凹部50により第2の凹部50の周囲には、ダイアフラム基板48の周縁に沿って外形が形成された第2の周縁部52が配置され、第2の周縁部52は、圧電振動基板26の枠部28と接合する。
【0050】
そしてダイアフラム基板48の他方の短辺側は張出部60A、60Bが配置される。張出部60Aは、物理量検出素子10の積層方向から見て接続部32Aの外形に倣った形状を有するとともに接続部32Aに対向する位置に配置されている。張出部60Bは、物理量検出素子10の積層方向から見て接続部32Bの外形に倣った形状を有するとともに接続部32Bに対向する位置に配置される。そして張出部60Aは接続部32Aに接合(係合)し、張出部60Bは接続部32Bに接合(係合)する。
【0051】
一方、第2の凹部50の底部の第1基部36に対向する位置には凸状の力伝達部54Aが配置され、第2基部38に対向する位置には凸状の力伝達部54Bが配置される。そして、積層後に力伝達部54Aは第1基部36と接合し、力伝達部54Bは第2基部38に接合する。さらに第2の凹部50の底部は、外力により撓み変形するダイアフラム56となっている。
【0052】
また、ダイアフラム基板48の側面には第3の凸部58が配置されている。第3の凸部58は、ダイアフラム基板48の長辺に1つ、短辺に2つ配置されている。ダイアフラム基板48の張出部60A、60Bが配置された短辺においては、第3の凸部は張出部60A、張出部60Bにそれぞれ配置されている。そして、ダイアフラム基板48の長辺に配置された第3の凸部58は、後述の第3の梁76A(図6参照)をダイシングで切断することにより形成され、短辺に配置された第3の凸部58は、後述の第3の梁76B(図6参照)をダイシングで切断することにより形成される。そして第3の凸部58は第2の凸部46と接合する。
【0053】
図2に示すように、ベース基板14において、第1の周縁部18、第1の凸部24の圧電振動基板26に対向する面は圧電振動基板26と接合する第1の接合領域63A(図2中のベース基板14の着色領域)となる。
【0054】
また、圧電振動基板26のベース基板14に対向する面において、枠部28、第2の凸部46は、ベース基板14と接合する第1の接合領域63A(図2中の圧電振動基板26の着色領域)となる。一方、図3に示すように、圧電振動基板26のダイアフラム基板48に対向する面において、枠部28、接続部32A、接続部32B、第1基部36、第2基部38、第2の凸部46は、ダイアフラム基板48と接合する第2の接合領域63B(図3中の圧電振動基板26の着色領域)となる。
【0055】
図2に示すように、ダイアフラム基板48において、第2の周縁部52、第3の凸部58、力伝達部54A、力伝達部54B、張出部60A、張出部60Bの圧電振動基板26に対向する面は、圧電振動基板26と接合する第2の接合領域63B(図2中のダイアフラム基板48の着色領域)となる。
【0056】
図2に示すように、物理量検出素子10は、ベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48の順に積層して形成される。このとき、ベース基板14の第1の周縁部18と圧電振動基板26の枠部28の一方の主面とが接合する。また圧電振動基板26の枠部28の他方の主面とダイアフラム基板48の第2の周縁部52とが接合し、接続部32Aは張出部60Aに接続し、接続部32Bは張出部60Bに接合し、第1基部36は力伝達部54Aに接合し、第2基部38は力伝達部54Bに接合する。
【0057】
そして第2の凸部46は、第1の凸部24及び第3の凸部58に挟まれる形で、第1の凸部24、第3の凸部58に接合する。よって、圧電振動基板26の第1の接合領域63Aのうち、第2の凸部46が接合する領域は、ベース基板14の第1の凸部24が接合する領域と一致する。また圧電振動基板26の第2の接合領域63Bのうち、第2の凸部46が接合する領域は、ダイアフラム基板48の第3の凸部58が接合する領域と一致する。
【0058】
図4に示すように、ベース基板14と圧電振動基板26との間には第1の接合層62A(第1の接合領域63A)が形成され、圧電振動基板26とダイアフラム基板48との間には第2の接合層62B(第2の接合領域63B)が形成される。各接合層の形成は、各接合領域に対応する位置に、例えば下地をCrとするAuのメタライズ層を形成する。そして各接合領域にIn等のロウ材を塗布し、図4に示すように各基板を積層した状態で加熱・加圧する。そしてInを溶融させてメタライズ層に拡散させ、InとAuとの共晶反応を引き起こす。これにより共晶合金であるAu−In層をCrで挟んだ態様の第1の接合層62A、第2の接合層62Bが形成される。また各接合層を形成する接合部材として抵抗率の低い低融点ガラスや、導電性接着剤等も用いることができる。なお各接合層として上述のメタライズ層を用いる場合、各引出電極はメタライズ層と一体的に形成することができる。
【0059】
このように、本実施形態では、各接合層を形成する接合部材として導電性を有する材料を用いている。よって引出電極44Aは第1の接合層62A(第1の接合領域63A)と短絡し、引出電極44Bは第2の接合層62B(第2の接合領域63B)と短絡する。なお、図5(b)に示すように、励振電極47を構成する電極47bは第1基部36上の第2の接合領域63Bに含まれる位置に配置してもよく、電極47nも第2基部38上の第2の接合領域63Bに含まれる位置に配置しても良い。これにより電極47b、電極47nは、第2の接合層62Bを介して引出電極44B及びパッド電極42Bと電気的に接続することができる。
【0060】
そして第1の接合層62Aおよび引出電極44Aは圧電振動基板26のベース基板14に対向する面に配置され、第2の接合層62B及び引出電極44Bは圧電振動基板26のダイアフラム基板48に対向する面に配置される。そして、引出電極44Bは、第1の接合層62Aを形成する第1の接合領域63Aの外部となる接続部32Bの側面33(導電膜44Ba)を経由して圧電振動基板26のベース基板14に対向する面に引き出されている。よって、この側面33に配置された導電膜44Baと第1の接合層62Aとが短絡することはない。また、引出電極44Aは圧電振動基板26のベース基板14に対向する面に配置されており、第2の接合層62Bと短絡することはない。このように、引出電極44Bは接続部32Bで裏面に引き回されているため、ベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48の積層後に、枠部28の引出電極44Bが配置された面の反対面に配置された引出電極44Aとの短絡を防止することができる。
【0061】
また、ベース基板14の圧電振動基板26に対向する面の周縁、圧電振動基板26の両面の周縁、ダイアフラム基板48の圧電振動基板26に対向する面の周縁、そして、第1の凸部24の第2の凸部46に対向する面、第2の凸部46の第1の凸部24に対向する面および第2の凸部46の第3の凸部58に対向する面、第3の凸部58の第2の凸部46に対向する面は、各基板の積層後に露出しないように設計することが好適である。
【0062】
これにより、第1の接合層62Aを形成する接合部材、第2の接合層62Bを形成する接合部材が物理量検出素子10の外側の側面に流出することを防止することができる。これにより、流出した接合部材による物理量検出素子10全体の応力分布のバラつきを抑制し、振動部34A、振動部34Bへの応力に起因する特性のバラつきを抑制することができる。したがって、物理量検出素子10の特性のバラつきを抑制することができる。また、万が一物理量検出素子10の外部に接合部材が漏出しても外部であれば除去することができるので、引出電極44Aと、第2の接合層62Bから漏出した接合部材との短絡や、引出電極44Bと、第1の接合層62Aから漏出した接合部材との短絡を防止することができる。
【0063】
そして、上述のように各基板を積層することにより、内部空間13を有するパッケージ12が形成され、上面にはダイアフラム56が配置され、圧電振動基板26のダイアフラム56に対向する面の反対面において露出した位置に接続部32A(パッド電極42A)、接続部32B(パッド電極42B)が配置された物理量検出素子10となる。よって、例えば内部空間13を真空とすることにより、真空を基準とした圧力を測定可能な物理量検出素子10となる。
【0064】
上記構成により、図2、図4に示すように、圧電振動基板26の引出電極44B(導電膜44Ba)が露出する位置は、接続部32Bのスリット30により形成された側面33となるので、導電膜44Baはスリット30が形成した側面により保護されることになる。よって導電膜44Ba(引出電極44B)が他の部材に当接することを回避して引出電極44Bの断線を防止することができる。さらに、引出電極44Bの先端にはパッド電極42Bが配置されることになるが、このパッド電極42Bとダイアフラム56が互いに反対方向を向いて配置されている。よって、パッド電極42B(パッド電極42A)を後述の実装基板92に対向させて、ワイヤーを用いずにパッド電極42B(パッド電極42B)と、実装基板92上の後述の接続電極94と、を固定部材96(図1)により機械的・電気的に接続することができる。したがって、低背化が可能な物理量検出素子10となる。さらに、引出電極44Bは接続部32Bで裏面に引き回されているため、枠部28の引出電極44Bが配置された面の反対面に配置された配線(引出電極44A)との短絡を防止することができる。
【0065】
上記構成において、ダイアフラム56に圧力が印加されると、ダイアフラム56は内部空間13側に撓み変形する。これにより力伝達部54A、54Bは互いに離間する方向に変位し、力伝達部54Aに接続された第1基部36及び力伝達部54Bに接続された第2基部38は、互いに離間する方向に力を受ける。よって、振動部34A、振動部34Bには引張応力が印加され振動部34A、振動部34Bの共振周波数が高くなる。したがって、振動部34A、振動部34Bの共振周波数の変化量をモニターすることによりダイアフラム56に印加された圧力を検知可能な物理量検出素子10となる。
【0066】
なお、本実施形態では、振動部を2つの柱状ビームにより構成しているが、これを1つの柱状ビーム(シングルビーム)により構成することもできる。これにより、柱状ビームに対して第1基部36、第2基部38から印加される力が大きくなるので、共振周波数の変化量が大きくなり、物理量検出素子10の感度を向上させることができる。また振動部34A、34Bを2つ以上の柱状ビームにより構成することが可能である。この場合、各柱状ビームの振動に対称性を持たせることにより、振動漏れを抑制してQ値の高い物理量検出素子10とすることができる。本実施形態のように柱状ビームが2つの場合は、柱状ビームの長手方向の中央が互いに離れ、互いに近づくような振動とすることにより一対の振動ビームは対称性を有する振動となり、外部への振動漏れを抑制することができる。
【0067】
図6に、本実施形態のウェーハの積層構造の分解斜視図と、これを積層したのちに個片化して得られる第1実施形態の物理量検出素子(図中右下)の斜視図を示す。本実施形態のウェーハの積層構造64は、ベース基板14をアレイ状に配置した第1ウェーハ66と、圧電振動基板26をアレイ状に配置し第1ウェーハ66に積層された圧電振動ウェーハ70と、ダイアフラム基板48をアレイ状に配置し圧電振動ウェーハ70に積層された第2ウェーハ74と、を有している。そして、図6に示すようにこのウェーハの積層構造64に対して二点鎖線で囲まれた範囲をダイシング領域(D)とするダイシングブレード82(図7参照)によりダイシングを行なうことにより、複数の物理量検出素子10を個片化することができる。
【0068】
第1ウェーハ66は、ベース基板14と同一の厚みとなる水晶基板により形成され、ベース基板14をアレイ状に配置した上で、互いに隣接するベース基板14を第1の梁68A、68Bで連結するように水晶基板を刳り貫いて形成される。ここで、互いに隣接するベース基板14同士において、ベース基板14の長辺同士が対向する位置では第1の梁68A(1本)で連結され、ベース基板14の短辺同士が対向する位置では第1の梁68B(2本)で連結される。
【0069】
圧電振動ウェーハ70は、上述のZ′軸を法線に持つ主面を有し、圧電振動基板26と同一の厚みとなる水晶基板により形成されている。そして、圧電振動基板26をアレイ状に配置した上で、互いに隣接する圧電振動基板26を第2の梁72A、72Bで連結するように水晶基板を刳り貫いて形成される。ここで、互いに隣接する圧電振動基板26において、圧電振動基板26の長辺同士が対向する位置では第2の梁72A(1本)で連結され、圧電振動基盤26の短辺同士が対向する位置では第2の梁72B(2本)で連結される。
【0070】
第2ウェーハ74は、ダイアフラム基板48と同一の厚みとなる水晶基板により形成され、ダイアフラム基板48をアレイ状に配置した上で、互いに隣接するダイアフラム基板48を第3の梁76A、76Bで連結するように水晶基板を刳り貫いて形成される。ここで、互いに隣接するダイアフラム基板48同士において、ダイアフラム基板48の長辺同士が対向する位置では第3の梁76A(1本)で連結され、ダイアフラム基板48の短辺同士が対向する位置では第3の梁76B(2本)で連結される。
【0071】
なお、本実施形態において、第1ウェーハ66(ベース基板14)、第2ウェーハ74(ダイアフラム基板48)は、サンドブラストにより外形を形成し、圧電振動ウェーハ70(圧電振動基板26)はエッチングにより外形を形成することが好適である。またダイアフラム基板48の第2の凹部50(ダイアフラム56)は、サンドブラストにより形成し、サンドブラストにより生じた第2の凹部50(ダイアフラム56)への残留応力及び表面粗さを除去するため、短時間エッチングして第2の凹部50(ダイアフラム56)の表面を平坦化するとともに残留応力を除去する。
【0072】
図7に、第1実施形態のウェーハの積層構造においてダイシングを行なう場合の模式図を示し、図7(a)はダイシング前、図7(b)はダイシング後を示す。図6、図7に示すように、ウェーハの積層構造64においては、積層後に二点鎖線で囲まれた範囲をダイシング領域(D)とするダイシングブレード82によりダイシングを行なって、複数の物理量検出素子10を個片化することができる。
【0073】
ここで、第1の梁68Bは、積層後に接続部32A、32Bに対向する位置及び、前記位置に連続しダイシングにより消失する部分の一部となる位置において、圧電振動基板26に対向する面側から掘り込まれてベース基板14より薄肉に形成されている(図7、図6拡大図参照)。よって第1ウェーハ66と圧電振動ウェーハ70とを接合すると、第1の梁68Bと接続部32A、32Bとの間には隙間78(図7(a))が形成される。これにより、第1の梁68Bが接続部32A、32Bに積層されることはない。よってパッド電極42A、42Bの接続部32A、32Bにおける配置の自由度を高めることができる。
【0074】
また、図7(a)に示すように、第1の梁68Bのベース基板14との接続位置には厚み方向に切り込み80が形成される。よって、後述のように第1ウェーハ66、圧電振動ウェーハ70、第2ウェーハ74を積層後、第1の梁68B、第2の梁72B、第3の梁76Bをダイシングしたとき、第1の梁68Bは、切り込み80において折り取ることが可能であるとともに、ダイシングの振動により第1の梁68Bをベース基板14から剥離させることができる。
【0075】
ここで、図6、図7に示すように、ダイシング領域(D)に沿ってダイシング(フルカット)を行なうと、第1の梁68A、68B、第2の梁72A、72B、第3の梁76A、76Bをダイシングすることになる。
【0076】
そして、図7(a)に示すように、第1の梁68B(第2の梁72B、第3の梁76B)をダイシングする場合は、第1の梁68Bの第2の梁72Bに接合する領域と、第1の梁68Bが薄肉に形成された部分とをダイシングすることになる。よって、ダイシング後の第1の梁68Bは第2の梁72Bから分離する。さらに第1の梁68Bのベース基板14に接続する部分には、ハーフダイシング等により切り込み80が形成されているので、図7(b)に示すように、上述のフルカット時の振動で第1の梁68Bはベース基板14から剥離し、ベース基板14には剥離痕25(図2、図4参照)が形成される。またフルカット時の振動で第1の梁68Bが剥離しなくても、切り込み80において第1の梁68Bを折り取ることができる。
【0077】
上述のように本実施形態において、第1の梁68A、68B、第2の梁72A、72B、第3の梁76A、76Bは、アレイ状に配置された物理量検出素子10の間に配置されている。よって、ダイシングに用いるダイシングブレード82を、物理量検出素子10の間に沿って走らせ、第1の梁68A、68B、第2の梁72A、72B、第3の梁76A、76Bを切断することにより物理量検出素子10を個片化することができる。
【0078】
このとき、第1の梁68Aの一部は、第1の凸部24としてベース基板14の長辺に配置され、第1の梁68Bの一部は、第1の凸部24としてベース基板14の短辺に配置される。また、第2の梁72Aの一部は、第2の凸部46として圧電振動基板26の長辺に配置され、第2の梁72Bの一部は、第2の凸部46として圧電振動基板26の短辺に配置される。さらに第3の梁76Aの一部は、第3の凸部58としてダイアフラム基板48の長辺に配置される。そして、第1の梁68Bは、上述のダイシングにより、ベース基板14の短辺に第1の凸部24として配置される部分と、ベース基板14から分離するとともにベース基板14の接続部32A、32Bに対向する短辺に剥離痕25(図2、図4参照)を形成する部分と、に分離する。
【0079】
上記構成において、第1の梁68A、68B、第2の梁72A、72B、第3の梁76A、76Bは、それぞれベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48の幅より十分細くなるように設計することができる。よって、ダイシングブレード82の第1ウェーハ66、圧電振動ウェーハ70、第2ウェーハ74との切断時の接触断面積を小さくすることができる。したがって、ダイシングにより発生する振動を抑制して基板間の剥離や振動部34A、振動部34Bの前記振動による破損を防止して、歩留の高い物理量検出素子10を量産することができる。
【0080】
また、ベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48をダイシングすることはないので、ダイシング時の各基板のチッピングを回避することができる。そして、引出電極44Bは積層後でもスリット30に形成された側面33で露出するのみであるので、ダイシング時に切除されることはない。次に第1実施形態の物理量検出モジュール90について説明する。
【0081】
上述のように、図1(a)、図1(c)に示すように、第1実施形態の物理量検出モジュール90は、実装基板92上に物理量検出素子10を配置した状態で、図1(a)に示すように実装基板92と蓋体93とにより形成された容器に物理量検出素子10を収容したものである。図1(a)に示すように、物理量検出素子10は、ベース基板14及び接続部32A、32Bを実装基板92側に向け、ダイアフラム56をその反対側に向けた状態で配置される。そして、蓋体93のダイアフラム56に対向する位置には圧力導入口93aが配置されている。よって、物理量検出素子10は容器に収容されているため被測定環境由来の外乱が低減され、圧力導入口93aを被測定環境に開放することにより、被測定環境の圧力を安定的に測定することができる。
【0082】
そして、図1(a)、図1(c)に示すように、接続部32Aに配置されたパッド電極42A、及び接続部32Bに配置されたパッド電極42Bは、それぞれ実装基板92に実装面側に配置された接続電極94と導電性の固定部材96を介して電気的に接続され、またこの固定部材96により接続部32A、32Bと実装基板92とが機械的に接続される。さらに図1(a)に示すように、接続電極94は、実装基板92を貫通する貫通電極95を介して実装基板の外側に配置された外部電極97に接続される。
【0083】
よって物理量検出モジュール90において、物理量検出素子10は、接続部32A、32Bを固定端として片持ち支持状態で実装基板92に支持されることになる。このようにパッド電極42A、42Bと接続電極94とを対向させた状態で、両者を固定部材96で接続することにより、固定部材96は機械的接続のみならず、電気的接続も行なうので、従来技術のようにワイヤーを用いて電気的に接続した場合よりも物理量検出モジュール90全体の高さを低くすることができる。なお、物理量検出モジュール90において、物理量検出素子10の励振電極45(図5)は、引出電極44A、パッド電極42A、固定部材96、接続電極94、貫通電極95を介して外部電極97に電気的に接続され、励振電極47(図5)は、引出電極44B、導電膜44Ba、引出電極44B、パッド電極42B、固定部材96、接続電極94、貫通電極95を介して外部電極97に電気的に接続される。
【0084】
ここで、固定部材96は導電性の接着剤でも良いし、Au等で形成されたバンプでもよい。また図1(a)に示すように、固定部材96は、物理量検出素子10(ベース基板14)が実装基板92から浮くように配置し、さらに図1(b)に示すように、物理量検出素子10と実装基板92との間の隙間をシリコン樹脂等の充填材98で充填することが好ましい。これにより物理量検出モジュール90(物理量検出素子10)の耐衝撃性を高めることができる。
【0085】
更にまた、バンプは、突起状の樹脂コア(コア部)と、樹脂コア部の表面に形成された導電膜とを備えたものであってもよい。樹脂コア部は、例えばフォトリソグラフィ技術やエッチング技術によって樹脂材料をパターニングした後、樹脂パターンを融解または熱収縮させることで断面形状が略半円状または台形形状に形成される。樹脂コア部は、例えばポリイミド樹脂やアクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの感光性絶縁樹脂や熱硬化性絶縁樹脂から構成されている。
【0086】
なお、導電膜は、例えばAu(金)、TiW(チタン/タングステン)、Cu(銅)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti、W、NiV(ニッケル/バナジウム)、Al(アルミニウム)、Pd(パラジウム)、鉛フリーハンダなどの金属や合金、これらの単層、或いは複数種を積層したもので形成してもよい。
【0087】
また本実施形態では、接続部32Aが張出部60Aにより補強され、接続部32Bが張出部60Bにより補強されている。これにより固定部材96による接合時の接続部32A、32Bの破損の虞を低減することができる。また物理量検出素子10の固定部材96が接合する部分の厚みが張出部60A、張出部60Bにより厚くなるため、例えば固定部材96としてバンプを用いた場合は固定部材96と接続部32A、32Bとの接続位置へ力(超音波)を確実に伝達して接合の歩留を高めることができる。
【0088】
また、上記構成において、物理量検出素子10と実装基板92との間の熱膨張係数の違いにより、物理量検出素子10の固定部材96との接続位置において、その接続位置同士の間隔を温度変化により狭めるまたは広げる応力(熱歪み)が発生する(図1(c)参照)。しかし、接続部32Aは接続部32Aの枠部28との接続位置、接続部32Bが接続部32Bと枠部28との接続位置、張出部60Aは張出部60Aと第2の周縁部52との接続位置、張出部60Bは張出部60Bと第2の周縁部52との接続位置をそれぞれ固定端として屈曲することができるので、各接続位置に応力を集中させることができる。したがって、その分ダイアフラム56に伝播する応力の成分を緩和させることができるので、ダイアフラム56の熱歪みの影響を緩和して圧力を高精度に測定することができる。
【0089】
図8に第2実施形態の物理量検出モジュールの模式図を示し、図8(a)は断面図、図8(b)は平面図を示す。第2実施形態の物理量検出モジュール100は、第1実施形態と同様に実装基板92、蓋体93、物理量検出素子10を用いたものであるが、実装基板92の実装面には凸部101が配置され、この凸部101により実装基板92は、互いに段差となる上段部102(凸部101の上面)と下段部104を有することになる。そして、ベース基板14は下段部104に対向するように配置され、接続部32A、32Bは上段部102に対向するように配置された状態で上段部102と導電性の固定部材96で接合されている点で相違する。そして上段部102には接続電極94が配置され、接続電極94とパッド電極42A、42Bが対向している。そして接続電極94とパッド電極42A、42Bとが導電性の固定部材96により電気的に接続されている。
【0090】
このように構成することにより、固定部材96の高さを小さくすることができるので物理量検出素子10の実装基板92への接合の安定性を高めることができるとともに、固定部材96の使用量も少なくすることができるので、コストを抑制することができる。なお、図8(a)に示すように、本実施形態においても第1実施形態の物理量検出モジュール90と同様の理由により、固定部材96をベース基板14が下段部104から浮いた状態となるように配置し、物理量検出素子10と実装基板92との間の隙間を充填材98で充填することが好ましい。
【0091】
図9に第2実施形態の物理量検出素子の分解斜視図を示す。また、図10に、第3実施形態の物理量検出モジュールの模式図を示し、図10(a)は断面図、図10(b)は図10(a)に示された物理量検出モジュールの変形例を示す。図9に示すように第2実施形態の物理量検出素子106は、第1実施形態とは異なり、圧電振動基板26のパッド電極42A、42Bが配置された面側にダイアフラム基板48が接合し、その反対面にベース基板14が接合している。そして第2実施形態の物理量検出素子106では、第1実施形態の物理量検出素子10におけるダイアフラム基板48の張出部60A、60Bがなく、ベース基板14に張出部108A、張出部108Bが配置された点で相違する。なお、第3実施形態の物理量検出モジュール110は、第2実施形態の物理量検出素子106を実装基板92上に実装したものである。
【0092】
張出部108Aは、積層方向から見て接続部32Aの外形に倣った形状を有し、第1の周縁部18の縁辺において接続部32Aに対向するように配置されている。同様に、張出部108Bは、積層方向から見て接続部32Bの外形に倣った形状を有し、第1の周縁部18の縁辺において接続部32Bに対向するように配置されている。また張出部108Aは接続部32Aのパッド電極42Aが配置された面の反対面に接合(係合)され、張出部108Bは接続部32Bのパッド電極42Bが配置された面の反対面に接合(係合)され、それぞれ第1の接合領域63Aの一部を形成する。
【0093】
物理量検出素子106において、ダイアフラム基板48の接続部32A、32Bに対向する短辺には剥離痕109が形成されている。この剥離痕109は、第1実施形態の剥離痕25と同様の方法で形成される。すなわち、ダイアフラム基板48の長辺方向で連結する第3の梁76Bを、第3の梁76Bとダイアフラム基板48との接続位置で剥離することにより形成される。(後述の図14(d)参照)。
【0094】
図10(a)に示すように、第3実施形態の物理量検出モジュール110において、物理量検出素子106は、ダイアフラム56を実装基板92側に向けた状態で実装基板92上に配置されている。第3実施形態の物理量検出モジュール110においても、物理量検出素子106のパッド電極42A、42Bと実装基板92の接続電極94とが導電性の固定部材96により電気的に接続され(図1参照)、この固定部材96により物理量検出素子106の接続部32A、32Bと実装基板92とが機械的に接続されている。さらに固定部材は、ダイアフラム56(ダイアフラム基板48)と実装基板92との間に隙間を形成するように配置されている。このようにダイアフラム56を実装基板92に対向するように配置することにより、ダイアフラム56表面のコンタミネーションを低減することができる。また隙間を形成することによりダイアフラム56が外部の圧力を確実に受けることができる。
【0095】
また実装基板92において、ダイアフラム基板48の第2の周縁部52に対応する位置には枕部112が配置されている。枕部112は、その高さがダイアフラム基板48と実装基板92との隙間と同程度か、それよりやや低い高さを有するように設けられている。図10に示すように、物理量検出モジュール110は固定部材96により片持ち支持状態で支持されているので、外部から加速度等の力を受けると、物理量検出素子106が固定部材96により固定された部分を固定端として実装基板92に対して相対変位し、固定部材96に負荷が集中し接合が剥がれる虞がある。しかし、本実施形態のように枕部112を配置することにより、枕部112が物理量検出素子106を受け止めて相対変位を停止させ、固定部材96への負荷を低減して、物理量検出モジュール110、114の耐衝撃性を高めることができる。
【0096】
枕部112は、第2の周縁部52に対向する位置であれば、一箇所或いは複数個所配置可能であるが、物理量検出素子106は上述のように片持ち支持状態で実装基板92に配置されているので、物理量検出素子106の自由端側となる位置、すなわち物理量検出素子106において接続部32A、32Bとは反対側の周縁と対向する位置に枕部112を配置することが好ましい。さらに枕部112は、シリコン樹脂や、樹脂コアバンプ等の比較的柔らかい材料を用いることが好ましい。
【0097】
また本実施形態において、ベース基板14には張出部108A、108Bが配置され、張出部108Aが接続部32Aに接合し、張出部108Bが接続部32Bに接合している(図7、張出部60A、60B参照)。これにより接続部32A、32Bが補強され、固定部材96による接合時の接続部32A、32Bの破損の虞を低減することができる。また物理量検出素子106の固定部材96が接合する部分の厚みが張出部108A、108Bにより厚くなるため、例えば固定部材96としてバンプを用いた場合は固定部材96と接続部32A、32Bとの接続位置へ力(超音波)を確実に伝達して接合の歩留を高めることができる。
【0098】
また、図10(b)に示すように、前述の上段部102と下段部104を適用して、第1実施形態の物理量検出モジュール90と同様に物理量検出素子106を実装基板92上に配置した物理量検出モジュール114とすることができる。ここで、枕部112は下段部104であって第2の周縁部52に対向する位置に配置されている。
【0099】
図11に、第3実施形態の物理量検出素子の分解斜視図を示し、図12に第3実施形態の物理量検出素子の圧電振動基板の下面図を示す。上記実施形態において、振動部34A、振動部34Bは柱状ビームからなる振動素子を用いたものであったが、図11に示すように、本実施形態の物理量検出素子116は、振動部118としてATカット振動片を用いており、感圧部としてATカット水晶振動素子を用いている。なお、図11においてその他の構成要素は、第1実施形態の物理量検出素子10と同様となっている。振動部118の圧電振動基板26の長辺方向の両端には、第1実施形態と同様に第1基部36と第2基部38が接続されている。そして振動部118の両面にはATカット振動片において厚みすべり振動を励振する励振電極120A、120Bが配置されている。
【0100】
励振電極120Aは、振動部118のベース基板14に対向する面に配置され、励振電極120Bは、振動部118のダイアフラム基板48に対向する面に配置されている。また、パッド電極42A、42Bは、第1実施形態と同様にそれぞれ接続部32A,32Bのベース基板14に対向する面に配置されている。
【0101】
そして励振電極120Aからは引出電極122Aが引き出され、引出電極122Aは、第1基部36、梁40A、枠部28、接続部32Aを経由してパッド電極42Aに接続している。また励振電極120Bからは引出電極122Bが引き出され、引出電極122Bは、第1基部36、梁40A、枠部28、接続部32Bを経由し、接続部32Bのスリット30により形成された側面33を経由して接続部32Bのベース基板14に対向する面に引き出されパッド電極42Bに接続している。
【0102】
よってパッド電極42A、42Bに交流電圧を印加すると振動部118は励振電極120A、120Bに印加された交流電圧により所定の共振周波数で厚みすべり振動を共振する。そして振動部118には第1実施形態の物理量検出素子10と同様にダイアフラム56が受けた圧力に応じた引張応力を受けるため、この応力に応じて共振周波数が変化する。したがって、この共振周波数の変化をモニターすることによりダイアフラム56に印加された圧力を検知することができる。なお、第3実施形態の物理量検出素子116は第1実施形態の物理量検出素子10に倣った構成(ダイアフラム基板48に張出部60A、60Bを有する構成)を有するものとして説明したが、第2実施形態の物理量検出素子106に倣った構成(ベース基板14に張出部108A、108Bを有する構成)とすることもできる。
【0103】
図13に、第4実施形態の物理量検出素子の分解斜視図を示す。第4実施形態の物理量検出素子124は、第1実施形態乃至第3実施形態の物理量検出素子とは異なり、張出部(張出部60A、60B、張出部108A、108B)が設けられていない点で相違する。よって圧電振動基板26を、図13に示すようにベース基板14側にパッド電極42A、42Bを向けた状態で積層しても良いし、ダイアフラム基板48側にパッド電極42A、42Bを向けた状態で積層してもよい。上述のように物理量検出モジュールとしては、第1実施形態の物理量検出モジュール90のようにダイアフラム56が実装基板92と対向しないように配置される場合と、第2実施形態の物理量検出モジュール110、114のようにダイアフラム56と実装基板92とが対向して配置される場合がある。よって本実施形態のように、張出部を有しない構成とすることにより、いずれの物理量検出モジュールも同一の部材により形成することができるので、コストを抑制することができる。
【0104】
なお、第4実施形態の物理量検出素子を図5に示すようなウェーハの積層構造64により形成する場合、第3の梁76Bを図6に示す第1の梁68Bと同様に圧電振動基板26に対向する面からサンドブラスト等により掘り込んでダイアフラム基板48より薄肉になるように形成する。そして、第3の梁76Bとダイアフラム基板48との接続位置に第1の梁68Bと同様に切り込み132を配置すればよい(後述の図14(d)参照)。これにより、第3の梁76Bは、第1の梁68Bと同様に、ダイシング時にダイアフラム基板48から剥離して分離し、ダイアフラム基板48には剥離痕109が形成される。
【0105】
図14に、本実施形態のウェーハの積層構造において、折り取り部を形成した場合の模式図を示し、図14(a)は、第1ウェーハ、圧電振動ウェーハ、第2ウェーハのそれぞれの折り取り部の平面図、14(b)は14(a)に示す第1ウェーハ、圧電振動ウェーハ、第2ウェーハを積層した場合のA−A線断面図(折り取り前)、図14(c)は図14(b)の折り取り後の断面図、図14(d)は第4実施形態の物理量検出素子を折り取って個片化する場合の断面図を示す。
【0106】
第1実施形態乃至第4実施形態の物理量検出素子は、図6のようなウェーハの積層構造64から個片化して複数製造することが可能である。ここでは主に第1実施形態の物理量検出素子10に折り取り部を適用した場合について説明する。さらに本実施形態では、第1の梁68B、第2の梁72B、第3の梁76Bに折り取り部を適用した場合について説明する。また、前述の実施形態においては、第1の梁68A、68B、第2の梁72A、72B、第3の梁76A、76Bをダイシングすることにより物理量検出素子10を個片化することを前提として述べてきたが、本実施形態により、折り取りによっても個片化することが可能である。
【0107】
図14(a)に示すように、第1の梁68Bには、第1の折り取り部126が配置され、第2の梁72Bには、第2の折り取り部128が配置され、第3の梁76Bには、第3の折り取り部130が配置されている。第1の折り取り部126は、第1の梁68Bの中央部において、その幅方向及び厚み方向にサンドブラストを施すことにより形成することができる。第3の折り取り部130も、第3の梁76Bの中央部において、その幅方向及び厚み方向にサンドブラストを施すことにより形成することができる。
【0108】
一方、第2の折り取り部128はエッチングにより形成することが可能である。すなわち、第2の折り取り部128を形成するための第2の梁72Bの幅方向のエッチングは、圧電振動基板26の外形(第2の梁72Bを含む)をエッチングで形成する工程と同時に形成することができる。一方、振動部34A、振動部34Bの励振効率を高めるため、振動部34A、振動部34Bを構成する柱状ビームに柱状ビームの厚み方向から溝を形成するハーフエッチングを施して柱状ビームの重量を軽減することが行なわれる。この工程は圧電振動基板26の外形を形成したのち、振動部34A、振動部34Bの厚み方向の両面に行なう。したがって、第2の折り取り部128を形成するための第2の梁72Bの厚み方向のハーフエッチングは、この溝の形成と同時に行うことができ、第2の梁72Bの厚み方向の両面からハーフエッチングを行なうことができる。
【0109】
なお、第3実施形態の物理量検出素子116の振動部118にも、励振効率を高めるため、中央部と周縁部とで厚みが互いに異なるメサ構造をハーフエッチングにより形成する場合がある。したがって、このハーフエッチングと同一の工程を用いて、第2の折り取り部128を形成するための第2の梁72Bの厚み方向のハーフエッチングを行うことができる。
【0110】
このようにして形成された、第1の折り取り部126、第2の折り取り部128、第3の折り取り部130は、図14(b)に示すように、積層方向から見て重なるように配置される。したがって、図14(c)に示すように、各折り取り部に力を印加することにより、各折り取り部を破断させることができる。したがって、ダイシングによらず、第1の梁68B、第2の梁72B、第3の梁76Bを折り取ることができる。同様に、第1の梁68Aにも第1の折り取り部126を形成し、第2の梁72Aに第2の折り取り部128を形成し、第3の梁76Aに第3の折り取り部130を形成し、第1の梁68A、第2の梁72A、第3の梁76Aを破断することができる。これにより、物理量検出素子10を個片化することができる。よって、基板間の剥離や振動部34A、振動部34Bの破損を効率的に防止して、歩留の高い物理量検出素子10を量産することができる。
【0111】
なお、図14(c)に示すように、第1の梁68B(図7参照)は、第1の折り取り部126乃至第3の折り取り部130の折り取り時の衝撃により切り込み80から剥離して分離する。また図14(d)に示すように第4実施形態の物理量検出素子124をウェーハの積層構造64から折り取って個片化する場合は、第1の折り取り部126乃至第3の折り取り部130の折り取り時の衝撃により、第1の梁68Bを切り込み80から剥離して分離し、第3の梁76Bを切り込み132から剥離して分離する。
【0112】
いずれの実施形態においても、第1ウェーハ66、圧電振動ウェーハ70、第2ウェーハ74の積層構造64を形成したのち、ダイシング(若しくは折り取り)して物理量検出素子10等を個片化する旨説明したが、これに限定されない。即ち、上述の各ウェーハにおいて、ベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48をそれぞれ個片化したのち、ベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48を積層して物理量検出素子10等を構築することができる。このとき第1の凸部24、第2の凸部46、第3の凸部58が互いに重なるように配置されているので、各凸部を積層の際のアライメントの目印に用いることができ、積層を容易に行うことができる。
【0113】
また上述の物理量検出モジュールにおいて、物理量検出素子10等の感圧部に電気的に接続する回路(集積回路(不図示))、すなわち振動部34A、振動部34B(振動部118)を駆動させるとともに振動部34A、振動部34B(振動部118)の共振周波数の情報を取得可能な回路(不図示)を搭載することが可能である。また上述の物理量検出素子10等において、ダイアフラム基板48を取り払った場合(またはダイアフラム基板48の代わりに他のベース基板を枠部28に取り付けた場合)は、振動部34A、振動部34B(振動部118)を発振源とする発振器として機能させることができる。したがって、自ら発振する発振器としての機能、または自ら圧力等の物理量を測定する機能を有する物理量検出素子を備えた物理量検出モジュールを構築することができる。なお、ダイアフラム56は、圧力以外にも、ダイアフラム56に接触した物体のダイアフラム56に印加する力なども検出することが可能である。
【0114】
例えば第1実施形態において、接続部32A、32Bを圧電振動基板26の短辺に配置し、張出部60A、60Bをダイアフラム基板48の短辺に配置したが、これらを各基板の長辺にそれぞれ配置してもよく、他の実施形態においても同様に配置してもよい。また圧電振動基板26においては第1基部36、第2基部38の並ぶ方向を圧電振動基板26の長辺に平行な方向としているが、圧電振動基板26の短辺に平行な方向に配置してもよく、他の実施形態においても同様に配置してもよい。この場合、振動部34A、34Bは、圧電振動基板26の短辺方向に長手方向を有するように配置してもよい。
【0115】
そして、いずれの実施形態においても、ベース基板14、圧電振動基板26、ダイアフラム基板48の3層構造により物理量検出素子10等を形成する旨説明してきたが、これに限定されない。すなわち、圧電振動基板26から振動部34A、34B、第1基部36、第2基部38からなる感圧部(圧電振動片)を取り出し、ダイアフラム基板48の力伝達部54Aに第1基部36を接合し、力伝達部54Bに第2基部38を接合し、ダイアフラム基板48の第2の周縁部52とベース基板14の第1の周縁部18とを接合して物理量検出素子を形成してもよい。このとき感圧部のベース基板14に対向する主面はベース基板14に覆われることになる。この場合、例えば、ダイアフラム基板48の外縁に接続部32A、32Bを配置し、力伝達部54A、54Bに励振電極96、98に接続し外部に電気的に接続可能な貫通電極を配置し、接続部32A、32Bに配置されたパッド電極42A、42Bを貫通電極とワイヤー等により接続する。これによりパッド電極42A、42Bと励振電極96、98とを電気的に接続することができる。
【0116】
図15に、本実施形態の物理量検出素子において、振動部として音叉型振動片(その1)を用いた場合の分解斜視図と、圧電振動基板の下面の模式図を示す。また、図16に、本実施形態の物理量検出素子において、振動部として音叉型振動片(その2)を用いた場合の分解斜視図と、圧電振動基板の下面の模式図を示す。さらに、図17に、本実施形態の物理量検出素子において、振動部としてATカット振動片を用いた場合の分解斜視図と、圧電振動基板の下面の模式図を示す。
【0117】
例えば、本発明は、3層以上の構造を有し且つ中間層として圧電振動基板26が含まれる温度センサー、圧電振動子等の物理量検出素子に適用することができる。圧電振動基板26の振動部としては、図15、図16に示すように音叉型振動片や、図17に示すようにATカット水晶振動片を適用することができる。また、水晶のX軸(電気軸)を中心にして所定の角度だけ回転して得られる回転Y板を用いた水晶振動子、その他のカットで切断された水晶振動子、水晶以外の圧電材料を用いた圧電振動子、等を広く適用できる。
【0118】
図15においては、第1の凹部16を有するベース基板14、振動部200を有する圧電電振動基板26、第2の凹部50を有する第2ベース基板201からなる3層構造の物理量検出素子10aとなっている。第2ベース基板201の接続部32A、32Bに対向する位置には張出部60A、60Bが配置されている。そして圧電振動基板26のベース基板14に対向する面には、パッド電極42A、パッド電極42Bが配置されている。また、振動部200には励振電極204A、204Bが配置されている。そして振動部200のベース基板14に対向する面において、励振電極204Aから引出電極202Aが引き出され、引出電極202Aは、接続部32Aに引き出されパッド電極42Aに接続されている。また振動部200の第2ベース基板201に対向する面において、励振電極204Bから引出電極202Bが引き出され、引出電極202Bは接続部32Bに引き出され、接続部32Bのスリット30により形成された側面33を経由し、接続部32Bのベース基板14に対向する面に引き出されてパッド電極42Bに接続されている。そして、パッド電極42A、42Bに交流電圧を印加することにより振動部200が屈曲振動をする。
【0119】
図16においては、第1の凹部16を有するベース基板14、振動部206を有する圧電振動基板26、第2の凹部50を有する第2ベース基板201からなる3層構造の物理量検出素子10bとなっている。第2ベース基板201の接続部32A、32Bに対向する位置には張出部60A、60Bが配置されている。圧電振動基板26において、互いに平行な2つの振動部206は基部208から延出するように配置されている。基部208は、その幅方向の両端がクランク型の支持腕210A、支持腕210Bによりそれぞれ支持されている。支持腕210A、支持腕210Bは、それぞれ一方の端部が基部208に接続し、他方の端部が枠部28の内側に接続されている。
【0120】
圧電振動基板26のベース基板14に対向する面には、パッド電極42A、パッド電極42Bが配置されている。そして、振動部206には励振電極214A、励振電極214Bが配置されている。振動部206のベース基板14に対向する面において、励振電極214Aから引出電極212Aが引き出されている。引出電極212Aは、基部208、支持腕210A、枠部28、接続部32Aを経由するように引き出されパッド電極42Aに接続されている。また振動部206の第2ベース基板201に対向する面において、励振電極214Bから引出電極212Bが引き出されている。引出電極212Bは、基部208、支持腕210B、枠部28、接続部32Bを経由し、接続部32Bのスリット30により形成された側面33を経由して接続部32Bのベース基板14に対向する面に引き出されてパッド電極42Bに接続されている。よって、パッド電極42A、42Bに交流電圧を印加することにより振動部206が屈曲振動をする。
【0121】
上記構成において、支持腕210A、支持腕210Bは、枠部28に接続した位置を固定端として屈曲することができる。このような配置とすることにより、振動部206の振動系を枠部28の振動系から分離することができる。したがって、振動部206の振動漏れを抑制してQ値を向上させ、且つCI値を低下させることができる。さらに枠部28の支持腕210A、支持腕210Bの自由端に対向する位置には緩衝部28aが配置され、外部からの力による支持腕210A、支持腕210Bと、枠部28との相対変位を抑制することにより耐衝撃性を高めることができる。
【0122】
図17においては、第1の凹部16を有するベース基板14、振動部218を有する圧電振動基板26、第2の凹部50を有する第2ベース基板201からなる3層構造の物理量検出素子10cとなっている。第2ベース基板210の接続部32A、32Bに対向する位置には張出部60A、60Bが配置されている。圧電振動基板26において振動部218は、枠部28と支持部219A、支持部219Bを介して接続されている。また、圧電振動基板26のベース基板14に対向する面には、パッド電極42A、パッド電極42Bが配置されている。そして、振動部218のベース基板14に対向する面には励振電極222Aが配置され、その裏面であって励振電極222Aに対向する位置には励振電極222Bが配置されている。
【0123】
ここで、励振電極222Aから引き出された引出電極220Aは、圧電振動基板26のベース基板14に対向する面において支持部219Aを経由して接続部32Aに引き出されてパッド電極42Aに接続されている。また、励振電極222Bから引き出された引出電極220Bは、第2ベース基板201に対向する面において支持部219B、接続部32Bを経由し、接続部32Bのスリット30により形成された側面33を経由して接続部32Bのベース基板14に対向する面に引き出されパッド電極42Bに接続されている。上記構成において、パッド電極42A、42Bに交流電圧を印加することにより振動部218が厚みすべり振動をする。なお、図15乃至図17において、第2ベース基板201は、第1実施形態等のダイアフラム基板48から置き換わったもの(力伝達部54A、54B、ダイアフラム56を有しないもの)であり、他の構成要素は物理量検出素子10等と同様なので説明を省略する。
【0124】
本発明の物理量検出素子は、上述した物理量検出モジュール以外に、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送用の受信チューナー、同軸ケーブルや光ケーブル中を伝搬する高周波信号や光信号用の各種処理装置、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の様々な電子機器、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置にも広く適用することができる。
【0125】
このような各種センサー装置及び電子機器としては、例えば一般工業用計測機器、電子血圧計、高度・気圧・水深計測機能付き電子機器、携帯機器、自動車などが挙げられる。そして、上述のように外力によるダイアフラムの機械的な変形を電気的信号として計測するものとして圧力センサーは携帯電話機やパソコン等の小型の携帯機器での高度計測に前記圧力センサーを応用してマイクロホンとして利用可能である。
【0126】
更に、近年注目をされるようになった水素やメタノール等の燃料電池は、軽量化や利便性等に起因して、例えば、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末機(Personal Digital Assistants:PDA)、オーディオプレーヤ、プロジェクタ載置台、カプセル型医療機器の通信機能を具備した電子機器といった各種情報処理装置の燃料電池としての用途が考えられる。
【0127】
図18に、本実施形態の物理量検出素子を燃料電池システムに搭載した場合の系統図を示す。図18に示すように、燃料電池システム224は、水素を燃料として電力を発生させる燃料電池セル226と、該燃料電池セル226に水素を供給する水素吸蔵合金容器228と、該水素吸蔵合金容器228と上記燃料電池セル226との間に配設された圧力検出用の圧力センサー230と、圧力調整弁232と安全弁234とを備えている。この燃料電池システム224において、本発明に係る物理量検出素子10等を圧力センサー230として使用することができる。
【0128】
図19に、本実施形態の物理量検出素子を車両用情報記録装置に搭載した場合のブロック図を示す。図19に示すように、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフ238とドライブレコーダ248の双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録装置236がある。
【0129】
この車両用情報記録装置236において、前記デジタルタコグラフ238は、車両の走行状況を検出する走行状況検知手段240と、前記ドライブレコーダ248との間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段242と、情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段244と、前記走行状況検知手段240から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段242から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段244に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部246と、を有しているが、走行状況検知手段240として、高精度な圧力(高度)検出が可能な本発明に係る物理量検出素子10を圧力センサーとして適用できる。
【0130】
更に、被測定者にかかる負荷を検出する活動量計側システムにおいて、前記負荷を圧力として検出する場合においては、検出器として、本発明に係る圧力センサー(物理量検出素子10等)を適用できる。
【0131】
また、警戒モードと、非警戒モードとに設定可能なセキュリティシステムであって、人体の少なくとも一部を検知可能な人体検知手段と、前記人体検知手段が前記人体の少なくとも一部を検知したことに応じて、信号を出力する出力手段と、前記出力手段からの出力信号を受けて、前記警戒モードを設定する警戒モード設定手段と、を備えるセキュリティシステムがある。このセキュリティシステムにおいて、外部からの侵入または異常を検知する異常検知センサーと、前記異常検知センサーが異常を検知したときに警報を発する警報手段とをさらに含み、前記警戒モード設定手段は、前記警戒モードに応じて、前記異常検知センサーと、前記警報手段とによる警戒動作を作動させる。このセキュリティシステムを構成する前記異常検知センサーとして、本発明に係る圧力センサー(物理量検出素子10等)を適用できる。
【0132】
更に、本発明の電子機器の一例である腕時計型電子機器の本体には、本発明に係る圧力センサー(物理量検出素子10等)を備えることができ、ダイナミックレンジやリニアリティなどの特性に優れた圧力センサー(物理量検出素子10等)を備えた電気機器となる。
【0133】
更に、特に自動車においては、例えばインテークマニホールド圧若しくはチャージ圧、ブレーキ圧、エアサスペンション圧、タイヤ圧、ハイドロリック貯蔵圧、ショックアブソーバ圧、冷却媒体圧、自動変速機における変調圧、ブレーキ圧、タンク圧用の圧力検出に本発明に係る圧力センサー(物理量検出素子10等)を適用できる。
【0134】
図20に、本実施形態の物理量検出素子を側面衝突検出装置に搭載した場合の模式図(図中の拡大図に対応する断面図は図1(a)を参照)を示す。車両252のサイドドア254の内部に配設された圧力センサー258により、車両252の側面に加わる衝撃を検出する側面衝突検出装置250を構成することができる。この側面衝突検出装置250において、前記圧力センサー258は、圧力を検出するダイアフラム(ダイアフラム56)を有し、そのダイアフラムの受圧面が前記サイドドア254の内部空間256の圧力変動により歪むことを検出することによって車両252の側面に加わる衝撃を検出することができる。そして、例えば、ダイアフラムの受圧面の法線と、水平な前記車両252の前後方向の直線とのなす角を60度から90度に設定することにより、衝突時に圧力センサー258のダイアフラムが衝撃力を受けた場合に、これを圧力変化として検出する度合いを少なくして、圧力の変化をより高精度に検出することができる。この側面衝突検出装置250に用いる圧力センサー258として本実施形態の物理量検出素子10等(物理量検出モジュール90等)を適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
10………物理量検出素子、12………パッケージ、13………内部空間、14………ベース基板、16………第1の凹部、18………第1の周縁部、24………第1の凸部、25………剥離痕、26………圧電振動基板、28………枠部、28a………緩衝部、30………スリット、32A,32B………接続部、33………側面、34A,34B………振動部、36………第1基部、38………第2基部、40A,40B………梁、42A,42B………パッド電極、44A,44B………引出電極、45………励振電極、46………第2の凸部、47………励振電極、48………ダイアフラム基板、49………電極膜、50………第2の凹部、52………第2の周縁部、54A,54B………力伝達部、56………ダイアフラム、58………第3の凸部、60A,60B………張出部、62A………第1の接合層、62B………第2の接合層、63A………第1の接合領域、63B………第2の接合領域、64………積層構造、66………第1ウェーハ、68A,68B………第1の梁、70………圧電振動ウェーハ、72A,72B………第2の梁、74………第2ウェーハ、76A,76B………第3の梁、78………隙間、80………切り込み、82………ダイシングブレード、90………物理量検出モジュール、92………実装基板、93………蓋体、94………接続電極、95………貫通電極、96………固定部材、97………外部電極、98………充填材、100………物理量検出モジュール、101………凸部、102………上段部、104………下段部、106………物理量検出素子、108A………張出部、108B………張出部、109………剥離痕、110………物理量検出モジュール、112………枕部、114………物理量検出モジュール、116………物理量検出素子、118………振動部、120A,120B………励振電極、122A,122B………引出電極、124………物理量検出素子、126………第1の折り取り部、128………第2の折り取り部、130………第3の折り取り部、132………切り込み、200………振動部、201………第2ベース基板、202A,202B………引出電極、204A,204B………励振電極、206………振動部、208………基部、210A,210B………支持腕、212A,212B………引出電極、214A,214B………励振電極、218………振動部、219A,219B………支持部、220,220B………引出電極、222A,222B………励振電極、224………燃料電池システム、226………燃料電池セル、228………水素吸蔵合金容器、230………圧力センサー、232………圧力調整弁、234………安全弁、236………車両用情報記録装置、238………デジタルタコグラフ、240………走行状況検出手段、242………デジタルタコグラフ通信手段、244………デジタルタコグラフ記録手段、246………デジタルタコグラフ制御部、248………ドライブレコーダ、250………側面衝突検出装置、252………車両、254………サイドドア、256………内部空間、258………圧力センサー、300………圧力センサー、302………第1基板、308………圧電振動基板、310………圧電振動片、312………基部、314………振動部、318………第2基板、324………ダイアフラム、326………力伝達部、400………圧力センサー、401………第1基板、402………圧電振動基板、404………枠部、408………振動部、410………パッド電極、412………第2基板、414………切欠き部、416………凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出する感圧部と、前記感圧部の周囲を囲み、前記感圧部を梁を介して支持する枠部と、を有する圧電振動基板と、
前記感圧部が接続され、外部からの力を受けて変位し、前記力を前記感圧部に伝達する変位部を有し、前記圧電振動基板の一方の主面を覆うダイアフラム基板と、
前記圧電振動基板の他方の主面を覆うベース基板と、
を有する物理量検出素子と、
前記物理量検出素子を実装するための実装基板と、
を備え、
前記圧電振動基板には、
一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられ、
前記スリットにより一対の接続部が分離して配置され、
前記一対の接続部は、少なくとも一部が前記ベース基板と前記ダイアフラム基板の少なくとも何れかの基板よりも外側へ露出しており、
前記圧電振動基板は、
前記一対の接続部の一方の主面側にそれぞれ設けられた互いに信号の異なるパッド電極と、
前記一対の接続部のうちの何れか一方の接続部の前記スリット側の側面に配置され、他方の主面に設けられた引出電極と信号が同じ前記パッド電極とを電気的に接続する導電膜と、
を有し、
前記パッド電極を前記実装基板に配置された接続電極に導電性を有する固定部材を介して電気的に接続したことを特徴とする物理量検出モジュール。
【請求項2】
前記ダイアフラム基板、又は前記ベース基板の何れかの基板に前記接続部に係合する張出部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の物理量検出モジュール。
【請求項3】
前記実装基板は、
凸部を有し、
前記接続部は、
前記凸部の上面に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の物理量検出モジュール。
【請求項4】
前記実装基板の前記物理量検出素子の前記接続部とは反対側の周縁と対向する位置には、枕部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の物理量検出モジュール。
【請求項5】
前記物理量検出素子と前記実装基板との間に充填材が配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の物理量検出モジュール。
【請求項6】
前記実装基板上には、前記物理量検出素子を覆うように蓋体が配置され、
前記蓋体には圧力導入口が配置されたことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の物理量検出モジュール。
【請求項7】
前記感圧部を駆動する回路を搭載したことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の物理量検出モジュール。
【請求項8】
前記感圧部は、
少なくとも一以上の柱状ビームからなる振動素子、
又は、ATカット水晶振動子であることを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の物理量検出モジュール。

【図6】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate